(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920283
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】複合ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/22 20060101AFI20160428BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
H01B11/22
G02B6/44 346
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-99128(P2013-99128)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-220138(P2014-220138A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】田口 欣司
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−129915(JP,A)
【文献】
特開昭57−146204(JP,A)
【文献】
特開2012−003852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/22
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝送するコアと該コアの周囲を覆うクラッドと該クラッドの周囲を覆う一次被覆とを有する光ファイバ素線と、
抗張力繊維群と該抗張力繊維群の各繊維の表面に形成された導電性材料の層とを含み、前記光ファイバ素線に沿って形成された導電性抗張力繊維体と、
非導電性材料からなり前記光ファイバ素線及び前記導電性抗張力繊維体の周囲を覆う二次被覆と、を備え、
前記抗張力繊維群と該抗張力繊維群の各繊維の表面に形成された導電性材料の前記層とを含む前記導電性抗張力繊維体は、前記光ファイバ素線と前記二次被覆との間に充填されており、
前記導電性抗張力繊維体の端部に接続された端子金具をさらに備える、複合ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の複合ケーブルであって、
前記導電性抗張力繊維体は、アラミド繊維群と該アラミド繊維群の各繊維の表面に形成された金属の層とを含む、複合ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気の伝送と光信号の伝送とが可能な複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、電気の伝送と光信号の伝送とが可能な複合ケーブルが提案されている。特許文献1に示される複合ケーブルは、光ファイバ素線と、絶縁電線と、それら光ファイバ素線及び絶縁電線の周囲を一括して覆う被覆とを備えている。被覆は、光ファイバ素線と絶縁電線とそれらに沿う緩衝材とを一括して覆う。緩衝材は、抗張力繊維を含む。
【0003】
光ファイバ素線は、光を伝送するコアと、そのコアの周囲を覆うクラッドと、そのクラッドの周囲を覆う被覆とを有している。また、絶縁電線は、芯線と芯線の周囲を覆う被覆とを有している。芯線は、長尺な金属部材である。従って、特許文献1に示される複合ケーブルにおいて、光ファイバ素線及び絶縁電線が備える被覆は一次被覆であり、それらを一括して覆う被覆は二次被覆である。
【0004】
電気の伝送と光信号の伝送とが必要な場合に、複合ケーブルは、省線化に寄与し、ひいては配線の省スペース化及び配線コストの低減に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−12698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、絶縁電線の芯線は、光ファイバ素線よりも耐屈曲性能が劣る。光ファイバ素線と一般的な絶縁電線とを含む従来の複合ケーブルの耐屈曲性能は、絶縁電線の耐屈曲性能と同等となる。しかしながら、より屈曲性能の高い複合ケーブルが求められている。なお、耐屈曲性能は、電線などの長尺部材が繰り返して曲げられた場合における長尺部材の耐久性の高さである。
【0007】
本発明は、電気の伝送と光信号の伝送とが可能であり屈曲性能の高い複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る複合ケーブルは、以下に示される各構成要素を備える。第1の構成要素は、光ファイバ素線である。この光ファイバ素線は、光を伝送するコアと、そのコアの周囲を覆うクラッドと、そのクラッドの周囲を覆う一次被覆とを有する。第2の構成要素は、上記光ファイバ素線に沿って形成された導電性抗張力繊維体である。この導電性抗張力繊維体は、抗張力繊維群とその抗張力繊維群の各繊維の表面に形成された導電性材料の層とを含む。第3の構成要素は、非導電性材料からなり上記光ファイバ素線及び上記導電性抗張力繊維体の周囲を覆う二次被覆である。
また、前記抗張力繊維群と該抗張力繊維群の各繊維の表面に形成された導電性材料の前記層とを含む前記導電性抗張力繊維体は、前記光ファイバ素線と前記二次被覆との間に充填されている。さらに、前記導電性抗張力繊維体の端部に接続された端子金具をさらに備える。
【0009】
第2態様に係る光ファイバケーブルは、第1態様に係る複合ケーブルの一態様である。第2態様に係る複合ケーブルにおいて、上記導電性抗張力繊維体は、アラミド繊維群とそのアラミド繊維群の各繊維の表面に形成された金属の層とを含む。
【発明の効果】
【0011】
上記の各態様において、複合ケーブルは、光信号を伝送する光ファイバ素線と、電気を伝送する導電性抗張力繊維体とを備えている。導電性抗張力繊維体において、電気は、抗張力繊維群の各繊維の表面に形成された導電性材料の層によって伝送される。即ち、上記の各態様に係る複合ケーブルは、絶縁電線の芯線のような比較的太い金属部材を備えていない。そのような複合ケーブルは、光ファイバ素線と同程度の高い屈曲性能を有する。
【0012】
また、第2態様において、上記導電性抗張力繊維体は、アラミド繊維群とそのアラミド繊維群の各繊維の表面に形成された金属の層とを含む。アラミド繊維は、引っ張り強度、耐熱性及び耐摩擦性が高く、切創及び衝撃にも強い繊維であるため、光ファイバケーブルの抗張力繊維として好適である。
【0013】
また、
第1態様において、端子金具が、導電性抗張力繊維体の端部に接続されている。そのため、導電性抗張力繊維体と電装機器とを電気的に接続することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る複合ケーブル1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に実施形態として示される複合ケーブルは、例えば、電気の伝送と光信号の伝送とが可能な車両用のケーブルとして提供される。
【0016】
図1〜3を参照しつつ、実施形態に係る複合ケーブル1について説明する。
図1に示されるように、複合ケーブル1は、後述する一次被覆23を含む光ファイバ素線2と導電性抗張力繊維体3と二次被覆4とを備えている。さらに、本実施形態における複合ケーブル1は、端子金具5も備えている。
【0017】
<光ファイバ素線>
図3に示されるように、光ファイバ素線2は、光を伝送する媒体であるコア21と、そのコア21の周囲を覆うクラッド22と、クラッド22の周囲を覆う一次被覆23とを有している。光ファイバ素線2は、コア21、クラッド22及び一次被覆23が内側から順に密接した三層構造を有している。
【0018】
コア21は、光の透過率の高い石英系ガラス又はプラスチックなどからなる細い円柱状の部材である。クラッド22は、コア21よりも屈折率がわずかに低い石英ガラス又はプラスチックなどからなる円筒状の部材である。一次被覆23は、紫外線硬化型樹脂を主成分とする合成樹脂の被覆である。
【0019】
例えば、コア21の直径は50マイクロメートルから80マイクロメートル程度であり、クラッド22の直径は120マイクロメートルから130マイクロメートル程度であり、一次被覆23の直径は240マイクロメートルから260マイクロメートル程度である。上記の寸法はあくまで一例である。
【0020】
なお、光ファイバ素線2は周知であるので、ここでは、光ファイバ素線2についての詳細な説明は省略する。
【0021】
<導電性抗張力繊維体>
導電性抗張力繊維体3は、光ファイバ素線2に沿って形成されている。導電性抗張力繊維体3は、光ファイバ素線2の補強部材であるとともに、電気の伝送媒体でもある。本実施形態における導電性抗張力繊維体3は、光ファイバ素線2の周囲を覆う状態で光ファイバ素線2に沿って形成されている。
【0022】
導電性抗張力繊維体3は、抗張力繊維群とその抗張力繊維群の各繊維の表面に形成された導電性材料の層とを含む。即ち、導電性抗張力繊維体3は、複数の導電性抗張力繊維を含む。
図4に示されるように、導電性抗張力繊維各々は、非導電性の抗張力繊維31と、抗張力繊維31の表面に形成された導電性材料の層32とにより構成されている。導電性抗張力繊維体3は、複合ケーブル1の取り扱いの際に受ける張力が光ファイバ素線2に作用することを緩和し、光ファイバ素線2が過剰に大きな曲率で曲がることを防止する。
【0023】
複合ケーブル1の高い引っ張り強度が要求される場合には、導電性抗張力繊維体3を構成する各繊維としてアラミド繊維などの合成樹脂の繊維が採用される。表面に金属層が形成されたアラミド繊維は、例えば、アラミド繊維に対して無電解メッキ工法による銅メッキが施されることによって製造される。なお、導電性抗張力繊維体3自体は、導電性アラミド繊維などとして市販もなされている周知の繊維体である。
【0024】
導電性抗張力繊維体3は、光ファイバ素線2と二次被覆4との間に充填されている。導電性抗張力繊維体3は、その両端部の間の電気抵抗が要求仕様を満たす密度で光ファイバ素線2と二次被覆4との間に充填される。
【0025】
複合ケーブル1において、導電性抗張力繊維体3は、1本の電気の伝送路を形成している。車両において、電装機器間の電気信号のラインにおける接地ラインは、車体フレームなどの比較的大きな金属部材に接続されることによって筐体接地される。そのため、1本の複合ケーブル1における導電性抗張力繊維体3の両端部各々が2つの電装機器各々に接続された場合、導電性抗張力繊維体3は、接地ラインと併せて一対の電気信号のラインとして機能する。
【0026】
<二次被覆>
二次被覆4は、光ファイバ素線2の周囲を覆う被覆である。二次被覆4は、非導電性の合成樹脂からなる。二次被覆4は、複合ケーブル1の柔軟性と耐摩耗性とを確保するために、比較的大きな厚みで形成された柔軟性の高い合成樹脂で構成されている。
【0027】
二次被覆4は、例えば耐熱性及び難燃性に優れたポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)などの合成樹脂の被覆であることが考えられる。この場合、二次被覆4は、例えば0.5ミリメートルから1ミリメートル程度の厚みで形成される。ポリプロピレン及びポリエチレンは、可塑剤を含まない合成樹脂である点で好ましい。
【0028】
<端子金具>
図2に示されるように、端子金具5は、導電性抗張力繊維体3の端部に接続された金具である。
図2に示される例では、端子金具5は、導電性抗張力繊維体3の端部に圧着された圧着端子である。
【0029】
<効果>
複合ケーブル1は、光信号を伝送する光ファイバ素線2と、電気を伝送する導電性抗張力繊維体3とを備えている。導電性抗張力繊維体3において、電気は、抗張力繊維群の各繊維の表面に形成された金属メッキなどの導電性材料の層によって伝送される。
【0030】
即ち、複合ケーブル1は、絶縁電線の芯線のような比較的太い金属部材を備えていない。従って、複合ケーブル1は、光ファイバ素線2と同程度の高い屈曲性能を有する。なお、導電性抗張力繊維体3において、抗張力繊維群の各繊維及び各繊維に形成された薄い金属の層は屈曲性能が高い。
【0031】
また、複合ケーブル1において、導電性抗張力繊維体3が、アラミド繊維群とそのアラミド繊維群の各繊維の表面に形成された銅メッキなどの金属層とを含めば好適である。アラミド繊維は、引っ張り強度、耐熱性及び耐摩擦性が高く、切創及び衝撃にも強い繊維であるため、光ファイバ素線2を保護する抗張力繊維として好適である。
【0032】
また、端子金具5が、導電性抗張力繊維体3の端部に接続されている場合、導電性抗張力繊維体3と電装機器などの接続相手とを電気的に接続することが容易となる。
【0033】
<その他の応用例>
複合ケーブル1において、端子金具5が圧着端子以外の金具であることも考えられる。例えば、端子金具5が、環状に形が整えられた導電性抗張力繊維体3の端部が被せられる金属の枠部と、その枠部に被せられた導電性抗張力繊維体3の端部を枠部との間に挟み込む環状のかしめ金具と、を含む金具であることも考えられる。この場合、電装機器などの接続相手の接続端が、端子金具における金属の枠部内に嵌め入れられる。これにより、導電性抗張力繊維体3と接続相手とが電気的に接続される。
【0034】
なお、本発明に係る複合ケーブルは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された実施形態及び応用例を自由に組み合わせること、或いは実施形態又は応用例を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 複合ケーブル
2 光ファイバ素線
3 導電性抗張力繊維体
4 二次被覆
5 端子金具
21 コア
22 クラッド
23 一次被覆
31 抗張力繊維
32 導電性材料の層