特許第5920359号(P5920359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5920359ゴム組成物、ゴム弾性体の製造方法およびタイヤの製造方法並びにブロック共重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920359
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ゴム弾性体の製造方法およびタイヤの製造方法並びにブロック共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20160428BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160428BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160428BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20160428BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20160428BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20160428BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   C08L53/02
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08L21/00
   C08F297/04
   C08C19/25
   B60C1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-547212(P2013-547212)
(86)(22)【出願日】2012年11月29日
(86)【国際出願番号】JP2012080937
(87)【国際公開番号】WO2013081053
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-263606(P2011-263606)
(32)【優先日】2011年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】田中 了司
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−523666(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00396780(EP,A1)
【文献】 国際公開第2004/099278(WO,A1)
【文献】 特開2011−006543(JP,A)
【文献】 特開2008−231207(JP,A)
【文献】 特開2008−231208(JP,A)
【文献】 特開2008−231197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L53、21、B60C1
C08F8、297、C08K3
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−1)と、共役ジエン化合物に由来の構造単位からなる、または共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−2)とからなるブロック共重合体(A)、
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、前記ブロック共重合体(A)以外のスチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレンα−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴムから選ばれる少なくとも1種の重合体(B)、並びに、
シリカおよびカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種のフィラー(C)
を含有し、
前記ブロック共重合体(A)中の前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度は、前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度より低温であり、
前記ブロック共重合体(A)は、前記重合体ブロック(a−2)側の末端に、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ピペラジル基およびチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基、若しくはこれらの官能基がオニウム塩化された官能基、ヒドロカルビルオキシシリル基、またはシラノール基を有し、
前記ブロック共重合体(A)は、ASTM D3418に準拠して測定したときに、−100〜20℃の範囲において互いに5℃以上離れた2つのガラス転移温度が観測され、 前記ブロック共重合体(A)と前記重合体(B)との合計を100質量%としたときに、当該ブロック共重合体(A)の割合が10質量%以上であり、
前記ブロック共重合体(A)は、前記重合体ブロック(a−1)の重量平均分子量が5万〜40万、前記重合体ブロック(a−2)の重量平均分子量が4万〜40万のものであることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(A)における前記2つのガラス転移温度のうち、一方が前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度で、他方が前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度であり、前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度が−60〜20℃、前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度が−100℃〜−30℃であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記重合体ブロック(a−1)は、全構造単位中の芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の割合が20質量%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
架橋剤を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のゴム組成物を架橋処理することを特徴とするゴム弾性体の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載のゴム組成物を架橋処理することによってゴム弾性体よりなるトレッドを製造することを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項7】
共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−1)と、共役ジエン化合物に由来の構造単位からなる、または共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−2)とからなるブロック共重合体であって、
前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度は、前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度より低温であり、
前記重合体ブロック(a−2)側の末端に、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ピペラジル基およびチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基、若しくはこれらの官能基がオニウム塩化された官能基、ヒドロカルビルオキシシリル基、またはシラノール基を有し、
ASTM D3418に準拠して測定したときに、−100〜20℃の範囲において互いに5℃以上離れた2つのガラス転移温度が観測され、
前記2つのガラス転移温度のうち、一方が前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度で、他方が前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度であり、前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度が−60〜20℃、前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度が−100℃〜−30℃であり、
前記重合体ブロック(a−1)の重量平均分子量が5万〜40万、前記重合体ブロック(a−2)の重量平均分子量が4万〜40万のものであることを特徴とするブロック共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタイヤのトレッド用として好適なゴム組成物、このゴム組成物から得られるゴム弾性体の製造方法、およびタイヤの製造方法、並びにゴム組成物に用いられるブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車の低燃費化に対する要求はより過酷なものとなりつつある。このような要求に対応するために、タイヤ性能についても転がり抵抗の更なる減少が求められてきている。タイヤの転がり抵抗を下げる手段としては、タイヤ構造の最適化による手段の他に、トレッドを構成するゴム弾性体として、より発熱性の低いものを用いる手段が最も一般的に検討されている。
このような発熱性の少ないゴム弾性体を得るために、従来、シリカやカーボンブラックを充填剤とするゴム組成物が検討されており、このようなゴム組成物としては、例えば、有機リチウム化合物を用いたアニオン重合で得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端が、充填剤と相互作用する官能基を含有する化合物によって変性された変性共役ジエン系重合体をゴム成分として含有してなるものが提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
一方、低転がり抵抗性とウエットスキッド抵抗性とのバランスが良好なゴム弾性体が得られるゴム組成物としては、高いガラス転移温度を有する重合体ブロックおよび低いガラス転移温度を有する重合体ブロックよりなり、低いガラス転移温度を有する重合体ブロックの末端が官能基を含有する化合物によって変性された変性ブロック共重合体と、カーボンブラックとを含有してなるものが提案されている(特許文献2参照。)。
【0004】
しかしなから、上記のゴム組成物においては、使用する充填剤がカーボンブラックに限定され、しかも、低転がり抵抗性とウエットスキッド抵抗性とのバランスは改善されるものの、低転がり抵抗性およびウエットスキッド抵抗性の両方に優れたゴム弾性体が得られない、という問題がある。
また、充填剤としてシリカを用いた場合に、低転がり抵抗性とウエットスキッド抵抗性とのバランスに優れたゴム弾性体が得られるゴム組成物が提案されているが、さらなる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−124472号公報
【特許文献2】特開2001−98116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、充填剤としてシリカおよびカーボンブラックのいずれを用いた場合でも、低転がり抵抗性およびウエットスキッド抵抗性の両方に優れ、しかも、機械的強度および耐摩耗性に優れたゴム弾性体が得られるゴム組成物およびこのゴム組成物に用いられるブロック共重合体を提供することにある。
本発明の他の目的は、低転がり抵抗性およびウエットスキッド抵抗性の両方に優れ、しかも、機械的強度および耐摩耗性に優れたゴム弾性体の製造方法およびタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のゴム組成物は、共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−1)と、共役ジエン化合物に由来の構造単位からなる、または共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−2)とからなるブロック共重合体(A)、
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、前記ブロック共重合体(A)以外のスチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレンα−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴムから選ばれる少なくとも1種の重合体(B)、並びに、
シリカおよびカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種のフィラー(C)
を含有し、
前記ブロック共重合体(A)中の前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度は、前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度より低温であり、
前記ブロック共重合体(A)は、前記重合体ブロック(a−2)側の末端に、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ピペラジル基およびチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基、若しくはこれらの官能基がオニウム塩化された官能基、ヒドロカルビルオキシシリル基、またはシラノール基を有し、
前記ブロック共重合体(A)は、ASTM D3418に準拠して測定したときに、−100〜20℃の範囲において互いに5℃以上離れた2つのガラス転移温度が観測され、 前記ブロック共重合体(A)と前記重合体(B)との合計を100質量%としたときに、当該ブロック共重合体(A)の割合が10質量%以上であり、
前記ブロック共重合体(A)は、前記重合体ブロック(a−1)の重量平均分子量が5万〜40万、前記重合体ブロック(a−2)の重量平均分子量が4万〜40万のものであることを特徴とする。
【0008】
本発明のゴム組成物においては、前記ブロック共重合体(A)における前記2つのガラス転移温度のうち、一方が前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度で、他方が前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度であり、前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度が−60〜20℃、前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度が−100℃〜−30℃であることが好ましい。
また、前記重合体ブロック(a−1)は、全構造単位中の芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の割合が20質量%以上であることが好ましい。
【0011】
また、本発明のゴム組成物においては、架橋剤とを含有することが好ましい。
【0012】
本発明のゴム弾性体の製造方法は、上記のゴム組成物を架橋処理することを特徴とする。
【0013】
本発明のタイヤの製造方法は、上記のゴム組成物を架橋処理することによってゴム弾性体よりなるトレッドを製造することを特徴とする。
【0014】
本発明のブロック共重合体は、共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−1)と、共役ジエン化合物に由来の構造単位からなる、または共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−2)とからなるブロック共重合体であって、
前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度は、前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度より低温であり、
前記重合体ブロック(a−2)側の末端に、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ピペラジル基およびチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基、若しくはこれらの官能基がオニウム塩化された官能基、ヒドロカルビルオキシシリル基、またはシラノール基を有し、
ASTM D3418に準拠して測定したときに、−100〜20℃の範囲において互いに5℃以上離れた2つのガラス転移温度が観測され、
前記2つのガラス転移温度のうち、一方が前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度で、他方が前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度であり、前記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度が−60〜20℃、前記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度が−100℃〜−30℃であり、
前記重合体ブロック(a−1)の重量平均分子量が5万〜40万、前記重合体ブロック(a−2)の重量平均分子量が4万〜40万のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゴム組成物によれば、ゴム成分としてブロック共重合体(A)および重合体(B)を含有してなるため、充填剤としてシリカおよびカーボンブラックのいずれを用いた場合においても、充填剤が重合体(A)中だけでなく、重合体(B)中にも存在することが可能となり、より均一なゴム組成物を得ることができる。その結果、低転がり抵抗性およびウエットスキッド抵抗性の両方に優れ、しかも、機械的強度および耐摩耗性に優れたゴム弾性体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分として特定のブロック共重合体(A)およびこの特定のブロック共重合体(A)以外の重合体(B)が含有され、フィラー(C)としてシリカおよびカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種が含有され、例えばタイヤのトレッドを構成するゴム弾性体を製造する場合には、通常、架橋剤が含有される。
【0018】
<ブロック共重合体(A)>
本発明のゴム組成物においてゴム成分として含有されるブロック共重合体(A)は、共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−1)と、共役ジエン化合物に由来の構造単位からなる、または共役ジエン化合物に由来の構造単位および芳香族ビニル化合物に由来の構造単位からなる重合体ブロック(a−2)とからなるものである。
【0019】
共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中では、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが好ましい。
また、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、tert−ブトキシジメチルシリルスチレンおよびイソプロポキシジメチルシリルスチレンなどを、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中では、これらの中では、スチレンが好ましい。
【0020】
ブロック共重合体(A)は、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ピペラジル基およびチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基、若しくはこれらの官能基がオニウム塩化された官能基、ヒドロカルビルオキシシリル基、またはシラノール基(以下、これらを「特定の官能基」という。)を有するものとされる。ここで、アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基および3級アミノ基のいずれであってもよい。本発明のゴム組成物においては、この特定の官能基を、重合体ブロック(a−1)および重合体ブロック(a−2)のいずれか一方が有していることが好ましく、重合体ブロック(a−2)が有していることが更に好ましい。
【0021】
特定の官能基をブロック重合体(A)に導入する方法としては、重合体ブロック(a−2)を得るための単量体をリビングアニオン重合した後、重合停止剤として特定の官能基を有する化合物(以下、「特定の官能基導入用化合物」という。)を用いて重合を停止する方法、重合体ブロック(a−1)を得るための単量体または重合体ブロック(a−2)を得るための単量体と、この単量体と共重合可能な特定の官能基を有する単量体(以下、「特定の官能基導入用単量体」という。)とを共重合させる方法などを挙げることができる。
【0022】
特定の官能基導入用化合物の具体例としては、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N−〔3−(トリメトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−トリメチルシリルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−4−トリメチルシリルピペラジン、N−トリエトキシシリルプロピルピリジン、N−トリメトキシシリルプロピルピリジン、2−(トリメトキシシリル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾ−ル、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾ−ル、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾ−ル、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾ−ル、ビス−(3−ジメチルアミノプロピル)−ジメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、
S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのヒドロカルビルオキシシランが挙げられる。
【0023】
また、特定の官能基導入用単量体の具体例としては、例えば、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジエチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジプロピルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジブチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジメトキシアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジエトキシアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジプロポキシアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジブトキシアミノフェニル)−1−フェニルエチレンなどが挙げられる。
【0024】
また、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ピペラジル基およびチオール基については、オニウム生成剤によってオニウム塩化されていてもよい。
このようなオニウム生成剤としては、例えばハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物、ハロゲン化アルミニウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ジルコニウム化合物、ハロゲン化ゲルマニウム化合物、ハロゲン化亜鉛化合物、ハロゲン化ガリウム化合物等のハロゲン化金属、硫酸エステル、リン酸エステル、炭酸エステル、硝酸エステル、カルボン酸、スルホン酸、弗酸、塩酸、臭酸、沃酸、硫酸、硝酸、炭酸、燐酸等の無機酸、フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等の無機酸塩、カルボン酸、スルホン酸等の有機酸などが用いられる。
【0025】
オニウム生成剤の具体例としては、四塩化ケイ素、四塩化スズ、トリメチルシリルクロライド、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、四塩化チタン、チタノセンジクロライド、四塩化ジルコニウム、ジルコノセンジクロライド、四塩化ゲルマニウム、三塩化ガリウム、塩化亜鉛、硫酸ジエチル、硫酸ジメチル、ラウレス硫酸マグネシウム、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ニトロセルロース、ニトログリセリン、ニトログリコール、蟻酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、アクリル酸、クロトン酸、コハク酸、グルタル酸、イタコン酸、酒石酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、β−メルカプトプロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、弗酸、塩酸、臭酸、沃酸、硫酸、硝酸、炭酸、燐酸、フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等が挙げられる。
これらのオニウム生成剤は、オニウムになり得る基をオニウム化させることが可能であるという観点から、いずれも同様の作用を有するものであり、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
オニウム生成剤と水を接触させ、オニウム構造を形成させる方法としては、特に制限はなく、例えば、(i)特定の官能基導入用化合物を用いて重合を停止した後、または、重合体ブロック(a−1)若しくは重合体ブロック(a−2)を得るための単量体と、特定の官能基導入用単量体とを共重合させた後、重合体溶液中に水を直接添加して混合する方法、(ii)特定の官能基導入用化合物を用いて重合を停止した後、または、重合体ブロック(a−1)若しくは重合体ブロック(a−2)を得るための単量体と、特定の官能基導入用単量体とを共重合させた後、アルコール等の水及び有機溶剤の両方に溶解可能な有機溶剤に水を溶解させてなるものを重合体溶液中に添加して混合する方法が挙げられる。また、ブロック共重合体(A)の製造方法においては、共役ジエン系重合体の製造における公知の脱溶媒(例えば、スチームストリッピング等)および乾燥の操作により、変性共役ジエン系重合体を回収することができる。そこで、(iii )特定の官能基導入用化合物を用いて重合を停止した後、または、重合体ブロック(a−1)若しくは重合体ブロック(a−2)を得るための単量体と特定の官能基導入用単量体とを共重合させた後におけるスチームストリッピングの工程で、脱溶媒と同時に、重合体溶液および/または重合体と、水とを混合する方法もまた、オニウム構造を形成させる方法として挙げられる。これらの中でも、(iii )特定の官能基導入用化合物を用いて重合を停止した後、または、重合体ブロック(a−1)若しくは重合体ブロック(a−2)を得るための単量体と特定の官能基導入用単量体とを共重合させた後におけるスチームストリッピングの工程で脱溶媒と同時に、重合体溶液および/または重合体と、水とを混合する方法が、効率的なオニウム構造形成の観点から特に好ましい。
【0026】
本発明のゴム組成物において、ブロック共重合体(A)は、ASTM D3418に準拠して測定したときに、−100〜20℃の範囲において互いに5℃以上、好ましくは10℃以上離れた2つのガラス転移温度が観測されるものである。
上記2つのガラス転移温度は、一方が重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度であり、他方が重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度である。
重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度は−60〜20℃であることが好ましく、より好ましくは−50〜10℃である。
重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度は−100℃〜−30℃であることが好ましく、より好ましくは−90〜−40℃である。
【0027】
重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度が−60℃未満である場合には、ウェットスキッド抵抗性が著しく悪化する。一方、重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度が20℃を超える場合には、低ヒステリシスロス特性が著しく悪化する。
また、重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度が−100℃未満である場合には、ウェットスキッド抵抗性が著しく悪化する。一方、重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度が−30℃を超える場合には、低ヒステリシスロス特性が著しく悪化する。
また、重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度と重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度との差が5℃未満である場合には、低ヒステリシスロス特性や引っ張り強度が悪化する。
重合体ブロック(a−1)、重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度は、それぞれの全構造単位中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の割合、および1,2−ビニル結合の含有量を変化させることによりコントロールすることができる。
【0028】
また、重合体ブロック(a−1)の全構造単位中の芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の割合は20〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜55質量%である。この割合が20質量%未満である場合には、破壊特性やウェットスキッド抵抗性が著しく悪化するおそれがある。
【0029】
また、重合体ブロック(a−2)の全構造単位中の芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の割合は30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以下である。この割合が30質量%を超える場合には、低ヒステリシロス特性が悪化する。
【0030】
また、ブロック共重合体(A)においては、共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2−ビニル結合の含有量が30〜70mol%であることが好ましい。1,2−ビニル結合の含有量が過小である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体におけるウェットグリップ性能と転がり抵抗とのバランスが悪化するおそれがある。一方、1,2−ビニル結合の含有量が過大である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体が耐摩耗性が著しく小さいものとなるおそれがある。
ここに、共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2−ビニル結合の含有量は、500MHz、 1H−NMRスペクトルから算出することができる。
【0031】
また、ブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(a−1)の重量平均分子量が5万〜40万、重合体ブロック(a−2)の重量平均分子量が5万〜40万、ブロック共重合体(A)全体の重量平均分子量が10万〜80万のものであることが好ましい。
【0032】
本発明のゴム組成物においては、ブロック共重合体(A)と重合体(B)との合計を100質量%としたときに、ブロック共重合体(A)の割合が10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20〜90質量%である。この割合が過小である場合には、ウェットスキッド抵抗性や引張り強度が著しく悪化する。一方、この割合が過大である場合には、低ヒステリシスロス特性や引張り強度が悪化する。
【0033】
このようなブロック共重合体(A)を製造するための好ましい方法としては、下記(1)または下記(2)の方法が挙げられる。
【0034】
(1)炭化水素溶媒中において、有機アルカリ金属および有機アルカリ土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を開始剤として用いて、共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物をリビングアニオン重合させることにより、活性末端を有するプレポリマーを合成する第1重合工程と、
第1重合工程で得られたプレポリマーの活性末端を重合開始点として、共役ジエン化合物、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをリビングアニオン重合させることにより、活性末端を有する未変性ブロック共重合体を合成する第2重合工程と、
第2重合工程で得られた未変性ブロック共重合体の活性末端に、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ピペラジル基およびチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するヒドロカルビルオキシシランよりなる重合停止剤を反応させる重合体変性工程とを経由する方法。
(2)炭化水素溶媒中において、有機アルカリ金属および有機アルカリ土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を開始剤として用いて、共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物をリビングアニオン重合させることにより、活性末端を有するプレポリマーを合成する第1重合工程と、
第1重合工程で得られたプレポリマーの活性末端を重合開始点として、共役ジエン化合物、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをリビングアニオン重合させることにより、活性末端を有する未変性ブロック共重合体を合成する第2重合工程と、
第2重合工程で得られた未変性ブロック共重合体の活性末端に、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ピペラジル基およびチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するヒドロカルビルオキシシランよりなる重合停止剤を反応させることにより、変性ブロック共重合体を合成する重合体変性工程と、
重合体変性工程で得られた変性ブロック共重合体における官能基をオニウム生成剤によってオニウム塩化するオニウム塩化工程とを経由する方法。
【0035】
上記(1)および上記(2)の方法に用いられる炭化水素溶媒の具体例としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、シクロへキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロヘキセンなどが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、開始剤として用いられる有機アルカリ金属および有機アルカリ土類金属としては、特に制限はないが、有機リチウム化合物、及びリチウムアミド化合物を好適例として挙げることができる。前者の有機リチウム化合物を用いる場合には、重合開始末端に炭化水素基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
上記有機リチウム化合物としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有するものが好ましく、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等を挙げることができる。これらの中で、n−ブチルリチウム及びsec−ブチルリチウムが好ましい。
一方、リチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムモルホリド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等を挙げることができる。これらの中で、カーボンブラックやシリカに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジド、リチウムピペリジドが好適である。
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、二級アミンとリチウム化合物とから予め調製したものを重合開始剤として使用することが多いが、重合系中(in−situ)で調製することもできる。
【0037】
また、上記(1)および上記(2)の方法においては、得られるブロック共重合体(A)において、1,2−ビニル結合の含有量を調整するために、反応系に、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、2−(2−エトキシエトキシ)−2−メチルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、トリメチルアミン、キヌクリジン、カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、トリフェニルホスフィン、テトラヒドロピラン、ジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、キノリンなどのエーテル類及び三級アミン類などのビニル含量調整剤を添加することができる。
このようなビニル含量調整剤の使用量は、前記有機アルカリ金属および前記有機アルカリ土類金属1モル当量当たり、0.005〜1000モル程度の範囲であることが好ましい。
【0038】
<重合体(B)>
本発明のゴム組成物においてゴム成分として含有される重合体(B)は、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブロック共重合体(A)以外のスチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレンα−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴムから選ばれる少なくとも1種よりなるものである。
また、重合体(B)は、重合体ブロック(a−1)と非相溶で、重合体ブロック(a−2)と相溶であることが好ましい。
また、重合体(B)は、重合体ブロック(a−2)との混合物のガラス転移温度が、重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度よりも5℃以上、好ましくは10℃以上低いことが好ましい。
【0039】
ここで、「相溶」とは、ガラス転移温度が単一であることを意味し、「非相溶」とは、ガラス転移温度が複数存在することを意味する。
従って、重合体ブロック(a−1)および重合体ブロック(a−2)との相溶性は、ブロック共重合体(A)のガラス転移温度を測定することにより知ることができる。
また、重合体(B)と重合体ブロック(a−2)との混合物のガラス転移温度は、重合体(A)と重合体(B)との混合物のガラス転移温度を測定することにより求めることができる。
【0040】
例えば、重合体(B)が重合体ブロック(a−1)と非相溶であることにより、引張り強度などの破壊強度が悪化することを防止することができる。
また、重合体(B)が重合体ブロック(a−2)と非相溶であっても、低ヒステリシスロス特性の悪化を防止することができるが、重合体(B)が重合体ブロック(a−2)と相溶であることにより、低ヒステリシスロス特性の悪化防止効果がより高くなる。
また、重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度と、重合体(B)と重合体ブロック(a−2)との混合物のガラス転移温度との差が5℃以上であることにより、ウェットスキッド抵抗性が悪化することを防止することができる。
【0041】
また、重合体(B)自体のガラス転移温度は、−120〜−20℃であることが好ましく、より好ましくは−110〜−30℃である。
【0042】
<フィラー(C)>
本発明のゴム組成物にフィラー(C)として含有されるシリカは、一般的に充填剤として用いられる粒子状のものであればよいが、一次粒子径が50nm以下のものであることが好ましい。
このようなシリカの具体例としては、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることもできるが、得られるゴム弾性体における耐破壊特性の改良効果、ウェットグリップ性、および低転がり抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカを用いることが好ましい。
【0043】
本発明のゴム組成物にフィラー(C)として含有されるカーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどの各グレードのカーボンブラックを、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、優れた耐摩耗性を有するゴム弾性体が得れることから、HAF、ISAF、SAFが好ましい。
【0044】
本発明のゴム組成物において、シリカおよびカーボンブラックの含有割合は、全ゴム成分100質量部に対して10〜120質量部であることが好ましく、補強性とそれによる諸物性の改良効果の観点から、25〜100質量部であることが更に好ましい。
シリカおよびカーボンブラックの含有割合が過小である場合には、引張り強度や耐摩耗性が著しく悪化する。一方、シリカおよびカーボンブラックの含有割合が過大である場合には、低ヒステリシスロス特性が著しく悪化する。
【0045】
<架橋剤>
本発明のゴム組成物に含有される架橋剤としては、通常、硫黄が用いられる。
架橋剤の含有割合は、全ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜3質量部である。
【0046】
<その他の成分>
本発明のゴム組成物においては、ブロック共重合体(A)、重合体(B)、フィラー(C)および架橋剤の各成分の他に、必要に応じて、シランカップリング剤、オイルなどの軟化剤、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸(加硫助剤および加工助剤)、酸化亜鉛、加硫促進剤などが含有されていてもよい。
【0047】
シランカップリング剤の具体例としては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のゴム組成物においては、補強性の改善効果等の点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドを用いることが好ましい。
【0048】
このようなシランカップリング剤の含有割合は、シランカップリング剤の種類などによっても異なるが、シリカ100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは3〜15質量部である。
シランカップリング剤の含有割合が過小である場合には、カップリング剤としての効果が十分に発揮されなくなるおそれがある。一方、シランカップリング剤の含有割合が過大である場合には、ゴム成分がゲル化しやすくなるおそれがある。
【0049】
また、加硫助剤および加工助剤として用いられるステアリン酸の含有割合は、全ゴム成分100質量部に対して、通常、0.5〜5質量部である。
また、加硫促進剤としては、特に限定されないが、好ましくはM(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジサルファイド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系加硫促進剤が好適に用いられる。加硫促進剤の含有割合は、共役ジエン系ゴム100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部であり、好ましくは0.4〜4質量部である。
【0050】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上記の各成分を、例えばプラストミル、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することによって調製することができる。具体的には、上記の各成分のうち、架橋剤および加硫促進剤以外の成分を混練し、その後、得られた混練物に架橋剤および加硫促進剤を添加して更に混練することが好ましい。
【0051】
本発明のゴム組成物によれば、ゴム成分としてブロック共重合体(A)および重合体(B)を含有してなるため、充填剤としてシリカおよびカーボンブラックのいずれを用いた場合においても、低転がり抵抗性およびウエットスキッド抵抗性の両方に優れ、しかも、機械的強度および耐摩耗性に優れたゴム弾性体を得ることができる。
従って、本発明のゴム組成物は、低燃費タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤなどのタイヤのトレッドや、サイドウォール部材を得るためのゴム組成物として好適である。
【0052】
<ゴム弾性体およびタイヤ>
本発明のゴム弾性体は、上記のゴム組成物を架橋処理することによって得られるものであり、本発明のタイヤは、上記のゴム組成物を架橋処理することによって得られるゴム弾性体よりなるトレッドを有するものである。
本発明のタイヤは、上記のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。
すなわち、例えば本発明のゴム組成物(未架橋ゴム組成物)を、形成すべきタイヤの形状(具体的には、トレッドの形状)に応じて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形することにより、タイヤ用未架橋成形体を製造する。このタイヤ用未架橋成形体を例えば加硫機中で加熱加圧することによって、トレッドを製造し、このトレッドと他の部品を組み立てることにより、目的とするタイヤを製造することができる。
本発明のタイヤは、上記のゴム組成物から得られるトレッドを有するため、低転がり抵抗性およびウエットスキッド抵抗性の両方に優れ、しかも、機械的強度および耐摩耗性に優れたものである。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0054】
(1)ブロック共重合体(A)における芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来の構造単位の含有割合(以下、「結合スチレン含量」ともいう。):
500MHzの 1H−NMRによって求めた。また、重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量については、ブロック共重合体(A)全体の結合スチレン含量と重合体ブロック(a−1)の結合スチレン含量から逆算することによって算出した。
(2)ブロック共重合体(A)における共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2−ビニル結合の含有量(以下、「ビニル結合含量」ともいう。):
500MHzの 1H−NMRによって求めた。また、重合体ブロック(a−2)のビニル結合含量については、ブロック共重合体(A)全体のビニル結合含量と重合体ブロック(a−1)のビニル結合含量から逆算することによって算出した。
(3)ガラス転移温度:
ASTM D3418に準拠して測定した。
(4)重量平均分子量:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(HLC−8120GPC(商品名(東ソー社製)))を使用して得られたGPC曲線の最大ピークの頂点に相当する保持時間から、ポリスチレン換算で求めた。また、重合体ブロック(a−2)の重量平均分子量については、ブロック共重合体(A)全体の重量平均分子量と重合体ブロック(a−1)の重量平均分子量から逆算することによって算出した。
(GPCの条件)
カラム;商品名「GMHHXL」(東ソー社製)2本
カラム温度;40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/分
サンプル濃度;10mg/20ml
(5)重合体間の相溶性:
ASTM D3418に準拠してガラス転移温度測定することによって、重合体間の相溶性を判断した。
【0055】
[ブロック共重合体(A)の合成]
《合成例1》
(1)第1重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器(以下、単に「反応器」ともいう。)内に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.80mmol、スチレン112.5g、および1,3−ブタジエン262.5gを仕込んだ。反応器内の温度を35℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合温度が70℃に達した時点で反応器内の冷却を行い、反応器内の温度を70℃に維持した。
重合転化率が99%に達した後、得られたプレポリマー溶液から、重合体ブロック(a−1)の分子量およびミクロ構造測定用として、10gのプレポリマー溶液を採取した。(2)第2重合工程
次いで、反応器内にスチレン12.5gおよび1,3−ブタジエン102.5gを70℃で40分間かけて添加した。重合転化率が99%に達した後、反応器内に1,3−ブタジエン10gを更に添加し、さらに5分間重合を行った。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(3)重合体変性工程
次いで、反応器内に重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(以下、「官能基導入用化合物(1)」という。)4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、ブロック共重合体(A)を得た。このブロック共重合体(A)を「重合体(A1)」とする。
得られた重合体(A1)における共重合体ブロック(a−1)および共重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(A1)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表1に示す。
【0056】
《合成例2》
(1)第1重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.80mmol、スチレン125g、および1,3−ブタジエン175gを仕込んだ。反応器内の温度を35℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合温度が70℃に達した時点で反応器内の冷却を行い、反応器内の温度を70℃に維持した。
重合転化率が99%に達した後、得られたプレポリマー溶液から、重合体ブロック(a−1)の分子量およびミクロ構造測定用として、10gのプレポリマー溶液を採取した。(2)第2重合工程
次いで、反応器内に1,3−ブタジエン190gを70℃で40分間かけて添加した。重合転化率が99%に達した後、反応器内に1,3−ブタジエン10gを更に添加し、さらに5分間重合させた。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(3)重合体変性工程
次いで、反応器内に重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、ブロック共重合体(A)を得た。このブロック共重合体(A)を「重合体(A2)」とする。
得られた重合体(A2)における共重合体ブロック(a−1)および共重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(A2)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表1に示す。
【0057】
《合成例3》
(1)第1重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.80mmol、スチレン75g、および1,3−ブタジエン125gを仕込んだ。反応器内の温度を35℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合温度が70℃に達した時点で反応器内の冷却を行い、反応器内の温度を70℃に維持した。
重合転化率が99%に達した後、得られたプレポリマー溶液から、重合体ブロック(a−1)の分子量およびミクロ構造測定用として、10gのプレポリマー溶液を採取した。(2)第2重合工程
次いで、反応器内にスチレン50gおよび1,3−ブタジエン240gを70℃で40分間かけて添加した。重合転化率が99%に達した後、反応器内に1,3−ブタジエン10gを更に添加し、さらに5分間重合させた。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(3)重合体変性工程
次いで、反応器内に重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、ブロック共重合体(A)を得た。このブロック共重合体(A)を「重合体(A3)」とする。
得られた重合体(A3)における共重合体ブロック(a−1)および共重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(A3)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表1に示す。
【0058】
《合成例4》
(1)第1重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.80mmol、スチレン150g、および1,3−ブタジエン150gを仕込んだ。反応器内の温度を35℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合温度が70℃に達した時点で反応器の冷却を行い、反応器内の温度を70℃に維持した。
重合転化率が99%に達した後、得られたプレポリマー溶液から、重合体ブロック(a−1)の分子量およびミクロ構造測定用として、10gのプレポリマー溶液を採取した。(2)第2重合工程
次いで、反応器内にスチレン20gおよび1,3−ブタジエン170gを70℃で40分間かけて添加した。重合転化率が99%に達した後、反応器内に1,3−ブタジエン10gを更に添加し、さらに5分間重合させた。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(3)重合体変性工程
次いで、反応器内に重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、ブロック共重合体(A)を得た。このブロック共重合体(A)を「重合体(A4)」とする。
得られた重合体(A4)における共重合体ブロック(a−1)および共重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(A4)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表1に示す。
【0059】
《合成例5》
合成例2において、官能基導入用化合物(1)4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液の代わりに1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン(以下、「官能基導入用化合物(2)」という。)4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を用いたこと以外は同様にして、ブロック共重合体(A)を得た。このブロック共重合体(A)を「重合体(A5)」とする。
得られた重合体(A5)における共重合体ブロック(a−1)および共重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(A5)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表1に示す。
【0060】
《合成例6》
合成例2において、官能基導入用化合物(1)4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液の代わりに3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン(以下、「官能基導入用化合物(3)」という。)4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を用いたこと以外は同様にして、ブロック共重合体(A)を得た。このブロック共重合体(A)を「重合体(A6)」とする。
得られた重合体(A6)における共重合体ブロック(a−1)および共重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(A6)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表1に示す。
【0061】
《合成例7》
(1)第1重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器内に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.80mmol、スチレン125g、および1,3−ブタジエン175gを仕込んだ。反応器内の温度を35℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合温度が70℃に達した時点で反応器内の冷却を行い、反応器内の温度を70℃に維持した。
重合転化率が99%に達した後、得られたプレポリマー溶液から、重合体ブロック(a−1)の分子量およびミクロ構造測定用として、10gのプレポリマー溶液を採取した。(2)第2重合工程
次いで、反応器内に1,3−ブタジエン190gを70℃で40分間かけて添加した。重合転化率が99%に達した後、反応器内に1,3−ブタジエン10gを更に添加し、さらに5分間重合させた。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(3)重合体変性工程
次いで、反応器内に重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。
(4)オニウム塩化工程
反応後の重合体溶液に四塩化ケイ素3.71mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて5分間混合した後、更に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、ブロック共重合体(A)を得た。このブロック共重合体(A)を「重合体(A7)」とする。
得られた重合体(A7)における共重合体ブロック(a−1)および共重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(A7)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表1に示す。
【0062】
《合成例8》
合成例7において、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液の代わりに1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を用いたこと以外は同様にして、ブロック共重合体(A)を得た。このブロック共重合体(A)を「重合体(A8)」とする。 得られた重合体(A8)における共重合体ブロック(a−1)および共重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(A8)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表1に示す。
【0063】
《合成例9》
(1)第1重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器内に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.46mmol、スチレン200g、および1,3−ブタジエン200gを仕込んだ。反応器内の温度を35℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合温度が70℃に達した時点で反応器内の冷却を行い、反応器内の温度を70℃に維持した。
重合転化率が99%に達した後、得られたプレポリマー溶液から、重合体ブロック(a−1)の分子量およびミクロ構造測定用として、10gのプレポリマー溶液を採取した。(2)第2重合工程
次いで、反応器内に1,3−ブタジエン100gを70℃で40分間かけて添加した。重合転化率が99%に達した後、反応器内に1,3−ブタジエン10gを更に添加し、さらに5分間重合させた。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(3)重合体変性工程
次いで、反応容器内に重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、ブロック共重合体(A)を得た。このブロック共重合体(A)を「重合体(A9)」とする。
得られた重合体(A9)における共重合体ブロック(a−1)および共重合体ブロック(a−2)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(A9)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表1に示す。
【0064】
《比較合成例1》
(1)重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器内に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.80mmol、スチレン125g、および1,3−ブタジエン365gを仕込んだ。反応器内の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達した後、反応器内に1,3−ブタジエン10gを添加し、さらに5分間重合させた。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(2)重合停止工程
次いで、反応容器内に重合停止剤として2−エチルヘキサノール4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、官能基を有さないランダム重合体を得た。このランダム共重合体を「重合体(X1)」とする。
得られた重合体(X1)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0065】
《比較合成例2》
合成例2において、重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液の代わりに2−エチルヘキサノール4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を用いたこと以外は同様にして、官能基を有さないブロック共重合体を得た。このブロック共重合体を「重合体(X2)」とする。
得られた重合体(X2)における重合体ブロックの各々の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(X2)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0066】
《比較合成例3》
比較合成例1において、重合停止剤として2−エチルヘキサノール4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液の代わりにN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を用いたこと以外は同様にして、官能基を有するランダム共重合体を得た。このランダム共重合体を「重合体(X3)」とする。
得られた重合体(X3)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0067】
《比較合成例4》
(1)重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.80mmol、スチレン125g、および1,3−ブタジエン175gを仕込んだ。反応器内の温度を35℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合温度が70℃に達した時点で反応器の冷却を行い、反応器内の温度を70℃に維持した。
(2)重合停止工程
重合転化率が99%に達した後、反応器内に重合停止剤として2−エチルヘキサノール4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、官能基を有さないランダム共重合体を得た。このランダム共重合体を「重合体(X4)」とする。
得られた重合体(X4)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0068】
《比較合成例5》
(1)重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.80mmol、および1,3−ブタジエン190gを仕込んだ。反応器内の温度を35℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合温度が70℃に達した時点で反応器の冷却を行い、反応器内の温度を70℃に維持した。
重合転化率が99%に達した後、反応器内に1,3−ブタジエン10gを添加し、さらに5分間重合させた。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(2)重合停止工程
次いで、反応器内に重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、官能基を有する1,3−ブタジエン重合体を得た。この重合体を「重合体(X5)」とする。
得られた重合体(X5)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0069】
《比較合成例6》
(1)第1重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.80mmol、スチレン125g、および1,3−ブタジエン175gを仕込んだ。反応器内の温度を35℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を行った。重合温度が70℃に達した時点で反応器の冷却を行い、反応器内の温度を70℃に維持した。
重合転化率が99%に達した後、得られたプレポリマー溶液から、重合体ブロックの分子量およびミクロ構造測定用として、10gのプレポリマー溶液を採取した。
(2)第2重合工程
次いで、反応器内にスチレン50g、1,3−ブタジエン140gを70℃で40分間かけて添加した。重合転化率が99%に達した後、反応器内に1,3−ブタジエン10gを更に添加し、さらに5分間重合させた。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(3)重合体変性工程
次いで、反応器内に重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、官能基を有するブロック共重合体を得た。このブロック重合体を「重合体(X6)」とする。
得られた重合体(X6)における重合体ブロックの各々の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(X6)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0070】
《比較合成例7》
(1)重合工程
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2750g、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン2.46mmol、スチレン200g、および1,3−ブタジエン290gを仕込んだ。反応器内の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム4.92mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達した時点で、1,3−ブタジエン10gを更に添加し、さらに5分間重合させた。その後、得られた未変性ポリマー溶液から、分子量およびミクロ構造測定用として10gの未変性ポリマー溶液を採取した。
(2)重合停止工程
次いで、反応器内に重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。その後、熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥処理することにより、官能基を有するランダム共重合体を得た。このランダム共重合体を「重合体(X7)」とする。
得られた重合体(X7)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0071】
《比較合成例8》
比較合成例1において、重合停止剤として2−エチルヘキサノール4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液の代わりにN−メチルピロリドン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を用いたこと以外は同様にして、ランダム共重合体を得た。このランダム共重合体を「重合体(X8)」とする。
得られた重合体(X8)の結合スチレン含量、ビニル結合含量、および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0072】
《比較合成例9》
合成例2において、重合停止剤としてN,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液の代わりにN−メチルピロリドン4.96mmolを用いたこと以外は同様にして、ブロック共重合体を得た。このブロック重合体を「重合体(X9)」とする。
得られた重合体(X9)における重合体ブロックの各々の結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度および重量平均分子量、並びに重合体(X9)全体の結合スチレン含量、ビニル結合含量および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0073】

【表1】
【0074】

【表2】
【0075】
〈実施例1〉
温度制御装置を付属したプラストミル(内容量250cc)を用い、以下のようにしてゴム組成物を調製した。
ブロック共重合体(A)としての重合体(A1)50質量部、重合体(B)としてのイソプレンゴム「IR2200」(JSR社製,ガラス転移温度:−65℃)50質量部、伸展油「SNH46」(三共油化工業社製)10質量部、シリカ「ニシプルAQ」(東ソー・シリカ社製,一次平均粒子径15nm)55質量部、シランカップリング剤「Si69」(エボニック社製)5.0質量部、ステアリン酸2.0質量部、老化防止剤「ノクラック810NA」(大内新興化学工業社製)1.0質量部、および酸化亜鉛3.0質量部を、充填率72%、回転数60rpm、温度120℃の混練条件によって3.5分間混練した。
次いで、得られた混練物を室温まで冷却した後、当該混練物に、加硫促進剤「ノクセラ−CZ」(大内新興化学工業社製)1.8質量、加硫促進剤「ノクセラ−D」(大内新興化学工業社製)1.5質量部、およびイオウ1.5質量部を添加し、回転数60rpm、80℃の混練条件によって1.5分間混練することにより、ゴム組成物を製造した。
イソプレンゴムと重合体(A1)における重合体ブロック(a−2)との混合物のガラス転移温度、並びに重合体(A1)とイソプレンゴムとの相溶性を下記表3に示す。
【0076】
〈実施例2〜8〉
ブロック共重合体(A)として重合体(A1)の代わりに下記表3に示す重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
イソプレンゴムと各重合体における重合体ブロック(a−2)との混合物のガラス転移温度、並びに各重合体とイソプレンゴムとの相溶性を下記表3に示す。
【0077】
〈実施例9〉
ブロック共重合体(A)として重合体(A1)50質量部の代わりに重合体(A9)50質量部を用い、重合体(B)としてイソプレンゴム50質量部の代わりにブタジエンゴム「BR01」(JSR社製,ガラス転移温度:−107℃)50質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
ブタジエンゴムと重合体(A9)における重合体ブロック(a−2)との混合物のガラス転移温度、並びに重合体(A9)とブタジエンゴムとの相溶性を下記表3に示す。
【0078】
〈実施例10〉
ブロック共重合体(A)として重合体(A1)50質量部の代わりに重合体(A2)50質量部を用い、シリカ55質量部の代わりにカーボンブラック「ダイヤブラックN339」(三菱化学社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
【0079】
〈比較例1〜5〉
重合体(A1)の代わりに下記表4に示す重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
各重合体とイソプレンゴムとの相溶性を下記表4に示す。
【0080】
〈比較例6〉
重合体(A1)の代わりに重合体(X1)を用い、イソプレンゴム50質量部の代わりにブタジエンゴム「BR01」(JSR社製)50質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
【0081】
〈比較例7〉
重合体(A1)の代わりに重合体(X7)を用い、イソプレンゴム50質量部の代わりにブタジエンゴム「BR01」(JSR社製)50質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
【0082】
〈比較例8〜11〉
重合体(A1)の代わりに下記表4に示す重合体を用い、シリカ55質量部の代わりにカーボンブラック「ダイヤブラックN339」(三菱化学社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
各重合体とイソプレンゴムとの相溶性を下記表4に示す。
【0083】
[特性評価]
実施例1〜10および比較例1〜11で得られたゴム弾性体について下記の評価を行った。結果を表3および表4に示す。
(1)引張強度(300%モジュラス):
JISK6301に準拠して300%モジュラスを測定し、比較例1に係るゴム弾性体の300%モジュラスの値を100としたときの指数を求めた。この指数が大きいほど、引張強度が大きく、機械的強度に優れていると評価することができる。
(2)ウェットスキッド抵抗性(0℃tanδ):
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を用い、引張動歪0.14%、角速度100ラジアン毎秒、温度0℃の条件で測定し、比較例1に係るゴム弾性体の値を100としたときの指数を求めた。この指数の値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が大きく良好であることが示される。
(3)低ヒステリシスロス特性(50℃tanδ):
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪0.7%、角速度100ラジアン毎秒、温度50℃の条件で測定し、比較例1に係るゴム弾性体の値を100としたときの指数を求めた。この指数の値が大きいほど低ヒステリシスロス特性が小さく良好であることが示される。
(4)耐摩耗性:
DIN摩耗試験機(東洋精機社製)を使用し、JIS K 6264に準拠し、荷重10Nで25℃の条件で測定し、比較例1に係るゴム弾性体の値を100としたときの指数を求めた。この指数が大きいほど、耐摩耗性に優れていると評価することができる。
【0084】

【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
表3および表4から明らかなように、実施例1〜10に係るゴム組成物によれば、低転がり抵抗性およびウエットスキッド抵抗性の両方に優れ、しかも、機械的強度および耐摩耗性に優れたゴム弾性体が得られることが確認された。
また、実施例2に係るゴム弾性体と比較例3に係るゴム弾性体との物性評価結果の比較から、重合体ブロック(a−1)および重合体ブロック(a−2)よりなり、重合体ブロック(a−2)が官能基を有するブロック共重合体(A)をゴム成分として用いることが、ウェットスキッド抵抗性および低ヒステリシスロス特性のバランスを改良するのに非常に重要であることが理解される。