(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の偏光光照射装置を示す概略構成図である。
偏光光照射装置100は、光照射部10A及び10Bと、ワークWを搬送する搬送部20とを備える。ここで、ワークWは、光配向膜が形成された、例えば液晶パネルの大きさに整形された矩形状の基板である。
偏光光照射装置100は、光照射部10A及び10Bから所定の波長の偏光光(偏光した光)を照射しながら、搬送部20によってワークWを直線移動させ、ワークWの光配向膜に上記偏光光を照射して光配向処理をするものである。
【0021】
光照射部10A及び10Bは、線状の光源である放電ランプ11と、放電ランプ11の光を反射するミラー12とをそれぞれ備える。また、光照射部10Aは、その光出射側に配置された偏光子ユニット13Aを備え、光照射部10Bは、その光出射側に配置された偏光子ユニット13Bを備える。さらに、光照射部10A及び10Bは、それぞれランプハウス14を備える。放電ランプ11、ミラー12及び偏光子ユニット13A(又は13B)は、ランプハウス14に収容されている。
光照射部10A及び光照射部10Bは、放電ランプ11の長手方向をワークWの搬送方向(X方向)に直交する方法(Y方向)に一致させた状態で、ワークWの搬送方向(X方向)に沿って並設されている。
【0022】
ここで、光照射部10Aの具体的構成について説明する。
図2は、光照射部10Aの長手方向に直交する方向の断面図であり、
図3は、光照射部10Aの長手方向の断面図である。光照射部10Aと光照射部10Bとは同様の構成を有するため、ここでは光照射部10Aの構成について説明する。
放電ランプ11は、長尺状のロングアーク型放電ランプである。放電ランプ11は、例えば、波長200nm〜400nmの紫外光を照射する。
光配向膜の材料としては、波長254nmの光で配向されるもの、波長313nmの光で配向されるもの、波長365nmの光で配向されるものなどが知られており、光源の種類は必要とされる波長に応じて適宜選択する。
なお、光源としては、紫外光を放射するLEDやLDを直線状に並べて配置した線状光源を用いることもできる。その場合、LEDやLDを並べる方向がランプの長手方向に相当する。
【0023】
ミラー12は、放電ランプ11からの放射光を所定の方向に反射するものであり、
図2に示すように断面が楕円形の樋状集光鏡である。ミラー12は、その長手方向が放電ランプ11の長手方向と一致するように配置されている。
ランプハウス14は、その底面に、光照射部10Aから照射される光が通過する光出射口14aを有する。光出射口14aには、ここを通過する光を偏光するための偏光子を有する偏光子ユニット13Aが取り付けられている。
【0024】
偏光子ユニット13Aは、
図4に示すように、複数の偏光子13Aaをフレーム13Ab内に並べて配置して構成されている。このように、放電ランプ11の直下に、複数の偏光子13Aaが当該放電ランプ11の長手方向に沿って並んで配置されている。
偏光子13Aaは、ワイヤーグリッド型偏光素子であり、偏光子13Aaの個数は、偏光光を照射する領域の大きさに合わせて適宜選択する。また、各偏光子13Aaは、それぞれ透過軸が同一方向を向くように配置されている。
【0025】
偏光子ユニット13Bも、偏光子ユニット13Aと同様の構成を有する。
ただし、光照射部を2段に並べた2灯式の場合、偏光子ユニット13Bの偏光子13Baは、
図4に示すように、偏光子13Aaの継ぎ目と偏光子13Baの継ぎ目とが、ワークWの搬送方向(X方向)において互いに重ならないように、搬送方向に直交する方向(Y方向)に位置をずらして配置する。これにより、光照射部10A及び10Bは均一なエネルギー分布で偏光光を照射することができる。
【0026】
図1に戻って、搬送部20は、真空吸着等の方法によりワークWを吸着保持する平板状のワークステージ21と、ワークステージ21の移動方向に沿って延びる2本のガイド22と、ワークステージ21の移動機構を一例として構成する電磁石23とを備える。
ここでは、上記移動機構として、例えば、リニアモータステージを採用する。リニアモータステージは、碁盤目状に強磁性体の凸極が設けられた平面状のプラテンの上に移動体(ワークステージ)をエアーにより浮上させ、移動体に磁力を印加して、移動体とプラテンの凸極との間の磁力を変化させることにより移動体(ワークステージ)を移動する機構である。
【0027】
ワークステージ21は、その一辺の方向がステージ移動方向(X方向)を向くように配置されると共に、ガイド22によって真直度を補償した状態で往復移動可能に支持されている。
本明細書において、ワークステージ21の移動方向がX方向であり、X方向に垂直な水平方向がY方向、鉛直方向がZ方向である。また、ワークWは矩形状であり、一辺の方向がX方向に向き、他方の辺がY方向を向いた姿勢でワークステージ21上に保持されているものとする。
ワークステージ21の移動経路は、光照射部10A及び10Bの真下を通るように設計されている。そして、搬送部20は、ワークWを光照射部10A及び10Bによる偏光光の照射位置に搬送し、且つその照射位置を通過させるように構成されている。この通過の過程で、ワークWの光配向膜が光配向処理される。
【0028】
また、偏光光照射装置100は、偏光測定装置30を備える。偏光測定装置30は、偏光軸検出器31と、偏光軸検出器31をガイド22に沿ってX方向に搬送するためのX方向搬送部32と、偏光軸検出器31をY方向に搬送するためのY方向搬送部33と、を備える。さらに、この偏光測定装置30は、偏光軸検出器31、X方向搬送部32、Y方向搬送部33の他に、後述する制御部34及びモニタ35も備えている。
【0029】
偏光軸検出器31は、光照射部10A及び10Bから照射される偏光光の偏光軸(光照射面における偏光光の軸)を検出する。
X方向搬送部32は、偏光軸検出器31をX方向に移動させる移動機構であり、例えば、上述した搬送部20と同様の構成を有する。すなわち、偏光軸検出器31の移動経路は、光照射部10A及び10Bの真下を通るように設計されている。X方向搬送部32は、X方向において、偏光軸検出器31を光照射部10A及び10Bによる偏光光の照射位置に搬送する。
【0030】
Y方向搬送部33は、偏光軸検出器31をY方向に移動させる移動機構である。Y方向搬送部33は、偏光軸検出器31が光照射部10A及び10Bによる偏光光の照射位置にある状態で、偏光軸検出器31をY方向(偏光子ユニット13A及び13Bの偏光子の配列方向)に移動する。
本実施形態では、偏光子ユニット13A及び13Bの各偏光子の直下(各偏光子の中央位置)を、それぞれ偏光軸を測定する位置(以下、「偏光測定位置」ともいう)とし、偏光軸検出器31は、各偏光測定位置において偏光軸を測定するものとする。
【0031】
以下、偏光軸検出器31の具体的構成について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
偏光軸検出器31は、第一の偏光光検出部311と、第二の偏光光検出部312とを備える。
第一の偏光光検出部311は、偏光軸を検出するための検出用偏光子(以下、「検光子」ともいう)311aと、検出用偏光子311aを通過した偏光光を検出するための第一の照度センサ311bとを備える。第一の照度センサ311bは、検出用偏光子311aを通過した偏光光を受光する受光部311c(
図6)を備える。受光部311cは支持部材311dによって偏光軸検出器31の筐体に固定されている。
【0032】
図7は、第一の偏光光検出部311の構成を示す模式図である。この
図7では、第一の偏光光検出部311が光照射部10Aから照射される偏光光を検出する場合の構成を示している。
図7に示すように、光照射部10Aの放電ランプ11からの光(放射光L1)は偏光子ユニット13Aを通過して直線偏光され、その偏光光L2が検出用偏光子311aに入射される。受光部311cは、このとき検出用偏光子311aを通過した光を検出光L3として受光する。
検出用偏光子311aは、例えばワイヤーグリッド型偏光素子である。なお、検出用偏光子311aは、直線偏光子であれば任意の偏光子を用いることができる。
【0033】
また、検出用偏光子311aは、その法線方向Sを回転軸として、180°以上の検出測定範囲内にわたり回転自在に構成されている。検出用偏光子311aの回転は、予め設定した基準位置P0からの回転角度θによって規定する。
検出用偏光子311aの回転角度θが、偏光子ユニット13Aを構成する偏光子13Aaの透過軸T1の方向と検出用偏光子311aの透過軸T2の方向とが一致する角度であるとき、受光部311cで受光する光の照度は最大となる。また、検出用偏光子311aの回転角度θが、透過軸T2が透過軸T1に直交する角度であるとき、受光部311cで受光する光の照度は最小となる。
【0034】
すなわち、受光部311cが受光する光の照度は、検出用偏光子311aの回転角度に応じて周期的に変動する。したがって、検出用偏光子311aを回転させながら受光部311cが受光する光の照度を監視することで、光照射部10A,10Bから照射される偏光光の偏光軸角度を測定することができる。
検出用偏光子311aを回転可能に構成するために、第一の偏光光検出部311は、検出用偏光子311aを回転するための回転機構を備える。当該回転機構は、例えば、
図5及び
図6に示すロータリアクチュエータ311eと、ロータリアクチュエータ311eに固定された回転子311fとを備える。
【0035】
ロータリアクチュエータ311eは、後述する制御部34によって駆動制御される。検出用偏光子311aは回転子311fに固定されており、制御部34が、ロータリアクチュエータ311eを駆動制御して回転子311fを回転させることで、検出用偏光子311aが回転する。これにより、検出用偏光子311aと第一の照度センサ311b(受光部311c)とが相対的に回転する。
【0036】
さらに、
図6に示すように、第一の照度センサ311bは、受光部311cへの入射光を制限する開口部311gを有する。開口部311gは、光照射部10A,10Bの偏光子ユニット13A,13Bが斜入射の光も通過させて偏光光を生成することに合わせて、これら斜入射の成分による偏光光を取り込むべく、入射角が例えば0°〜65°の範囲の偏光光を受光部311cに入射する形状となっている。
【0037】
また、第一の偏光光検出部311は、第一の照度センサ311bを冷却するための冷却機構を備える。当該冷却機構は、例えば空冷方式によるものであり、外部から冷気を取り込む冷気供給部311hを備える。
なお、冷却機構は、水冷方式によるものを採用することもできる。ただし、水冷バルブが破損した場合の影響などを鑑みると、空冷方式を採用することが好ましい。
【0038】
また、第二の偏光光検出部312は、第一の偏光光検出部311において検出用偏光子311aと、この検出用偏光子311aを回転させるための回転機構とを備えていないことを除いては、第一の偏光光検出部311と同様の構成を有する。
すなわち、第二の偏光光検出部312は、
図5及び
図6に示すように、光照射部10A,10Bからの偏光光をそのまま入射し、当該偏光光の照度を検出する第二の照度センサ312aを備える。第二の照度センサ312aは、光照射部10A,10Bからの偏光光を直接受光する受光部312b(
図6)を備える。
第二の照度センサ312aは、支持部材312cによって、受光部312bの高さ位置が第一の照度センサ311bの受光部311cの高さ位置と同等となるように支持されている。支持部材312cは、偏光光検出器31の筐体に固定されている。
【0039】
また、
図6に示すように、第二の照度センサ312aは、受光部312bへの入射光を制限する開口部312dを有する。開口部312dは、上述した開口部311fと同様に、入射角が例えば0°〜65°の範囲の偏光光を受光部312bに入射する形状となっている。
さらに、第二の偏光光検出部312は、第二の照度センサ312aを冷却するための冷却機構を備える。当該冷却機構は、例えば空冷方式によるものであり、外部から冷気を取り込む冷気供給部312eを備える。
なお、冷却機構は、水冷方式によるものを採用することもできる。ただし、水冷バルブが破損した場合の影響などを鑑みると、空冷方式を採用することが好ましい。
【0040】
第二の照度センサ312aは、第一の照度センサ311bと同じ波長域に感度を有するものであることが好ましい。ただし、放電ランプ11の放射光を同時に検出できれば、異なる波長域に感度を有するものであってもよい。
具体的には、第一の照度センサ311b及び第二の照度センサ312aは、例えば200nm〜400nmの波長域に感度を有するものであることが好ましい。より具体的には、第一の照度センサ311b及び第二の照度センサ312aは、例えば、波長254nm、313nm、365nmの照度が測定しやすいことが好ましい。
【0041】
また、第一の照度センサ311bの受光部311cと第二の照度センサ312aの受光部312bとは、放電ランプ11の管軸方向(長手方向)に沿って並設する。放電ランプ11の管軸方向は、偏光軸検出器31を移動させるY方向と同じ方向である。
これは、放電ランプ11から放射される光は、管径方向では照度変化が大きく、管軸方向では照度変化が小さいためである。このように、受光部311cと受光部312bとを放電ランプ11の管軸方向(長手方向)に沿って併設することで、第一の照度センサ311bと第二の照度センサ312aとが検出する光の照度の差を少なくすることができる。
なお、第一の偏光光検出部311及び第二の偏光光検出部312が、それぞれ受光部を冷却するための冷却機構を有する場合について説明したが、放電ランプ11から放射される熱は、Y方向搬送部32等を介して偏光軸検出部31の下側からも伝達される。そのため、偏光軸検出部31の筐体の底部に断熱部材を設けたり、回転機構を浮かせたりしてもよい。
【0042】
次に、偏光測定装置30を構成する制御部34について説明する。
図8は、偏光測定装置30の構成を示すブロック図である。
上述したように、偏光測定装置30は、偏光軸検出器31、X方向搬送部32、Y方向搬送部33、制御部34及びモニタ35を備える。
制御部34は、回転子制御部34aと、入力信号変換部34bと、偏光特性演算部34cと、画像表示部34dと、搬送制御部34eとを備える。
【0043】
回転子制御部34aは、第一の偏光光検出部311に対してロータリアクチュエータ311dを駆動制御するための駆動指令を出力する。本実施形態では、各偏光測定位置において、検光子311aを予め設定した回転角度範囲θ1≦θ≦θ2内で複数の指定角度に回転し、各指定角度で第一の照度センサ311bが偏光光を測定する。回転角度範囲は、第一の照度センサ311bが検出する偏光光の照度が最小となるはずである検光子311aの角度(設定基準値θa)を跨いで、例えば±20°の範囲に設定する。
【0044】
例えば、設定基準値θaが120°に設定されている場合には、回転角度範囲は100°≦θ≦140°となる。
また、本実施形態では、上記回転角度範囲において、例えば、θ=θaを除いて10°刻みで偏光光を測定する角度位置を設定する。すなわち、回転角度範囲が100°≦θ≦140°である場合、θ=θ1=100°、θ=110°、θ=130°、θ=θ2=140°で偏光光を測定する。回転子制御部34aは、検光子311aを上記4つの角度位置のいずれかとするために、ロータリアクチュエータ311dに対して駆動指令を出力する。
【0045】
入力信号変換部34bは、第一の照度センサ311bが検出した照度情報である検出照度値(照度カウント値)Cd、及び第二の照度センサ312aが検出した照度情報である参照照度値(照度カウント値)Crを入力し、これらの検出信号を増幅して偏光特性演算部34cに出力する。
ここで、第一の照度センサ311bと第二の照度センサ312aとは、同じタイミングで受光光の照度を検出するものであり、入力信号変換部34bは、2つのセンサで同時に検出された2つの検出信号を入力するように構成されている。
【0046】
偏光特性演算部34cは、入力信号変換部34bから入力した照度情報に基づいて、光照射部10A,10Bから照射される偏光光の偏光特性を演算する。本実施形態では、偏光特性演算部34cは、上記偏光特性として偏光軸角度と消光比とを測定する。
画像表示部34dは、偏光特性演算部34cで演算した偏光特性をモニタ35に出力する。
搬送制御部34eは、X方向搬送部32及びY方向搬送部33を駆動制御し、偏光軸検出器31をXY方向に移動して所定の偏光測定位置に移動する。
制御部34及びモニタ35は、放電ランプ11から放射される紫外光の影響(主に熱の影響)を受けないように、偏光軸検出器31、X方向搬送部32及びY方向搬送部33とは離れた位置に設置されている。制御部34は、偏光軸検出器31への駆動指令の出力や偏光軸検出器31からの検出信号の取得等を、図示しないケーブルを介して行う。
【0047】
図9は、制御部34で実行する偏光測定処理手順の一例を示すフローチャートである。この偏光測定処理は、所定の偏光測定位置における偏光光の測定手順を示すものである。
先ずステップS1では、制御部34は、回転子制御部34aからロータリアクチュエータ311dに対して駆動指令を出力し、検光子311aを指定角度まで回転する。ここで、指定角度の初期値はθ=θ1とする。
【0048】
次にステップS2では、制御部34は、第一の照度センサ311bから検出照度値Cd、第二の照度センサ312aから参照照度値Crを取得し、ステップS3に移行する。
ステップS3では、前記ステップS2で取得した検出照度値Cdで参照照度値Crを除算し、補正後照度値Ccを算出する(Cc=Cr/Cd)。この補正後照度値Ccは、検出照度値Cdに含まれる放電ランプ11からの光の時間毎の照度変動による誤差を、参照照度値Crで補正したものである。
【0049】
次にステップS4では、制御部34は、予め設定したすべての角度位置で照度測定が完了しているか否かを判定する。そして、照度測定が完了していないと判断した場合には、指定角度を新たに設定して前記ステップS1に移行し、照度測定が完了したと判断した場合にはステップS5に移行する。
ステップS5では、制御部34は、前記ステップS3で算出した各角度位置における補正後照度値Ccに基づいて、偏光光の偏光軸を算出する。
【0050】
本実施形態では、各補正後照度値Ccをもとにカーブフィッティングを行い、検光子311aの回転角度と補正後照度値Ccとの関係を示す偏光光角度特性(以下、単に「角度特性」ともいう)を求める。この偏光光角度特性は、検光子311aを回転させたときの検光子311aを通過した偏光光の照度の周期的な変化を示すものであり、上述した照度変動による誤差が補正された適切な特性である。そして、求めた角度特性から偏光軸角度を算出する。
【0051】
ここでは、フィッティング関数として、例えばAcos
2(θ+B)+Cの関数を用いる。なお、フィッティング関数としては、他の関数を用いることもできる。
図10は、上記角度特性の一例を示す図である。ここで、偏光光を測定する角度位置は、θ=120°±10°、θ=120°±20°の4点としている。
この
図10において、縦軸はモニタ照度カウント値[%]、横軸は検光子311aの回転角度θ[度]である。図中破線は参照照度値Crであり、点a〜dは、各角度位置で算出した補正後照度値Ccをプロットしたものである。また、曲線Fは、これら4つの測定点a〜dの値をもとに、最小二乗法およびニュートン法によりカーブフィッティングを行って定数A,B,Cを求めることで得られた曲線であり、上記偏光光角度特性に相当する。
【0052】
この角度特性Fにおいて、モニタ照度カウント値が最小となる角度が、検光子311aの透過軸が偏光子13Aa(または13Ba)の透過軸と実際に直交する検光子311aの回転角度である。また、モニタ照度カウント値が最小となる角度から90°を差し引いた角度が、モニタ照度カウント値が最大となる角度であり、検光子311aの透過軸が偏光子13Aa(または13Ba)の透過軸と実際に一致する検光子311aの回転角度である。
【0053】
ここで、モニタ照度カウント値が最小となる角度は、上述したカーブフィッティングにより求めたパラメータBであり、設定基準値θaに対して所定のずれ角θbを含むものとなる(B=θa+θb)。そこで、制御部34は、角度(θa+θb)をもとに、実際の偏光軸角度(偏光子13Aa,13Baの透過軸の方向)を出力する。
検光子311aの回転角度は、上述したように、基準位置P0に対する角度θによって規定されている。そこで、偏光軸角度が、検光子311aと同様に基準位置P0に対する角度によって規定されている場合には、制御部34は、角度(θa+θb)から90°を差し引いた角度を実際の偏光軸角度として出力する。また、偏光軸角度が、基準位置P0から90°ずれた位置に対する角度によって規定されている場合には、制御部34は、角度(θa+θb)をそのまま実際の偏光軸角度として出力する。
【0054】
次にステップS6で、制御部34は、前記ステップS5で算出した、モニタ照度カウント値が最小となる角度(θa+θb)まで検光子311aを回転し、ステップS7に移行する。
ステップS7では、制御部34は、第一の照度センサ311bから検出照度値Cdを取得し(
図10の測定点e)、これを偏光光の最小照度としてステップS8に移行する。
ステップS8では、制御部34は、前記ステップS5で算出した、モニタ照度カウント値が最小となる角度(θa+θb−90°)まで検光子311aを回転し、ステップS9に移行する。
【0055】
ステップS9では、制御部34は、第一の照度センサ311bから検出照度値Cdを取得し(
図10の測定点f)、これを偏光光の最大照度としてステップS10に移行する。
ステップS10では、制御部34は、前記ステップS7で取得した最小照度と、前記ステップS9で取得した最大照度との比(最大照度/最小照度)に基づいて消光比を算出する。
ステップS11では、制御部34は、画像表示部34dからモニタ35に対して、前記ステップS5で演算した偏光軸角度と前記ステップS10で演算した消光比とを出力する。これにより、モニタ35に偏光特性の測定結果が表示される。
なお、
図9のステップS1〜S4が回転制御部に対応し、ステップS5〜S10が偏光特性演算部に対応している。また、ステップS5が偏光軸角度演算部に対応し、ステップS6〜S10が消光比演算部に対応している。
【0056】
次に、本実施形態の動作及び効果について説明する。
先ず、制御部34は、X方向搬送部32及びY方向搬送部33を駆動制御し、偏光光検出器31を、偏光子ユニット13Aの複数の偏光子13AaのうちY方向の最端に位置する偏光子13Aaの直下に配置する。このように、制御部34は、偏光光検出器31を、偏光特性の測定対象である偏光子13Aaを通過した偏光光の照射領域に配置する。
設定基準値θa=120°である場合、検光子311aがθ=120°であるときに、第一の照度センサ311bが検出する偏光光の照度が最小となるはずである。そのため、はじめに、制御部34は、ロータリアクチュエータ311dを駆動制御して、検光子311aをθ=θa−20°=100°となるように回転する。
【0057】
そして、この状態で、第一の照度センサ311bと第二の照度センサ312aとで、同時に偏光光の照度を測定し、制御部34はこれら2つのセンサで測定した照度情報を取得する。すなわち、制御部34は、第一の照度センサ311bから、検光子311aを通過した偏光光の照度情報である検出照度値Cdを取得し、第二の照度センサ312aから、検光子311aを通過しない偏光光の照度情報である参照照度値Crを取得する。
【0058】
次に、制御部34は、ロータリアクチュエータ311dを駆動制御し、検光子311aをθ=100°の位置からθ=110°となるように回転する。そして、その位置で、制御部34は、第一の照度センサ311bと第二の照度センサ312aとで測定した検出照度値Cdと参照照度値Crとを取得する。
その後は、制御部34は、検光子311aをθ=130°とθ=140°とにそれぞれ回転し、同様に第一の照度センサ311bと第二の照度センサ312aとで測定した検出照度値Cdと参照照度値Crとを取得する。
【0059】
そして、制御部34は、各角度位置で得られた検出照度値Cdと参照照度値Crとに基づいて、
図10に示すような角度特性を算出する。
検出照度値Cdは、検光子311aを通過した偏光光の照度値であるため、偏光子13Aaの透過軸と検光子311aの透過軸とのなす角に応じて値が変動する。したがって、検光子311aの回転角度θを変化させながら検出照度値Cdの変動を監視することで、検光子311aの回転角度と検光子311aを通過した偏光光の照度情報との関係を示す角度特性を算出することができる。
【0060】
しかしながら、光源である放電ランプ11は、アークの揺らぎにより光量が時々刻々と変化しており、検光子311aの回転角度θを変化している間に放電ランプ11からの放射光の光量が変化するといった現象が生じる。
そのため、この放電ランプのアークの揺らぎを考慮せず、検出照度値Cdをそのまま用いて角度特性を算出すると、放電ランプ11から照射される光の時間ごとの照度変動による誤差を含んだ角度特性が算出されてしまい、偏光測定精度が著しく低下する。
【0061】
そこで、本実施形態では、第一の照度センサ311bで検光子311aを介した光照射部からの偏光光の照度を測定し、これに同期して、第二の照度センサ312aで検光子311aを介さない光照射部からの偏光光の照度を測定する。つまり、両者で同じアークの揺らぎを見ることにより、第二の照度センサ312aで得られた参照照度値Crを、第一の照度センサ311bで得られた検出照度値Cdの基準値として用いるようにする。
【0062】
制御部34は、第一の照度センサ311bから得られた検出照度値Cdを、第二の照度センサ312aから得られた参照照度値Crで除算することで、検出照度値Cdに含まれるアークの揺らぎに起因する照度変動による誤差を補正する。そして、補正後の照度値(補正後照度値Cc)をもとにカーブフィッティングの手法を用いて
図10に示すような角度特性Fを算出する。
【0063】
上述したように、同時に測定した検出照度値Cd及び参照照度値Crは、アークの揺らぎ条件が同じである。したがって、補正後照度値Ccを用いることで、検光子311aを回転させているうちにアークが変化していたとしても精度良く角度特性を算出することができる。
制御部34は、
図10に示すような角度特性Fを算出すると、当該角度特性Fに基づいて偏光軸角度を算出する。具体的には、角度特性Fをもとに、検光子311aを通過した偏光光の照度が最小となる検光子311aの回転角度(θa+θb)を特定し、これをもとに実際の偏光軸角度を出力する。
【0064】
次に、制御部34は、角度特性Fを用いて、偏光光の消光比を算出する。先ず、制御部34は、偏光光の最小照度を検出するために、ロータリアクチュエータ311dを駆動制御して検光子311aをθ=(θa+θb)に回転する。その状態で、制御部34は、第一の照度センサ311bから最小照度値である検出照度値Cdを取得する(
図10の測定点e)。
【0065】
続いて、制御部34は、偏光光の最大照度を検出するために、ロータリアクチュエータ311dを駆動制御して検光子311aをθ=(θa+θb−90°)に回転する。その状態で、制御部34は、第一の照度センサ311bから最大照度値である検出照度値Cdを取得する(
図10の測定点f)。
そして、制御部34は、最小照度値と最大照度値との比(最大照度値/最小照度値)に基づいて消光比を算出する。
【0066】
以上により、偏光子ユニット13Aの複数の偏光子13AaのうちY方向の最端に位置する偏光子13Aaを通過した偏光光の偏光特性が得られる。次に、制御部34は、Y方向搬送部33を駆動制御し、偏光光検出器31を直前に偏光特性を測定した偏光子13Aaに隣接する偏光子13Aaの真下に配置する。このように、偏光特性の測定対象を順次切り替えて偏光特性を測定する。
【0067】
偏光子ユニット13Aのすべての偏光子13Aaに対する偏光特性測定が完了すると、制御部34は、X方向搬送部33及びY方向搬送部33を駆動制御し、偏光光検出器31を、偏光子ユニット13Bの複数の偏光子13BaのうちY方向の最端に位置する偏光子13Baの真下に配置する。そして、偏光子ユニット13Aの場合と同様に、各偏光子13Baに対してそれぞれ偏光特性を測定する。
【0068】
定点において、以上のように検出照度値Cdと参照照度値Crとを検出し、参照照度値Crを検出照度値Cdで補正したデータをもとに偏光軸角度を測定した結果を
図11のαに示す。ここで、
図11の縦軸は偏光軸角度、横軸は偏光軸角度の測定回数である。実験結果αに示すように、本実施形態では、測定された偏光軸角度にほとんどばらつきがなく、標準偏差3σは0.004であった。すなわち、測定された偏光軸角度は、±0.004°という極めてばらつきの少ない範囲に99.7%が含まれるということである。
【0069】
比較例として、本実施形態のように参照照度値Crによる補正を行わず、検出照度値Cdのみを用いて偏光軸角度を測定した。その結果を
図11のβに示す。
実験結果βに示すように、比較例では常に測定結果が変動しており、時折強い突出値も散見される。これは、検光子311aを回転させて角度の異なる4点で偏光光を測定している間にアークの揺らぎが生じ、偏光軸角度を安定して測定できないためである。このように、アークの揺らぎによって測定結果がばらつくことが視覚的にも理解できる。
【0070】
また、比較例の測定結果を統計した結果、測定された偏光軸角度の標準偏差3σは0.035であった。すなわち、測定された偏光軸角度は、±0.035°というばらつきを持つということである。
偏光光照射装置100においては、光配光処理の要求精度の観点から、偏光軸角度を設定値に対して±0.05°以内に調整することが望ましい。すなわち、偏光測定の要求精度は±0.01°程度であることが望ましい。しかしながら、上記比較例では、偏光測定の要求精度を満たすことはできない。
【0071】
本実施形態では、検光子を有する第一の偏光光検出部311とは別に、検光子を介さずに直接偏光光を検出する第二の偏光光検出部312を備え、第一の偏光光検出部311と第二の偏光光検出部312とで、同時に同じ偏光光を検出する。
したがって、第二の偏光光検出部312で検出した照度情報を偏光光の基準照度情報とし、第一の偏光光検出部311で検出した照度情報に含まれる放電ランプ11のアークの揺らぎに起因する時間ごとの照度変動による誤差を補正することができる。そのため、第一の偏光光検出部311の検光子311aを回転させたときの検出光の照度の周期的な変化を示す角度特性を精度良く算出することができ、偏光軸角度及び消光比を精度良く算出することができる。
【0072】
また、第一の偏光光検出部311と第二の偏光光検出部312とは、放電ランプ11の長手方向に並べて配置する。このように、放電ランプ11の照度変化が少ない方向に並べて配置するので、場所ごとの依存性を少なくすることができ、信頼性のある測定結果が得られる。
特に、光源として2灯式以上のランプを適用した場合、第一の偏光光検出部311と第二の偏光光検出部312とがランプの管径方向に並べて配置されていると、測定対象のランプに隣接するランプから放射される光の影響を受け易くなってしまい、信頼性のある測定結果が得られない。本実施形態では、第一の偏光光検出部311と第二の偏光光検出部312とを放電ランプ11の長手方向に並べて配置するため、光源として2灯式以上のランプを適用した場合であっても、信頼性のある測定結果を得ることができる。
【0073】
さらに、第一の偏光光検出部311と第二の偏光光検出部312とは、放電ランプ11の直下に配置された状態で使用され、熱的な条件が厳しい。例えば、検光子311aを保持する保持部材をアルミ等で形成した場合、放電ランプ11より放射される紫外光(熱)の影響により当該保持部材が熱膨張し、検光子311aと受光部311cとの相対位置がずれ、受光部311cで検出する光の照度が変化するおそれがある。
本実施形態では、第一の偏光光検出部311と第二の偏光光検出部312とに、それぞれ第一の照度センサ311b、第二の照度センサ312aを冷却するための冷却機構を設けるので、安定して偏光光を検出することができる。
【0074】
また、第二の偏光光検出部312で検出した照度情報(参照照度値Cr)をもとに、第一の偏光光検出部311で検出した照度情報(検出照度値Cd)を補正する際、検出照度値Cdを参照照度値Crで除算することで、放電ランプ11のアークの揺らぎに起因する時間ごとの照度変動による誤差を補正した補正後照度値Ccを算出する。このように、比較的簡易な手法で、上記誤差を補正することができる。
【0075】
さらに、偏光光の測定点は、第一の偏光光検出部311の検光子311aを回転させたときの検出光の照度が最小となるよう設定された設定基準値θaを跨いた所定の回転角度範囲内の4点とする。そして、これら4点の測定点での照度情報に基づいて、第一の偏光光検出部311の検光子311aを回転させたときの検出光の照度の周期的な変化を示す角度特性を算出する。
このように、検出光の照度が最小となる角度の近傍で測定した照度情報を角度特性の算出に用いるため、ノイズ成分の影響を抑えた角度特性を算出することができる。
また、光照射部10A,10Bからの偏光光を直接検出する第二の偏光光検出部を設けるため、偏光光の偏光軸角度及び消光比を測定しながら、偏光光の照度を測定することもできる。このように、偏光光の偏光特性の測定と偏光光の照度の測定とを同時に行うことができ、効率が良い。
【0076】
以上のように、本実施形態では、時間ごとの照度変動を有する光源を用いた場合であっても、当該照度変動の影響を受けずに偏光光の偏光軸角度及び消光比を簡便かつ高精度に測定することができる。
したがって、光照射部から照射される偏光光の偏光軸が所望の偏光軸となっているかどうか等を適切に判断することができる。そして、所望の偏光軸となっていない場合には、所望の偏光軸とするべく光照射部の偏光子の配置角度を調整する等の処理が可能であり、適切な光配向処理を行うことができる。
【0077】
(変形例)
上記実施形態においては、検出照度値Cdを参照照度値Crで除算することで補正後照度値Ccを算出する場合について説明したが、例えば、別の方式を適用することもできる。
以下、別の方式として、減算と平均値とを用いて補正する方式について説明する。
先ず、θ=θa±20°、θ=θa±10°の計4点で、第一の偏光光検出部311及び第二の偏光光検出部312は検出照度値Cd及び参照照度値Crをそれぞれ測定する。ここで、各指定角度で測定した検出照度値CdをCd1,Cd2,Cd3,Cd4とし、各指定角度で測定した参照照度値CrをCr1,Cr2,Cr3,Cr4とする。
【0078】
そして、制御部34は、各指定角度で測定した参照照度値Cr1〜Cr4の平均値Craを算出し、検出照度値Cdnから平均値Craと参照照度値Crnとの差分を差し引いた値を補正後照度値Ccとして算出する。すなわち、補正後照度値Ccは、Cc1=Cd1−(Cra−Cr1)、Cc2=Cd2−(Cra−Cr2)、Cc3=Cd3−(Cra−Cr3)、Cc4=Cd4−(Cra−Cr4)である。
【0079】
以降の処理は、
図9のステップS5以降の処理と同様である。すなわち、制御部34は、補正後照度値Cc1〜Cc4をもとに、最小二乗法およびニュートン法によりカーブフィッティングを行ってフィッティング関数Acos
2(θ+B)+Cの定数A,B,Cを求める。制御部34は、このようにして偏光光角度特性を算出する。
この場合にも、検出照度値Cdに含まれる放電ランプ11のアークの揺らぎに起因する時間ごとの照度変動による誤差を補正した照度値をもとに、偏光光角度特性を求めることができ、精度良く偏光軸角度及び消光比を測定することができる。
【0080】
さらに、上記実施形態においては、θ=θa±20°とθ=θa±10°とでそれぞれ1回ずつ計4回、第一の偏光光検出部311で照度を測定する場合について説明したが、測定回数は許容測定時間に応じて適宜設定可能である。最小二乗法による算出は測定点が3点でも行うことができるため、測定回数は3回であってもよい。4点測定した場合は、3点の組み合わせを4つ用いて、それぞれについて角度特性を算出するなどにより、測定結果の精度を高めるようにしてもよい。また、当然、測定回数は5回以上であってもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、照度測定に際し、10°刻みで検光子311aを回転する場合について説明したが、刻み角度も適宜設定可能である。
さらに、上記実施形態においては、偏光測定位置を各偏光子13Aa,13Baの中央の1箇所のみに設定する場合について説明したが、1枚の偏光子内で偏光軸角度のばらつきがあることを考慮して、各偏光子に対して偏光測定位置を複数箇所設定することもできる。この場合、各偏光測定位置における測定結果を加重平均するなどにより、最終的な偏光特性を算出すればよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、偏光測定装置30で測定した偏光軸角度をもとに、偏光子13Aaや偏光子13Baの偏光軸角度が所望の偏光軸角度となるよう、偏光子13Aaや偏光子13Baの角度を自動的に調整する機構を設けてもよい。なお、偏光子13Aaや偏光子13Baの角度調整は、作業者が手動で行ってもよい。
さらに、上記実施形態においては、第一の照度センサ311bの受光部311cを、支持部材311dによって偏光軸検出器31の筐体に固定する場合について説明したが、受光部311cは検光子311aと共に回転可能な構成であってもよい。ただし、照度を安定して測定するためには、上記実施形態のように受光部311cを固定し、検光子311aと受光部311cとを相対的に回転させる構成であることが好ましい。
【0083】
また、上記実施形態においては、光源として2灯式の放電ランプ11を適用する場合について説明したが、1灯式であってもよいし、3灯式以上であってもよい。
さらにまた、上記実施形態においては、ワークWとして光配向膜が形成された液晶パネルを用いる場合について説明したが、例えば、視野角補償フィルムのような、ロールに巻かれた長尺帯状のワークであってもよい。