特許第5920544号(P5920544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5920544-タイヤ用ゴム組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920544
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20160428BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20160428BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20160428BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20160428BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160428BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160428BHJP
   C08J 5/00 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L9/06
   C08L45/00
   C08K3/00
   C08K3/36
   B60C1/00 Z
   !C08J5/00CEQ
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-543208(P2015-543208)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2014082223
(87)【国際公開番号】WO2015093316
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2015年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-261032(P2013-261032)
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】中島 美由紀
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−166865(JP,A)
【文献】 特開2013−028720(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/133432(WO,A1)
【文献】 特開2011−122057(JP,A)
【文献】 特表2013−526622(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0077902(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/152696(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0331498(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
C08J 5/00−5/24
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未変性のブタジエンゴムを35重量%以上65重量%未満、結合スチレン量が35重量%以上である乳化重合スチレンブタジエンゴムを含み、前記ブタジエンゴムおよび乳化重合スチレンブタジエンゴムの合計が50重量%以上90重量%以下であるジエン系ゴム100重量部に対し、軟化点が100℃以上の芳香族変性テルペン樹脂をWT重量部配合し、前記ブタジエンゴムの配合量(WB重量部)との比(WB/WT)が2.5〜5.0であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100重量部に対し、充填剤を50〜120重量部配合すると共に、前記充填剤中、CTAB比表面積が120〜180m2/gであるシリカが10重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物を使用したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項4】
ライトトラック用タイヤであることを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、更に詳しくは、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減すると共に、ウェットグリップ性能及びタイヤ耐久性を向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の悪化を抑制するため、環境に配慮した空気入りタイヤが求められている。このためタイヤの転がり抵抗を低減し燃費性能を向上することが必要になる。転がり抵抗を低減する手法としては、例えば、タイヤを構成するゴム組成物中のカーボンブラックの配合量を減少したり、ポリマーとしてガラス転移温度の低いものを利用したりすることが知られている。しかし、このようなゴム組成物は転がり抵抗を低減する効果は得られるものの、タイヤの重要な基本特性であるグリップ性能、特にウェットグリップ性能が低下したり、引張り破断伸びが低下して耐カット性や耐チッピング性などのタイヤ耐久性が悪化したりする虞があった。
【0003】
特許文献1は、ポリマーとしてガラス転移温度の低いゴムを使用すると共に、芳香族変性テルペン樹脂を配合したタイヤ用ゴム組成物により、燃費性能とグリップ性能を共に改良することを提案している。
【0004】
しかしながら、このタイヤ用ゴム組成物は耐カット性や耐チッピング性などのタイヤ耐久性が不充分であり、また低燃費性能についても更なる向上が求められており改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2009−138157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述する問題点を解決するため、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減すると共に、ウェットグリップ性能及びタイヤ耐久性を向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、未変性のブタジエンゴムを35重量%以上65重量%未満、結合スチレン量が35重量%以上である乳化重合スチレンブタジエンゴムを含み、前記未変性のブタジエンゴムおよび乳化重合スチレンブタジエンゴムの合計が50重量%以上90重量%以下であるジエン系ゴム100重量部に対し、軟化点が100℃以上の芳香族変性テルペン樹脂をWT重量部配合し、前記未変性のブタジエンゴムの配合量(WB重量部)との比(WB/WT)が2.5〜5.0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、ジエン系ゴムが未変性のブタジエンゴム及び結合スチレン量が35重量%以上である乳化重合スチレンブタジエンゴムからなり、この両者の合計が50重量%以上90重量%以下になるように組成し、かつ軟化点が100℃以上の芳香族変性テルペン樹脂の配合量(WT重量部)と未変性のブタジエンゴムの配合量(WB重量部)との比(WB/WT)を2.5〜5.0にしたので、空気入りタイヤにしたとき、転がり抵抗を低減すると共に、ウェットグリップ性能及びタイヤ耐久性を向上することができる。
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴム100重量部に対し、充填剤を50〜120重量部配合すると共に、前記充填剤中、CTAB比表面積が120〜180m2/gであるシリカを10重量%以上にすることができる。
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、転がり抵抗を低減すると共に、ウェットグリップ性能及びタイヤ耐久性を向上することができる。
【0011】
また本発明の空気入りタイヤは、ライトトラック用に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤの実施形態の一例を示すタイヤ子午線方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ジエン系ゴムは、未変性のブタジエンゴム及び結合スチレン量が35重量%以上である乳化重合スチレンブタジエンゴムを必ず含む。未変性のブタジエンゴムとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられる未変性のブタジエンゴム(以下、単に「ブタジエンゴム」と記すことがある。)を使用することができる。ブタジエンゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中35重量%以上65重量%未満、好ましくは35〜62重量%、より好ましくは35〜55重量%、さらに好ましくは35〜50重量%にする。ブタジエンゴムの含有量が35%未満であると転がり抵抗を低減する効果および耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。またブタジエンゴムの含有量が65重量%以上であるとウェットグリップ性能が低下する。
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ジエン系ゴムは、ブタジエンゴム及び結合スチレン量が35重量%以上である乳化重合スチレンブタジエンゴムを必ず含む。ブタジエンゴムとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられるブタジエンゴムを使用することができる。ブタジエンゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中35重量%以上65重量%未満、好ましくは35〜62重量%、より好ましくは35〜55重量%、さらに好ましくは35〜50重量%にする。ブタジエンゴムの含有量が35%未満であると転がり抵抗を低減する効果および耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。またブタジエンゴムの含有量が65重量%以上であるとウェットグリップ性能が低下する。
【0015】
本発明においてスチレンブタジエンゴムとしては、乳化重合スチレンブタジエンゴムを使用する。乳化重合スチレンブタジエンゴムを含有することにより、タイヤ用ゴム組成物の加工性、物性、コストの総合バランスが良好になる。
【0016】
乳化重合スチレンブタジエンゴムの含有量は、上述した未変性のブタジエンゴムとの合計がジエン系ゴム100重量%中50重量%以上90重量%以下、好ましくは60〜75重量%になるように決めるものとする。ブタジエンゴムと結合スチレン量が35重量%以上の乳化重合スチレンブタジエンゴムの合計が50重量%未満であると、タイヤ用ゴム組成物の耐摩耗性が低下し、タイヤにしたときの転がり抵抗が大きくなる。
【0017】
乳化重合スチレンブタジエンゴムの含有量は、上述したブタジエンゴムとの合計がジエン系ゴム100重量%中50重量%以上90重量%未満、好ましくは60〜75重量%になるように決めるものとする。ブタジエンゴムと結合スチレン量が35重量%以上の乳化重合スチレンブタジエンゴムの合計が50重量%未満であると、タイヤ用ゴム組成物の耐摩耗性が低下し、タイヤにしたときの転がり抵抗が大きくなる。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴム、結合スチレン量が35重量%以上の乳化重合スチレンブタジエンゴム以外の他のジエン系ゴムを、ジエン系ゴム100重量%中10重量%を超え50重量%以下、好ましくは25〜40重量%の範囲内で含有する。他のジエン系ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、溶液重合スチレンブタジエンゴム、結合スチレン量が35重量%未満の乳化重合スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等を例示することができる。なかでも他のジエン系ゴムとして、天然ゴム、結合スチレン量が35重量%未満の乳化重合スチレンブタジエンゴムが好ましい。とりわけ、結合スチレン量が35重量%未満の乳化重合スチレンブタジエンゴムが好ましく、タイヤ用ゴム組成物をより容易に加工することを可能にすることができる。
【0019】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、芳香族変性テルペン樹脂を配合することにより、ウェットグリップ性能を向上する。これは芳香族変性テルペン樹脂が、シリカ、カーボンブラック等の充填剤の分散性を良好にすると共に、充填剤とジエン系ゴムとの相溶性を一層改良するからである。
【0020】
芳香族変性テルペン樹脂の配合量は、未変性のブタジエンゴムの配合量をWB重量部、芳香族変性テルペン樹脂の配合量をWT重量部とするとき、両者の比(WB/WT)が2.5〜5.0、好ましくは3.0〜4.0になるように調節する。ブタジエンゴムと芳香族変性テルペン樹脂の配合量の比(WB/WT)が2.5未満であると、転がり抵抗を低減する効果が十分に得られない。また配合量の比(WB/WT)が5.0を超えると、ウェットグリップ性能が低下する。
【0021】
芳香族変性テルペン樹脂の配合量は、ブタジエンゴムの配合量をWB重量部、芳香族変性テルペン樹脂の配合量をWT重量部とするとき、両者の比(WB/WT)が2.5〜5.0、好ましくは3.0〜4.0になるように調節する。ブタジエンゴムと芳香族変性テルペン樹脂の配合量の比(WB/WT)が2.5未満であると、転がり抵抗を低減する効果が十分に得られない。また配合量の比(WB/WT)が5.0を超えると、ウェットグリップ性能が低下する。
【0022】
本発明において、芳香族変性テルペン樹脂としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネンなどのテルペンとスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンのうち少なくとも一つの芳香族化合物とを重合させて得られる芳香族変性テルペン樹脂が好ましく用いられる。
【0023】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、充填剤を配合することにより、転がり抵抗を低くしながら、ウェットグリップ性能及びタイヤ耐久性を改良することができる。
【0024】
充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは50〜120重量部、より好ましくは60〜90重量部にするとよい。充填剤の配合量が50重量部未満であるとウェットグリップ性能が低下する。また充填剤の配合量が120重量部を超えると転がり抵抗を低減する効果が十分に得られない。
【0025】
充填剤としては、シリカが好ましく、タイヤにしたとき転がり抵抗を低減することができる。シリカの配合量は、全充填剤中、好ましくは10重量%以上、より好ましくは、10〜40重量%にするとよい。シリカの配合量が10重量%未満であると転がり抵抗を低減する効果が十分に得られない。
【0026】
またシリカとしては、CTAB比表面積が好ましくは120〜180m2/g、より好ましくは140〜170m2/gであるとよい。シリカのCTAB比表面積が120m2/g未満であると、ウェット性能が悪化し、耐摩耗性も悪化する。またシリカのCTAB比表面積が180m2/gを超えると、転がり抵抗を低減する効果が十分に得られない。本明細書において、シリカのCTAB比表面積はJIS K6217−3により測定するものとする。
【0027】
本発明において、シリカの種類として、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるシリカ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。このようなシリカは、市販のシリカの中から適宜選択して使用することが出来る。
【0028】
また、シリカと共にシランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を改良することができ好ましい。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し、好ましくは3〜15重量%、より好ましくは4〜10重量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量が3重量%未満であると、シリカの分散性を十分に改良することができない。また、シランカップリング剤の配合量が15重量%を超えると、シランカップリング剤同士が凝集・縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0029】
シランカップリング剤の種類としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましい。硫黄含有シランカップリング剤としては、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0030】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、充填剤としてシリカ以外の他の充填剤を配合することができる。他の充填剤としては、カーボンブラック、クレイ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ等を例示することができる。なかでもカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物の強度を改良し、タイヤにしたときタイヤ耐久性を改良することができる。これら他の充填剤は一つの種類を使用することができる。また複数種を組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0032】
タイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部、サイドウォール部を構成することができる。このタイヤ用ゴム組成物は、これらの部位から選ばれる少なくとも一か所に使用するとよい。なかでもトレッド部を構成するのが好ましい。本発明のタイヤ用ゴム組成物をこれらの部位に使用した空気入りタイヤは、転がり抵抗を低減し燃費性能を向上可能にすると共に、耐カット性や耐チッピング性及びウェットグリップ性能を従来レベル以上に向上することが出来る。
【0033】
本発明の空気入りタイヤは、ライトトラック用空気入りタイヤとすることが好ましい。ライトトラックとは、ライトデューティートラックともいい、アメリカ合衆国における自動車の分類で、貨物の積載量が4000ポンド(1815kg)未満のトラックまたはトラックベースの自動車をいう。ライトトラック用空気入りタイヤには、乗用車用空気入りタイヤと比べ、より高いレベルの耐カット性や耐チッピング性などのタイヤ耐久性が求められている。本発明のゴム組成物をトレッド部やサイドウォール部に使用したライトトラック用空気入りタイヤは、転がり抵抗を低減すると共に、ウェットグリップ性能及びタイヤ耐久性を向上することができる。
【0034】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
表3に示す添加剤を配合することを共通にし、表1、2に示す配合からなる18種類のゴム組成物(実施例1〜11、比較例1〜7)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、16Lのバンバリーミキサーで5分間混練し、これを放出し室温冷却した。これをオープンロールに供給し硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、タイヤ用ゴム組成物を調製した。表1,2において、スチレンブタジエンゴムE−SBR−2は油展成分を含むため、括弧内にSBRとしての正味の配合量を併記した。表1,2において、スチレンブタジエンゴムE−SBR−2の正味の配合量をWSとし、ブタジエンゴムおよび芳香族変性テルペン樹脂の配合量をWBおよびWTとする。また表3に示す添加剤の配合量は、表1,2に示したジエン系ゴム100重量部に対する重量部として記載する。
【0036】
得られた18種類のゴム組成物を使用して、それぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して加硫ゴムシートを作製し、下記の方法により、転がり抵抗性、耐摩耗性能をそれぞれ下記の方法で測定した。
【0037】
転がり抵抗性;tanδ(60℃)
得られた加硫ゴムシートの動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定し、温度60℃におけるtanδを求めた。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数にし「転がり抵抗性」として表1,2に示した。この指数が大きいほどtanδ(60℃)が小さく、タイヤにしたときに転がり抵抗性が小さく燃費性能が優れることを意味する。
【0038】
耐摩耗性能
得られた加硫ゴムシートをJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、温度20℃、荷重49N、スリップ率25%、時間4分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数にし、「耐摩耗性能」として表1,2に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が高く、タイヤ耐久性に優れることを意味する。
【0039】
得られた18種類のゴム組成物をトレッド部に使用して、タイヤサイズ265/70R17のライトトラック用空気入りタイヤを製造し、排気量6153ccのライトトラックに装着し、下記に示す方法でウェットグリップ性能を評価した。
【0040】
ウェットグリップ性能
評価タイヤを装着したライトトラックで湿潤路面における走行試験を行い、そのときのウェットグリップ性能を専門パネラー3名による感応評価により採点した。得られた結果は、比較例1を100とする指数にし「ウェットグリップ性能」として表1,2に示した。この指数が大きいほど湿潤路面におけるウェットグリップ性能が優れていることを意味する。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
なお、表1、2において使用した原材料の種類を下記に示す。
BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220
E−SBR−1:乳化重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502、結合スチレン量が23.5重量%
E−SBR−2:乳化重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1739、結合スチレン量が40.0重量%、油展成分を37.5重量部含む。
カーボンブラック:東海カーボン社製N−134
シリカ−1:ローディア社製Zeosil 1165MP(CTAB比表面積155m2/g)
シリカ−2:ローディア社製Zeosil 115GR(CTAB比表面積110m2/g)
カップリング剤:硫黄含有シランカップリング剤、エボニック デグッサ社製Si69
芳香族変性テルペン樹脂−1:ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−125、軟化点125℃
芳香族変性テルペン樹脂−2:ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−85、軟化点
85℃
アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
【0044】
【表3】
【0045】
なお、表3において使用した原材料の種類を下記に示す。
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:千葉脂肪酸社製 工業製ステアリン酸N
老化防止剤:精工化学社製オゾノン6C
硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
加硫促進剤−1:大内新興化学社製ノクセラーCZ−G
加硫促進剤−2:フレキシス社製PERKACIT DPG
【0046】
一方、表1の結果から明らかなように、比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムの含有量が65重量%以上であるのでウェットグリップ性能が劣る。比較例3のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムと芳香族変性テルペン樹脂の重量比(WB/WT)が5.0を超えるのでウェットグリップ性能が劣る。比較例4のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムと芳香族変性テルペン樹脂の重量比(WB/WT)が2.5未満であるので転がり抵抗が悪化する。
【0047】
一方、表1の結果から明らかなように、比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムの含有量が65重量%以上、ブタジエンゴムおよび結合スチレン量が35重量%以上の乳化重合スチレンブタジエンゴムの合計が90重量%以上であるのでウェットグリップ性能が劣る。比較例3のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムと芳香族変性テルペン樹脂の重量比(WB/WT)が5.0を超えるのでウェットグリップ性能が劣る。比較例4のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムと芳香族変性テルペン樹脂の重量比(WB/WT)が2.5未満であるので転がり抵抗が悪化する。
【0048】
比較例5のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムの含有量が35重量%未満であるので耐摩耗性を改良出来ず、転がり抵抗性能が劣る。比較例6のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴム(WB)およびスチレンブタジエンゴムE−SBR−2(WS)の合計(WB+WS)が50重量%未満であるので耐摩耗性、転がり抵抗性能が劣る。比較例7のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴム(WB)およびスチレンブタジエンゴムE−SBR−2(WS)の合計(WB+WS)が90重量%を超えるのでウェットグリップ性能が劣る。
図1