特許第5920171号(P5920171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920171
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】モータインバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20160428BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20160428BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M1/00 C
   H02P7/63 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-235772(P2012-235772)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-87204(P2014-87204A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋平
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−34451(JP,A)
【文献】 特開2012−29462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
H02M 1/00
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を有し、入力側に直流電源が接続されるとともに出力側にモータの各相の巻線が接続され、前記スイッチング素子のスイッチング動作により前記モータの各相の巻線が通電されて前記モータを駆動するためのインバータ回路と、
前記インバータ回路の入力側に並列に接続されたコンデンサと、
前記直流電源に操作スイッチを介して接続され、前記操作スイッチのオンに伴って前記インバータ回路の入力側と前記直流電源との間に接続されたメインリレーの閉路に先立ち前記コンデンサをプリチャージするためのプリチャージ回路と、
を備えたモータインバータであって、
プリチャージ状態において前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング動作させる制御手段と、
前記制御手段によりプリチャージ状態において前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング動作させたときの前記インバータ回路に流れる電流または前記コンデンサの電圧からショートの有無を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とするモータインバータ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記コンデンサの電圧が前記モータを駆動させる際の電圧よりも低い電圧において前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング動作させることを特徴とする請求項1に記載のモータインバータ。
【請求項3】
前記制御手段および前記判定手段は、前記インバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定した後に、出力端子間のショートの有無を判定することを特徴とする請求項1または2に記載のモータインバータ。
【請求項4】
前記インバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定する際に、前記制御手段は、各相の上下のアーム用スイッチング素子のうちの一つのスイッチング素子を導通状態にするとともに他のスイッチング素子を非導通状態とし、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流または前記コンデンサの電圧から前記インバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定することを特徴とする請求項3に記載のモータインバータ。
【請求項5】
前記出力端子間のショートの有無を判定する際に、前記制御手段は、各相の上アーム用スイッチング素子のうちのいずれかの相の上アーム用スイッチング素子および当該相以外の相の下アーム用スイッチング素子を予め定めた規定値の電流が流れるように制御し、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流からショートの有無を判定することを特徴とする請求項3または4に記載のモータインバータ。
【請求項6】
前記出力端子間のショートの有無を判定する際に、前記制御手段は、U相、V相、W相のうちのU相の上アーム用スイッチング素子を導通状態にするとともにV相およびW相の下アーム用スイッチング素子を導通状態にし、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流から第1のショートの有無を判定し、
前記制御手段は、U相、V相、W相のうちのV相の上アーム用スイッチング素子を導通状態にするとともにU相およびW相の下アーム用スイッチング素子を導通状態にし、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流から第2のショートの有無を判定し、
前記制御手段は、U相、V相、W相のうちのW相の上アーム用スイッチング素子を導通状態にするとともにU相およびV相の下アーム用スイッチング素子を導通状態にし、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流から第3のショートの有無を判定し、
前記判定手段は、前記第1のショートの有無の判定結果、前記第2のショートの有無の判定結果、前記第3のショートの有無の判定結果から、ショートしている出力端子間を特定する
ことを特徴とする請求項3または4に記載のモータインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータインバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置において、モータ駆動時にモータ電流の検出値から過電流が検出されるとスイッチング素子の短絡故障による異常と判定してインバータを運転停止にする技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−54420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータインバータのインバータ回路においてはブリッジ接続された複数のスイッチング素子を有し、入力側に直流電源が接続されるとともに出力側にモータが接続されている。そして、インバータのモータ出力端子でショートした場合、モータ駆動用のスイッチング素子を極短時間オンしただけでも過大な電流が流れてしまう。このため、過電流を検出してモータ駆動用のスイッチング素子をオフするまでの時間を短くする、または、電圧を下げることが必要となるが、電圧を下げることはバッテリを使用すると難しい。また、ソフトウェア(マイコン)の検出時間では遅いため、一般的にはハードウェアでスイッチング素子の駆動信号を遮断する回路を追加する。しかし、ハードウェアでスイッチング素子の駆動信号を遮断する回路を追加することなくショートを検出することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、ハードウェアによる過電流検出回路を用いることなくショートを検出することができるモータインバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を有し、入力側に直流電源が接続されるとともに出力側にモータの各相の巻線が接続され、前記スイッチング素子のスイッチング動作により前記モータの各相の巻線が通電されて前記モータを駆動するためのインバータ回路と、前記インバータ回路の入力側に並列に接続されたコンデンサと、前記直流電源に操作スイッチを介して接続され、前記操作スイッチのオンに伴って前記インバータ回路の入力側と前記直流電源との間に接続されたメインリレーの閉路に先立ち前記コンデンサをプリチャージするためのプリチャージ回路と、を備えたモータインバータであって、プリチャージ状態において前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング動作させる制御手段と、前記制御手段によりプリチャージ状態において前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング動作させたときの前記インバータ回路に流れる電流または前記コンデンサの電圧からショートの有無を判定する判定手段と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、インバータ回路の入力側に並列にコンデンサが接続されている。プリチャージ回路により、操作スイッチのオンに伴ってインバータ回路の入力側と直流電源との間に接続されたメインリレーの閉路に先立ちコンデンサがプリチャージされる。制御手段において、プリチャージ状態においてインバータ回路のスイッチング素子がスイッチング動作され、判定回路において、このときのインバータ回路に流れる電流またはコンデンサの電圧からショートの有無が判定される。よって、ハードウェアによる過電流検出回路を用いることなくショートを検出することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のモータインバータにおいて、前記制御手段は、前記コンデンサの電圧が前記モータを駆動させる際の電圧よりも低い電圧において前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング動作させることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、制御手段により、コンデンサの電圧がモータを駆動させる際の電圧よりも低い電圧においてインバータ回路のスイッチング素子がスイッチング動作される。この状態でショートの有無が判定される。よって、低い電圧でのプリチャージ状態でショートのチェックを行うことにより過電流が流れない状態でショートを検出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のモータインバータにおいて、前記制御手段および前記判定手段は、前記インバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定した後に、出力端子間のショートの有無を判定することを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、制御手段および判定手段により、インバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定した後に、出力端子間のショートの有無を判定するので、故障箇所の特定が容易にできる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のモータインバータにおいて、前記インバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定する際に、前記制御手段は、各相の上下のアーム用スイッチング素子のうちの一つのスイッチング素子を導通状態にするとともに他のスイッチング素子を非導通状態とし、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流または前記コンデンサの電圧から前記インバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定することを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、インバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定する際に、制御手段により、各相の上下のアーム用スイッチング素子のうちの一つのスイッチング素子が導通状態にされるとともに他のスイッチング素子が非導通状態とされ、判定手段により、このときのインバータ回路に流れる電流またはコンデンサの電圧からインバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項3または4に記載のモータインバータにおいて、前記出力端子間のショートの有無を判定する際に、前記制御手段は、各相の上アーム用スイッチング素子のうちのいずれかの相の上アーム用スイッチング素子および当該相以外の相の下アーム用スイッチング素子を予め定めた規定値の電流が流れるように制御し、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流からショートの有無を判定することを要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、出力端子間のショートの有無を判定する際に、制御手段において、各相の上アーム用スイッチング素子のうちのいずれかの相の上アーム用スイッチング素子および当該相以外の相の下アーム用スイッチング素子が予め定めた規定値の電流が流れるように制御され、判定手段において、このときのインバータ回路に流れる電流からショートの有無を判定することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項3または4に記載のモータインバータにおいて、前記出力端子間のショートの有無を判定する際に、前記制御手段は、U相、V相、W相のうちのU相の上アーム用スイッチング素子を導通状態にするとともにV相およびW相の下アーム用スイッチング素子を導通状態にし、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流から第1のショートの有無を判定し、前記制御手段は、U相、V相、W相のうちのV相の上アーム用スイッチング素子を導通状態にするとともにU相およびW相の下アーム用スイッチング素子を導通状態にし、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流から第2のショートの有無を判定し、前記制御手段は、U相、V相、W相のうちのW相の上アーム用スイッチング素子を導通状態にするとともにU相およびV相の下アーム用スイッチング素子を導通状態にし、前記判定手段は、このときの前記インバータ回路に流れる電流から第3のショートの有無を判定し、前記判定手段は、前記第1のショートの有無の判定結果、前記第2のショートの有無の判定結果、前記第3のショートの有無の判定結果から、ショートしている出力端子間を特定することを要旨とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、出力端子間のショートの有無を判定する際に、制御手段により、U相、V相、W相のうちのU相の上アーム用スイッチング素子が導通状態にされるとともにV相およびW相の下アーム用スイッチング素子が導通状態にされ、判定手段において、このときのインバータ回路に流れる電流から第1のショートの有無が判定される。また、制御手段において、U相、V相、W相のうちのV相の上アーム用スイッチング素子が導通状態にされるとともにU相およびW相の下アーム用スイッチング素子が導通状態にされ、判定手段において、このときのインバータ回路に流れる電流から第2のショートの有無が判定される。さらに、制御手段において、U相、V相、W相のうちのW相の上アーム用スイッチング素子が導通状態にされるとともにU相およびV相の下アーム用スイッチング素子が導通状態にされ、判定手段において、このときのインバータ回路に流れる電流から第3のショートの有無が判定される。さらには、判定手段において、第1のショートの有無の判定結果、第2のショートの有無の判定結果、第3のショートの有無の判定結果から、ショートしている出力端子間を特定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハードウェアによる過電流検出回路を用いることなくショートを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態におけるモータインバータの回路構成図。
図2】メインコンデンサ電圧、プリチャージ駆動信号、モータ駆動信号を示すタイムチャート。
図3】モータインバータの作用を説明するためのフローチャート。
図4】モータインバータの作用を説明するためのフローチャート。
図5】モータインバータの作用を説明するためのフローチャート。
図6】モータインバータの作用を説明するためのフローチャート。
図7】モータインバータの作用を説明するためのフローチャート。
図8】モータインバータの作用を説明するためのフローチャート。
図9】モータインバータの作用を説明するためのフローチャート。
図10】モータインバータの作用を説明するためのフローチャート。
図11】モータインバータの作用を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、モータインバータ(三相インバータ)10は、インバータ回路20と、マイコン60を備えている。インバータ回路20の入力側には直流電源としてのバッテリ70が接続されるとともに、出力側にはモータ80が接続されている。モータ80には3相交流モータが使用されている。モータ80は巻線81,82,83を有し、モータ80の各相の巻線81,82,83がインバータ回路20の出力側に接続されている。
【0021】
インバータ回路20は、モータ駆動用素子としての6個のスイッチング素子S1〜S6が設けられている。各スイッチング素子S1〜S6には、IGBT(絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ)が使用されている。なお、スイッチング素子としてパワーMOSFETを使用してもよい。各スイッチング素子S1〜S6には、それぞれ帰還ダイオードD1〜D6が逆並列接続されている。
【0022】
インバータ回路20において、第1および第2のスイッチング素子S1,S2、第3および第4のスイッチング素子S3,S4、第5および第6のスイッチング素子S5,S6がそれぞれ直列に接続されている。そして、第1、第3および第5のスイッチング素子S1,S3,S5がバッテリ70のプラス端子側に接続され、第2、第4および第6のスイッチング素子S2,S4,S6がバッテリ70のマイナス端子側に接続されている。
【0023】
U相用の上下のアームを構成するスイッチング素子S1,S2の間の接続点はモータ80のU相端子に、V相用の上下のアームを構成するスイッチング素子S3,S4の間の接続点はモータ80のV相端子に、W相用の上下のアームを構成するスイッチング素子S5,S6の間の接続点はモータ80のW相端子に、それぞれ接続されている。このように、インバータ回路20は、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子S1〜S6を有する。第1のスイッチング素子S1がU相の上アーム用スイッチング素子であり、第2のスイッチング素子S2がU相の下アーム用スイッチング素子である。第3のスイッチング素子S3がV相の上アーム用スイッチング素子であり、第4のスイッチング素子S4がV相の下アーム用スイッチング素子である。第5のスイッチング素子S5がW相の上アーム用スイッチング素子であり、第6のスイッチング素子S6がW相の下アーム用スイッチング素子である。
【0024】
インバータ回路20とモータ80との間にはU相電流センサ65およびW相電流センサ66が設けられている。U相電流センサ65およびW相電流センサ66はモータ80に供給される3相の電流Iu,Iv,Iwのうちの2相(この実施形態ではU相およびW相)の電流Iu,Iwの電流値を検出する。
【0025】
インバータ回路20の入力側には、メインコンデンサ40がバッテリ70と並列に接続されている。メインコンデンサ40は複数のコンデンサを並列接続して構成されている。第1、第3および第5のスイッチング素子S1,S3,S5がメインコンデンサ40のプラス端子側に接続され、第2、第4および第6のスイッチング素子S2,S4,S6がメインコンデンサ40のマイナス端子側に接続されている。
【0026】
このように、インバータ回路20の入力側には、並列接続されたバッテリ70およびメインコンデンサ40が接続されている。つまり、インバータ回路20の入力側にメインコンデンサ40が並列に接続され、このメインコンデンサ40によりバッテリ70による電源電圧が平滑化される。
【0027】
インバータの制御装置を構成するマイコン60は、メモリを備え、メモリにはモータ80を駆動するのに必要な各種制御プログラムおよびその実行に必要な各種データやマップが記憶されている。
【0028】
マイコン60には駆動回路(図示略)を介して各スイッチング素子S1〜S6のゲートが接続されている。そして、マイコン60によりスイッチング素子S1〜S6が制御され、バッテリ70の直流が交流に変換されてモータ80の各相の巻線に供給される。これにより、モータ80が駆動される。また、マイコン60にはU相電流センサ65およびW相電流センサ66が接続されている。マイコン60は、各電流センサ65,66の検出信号に基づいて、モータ80を目標出力となるように制御する制御信号を、駆動回路を介して各スイッチング素子S1〜S6に出力する。そして、インバータ回路20はバッテリ70およびメインコンデンサ40から供給される直流を適宜の周波数の3相交流に変換してモータ80の各相の巻線に供給する。つまり、スイッチング素子S1〜S6のスイッチング動作によりモータ80の各相の巻線が通電されてモータ80を駆動することができる。
【0029】
バッテリ70のプラス端子と、メインコンデンサ40およびインバータ回路20との間の電源ラインにはメインリレー30が設けられている。即ち、インバータ回路20の入力側とバッテリ70との間にメインリレー30が接続されている。メインリレー30はリレー接点31とリレーコイル32を備えており、リレー接点31が、バッテリ70のプラス端子とメインコンデンサ40およびインバータ回路20との間の電源ラインに挿入されている。そして、リレーコイル32を通電することによりリレー接点31が閉じるようになっている。リレーコイル32の一端は電源回路35に接続されているとともにリレーコイル32の他端はメインリレー駆動用素子(トランジスタ)38および抵抗39を介して接地されている。メインリレー駆動用素子(トランジスタ)38のゲートはマイコン60に接続され、マイコン60によりメインリレー駆動用素子(トランジスタ)38がオンされるとリレーコイル32が励磁される。これにより、メインリレー30のリレー接点31が閉じられる。
【0030】
また、モータインバータ10はプリチャージ回路50を備えている。プリチャージ回路50は、プリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51とプリチャージ抵抗52とダイオード53を備えている。プリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51とプリチャージ抵抗52とダイオード53とが直列接続されている。プリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51の一端はキースイッチ55を介してバッテリ70のプラス端子と接続されているとともに、プリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51の他端はプリチャージ抵抗52を介してダイオード53のアノードと接続されている。ダイオード53のカソードは、メインリレー30とメインコンデンサ40の間の接続点Aと接続されている。そして、キースイッチ55が閉じた状態でプリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51をオンすることにより、バッテリ70によりキースイッチ55、プリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51、プリチャージ抵抗52、ダイオード53を通してメインコンデンサ40をプリチャージすることができる。このように、プリチャージ回路50は、バッテリ70に操作スイッチとしてのキースイッチ55を介して接続され、キースイッチ55のオンに伴ってメインリレー30の閉路に先立ちメインコンデンサ40をプリチャージするためのものである。
【0031】
電源回路35にはダイオード36によりメインリレー30を通してバッテリ70の電力が供給できるとともに、ダイオード37によりキースイッチ55を通してバッテリ70の電力が供給できるようになっている。
【0032】
電圧検出回路61によりメインリレー30とメインコンデンサ40の間の電位が検出され、その結果がマイコン60に送られることによりマイコン60においてメインコンデンサ40の両端電圧(コンデンサ電圧)が検知される。また、電圧検出回路62によりキースイッチ55とプリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51との間の電位が検出され、その結果がマイコン60に送られることによりマイコン60においてキースイッチ55のオン/オフ状態が検知される。
【0033】
次に、モータインバータ10(制御装置)の作用について説明する。
図3に示すスタートシーケンスにおいて、マイコン60は、ドライバーによるキースイッチ55がオンされると(ステップ100)、メインリレー30の駆動出力を停止するとともにプリチャージ駆動出力を停止する(ステップ101)。
【0034】
その後、マイコン60は、インバータ回路20に流れる電流からスイッチング素子ショートチェック(ステップ102)、相間ショートチェックを行う(ステップ105)。この処理については後述する。
【0035】
図3において、マイコン60は、ステップ102の処理によりステップ103で故障チェックの結果が良好か否か判定し、故障チェックの結果がよければステップ105に移行し、故障チェックの結果が悪ければステップ104に移行して故障確定し異常処理を実行する。
【0036】
また、マイコン60はステップ105の処理によりステップ106で故障チェックの結果が良好か否か判定し、故障チェックの結果がよければステップ109に移行し、故障チェックの結果が悪ければステップ107に移行して故障部位を特定し、108に移行して故障確定し異常処理を実行する。
【0037】
マイコン60は、ステップ109においてプリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51を制御してコンデンサ電圧を規定値以上にプリチャージ駆動を出力する。そして、マイコン60は、ステップ110でメインコンデンサ電圧がプリチャージ完了電圧以上か否か判定してメインコンデンサ電圧がプリチャージ完了電圧以上であると、ステップ111でメインリレー30をオンすべくメインリレー駆動用素子(トランジスタ)38に対しメインリレー駆動出力をオンする。このとき、メインコンデンサ40が充電されているので、突入電流を増加させないでメインリレー30を閉じることができる。
【0038】
マイコン60は、その後、プリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51をオフにしてプリチャージ駆動出力を停止し(ステップ112)し、引き続き、ステップ113で通常動作、即ち、モータ制御を行う。つまり、マイコン60は、スイッチング素子S1,S4,S6を同時にオンにしてU相電流Iuを流す。また、スイッチング素子S3,S2,S6を同時にオンにしてV相電流Ivを流す。さらに、スイッチング素子S5,S2,S4を同時にオンにしてW相電流Iwを流す。このようにして、モータインバータ10の動作として、バッテリ70(メインコンデンサ40)から直流電圧を入力して、ブリッジ接続したスイッチング素子S1〜S6がオン・オフされ、このオン・オフ動作に伴って出力側のモータ80が通電される。このとき、マイコン60において、各相で所望の電流が流れるように調整される。通常動作が終了すると、マイコン60はメインコンデンサ40に蓄えられている電荷をモータ80の巻線に流して放出する(放電する)。つまり、マイコン60は、インバータ駆動停止時において回転しないようにモータ80へ電流を流してメインコンデンサ40を放電する。
【0039】
図3のステップ102について図4〜7にて詳細を示す。図4に示すように、マイコン60はステップ200にてV相上アーム出力チェックシーケンスを実行し、ステップ201にてV相下アーム出力チェックを実行する。
【0040】
図6にV相上アーム出力チェックシーケンスを示す。この処理によりインバータ回路20における内部の下アーム側のショートのチェックが行われる(スイッチング素子S2,S6のショートの有無が判定できる)。マイコン60は、はじめにステップ400にて、チェック用電圧維持シーケンスを実行する。図5にチェック用電圧維持シーケンスを示す。図5において、マイコン60は、ステップ300でプリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51を制御してプリチャージ駆動PWM出力する。そして、図2に示すように、マイコン60はメインコンデンサ40の電圧を、バッテリ70の電圧(バッテリ電圧)よりも低く、かつ、出力ショート時にモータ駆動用素子であるスイッチング素子S1〜S6を破壊してしまう可能性のある電圧以下にする。つまり、モータ出力線のチェック用電圧制御を行う。そして、マイコン60は、ステップ301でメインコンデンサ40の電圧がモータ出力線のチェックに必要な規定値以上か否か判定して、メインコンデンサ40の電圧が規定値以上であるとステップ302に移行してプリチャージ駆動出力を停止すべくプリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51をオフする。これを、図2のt1のタイミングで示す。
【0041】
その後、マイコン60は、図6のステップ401以降に示すステップでモータのチェック動作をすべくスイッチング素子S1〜S6を制御する(図2のt2のタイミング)。つまり、ステップ401に示す検出パターンでスイッチング素子S1〜S6を制御する。なお、図5に示すチェック用電圧維持シーケンスは、他のチェック動作中にも随時行われ、メインコンデンサ40の電圧が低下した場合は図2に示すようにプリチャージ駆動PWM信号を出力して、モータ出力線のチェック用電圧を維持する。本実施形態において、メインコンデンサ40の電圧が、出力ショート時にモータ駆動用素子であるスイッチング素子S1〜S6を破壊してしまう可能性のある電圧以下で、かつ、モータ出力線のチェックに必要な規定値以上の電圧である状態をプリチャージ状態という。
【0042】
つまり、一般的なプリチャージ動作においては、キースイッチ55のオンに伴いプリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51を常時オン状態にすることにより、メインコンデンサ40の電圧をバッテリ電圧にする。これに対し、本実施形態ではプリチャージ駆動用素子(トランジスタ)51をPWM制御してバッテリ電圧よりも低く、かつ、出力ショート時にモータ駆動用素子であるスイッチング素子S1〜S6を破壊してしまう可能性のある電圧以下にする。即ち、ショートしていた場合においてもインバータを破壊させない電流になるように電圧を制御する(制限する)。
【0043】
図6に戻って、ステップ400からステップ401に移行する。
図6において、マイコン60は、ステップ401で、U相上アームのスイッチング素子S1の出力をオフ、U相下アームのスイッチング素子S2の出力をオフ、V相上アームのスイッチング素子S3の出力をパルス制御、V相下アームのスイッチング素子S4の出力をオフ、W相上アームのスイッチング素子S5の出力をオフ、W相下アームのスイッチング素子S6の出力をオフにする。そして、マイコン60はステップ402で各相の電流値を監視し、記憶しておく。その後、マイコン60はステップ403にて全相のスイッチング素子をオフにする。マイコン60はステップ404にて各相電流が検出されたか否か判定し、各相の電流値が検出されなければ、ステップ407に移行する。
【0044】
一方、マイコン60はステップ402で各相の電流値が検出されると、ステップ404からステップ405に移行する。マイコン60はステップ405において、電流検出が2回以下か否か判定して2回以下ならばステップ400に戻り、電流検出が3回以上であれば、ステップ406でNGフラグを立てる。ステップ405において異常な電流検出が3回以上検出されたらNGフラグが立つようにすることにより、誤判定を抑制することができる。
【0045】
なお、スイッチング素子S4のショートの有無については、ステップ401を実施中に、マイコン60がメインコンデンサ40の両端電圧が異常低下するか否かで判断できる。
図7は、V相下アーム出力チェックの内容を示す。この処理によりインバータ回路20における内部の上アーム側のショートのチェックが行われる(スイッチング素子S1,S5のショートの有無が判定できる)。V相上アーム出力チェックシーケンスとはステップ501のみ異なる。
【0046】
図7において、マイコン60は、ステップ501で、U相上アームのスイッチング素子S1の出力をオフ、U相下アームのスイッチング素子S2の出力をオフ、V相上アームのスイッチング素子S3の出力をオフ、V相下アームのスイッチング素子S4の出力をパルス出力、W相上アームのスイッチング素子S5の出力をオフ、W相下アームのスイッチング素子S6の出力をオフにする。その他の処理はV相上アーム出力チェックシーケンスと同じであるので説明を省略する。
【0047】
なお、スイッチング素子S3のショートの有無については、ステップ501を実施中に、マイコン60がメインコンデンサ40の両端電圧が異常低下するか否かで判断できる。
V相上アーム出力チェックシーケンスとV相下アーム出力チェックシーケンスが終了すると、図3のステップ103へ移行する。マイコン60において、ステップ103ではNGフラグが立っているか否かが判定され、NGフラグが立っていればスイッチング素子S1〜S6のいずれかが短絡故障していると判断し、ステップ104へ移行して故障確定し異常処理が行われる。異常処理としては例えば、警報ランプを点灯させる等を挙げることができる。他の処理として、異常検出信号を他の機器(ECU等)に出力する等を挙げることができる。NGフラグが立っていなければステップ105へ移行し相間ショートチェックシーケンスが実行される。
【0048】
図8は、相間ショートチェックシーケンスを示す。マイコン60において、はじめにステップ600にてU相パルス印加・V相、W相下アーム全オン出力チェックシーケンスが実行される。次に、ステップ601にてV相パルス印加・W相、U相下アーム全オン出力チェックシーケンスが実行される。次に、ステップ602にてW相パルス印加・U相、V相下アーム全オン出力チェックシーケンスが実行される。
【0049】
図9は、U相パルス印加、V相、W相下アーム全オン出力チェックの内容を示す。この処理により、出力端子間、特に、モータインバータ10の外部でのU相−V相間、U相−W相間のショートのチェックが行われる。
【0050】
図9において、マイコン60は、まずチェック用電圧維持シーケンス(ステップ400)を実行する。次に、マイコン60はステップ700で、U相上アームのスイッチング素子S1をパルス印加、U相下アームのスイッチング素子S2をオフ、V相上アームのスイッチング素子S3をオフ、V相下アームのスイッチング素子S4をオン、W相上アームのスイッチング素子S5をオフ、W相下アームのスイッチング素子S6をオンする。これにより、U相の上アーム(スイッチング素子S1)からモータ80を通して20アンペアが流れる状況にする。そして、マイコン60はステップ701で各相の電流値を監視し、記憶しておく。その後、マイコン60はステップ702にて全相のスイッチング素子をオフにする。マイコン60はステップ703にて各相の電流値がそれぞれ正常範囲内か否か判定し、各相の電流が全て正常範囲内であればステップ706へ移行する。なお、正常範囲の閾値は、モータのバラツキやモータハーネス長などを考慮し、正常時にチェックパルスを印加によって流れる最大電流値以上に設定する。なお、ステップ700におけるV相下アームおよびW相下アームのスイッチング素子S4,S6に対する制御として、U相上アームのスイッチング素子S1の駆動のためのパルス信号を反転させたパルス信号で駆動させてスイッチング素子S1がオン時にスイッチング素子S4,S6がオフになるようにしてもよい。
【0051】
一方、マイコン60はステップ703で各相の電流がそれぞれ正常範囲を超えた値が検出されると、ステップ703からステップ704へ移行する。マイコン60はステップ704において、正常範囲を超えた検出が2回以下か否か判定して2回以下ならばステップ400へ戻り、3回以上であれば、ステップ705でNGフラグを立てる。ステップ704において異常な電流検出が3回以上検出されたらNGフラグが立つようにすることにより、誤判定を抑制することができる。このNGフラグが立つという事は、U相−V相間、U相−W相間にてショートが発生していることになる。
【0052】
図10は、V相パルス印加、W相、U相下アーム全オン出力チェックの内容を示す。この処理により、出力端子間、特に、モータインバータ10の外部でのV相−U相間、V相−W相間のショートのチェックが行われる。なお、図9のU相パルス印加、V相、W相下アーム全オン出力チェックシーケンスとはステップ800のみ異なる。
【0053】
図10において、マイコン60は、ステップ800で、U相上アームのスイッチング素子S1をオフ、U相下アームのスイッチング素子S2をオン、V相上アームのスイッチング素子S3をパルス印加、V相下アームのスイッチング素子S4をオフ、W相上アームのスイッチング素子S5をオフ、W相下アームのスイッチング素子S6をオンする。その他の処理は図9のU相パルス印加、V相、W相下アーム全オン出力チェックシーケンスと同じであるので説明を省略する。V相パルス印加、W相、U相下アーム全オン出力チェックシーケンスにおいてNGフラグが立つという事は、V相−U相間、V相−W相間にてショートが発生していることになる。なお、ステップ800におけるU相下アームおよびW相下アームのスイッチング素子S2,S6に対する制御として、V相上アームのスイッチング素子S3の駆動のためのパルス信号を反転させたパルス信号で駆動させてスイッチング素子S3がオン時にスイッチング素子S2,S6がオフになるようにしてもよい。
【0054】
図11は、W相パルス印加、U相、V相下アーム全オン出力チェックの内容を示す。この処理により、出力端子間、特に、モータインバータ10の外部でのW相−U相間、W相−V相間のショートのチェックが行われる。なお、図9のU相パルス印加、V相、W相下アーム全オン出力チェックシーケンスとはステップ900のみ異なる。
【0055】
図11において、マイコン60は、ステップ900で、U相上アームのスイッチング素子S1をオフ、U相下アームのスイッチング素子S2をオン、V相上アームのスイッチング素子S3をオフ、V相下アームのスイッチング素子S4をオン、W相上アームのスイッチング素子S5をパルス印加、W相下アームのスイッチング素子S6をオフする。その他の処理は図9のU相パルス印加、V相、W相下アーム全オン出力チェックシーケンスと同じであるので説明を省略する。W相パルス印加、U相、V相下アーム全オン出力チェックシーケンスにおいてNGフラグが立つという事は、W相−U相間、W相−V相間にてショートが発生していることになる。なお、ステップ900におけるU相下アームおよびV相下アームのスイッチング素子S2,S4に対する制御として、W相上アームのスイッチング素子S5の駆動のためのパルス信号を反転させたパルス信号で駆動させてスイッチング素子S5がオン時にスイッチング素子S2,S4がオフになるようにしてもよい。
【0056】
図8のステップ600,601,602が終了すると図3のステップ105が終了する。次に、マイコン60はステップ106にて、NGフラグが立っているか否かが判断される。NGフラグが立っているとステップ107へ移行する。
【0057】
図9の処理でU−V間の端子間ショート(外部ショート)、あるいは、U−W間の端子間ショート(外部ショート)が発見できる。また、図10の処理でV−U間の端子間ショート(外部ショート)、あるいは、V−W間の端子間ショート(外部ショート)が発見できる。さらに、図11の処理でW−U間の端子間ショート(外部ショート)、あるいは、W−V間の端子間ショート(外部ショート)が発見できる。これにより、異常部位を特定することができる。例えば、図9の処理により異常が検出されるとともに図10の処理で異常が検出された場合には、U−V間の端子間がショートしていることが分かる。図3のステップ107ではこの様にして故障部位特定が行われる。そして、マイコン60はステップ108に移行し、故障部位の特定結果に基づいて、警報ランプを点灯させたり外部機器に特定内容を含めて知らせる。
【0058】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)モータインバータ10は、インバータ回路20と、メインコンデンサ40と、プリチャージ回路50と、制御手段および判定手段としてのマイコン60を備える。そして、プリチャージ回路50の駆動と、モータ駆動用のスイッチング素子S1〜S6を制御し、出力ショートしていた場合にも小電流でショートを検出してハードウェアによる過電流検出回路を不要とすることができる。
【0059】
つまり、従来、インバータがオンしている状態では過大な電流が流れるので速く止めなければならずハードウェアを追加して止める。本実施形態では、プリチャージ状態で(プリチャージ回路により)ショート故障をチェックするので、即ち、電圧をコントロールするので、速く止めなくてもよい状況を作り、ソフトで止めても充分間に合う。よって、過電流を検出して即座に止める回路が不要となる(ハード構成が無くてもよい)。
【0060】
このように、制御手段としてのマイコン60は、プリチャージ状態においてインバータ回路20のスイッチング素子S1〜S6をスイッチング動作させ、そのときのインバータ回路20に流れる電流からショートの有無を判定する(短絡異常を検出する)。これにより、ハードウェアによる過電流検出回路を用いることなくショートを検出(短絡異常を検出)することができる。つまり、ハードウェアによる過電流検出回路を用いることなくショートを検出することができる。
【0061】
(2)制御手段としてのマイコン60は、メインコンデンサ40の電圧がモータを駆動させる際の電圧よりも低い電圧においてインバータ回路20のスイッチング素子S1〜S6をスイッチング動作させてショートの有無を判定(短絡異常を検出)する。これにより、出力ショート時にスイッチング素子(モータ駆動用素子)S1〜S6を破壊してしまう電圧以下でスイッチング素子S1〜S6を駆動でき、スイッチング素子S1〜S6を保護することができる。よって、低い電圧でのプリチャージ状態でショートのチェックを行うことにより過電流が流れない状態でショートを検出することができる。
【0062】
(3)マイコン60により、図4のステップ200,201の処理の実行によりインバータ回路20のスイッチング素子S1〜S6のショートの有無を判定した後に、図8のステップ600,601,602の処理を実行して出力端子間(相間)のショートの有無を判定することができる。この場合、故障箇所の特定が容易にできる。
【0063】
(4)ここで、図6,7を用いて説明したように、インバータ回路20のスイッチング素子のショートの有無を判定する際に、マイコン60によって各相の上下のアーム用スイッチング素子のうちの一つのスイッチング素子(図6ではV相上アーム用スイッチング素子S3、図7ではV相下アーム用スイッチング素子S4)を導通状態にするとともに他のスイッチング素子を非導通状態とし、このときのインバータ回路20に流れる電流(図6のステップ404の処理、図7のステップ404の処理)やメインコンデンサ40の両端電圧からインバータ回路20のスイッチング素子のショートの有無を判定することができる。つまり、インバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定する際に、制御手段は、各相の上下のアーム用スイッチング素子のうちの一つのスイッチング素子を導通状態にするとともに他のスイッチング素子を非導通状態とし、判定手段は、このときのインバータ回路に流れる電流またはコンデンサ(メインコンデンサ40)の電圧からインバータ回路のスイッチング素子のショートの有無を判定する。このように、判定手段は、プリチャージ状態においてインバータ回路20のスイッチング素子(S1〜S6)をスイッチング動作させたときのインバータ回路20に流れる電流またはコンデンサ(メインコンデンサ40)の電圧からショートの有無を判定すればよい。
【0064】
(5)また、図9,10,11を用いて説明したように、出力端子間のショートの有無を判定する際に、マイコン60によって各相の上アーム用スイッチング素子のうちのいずれかの相の上アーム用スイッチング素子(図9ではU相上アーム用スイッチング素子S1、図10ではV相上アーム用スイッチング素子S3、図11ではW相上アーム用スイッチング素子S5)および当該相以外の相の下アーム用スイッチング素子(図9ではV相下アーム用スイッチング素子S4およびW相下アーム用スイッチング素子S6、図10ではU相下アーム用スイッチング素子S2およびW相下アーム用スイッチング素子S6、図11ではU相下アーム用スイッチング素子S2およびV相下アーム用スイッチング素子S4)を予め定めた規定値の電流が流れるように制御し、このときのインバータ回路20に流れる電流から相間ショートの有無を判定することができる。
【0065】
(6)また、図9を用いて説明したように、出力端子間のショートの有無を判定する際に、マイコン60によってU相、V相、W相のうちのU相の上アーム用スイッチング素子S1を導通状態にするとともにV相およびW相の下アーム用スイッチング素子S4,S6を導通状態にし、このときのインバータ回路20に流れる電流から第1のショートの有無が判定される。また、図10を用いて説明したように、U相、V相、W相のうちのV相の上アーム用スイッチング素子S3を導通状態にするとともにU相およびW相の下アーム用スイッチング素子S2,S6を導通状態にし、このときのインバータ回路20に流れる電流から第2のショートの有無が判定される。さらに、図11を用いて説明したように、U相、V相、W相のうちのW相の上アーム用スイッチング素子S5を導通状態にするとともにU相およびV相の下アーム用スイッチング素子S2,S4を導通状態にし、このときのインバータ回路20に流れる電流から第3のショートの有無が判定される。そして、第1のショートの有無の判定結果、第2のショートの有無の判定結果、第3のショートの有無の判定結果から、ショートしている出力端子間を特定することができる。
【0066】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・インバータ回路20のスイッチング素子S1〜S6のショートの有無の判定を行うとともに出力端子間(相間)のショートの有無の判定を行ったが、これに代わり、インバータ回路20のスイッチング素子S1〜S6のショートの有無の判定のみ行ってもよい。あるいは、出力端子間(相間)のショートの有無の判定のみ行ってもよい。
【0067】
・プリチャージ回路のプリチャージ駆動用素子51をオン/オフ制御しながらモータ出力線のチェック用電圧(メインコンデンサ40の電圧)を維持して各チェックを行ったが、これに代わり、プリチャージ抵抗52の抵抗値をメインコンデンサ40の電圧が急激に上がり過ぎない程度に大きくして、プリチャージ回路のプリチャージ駆動用素子51をオンした状態でチェックを行ってもよい。
【0068】
図6,7のステップ401,501において電流値の検出有り無しで判定したが、所定の閾値を設定し、閾値を超えるか否かで判定しても良い。
図6,7,9,10,11の各ステップ405,704にて2回以下の場合に再度チェックを繰り返すようにしたが、この閾値は2回に限らない。1回でもよいし3回以上でもよい。また、繰り返しループなしで、すぐにNGフラグを立てても良い。
【0069】
図6,7,9,10,11の各ステップ404,703にて正常と判断された場合、パルス幅を変えて再度チェックするようにしてもよい。この場合、誤判断をより確実に抑制できる。
【符号の説明】
【0070】
10…モータインバータ、20…インバータ回路、30…メインリレー、40…メインコンデンサ、50…プリチャージ回路、55…キースイッチ、60…マイコン、70…バッテリ、S1…スイッチング素子、S2…スイッチング素子、S3…スイッチング素子、S4…スイッチング素子、S5…スイッチング素子、S6…スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11