(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、マフラによって吐出脈動を好適に低減するためにはマフラ室の容積を大きくしなければならず、シリンダブロックの外周側にマフラを嵩張らないように配置することが難しい。その結果、従来の片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、吐出脈動を好適に低減しつつ、小型化を実現することが難しい。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、吐出脈動を好適に低減しつつ、小型化を実現できる片頭ピストン式可変容量型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の片頭ピストン式可変容量型圧縮機は、複数個のシリンダボアが周方向に整列しつつ軸方向で互いに平行に形成されたシリンダブロックと、
前記シリンダブロックにおける前記軸方向の一端側に固定され、内部にクランク室を形成するフロントハウジングと、
前記シリンダブロックにおける前記軸方向の他端側に固定され、内部に吸入室及び吐出室を形成するリヤハウジングと、
各前記シリンダボア内に往復動可能に収容されて各前記シリンダボア内の前記他端側に圧縮室を区画するピストンと、
前記クランク室内に設けられ、各前記ピストンを往復動させるとともに、各前記ピストンのストロークを変更可能な駆動手段とを備え、
前記吐出室は、前記リヤハウジングに設けられて前記吸入室と前記吐出室とを区画する環状壁と、前記リヤハウジングの外周壁との間において、前記周方向に延びて前記吸入室を環状に囲むように形成され、
前記シリンダブロック又は前記リヤハウジングには、前記吐出室を外部に連通させる吐出ポートが形成され、
前記吐出室と前記吐出ポートとの間にはマフラが設けられ、
前記マフラは、前記リヤハウジングに形成されたマフラ室と、前記吐出室と前記マフラ室とを連通する流入路と、前記マフラ室と前記吐出ポートとを連通する流出路とを有する片頭ピストン式可変容量型圧縮機において、
前記マフラ室は、前記マフラ室の前記一端側に位置する第1端面と、
前記マフラ室の前記他端側に位置する第2端面と、
前記第1端面と前記第2端面との間に位置し、前記吐出室から前記他端側に向かって延びる円筒状に形成された内周面とを有し、
前記マフラ室は、前記環状壁と前記外周壁との間に位置し、
前記流入路は、前記第1端面に開口し、
前記流出路は、前記内周面における前記第2端面から離間した位置で開口していることを特徴とする。
【0009】
本発明の片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、吐出室内の高圧の冷媒ガスは、第1端面に開口する流入路を経由してマフラ室に流入した後、内周面における第2端面から離間した位置で開口する流出路を経由し、吐出ポートから外部に吐出される。この際、この片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、流入路によって絞った冷媒ガスをマフラ室内で膨張させることにより、吐出脈動を低減できる。
【0010】
ここで、マフラ室は、円筒状の内周面と第1端面と第2端面とに囲まれた円柱状の空間となっている。発明者らの確認によれば、そのマフラ室に流入する冷媒ガスの圧力の脈動振幅は、内周面側と第2端面側とを比較すると、内周面側の方が小さくなる傾向がある。このため、仮に流出路が第2端面に開口する場合と比較して、流出路が内周面における第2端面から離間した位置で開口する場合の方がマフラ室から流出路に流出する冷媒ガスの圧力の脈動振幅を小さくできる。これにより、この片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、吐出脈動を一層低減することができるので、それに応じて、マフラ室の容積自体を小さくできる。その結果、この片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、リヤハウジング内にマフラを嵩張らないように配置することを容易に実現できる。
【0011】
したがって、本発明の片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、吐出脈動を好適に低減しつつ、小型化を実現できる。
【0012】
内周面、第2端面及び流出路はリヤハウジングに形成されていることが望ましい。第1端面は、内周面に嵌合され、吐出室とマフラ室とを区画する円板状の蓋部材により形成されていることが望ましい。そして、蓋部材に流入路が形成されていることが望ましい。この場合、孔を有する円板状の蓋部材を内周面に嵌合することにより、第1端面及び流入路を容易に構成できる。その結果、この片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、製造コストの低廉化を実現できる。
【0013】
内周面及び第2端面は、吐出室から他端側に向かって凹設された有底円孔であることが望ましい。そして、流出路は、リヤハウジングの一端側から内周面まで貫通する直線状の孔であることが望ましい。この場合、吐出室から軸方向の他端側に向かって凹む有底円孔をリヤハウジングに形成することにより、内周面及び第2端面を容易に構成できる。また、マフラ室の内周面まで貫通する孔をリヤハウジングに形成することにより、流出路を容易に構成できる。その結果、この片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、製造コストの低廉化を実現できる。
【0014】
流出路の内径が流入路の内径よりも大きいことが望ましい。この場合、マフラ室から流出路に流出する冷媒ガスは、流入路の内径よりも大きい内径を有する流出路によって絞られ難い。このため、その冷媒ガスは、圧力の脈動振幅が小さい状態が好適に維持されながら吐出ポートまで流れる。その結果、この片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、吐出脈動を一層好適に低減できる。
【0015】
内周面には、マフラ室を一端側に位置する第1マフラ室と他端側に位置する第2マフラ室とに区画する中間部材が嵌合されていることが望ましい。そして、中間部材には、第1マフラ室に開く第1開口と、第2マフラ室に開く第2開口と、第1開口と第2開口とを連通する中間流路とが形成されていることが望ましい。この場合、吐出室内の高圧の冷媒ガスは、第1端面に開口する流入路を経由して第1マフラ室に流入した後、中間部材に形成された第1開口、中間流路、第2開口を経由して第2マフラ室に流入する。そして、その冷媒ガスは、内周面における第2端面から離間した位置で開口する流出路を経由し、吐出ポートから外部に吐出される。この際、この片頭ピストン式可変容量型圧縮機では、冷媒ガスを流入路によって絞った後に第1マフラ室内で膨張させ、次に中間流路によって絞った後に第2マフラ室内で膨張させることにより、吐出脈動を一層低減できる。なお、複数枚の中間部材が内周面に嵌合され得る。この場合、マフラ室は、3室以上に分割される。
【0016】
中間部材は、円板状をなす本体部と、本体部と一体をなし、一端側に延びる延出部とからなることが望ましい。第1開口は延出部の一端側に形成されていることが望ましい。第2開口は本体部の他端側に形成されていることが望ましい。そして、中間流路は延出部及び本体部と内周面との間に形成されていることが望ましい。
【0017】
この場合、第1マフラ室は、円筒状の内周面と、軸方向の一端側に位置する第1端面と、第1端面より軸方向の他端側に位置する本体部と、本体部と一体をなし、軸方向の一端側に延びる延出部とに囲まれた略円柱状の空間となる。また、第2マフラ室は、円筒状の内周面と、軸方向の他端側に位置する第2端面と、第2端面より軸方向の一端側に位置する本体部とに囲まれた円柱状の空間となる。これらにより、容易にマフラ室を第1、2マフラ室に区画できる。
【0018】
複数個の中間部材が軸方向に並んで内周面に嵌合されていることが望ましい。そして、隣り合う2個の中間部材の一方に形成された第1開口、第2開口及び中間流路と、隣り合う2個の中間部材の他方に形成された第1開口、第2開口及び中間流路とは、軸方向から見てずれていることが望ましい。この場合、マフラ室が複数個の中間部材によって3つ以上の小マフラ室に分割される。そして、冷媒ガスが各マフラ室を通過する際、軸方向から見て互いにずれている第1開口、第2開口及び中間流路の各組によって、屈曲して流れるように案内されながら撹拌されるので、その冷媒ガスの圧力の脈動振幅が小さくなる。
【0019】
マフラ室には、軸方向に
直交する複数の反射面を有する撹拌部材が挿入されていることが望ましい。この場合、マフラ室に流入する冷媒ガスが撹拌部材の複数の反射面によって撹拌されるので、その冷媒ガスの圧力の脈動振幅が小さくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の片頭ピストン式可変容量型圧縮機によれば、吐出脈動を好適に低減しつつ、小型化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施例1〜4を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、前後方向を
図1に示すように定める。
【0023】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の片頭ピストン式可変容量型圧縮機(以下、単に「圧縮機」という。)は、シリンダブロック1とフロントハウジング3とリヤハウジング5とピストン25と駆動手段4とを備えている。
【0024】
シリンダブロック1には、複数個のシリンダボア1aが周方向に等角度間隔で整列しつつ互いに平行に形成されている。各シリンダボア1aは、シリンダブロック1を前後方向に貫通する円柱状の空間である。各シリンダボア1a内には、ピストン25が前後方向に往復動可能に収容されている。前後方向は、本発明の「軸方向」の一例である。また、前側は本発明の「軸方向の一端側」の一例であり、後側は本発明の「軸方向の他端側」の一例である。
【0025】
シリンダブロック1は、前方に位置するフロントハウジング3と後方に位置するリヤハウジング5とに挟持され、この状態で複数本のボルト7によって締結されている。つまり、フロントハウジング3は、シリンダブロック1の前側に固定され、リヤハウジング5は、シリンダブロック1の後側に固定されている。フロントハウジング3は、内部にクランク室9を形成している。リヤハウジング5は、シリンダブロック1との間に、弁ユニット29を介在させている。
【0026】
駆動手段4は、駆動軸11、ラグプレート15、プーリ13、斜板17、リンク機構23等により構成されている。
【0027】
フロントハウジング3には、軸孔3aが形成されている。シリンダブロック1には、軸孔1bが形成されている。
【0028】
駆動軸11は、クランク室9内で前後方向に延びている。駆動軸11の前端部は、軸孔3aを通過し、フロントハウジング3の外側に突出している。軸孔3aには、軸封装置9s及び軸受装置10aが装着されている。軸封装置9sにより、駆動軸11とフロントハウジング3との間が封止されている。駆動軸11の後端部は、軸孔1b内に突出している。軸孔1bと駆動軸11の後端部との間には、軸受装置10bが設けられている。駆動軸11は、軸受装置10a、10bを介して軸孔3a、1bに回転可能に支持されている。
【0029】
ラグプレート15は、クランク室9内で駆動軸11に圧入されている。ラグプレート15とフロントハウジング3との間には軸受装置10cが設けられている。
【0030】
プーリ13は、駆動軸11の前端部に固定されている。プーリ13とフロントハウジング3との間には、軸受装置3bが介在している。プーリ13には、車両のエンジンやモータによって駆動されるベルト13cが巻き掛けられている。なお、プーリ13の代わりに電磁クラッチを設けることも可能である。
【0031】
斜板17は、クランク室9内で駆動軸11に挿通されている。斜板17は、ラグプレート15の後側に位置している。ラグプレート15と斜板17との間には、駆動軸11回りで傾角縮小ばね19が設けられている。また、クランク室9内では、駆動軸11にサークリップ11aが固定されており、サークリップ11aと斜板17との間には、駆動軸11回りで復帰ばね21が設けられている。
【0032】
リンク機構23は、クランク室9内でラグプレート15と斜板17とを接続している。リンク機構23は、ラグプレート15に対する斜板17の傾斜角度を変更可能に斜板17を支持している。
【0033】
各ピストン25と斜板17との間には、前後で対をなすシュー27a、27bが設けられている。各対のシュー27a、27bによって、斜板17の揺動運動が各ピストン25の前後方向の往復動に変換される。
【0034】
ピストン25の後端面は、各シリンダボア1a内で弁ユニット29と対向している。これにより、ピストン25は、各シリンダボア1aの後側に圧縮室31を区画している。弁ユニット29は、ピストン25が吸入行程にあるときに吸入室5a内の冷媒ガスを圧縮室31に吸入させるように作動する。また、弁ユニット29は、ピストン25が圧縮行程にあるときに冷媒ガスを圧縮室31内に閉じ込め、ピストン25が吐出行程にあるときに圧縮室31内の冷媒ガスを吐出室5bに吐出させるように作動する。
【0035】
図1及び
図2に示すように、リヤハウジング5内には、径方向内側に位置する吸入室5aと径方向外側に位置する吐出室5bとが形成されている。吐出室5bは、周方向に延びて吸入室5aを環状に囲んでいる。リヤハウジング5には、吸入室5aと外部とを連通させる吸入ポート5hが形成されている。吸入室5aは、リヤハウジング5に形成された環状壁5mにより区画されている。吐出室5bは、環状壁5mとリヤハウジング5の外周壁5nとより区画されている。
【0036】
図1に示すように、クランク室9と吸入室5aとは抽気通路42によって接続されている。クランク室9と吐出室5bとは、給気通路44、46によって接続されている。リヤハウジング5内には、容量制御弁2が収納されている。容量制御弁2は、給気通路44と給気通路46との間に設けられている。
【0037】
容量制御弁2の開度を外部からの給電制御によって調節することで、吐出室5bから給気通路44、46を介してクランク室9に導入される高圧の冷媒ガスの量と、クランク室9から抽気通路42を介して吸入室5aに導出される冷媒ガスの量とのバランスが制御され、クランク室9の内圧が決定される。クランク室9の内圧の変更に応じてクランク室9と圧縮室31との差圧が変更され、斜板17の傾斜角度が変更される結果、ピストン25のストローク、すなわち圧縮機の吐出容量が調節される。
【0038】
シリンダブロック1の外周面側には、吐出室5bを外部に連通させる吐出ポート1hが形成されている。吐出室5bと吐出ポート1hとの間には、マフラ100が設けられている。
【0039】
図1〜
図4に示すように、マフラ100は、マフラ室110と流入路101と流出路102a、102bとを有している。
【0040】
リヤハウジング5には、吐出室5bの後壁面5rから後側に向かって延びる有底円孔5Gが形成されている。有底円孔5Gの円筒状の内壁面は、内周面113とされている。有底円孔5Gの円形の底面は、内周面113の後側に位置する第2端面112とされている。有底円孔5Gには、円板状の蓋部材109が圧入されている。
図4に示すように、蓋部材109の前面は、後壁面5rと略面一とされている。蓋部材109の後面は、内周面113の前側に位置する第1端面111とされている。
図3に示すように、マフラ室110は、内周面113と第1端面111と第2端面112とに囲まれた円柱状の空間である。
【0041】
図1及び
図2に示すように、マフラ室110は、リヤハウジング5において、環状壁5mと外周壁5nとの間に配置されている。
図2に示すように、リヤハウジング5には、ボルト7が挿通される複数個のボルト挿通孔6が形成されている。マフラ室110は、吐出室5b内でそれらのうちの2つのボルト挿通孔6a、6bの間に配置されている。
図1に示すように、リヤハウジング5の前側端面5fからマフラ室110の第2端面112までの長さAは、リヤハウジング5の前側端面5fから吐出室5bの後側端面5sまでの長さB以下となっている。
【0042】
図2〜
図4に示すように、流入路101は、蓋部材109の中央において前後方向に貫通する円孔である。流入路101は、円形の流入口101hによって第1端面111に開口している。つまり、内周面113の前側に嵌合された蓋部材109によって、吐出室5bとマフラ室110とが区画され、第1端面111、流入路101及び流入口101hが形成されている。流入路101は、吐出室5bとマフラ室110とを連通している。
【0043】
図1及び
図2に示すように、流出路102aは、リヤハウジング5に形成されている。流出路102aは、リヤハウジング5の前面の吐出室5bより径外方向に位置する部位5Sから、内周面113に向かって直線状に延びる孔である。流出路102aは前後方向に対して傾斜している。
【0044】
図1に示すように、流出路102bは、弁ユニット29及びシリンダブロック1に形成され、前後方向に直線状に延びる孔である。流出路102bの後端側は、流出路102aの前端側と連通している。流出路102bの前端側は、吐出ポート1hに連通している。
【0045】
図1〜
図4に示すように、流出路102aは、楕円形の流出口102hによって内周面113における第2端面112から離間した位置で開口している。
図4に示すように、流出路102aの内径D2は、流入路101の内径D1よりも大きい。
【0046】
以上のように構成された実施例1の圧縮機は、車両用空調装置において、吐出室5bがマフラ室100及び吐出ポート1hを介して凝縮器に接続され、凝縮器が膨張弁を介して蒸発器に接続され、蒸発器が吸入ポート5hを介して吸入室5aに接続される。そして、エンジン等によって駆動軸11が回転駆動されれば、斜板17の傾斜角度に応じた吐出容量で吸入室5a内の冷媒ガスを圧縮室31で圧縮して吐出室5bに吐出する。
【0047】
この間、容量制御弁2の開度を減少させれば、クランク室9の内圧が低下する。このため、斜板17の傾斜角度が増大してピストン25のストロークが増大し、圧縮機の吐出容量が増大する。逆に、容量制御弁2の開度を増大させれば、クランク室9の内圧が上昇する。このため、斜板17の傾斜角度が減少してピストン25のストロークが減少し、圧縮機の吐出容量が減少する。こうして、この圧縮機では、吐出容量を適宜変更することができる。
【0048】
そして、この圧縮機では、
図3及び
図4に示すように、吐出室5b内の高圧の冷媒ガスは、流入路101を経由して第1端面111に開く流入口101hからマフラ室110に流入した後、内周面113に開く流出口102hから流出路102a、102bに流出し、吐出ポート1hから外部に吐出される。この際、この圧縮機では、流入路101によって絞った冷媒ガスをマフラ室110内で膨張させることにより、吐出脈動を低減できる。
【0049】
ここで、マフラ室110は、円筒状の内周面113と第1端面111と第2端面112とに囲まれた円柱状の空間となっている。発明者らの確認によれば、そのマフラ室110に流入する冷媒ガスの圧力の脈動振幅は、内周面113側と第2端面112側とを比較すると、内周面113側の方が小さくなる傾向がある。このため、仮に流出路102aが第2端面112に開口する場合と比較して、流出路102aが内周面113における第2端面112から離間した位置で開口する場合の方がマフラ室110から流出口102hを介して流出路102a、102bに流出する冷媒ガスの圧力の脈動振幅を小さくできる。
【0050】
また、この圧縮機では、流出路102aの内径D2が流入路101の内径D1よりも大きいので、マフラ室110から流出口102hを介して流出路102aに流出する冷媒ガスが流出路102aによって絞られ難い。このため、その冷媒ガスは、圧力の脈動振幅が小さい状態が好適に維持されながら吐出ポート1hまで流れる。
【0051】
こうして、この圧縮機では、吐出脈動を一層低減することができるので、それに応じて、マフラ室110の容積自体を小さくできる。その結果、この圧縮機では、リヤハウジング5内にマフラ100を嵩張らないように配置することを容易に実現できる。また、リヤハウジング5において、マフラ室110を環状壁5mと外周壁5nとの間に配置することで、マフラ100がリヤハウジング5の径外方向へ突出しない構造を実現できる。また、リヤハウジング5の前側端面5fからマフラ室110の第2端面112までの長さAをリヤハウジング5の前側端面5fから吐出室5bの後側端面5eまでの長さB以下となるように設定することで、マフラ100がリヤハウジング5の軸方向へ突出しない構造を実現できる。
【0052】
したがって、実施例1の圧縮機では、吐出脈動を好適に低減しつつ、小型化を実現できる。
【0053】
また、この圧縮機では、吐出室5bから後側に向かって凹設された有底円孔5Gをリヤハウジング5に形成することにより、内周面113及び第2端面112を容易に構成できる。また、この圧縮機では、リヤハウジング5の前面の部位5Sから、マフラ室110の内周面113まで斜めに貫通する孔をリヤハウジング5に形成することにより、流出路102a及び流出口102hを容易に構成できる。さらに、孔を有する円板状の蓋部材109を内周面113に嵌合することにより、第1端面111、流入路101及び流入口101hを容易に構成できる。その結果、この圧縮機では、製造コストの低廉化を実現できる。
【0054】
(実施例2)
図5及び
図6に示すように、実施例2の圧縮機では、実施例1の圧縮機におけるマフラ100に、中間部材230が追加されている。実施例2のその他の構成は、実施例1と同一である。このため、実施例1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0055】
中間部材230は、第1端面111と第2端面112との間に位置する状態で、内周面113に嵌合されている。中間部材230は、本体部232と延出部231とからなる。
【0056】
本体部232は円板状をなしており、その外周面の一部が径内方向に凹んでなる凹部232aを有している。延出部231は、本体部232と一体をなしている。延出部231は、凹部232aを囲みながら前側に延びている。延出部231の周縁231eは、内周面113に密着している。
【0057】
中間部材230は、本体部232及び延出部231によって、マフラ室110を前側に位置する第1マフラ室210aと後側に位置する第2マフラ室210bとに区画している。
【0058】
中間部材230には、第1開口231hと第2開口232hと中間流路233とが形成されている。第1開口231hは、延出部231の前側に形成された円孔である。第1開口231hは、延出部231を径方向に貫通し、第1マフラ室210aに開いている。第2開口232hは、本体部232の後面側において、凹部232aと内周面113との間に形成された隙間であり、第2マフラ室210bに開いている。中間流路233は、延出部231及び本体部232と内周面113との間に形成されて前後方向に延びる空間である。延出部231は、前側で第1開口231hと連通し、後側で第2開口232hとを連通している。
【0059】
なお、第1開口231hは、延出部231の前側で延出部231を径方向に貫通するように形成されているが、延出部231の前側かつ第1端面111と対向する位置で軸方向に貫通するように形成されていてもよい。
【0060】
図5に示すように、第1開口231hの内径D3は、流出路102aの内径D2より小さい。また、第1開口231hの内径D3は、流入路101の内径D1よりも若干大きい。
【0061】
このような構成である実施例2の圧縮機では、吐出室5b内の高圧の冷媒ガスは、流入路101を経由して流入口101hから第1マフラ室210aに流入した後、第1開口231h、中間流路233及び第2開口232hを経由して第2マフラ室210bに流入する。そして、その冷媒ガスは、流出口102hを介して流出路102a、102bに流出し、吐出ポート1hから外部に吐出される。この際、この圧縮機では、冷媒ガスを流入路101によって絞った後に第1マフラ室210a内で膨張させ、次に中間流路233によって絞った後に第2マフラ室210b内で膨張させることにより、吐出脈動を一層低減できる。
【0062】
さらに、この圧縮機では、第1マフラ室210aは、円筒状の内周面113と、前側に位置する第1端面111と、第1端面111より後側に位置する本体部232と、本体部232と一体をなし、前側に延びる延出部231とに囲まれた略円柱状の空間である。第1マフラ室210aに流入する冷媒ガスの圧力の脈動振幅は、延出部231の前側と本体部232側とを比較すると、延出部231の前側の方が小さくなる傾向がある。このため、仮に第1開口231hが本体部232に開く場合と比較して、第1開口231hが延出部231の前側に開く場合の方が第1開口231hから中間流路233及び第2開口232hを経由して第2マフラ室210bに流入する冷媒ガスの圧力の脈動振幅を小さくできる。
【0063】
また、第2マフラ室210bは、円筒状の内周面113と、後側に位置する第2端面112と、第2端面112より前側に位置する本体部232とに囲まれた円柱状の空間である。第1マフラ室210aから第1開口231h、中間流路233及び第2開口232hを経由して第2マフラ室210bに流入する冷媒ガスの圧力の脈動振幅は、内周面113側と第2端面112側とを比較すると、内周面113側の方が小さくなる傾向がある。このため、仮に流出路102aが第2端面112に開口する場合と比較して、流出路102aが流出口102hによって内周面113に開口する場合の方が第2マフラ室210bから流出路102a、102bに流出する冷媒ガスの圧力の脈動振幅を小さくできる。
【0064】
したがって、実施例2の圧縮機も、実施例1の圧縮機と同様に、吐出脈動を好適に低減しつつ、小型化を実現できる。
【0065】
(実施例3)
図7及び
図8に示すように、実施例3の圧縮機では、実施例1の圧縮機におけるマフラ100に、3枚の中間部材330が追加されている。実施例3のその他の構成は、実施例1と同一である。このため、実施例1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0066】
3枚の中間部材330は同一形状の円板部材である。各中間部材330は、第1端面111と第2端面
112との間に位置する状態で、前後方向に並んで内周面113に嵌合されている。各中間部材330は、マフラ室110を4つの小マフラ室310a、310b、310c、310dに区画している。いずれか1枚の中間部材330を基準とした場合において、その中間部材330の前側に位置する小マフラ室310a〜310cが本発明の「第1マフラ室」の一例であり、その中間部材330の後側に位置する小マフラ室310b〜310dが本発明の「第2マフラ室」の一例である。
【0067】
各中間部材330には、複数の第1開口331、第2開口332及び中間流路333の組が形成されている。第1開口331、第2開口332及び中間流路333は、先の尖ったニードル状の工具を各中間部材330に突き刺すことによって、略漏斗状に前方に突出するように形成された孔の一部である。第1開口331は、前側の小マフラ室310a〜310cに開いている。第2開口332は、後側の小マフラ室310b〜310dに開いている。中間流路333は、第1開口331と第2開口332とを連通している。
【0068】
図7に示すように、隣り合う2個の中間部材330の一方に形成された第1開口331、第2開口332及び中間流路333の組と、隣り合う2個の中間部材330の他方に形成された第1開口331、第2開口332及び中間流路333の組とは、前後方向から見てずれている。
【0069】
このような構成である実施例3の圧縮機では、マフラ室110に流入する冷媒ガスが小マフラ室310a〜310dを順番に通過する。この際、その冷媒ガスは、各中間部材330に形成された第1開口331、第2開口332及び中間流路333の各組により絞られた後、膨張する。また、その冷媒ガスは、前後方向から見て互いにずれている第1開口331、第2開口332及び中間流路333の各組によって、屈曲して流れるように案内されながら撹拌される。その結果、その冷媒ガスの圧力の脈動振幅が小さくなる。
【0070】
したがって、実施例3の圧縮機も、実施例1、2の圧縮機と同様に、吐出脈動を好適に低減しつつ、小型化を実現できる。
【0071】
(実施例4)
図9及び
図10に示すように、実施例4の圧縮機では、実施例1の圧縮機におけるマフラ100に、撹拌部材440が追加されている。実施例4のその他の構成は、実施例1と同一である。このため、実施例1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0072】
撹拌部材440は、マフラ室110に挿入されている。撹拌部材440は、前後方向に交差する複数の微小な反射面441を有している。各反射面441は、例えば、図示しないコイル線材に間隔を開けて固定され、そのコイル線材がマフラ室110内に収容されることより、マフラ室110内に分散配置されている。また、各反射面441は、例えば、ステンレス材の旋盤加工により形成される螺旋状の切屑からなるようなステンレスたわしの一部であってもよい。
【0073】
このような構成である実施例4の圧縮機では、マフラ室110に流入する冷媒ガスが撹拌部材440の複数の微小な反射面441によって撹拌されるので、その冷媒ガスの圧力の脈動振幅が小さくなる。
【0074】
したがって、実施例4の圧縮機も、実施例1〜3の圧縮機と同様に、吐出脈動を好適に低減しつつ、小型化を実現できる。
【0075】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0076】
例えば、実施例1〜4では、流出口102hを第2端面112から第1端面111側に離間した位置で、かつ、第1端面111より第2端面112に近い位置で内周面113に形成したが、流出口102hの位置を第2端面112から第1端面111側に離間した位置で、かつ、第2端面112より第1端面111に近い位置で内周面113に形成しても良い。
【0077】
また、実施例1〜4では、流出路102aの内径D2を流入路101の内径D1よりも大きく形成したが、内径D2を内径D1よりも小さく形成しても良いし、同径としても良い。
【0078】
また、実施例1〜4では、リヤハウジング5の前側端面5fからマフラ室110の第2端面112までの長さAをリヤハウジング5の前側端面5fから吐出室5bの後側端面5eまでの長さB以下としたが、長さAを長さBよりも長くなるようにマフラ室110を形成しても良い。