(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920348
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6566 20140101AFI20160428BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20160428BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20160428BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20160428BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20160428BHJP
【FI】
H01M10/6566
H01M2/10 E
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6557
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-520620(P2013-520620)
(86)(22)【出願日】2012年6月18日
(86)【国際出願番号】JP2012065491
(87)【国際公開番号】WO2012173270
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2011-135428(P2011-135428)
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 喜弘
【審査官】
杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−90056(JP,A)
【文献】
特開2001−283937(JP,A)
【文献】
特開2004−47426(JP,A)
【文献】
特開2006−12847(JP,A)
【文献】
特開2006−73461(JP,A)
【文献】
特開2010−15949(JP,A)
【文献】
特開2010−140802(JP,A)
【文献】
特開2010−186681(JP,A)
【文献】
特開2011−238457(JP,A)
【文献】
特開2012−15071(JP,A)
【文献】
特開2012−15072(JP,A)
【文献】
特表2001−515196(JP,A)
【文献】
特表2013−519189(JP,A)
【文献】
発明協会公開技報公技番号2008−502337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して配置された第1及び第2の単電池と、
前記第1及び第2の単電池の間に配置された、冷却媒体を通過させる冷却流路を設けるためのスペーサと
を備え、
前記スペーサは、
厚さ方向の中心から前記第1の単電池に向けて突出して前記第2の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第1の突出部と、前記厚さ方向の中心から前記第2の単電池に向けて突出して前記第1の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第2の突出部とを、前記冷却流路と交差する方向に交互に繰り返して設けた第1の蛇行部と、
前記第1の蛇行部に対して前記冷却流路の方向に隣接して配置され、前記第1及び第2の突出部を前記第1の蛇行部とは異なる位相で前記冷却流路と交差する方向に交互に繰り返して設けた第2の蛇行部と
を備えることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記第1の突出部は前記第1の単電池に当接し、前記第2の突出部は前記第2の単電池に当接していることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記第1の蛇行部の個々の前記第1の突出部と、前記第2の蛇行部の個々の前記第2の突出部とが、前記冷却流路の方向に整列され、
前記第1の蛇行部の個々の前記第2の突出部と、前記第2の蛇行部の前記第1の突出部とが、前記冷却流路の方向に整列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の組電池。
【請求項4】
前記第1及び第2の蛇行部が前記冷却流路の方向に交互に繰り返して配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の組電池。
【請求項5】
前記スペーサに、前記冷却流路に交差する方向に延びるスリットを形成し、
前記第1の蛇行部と前記第2の蛇行部を前記スリットの前記冷却流路の上流側と下流側に形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の組電池。
【請求項6】
前記スペーサは、前記冷却流路に交差する方向に延びる連結部をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の組電池。
【請求項7】
前記スペーサは、前記第1及び第2の蛇行部の前記冷却流路に交差する方向の一端に第1桟部、他端に第2桟部をさらに備え、
前記連結部は前記第1桟部と前記第2桟部を連結することを特徴とする請求項6に記載の組電池。
【請求項8】
前記第1及び第2の突出部の前記冷却流路の上流側端部は、角部が面取りされていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の組電池。
【請求項9】
前記第1及び第2の突出部の前記冷却流路の下流側端部は、角部が面取りされていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池が組み合わされた組電池、詳しくは各単電池間に配設されるスペーサの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組電池の各単電池の間に、冷却媒体を通過させる冷却流路を形成するためにスペーサを配設し、この冷却流路を通過する冷却媒体によって、充放電の繰り返しにより発熱する単電池を冷却する構造が知られている。
【0003】
特許文献1には、電池モジュール間に配設されたスペーサが開示されている。このスペーサには、隣接する2つの電池モジュールのうち第1の電池モジュールと当接する第1当接部と第2の電池モジュールと当接する第2当接部とが交互に設けられ、それによって第1の電池モジュールと冷却媒体が接触する冷却流路と、第2の電池モジュールと冷却媒体が接触する冷却流路とが交互に形成されている。また、このスペーサは、該第1当接部と第2当接部の間に電池モジュールが膨張したときの冷却流路の狭小化を防止する壁を備える。
【0004】
特許文献2には、電池モジュールの間に波板状のスペーサを配設し、このスペーサと電池モジュールの隙間により冷却流路を形成したものが開示されている。
【0005】
特許文献3には、冷却流路を形成されたスペーサを二次電池間に配設することと、二次電池間に波板材を介装することが提案されている。特に、特許文献3には、横桟と縦壁を組み合わせた構造で、交互に配置された2種類の冷却流路を形成するスペーサが開示されている。
【0006】
特許文献4には、蓄電セルと対向する面に直線状に延びる凹部と凸部を交互に並設し、凹部と蓄電セルの間の空間に冷却流路を形成したセルホルダ(スペーサ)が開示されている。
【0007】
特許文献5には、ベース壁の両面に溝部を設け、ベース壁の一端の支持枠のスリットから溝部を通って他端の支持枠のスリットに至る冷却流路を形成した電池ホルダー(スペーサ)が開示されている。
【0008】
特許文献6には、凸条と溝とが交互に並ぶ凹凸状として、溝に冷却媒体を通すスペーサが開示されている。
【0009】
しかし、いずれの先行技術文献に記載のスペーサについても、スペーサによって形成された複数の冷却流路のそれぞれの冷却流路を通る冷却媒体は、隣接する単電池のうちの一方の電池にのみ接触し、他方の単電池に接触しない。つまり、個々の冷却流路を通過する冷却媒体は、隣接する単電池のうちの一方の単電池のみを冷却するのであって、隣接する単電池の両方を冷却するのではない。このために、特に隣接する単電池の発熱量が異なる場合、発熱量が高い方の単電池と接触する冷却媒体と、発熱量が低い方の単電池と接触する冷却媒体とで冷却効率に差が生じ、効率的な冷却が行えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−073461号公報(段落0025-0027,
図2)
【特許文献2】特開2004−031364号公報(段落0056,
図5)
【特許文献3】特開2004−047426号公報(段落0035-0041,
図7)
【特許文献4】特開2010−140802号公報(段落0028-0029,
図2)
【特許文献5】特開2010−186681号公報(段落0017-0018,
図2)
【特許文献6】特開2010−015949号公報(段落0022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、隣接する単電池の両方を効率よく冷却することができる冷却流路を形成するスペーサを備えた組電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、互いに隣接して配置された第1及び第2の単電池と、前記第1及び第2の単電池の間に配置された、冷却媒体を通過させる冷却流路を設けるためのスペーサとを備え、前記スペーサは、厚さ方向の中心から前記第1の単電池に向けて突出して前記第2の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第1の突出部と、前記厚さ方向の中心から前記第2の単電池に向けて突出して前記第1の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第2の突出部とを、前記冷却流路と交差する方向に交互に繰り返して設けた第1の蛇行部と、前記第1の蛇行部に対して前記冷却流路の方向に隣接して配置され、前記第1及び第2の突出部を前記第1の蛇行部とは異なる位相で前記冷却流路と交差する方向に交互に繰り返して設けた第2の蛇行部とを備えることを特徴とする組電池を提供する。
【0013】
隣接して配置された第1の蛇行部と第2の蛇行部は、第1及び第2の突出部の配置の位相が異なる。そのため、第1の蛇行部の第1の突出部と第2の単電池との間の隙間を通過した冷却媒体は、次に第2の蛇行部の第2の突出部と第1の電池との間の隙間を通過する。また、第1の蛇行部の第2の突出部と第1の単電池との間の隙間を通過した冷却媒体は、次に第2の蛇行部の第1の突出部と第2の電池との間の隙間を通過する。つまり、冷却流路を流れる冷却媒体は、隣接して配置された第1の単電池と第2の単電池とに交互に接触する。言い換えれば、隣接して配置された第1の単電池と第2の単電池に同じ冷却媒体の流れが接触する。このため、隣接する第1及び第2の単電池間で冷却媒体による冷却効率を均一化でき、第1及び第2の単電池間の温度差を小さくできる。特に、隣接する第1及び第2の単電池の発熱量が異なる場合であっても、単電池間での冷却効率の均一化により、両方の単電池を効率よく冷却できる。
【0014】
冷却流路を流れる冷却媒体は、隣接して配置された第1の単電池と第2の単電池に交互に接触する。つまり、冷却媒体は、実質的に直線状の経路で冷却流路を流れるのではなく、第1の単電池に接触ないし衝突することで第2の単電池へ向きを変えて流れ、また、第2の単電池に接触ないし衝突することで第1の単電池に向けて向きを変えて流れる。言い換えれば、冷却媒体は第1及び第2の単電池との接触ないし衝突を繰り返しつつ、蛇行した経路で冷却流路を流れる。そのため、冷却流路中の冷却媒体の流れは、層流又はそれに近い態様ではなく、乱流又はそれに近い態様である。乱流状態で冷却流路を流れる冷却媒体により、第1及び第2の単電池を効率的に冷却できる。
【0015】
第1の単電池に向けて突出する第1の突部と第2の単電池との間に形成された隙間と、第1の突部とは逆に第2の単電池に向けて突出する第2の突部と第1の単電池との間に形成された隙間とに冷却媒体が流れ、これらの隙間が冷却流路として機能する。そのため、第1及び第2の単電池との間に冷却流路として機能する上で必要な断面積の隙間を確保しつつ、スペーサを薄型化できる。
【0016】
具体的には、前記第1の突出部は前記第1の単電池に当接し、前記第2の突出部は前記第2の単電池に当接している。
【0017】
また、前記第1の蛇行部の個々の前記第1の突出部と、前記第2の蛇行部の個々の前記第2の突出部とが、前記冷却流路の方向に整列され、前記第1の蛇行部の個々の前記第2の突出部と、前記第2の蛇行部の前記第1の突出部とが、前記冷却流路の方向に整列されている。
【0018】
さらにまた、前記第1及び第2の蛇行部が前記冷却流路の方向に交互に繰り返して配置されている。
【0019】
この構成により、冷却流路を流れる冷却媒体は、第1の単電池への接触ないし衝突と、第2の単電池への接触ないし衝突とを交互に繰り返す。第1又は第2の単電池への接触ないし衝突の度に冷却流路を流れる冷却媒体の乱流化が促進され、冷却媒体による第1及び第2の単電池の冷却効率が向上する。
【0020】
前記スペーサに、前記冷却流路に交差する方向に延びるスリットを形成し、前記第1の蛇行部と前記第2の蛇行部を前記スリットの前記冷却流路の上流側と下流側に形成してもよい。
【0021】
スリットを設けることで、第1の蛇行部から第2の蛇行部に向かう冷却媒体は冷却流路に交差する方向に撹拌される。この撹拌により、冷却媒体の乱流化が促進され、第1及び第2の単電池の冷却効率がさらに向上する。
【0022】
前記スペーサは、前記冷却流路に交差する方向に延びる連結部をさらに備えてもよい。
【0023】
一例としては、前記スペーサは、前記第1及び第2の蛇行部の前記冷却流路に交差する方向の一端に第1桟部、他端に第2桟部をさらに備え、前記連結部は前記第1桟部と前記第2桟部を連結する。
【0024】
連結部を設けることで、第1及び第2の蛇行部の冷却流路の方向に直角な方向の剛性を補強できる。単電池の膨張のために、スペーサが第1及び第2の単電池から圧縮力を受けても、第1及び第2の蛇行部の冷却流路の方向に直角な方向の伸びを防止し、第1及び第2の単電池間の間隔が狭まるのを防止できる。第1及び第2の単電池間の間隔を維持することで、冷却流路の流路断面積を確保し、冷却効率を維持できる。
【0025】
前記第1及び第2の突出部の前記冷却流路の上流側端部と下流側端部の少なくともいずれか一方は、角部が面取りされていることが好ましい。この構成により、冷却媒体は第1及び第2の突出部を圧損なく円滑に通過できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の組電池が備えるスペーサは、第1及び第2の蛇行部を備え、これらの蛇行部は第1及び第2の突出部が異なる位相で配置されている。この構成により、単電池との間に冷却流路として機能する上で必要な断面積の隙間を確保しつつ、スペーサを薄型化できる。また、単電池間での冷却効率の均一化により、単電池を効率よく冷却できる。さらに、冷却流路の冷却媒体の流れを乱流又はそれに近い態様とすることで、第1及び第2の単電池を効率的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図6】
図1の組電池の冷却媒体の流れを示す斜視図。
【
図7】(a)は
図2のスペーサのVIIa−VIIa線断面図、(b)はVIIb−VIIb線断面図。
【
図8】(a)はスペーサの他の実施形態を示す斜視図、(b)はVIIIb−VIIIb線断面図。
【
図9】(a)はスペーサのさらに他の実施形態を示す斜視図、(b)はIXb−IXb線断面図。
【
図10】(a)はスペーサのまたさらに他の実施形態を示す斜視図、(b)はXb−Xb線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。本明細書では、説明の便宜上、
図1に示すように、水平面内で互い直交するX,Y軸と、これらのX,Y軸に直交する鉛直面内のZ軸とを設定する。X,Y,Z軸に平行な方向をそれぞれ、X方向、Y方向、Z方向という。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係る組電池1を示す。この組電池1は、スタックケース2に複数の単電池3を並設し、各単電池3の間にスペーサ4を配設して構成されている。
【0030】
スタックケース2は鋼板から製造されている。スタックケース2は、X方向及びY方向に延びる矩形の底板5と、底板5のX方向の両端にZ方向に立ち上がる左壁部6a,右壁部6bとから構成されている。スタックケース2のY方向の両端及びZ方向の上端は開放されている。
【0031】
底板5は、中央部がX方向の両端部よりも僅かに高く形成された電池載置部7を有している。
【0032】
左壁部6a及び右壁部6bは、外壁8と内壁9からなっている。外壁8の下端は、底板5のX方向の端部と連続するように、底板5と一体に形成されている。内壁9の下端は底板5に接合されている。外壁8と内壁9の上端部10は互いに接近する方向にL字形に屈曲して接合されている。
【0033】
左壁部6aの外壁8と内壁9の間の空間は、第1冷媒通路11を形成している。右壁部6bの外壁8と内壁9の間の空間も、同様に、第2冷媒通路12を形成している。
【0034】
左壁部6aの内壁9には第1冷媒通路11に連通する複数の第1開口部13がY方向にスペーサ4の配列間隔と同じ一定間隔で形成されている。右壁部6bの内壁9にも、左壁部6aの第1開口部13と同様な第2開口部14が形成されている。
【0035】
壁部6a,6bの上端部10,10には、図示しない蓋を固定するためのナット15が固着されている。
【0036】
単電池3は、リチウムイオン電池などの非水二次電池からなっている。単電池3は、前記スタックケース2の左壁部6aと右壁部6bの間に収容可能なX方向の幅と、Y方向の奥行きと、Z方向の高さとを有している。単電池3は、上面に正と負の電極21,22を有している。Y方向に隣接する単電池3の電極21,22は図示しないバスバーにより連結される。単電池3は、文字通り単一の電池であってもよいし、X方向に列設して複数の小電池のユニットで構成されていてもよい。
【0037】
スペーサ4は、合成樹脂から成型されている。スペーサ4は、X方向に延びる上桟23と下桟24を有し、これらの上桟23と下桟24の間に蛇行部25が形成されている。蛇行部25には、上桟23から下桟24までZ方向に延びる第1スリット26と第1スリットよりも幅の狭い第2スリット27が形成されている。第1スリット26は、X方向の中央部と両端部の3箇所に形成されている。第2スリット27は、中央の第1スリット26と図において左側の第1スリット26の間の4箇所と、中央の第1スリット26と図において右側の第1スリット26の間の4箇所と、左側の第1スリット26と蛇行部25の左端との間に1箇所と、右側の第1スリット26と蛇行部25の右端との間に1箇所とに、合計10箇所に形成されている。各第1スリット26の内部には、スリット26の上縁すなわち上桟23と下縁すなわち下桟24とを連結するストレート部(連結部)28がZ方向に真直に延びるように形成されている。前記第1スリット26、第2スリット部27及びストレート部28は、Z方向に限らず、後述する冷却流路31,32に交差する方向に延びていればよい。
【0038】
スペーサ4の大きさは、X方向の幅が単電池3の幅とほぼ同じかそれよりも小さく、Z方向の高さも、単電池3の高さとほぼ同じかそれよりも大きく或いは小さくなるように、決定されている。スペーサ4のY方向の寸法すなわち厚さは、隣接する単電池3間のY方向の間隔を決定する。スペーサ4の上桟23と下桟24のZ方向の寸法すなわち高さは、蛇行部25をできるだけ広くして後述する冷却流路31,32を確保するために、出来るだけ小さい方が好ましい。
【0039】
スペーサ4の蛇行部25は、第2スリット27を挟んで両側、すなわち、後述する冷却流路31,32の上流側と下流側にそれぞれ位置する第1の蛇行部25aと第2の蛇行部25bから構成されている。第1スリット26を挟んで両側には、第2の蛇行部25bがそれぞれ配置されている。
【0040】
図4を参照すると、第1の蛇行部25aには、第1の突出部41と第2の突出部42がZ方向(後述する冷却流路31,32に直角な方向)に連続して交互に繰り返して設けられている。第1の突出部41はスペーサ4の厚さ方向の中心Cに対してX方向から見て左側の単電池3に向けて突出している。第1の突出部41とX方向から見て右側の単電池3との隙間が冷却通路30として機能する。第2の突出部42はスペーサ4の厚さ方向の中心Cに対してX方向から見て右側の単電池3に向けて突出している。第2の突出部42とX方向から見て左側の単電池3との隙間が冷却通路31として機能する。
図4に最も明瞭に表れているように、X方向から見ると、第1の蛇行部25は第1及び第2の突出部41,42が連続して交互に繰り返し設けられていることで、ジグザグ状ないし蛇行した形状を呈している。
【0041】
図5を参照すると、第2の蛇行部25bも、第1の蛇行部25aと同様に、第1及び第2の突出部41,42がZ方向に連続して交互に繰り返して設けられている。第1の突出部41とX方向から見て右側の単電池3との隙間が冷却流路32として機能し、第2の突出部42とX方向から見て左側の単電池3との隙間が冷却流路31として機能する。第2の蛇行部25bは、第1及び第2の突出部41,42の配置の位相が第1の蛇行部25aと逆(180°異なる)に設定されている。つまり、第1の蛇行部25aの個々の第1の突出部41と、第2の蛇行部25bの個々の第2の突出部42とが、X方向(冷却通路30,31の方向)の同一線上に整列して配置されている。また、第1の蛇行部25aの個々の第2の突出部42と、第2の蛇行部25bの個々の第1の突出部41とが、X方向(冷却通路31,32の方向)の同一線上に整列して配置されている。
【0042】
図4及び
図5は、便宜上、単電池3とスペーサ4の間に隙間があるように記載されているが、実際には第1の突出部41は左側の単電池3に接触し、第2の突出部42は右側の単電池3に接触している(後述する
図7も同様)。
【0043】
第1及び第2の突出部41,42を連続して交互に設けた第1の蛇行部25a及び第2の蛇行部25bは、片方の面に着目すると以下の形状を有する。以下、第1の蛇行部25aを例に説明するが、第2の蛇行部25bについても同様である。
【0044】
第1の蛇行部25aは、Y方向から見た第1面(
図4において左側)に、X方向に延びる凹部29と凸部30がZ方向に交互に形成され、第1面の裏側の第2面(
図4において右側)にも、X方向に延びる凹部29と凸部30がZ方向に交互に形成されている。第1の蛇行部25aは、本実施形態では、平坦な凹部29と凸部30が傾斜部29aを介して連続している形状であるが、平坦な凹部と凸部が水平部を介して連続している形状であってもよいし、凹部と凸部が波形に連続している形状であってもよい。
【0045】
第1面の凹部29と第2面の凸部30は、互いに相補する形状であり、すなわち、第1面の凹部29が第2面の凸部30を形成している。同様に、第1面の凸部30と第2面の凹部29は、互いに相補する形状であり、すなわち、第1面の凸部30が第2面の凹部29を形成している。第1面の凹部29は第1面と対向する単電池3の冷却流路31を形成し、第1面の凸部30は第2面と対向する単電池3と接触している。同様に、第2面の凹部29は第2面と対向する単電池3の冷却流路32を形成し、第2面の凸部30は第1面と対向する単電池3と接触している。
【0046】
スペーサ4の各凹部29のX方向の両端部に、斜面の面取り33(
図7参照)が形成されている。これにより、冷却媒体の流れの圧損が小さくなり、冷却流路31,32における冷却媒体の流れが円滑になる。
【0047】
スペーサ4の第1スリット26のX方向の幅W1は、
図3に示すように、スペーサ4の剛性を保つために、出来るだけ小さい方が好ましい。また、第1スリット26の数は、実施例のように3カ所が好ましいが、それ以上であってもよいし、中央に1カ所、又は両端に2カ所でもよい。
【0048】
同様に、スペーサ4の第2スリット27のX方向の幅W2は、
図3に示すように、スペーサ4の剛性を保つために、出来るだけ小さい方が好ましい。また、第2スリット27の数は、任意であるが、実施例の数には限られない。
【0049】
スペーサ4のストレート部28は、本実施形態では矩形の断面を有しているが、円形の断面、楕円形の断面でもよい。
【0050】
スペーサ4のストレート部28のX方向の幅S(
図3参照)は、第1スリット26の幅Wより小さければよく、Z方向の伸びに対する引張強度と、全体の剛性を考慮して決定すればよい。ストレート部28のY方向の肉厚Tは、
図7(a)に示すように、冷却流路31,32の流路抵抗を小さくするために、好ましくは凹部29の深さよりも小さく、さらに好ましくは、蛇行部25のY方向の肉厚と同じかそれよりも薄いことが好ましい。
【0051】
スペーサ4のストレート部28は、スペーサ4のY方向の寸法すなわち肉厚の中央部に位置することが好ましい。
【0052】
スペーサ4のストレート部28の冷却流路31,32の上流側端部または下流側端部の少なくともいずれか一方は、角部が丸みの面取り34が形成されている。これにより、冷却媒体の流れの圧損が小さくなり、冷却流路31,32における冷却媒体の流れが円滑になる。
【0053】
図4及び
図5を参照すると、スペーサ4の厚さt1は冷却流路31,32の深さdとスペーサ4の肉厚thの和に相当する。つまり、第1及び第2の突出部41,42を冷却流路31,32に直角な方向に連続して交互に繰り返して設けた蛇行部25を採用することで、単電池3との間に冷却流路31,32として機能する上で必要な断面積の隙間を確保しつつ、スペーサ4を薄型化できる。
【0054】
次に、以上の構成からなる組電池1の特にスペーサ4の作用について説明する。
【0055】
図6に示すように、スタックケース2の左壁部6aの第1冷媒通路11に導入された冷媒は、それぞれ内壁9の第1開口部13からスペーサ4の第1面と第2面の凹部29に流入する。
【0056】
第1開口部13からスペーサ4の第1面の最初の第1の蛇行部25aの凹部29(第1の蛇行部25aの第2の突出部42と左側の単電池3との間の隙間)に流入した冷媒は、当該凹部29が形成する冷却流路31に沿ってX方向に流れ、第1面と対向する単電池3(左側の単電池3)を冷却する。第1の蛇行部25aの凹部29を離れた冷媒は、第2スリット27を介して第2の蛇行部25bの凹部29(第2の蛇行部25bの第1の突出部41と右側の単電池3との間の隙間)に流入する。第2の蛇行部25bの凹部29に流入した冷媒は、当該凹部29が形成する冷却流路32に沿ってX方向に流れ、第2面と対向する単電池3(右側の単電池3)を冷却する。第2の蛇行部25bの凹部29を離れた冷媒は、第1スリット26を介して次の第2の蛇行部25bの第2面の凹部29に流入した後、再び第2スリット27を介して次の第1の蛇行部25aの第1面の凹部29に流入し、同様の流れを繰り返す。
【0057】
同様に、第1開口部13からスペーサ4の第2面の最初の第1の蛇行部25aの凹部29(第1の蛇行部25aの第1の突出部41と右側の単電池3との間の隙間)に流入した冷媒は、当該凹部29が形成する冷却流路32に沿ってX方向に流れ、第2面と対向する単電池3を冷却する。第1の蛇行部25aの凹部29を離れた冷媒は、第2スリット27を介して第2の蛇行部25bの凹部29(第2の蛇行部25bの第2の突出部42と左側の単電池3との間の隙間)に流入する。第2の蛇行部25bの凹部29に流入した冷媒は、当該凹部29が形成する冷却流路32に沿ってX方向に流れ、第1面と対向する単電池3を冷却する。第2の蛇行部25bの凹部29を離れた冷媒は、第1スリット26を介して次の第2の蛇行部25bの第1面の凹部29に流入した後、再び第2スリット27を介して次の第1の蛇行部25aの第2面の凹部29に流入し、同様の流れを繰り返す。
【0058】
このようにして、冷却媒体はX方向に流れる間に、第1の蛇行部25aの冷却流路31と第2の蛇行部25bの冷却流路32を交互に流れ、スペーサ4の第1面と第2面とに対向する単電池3に交互に接触する。言い換えれば、隣接して配置された2つの単電池3に同じ冷却媒体の流れが接触する。このため、これら隣接する2つの単電池3間で冷却媒体による冷却効率を均一化でき、単電池3間の温度差を小さくできる。特に、隣接する2つの単電池3の発熱量が異なる場合であっても、単電池3間での冷却効率の均一化により、両方の単電池3を効率よく冷却できる。
【0059】
冷却流路31,32を流れる冷却媒体は、隣接して配置された2つの単電池3に交互に接触する。つまり、冷却媒体は、実質的に直線状の経路で冷却流路を流れるのではなく、一方の単電池3に接触ないし衝突することで他方の単電池3へ向きを変えて流れ、また、他方の単電池3に接触ないし衝突することで一方の単電池3に向けて向きを変えて流れる。言い換えれば、冷却媒体は隣接する2つの単電池3との接触ないし衝突を繰り返しつつ、蛇行した経路で冷却流路を流れる。そのため、
図7(a),(b)に概念的に示すように、冷却流路中の冷却媒体の流れは、層流又はそれに近い態様ではなく、乱流又はそれに近い態様である。乱流状態で冷却流路31,32を流れる冷却媒体により、単電池3を効率的に冷却できる。
【0060】
蛇行部25は、第1及び第2突出部41,42の配置の位相が互いに逆である第1の蛇行部25aと第2の蛇行部25bを、冷却流路31,32の方向に交互に繰り返して配置した構成である。そのため、冷却流路31,32を流れる冷却媒体は、一方の単電池3への接触ないし衝突と、他方の単電池3への接触ないし衝突とを交互に繰り返す。単電池3への接触ないし衝突の度に冷却流路31,32を流れる冷却媒体の乱流化が促進され、冷却媒体による単電池3の冷却効率が向上する。
【0061】
前述のように第2スリット27の両側に第1の蛇行部25aと第2の蛇行部25bが配置されている。第1の蛇行部25aにより形成された冷却流路31,32から第2スリット27に流入した冷却媒体はZ方向(冷却流路31,32の直交する方向)に撹拌され、撹拌後の冷媒が第2の蛇行部25bにより形成された冷却流路31,32に流入する。この撹拌により、冷却媒体の乱流化が促進され、単電池3の冷却効率がさらに向上する。
【0062】
図7(a),(b)に概念的に示すように、凹部29を流出した冷媒の流れがストレート部28に流入する際に隣接する単電池3の一方の側と他方の側に分流され、ストレート部28から流出する際に合流する。そのため、凹部29の底側を流れていた冷媒と凹部29の開口側の単電池3に近接して流れていた冷却媒体の流れの入れ替えが生じ、これによっても冷却効率が向上する。
【0063】
スペーサ4の第1の蛇行部25aと第2の蛇行部25bの冷却流路31,32を交互に通過した冷媒は、スタックケース2の右壁部6bの第2開口部14を通って、第2冷媒通路14に流出する。
【0064】
ストレート部28を設けることで、蛇行部25のZ方向の剛性が補強されている。充放電の繰り返しにより、単電池3が膨張すると、隣接する単電池3,3はスペーサ4を押圧する。これにより、スペーサ4の第1及び第2の蛇行部25a,25bは押し潰されてZ方向に伸びようとするが、ストレート部28が突っ張ってこれを防止する。スペーサ4の蛇行部25の伸びが防止されるため、隣接する単電池3の間の間隔が一定に保たれ、隣接する組電池3間の距離が狭まることがなくなり、冷却効率を維持することができる。
【0065】
前記実施形態は、種々変更することができる。
【0066】
例えば、前記実施形態では、第1スリット26とストレート部28を設けたが、ストレート部28を無くし、第1スリット26を第2スリット27と同じ形とし、
図8に示すように、全て同じスリット27を形成してもよい。
【0067】
前記実施形態では、第1スリット26と第2スリット27を形成してこれらのスリット26,27を介して第1の蛇行部25aと第2の蛇行部25bをX方向に隣接させたが、
図9,10に示すように、スリットを設けないで第1の蛇行部25aと第2の蛇行部25bを隣接させてもよい。
【0068】
図9は、
図2と同様に、凹部29と凸部30が傾斜部29aを介してZ方向に連続し、傾斜部29aを介して隣接する第1の蛇行部25aと第2の蛇行部25bがX方向に連結されている。
【0069】
また、
図10は、凹部29と凸部30が水平部29bを介してZ方向に連続し、水平部29bを介して隣接する第1の蛇行部25aと第2の蛇行部25bがX方向に連結されている。いずれの実施形態も、スリットがないだけ、スペーサ4の剛性が高まるとともに、冷却流路31,32を流れる冷媒の流動抵抗が少なくなるという利点がある。
【0070】
実施形態では、スペーサ4の各蛇行部25の突出部41,42は、それぞれ単電池3に直接的に当接ないし接触している。しかし、スペーサ4とその両側に配置された単電池3の間に介在物を配置し、この介在物が突出部41,42と単電池3との間に位置してもよい。つまり、突出部41,42は介在物を介して単電池と間接的に当接ないし接触してもよい。このような介在物は例えば絶縁性を有するシート材があるが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1 組電池
2 単電池
4 スペーサ
25a 第1蛇行部
25b 第2蛇行部
27 第2スリット
29 凹部
30 凸部
31 冷却流路
32 冷却流路
33 面取り