(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。
【0003】
この中でもコンデンサ用途は、その優れた耐電圧特性、低損失特性から直流用途、交流用途に限らず高電圧コンデンサ用に特に好ましく用いられている。
【0004】
最近では、各種電気設備がインバーター化されつつあり、それに伴いコンデンサの小型化、大容量化の要求が一層強まってきている。そのような市場、特に自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)や太陽光発電、風力発電用途の要求を受け、二軸配向ポリプロピレンフィルムの耐電圧性を向上させ、生産性、加工性を維持させつつ、一層の薄膜化が必須な状況となってきている。
【0005】
例えば、特許文献1〜2では、ポリプロピレンフィルムの剛性を規定した技術が提案されている。
【0006】
また、特許文献3では、熱収縮率、及び、F5値を所定の値に調整したフィルムに金属蒸着を施し、金属化フィルムを巻回した素子を真空中で熱プレスすることにより、高温使用におけるtanδの上昇を抑えたコンデンサ用フィルムを得るという技術が提案されている。
【0007】
また、特許文献4では、アイソタクチックペンタッド分率の高いポリプロピレンを用い、熱収縮率、F5値、表面粗さを所定の値に調整することにより、高温での電気特性、成形加工性に優れたコンデンサ用フィルムを得るという技術が提案されている。
【0008】
また、特許文献5では、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−ターシャリブチル−4−ハイドロキシフェニル)プロピオネート]メタンをポリプロピレンに添加し、フィルム厚み、収縮率、F5値を所定の値に調整することでハンドリング性、耐電圧性に優れたコンデンサ用フィルムを得るという技術が提案されている。
【0009】
また、特許文献6では、冷却ロールの温度、及び、フィルムの長さ方向・幅方向の延伸倍率を所定の値に調整することにより、耐電圧特性に優れるコンデンサ用フィルムを得るという技術が提案されている。
【0010】
また、特許文献7では、ポリブテン−1を含有しかつ所定の融点を持つポリプロピレン樹脂を用い、フィルムの表面粗さ、グロスを所定の値に調整することにより、熱収縮率が小さく、高電位傾度で使用される場合に優れた特性を持つコンデンサ用フィルムを得るという技術が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、フィルムの突刺強度が70g/μm以上であることが重要である。突刺強度が70g/μm未満の場合には、フィルムの耐電圧性の低下を招いたり、異物が混入した場合に短絡が生じる場合があり、コンデンサとしたときの容量低下やショート破壊を引き起こす可能性がある。上記観点からフィルムの突刺強度は、より好ましくは75g/μm以上、さらに好ましくは80g/μm以上である。上限は特に限定されないが、フィルムの剛性が高過ぎた場合、柔軟性が損なわれハンドリング性に劣る場合があるので200g/μmが上限であることが好ましい。
【0020】
発明者らは鋭意検討することにより、フィルムの突刺強度と高温時のコンデンサ耐電圧特性に高い相関性があり、コンデンサ特性の高温耐電圧および信頼性の向上には、フィルムの突刺強度が高くなるよう制御することが重要であることを見出したものである。ここで、突刺強度をかかる範囲に制御する方法としては、たとえば、使用原料や長手方向・幅方向の延伸倍率、延伸温度を後述する範囲に制御したり、二軸延伸(二軸配向)せしめた後の熱処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し(1段目熱処理工程)、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに施す(2段目熱処理工程)ことが挙げられる。
【0021】
中でも、長手方向の延伸倍率および幅方向の延伸倍率を後述する範囲内で高めること、ならびに、1段目の熱処理および2段目の熱処理をフィルムに施すことが重要である。
【0022】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、フィルム幅方向の120℃15分加熱処理における熱収縮率が1.0%以下であることが重要である。120℃15分加熱処理におけるフィルム幅方向の熱収縮率が1.0%を超える場合は、熱寸法安定性に劣り、特にコンデンサ製造工程および使用工程の熱によりフィルム自体の収縮が生じ、素子端部メタリコンとの接触不良により耐電圧性が低下し、信頼性に劣る場合がある。上記観点から120℃15分加熱処理におけるフィルム幅方向の熱収縮率は、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.6%以下である。下限は特に限定されないが、フィルムが膨張しすぎる場合はコンデンサ製造工程や使用工程の熱により素子の巻き状態が緩む場合があるので、好ましくは−1.0%である。ここで、120℃15分加熱処理におけるフィルム幅方向の熱収縮率をかかる範囲に制御する方法としては、たとえば、使用原料や長手方向・幅方向の延伸倍率、延伸温度を後述する範囲に制御したり、二軸延伸(二軸配向)せしめた後の熱処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し(1段目熱処理工程)、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに施す(2段目熱処理工程)ことが挙げられる。
【0023】
また本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、コンデンサ作製においてもプロセス条件が高温化する中で素子加工性およびコンデンサとしてのさらなる耐熱化を発揮する観点から、120℃15分加熱処理におけるフィルム長手方向の熱収縮率が3.0%以下であることが好ましく、より好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下である。熱収縮率が3.0%を超える場合は、熱寸法安定性に劣り、特に高温時の熱変形量が大きく、コンデンサ製造工程および使用工程の熱によりフィルム自体の収縮が生じ、フィルム間に隙間が生じる場合があり、耐電圧性が低下する場合がある。下限は特に限定されないが、フィルムが膨張しすぎる場合はコンデンサ製造工程や使用工程の熱により素子の巻き状態が緩む場合があるので、好ましくは−1.0%である。ここで、120℃15分加熱処理におけるフィルム長手方向の熱収縮率をかかる範囲に制御するには、たとえば、使用原料や長手方向・幅方向の延伸倍率、延伸温度、二軸延伸後の二段階の熱処理および弛緩処理工程での条件を後述する範囲に制御することにより達成可能である。
【0024】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの突刺伸度は2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.1mm以上、さらに好ましくは2.2mm以上である。突刺伸度が2.0mm未満の場合は、異物が混入した場合に、フィルムが貫通しやすくなることから、短絡が生じる場合があり、コンデンサとしたときの容量低下やショート破壊を引き起こす可能性がある。上限は特に限定されないが、実質上3.0mmが上限である。ここで、突刺伸度をかかる範囲に制御するには、たとえば、使用原料や長手方向・幅方向の延伸倍率、延伸温度、二軸延伸後の1段目熱処理工程、2段目熱処理工程および弛緩処理工程での条件を後述する範囲に制御することにより達成可能である。
【0025】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向のヤング率は5.0GPa以上であることが好ましく、より好ましくは5.3GPa以上、さらに好ましくは5.5GPa以上である。幅方向のヤング率が5.0GPa未満の場合は、フィルムの耐電圧性の低下を招いたり、金属膜を蒸着により形成する工程やコンデンサ素子巻き取り加工でシワが入るなど巻き取り性不良が生じたり、シワ起因で空気が混入してコンデンサの耐電圧性を低下させるなどの問題が生じる場合がある。上限は特に限定されないが、幅方向のヤング率が高過ぎた場合、製膜性が損なわれフィルム破れなどにより生産性に劣る場合があるので8.0GPaが上限である。ここで、幅方向のヤング率をかかる範囲に制御するには、たとえば、使用原料や長手方向・幅方向の延伸倍率、延伸温度、二軸延伸後の1段目熱処理工程、2段目熱処理工程および弛緩処理工程での条件を後述する範囲に制御することにより達成可能である。
【0026】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、固体粘弾性測定においてフィルム幅方向の23℃における損失正接(tanδ23)が0.08以下であることが好ましい。損失正接(tanδ)は固体粘弾性測定で得られる、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)との比であり、(tanδ)=(E”)/(E’)により導かれる係数である。すなわち損失正接(tanδ)が小さいほど分子運動性が抑制されていることを示唆し、フィルムをコンデンサに用いた場合、コンデンサ特性の高温耐電圧および信頼性の向上効果が得られやすくなる。(tanδ23)の値は、より好ましくは0.07以下、さらに好ましくは0.063以下である。下限は特に限定されないが0.01であることが好ましい。(tanδ23)の値を0.01より小さくしようとすると、製膜時の延伸倍率を大きくする必要があり、その場合は破れを誘発するなど製膜安定性の観点で問題が生じることがある。フィルム幅方向の23℃における損失正接(tanδ23)を0.08以下にせしめるには、たとえば、使用原料や長手方向・幅方向の延伸倍率、延伸温度、二軸延伸後の1段目熱処理工程、2段目熱処理工程および弛緩処理工程での条件を後述する範囲に制御することにより達成可能である。
【0027】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、高温時の耐電圧性に優れることから、通常15μm以下の一般コンデンサに有用であるのは勿論だが、特に高温環境下で用いられる自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)等に要求される薄膜の耐熱フィルムコンデンサ用に好適である。特にフィルム厚みは0.5μm以上5μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上3.0μm以下、さらに好ましくは0.8μm以上2.8μm以下である。ここで、フィルム厚みをかかる範囲に制御するには、たとえば、押出条件や延伸倍率、二軸延伸後の1段目熱処理工程、2段目熱処理工程および弛緩処理工程での条件を後述する範囲に制御することにより達成可能である。
【0028】
次に、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いると好ましい直鎖状ポリプロピレンについて説明する。直鎖状ポリプロピレンは、通常、包装材やコンデンサ用に使用されるものであるが、好ましくは冷キシレン可溶部(以下CXS)が4質量%以下でありかつメソペンタッド分率が0.95以上であるポリプロピレンであることが好ましい。これらを満たさないと製膜安定性に劣る場合があったり、二軸配向したフィルムを製造する際にフィルム中にボイドを形成する場合があり、熱寸法安定性および耐電圧性の低下が大きくなる場合がある。
【0029】
ここで冷キシレン可溶部(CXS)とはフィルムをキシレンで完全溶解せしめた後、室温で析出させたときに、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分のことをいい、立体規則性の低い、分子量が低い等の理由で結晶化し難い成分に該当していると考えられる。このような成分が多く樹脂中に含まれているとフイルムの熱寸法安定性が劣ったり、さらには絶縁破壊電圧が低下する等の問題を生じることがある。従って、CXSは4質量%以下であることが好ましいが、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。このようなCXSを有する直鎖状ポリプロピレンとするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはプロピレンモノマー自身で洗浄する方法等の方法が使用できる。
【0030】
同様な観点から直鎖状ポリプロピレンのメソペンタッド分率は0.95以上であることが好ましく、更に好ましくは0.97以上である。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、機械強度、絶縁破壊電圧が高くなるので好ましい。メソペンタッド分率の上限については特に規定するものではない。このように立体規則性の高い樹脂を得るには、n−ヘプタン等の溶媒で得られた樹脂パウダーを洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、組成の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。
【0031】
かかる直鎖状ポリプロピレンとしては、より好ましくはメルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分(230℃、21.18N荷重)、特に好ましくは2〜5g/10分(230℃、21.18N荷重)の範囲のものが、製膜性の点から好ましい。メルトフローレート(MFR)を上記の値とするためには、平均分子量や分子量分布を制御する方法などが採用される。
【0032】
かかる直鎖状ポリプロピレンとしては、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素による共重合成分などを含有してもよいし、プロピレンが単独ではない重合体がブレンドされていてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として例えばエチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテンー1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。共重合量またはブレンド量は、耐絶縁破壊特性、熱寸法安定性の点から、共重合量では1mol%未満とし、ブレンド量では10質量%未満とするのが好ましい。
【0033】
また、かかる直鎖状ポリプロピレンには、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることもできる。
【0034】
これらの中で、酸化防止剤の種類および添加量の選定は長期耐熱性の観点から重要である。すなわち、かかる酸化防止剤としては立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。その具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)とともに1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、BASF社製Irganox(登録商標)1330:分子量775.2)またはテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASF社製Irganox(登録商標)1010:分子量1177.7)等を併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン全量に対して0.03〜1.0質量%の範囲が好ましい。酸化防止剤が少なすぎると長期耐熱性に劣る場合がある。酸化防止剤が多すぎるとこれら酸化防止剤のブリードアウトによる高温下でのブロッキングにより、コンデンサ素子に悪影響を及ぼす場合がある。より好ましい含有量は0.1〜0.9質量%であり、特に好ましくは0.2〜0.8質量%である。
【0035】
また本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、高電圧性の観点から分岐鎖状ポリプロピレン(H)を含有させてもよく、添加する場合に0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは1〜5質量%含有することが好ましい。上記分岐鎖状ポリプロピレン(H)を含有させることで溶融押出した樹脂シートの冷却工程で生成する球晶サイズを容易に小さく制御でき、延伸工程で生成する絶縁欠陥の生成を小さく抑え、耐電圧性に優れたポリプロピレンフィルムを得ることができる。
【0036】
さらに、本発明のフィルムは、直鎖状ポリプロピレンと前記分岐鎖状ポリプロピレン(H)との混合物により構成されていることが好ましい。この場合、分岐鎖状ポリプロピレン(H)は、230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレート(MFR)が、log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74なる関係式を満たす分岐鎖状ポリプロピレン(H)であることが特に好ましい。
【0037】
230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレート(MFR)が、log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74なる関係式を満たす分岐鎖状ポリプロピレン(H)を得るには、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているようにポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているような方法等が好ましく用いられる。
【0038】
ここで、230℃で測定したときの溶融張力とは、JIS−K7210(1999)に示されるメルトフローレート(MFR)測定に準じて測定されたものである。具体的には、東洋精機製メルトテンションテスターを用いて、ポリプロピレンを230℃に加熱し、溶融ポリプロピレンを押出速度15mm/分で吐出してストランドとし、このストランドを6.4m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、溶融張力(単位cN)とする。また、230℃で測定したときのメルトフローレート(MFR)とは、JIS−K7210(1999)に準じて荷重21.18Nで測定されたもの(単位g/10分)である。
【0039】
上記の分岐鎖状ポリプロピレン(H)としては、上式を満たすことが好ましいが、特に限定されるものではなく、製膜性の観点からメルトフローレート(MFR)は1〜20g/10分の範囲にあるものが好ましく、1〜10g/10分の範囲にあるものがより好ましい。また溶融張力については、1〜30cNの範囲にあるものが好ましく、2〜20cNの範囲にあるものがより好ましい。また、ここでいう分岐鎖状ポリプロピレン(H)とは、カーボン原子10,000個中に対し5箇所以下の内部3置換オレフィンを有するポリプロピレンである。この内部3置換オレフィンの存在は
1H−NMRスペクトルのプロトン比により確認することができる。
【0040】
本発明においては、本発明の目的に反しない範囲で、結晶核剤を添加することができる。既述の通り、分岐鎖状ポリプロピレン(H)は既にそれ自身でα晶またはβ晶の結晶核剤効果を有するものであるが、別種のα晶核剤(ジベンジリデンソルビトール類、安息香酸ナトリウム等)、β晶核剤(1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド等のアミド系化合物、キナクリドン系化合物等)等が例示される。但し、上記別種の核剤の過剰な添加は延伸性の低下やボイド形成等による耐電圧の低下を引き起こす場合があるため、添加量は通常0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下とすることが好ましい。
【0041】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく用いられるものであるが、コンデンサのタイプに限定されるものではない。具体的には電極構成の観点では箔巻きコンデンサ、金属蒸着膜コンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含浸させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。また、形状の観点では、捲巻式であっても積層式であっても構わない。しかしながら本発明のフィルムの特性から特に金属蒸着膜コンデンサとして好ましく使用される。
【0042】
なお、ポリプロピレンフィルムは通常、表面エネルギーが低く、金属蒸着を安定的に施すことが困難であるために、金属付着力を良好とする目的で、蒸着前に表面処理を行うことが好ましい。表面処理とは具体的にコロナ放電処理、プラズマ処理、グロー処理、火炎処理等が例示される。通常ポリプロピレンフィルムの表面濡れ張力は30mN/m程度であるが、これらの表面処理によって、濡れ張力を37〜50mN/m、好ましくは39〜48mN/m程度とすることが、金属膜との接着性に優れ、保安性も良好となるので好ましい。
【0043】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上述した特性を与えうる原料を用い、二軸延伸されることによって得られる。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、フィルムの製膜安定性、厚み均一性、フィルムの突刺強度、熱寸法安定性を制御する点においてテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0044】
次に本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法を説明する。まず、ポリプロピレン樹脂を支持体上に溶融押出してポリプロピレン樹脂シートとし、このポリプロピレン樹脂シートを長手方向に延伸し、次いで幅方向に延伸して逐次二軸延伸せしめた後に、熱処理および弛緩処理を施して二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造する。その際、前記二軸延伸後の熱処理および弛緩処理工程では、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し(1段目熱処理工程)、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに施す(2段目熱処理工程)ことが重要である。以下、より具体的に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
まず、直鎖状ポリプロピレンに高溶融張力ポリプロピレン(分岐鎖状ポリプロピレン(H))をブレンドして溶融押出し、濾過フィルターを通した後、230〜260℃の温度でスリット状口金から押出し、60〜110℃の温度に制御された冷却ドラム上で固化させ未延伸シートを得る。キャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性が良好でかつ表面粗さの制御が可能なエアーナイフ法が好ましい。エアーナイフのエアー温度は、0〜100℃、好ましくは20〜70℃で、吹き出しエアー速度は130〜150m/sが好ましく、幅方向均一性を向上させるために2重管構造となっていることが好ましい。また、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアーが流れるようにエアーナイフの位置を適宜調整することが好ましい。
【0046】
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。まず未延伸フィルムを120〜150℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該シートを130℃〜150℃の温度に保ち、長手方向に2〜12倍に延伸した後、室温まで冷却する。より好ましい長手方向の延伸倍率としては9〜12倍であり、さらに好ましくは6〜9倍である。延伸方法や延伸倍率は、とくに限定されず用いるポリマー特性により適宜選択される。
【0047】
次いで長手方向に一軸延伸せしめたフィルムをテンターに導いてフィルムの端部をクリップで把持し、140〜165℃の温度で幅方向に7〜13倍に延伸する。より好ましい幅方向の延伸倍率としては9〜12倍である。幅方向の延伸倍率が7倍未満の場合、二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の機械強度が低下したり、厚み斑が悪化する為、耐電圧性が低下する場合がある。一方、幅方向の延伸倍率が13倍を超えると、破膜しやすくなり生産性が低下する場合がある。
【0048】
ここで、面積倍率は40倍以上であることが好ましい。本発明において、面積倍率とは、長手方向の延伸倍率に幅方向の延伸倍率を乗じたものである。面積倍率は、50倍以上であることがより好ましく、特に好ましくは60倍以上である。面積倍率が上記の範囲であることにより、突刺強度を高め、フィルム耐電圧の向上、さらにはコンデンサの耐電圧性の向上という効果が得られる。なお、面積倍率の上限は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から200倍以下であることが好ましい。
【0049】
本発明においては、続く熱処理および弛緩処理工程ではクリップで幅方向を緊張把持したまま幅方向に2〜20%の弛緩を与えつつ、115℃以上140℃以下の温度で1段目の熱処理をフィルムに施した後に、クリップで幅方向を緊張把持したまま前記1段目の熱処理温度を超えて、幅方向の延伸温度未満の条件で2段目の熱処理をフィルムに施すように多段方式の熱処理を行うことが、フィルムを高剛性化し、かつフィルムの熱収縮率を低減し、フィルム耐電圧特性を向上させる観点から重要である。
【0050】
弛緩処理工程における弛緩率は、熱寸法安定性を高める観点から5〜18%が好ましく、8〜15%がより好ましい。20%を超える場合はテンター内部でフィルムが弛みすぎ製品にシワが入り蒸着時にムラを発生させる場合があり、他方、弛緩率が2%より小さい場合は十分な熱寸法安定性が得られず、コンデンサとしたときの高温使用環境下で容量低下やショート破壊を引き起こす場合がある。また、フィルムの突刺伸度を高めるという観点からは、弛緩率は10%〜15%であることが好ましい。
【0051】
1段目熱処理温度は、延伸時の分子鎖配向を維持でき機械強度を高められる観点から、115℃以上140℃以下とすることが好ましく、120℃以上、138℃以下がより好ましく、125℃以上、135℃以下がさらに好ましい。115℃未満の熱処理温度では高温環境下でのコンデンサ特性において容量減少やショート破壊を引き起こす場合がある。他方、140℃を越える場合は分子鎖配向緩和が進行するため、フィルムの機械強度が低くなる場合がある。特にフィルムの幅方向のヤング率を高めるという観点からは、1段目熱処理温度は115〜135℃であることが好ましく、2段目熱処理温度は120〜145℃であることが好ましい。
【0052】
2段目熱処理温度を、1段目の熱処理温度を超えて、幅方向の延伸温度未満の温度とすることで、1段目の熱処理で緩和不十分な運動性の高い非晶分子鎖を緩和させることができる。その結果、高い剛性を保ちながら、熱収縮率を低減できる。この観点から、2段目熱処理温度は[(1段目の熱処理温度)+5℃]以上、[(幅方向の延伸温度)−5℃]以下が好ましく、[(1段目の熱処理温度)+8℃]以上、[(幅方向の延伸温度)−8℃]以下がさらに好ましい。
【0053】
上記のとおり、1段目の熱処理工程は、熱処理工程と弛緩処理工程が有することが好ましい。1段目の熱処理工程においては、弛緩処理が行われつつ、熱処理が行われることが特に好ましい。一方、2段目の熱処理工程は、熱処理工程を有することが好ましいが、弛緩処理工程を有しないことが好ましい。つまり、2段目の熱処理工程においては、熱処理工程を有することが好ましいが、弛緩処理工程を有しないことが好ましい。すなわち、2段目の熱処理工程においては、熱処理が行われることは好ましいが、弛緩処理は行われないことが好ましい。
【0054】
多段式の熱処理を経た後はクリップで幅方向を緊張把持したまま80〜100℃での冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム製品ロールを巻き取る。ここでフィルムを巻取る前に蒸着を施す面に蒸着金属の接着性を良くするために、空気中、窒素中、炭酸ガス中あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理を行うことが好ましい。
【0055】
なお、本発明のフィルムを得るために、特に重要な製造条件は以下の条件である。
・1段目熱処理温度が、115℃以上140℃以下であること。
・1段目熱処理温度が、幅方向の延伸温度未満の温度であること。
・2段目熱処理温度が、1段目の熱処理温度を超える温度であること。
・1段目の熱処理工程において、5〜16%の弛緩処理が施されていること。
【0056】
加えて、以下の条件が満たされていることが、より好ましい。
・面積倍率が40倍以上(特に好ましくは60倍以上)であること。
【0057】
続いて、本発明にかかる二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いてなる金属膜積層フィルム、およびそれを用いてなるフィルムコンデンサについて説明する。
【0058】
本発明にかかる金属膜積層フィルムは、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜が設けられてなる金属膜積層フィルムである。
【0059】
本発明において、上記した二軸配向ポリプロピレンフィルム表面に金属膜を設けて金属膜積層フィルムとする方法は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、アルミニウムを蒸着してフィルムコンデンサの内部電極となるアルミニウム蒸着膜等の金属膜を設ける方法が好ましく用いられる。このとき、アルミニウムと同時あるいは逐次に、例えば、ニッケル、銅、金、銀、クロムおよび亜鉛などの他の金属成分を蒸着することもできる。また、蒸着膜上にオイルなどで保護層を設けることもできる。
【0060】
本発明では、必要により、金属膜を形成後、金属膜積層フィルムを特定の温度でアニール処理を行なったり、熱処理を行なったりすることができる。また、絶縁もしくは他の目的で、金属膜積層フィルムの少なくとも片面に、ポリフェニレンオキサイドなどのコーティングを施すこともできる。
【0061】
また、本発明にかかるフィルムコンデンサは、このようして得られた金属膜積層フィルムを用いてなるフィルムコンデンサである。具体的には、本発明の金属膜積層フィルムを、種々の方法で積層もしくは巻回すことによって、フィルムコンデンサを得ることができる。巻回型フィルムコンデンサの好ましい製造方法を例示すると、次のとおりである。
【0062】
ポリプロピレンフィルムの片面にアルミニウムを減圧状態で蒸着する。その際、フィルム長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着する。次に、表面の各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、表面が一方にマージンを有した、テープ状の巻取リールを作成する。左もしくは右にマージンを有するテープ状の巻取リールを左マージンおよび右マージンのもの各1本ずつを、幅方向に蒸着部分がマージン部よりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、巻回体を得る。
【0063】
両面に蒸着を行う場合は、一方の面の長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着し、もう一方の面には長手方向のマージン部が裏面側蒸着部の中央に位置するようにストライプ状に蒸着する。次に表裏それぞれのマージン部中央に刃を入れてスリットし、両面ともそれぞれ片側にマージン(例えば表面右側にマージンがあれば裏面には左側にマージン)を有するテープ状の巻取リールを作製する。得られたリールと未蒸着の合わせフィルム各1本ずつを、幅方向に金属化フィルムが合わせフィルムよりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、巻回体を得る。
【0064】
以上のようにして作成した巻回体から芯材を抜いてプレスし、両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型フィルムコンデンサを得ることができる。フィルムコンデンサの用途は、鉄道車輌用、自動車用(ハイブリットカー、電気自動車)、太陽光発電・風力発電用および一般家電用等、多岐に亘っており、本発明のフィルムコンデンサもこれら用途に好適に用いることができる。
【0065】
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
【0066】
(1)フィルム厚み
二軸配向ポリプロピレンフィルムの任意の場所の合計10箇所を23℃65%RHの雰囲気下で接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)を用いて、その平均値を当該二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルム厚みとした。
【0067】
(2)フィルムの突刺強度
二軸配向ポリプロピレンフィルムを切り出した試験片(幅80mm×長さ80mm)を、カトーテック株式会社製ハンディー圧縮試験機KES−G5のステージに弛みのないようにセットした。先端Rが1mmのニードル針を使用し、2mm/secの速度で突き刺し、針が貫通する時の荷重を読み取り、試験片のフィルム厚みで除した値を突刺強度(g/μm)として算出した。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0068】
なお、突刺強度算出の為に用いるフィルム厚みは上記(1)で測定した値を用いた。
【0069】
(3)フィルムの突刺伸度
二軸配向ポリプロピレンフィルムを切り出した試験片(幅80mm×長さ80mm)を、カトーテック株式会社製ハンディー圧縮試験機KES−G5のステージに弛みのないようにセットした。先端Rが1mmのニードル針を使用し、2mm/secの速度で突き刺し、針が貫通する時の伸度を読み取り、突刺伸度(mm)とした。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0070】
(4)120℃15分加熱処理における熱収縮率
二軸配向ポリプロピレンフィルムの長手方向、幅方向のそれぞれについて、幅(短辺)10mm、長さ(長辺)200mm(測定方向)の試料を5本切り出した。つまり、二軸配向ポリプロピレンフィルムの長手方向が試料の長辺方向(測定方向)となるように、長手方向の熱収縮率の測定用の試料を5本切り出した。同様に、二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向が試料の長辺方向(測定方向)となるように、幅方向の熱収縮率の測定用の試料を5本切り出した。
【0071】
試料において、試長が約150mmとなるように両端から25mmの位置にそれぞれ印を付け、印間の間隔をニコン社製万能投影機試(V−16A)を用いて測定し、試長(l
0)とする。次に、試料を紙に挟み込み荷重ゼロの状態で120℃に保温されたオーブン内で、15分間加熱後に取り出して、室温で冷却後、寸法(l
1)を測定して下記式にて求め、5本の平均値を熱収縮率とした。
【0072】
熱収縮率={(l
0−l
1)/l
0}×100(%)
つまり、長手方向の熱収縮率の測定用の5本の試料を用いて得られた熱収縮率を平均し、長手方向の熱収縮率とした。同様に、幅方向の熱収縮率の測定用の5本の試料を用いて得られた熱収縮率を平均し、幅方向の熱収縮率とした
(5)幅方向のヤング率
JIS K7127(1999)に規定された測定方法に準じて行った。二軸配向ポリプロピレンフィルムを幅方向について長さ(長辺)150mm×幅(短辺)10mmの矩形に切り出しサンプルとした。つまり、二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向を、サンプルの長辺方向として切り出した。23℃65%RHの雰囲気下にて、引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてフィルムの幅方向に引張試験を行った。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値を求めた。
【0073】
(6)23℃の損失正接(tanδ23)
以下条件にて測定した。二軸配向ポリプロピレンフィルムから、フィルム幅方向を長辺方向として切り出した試験片(幅(短辺)5mm×長さ(長辺)20mm)を23℃雰囲気下で装置チャック部に取付け、一旦−60℃まで低温冷却し、昇温開始後−50℃に到達した時点から測定を開始した。23℃の損失正接(tanδ23)は動的粘弾性法により粘弾性−温度曲線を描き、23℃での貯蔵弾性率(E’23)と損失弾性率(E”23)をそれぞれ読み取り、次式から算出した。
(tanδ23)=(E”23)/(E’23)
装置 :Rheogel−E4000(UBM製)
ジオメトリー :引張
チャック間距離:10mm
周波数 :10Hz
歪み :0.1〜0.2%
温度範囲 :−50〜150℃
昇温速度 :3℃/分
測定雰囲気 :窒素中
(7)蒸着コンデンサ特性の評価(耐電圧、信頼性)
後述する各実施例および比較例で得られたフィルムに、ULVAC製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が8Ω/sqで長手方向に垂直な方向にマージン部を設けた所謂T型マージンパターンを有する蒸着パターンを施し、幅50mmの蒸着リールを得た。
【0074】
次いで、このリールを用いて皆藤製作所製素子巻機(KAW−4NHB)にてコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、減圧下、105℃の温度で10時間の熱処理を施し、リード線を取り付けコンデンサ素子を仕上げた。
【0075】
こうして得られたコンデンサ素子10個を用いて、105℃高温下でコンデンサ素子に300VDCの電圧を印加し、該電圧で10分間経過後にステップ状に50VDC/1分で徐々に印加電圧を上昇させることを繰り返す所謂ステップアップ試験を行なった。この際の静電容量変化を測定しグラフ上にプロットして、該容量が初期値の70%になった電圧を上記(1)で測定したフィルム厚みで除した値を耐電圧(V/μm)とした。また、静電容量が初期値に対して10%以下に減少するまで電圧を上昇させた後に、コンデンサ素子を解体し破壊の状態を調べて、保安性(信頼性)を以下の通り評価した。
【0076】
AA:素子形状の変化は無く貫通状の破壊は観察されない。
【0077】
A:素子形状の変化は無くフィルム10層以内の貫通状破壊が観察される。
【0078】
B:素子形状に変化が認められる若しくは10層を超える貫通状破壊が観察される。
【0080】
AAは問題なく使用でき、Aでは条件次第で使用可能である。B、Cでは実用上の問題を生じる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。
【0082】
(実施例1)
直鎖状ポリプロピレンとしてメソペンタッド分率が0.985で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂に、Basell社製分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(高溶融張力ポリプロピレンProfax PF-814)を1.0質量%ブレンドし温度260℃の押出機に供給し、樹脂温度260℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを90℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸シートを得た。次いで、該シートを複数のロール群にて徐々に140℃に予熱し、引き続き145℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.2倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、160℃の温度で幅方向に10倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら130℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま140℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・min/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.7μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。
【0083】
(実施例2〜5および比較例1〜3)
二軸延伸後の熱処理温度および弛緩処理の条件を表1に記した条件とした以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0084】
(実施例6)実施例1と同様にして未延伸シートを得た後、該シートを複数のロール群にて徐々に140℃に予熱し、引き続き140℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に6.0倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、162℃の温度で幅方向に11倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に弛緩率12%を与えながら132℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま145℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・min/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み4.9μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。
【0085】
各実施例および各比較例にて得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性を表1に示す。
【0086】
【表1】