(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0009】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
【0010】
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
【0011】
この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(
図1参照)。
【0012】
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を構成する。
【0013】
カーカス層13は、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13は、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
【0014】
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチールあるいは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
【0015】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、リムフランジに対する左右のビード部の接触面を構成する。
【0016】
[トレッドパターン]
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、RV(Recreational Vehicle)等に装着されるウィンター用タイヤのトレッドパターンを示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端である。
【0017】
この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画された複数の陸部31〜33と、これらの陸部31〜33に配置された複数のラグ溝41〜43とをトレッド部に備える(
図2参照)。
【0018】
周方向主溝とは、摩耗末期を示すウェアインジケータを有する周方向溝であり、一般に、5.0[mm]以上の溝幅および7.5[mm]以上の溝深さを有する。また、ラグ溝とは、3.0[mm]以上の溝幅および4.0[mm]以上の溝深さを有する横溝をいう。また、後述するサイプとは、陸部に形成された切り込みであり、一般に1.0[mm]未満のサイプ幅を有する。
【0019】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における左右の溝壁の距離の最大値として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド踏面と溝壁の延長線との交点を基準として、溝幅が測定される。また、溝がタイヤ周方向にジグザグ状あるいは波状に延在する構成では、溝壁の振幅の中心線を基準として、溝幅が測定される。
【0020】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0021】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0022】
例えば、
図2の構成では、ストレート形状を有する4本の周方向主溝21、22がタイヤ赤道面CLを中心として左右対称に配置されている。このように、複数の周方向主溝21、22がタイヤ赤道面CLを境界として左右対称に配置された構成では、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域の摩耗形態が均一化されて、タイヤの摩耗寿命が向上する点で好ましい。
【0023】
しかし、これに限らず、周方向主溝21、22がタイヤ赤道面CLを中心として左右非対称に配置されても良い(図示省略)。また、周方向主溝が、タイヤ赤道面CL上に配置されても良い(図示省略)。また、周方向主溝が、タイヤ周方向に屈曲あるいは湾曲しつつ延在するジグザグ形状あるいは波状形状を有しても良いし、3本あるいは5本以上の周方向主溝が配置されても良い(図示省略)。
【0024】
また、
図2の構成では、4本の周方向主溝21、22により、5列の陸部31〜33が区画されている。
【0025】
ここでは、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の周方向主溝22、22を最外周方向主溝と呼ぶ。また、左右の最外周方向主溝22、22を境界として、トレッド部センター領域およびトレッド部ショルダー領域を定義する。
【0026】
また、5列の陸部31〜33のうち、中央にある陸部31をセンター陸部と呼ぶ。また、最外周方向主溝22、22に区画されたタイヤ幅方向内側の左右の陸部32、32をセカンド陸部と呼ぶ。また、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の陸部33、33をショルダー陸部と呼ぶ。左右のショルダー陸部33、33は、左右のタイヤ接地端T、T上にそれぞれ配置される。
【0027】
なお、
図2の構成では、センター陸部31が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。これに対して、周方向主溝がタイヤ赤道面CL上に配置される構成(図示省略)では、この周方向主溝に区画されて成る左右の陸部が、センター陸部となる。
【0028】
また、
図2の構成では、すべて陸部31〜33が、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝41〜43をそれぞれ有している。また、これらのラグ溝41〜43が、陸部31〜33をタイヤ幅方向に貫通するオープン構造を有し、また、タイヤ周方向に所定間隔で配列されている。これにより、すべての陸部31〜33が、ラグ溝41〜43によりタイヤ周方向に複数のブロックに分断されて、ブロック列となっている。
【0029】
なお、これに限らず、ラグ溝41〜43が一方の端部にて陸部31〜33内で終端するセミクローズド構造を有しても良い(図示省略)。この場合には、陸部31〜33が、タイヤ周方向に連続するリブとなる。
【0030】
[センター陸部およびセカンド陸部]
図3は、
図2に記載した空気入りタイヤのトレッド部センター領域の陸部を示す拡大図である。
図4は、
図3に記載したセカンド陸部を示す拡大図である。
【0031】
この空気入りタイヤ1では、トレッド部センター領域にある陸部31、32が、複数のサイプ51、52をそれぞれ有する。これらのサイプ51、52は、二次元サイプ(平面サイプ)51および三次元サイプ(立体サイプ)52に分類される。これらのサイプ51、52により、陸部31、32のエッジ成分が確保されて、タイヤのトラクション性が向上する。
【0032】
二次元サイプとは、サイプ長さ方向を法線方向とする断面視(サイプ幅方向かつサイプ深さ方向を含む断面視)にて直線形状のサイプ壁面を有するサイプである。二次元サイプは、トレッド踏面にて、ストレート形状を有しても良いし、ジグザグ形状、波状形状あるいは円弧形状を有しても良い。
【0033】
三次元サイプとは、サイプ長さ方向を法線方向とする断面視にて、サイプ幅方向に屈曲した形状のサイプ壁面を有するサイプである。三次元サイプは、二次元サイプと比較して、対向するサイプ壁面の噛合力が強いため、陸部の剛性を補強する作用を有する。三次元サイプは、トレッド踏面にて、ストレート形状を有しても良いし、ジグザグ形状、波状形状あるいは円弧形状を有しても良い。かかる三次元サイプには、例えば、以下のものが挙げられる(
図5および
図6参照)。
【0034】
図5および
図6は、三次元サイプの一例を示す説明図である。これらの図は、ピラミッド型のサイプ壁面を有する三次元サイプの透過斜視図を示している。これらの三次元サイプでは、対向する一対のサイプ壁面が、複数の角錐あるいは角柱をサイプ長さ方向に連続して配列して成る壁面形状を有している。
【0035】
図5の三次元サイプ52では、サイプ壁面が、三角錐と逆三角錐とをサイプ長さ方向に連結した構造を有する。言い換えると、サイプ壁面が、トレッド面側のジグザグ形状と底部側のジグザグ形状とを互いにタイヤ幅方向にピッチをずらせ、該トレッド面側と底部側とのジグザグ形状の相互間で互いに対向し合う凹凸を有する。また、サイプ壁面が、これらの凹凸において、タイヤ回転方向に見たときの凹凸で、トレッド面側の凸屈曲点と底部側の凹屈曲点との間、トレッド面側の凹屈曲点と底部側の凸屈曲点との間、トレッド面側の凸屈曲点と底部側の凸屈曲点とで互いに隣接し合う凸屈曲点同士の間をそれぞれ稜線で結ぶと共に、これら稜線間をタイヤ幅方向に順次平面で連結することにより形成される。また、一方のサイプ壁面が、凸状の三角錐と逆三角錐とを交互にタイヤ幅方向に並べた凹凸面を有し、他方のサイプ壁面が、凹状の三角錐と逆三角錐とを交互にタイヤ幅方向に並べた凹凸面を有する。そして、サイプ壁面が、少なくともサイプの両端最外側に配置した凹凸面をブロックの外側に向けている。なお、このような三次元サイプとして、例えば、特許第3894743号公報に記載される技術が知られている。
【0036】
また、
図6の三次元サイプ52では、サイプ壁面が、ブロック形状を有する複数の角柱をサイプ深さ方向に対して傾斜させつつサイプ深さ方向およびサイプ長さ方向に連結した構造を有する。言い換えると、サイプ壁面が、トレッド面においてジグザグ形状を有する。また、サイプ壁面が、ブロックの内部ではタイヤ径方向の2箇所以上でタイヤ周方向に屈曲してタイヤ幅方向に連なる屈曲部を有し、また、該屈曲部においてタイヤ径方向に振幅を持ったジグザグ形状を有する。また、サイプ壁面が、タイヤ周方向の振幅を一定にする一方で、トレッド面の法線方向に対するタイヤ周方向への傾斜角度をトレッド面側の部位よりもサイプ底側の部位で小さくし、屈曲部のタイヤ径方向の振幅をトレッド面側の部位よりもサイプ底側の部位で大きくする。なお、このような三次元サイプとして、例えば、特許第4316452号公報に記載される技術が知られている。
【0037】
ここで、この空気入りタイヤ1では、トレッド部センター領域にある陸部31、32のうちの少なくとも1列の陸部32が、タイヤ周方向に延在する三次元サイプ52を備える。この三次元サイプ52は、タイヤ全周に渡って延在して、陸部32をタイヤ幅方向に分断する。
【0038】
例えば、
図2の構成では、トレッド部センター領域にある3列の陸部31、32のうち、センター陸部31の各ブロックが、6本の二次元サイプ51をそれぞれ有し、一方で、三次元サイプ52を有していない。また、すべての二次元サイプ51が、セミクローズド構造を有し、一方の端部にてブロックの四方のエッジ部に開口し、他方の端部にてブロックの内部で終端している。このため、ブロックがサイプにより分断されておらず、タイヤ幅方向に連続した構造を有している。これにより、ブロックの剛性が確保されている。
【0039】
また、
図2および
図3に示すように、左右のセカンド陸部32、32の各ブロックが、4本の二次元サイプ51と、1本の三次元サイプ52とをそれぞれ有している。また、すべての二次元サイプ51が、一方の端部にてブロックの周方向主溝21、22側のエッジ部に開口し、他方の端部にてブロックの内部で終端している。これにより、ブロックの剛性が確保されている。一方で、三次元サイプ52が、タイヤ全周に渡って延在して、陸部32のブロックをタイヤ幅方向に分断している。具体的には、三次元サイプ52が、ブロックをタイヤ周方向に貫通して、ブロックを区画する前後のラグ溝42、42にそれぞれ開口している。また、三次元サイプ52と二次元サイプ51とが接続していない。これにより、ブロックの剛性が確保され、また、三次元サイプ52によりブロックのエッジ成分が増加している。
【0040】
上記の構成では、トレッド部センター領域の陸部32が、タイヤ全周に渡って延在する三次元サイプ52を備えることにより、陸部32のエッジ成分が増加する。これにより、ウェット路およびスノー路での制動性能および駆動性能が向上する。また、三次元サイプ52の壁面がタイヤ接地時にて噛み合うことにより、二次元サイプ51と比較して、陸部32のブロックの剛性が確保される。これにより、タイヤのスノー性能が向上する。
【0041】
なお、
図3の構成では、センター陸部31の溝面積比S1と、セカンド陸部32の溝面積比S2とが、S1<S2の関係を有することが好ましい。
【0042】
溝面積比S1、S2は、各陸部における溝面積/(溝面積+接地面積)により定義される。溝面積とは、接地面における溝の開口面積をいう。また、溝とは、陸部に形成されたラグ溝および細溝をいい、トレッド部の周方向溝、サイプ、カーフ、切欠部などを含まない。また、接地面積とは、陸部と路面との接触面積をいう。また、溝面積および接地面積は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面にて、測定される。
【0043】
また、
図3の構成では、複数の陸部31〜33におけるセンター陸部31にあるラグ溝41の溝幅Wr1と、セカンド陸部32にあるラグ溝42の溝幅Wr2とが、Wr1<Wr2の関係を有する。
【0044】
また、
図3の構成では、センター陸部31の陸部幅Wb1と、セカンド陸部32の陸部幅Wb2とが、Wb1<Wb2の関係を有することが好ましい。
【0045】
陸部幅Wb1、Wb2は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、陸部の踏面における幅方向の距離の最大値として測定される。また、陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、陸部の踏面と溝壁の延長線との交点を基準として、陸部幅が測定される。
【0046】
[変形例]
図7は、
図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、三次元サイプ52を有するセカンド陸部32の拡大図を示している。
【0047】
図4の構成では、三次元サイプ52のタイヤ周方向に対する傾斜角θが、θ=0[deg]である。かかる構成では、三次元サイプ52がタイヤ周方向に延在するので、三次元サイプがタイヤ幅方向に延在する構成と比較して、タイヤ周方向にかかるブロックの剛性が大きい。これにより、制駆動時におけるブロックの倒れ込みが抑制されて、タイヤの制動性能が向上する。
【0048】
しかし、これに限らず、
図7に示すように、三次元サイプ52が、タイヤ周方向に対して傾斜して配置されても良い。このとき、三次元サイプ52のタイヤ周方向に対する傾斜角θが、−5[deg]≦θ≦5[deg]の範囲にあることが好ましい。かかる構成では、三次元サイプ52がタイヤ赤道面CLに対して略平行に延在することにより、タイヤ周方向にかかるブロックの剛性が適正に確保される。
【0049】
また、
図4の構成では、三次元サイプ52が、陸部32の踏面にて、全体としてタイヤ周方向に直線的に延在するジグザグ形状を有している。しかし、これに限らず、三次元サイプ52が、陸部32の踏面にて、全体として屈曲あるいは湾曲しつつ延在するジグザグ形状を有しても良い(図示省略)。
【0050】
三次元サイプ52が、全体として屈曲あるいは湾曲したジグザグ形状を有する構成では、三次元サイプ52の傾斜角θが、三次元サイプ52の前後の開口部を結ぶ直線とタイヤ周方向とのなす角として測定される。
【0051】
また、
図4の構成では、タイヤ周方向に隣り合うブロックの三次元サイプ52、52が、ラグ溝42に対する開口部を相互に対向させて配置されている。このため、隣り合う三次元サイプ52、52の開口部のオフセット量Gが、G=0[mm]となっている。
【0052】
しかし、これに限らず、例えば、
図7のように、三次元サイプ52がタイヤ周方向に対して傾斜して配置されることにより、隣り合う三次元サイプ52、52の開口部が相互にオフセットして配置されても良い。また、このとき、三次元サイプ52、52のオフセット量Gと、陸部32の幅Wb2とが、G/Wb2≦0.15の関係を有することが好ましい。
【0053】
オフセット量Gは、タイヤ周方向に隣り合う三次元サイプ52、52のラグ溝42に対する開口位置のタイヤ幅方向の距離として測定される。
【0054】
図8は、
図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、セカンド陸部32を三次元サイプ52のサイプ壁面に沿って切断したときの概略図を示している。
【0055】
図4の構成では、三次元サイプ52が陸部32のブロックをタイヤ周方向に貫通してラグ溝42に開口している。このとき、
図8に示すように、三次元サイプ52が、ラグ溝42に対する接続部に底上部521を有することが好ましい。これにより、ブロックのタイヤ周方向のエッジ部の剛性が確保されて、タイヤ接地時におけるブロックの倒れ込みが抑制される。
【0056】
三次元サイプ52の底上部521とは、
図8において、三次元サイプ52のサイプ深さHs’が、最大サイプ深さHsに対して15[%]以上45[%]以下となる部分をいう。
【0057】
底上部521におけるサイプ深さHs’は、タイヤプロファイルから底上部521までのサイプ深さ方向の距離として測定される。
【0058】
また、
図3の構成では、トレッド部センター領域にある陸部31、32のブロックが、複数の二次元サイプ51をそれぞれ有している。これにより、サイプによる吸水作用およびエッジ成分により、タイヤのウェット性能およびスノー性能が向上する。
【0059】
しかし、これに限らず、二次元サイプ51に代えて、例えば、カーフや細溝などが配置されても良い(図示省略)。
【0060】
また、
図3の構成では、左右のセカンド陸部32、32が、タイヤ周方向に延在する三次元サイプ52を有し、センター陸部31は、かかる三次元サイプ52を有していない。このため、センター陸部31が、三次元サイプ52に分断されておらず、タイヤ幅方向に連続した構造を有している。かかる構成では、センター陸部31の剛性が確保されるので、制駆動時におけるブロックの倒れ込みが抑制されて、タイヤのスノー性能が向上する点で好ましい。
【0061】
しかし、これに限らず、センター陸部31が、タイヤ周方向に延在する三次元サイプ52を有し、左右のセカンド陸部32、32が、かかる三次元サイプ52を有さない構成が採用されても良い(図示省略)。
【0062】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画されて成る複数の陸部31〜33と、これらの陸部31〜33に配置される複数のラグ溝41〜43とを備える(
図2参照)。また、センター陸部31およびセカンド陸部32のうちの少なくとも1列の陸部32が、複数のラグ溝42によりタイヤ周方向に分断された複数のブロックと、タイヤ全周に渡って延在して陸部32をタイヤ幅方向に分断する三次元サイプ52とを備える(
図3および
図4参照)。
【0063】
かかる構成では、トレッド部センター領域の陸部32が、タイヤ全周に渡って延在する三次元サイプ52を備えることにより、陸部32のエッジ成分が増加する。これにより、ウェット路およびスノー路での制動性能および駆動性能が向上する利点がある。また、三次元サイプ52の壁面がタイヤ接地時にて噛み合うことにより、二次元サイプと比較して、陸部32のブロックの剛性が確保される。これにより、制駆動時におけるブロックの倒れ込みが抑制されて、タイヤのオフロード性能(マッド性能およびスノー性能)が向上する利点がある。
【0064】
また、この空気入りタイヤ1は、4本以上の周方向主溝21、22と、周方向主溝21、22に区画されて成る5列の陸部31〜33とを備える(
図2参照)。また、複数の陸部31〜33のうち、センター陸部31が、複数のラグ溝41と、タイヤ幅方向に連続した構造をもつ複数のブロックとを有する(
図3参照)。また、セカンド陸部32が、複数のラグ溝42と、三次元サイプ52によりタイヤ幅方向に分断された複数のブロックとを有する。かかる構成では、センター陸部31の剛性が確保されるので、制駆動時におけるブロックの倒れ込みが抑制されて、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。また、セカンド陸部32が三次元サイプ52を有するので、セカンド陸部32が三次元サイプ52に代えて周方向細溝を有する構成(図示省略)と比較して、陸部32の剛性および接地面積が増加する。これにより、ウェット路およびスノー路におけるタイヤの旋回性能が向上する利点がある。
【0065】
また、この空気入りタイヤ1は、4本以上の周方向主溝21、22と、周方向主溝21、22に区画されて成る5列の陸部31〜33とを備える(
図2参照)。また、センター陸部31が、複数のラグ溝41と、三次元サイプ52によりタイヤ幅方向に分断された複数のブロックとを有する(図示省略)。また、セカンド陸部32が、複数のラグ溝42と、タイヤ幅方向に連続した構造をもつ複数のブロックとを有する。かかる構成では、センター陸部31が三次元サイプ52を有するので、陸部31の剛性を確保しつつ、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
【0066】
また、この空気入りタイヤ1では、三次元サイプ52を有する陸部(
図2では、セカンド陸部32)が、2本以上の二次元サイプ51を複数のブロックにそれぞれ有する(
図3参照)。これにより、陸部32のエッジ成分が増加して、タイヤのマッド性能およびスノー性能が向上する利点がある。
【0067】
また、この空気入りタイヤ1では、三次元サイプ52が、陸部32のブロックをタイヤ周方向に貫通する(
図4参照)。これにより、陸部32のエッジ成分が増加して、タイヤのマッド性能およびスノー性能が向上する利点がある。
【0068】
また、この空気入りタイヤ1では、三次元サイプ52のタイヤ周方向に対する傾斜角θ(
図4および
図7参照)が、−5[deg]≦θ≦5[deg]の範囲にある。かかる構成では、三次元サイプ52がタイヤ赤道面CLに対して略平行に延在するので、雪上旋回時にて、ブロックの倒れこみが抑制されて、スノー制動性能および操縦安定性能が確保される利点がある。
【0069】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向に隣り合うブロックの三次元サイプ52の開口部のオフセット量Gと、陸部32の幅Wb(
図4では、セカンド陸部32の幅Wb2)とが、0≦G/Wb≦0.15の関係を有する。これにより、コーナリング時にて、ブロックの倒れこみが抑制されて、スノー制動性能および操縦安定性能が確保される利点がある。
【0070】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31の溝面積比S1と、セカンド陸部32の溝面積比S2とが、S1<S2の関係を有する(
図3参照)。これにより、センター陸部31の剛性の低下を抑制しつつ強いせん断力を確保できるので、泥濘路でのトラクション性能が更に向上する利点がある。
【0071】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31にあるラグ溝41の溝幅Wr1と、セカンド陸部32にあるラグ溝42の溝幅Wr2とが、Wr1<Wr2の関係を有する(
図3参照)。かかる構成では、センター陸部31の剛性を確保しつつ、排土性およびせん断力を確保できる。これにより、操縦安定性を維持しつつオフロード性能を向上できる利点がある。
【0072】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31の陸部幅Wb1と、セカンド陸部32の陸部幅Wb2とが、Wb1<Wb2の関係を有する(
図3参照)。これにより、センター陸部31のトータルの剛性バランスが向上するので、マッド性能とウェット性能とを両立できる利点があり、また、偏摩耗性能が向上する利点がある。
【0073】
また、この空気入りタイヤ1では、三次元サイプ52が、少なくとも一方の端部にてラグ溝42に接続すると共に、ラグ溝42に対する接続部に底上部521を有する(
図8参照)。かかる構成では、ブロックのタイヤ周方向のエッジ部の剛性が確保されて、タイヤ接地時におけるブロックの倒れ込みが抑制される。これにより、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
【実施例】
【0074】
図9は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0075】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)オフロード性能(スノー性能)および(2)ウェット性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ265/70R17 113Tの試験タイヤがリムサイズ17×7.5Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤに230[kPa]の空気圧およびJATMA規定の最大負荷が付与される。また、試験タイヤが、試験車両であるRV車の総輪に装着される。
【0076】
(1)オフロード性能に関する評価では、試験車両がスノー路面のテストコースを走行し、専門のテストドライバーが制動性能および駆動性能について官能評価を行う。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。また、数値が97以上であれば、オフロード性能が適正に維持されているといえる。
【0077】
(2)ウェット性能に関する評価では、試験車両がウェット路面を走行し、初速度40[km/h]からの制動距離が測定される。そして、測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0078】
実施例1〜7の試験タイヤは、
図1〜
図5に記載した構成を備える。ただし、実施例2の試験タイヤでは、タイヤ周方向に延在する三次元サイプ52が、セカンド陸部32ではなく、センター陸部31に配置される。また、実施例7の試験タイヤでは、センター陸部31およびセカンド陸部32のラグ溝幅Wr1、Wr2がWr1=4.2[mm]、Wr2=6.2[mm]であり、陸部幅Wb1、Wb2がWb1=22[mm]、Wb2=24[mm]である。
【0079】
従来例の試験タイヤでは、実施例1の試験タイヤにおいて、トレッド部センター領域の陸部31、32が、いずれも三次元サイプ52を備えていない。
【0080】
試験結果に示すように、実施例1〜7の試験タイヤでは、タイヤのオフロード性能を適正に維持しつつウェット性能を向上できることが分かる。