(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920193
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】リレー駆動回路
(51)【国際特許分類】
H01H 47/00 20060101AFI20160428BHJP
H01H 47/04 20060101ALI20160428BHJP
H01H 47/32 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
H01H47/00 G
H01H47/04
H01H47/32 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-269445(P2012-269445)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-116197(P2014-116197A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大道寺 龍弥
【審査官】
段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−255627(JP,A)
【文献】
特開2005−038656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 47/00
H01H 47/04
H01H 47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動する電圧が印加されるリレーコイルに通電しリレー接点を作動させる為の第1スイッチと、直列接続された抵抗、及び前記リレーコイルに通電し前記リレー接点の作動状態を保持する為の第2スイッチを有し、前記第1スイッチに並列接続された保持回路とを備え、前記リレーコイルに通電しリレー接点を作動させた後は、前記第2スイッチのみをオンにするように構成してあるリレー駆動回路において、
前記リレーコイルの変動する電圧側の端子電圧を検出する検出手段と、該検出手段が検出した電圧値が所定電圧値より低いか否かを判定する判定手段とを備え、該判定手段が低いと判定したときは、前記第1スイッチをオンにするように構成してあり、前記判定手段は、前記所定電圧値より低いと判定した後は、前記検出手段が検出した電圧値が、前記所定電圧値より高い第2電圧値より高いか否かを判定しており、前記判定手段が高いと判定したときは、前記第1スイッチをオフにするように構成してあることを特徴とするリレー駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーコイルに通電しリレー接点を作動させる為の第1スイッチと、直列接続された抵抗、及びリレーコイルに通電しリレー接点の作動状態を保持する為の第2スイッチを有し、第1スイッチに並列接続された保持回路とを備え、リレー接点を作動させた後は、第2スイッチのみをオンにするリレー駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のリレー駆動回路の構成例を示すブロック図である。
このリレー駆動回路は、リレー2を駆動するものであり、リレー2のコイル3の一方の端子に車載バッテリ等の電源装置1が接続されており、コイル3の他方の端子にドレインが接続されたNチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor電界効果トランジスタ)7を備えている。トランジスタ7は寄生ダイオードを有しており、トランジスタ7のソースは接地されている。
【0003】
このリレー駆動回路は、また、トランジスタ7のゲートに一方の端子が接続されたコンデンサ6と、コイル3の他方の端子に、一方の端子が接続された抵抗5と、抵抗5の他方の端子にドレインが接続されたNチャネルMOSFET8とを備えている。トランジスタ8は寄生ダイオードを有しており、トランジスタ8のソースは接地されている。
このリレー駆動回路は、コンデンサ6の他方の端子への経路C1に、トランジスタ8のゲートへの経路C2が接続され、経路C1,C2に制御信号が入力される。
リレー接点4は、例えば、図示しない負荷への電源をオン又はオフにする。
【0004】
このような構成のリレー駆動回路では、制御信号として、リレー2のオンを指示するオン信号が経路C1,C2に入力されると、コンデンサ6の一方の端子の電圧が一時的に上昇し、トランジスタ7をオンにして、コイル3に電流が流れ始めると共に、トランジスタ8もオンになり、リレー接点4が作動する。この際、トランジスタ7がオンになっているので、トランジスタ8側には殆ど電流は流れない。
【0005】
コンデンサ6の一方の端子の電圧は、コンデンサ6への充電が進むにつれて低下し、これにより、トランジスタ7はオフになる。トランジスタ7がオフになるに伴い、抵抗5及びトランジスタ8の直列回路に印加される電圧値は上昇し、抵抗5及びトランジスタ8に流れる電流が増加し、コイル3に流れる電流は、リレー接点4の作動した状態を保持する。この保持状態で流れる電流は、抵抗5を通流する為、仮にトランジスタ7がオンを維持する場合に流れる電流よりも小さく、省電力を実現する。
【0006】
特許文献1には、半導体スイッチング素子をオンしたときのコレクタ電流によりコイル部に動作電圧以上の電圧を印加しリレーにオン動作を行わせるリレー駆動回路が開示されている。リレーのオン動作後そのオン状態を保持する場合のコイル部への印加電圧が動作電圧以下、復帰電圧以上となるように回路構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−306943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような従来の省電力を実現するリレー駆動回路では、リレーをオンにした後、抵抗によりコイルの通流電流を小さくしているので、駆動電源の電圧が低下した場合、省電力の為の抵抗等を備えていないリレー駆動回路よりも高い駆動電源の電圧で、リレーを保持できなくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、リレーをオンにした後、駆動電源の電圧が低下した場合でも、省電力の為の抵抗を備えていないリレー駆動回路と同様にリレーを保持でき、省電力が可能なリレー駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るリレー駆動回路は、変動する電圧が印加されるリレーコイルに通電しリレー接点を作動させる為の第1スイッチと、直列接続された抵抗、及び前記リレーコイルに通電し前記リレー接点の作動状態を保持する為の第2スイッチを有し、前記第1スイッチに並列接続された保持回路とを備え、前記リレーコイルに通電しリレー接点を作動させた後は、前記第2スイッチのみをオンにするように構成してあるリレー駆動回路において、前記リレーコイルの変動する電圧側の端子電圧を検出する検出手段と、該検出手段が検出した電圧値が所定電圧値より低いか否かを判定する判定手段とを備え、該判定手段が低いと判定したときは、前記第1スイッチをオンにするように構成してあ
り、前記判定手段は、前記所定電圧値より低いと判定した後は、前記検出手段が検出した電圧値が、前記所定電圧値より高い第2電圧値より高いか否かを判定しており、前記判定手段が高いと判定したときは、前記第1スイッチをオフにするように構成してあることを特徴とする。
【0011】
このリレー駆動回路では、第1スイッチと、抵抗及び第2スイッチが直列接続され、第1スイッチに並列接続された保持回路とが、リレーコイルに通電し、リレー接点を作動させることが可能な電流をリレーコイルに通流させる。リレー接点を作動させた後は、第2スイッチのみをオンにすることで、リレーコイルに通流する電流を、リレー接点の作動状態を保持することが可能な電流に抵抗により抑制して、省電力を実現する。
検出手段が、リレーコイルの変動する電圧側の端子電圧を検出し、判定手段が、検出手段が検出した電圧値が所定電圧値より低いか否かを判定する。判定手段が所定電圧値より低いと判定したときは、第1スイッチをオンにする。これにより、リレーコイルへの印加電圧が低下して、リレーコイルに通流する電流が、リレー接点の作動状態を保持できなくなる前に、電流を増加させることができ、リレー接点の予期しないリセットを防止できる。
また、判定手段は、所定電圧値より低いと判定し、その結果、省電力動作を中止した後は、検出手段が検出した電圧値が、所定電圧値より高い第2電圧値より高いか否かを判定する。判定手段が高いと判定したときは、第1スイッチをオフにして、省電力動作を再開する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るリレー駆動回路によれば、リレーをオンにした後、駆動電源の電圧が低下した場合でも、省電力の為の抵抗を備えていないリレー駆動回路と同様にリレーを保持でき、また、省電力が可能なリレー駆動回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るリレー駆動回路の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係るリレー駆動回路の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【
図3】従来のリレー駆動回路の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明に係るリレー駆動回路の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
このリレー駆動回路は、リレー2を駆動するものであり、リレー2のコイル3の一方の端子に車載バッテリ等の電源装置1のプラス電極が接続されており、コイル3の他方の端子にドレインが接続されたNチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor電界効果トランジスタ)7を備えている。トランジスタ7は、寄生ダイオードを有しており、ソースは接地されている。
【0017】
このリレー駆動回路は、また、コイル3の他方の端子に、一方の端子が接続された抵抗5と、抵抗5の他方の端子にドレインが接続されたNチャネルMOSFET8とを備えている。トランジスタ8は、寄生ダイオードを有しており、ソースは接地されている。
このリレー駆動回路は、図示しない操作部からの制御信号を受けて、トランジスタ7,8をオン又はオフに制御する制御装置9を備えており、制御装置9は、経路C1によりトランジスタ7のゲートに、経路C2よりトランジスタ8のゲートにそれぞれ接続されている。制御装置9は、コイル3の一方の端子の電圧値を検出する電圧検出器10を内蔵している。
リレー接点4は、例えば、図示しない負荷への電源をオン又はオフにする。
【0018】
以下に、このような構成のリレー駆動回路の動作を、それを示す
図2のフローチャートを参照しながら説明する。
制御装置9は、リレー2のオンを指示する制御信号が入力されるまで待機しており(S1)、オンを指示する制御信号が入力されると、経路C1,C2にオン信号を出力して、トランジスタ7,8をオンにする(S3)。
制御装置9は、トランジスタ7,8をオンにした(S3)後、コイル3に電流が流れ、リレー接点4が作動するのに充分な時間t1待機する(S5)。
【0019】
制御装置9は、時間t1待機した(S5)後、リレー2のオンを指示する制御信号の入力が継続しているか否かを判定し(S7)、継続していれば、電圧検出器10が検出したコイル3の一方の端子の電圧値Vを読込む(S9)。
制御装置9は、次に、読込んだ電圧値Vが所定電圧値V1以上であるか否かを判定し(S11)、所定電圧値V1以上でなければ、リレー2のオンを指示する制御信号の入力が継続しているか否かを判定する(S7)。尚、所定電圧値V1は、リレー接点4が作動可能な電圧値に基づき定められている。
【0020】
制御装置9は、読込んだ電圧値Vが所定電圧値V1以上であれば(S11)、リレー接点4が作動したことを確認できたので、経路C1にオフ信号を出力して、トランジスタ7をオフにし(S13)、省電力動作を開始する。次いで、リレー2のオンを指示する制御信号の入力が継続しているか否かを判定する(S15)。尚、抵抗5の抵抗値は、読込んだ電圧値Vが所定電圧値V1以上である場合に、コイル3、抵抗5及びトランジスタ8の経路で通流する電流が、リレー接点4の作動状態を保持できるように定めてある。
制御装置9は、オンを指示する制御信号の入力が継続していれば(S15)、再度、電圧検出器10が検出したコイル3の一方の端子の電圧値Vを読込み(S17)、読込んだ電圧値Vが所定電圧値V1以上であるか否かを判定する(S19)。
【0021】
制御装置9は、読込んだ電圧値Vが所定電圧値V1以上であれば(S19)、リレー2のオンを指示する制御信号の入力が継続しているか否かを判定する(S15)。
制御装置9は、読込んだ電圧値Vが所定電圧値V1以上でなければ(S19)、経路C1にオン信号を出力して、トランジスタ7をオンにし(S21)、コイル3に通流する電流を増加させ、省電力動作を中止する。尚、これにより、トランジスタ8には、電流が殆ど流れなくなる。
【0022】
制御装置9は、次に、リレー2のオンを指示する制御信号の入力が継続しているか否かを判定し(S23)、オンを指示する制御信号の入力が継続していれば、再度、電圧検出器10が検出したコイル3の一方の端子の電圧値Vを読込む(S25)。次いで、読込んだ電圧値Vが電圧値V2(>V1)より高いか否かを判定する(S27)。尚、電圧値V2は、チャタリングを防止する為に電圧値V1より少し高目に定めてある。
【0023】
制御装置9は、読込んだ電圧値Vが電圧値V2より高ければ(S27)、経路C1にオフ信号を出力して、トランジスタ7をオフにし(S13)、省電力動作を再開する。
制御装置9は、読込んだ電圧値Vが電圧値V2より高くなければ(S27)、リレー2のオンを指示する制御信号の入力が継続しているか否かを判定する(S23)。
【0024】
制御装置9は、リレー2のオンを指示する制御信号の入力が継続していなければ(S7,15,23)、経路C1,C2にオフ信号を出力して、トランジスタ7,8をオフにし(S29)、次いで、リレー2のオンを指示する制御信号が入力されるまで待機する(S1)。
【0025】
尚、本実施の形態では、電源装置1のプラス電極からコイル3へ電流を通流させる構成で説明したが、コイル3から電源装置1のマイナス電極へ電流を通流させる構成であっても、回路素子等の極性を考慮すれば、同様の動作、作用及び効果を得ることは当然可能である。
また、電源装置1からの電源が交流であり、リレーが交流リレーである場合でも、同様にすることが可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 電源装置
2 リレー
3 コイル(リレーコイル)
4 リレー接点
7,8 トランジスタ(スイッチ、NチャネルMOSFET)
9 制御装置(判定手段)
10 電圧検出器(検出手段)