(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コイルがステータコアの内周側にはみ出すのを防止するためのはみ出し防止部がティースに設けられているステータコアの軸方向の一方側のコイルエンド側から、軸方向に沿って前記ステータコアのスロットに挿入可能に構成されているコイルであって、
前記コイルは、
軸方向の一方側のコイルエンドにおいて、前記ステータコアの内周側に折り曲げられたコイル本体と、
前記コイル本体の前記ステータコアの内周側に折り曲げられた部分に設けられ、前記ステータコアの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側から前記コイル本体を軸方向に沿って前記ステータコアのスロットに挿入する際に、前記ティースのはみ出し防止部を逃がすための逃がし部とを備え、
前記コイルは、同心巻のコイルであり、
前記コイル本体は、3相交流の各相に対応して設けられた第1コイル本体、第2コイル本体および第3コイル本体を含み、
前記第1コイル本体、前記第2コイル本体および前記第3コイル本体は、互いに異なる形状を有し、
前記第1コイル本体、前記第2コイル本体および前記第3コイル本体にそれぞれ設けられた前記逃がし部から、内周側に折り曲げられた部分の端部までの長さが、各々異なるように構成されている、コイル。
前記コイル本体の逃がし部は、軸方向から見て、前記スロット内に突出するように形成された凸部からなるはみ出し防止部の前記凸部に対応する凹部を含む、請求項1に記載のコイル。
前記コイル本体の逃がし部を構成する凹部は、前記コイル本体の前記ステータコアの内周側に折り曲げられた部分の軸方向の一方端部側から他方端部側まで貫通して延びるように溝状に設けられている、請求項2に記載のコイル。
前記コイル本体の逃がし部は、前記ステータコアの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側から前記コイル本体を軸方向に沿って前記ステータコアのスロットに挿入する際に、前記ティースの周方向の一方側および他方側の両方の側端面から前記スロット内に突出するように形成された前記はみ出し防止部を逃がすように、前記コイル本体の前記ステータコアの内周側に折り曲げられた部分における周方向の一方側および他方側の両方の側面に形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコイル。
前記第1コイル本体、前記第2コイル本体および前記第3コイル本体のうちの少なくとも1つは、軸方向の他方側のコイルエンドにおいて、前記ステータコアの外周側へ折り曲げられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコイル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
まず、
図1〜
図7を参照して、本実施形態による電動機100の構成について説明する。本実施形態では、回転電機の一例であるラジアル型の電動機100を説明する。
【0017】
図1に示すように、電動機100は、固定部であるステータ1と、回転部であるロータ2(一点鎖線参照)とを備えている。ロータ2は、シャフト21(一点鎖線参照)と、ロータコア22(一点鎖線参照)と、図示しない複数の永久磁石とを含み、シャフト21を中心に回転可能となっている。
【0018】
ステータ1は、複数のスロット11を有するステータコア1aと、各スロットに装着された複数のコイル1bとを含んでいる。ステータコア1aは、円筒形状に形成され、内周側で半径方向Bの内側に延びる複数のティース12を有する。ティース12は、ステータコア1aの周方向Cに沿って等角度間隔で設けられており、このティース12の間の部分がスロット11である。
【0019】
ここで、本実施形態では、
図6に示すように、ステータコア1aのティース12には、コイル1bがステータコア1aの内周側にはみ出すのを防止するためのはみ出し防止部12aが設けられている。具体的には、はみ出し防止部12aは、軸方向から見て、ティース12の内周側の端部から、スロット11内に周方向に突出するように形成された凸部からなる。なお、はみ出し防止部12a(凸部)は、軸方向から見て、たとえば、略半円形状を有する。また、はみ出し防止部12aは、ティース12の周方向の一方側および他方側の両方の側端面からスロット11内に突出するように形成されている。これにより、スロット11は、軸方向から見て、スロット11の内周側の部分の周方向の幅W3が、その他の部分の周方向の幅W1(コイルの幅W1)に比べて小さいスロットになる。その結果、後述するコイル1bのコイル辺部(U相コイル30のコイル辺部31(
図2参照)、V相コイル40のコイル辺部41(
図3参照)、W相コイル50のコイル辺部51(
図4参照))が、ステータコア1aの内周側にはみ出すのが、はみ出し防止部12aにより防止される。また、はみ出し防止部12aは、
図9に示すように、スロット11の軸方向の一方端部側(A1方向側)から他方端部側(A2方向側)まで延びるように形成されている。
【0020】
電動機100は、3相のコイルが分布巻の同心巻で各スロット11に装着された3相交流の回転電機である。たとえば、電動機100は、8極、48スロットを有し、毎極毎相スロット数qが、q=2(=48/(3×8))の回転電機からなる。複数のコイル1bは、3相交流の各相に対応して、U相コイル30、V相コイル40およびW相コイル50の3種類のコイルから構成されている。
図2〜
図4に示すように、U相コイル30、V相コイル40およびW相コイル50は、互いに異なる形状を有している。なお、各コイルの形状の詳細については、後述する。また、U相コイル30は、「コイル」、「コイル本体」および「第1コイル本体」の一例である。また、V相コイル40は、「コイル」、「コイル本体」および「第2コイル本体」の一例である。また、W相コイル50は、「コイル」、「コイル本体」および「第3コイル本体」の一例である。
【0021】
同心巻のコイル配置は、一例としては
図5に示すものである。1つのコイル1bが間隔(
図5では4スロット分)を隔てて異なる2つのスロット11を占有し、他の相の隣接する2つのコイル1bが片側ずつ、間のスロット11に配置される。このため、各コイル1bは、
図5の右側からU相コイル30、V相コイル40、W相コイル50の順で2スロットずつ配置される。
【0022】
図6に示すように、それぞれのコイル1bは、平角導線を巻き重ねて積層した扁平な帯状のエッジワイズコイルである。具体的には、平角導線は、断面における幅W1、厚みt1(W1>t1)の略長方形断面を有する。平角導線は、スロット11内で厚み方向に1列に積層されている。これにより、コイル1bは、平角導線が積層されることにより形成された積層面fと、積層方向の端面eとを有する。積層面fの積層幅W2は、平角導線の厚みt1×積層数に略等しく、端面eの幅(コイル1bの厚み)は、平角導線の幅W1に等しい。
図1に示すように、スロット11内に配置されるそれぞれのコイル1bは、ステータコア1a(スロット11)の軸方向Aの両端から軸方向に突出(露出)する部分(コイルエンド)を有する。
【0023】
次に、各相のコイルについて具体的に説明する。以下では、円筒形状のステータコア1aの軸方向Aを「軸方向」、ステータコア1aの半径方向Bを「径方向」、ステータコア1aの周方向Cを「周方向」とする。
【0024】
図1および
図2に示すように、U相コイル30は、それぞれ異なるスロット11に挿入される一対のコイル辺部31と、コイルエンドのステータコア1aの軸方向の他方側(A1方向側)において、一対のコイル辺部31から連続した一対の折曲部32と、一対の折曲部32を連結する連結部33とを有している。
【0025】
一対の折曲部32は、同一形状を有する。具体的には、折曲部32は、スロット11から軸方向に突出したコイル辺部31がコイルエンドにおいて径方向外側で、かつ、折曲部32の先端面がステータコア1aの軸方向端面1c(以下では、コア端面1cという)側に向けて折り返される(
図1参照)ことにより形成されている。すなわち、折曲部32は、スロット11から軸方向に突出したコイル辺部31がコイルエンドにおいて径方向外側に略U字形状に折り返される(
図1参照)ことにより形成されている。
図5に示すように、折曲部32のコア端面1cからの突出高さ(最大高さ)はH1である。また、折曲部32は、折曲部32の先端面32a(
図5参照)がステータコア1aのコア端面1cの近傍の距離D1(D1<H1)の位置で、ステータコア1aと対向するように形成されている。
【0026】
図1および
図2に示すように、連結部33は、周方向に沿って延びるように(周方向に沿って円弧状に延びるように)形成され、コア端面1c近傍の折曲部32の先端部同士を連結している。また、連結部33は、エッジワイズコイルの積層面fがコア端面1cと対向し、コア端面1cと略平行になるように配置されている。また、U相コイル30のコイルエンドは、径方向から見て、一対の折曲部32と連結部33とからなる軸方向外側が開放された凹状部34を有する形状に形成されている。
図1および
図5に示すように、凹状部34の内部には、他のコイル(W相コイル50)のコイルエンドの一部が配置されている。
【0027】
また、
図2に示すように、U相コイル30は、ステータコア1aの軸方向の一方側(A2方向側)のコイルエンドにおいて、径方向内側に略L字形状に折り曲げられた一対の折曲部35と、一対の折曲部35同士を連結する連結部36とを含む。また、U相コイル30は、平角導線の積層方向に沿ってステータコア1aの径方向にV相コイル40およびW相コイル50と異なる形状になるように折り曲げられている。また、本実施形態では、U相コイル30は、ステータコア1aの軸方向の一方側(A2方向側)のコイルエンドにおいて、径方向内側に折り曲げられ、かつ、ステータコア1aの軸方向に沿ってステータコア1aの軸方向の一方側(A2方向側)のコイルエンド側からスロット11に挿入可能に構成されている。そして、U相コイル30は、U相コイル30のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分に設けられ、ステータコア1aの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側から(U相コイル30の下方から)U相コイル30を軸方向に沿ってステータコア1aのスロット11に挿入する際に、ティース12のはみ出し防止部12aを逃がすための逃がし部35aを含む。具体的には、逃がし部35aは、U相コイル30の一対の折曲部35にそれぞれ設けられている。また、
図7に示すように、U相コイル30の逃がし部35aは、軸方向から見て、スロット11内に突出するように形成された凸部からなるはみ出し防止部12aの凸部に対応する凹部からなる。また、凹部からなる逃がし部35aは、軸方向から見て、凸部からなるはみ出し防止部12aの形状(略半円形状)に対応するように、たとえば、略半円形状を有する。
【0028】
また、本実施形態では、
図2に示すように、U相コイル30の逃がし部35aを構成する凹部は、U相コイル30のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部35)の軸方向の一方端部側(A1方向側)から他方端部側(A2方向側)まで貫通して延びるように溝状に設けられている。また、U相コイル30のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部35)は、ステータコア1aの軸方向に沿って平角導線が積層されており、U相コイル30の逃がし部35aを構成する凹部は、平角導線を横切るように(軸方向に沿って)設けられている。また、
図2および
図7に示すように、U相コイル30の逃がし部35aは、ステータコア1aの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側からU相コイル30を軸方向に沿ってステータコア1aのスロット11に挿入する際に、ティース12の周方向の一方側および他方側の両方の側端面からスロット11内に突出するように形成されたはみ出し防止部12aを逃がすように、U相コイル30のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部35)における周方向の一方側および他方側の両方の側面に形成されている。
【0029】
また、折曲部35のステータコア1aの径方向内側への突出量L1は、後述するV相コイル40の折曲部43の径方向内側への突出量L2(
図3参照)、および、W相コイル50の折曲部54の径方向内側への突出量L3(
図4参照)と比べて、最も小さい。なお、突出量とは、折曲部35の径方向の外側の端部から内側の端部までの長さである。
【0030】
また、連結部36は、周方向に沿って延びるように(周方向に沿って円弧状に延びるように)形成されている。また、連結部36の周方向の長さL4は、後述するV相コイル40の連結部44の周方向の長さL5(
図3参照)およびW相コイル50の連結部55の周方向の長さL6(
図4参照)に比べて、最も大きい。また、連結部36は、エッジワイズコイルの端面eが軸方向を向き、ロータ2の軸方向端面と対向するように配置されている。
【0031】
図1および
図3に示すように、V相コイル40は、コイルエンドの他方側(A1方向側)において、スロット11から軸方向に突出した一対のコイル辺部41の先端部同士を直接連結する連結部42を含む。連結部42は、U相コイル30の折曲部32、および、後述するW相コイル50の折曲部52を跨いで、周方向に沿って延びるように(周方向に沿って円弧状に延びるように)形成されている。連結部42は、エッジワイズコイルの積層面fが軸方向を向き、ロータ2の軸方向端面と対向するように配置されている。連結部42のコア端面1cからの突出高さは、H2(
図5参照)である。
【0032】
また、V相コイル40は、コイルエンドの一方側(A2方向側)において、略S字形状の一対の折曲部43と、一対の折曲部43の先端部を連結する連結部44とを含む。また、V相コイル40は、平角導線の積層方向に沿ってステータコア1aの径方向にU相コイル30およびW相コイル50と異なる形状になるように折り曲げられている。また、本実施形態では、V相コイル40は、ステータコア1aの軸方向の一方側(A2方向側)のコイルエンドにおいて、径方向内側に折り曲げられ、かつ、ステータコア1aの軸方向に沿ってステータコア1aの軸方向の一方側(A2方向側)のコイルエンド側からスロット11に挿入可能に構成されている。そして、V相コイル40は、V相コイル40のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分に設けられ、ステータコア1aの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側から(V相コイル40の下方から)V相コイル40を軸方向に沿ってステータコア1aのスロット11に挿入する際に、ティース12のはみ出し防止部12aを逃がすための逃がし部43aを含む。具体的には、逃がし部43aは、V相コイル40の一対の折曲部43にそれぞれ設けられている。また、
図7に示すように、V相コイル40の逃がし部43aは、軸方向から見て、スロット11内に突出するように形成された凸部からなるはみ出し防止部12aの凸部に対応する凹部からなる。また、凹部からなる逃がし部43aは、軸方向から見て、凸部からなるはみ出し防止部12aの形状(略半円形状)に対応するように、たとえば、略半円形状を有する。
【0033】
また、本実施形態では、
図3に示すように、V相コイル40の逃がし部43aを構成する凹部は、V相コイル40のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部43)の軸方向の一方端部側(A1方向側)から他方端部側(A2方向側)まで貫通して延びるように溝状に設けられている。また、V相コイル40のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部43)は、ステータコア1aの軸方向に沿って平角導線が積層されており、V相コイル40の逃がし部43aを構成する凹部は、平角導線を横切るように(軸方向に沿って)設けられている。また、また、
図3および
図7に示すように、V相コイル40の逃がし部43aは、ステータコア1aの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側からV相コイル40を軸方向に沿ってステータコア1aのスロット11に挿入する際に、ティース12の周方向の一方側および他方側の両方の側端面からスロット11内に突出するように形成されたはみ出し防止部12aを逃がすように、V相コイル40のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部43)における周方向の一方側および他方側の両方の側面に形成されている。
【0034】
また、折曲部43のステータコア1aの径方向内側への突出量L2は、U相コイル30の折曲部35の径方向内側への突出量L1(
図2参照)、および、後述するW相コイル50の折曲部54の径方向内側への突出量L3(
図4参照)に比べて、最も大きい。また、折曲部43は、U相コイル30の連結部36の軸方向内側を連結部36と接触しないように通るように形成されているとともに、W相コイル50の折曲部54の軸方向内側を連結部55(
図4参照)と接触しないように通るように形成されている。
【0035】
また、連結部44の周方向の長さL5は、U相コイル30の連結部36の周方向の長さL4(
図2参照)および後述するW相コイル50の連結部55の周方向の長さL6(
図4参照)に比べて、最も小さい。また、連結部44は、エッジワイズコイルの積層面fが軸方向を向き、ロータ2の軸方向端面と対向するように配置されている。
【0036】
図1および
図4に示すように、W相コイル50は、コイルエンドの他方側(A1方向側)において、一対のコイル辺部51から連続し、径方向外側に略S字形状に折り曲げられた一対の折曲部52と、一対の折曲部52を連結する連結部53とを有している。折曲部52は、折曲部52の先端面がコア端面1cとは反対側(軸方向外側)を向いて配置されている。折曲部52は、U相コイル30の凹状部34内に配置されている。連結部53は、周方向に沿って延びるように(周方向に沿って円弧状に延びるように)形成され、U相コイル30の連結部33と軸方向に重なるように配置されている。連結部53は、エッジワイズコイルの積層面fが軸方向を向き、ロータ2の軸方向端面と対向するように配置されている。連結部53のコア端面1cからの突出高さは、H3(第1実施形態では、H3=H2)(
図5参照)である。したがって、他方側のコイルエンドにおいて、W相コイル50の連結部53とV相コイル40の連結部42とが、径方向に沿って並ぶように配置(
図1参照)されている。
【0037】
また、W相コイル50は、コイルエンドの一方側(A2方向側)において、径方向内側に略S字形状に折り曲げられた一対の折曲部54と、一対の折曲部54を連結する連結部55と含む。また、W相コイル50は、平角導線の積層方向に沿ってステータコア1aの径方向にU相コイル30およびV相コイル40と異なる形状になるように折り曲げられている。また、本実施形態では、W相コイル50は、ステータコア1aの軸方向の一方側(A2方向側)のコイルエンドにおいて、径方向内側に折り曲げられ、かつ、ステータコア1aの軸方向に沿ってステータコア1aの軸方向の一方側(A2方向側)のコイルエンド側からスロット11に挿入可能に構成されている。そして、W相コイル50は、W相コイル50のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分に設けられ、ステータコア1aの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側から(W相コイル50の下方から)W相コイル50を軸方向に沿ってステータコア1aのスロット11に挿入する際に、ティース12のはみ出し防止部12aを逃がすための逃がし部54aを含む。具体的には、逃がし部54aは、W相コイル50の一対の折曲部54にそれぞれ設けられている。また、
図7に示すように、W相コイル50の逃がし部54aは、軸方向から見て、スロット11内に突出するように形成された凸部からなるはみ出し防止部12aの凸部に対応する凹部からなる。また、凹部からなる逃がし部54aは、軸方向から見て、凸部からなるはみ出し防止部12aの形状(略半円形状)に対応するように、たとえば、略半円形状を有する。
【0038】
また、本実施形態では、
図4に示すように、W相コイル50の逃がし部54aを構成する凹部は、W相コイル50のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部54)の軸方向の一方端部側(A1方向側)から他方端部側(A2方向側)まで貫通して延びるように溝状に設けられている。また、W相コイル50のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部54)は、ステータコア1aの軸方向に沿って平角導線が積層されており、W相コイル50の逃がし部54aを構成する凹部は、平角導線を横切るように(軸方向に沿って)設けられている。また、また、
図4および
図7に示すように、W相コイル50の逃がし部54aは、ステータコア1aの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側からW相コイル50を軸方向に沿ってステータコア1aのスロット11に挿入する際に、ティース12の周方向の一方側および他方側の両方の側端面からスロット11内に突出するように形成されたはみ出し防止部12aを逃がすように、W相コイル50のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部54)における周方向の一方側および他方側の両方の側面に形成されている。
【0039】
また、折曲部54のステータコア1aの径方向内側への突出量L3は、U相コイル30の折曲部35(
図2参照)よりも大きく、V相コイル40の折曲部43(
図3参照)よりも小さい。すなわち、
図1に示すように、軸方向から見て、U相コイル30の連結部36と、W相コイル50の連結部55と、V相コイル40の連結部44とは、径方向外側から内側に向かってこの順で配置されている。
【0040】
また、折曲部54は、U相コイル30の連結部36の軸方向内側を連結部36と接触しないように通るように形成されている。そして、
図1に示すように、U相コイル30、V相コイル40およびW相コイル50は、ステータコア1aの軸方向の一方側のコイルエンドにおいて、接触せずに互いに交差するように(すなわち互いに所定の間隔を隔てた状態で)配置されている。
【0041】
また、連結部55は、周方向に沿って延びるように形成されている。また、連結部55の周方向の長さL6は、U相コイル30の連結部36の周方向の長さL4(
図2参照)よりも小さく、V相コイル40の連結部44の周方向の長さL5(
図3参照)よりも大きい。また、連結部55は、エッジワイズコイルの積層面fが軸方向を向き、ロータ2の軸方向端面と対向するように配置されている。
【0042】
このように、本実施形態では、U相コイル30、V相コイル40およびW相コイル50(すなわち、全ての相のコイル)のそれぞれのステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分には、逃がし部35a、43aおよび54aが設けられている。また、U相コイル30およびW相コイル50は、軸方向の他方側(A1側)のコイルエンドにおいて、ステータコア1aの外周側へ折り曲げられている。
【0043】
次に、
図1〜
図4および
図6〜
図9を参照して、電動機100の製造方法について説明する。
【0044】
まず、
図6に示すように、U相コイル30、V相コイル40およびW相コイル50がステータコア1aの内周側にはみ出すのを防止するためのはみ出し防止部12aがティース12に設けられているステータコア1aを準備する。次に、本実施形態では、
図2〜
図4および
図7に示すように、軸方向の一方側のコイルエンドにおいて、ステータコア1aの内周側に折り曲げられるとともに、内周側に折り曲げられた部分(折曲部35、折曲部43、折曲部54)に、ティース12のはみ出し防止部12aを逃がすための逃がし部35a(逃がし部43a、逃がし部54a)が設けられるU相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)を準備する。なお、逃がし部35a(逃がし部43a、逃がし部54a)は、平角導線を巻き重ねて逃がし部が無い状態のコイルを形成した後、たとえば、たがね等を用いて形成される。そして、
図8および
図9(
図9では、V相コイル40が示されている)に示すように、ティース12のはみ出し防止部12aを逃がし部35a(逃がし部43a、逃がし部54a)により逃がしながら、ステータコア1aの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側からU相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)を軸方向に沿って(A2方向へ)ステータコア1aのスロット11に挿入する。その後、
図1に示すように、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)の一方側のコイルエンド(逃がし部35a、逃がし部43a、逃がし部54a)が、ステータコア1aの下方(A2側)に露出した状態になるまでU相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)がスロット11に挿入され、電動機100が完成する。
【0045】
本実施形態では、上記のように、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部35、折曲部43、折曲部54)に、ステータコア1aの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側からU相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)を軸方向に沿ってステータコア1aのスロット11に挿入する際に、ティース12のはみ出し防止部12aを逃がすための逃がし部35a(43a、54a)を設けることによって、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)のスロット11への挿入の妨げとなるはみ出し防止部12aを逃がし部35a(43a、54a)により逃がすことができる。その結果、軸方向の一方側のコイルエンドにおいてステータコア1aの内周側に折り曲げられたU相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)を、容易に、軸方向に沿ってスロット11に挿入することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)の逃がし部35a(43a、54a)を、軸方向から見て、スロット11内に突出するように形成された凸部からなるはみ出し防止部12aの凸部に対応する凹部により構成する。これにより、凸部からなるはみ出し防止部12aを、凹部からなる逃がし部35a(43a、54a)により、容易に逃がすことができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)の逃がし部35a(43a、54a)を構成する凹部を、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部35、折曲部43、折曲部54)の軸方向の一方端部側から他方端部側まで貫通して延びるように溝状に設ける。これにより、凹部が貫通しないように設けられている場合と異なり、凸部からなるはみ出し防止部12aに逃がし部35a(43a、54a)が引っ掛かることなく、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)を軸方向に沿ってステータコア1aのスロット11に挿入することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)は、平角導線を巻き重ねて積層した帯状のエッジワイズコイルであり、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部35、折曲部43、折曲部54)を、ステータコア1aの軸方向に沿って平角導線を積層して構成し、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)の逃がし部35a(43a、54a)を構成する凹部を、平角導線を横切るように設ける。これにより、凹部(溝状)からなる逃がし部35a(43a、54a)を平角導線からなるU相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)に容易に形成することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、ステータコア1aの内周側に折り曲げられた軸方向の一方側のコイルエンド側からU相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)を軸方向に沿ってステータコア1aのスロット11に挿入する際に、ティース12の周方向の一方側および他方側の両方の側端面からスロット11内に突出するように形成されたはみ出し防止部12aを逃がすように、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)の逃がし部35a(43a、54a)を、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)のステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部35、折曲部43、折曲部54)における周方向の一方側および他方側の両方の側面に形成する。これにより、はみ出し防止部12aがティース12の周方向の一方側および他方側の両方の側端面に設けられていることによりコイルが内周側にはみ出すのをより抑制することができるスロット11に、容易に、U相コイル30(V相コイル40、W相コイル50)を挿入することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、U相コイル30、V相コイル40およびW相コイル50のそれぞれのステータコア1aの内周側に折り曲げられた部分(折曲部35、折曲部43、折曲部54)に、逃がし部35a、逃がし部43aおよび逃がし部54aを設ける。これにより、軸方向の一方側のコイルエンドにおいてステータコア1aの内周側に折り曲げられたU相コイル30、V相コイル40およびW相コイル50の全てを、容易に、スロット11に挿入することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、U相コイル30およびW相コイル50を、軸方向の他方側のコイルエンドにおいて、ステータコア1aの外周側へ折り曲げる。これにより、コイルが、軸方向の一方側および他方側の両方のコイルエンドにおいてステータコア1aの内周側へ折り曲げられている場合と異なり、ロータ2を容易にステータ1の内周に挿入することができる。
【0052】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
たとえば、上記実施形態では、電動機を示したが、電動機以外の発電機などの回転電機であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、平角導線を巻き重ねて積層したエッジワイズコイルを用いた例を示したが、丸線を束ねたコイルを用いてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、
図2に示す形状のコイルをU相コイルとし、
図3に示す形状のコイルをV相コイルとし、
図4に示す形状のコイルをW相コイルとする例を示したが、
図2に示す形状のコイルをV相コイルとし、
図3に示す形状のコイルをW相コイルとし、
図4に示す形状のコイルをU相コイルとしてもよい。すなわち、同じ形状のコイルが同じ相であればよい。
【0056】
また、上記実施形態では、逃がし部が、軸方向から見て、略半円形状に形成されている例を示したが、逃がし部を、略半円形状以外の形状(
図10に示す第1変形例のように略矩形形状を有する逃がし部61、
図11に示す第2変形例のように略三角形形状(くさび形状)を有する逃がし部62など)を有するように構成してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、はみ出し防止部が、軸方向から見て、略半円形状に形成されている例を示したが、はみ出し防止部を略半円形状以外の形状に形成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、はみ出し防止部を、ティースの周方向の一方側および他方側の両方の側端面からスロット内に突出するように形成するとともに、逃がし部を、コイルのステータコアの内周側に折り曲げられた部分における周方向の一方側および他方側の両方の側面に形成する例を示したが、はみ出し防止部を、ティースの周方向の一方側からのみスロット内に突出するように形成するとともに、逃がし部を、コイルのステータコアの内周側に折り曲げられた部分の周方向における一方側にのみ形成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、U相コイル30、V相コイル40およびW相コイル50の全てを軸方向の一方側のコイルエンドにおいてステータコアの内周側に折り曲げる例を示したが、コイルの一部のみをステータコアの内周側に折り曲げてもよい。この場合、軸方向の一方側のコイルエンドにおいてステータコアの内周側に折り曲げられたコイルのみ、逃がし部を設ければよい。
【0060】
また、上記実施形態では、コイルを、軸方向の一方側のコイルエンドにおいて、ステータコアの内周側に異なる方向に2回折り曲げるとともに、軸方向の他方側のコイルエンドにおいて、ステータコアの外周側に異なる方向に2回折り曲げるか(W相コイル50)、または、折り曲げない(V相コイル40)例を示したが、コイルの折り曲げ回数(コイルエンドの形状)は、これらに限られない。また、上記実施形態では、コイルを、軸方向の一方側のコイルエンドにおいて、ステータコアの内周側に1回折り曲げるとともに、軸方向の他方側のコイルエンドにおいて、ステータコアの外周側に同じ方向に2回折り曲げる(U相コイル30)例を示したが、コイルの折り曲げ回数(コイルエンドの形状)は、これに限られない。たとえば、コイル(コイル本体)を、軸方向の一方側のコイルエンドにおいて、ステータコアの内周側に1回折り曲げるとともに、軸方向の他方側のコイルエンドにおいて、ステータコアの外周側に1回折り曲げられるか、または、折り曲げないように構成してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、V相コイル40の連結部42のコア端面1cからの突出高さH2と、W相コイル50の連結部53のコア端面1cからの突出高さH3とが等しい(H2=H3)例を示したが、連結部のコア端面1cからの突出高さはこれに限られない。たとえば、W相コイル50の連結部53のコア端面1cからの突出高さH3を、V相コイル40の連結部42のコア端面1cからの突出高さH2よりも小さく(H3<H2)してもよい。また、W相コイル50の連結部53のコア端面1cからの突出高さH3を、V相コイル40の連結部42のコア端面1cからの突出高さH2よりも大きく(H3>H2)してもよい。