特許第5920546号(P5920546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5920546-強化繊維複合材料 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5920546
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】強化繊維複合材料
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20160428BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20160428BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   B29B11/16
   C08J5/04CER
   C08J5/04CEZ
   C08J5/24
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-551286(P2015-551286)
(86)(22)【出願日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2015075043
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-195529(P2014-195529)
(32)【優先日】2014年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】三好 且洋
(72)【発明者】
【氏名】木本 幸胤
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴史
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0018358(US,A1)
【文献】 特表2006−501085(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/149615(WO,A1)
【文献】 特開2009−062474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも不連続強化繊維集合体を含む不連続強化繊維とマトリックス樹脂とからなり、不連続強化繊維集合体の少なくとも片側端部のアスペクト比(不連続強化繊維集合体の幅M/不連続強化繊維集合体の厚みH、ここで、nは不連続強化繊維集合体のいずれか一方の端部の位置を示し、n=1または2)が、該不連続強化繊維集合体を2次元投影した際の、該不連続強化繊維の配向方向に対して交差する方向の該不連続強化繊維集合体の幅が最も狭い最狭部のアスペクト比(m/h)に対して1.5倍以上となる扇状部を有する扇状不連続強化繊維集合体(A)が、前記不連続強化繊維中に5重量%以上含まれていることを特徴とする強化繊維複合材料。
【請求項2】
前記扇状不連続強化繊維集合体(A)を2次元平面上に投影した際、少なくとも片側端部が2本以上に分岐されている、請求項1に記載の強化繊維複合材料。
【請求項3】
前記扇状不連続強化繊維集合体(A)は、少なくとも片側端部のアスペクト比が30を超えている、請求項1または2に記載の強化繊維複合材料。
【請求項4】
前記扇状不連続強化繊維集合体(A)を2次元投影した際の少なくとも片側端部の幅と、該扇状不連続強化繊維集合体(A)の前記最狭部の幅に関して、片側端部幅/最狭部幅が1.5以上50未満の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維複合材料。
【請求項5】
前記扇状不連続強化繊維集合体(A)の少なくとも片側端部の厚みが、該扇状不連続強化繊維集合体(A)の前記最狭部の厚みに関して、片側端部厚み/最狭部厚みが0.01以上0.9未満の範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載の強化繊維複合材料。
【請求項6】
前記扇状不連続強化繊維集合体(A)を2次元投影した際の少なくとも片側端部の幅と、該扇状不連続強化繊維集合体(A)の前記最狭部の幅から算出した拡幅角度が5°を超え90°未満の範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載の強化繊維複合材料。
ここで、
拡幅角度=tan−1{(M−m)/2/L}(Lは最狭部から片側端部までの距離、nは不連続強化繊維集合体のいずれか一方の端部の位置を示し、n=1または2)
【請求項7】
前記不連続強化繊維の数平均繊維長が5mm以上100mm未満の範囲にある、請求項1〜6のいずれかに記載の強化繊維複合材料。
【請求項8】
前記扇状不連続強化繊維集合体(A)の2次元投影した際の形状が、I、X、Y、V、N、M形状およびこれらを組み合わせた形状のいずれかである、請求項1〜7のいずれかに記載の強化繊維複合材料。
【請求項9】
前記扇状不連続強化繊維集合体(A)の各端部のアスペクト比と前記最狭部のアスペクト比との比(端部アスペクト比/最狭部アスペクト比)が、両端部ともに1.5以上50未満の範囲にある、請求項1〜8のいずれかに記載の強化繊維複合材料。
【請求項10】
前記扇状不連続強化繊維集合体(A)の端部が不連続強化繊維集合体の長手方向に対して、2°〜30°の角度θを持たせてカットされている、請求項1〜9のいずれかに記載の強化繊維複合材料。
【請求項11】
前記不連続強化繊維として炭素繊維が含まれている、請求項1〜10のいずれかに記載の強化繊維複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不連続強化繊維とマトリックス樹脂からなる強化繊維複合材料に関し、特に、不連続強化繊維が従来にない特定の集合体形態で強化繊維複合材料中に含まれることで機械強度、2次元等方性、均一性に優れ、それを用いて成形品を作製する場合に高い流動性と機械特性を両立できるようにした強化繊維複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とマトリックス樹脂からなる強化繊維複合材料は、高い機械特性が得られることから、種々の成形品の製造に用いられ、様々な分野で需要は年々増加している。
【0003】
高機能特性を有する強化繊維複合材料の成形方法としては、プリプレグと称される連続した強化繊維にマトリックス樹脂を含浸せしめた半硬化状態の中間基材を積層し、高温高圧釜で加熱加圧することによりマトリックス樹脂を硬化させた連続繊維強化複合材料を成形するオートクレーブ成形が最も一般的に行われている。また、近年では生産効率の向上を目的として、あらかじめ部材形状に賦形した連続繊維基材にマトリックス樹脂を含浸および硬化させるRTM(レジントランスファーモールディング)成形等も行われている。これらの成形法により得られた強化繊維複合材料は、連続繊維であるが故に優れた力学物性を有する。また、連続繊維は規則的な配列であるため、基材の配置により必要とする力学物性に設計することが可能であり、力学物性のバラツキも小さい。しかしながら、一方で連続繊維であるが故に3次元形状等の複雑な形状を形成することは難しく、適用は主として平面形状に近い部材に限られる。
【0004】
3次元形状等の複雑な形状に適した成形方法として、SMC(シートモールディングコンパウンド)やスタンパブルシートを用いた成形等がある。SMC成形品は、強化繊維のストランドを例えば繊維長が25mm程度になるように繊維直交方向に切断し、このチョップドストランドに熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂を含浸せしめ半硬化状態としたシート状基材(SMC)を、加熱型プレス機を用いて加熱加圧することにより得られる。スタンパブルシート成形品は、例えば25mm程度に切断したチョップドストランドや不連続の強化繊維よりなる不織布マット等に熱可塑性樹脂を含浸させたシート状基材(スタンパブルシート)を一度赤外線ヒーター等で熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、所定の温度の金型にて冷却加圧することにより得られる。
【0005】
多くの場合、加圧前にSMCやスタンパブルシートを成形体の形状より小さく切断して成形型上に配置し、加圧により成形体の形状に引き伸ばして(流動させて)成形を行う。そのため、その流動により3次元形状等の複雑な形状にも追従可能となる。しかしながら、SMCやスタンパブルシートはそのシート化工程において、チョップドストランドや不織布マットの分布ムラ、配向ムラが必然的に生じてしまうため、力学物性が低下し、あるいはその値のバラツキが大きくなってしまう。さらには、その分布ムラ、配向ムラにより、特に薄物の部材ではソリ、ヒケ等が発生しやすくなる。
【0006】
上述のような材料の欠点を埋めるべく、例えば特許文献1、2には、強化繊維束としての炭素繊維束を一度拡幅した後に幅方向に分割し、カットすることで不連続炭素繊維マット中の特定の炭素繊維束の重量平均繊維幅を規定した炭素繊維マットが提案されている。しかしながら、この特許文献1、2に記載されているように、炭素繊維束を幅方向に分割すると、得られる炭素繊維複合材料中の炭素繊維同士の接点数増加につながり、流動性が悪化する。また、炭素繊維マット中の幅および厚みが繊維集合体の長手方向(繊維長方向)に対して、断面形状が矩形状や楕円状からなるほぼ均一な柱状体であることが前提となっており、繊維幅が細い炭素繊維マットは、繊維厚みが薄いほどそれを用いて製造した炭素繊維複合材料成形品の機械特性には優れるが、成形の際の流動性が低く、成形性に劣る。これは、強化繊維である炭素繊維が十分に分散しているため応力が集中しににくく、炭素繊維の補強効果が十分発揮される一方、炭素繊維同士が交差してお互いの動きを制約して動きにくくなるためである。
【0007】
また、繊維幅が広い炭素繊維マットは、繊維同士の接触面積が広くなりやすく、お互いの動きを制約して動きにくくなるため、成形の際の流動性が発現しにくく、成形性に劣る。また、繊維厚みが厚いほど、それを用いて製造した炭素繊維複合材料成形品の成形の際の流動性に優れるが、リブ等の複雑な形状や厚みが薄い成形体を成形する金型への追従性に劣り、機械特性が低い。これは、炭素繊維束が太いため、炭素繊維同士がネットワークを形成していないため、流動初期には動きやすいが、リブ等の複雑な形状や厚みが薄い成形体を成形する際に炭素繊維束同士が交絡し、マトリックス樹脂の流動を阻害するうえに、炭素繊維束の端部に応力集中しやすいためである。
【0008】
また、特許文献3には、ストランドを開繊させた後に裁断し、熱硬化性樹脂を含浸させた炭素繊維複合材料およびその製造方法について述べられているが、前記特許文献1、2と同様に、炭素繊維幅および厚みが繊維集合体の長手方向(繊維長方向)に対して、断面がほぼ矩形状のほぼ均一な柱状体であることが前提となっており、繊維幅が広い炭素繊維シートは、繊維厚みが厚いほど、それを用いて製造した炭素繊維複合材料成形品の成形の際の流動性に優れるが、リブ等の複雑な形状や厚みが薄い成形体を成形する金型への追従性に劣り、機械特性が低い。また、繊維厚みが薄いほど、それを用いて製造した炭素繊維複合材料成形品の機械特性に優れるが、流動性に劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2014/201315号公報
【特許文献2】WO2014/021316号公報
【特許文献3】特開2008-254191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明の課題は、従来の強化繊維と樹脂からなる強化繊維複合材料では達成できなかった、成形の際の高流動性と高い機械特性を高いレベルで両立させることが可能であり、特に流動成形時に優れた流動性、優れた機械特性を示す最適な条件を備えた強化繊維複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る強化繊維複合材料は、少なくとも不連続強化繊維集合体を含む不連続強化繊維とマトリックス樹脂とからなり、不連続強化繊維集合体の少なくとも片側端部のアスペクト比(後述の図1(B)、(C)に示す、不連続強化繊維集合体の幅M/不連続強化繊維集合体の厚みH、ここで、nは不連続強化繊維集合体のいずれか一方の端部の位置を示し、n=1または2)が、該不連続強化繊維集合体を2次元投影した際の、該不連続強化繊維の配向方向に対して交差する方向の該不連続強化繊維集合体の幅が最も狭い最狭部のアスペクト比(m/h)に対して1.5倍以上となる扇状部を有する扇状不連続強化繊維集合体(A)が、前記不連続強化繊維中に5重量%以上含まれていることを特徴とするものからなる。
【0012】
このような本発明に係る強化繊維複合材料においては、マトリックス樹脂中に強化繊維が入ると成形の際に複合材料の流動性が低下するが、その流動性の低下は不連続強化繊維が集合体形態である不連続強化繊維の配合量を増やすことで抑制でき、良好な流動性の実現が可能となる。しかし、不連続強化繊維集合体が、例えば、長手方向に対する断面形状が矩形や略円形からなる柱状体の様に、強化繊維集合体の長手方向(繊維配向方向)に対して集合体の幅および厚みが一定の場合と比較すると、集合体の幅が広く、厚みが厚い場合は機械特性に劣るが流動性に優れ、逆に、集合体の幅が広く、厚みが薄い場合は機械特性に優れるが流動性に劣る傾向がある。また、集合体の幅が狭く、厚みが厚い場合は機械特性に劣るが流動性に優れ、集合体の幅が狭く、厚みが薄い場合は機械特性に優れるが流動性に劣る傾向がある。すなわち、良好な流動性を重視した不連続強化繊維集合体の最適な形態と、高い機械特性を重視した不連続強化繊維集合体の最適な形態とは、必ずしも同じ形態とはならないこと等を総合的に考慮し、特に良好な流動性と高い機械特性とをバランス良く両立させるように強化繊維複合材料中の不連続強化繊維の構造を最適化したものである。
【0013】
不連続強化繊維中に含まれる不連続強化繊維集合体は、少なくとも片側端部のアスペクト比(不連続強化繊維集合体の幅/不連続強化繊維集合体の厚み)が2次元投影した際の長手方向に対して不連続強化繊維集合体の幅が最も狭い最狭部のアスペクト比に対して、片側端部のアスペクト比/最狭部アスペクト比が1.5以上50未満である扇状部を有する扇状不連続強化繊維集合体(A)が不連続繊維中に少なくとも5重量%以上含まれていることが好ましい。高い強度および流動性を発現するために扇状不連続強化繊維集合体(A)は少なくとも片側端部のアスペクト比が扇状不連続強化繊維集合体(A)の最狭部アスペクト比に対して、片側端部のアスペクト比/最狭部アスペクト比が2以上50未満であることがより好ましく、さらに好ましくは2.5以上50未満であり、より更に好ましくは3以上50未満である。少なくとも片側端部のアスペクト比が最狭部のアスペクト比に対して大きくなることで、扇状不連続強化繊維集合体(A)端部における強化繊維表面積が増加し、荷重が加えられた際に端部に集中する応力が緩和されるため、強化繊維複合材料の強度が発現しやすく、かつ繊維集合体の長手方向(繊維長方向)に対する強化繊維幅および厚みが、長手方向に対する断面形状が矩形や略円形からなる柱状体よりも、より多方向に繊維が配向しているため、得られる強化繊維複合材料がより2次元等方性となりやすい。
【0014】
また、詳細は後述するように、不連続強化繊維集合体が少なくとも片側端部を除く領域で強化繊維同士の絡まりや強化繊維に付着しているサイジング剤等によって一体化されているため、流動成形時、特には流動開始時に集合体単位で流動を開始し、少なくとも片側端部が部分的に分繊および開繊されていることで流動中に端部が起点となり、不連続強化繊維集合体が分繊および開繊されながら流動しやすく、マトリックス樹脂の流動を阻害することなく、優れた流動性を発現する。少なくとも片側端部のアスペクト比が最狭部のアスペクト比に対して、片側端部のアスペクト比/最狭部アスペクト比が1.5未満であると、不連続強化繊維集合体端部で応力集中が生じやすく、強度発現効果が不十分であり、50以上となると繊維間の交絡が解けやすく、不連続強化繊維集合体の形態を得ることができず、繊維間の接点数増化につながり、流動性悪化につながる。
【0015】
強化繊維複合材料中に含まれる扇状不連続強化繊維集合体(A)は強化繊維複合材料中に含まれる不連続強化繊維全量に対して少なくとも5重量%以上100%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上100重量%以下であり、更に好ましくは20重量%以上100重量%以下である。5重量%未満であると扇状不連続強化繊維集合体(A)による高い流動性および高い強度発現効果が不十分である。本発明の扇状不連続強化繊維集合体(A)は毛羽等の単糸がチョップドストランドおよびチョップドストランドを拡幅および分繊したチョップドストランドに付着したチョップドストランドではなく、意図的に端部を分繊及び拡幅させた不連続強化繊維集合体である。
【0016】
より高い強度および流動性を発現するために扇状不連続強化繊維集合体(A)は2次元平面上で投影した際に、少なくとも片側端部が2本以上に分岐されていることが好ましい。扇状不連続強化繊維集合体(A)の少なくとも片側端部が2本以上に分岐されていることで、該端部において強化繊維が占める表面積が増加し、扇状不連続強化繊維集合体(A)の端部に集中する応力が緩和されるため、強化繊維複合材料の強度が発現する。また、少なくとも片側端部が2本以上に分岐されていることで、得られる強化繊維複合材料がより2次元等方性となる。なお、本発明においては、扇状不連続強化繊維集合体(A)の少なくとも片側端部が2本以上に分岐されている場合、その端部のアスペクト比を算出する際のその端部の幅は、分岐部間の空間部込みの端部全幅で規定することとする。
【0017】
より高い強度を発現するために前記扇状不連続強化繊維集合体(A)は、少なくとも片側端部のアスペクト比が30を超え、1000未満であることが好ましい。より好ましくは不連続強化繊維集合体の少なくとも片側端部のアスペクト比が30を超え、800未満であり、更に好ましくは40を超え、600未満であることが望ましい。不連続強化繊維集合体の少なくとも片側端部のアスペクト比が30以下であると不連続強化繊維集合体端部で応力集中が生じやすく、強度発現効果が不十分であり、1000以上となると繊維間の交絡が解けやすく、前記扇状不連続強化繊維集合体(A)の形態を得ることができず、繊維間の接点数増化につながり、流動性悪化につながる。
【0018】
また、より確実に高い強度を発現するために、前記扇状不連続強化繊維集合体(A)が2次元投影した際の少なくとも片側端部の幅と、該扇状不連続強化繊維集合体(A)の長手方向における最狭部の幅に対して、片側端部幅/最狭部幅が1.5以上50未満であることが好ましい。より好ましくは1.8以上50未満であり、更に好ましくは2以上50未満である。扇状不連続強化繊維集合体(A)の少なくとも片側端部の集合体幅が最狭部の集合体幅に対して、片側端部幅/最狭部幅が1.5未満であると扇状不連続強化繊維集合体(A)の端部で応力集中が生じやすく、強度発現効果が不十分であり、50以上となると繊維間の交絡が解けやすく、扇状不連続強化繊維集合体(A)の形態を得ることができず、繊維間の接点数増化につながり、流動性悪化につながる。
【0019】
更に、確実に高い強度を発現するために扇状不連続強化繊維集合体(A)の少なくとも片側端部厚みが最狭部厚みに対して、片側端部厚み/最狭部厚みが0.01以上0.9未満であることが好ましく、より好ましくは0.02以上0.85未満であり、より更に好ましくは0.03以上0.8未満である。扇状不連続強化繊維集合体(A)の少なくとも片側端部の厚みが最狭部の厚みに対して、片側端部厚み/最狭部厚みが0.01未満となると繊維間の交絡が解けやすく、扇状不連続強化繊維集合体(A)の形態を得ることができず、繊維間の接点数増化につながり、流動性が悪化する。片側端部厚み/最狭部厚みが0.9以上となると扇状不連続強化繊維集合体(A)の端部の拡幅が不十分であり、強度発現に寄与しにくく、強度に劣る。
【0020】
更に、強度と流動性をバランス良く両立させるために、扇状不連続強化繊維集合体(A)を2次元投影した際の少なくとも片側端部の幅と、該扇状不連続強化繊維集合体(A)の前記最狭部の幅から算出した拡幅角度が5°を超え90°未満の範囲にあることが好ましい。ここで、
拡幅角度=tan−1{(M−m)/2/L}(Lは最狭部から片側端部までの距離、nは不連続強化繊維集合体のいずれか一方の端部の位置を示し、n=1または2)、つまり、
拡幅角度=tan−1{(片側端部の幅−最狭部幅)/2/片側端部と最狭部間距離}
である。より好ましくは8°を超え85°未満であり、更に好ましくは10°を超え80°未満である。拡幅角度が5°以下であると不連続強化繊維集合体端部で応力集中が生じやすく、強度発現効果が不十分であり、90°以上になると繊維間の交絡が解けやすく、扇状不連続強化繊維集合体(A)の形態を得ることができず、繊維間の接点数増化につながり、流動性悪化する。
【0021】
また、強度と流動性をバランス良く両立させるために、不連続強化繊維の数平均繊維長が5mm以上100mm未満であることが好ましい。数平均繊維長が5mmを下回ると不連続強化繊維集合体端部を拡幅する際に繊維間の交絡が解けやすく、強化繊維が十分に分散してしまい、繊維間の接点数増化につながり、流動性悪化につながる。数平均繊維長が100mmを超えると強化繊維の繊維間の接点数が増加し、流動性悪化につながる。
【0022】
また、確実に強度と流動性をバランス良く両立させるために、扇状不連続強化繊維集合体(A)は2次元投影した際の形状が、後述の図2に示すように、I、X、Y、V、N、M形状およびこれらを組み合わせた形状のいずれかであることが好ましい。扇状不連続強化繊維集合体(A)がこれらの形状からなることで、より端部の強化繊維表面積が増加し、不連続強化繊維の端部に集中する応力が緩和されるため、強化繊維複合材料の強度が発現するうえに、流動成形時に、特には流動開始時に集合体単位で流動するため、流動性に優れる。
【0023】
さらに、より確実に高い強度と流動性をバランス良く両立させるために、扇状不連続強化繊維集合体(A)の各端部のアスペクト比と最狭部のアスペクト比との比(端部アスペクト比/最狭部アスペクト比)が、両端部ともに1.5以上50未満であることが好ましい。より確実に強度を発現するために、端部アスペクト比/最狭部アスペクト比が両端部共に1.8以上50未満であることが好ましく、さらに好ましくは2以上50未満である。
【0024】
また、確実に強度を発現させるために、扇状不連続強化繊維集合体(A)の端部が(特に両端部が)不連続強化繊維集合体の長手方向(繊維配向方向)に対して、2°〜30°の角度θを持たせてカットされていることが好ましい。角度θを持たせてカットすることで、扇状不連続強化繊維集合体(A)端部の強化繊維表面積が増加し、後述する強化繊維集合体端部の拡幅および分繊と組み合わせることで、更なる相乗効果によって、不連続強化繊維の端部に集中する応力が緩和され、強化繊維複合材料の強度が発現する。
【0025】
本発明に係る強化繊維複合材料において、不連続強化繊維としては、繊維強化複合材料を成形するために用いられる使用されるあらゆる強化繊維の使用が可能であるが、特に本発明は、不連続強化繊維が炭素繊維からなる場合、不連続強化繊維として炭素繊維が含まれる場合に好適なものである。
【発明の効果】
【0026】
このように、本発明に係る強化繊維複合材料によれば、成形時の優れた流動性と成形品の高い機械特性、2次元等方性の全てをバランス良く達成でき、しかもその機械特性のばらつきも少ない優れた強化繊維複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(A)は、本発明における扇状不連続強化繊維集合体の一例を示す斜視図、(B)は、(A)に示した扇状不連続強化繊維集合体の(B)方向への(水平面への)2次元投影図、(C)は、(A)に示した扇状不連続強化繊維集合体の(C)方向への(垂直面への)2次元投影図である。
図2】本発明における扇状不連続強化繊維集合体の形態例を示す概略2次元投影図である。
図3】本発明で用いられる不連続強化繊維シート製造装置の一例を示す概略構成図である。
図4】本発明における不連続強化繊維集合体の端部が角度θを持たせてカットされている一例を示す概略2次元投影図である。
図5】本発明における不連続強化繊維集合体の端部および最狭部の厚み測定箇所の例を示す概略2次元投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明について、実施例、比較例とともに詳細に説明する。
先ず、本発明においては、強化繊維複合材料は不連続強化繊維とマトリックス樹脂から構成される。不連続強化繊維は、少なくとも図1に示すような所定の集合体形状となる扇状不連続強化繊維集合体(A)を所定の割合含むことを特徴としている。
【0029】
本発明における扇状不連続強化繊維集合体(A)は、少なくとも不連続強化繊維集合体を含む不連続強化繊維とマトリックス樹脂とからなり、不連続強化繊維集合体の少なくとも片側端部のアスペクト比(不連続強化繊維集合体の幅M/不連続強化繊維集合体の厚みH、ここで、nは不連続強化繊維集合体のいずれか一方の端部の位置を示し、n=1または2)が、該不連続強化繊維集合体を2次元投影した際の、該不連続強化繊維の配向方向に対して交差する該不連続強化繊維集合体幅が最も狭い最狭部のアスペクト比(m/h)に対して1.5倍以上となる扇状部を有する扇状不連続強化繊維集合体(A)が、前記不連続強化繊維中に5重量%以上含まれていることを特徴とする。ここで、片側端部のアスペクト比/最狭部アスペクト比が1.5以上50未満であることが好ましい。少なくとも片側端部のアスペクト比が最狭部のアスペクト比に対して1.5倍以上大きくなることで、扇状不連続強化繊維集合体(A)の端部の強化繊維表面積が増加し、荷重が加えられた際に、強化繊維複合材料とした際の破壊の起点となる不連続強化繊維端部に集中する応力が緩和されるため、強化繊維複合材料の強度が発現しやすい。また、強化繊維集合体の長手方向(繊維長方向)に対する強化繊維幅および厚み内において、長手方向に対する断面形状が矩形や略円形の一定形状からなる柱状体よりも、より多方向に繊維が配向しているため、得られる強化繊維複合材料がより2次元等方性となりやすい。また、アスペクト比が50倍未満であることで、不連続強化繊維集合体が、少なくとも片側端部を除く領域で強化繊維同士の絡まりや強化繊維に付着しているサイジング剤等によって一体化されやすくなる。
【0030】
さらに、流動成形時、具体的には不連続強化繊維集合体単位で流動を開始した際、少なくとも片側端部が部分的に分繊および開繊されていることで、この端部が起点となり、扇状不連続強化繊維集合体(A)が開繊および分繊されながら流動し続けることで、マトリックス樹脂の流動を阻害することなく、優れた流動性を発現する。そのうえ、リブ等の複雑な形状であっても、流動中に扇状不連続強化繊維集合体(A)から開繊および分繊された不連続繊維が複雑形状に沿って流入しやすくなり、優れた成形性を発現する。扇状不連続強化繊維集合体(A)は、少なくとも片側端部のアスペクト比が最狭部アスペクト比に対して、片側端部のアスペクト比/最狭部アスペクト比が2以上50未満であることがより好ましく、さらに好ましくは2.5以上50未満であり、より更に好ましくは3以上50未満である。
【0031】
ここで、扇状不連続強化繊維集合体(A)のアスペクト比について更に説明する。図1(A)に示すように、扇状不連続強化繊維集合体(A)1を水平面Hに置き、水平面Hに対して鉛直下向き(図中の矢印(B)方向)に投影した2次元投影図が図1(B)である。この図1(B)に示される水平面の2次元投影図5で測定した、不連続強化繊維集合体(A)の各端部3、4の幅をM(n=1,2)、最狭部2の幅をmとする。ここで、「該不連続強化繊維の配向方向に対して交差する該不連続強化繊維集合体幅が最も狭い最狭部」とは、典型的には、端部を扇状としない不連続強化繊維集合体の太さ、すなわち、不連続強化繊維集合体の繊維配向方向に直交する幅に相当する。後述する図2(A)〜(F)の形態を有する場合には、不連続強化繊維集合体の幅に相当する、繊維配向方向に交差する不連続強化繊維集合体の左右端の最短距離を最狭部とすることができる。なお、図1(B)におけるL、Lは最狭部2から各端部までの距離を示している。
【0032】
また、図1(A)で垂直面P方向(図中の矢印(C)方向)に投影した2次元投影図が図1(C)である。この図1(C)に示される垂直面の2次元投影図6で測定した、不連続強化繊維集合体(A)の各端部3、4の厚みをH(n=1,2)、最狭部2の厚みをhとする。
【0033】
強化繊維複合材料中に含まれる扇状不連続強化繊維集合体(A)は強化繊維複合材料中に含まれる不連続強化繊維全量に対して少なくとも5重量%以上100%以下であることが好ましい。扇状不連続強化繊維集合体(A)が不連続強化繊維全量に対して少なくとも5重量%以上含まれることで、扇状不連続強化繊維集合体(A)による高い流動性および高い強度が十分に発現される。扇状不連続強化繊維集合体(A)はより好ましくは10重量%以上100重量%以下であり、更に好ましくは20重量%以上100重量%以下である。
【0034】
不連続強化繊維は、扇状不連続強化繊維集合体(A)以外に、不連続強化繊維シートを作成する際にできた単糸レベルまで開繊した不連続強化繊維やストランドをそのままカットしたチョップドストランド、チョップドストランドが幅方向に分割された分繊チョップドストランド、少なくとも片側端部が分割および拡幅されているが、集合体形状を満たさないチョップドストランド、チョップドストランド全体が拡幅された拡幅チョップドストランド、チョップドストランド全体が拡幅され、分割された拡幅分割ストランドなどを含んでいてもよい。
【0035】
また、扇状不連続強化繊維集合体(A)は、2次元平面上に投影した際に、少なくとも片側端部が2本以上に分岐されていてもよい。扇状不連続強化繊維集合体(A)の少なくとも片側端部が2本以上に分岐されていることで、該端部の強化繊維が占める表面積が増加し、扇状不連続強化繊維集合体(A)の端部に集中する応力が緩和されるため、強化繊維複合材料の強度がより発現しやすい。また、少なくとも片側端部が2本以上に分岐されていることで、扇状不連続強化繊維集合体(A)を構成する不連続強化繊維が多方向に配向されるため、得られる強化繊維複合材料がより2次元等方性となるため好ましい。
【0036】
扇状不連続強化繊維集合体(A)の少なくとも片側端部のアスペクト比は、30を超え、1000未満であることが好ましい。少なくとも片側端部のアスペクト比が30を超えることで、端部の強化繊維表面積が増加し、強化繊維複合材料の強度が発現しやすい。また、少なくとも片側端部のアスペクト比1000未満であることで流動成形時、特には流動開始時に扇状不連続強化繊維集合体(A)が集合体単位で流動を開始し、優れた流動性を発現する。好ましくは少なくとも片側端部のアスペクト比が30を超え、800未満であり、更に好ましくは40を超え、600未満であることが好ましい。
【0037】
上記扇状不連続強化繊維集合体(A)は2次元投影した際の少なくとも片側端部の幅(図1(B)におけるMまたはM)と、該扇状不連続強化繊維集合体(A)の長手方向における最狭部の幅(m)に対して、片側端部幅/最狭部幅が1.5以上50未満であることが好ましい。片側端部幅/最狭部幅が1.5以上になることで、端部の強化繊維表面積がより増加し、強化繊維複合材料の強度が発現しやすい。また、片側端部幅/最狭部幅が50倍未満であることで流動成形時、特には流動開始時に扇状不連続強化繊維集合体(A)が集合体単位で流動を開始し、優れた流動性を発現する。より好ましくは片側端部幅/最狭部幅が1.8以上50未満であり、更に好ましくは2以上50未満であることが望ましい。
【0038】
上記扇状不連続繊維集合体(A)は少なくとも片側端部厚み(図1(B)におけるHまたはH)が最狭部厚み(h)対して、片側端部厚み/最狭部厚みが0.01以上0.9未満であることが好ましい。片側端部厚み/最狭部厚みが0.9未満であることで、扇状不連続強化繊維集合体(A)端部の強化繊維表面積が増加し、強化繊維複合材料とした際の破壊の起点となる不連続強化繊維端部に集中する応力が緩和され強化繊維複合材料の強度が発現しやすい。また、片側端部厚み/最狭部厚みが0.01以上であることで流動成形時、特には流動開始時に扇状不連続強化繊維集合体(A)が集合体単位で流動を開始し、優れた流動性を発現する。より好ましくは片側端部厚み/最狭部厚みが0.02以上0.85未満であり、より更に好ましくは0.03以上0.8未満である。
【0039】
上記扇状不連続繊維集合体(A)は少なくとも片側端部の幅と最狭部幅から算出した、拡幅角度が5°を超え90°未満であることが好ましい。ここで、
拡幅角度=tan−1{(M−m)/2/L} (Lは最狭部から片側端部までの距離、nは不連続強化繊維集合体のいずれか一方の端部の位置を示し、n=1または2)
である。拡幅幅が5°を超えることで、端部の強化繊維表面積が増加し、強化繊維複合材料の強度が発現しやすいうえに、より広い範囲に不連続強化繊維が配向するため、得られる強化繊維複合材料がより2次元等方性となるため好ましい。拡幅角度が90°未満であることで、扇状不連続繊維集合体(A)が集合体形状を維持し、優れた流動性を発現する。より好ましくは8°を超え85°未満であり、更に好ましくは10°を超え80°未満である。
【0040】
上記扇状不連続強化繊維集合体(A)の形態としては、2次元投影した際の形状が図2(A)〜(F)に例示するように、I型形状21a、21b、X型形状22、Y型形状23、V型形状24、N型形状25、M型形状26および/またはこれらを組み合わせた形状であることが好ましい。図2(A)〜(F)に示すI、X、Y、V、N、M型形状は、端部が更に細かく分繊された形状、例えばX型形状であれば、片側または両側端部が3つ以上に分繊された形態も含む。扇状不連続強化繊維集合体(A)がこれらの形状からなることで、より端部の強化繊維表面積が増加し、強化繊維複合材料とした際の破壊の起点となる不連続強化繊維の端部に集中する応力が緩和されるため、強化繊維複合材料の強度が発現するうえに、流動成形時に、特には流動開始時に集合体単位で流動するため、流動性に優れる。なお、図2(A)〜(F)における2A、2A、2B、2C、2D、2E、2Fは、各形態における最狭部をそれぞれ示している。
【0041】
上記扇状不連続強化繊維集合体(A)は端部のアスペクト比が最狭部のアスペクト比に対して、それぞれの端部のアスペクト比/最狭部アスペクト比が、両端部ともに1.5以上50未満であることが好ましい。端部のアスペクト比/最狭部アスペクト比が、両端部ともに1.5以上であることで、強化繊維複合材料とした際の破壊の起点となる不連続強化繊維の端部に集中する応力が緩和されるため、強化繊維複合材料が優れた強度を発現する。端部のアスペクト比/最狭部アスペクト比が、両端部ともに50未満であることで、流動成形前は扇状不連続繊維集合体(A)が集合体形状を維持し、流動成形時、特には流動開始時に扇状不連続強化繊維集合体(A)が集合体単位で流動を開始し、流動とともに両端部が起点となり、扇状不連続強化繊維集合体(A)が開繊および分繊されながら流動しやすく優れた流動性を発現する。より好ましくは端部のアスペクト比/最狭部アスペクト比が両端部ともに1.8以上50未満であることが好ましく、さらに好ましくは2以上50未満である。
【0042】
ここで、本発明において強化繊維複合材料を得るために使用される強化繊維は、特に限定されず、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等を使用できるが、高強度を目指すためには、炭素繊維を含むことが好ましい。炭素繊維としては、特に限定されないが、高強度、高弾性率炭素繊維が使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が挙げられる。得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維が好ましい。炭素繊維の密度は、1.65〜1.95g/cmのものが好ましく、さらには1.7〜1.85g/cmのものがより好ましい。密度が大きすぎるものは得られる炭素繊維複合材料の軽量性能に劣り、小さすぎるものは、得られる炭素繊維複合材料の機械特性が低くなる場合がある。
【0043】
また、本発明の強化繊維複合材料を得るためにも用いる強化繊維は、生産性の観点から単糸を収束させた強化繊維ストランドであることが好ましく、強化繊維ストランド中の単糸数が多いものが好ましい。強化繊維ストランドとした場合の単糸数は、1,000〜100,000本の範囲内で使用することができ、とりわけ10,000〜70,000本の範囲内で使用することが好ましい。強化繊維は、必要に応じて強化繊維ストランドにストランド分繊用スリッター等を用いて所望のストランド数に分割した分繊強化繊維ストランドを所定の長さにカットして用いてもよい。ストランドを所望のストランド数に分繊することで、未処理のストランドに比べ強化繊維複合材料にした際の均一性が向上し、機械特性に優れるため、好ましい例として例示できる。
【0044】
強化繊維の単糸曲げ剛性は、1×10―11〜3.5×10―11Pa・mの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは2×10―11〜3×10−11Pa・mのものが好ましい。単糸曲げ剛性が上記範囲内にあることで、後述する強化繊維集不織布シートを製造する工程において、得られる強化繊維集不織布シートの品質を安定させることができる。
【0045】
また、強化繊維複合材料を得るために用いる強化繊維ストランドは、マトリックス樹脂との接着性を向上する等の目的で表面処理されていることが好ましい。表面処理の方法としては,電解処理、オゾン処理、紫外線処理等がある。また、強化繊維ストランドの毛羽立ちを防止したり、強化繊維ストランドの収束性を向上させたり、マトリックス樹脂との接着性を向上する等の目的でサイジング剤が付与されていても構わない。サイジング剤としては、特に限定されないが、エポキシ基、ウレタン基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物が使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。
【0046】
ここでサイジング処理とは、表面処理工程と水洗工程などで水に濡れた水分率20〜80重量%程度の水濡れ強化繊維ストランドを乾燥させた後にサイジング剤を含有する液体(サイジング液)を付着させる処理方法である。
【0047】
サイジング剤の付与手段としては特に限定されるものではないが、例えばローラを介してサイジング液に浸漬する方法、サイジング液の付着したローラに接する方法、サイジング液を霧状にして吹き付ける方法などがある。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性が良くばらつきを小さくできる連続式が好ましい。この際、強化繊維ストランドに対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に強化繊維ストランドを超音波で加振させることはより好ましい。
【0048】
乾燥温度と乾燥時間は化合物の付着量によって調整することができるが、サイジング剤の付与に用いる溶媒の完全な除去、乾燥に要する時間を短くし、一方、サイジング剤の熱劣化を防止し、強化繊維ストランドが固くなって束の拡がり性が悪化するのを防止する観点から、乾燥温度は、150℃以上350℃以下であることが好ましく、180℃以上250℃以下であることがより好ましい。
【0049】
サイジング剤付着量は、強化繊維ストランドのみの質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下付与することがさらに好ましい。0.01質量%以下では接着性向上効果が現れにくい。10質量%以上では、成形品の物性低下させることがある。
【0050】
本発明においては、強化繊維複合材料に用いるマトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂または/および熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては特に制限は無く、成形品としての機械特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例示するなら、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6樹脂、ナイロン6,6樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等を用いることができる。中でも、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂のいずれかからなることが好ましい。
【0051】
熱硬化性樹脂としても特に制限は無く、成形品としての機械特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例示するなら、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノシキ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂などを用いることができる。中でも、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂のいずれか、もしくはこれらの混合物からなることが好ましい。熱硬化性樹脂の混合物を用いる際には、混合する熱硬化性樹脂同士は相溶性を有するか、あるいは、親和性の高い方が好ましい。
【0052】
本発明で用いられる熱硬化性樹脂の粘度は、特に制限はないが常温(25℃)における樹脂粘度が100〜100000mPa・sであることが好ましい。
【0053】
本発明で使用されるマトリックス樹脂には、本発明の目的が達成できる範囲であればその用途に応じて、熱可塑性樹脂または/および熱硬化性樹脂に、各種の添加剤を加えることもできる。例えば、マイカ、タルク、カオリン、ハイドロタルサイト、セリサイト、ベントナイト、ゾノトライト、セピオライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ワラステナイト、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸亜カルシウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカおよび高分子化合物などの充填材、金属系、金属酸化物系、カーボンブラックおよびグラファイト粉末などの導電性付与材、臭素化樹脂などのハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモンや五酸化アンチモンなどのアンチモン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、芳香族ホスフェートおよび赤燐などのリン系難燃剤、有ホウ酸金属塩、カルボン酸金属塩および芳香族スルホンイミド金属塩などの有機酸金属塩系難燃剤、硼酸亜鉛、亜鉛、酸化亜鉛およびジルコニウム化合物などの無機系難燃剤、シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェートおよび窒素化グアニジンなどの窒素系難燃剤、PTFEなどのフッ素系難燃剤、ポリオルガノシロキサンなどのシリコーン系難燃剤、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物系難燃剤、またその他の難燃剤、酸化カドミウム、酸化亜鉛、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化スズおよび酸化チタンなどの難燃助剤、顔料、染料、滑剤、離型剤、相溶化剤、分散剤、マイカ、タルクおよびカオリンなどの結晶核剤、リン酸エステルなどの可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、発泡剤、抗菌剤、制振剤、防臭剤、摺動性改質剤、およびポリエーテルエステルアミドなどの帯電防止剤等を添加してもよい。
【0054】
また、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を使用する場合は、本発明の目的が達成できる範囲であれば、前述した熱可塑性樹脂、その他の低収縮化剤等の添加物を含ませることができる。
【0055】
不連続強化繊維シートを得る工程としては、本発明の目的が達成できる範囲であれば特に制限がない。例えば、図3に示すように、強化繊維ストランド33を搬送する搬送ロール31、31、強化繊維ストランドを所定の寸法にカットするカッター32とカッター用台36、少なくとも片側端部を拡幅および/または分繊する端部処理を行うエアヘッド34、端部拡幅および/または分繊用壁35、不連続強化繊維をシート状へ集積するコンベア37を有していることが好ましい一例として例示される。
【0056】
ここで、搬送ロール31は、本発明の目的が達成できる範囲であれば特に制限がなく、ロール間でニップして搬送する機構が例示される。この際に片側ロールをメタルロールとし、もう一方のロールをゴムロールにすることが好ましい例として例示される。強化繊維ストランドを後述するカッター32へ搬送する角度は、本発明の課題を阻害しないかぎり、特に制限はなく、強化繊維ストランドが搬送される方向を0°方向とし、カットするための刃の向きとして、90°以外の角度を持たせてもよい。90°以外の角度を持たせる場合は、2°〜30°の角度が好ましい例として例示される。90°以外の角度を持たせてカットすることで、ストランド端部における端面の強化繊維表面積が増加し、後述する強化繊維集合体端部の拡幅および分繊と組み合わせることで、更なる相乗効果によって、不連続強化繊維集合体の端部に集中する応力が緩和され、強化繊維複合材料の強度が発現するため、より好ましい例として例示できる。
【0057】
カッター32としては、本発明の課題を阻害しないかぎり、特に制限がなく、ギロチン刃式やロータリーカッター式が例示される。前述したように、強化繊維ストランドが搬送される方向に対して、カットするための刃の向きは特に制限されるものではなく、前記強化繊維ストランドを搬送する機構と同様に角度を持たせてもよく、ロータリーカッター式では螺旋状に刃を並べてもよい。
【0058】
また、強度と流動性をバランス良く両立させるために不連続強化繊維の数平均繊維長が5mm以上100mm未満であることが好ましい。数平均繊維長が5mmを下回ると不連続強化繊維端部を拡幅する際に繊維間の交絡が解けやすく、強化繊維が十分に分散してしまい、繊維間の接点数増化につながり、流動性悪化につながる。数平均繊維長が100mm以上になると強化繊維の繊維間の接点数が増加し、流動性悪化につながる。
【0059】
エアヘッド34は本発明の目的が達成できる範囲であれば特に制限はなく、送り出される強化繊維ストランドをカットする際に、片側端部もしくはカット箇所に間欠的にエアを吹き付ける機構であることが好ましい。間欠的に吹き付けるエアは、本発明の課題を阻害しないかぎり特に制限はなく、0.01MPa〜1MPaの圧力範囲が例示される。エアの圧力が弱すぎると不連続強化繊維集合体の端部が十分拡幅および/または分繊されず、エアの圧力が強すぎると強化繊維間の交絡が解けやすく、扇状不連続強化繊維集合体(A)の形態を得ることができない。
【0060】
端部拡幅および/または分繊用壁35は本発明の目的が達成できる範囲であれば特に制限はなく、振動機能を有してもよく、壁の形状は平板や、円柱、楕円柱、波板などが例示される。より確実に不連続強化繊維集合体端部を拡幅および/または分繊される好ましい方法の一つとして、送り出される強化繊維ストランドをカットする際に強化繊維ストランド先端部を振動する壁にぶつけた後、さらに壁にぶつけた端部に対して間欠的にエアを吹き付け、端部を拡幅および/または分繊する方法が例示される。この他にも、送り出される強化繊維ストランドを所定の寸法にカットする際に端部分繊用スリッターなどによって端部を物理的に拡幅および/または分繊する方法などが例示される。
【0061】
扇状不連続強化繊維集合体(A)は、両端部を拡幅および/または分繊させてもよい。この場合も、前述した方法のほか、強化繊維ストランドをカットする前および/またはカットと同時に、カット部を部分的にエアやスリッターなどで拡幅および/または分繊する方法が例示される。
【0062】
不連続強化繊維をシート状へ集積するコンベア37としては、本発明の課題を阻害しないかぎり特に制限がなく、XY平面上で自由に走行するメタルワイヤ上に落下する方法が例示できる。ここでメタルワイヤ下にサクションボックスを設置し、ストランド端部を拡幅および分繊させた際に使用したエアまたはカットした不連続強化繊維を散布する際に使用したエアを吸引させ、シートの嵩を低下させてもよい。また、XY平面上で自由に走行するメタルワイヤの代わりに、カッター32とエアヘッド34とを一体化させた複合機構をX方向(ストランド走行方向)に往復させ、メタルワイヤをY方向(ストランド走行方向と直交する方向)に走行させることも一例として例示できる。
【0063】
不連続強化繊維シートを得る際に、不連続強化繊維シートは不連続強化繊維のみから構成されてもよいが、形態保持のために熱可塑性樹脂または/および熱硬化性樹脂からなる結合材を含有させることもできる。結合材に用いる熱可塑性樹脂または/および熱硬化性樹脂は強化繊維複合材料に用いるマトリックス樹脂と同じ樹脂、あるいはマトリックス樹脂と相溶性のある樹脂、マトリックス樹脂と接着性の高い樹脂を用いてなることが好ましい。
【0064】
本発明において、不連続強化繊維シートにマトリックス樹脂を含浸するにあたっては、結合材を含む不連続強化繊維シートを作製し、不連続強化繊維シートに含まれる結合材の樹脂をそのままマトリックス樹脂として使用してもよく、結合材を含まない不連続強化繊維シートを作成し、強化繊維複合材料を製造する任意の段階でマトリックス樹脂を含浸してもかまわない。また、結合材を含む不連続強化繊維シートを用いる場合であっても、強化繊維複合材料を製造する任意の段階でマトリックス樹脂を含浸することもできる。
【0065】
強化繊維複合材料を製造するに際し、上記のような不連続強化繊維シートにマトリックス樹脂を含浸し、強化繊維複合材料とする含浸工程は、本発明の目的が達成できる範囲であれば特に限定はなく、一般的なものを用いることが出来る。
【0066】
マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を用いる場合は、加熱機能を有するプレス機を用いて樹脂含浸を実施することができる。プレス機としてはマトリックス樹脂の含浸に必要な温度、圧力を実現できるものであれば特に制限はなく、上下する平面状のプラテンを有する通常のプレス機や、1対のエンドレススチールベルトが走行する機構を有するいわゆるダブルベルトプレス機を用いることができる。かかる含浸工程においてはマトリックス樹脂をフィルム、不織布、織物等のシート状とした後、不連続強化繊維シートと積層しその状態で上記プレス機等を用いてマトリックス樹脂を一体として溶融・含浸することや、予め不連続強化繊維シートとマトリックス樹脂を一体化させたシート状としたものを積層し、溶融・含浸したもの、予め不連続強化繊維シートとマトリックス樹脂を一体化させたシート状としたものに、更にマトリックス樹脂をフィルム、不織布、織物等のシート状としたものを積層し、溶融・含浸する方法も採用することができる。
【0067】
マトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を用いる場合は、マトリックス樹脂の含浸に必要な温度、圧力を実現できるものであれば特に制限はなく、上下する平面状のプラテンを有する通常のプレス機や、1対のエンドレススチールベルトが走行する機構を有するいわゆるダブルベルトプレス機や、上下ロールで挟み込むプレスロール等を用いることができる。かかる含浸工程においてはマトリックス樹脂を離形フィルム上にシート状とした後、不連続強化繊維シートをマトリックス樹脂シートで挟み込み、加圧し、含浸する方法が例示される。この時、より含浸を確実に行うため、真空へ減圧し、シート内部の空気を抜いた後に加圧する方法は好ましい例の一つとして例示できる。
【0068】
また、本発明において、本発明の課題を阻害しないかぎり不連続強化繊維シートに連続強化繊維シートや不連続強化繊維シートとサンドイッチ構造とし、強化繊維複合材料としてもよい。サンドイッチ構造は、表層とコア層どちらに不連続強化繊維シートを用いてもよく、表層に連続強化繊維シート、コア層に不連続強化繊維シートを用いることで、強化繊維複合材料にした際の機械特性や表面品位に優れるため、好ましい一例として例示できる。ここで、連続強化繊維シートや不連続強化繊維シートに用いられる強化繊維は、特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などが使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。連続強化繊維シートの強化繊維形態は本発明の課題を阻害しないかぎり一般的なものを用いることができる。例えば、一方向に強化繊維が配向した一方向強化繊維シートおよび一方向強化繊維シートを多方向に積層した強化繊維積層シート、強化繊維を織った織物強化繊維シートなどが例示できる。不連続強化繊維シートの強化繊維形態は本発明の課題を阻害しないかぎり一般的なものを用いることができる。例えば、ストランドを所定の長さにカットし、散布したチョップドストランドシート、カーディング装置やエアレイド装置を用いて製造した乾式不連続強化繊維シート、抄紙装置を用いて製造した湿式不連続強化繊維シートなどが例示できる。
【0069】
次に、本発明の実施例、比較例について説明する。
先ず、実施例、比較例で用いた特性、測定方法について説明する。
【0070】
(1)不連続強化繊維集合体の幅の測定
強化繊維複合材料から100mm×100mmとなるサンプルを切り出し、切り出したサンプルを550℃に加熱した電気炉の中で1から2時間程度加熱し、マトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばした。焼飛ばしたサンプルから不連続強化繊維シートを取り出し、ピンセット等を用いて、不連続強化繊維シートから不連続強化繊維を集合体単位で全て形が崩れないように慎重に取り出し、不連続強化繊維シートから不連続強化繊維集合体をピンセットで全て抽出した。抽出した全ての不連続強化繊維集合体について、平らな台の上に置き、不連続強化繊維集合体の両端部の幅および不連続強化繊維集合体を2次元平面上に投影した際の長手方向に対して直交する該不連続強化繊維集合体幅が最も狭い箇所(最狭部)の幅を0.1mmまで測定可能なノギスを用いて測定した。この時、より正確に幅を測定するために、不連続強化繊維の集合体を平らな台上に置き、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製)を用いて2次元平面上に投影した際の繊維集合体の幅を測定してもよい。得られた最狭部および両端部の幅を記録用紙に記載する。最狭部の束幅が0.1mm未満の不連続強化繊維に対しては、単糸レベルまで開繊した不連続強化繊維(B)としてまとめて取り分けた。
【0071】
この時、幅と厚みの判断は不連続強化繊維集合体端部の繊維方向断面の長辺を幅、短辺を厚みとし、不連続強化繊維集合体端部が角度θを持たせてカットされている場合は、図4に示すように、不連続強化繊維集合体を2次元平面上に投影した際の長手方向に対して直交する方向の幅とした。図示例では、符号2が扇状不連続強化繊維集合体の最狭部を示しており、Mが、角度を持たせてストランドをカットした場合の拡幅・分繊した扇状不連続強化繊維集合体端部41の幅を示している。
【0072】
強化繊維複合材料から不連続強化繊維シートがうまく取り出せない場合は、マトリックス樹脂を含浸していない、不連続強化繊維シートから同様に測定してもよい。
【0073】
(2)不連続強化繊維集合体の厚みの測定
前記端部および最狭部の幅を測定した不連続強化繊維集合体全てに対して、その端部および最狭部に対し、マイクロメーターを用いて不連続強化繊維集合体の厚みを測定した。この時、不連続強化繊維が集合体形状を崩さないように慎重に取り扱い、図5に示すように端部の端点間の中点がマイクロメーターの圧子の中心となるようにピンセットで位置を調整し、不連続強化繊維集合体の端部厚みを測定した。次に不連続強化繊維集合体の最狭部に対しても同様に最狭部間の中点がマイクロメーターの圧子の中心となるように位置を調整し、最狭部の厚みを測定した。端部がマイクロメーターの圧子直径より2倍以上広く分繊および拡幅された不連続強化繊維集合体を測定する場合は、端部の両端点および中点の厚み3点を測定し、その平均値を用いる。すなわち、図5に示す例では、符号51が最狭部2の厚み測定点、符号52が端部の厚み測定点としての端点間の中点、その符号52と符号53が、端部幅がマイクロメーターの圧子径の2倍以上大きい場合の端部厚み測定点を、それぞれ示している。得られた両端部および最狭部の厚みを前記幅と同様に記録用紙に記載した。端部の厚み測定が困難な不連続強化繊維集合体については、最狭部の厚み測定を行い、最狭部の厚みと幅、端部の幅の比から、下記式を用いて端部の厚みを算出してもよい。
端部厚み=最狭部厚み×最狭部幅/端部幅
【0074】
(3)扇状不連続強化繊維集合体(A)の判定および重量割合の測定方法
上記のように得られた不連続強化繊維集合体の幅と厚みから、下記式を用い最狭部のアスペクト比および端部のアスペクト比を不連続強化繊維集合体に対して全て算出した。
最狭部のアスペクト比=最狭部の幅/最狭部の厚み
端部のアスペクト比=端部の幅/端部の厚み
算出したアスペクト比から、不連続強化繊維集合体を少なくとも片側端部のアスペクト比が最狭部のアスペクト比に対して、1.5倍以上となる扇状不連続強化繊維集合体(A)とそれ以外の非扇状不連続強化繊維集合体(C)に分類した。分類後、1/10000gまで測定が可能な天秤を用いて、扇状不連続強化繊維集合体(A)の総重量および非扇状不連続強化繊維集合体(C)、単糸レベルまで開繊した不連続強化繊維(B)の総重量を測定した。測定後、扇状不連続強化繊維集合体(A)が全不連続強化繊維重量に占める重量割合を下記式を用いて算出した。
【0075】
扇状不連続強化繊維集合体(A)の割合=扇状不連続強化繊維集合体(A)総重量/(扇状不連続強化繊維集合体(A)総重量+非扇状不連続強化繊維集合体(C)総重量+単糸レベルまで開繊した不連続強化繊維(B)総重量)
【0076】
この時、扇状不連続強化繊維集合体(A)のうち、少なくとも片側端部のアスペクト比が最狭部のアスペクト比に対して、1.8倍以上の扇状不連続強化繊維集合体(A−2)、2.0倍以上の扇状不連続強化繊維集合体(A−3)、および両端部のアスペクト比が最狭部のアスペクト比に対して、1.5倍以上となる両端扇状不連続強化繊維集合体(A−4)の総重量を同様に測定し、A−2〜A−4が全不連続繊維重量に占める重量割合を上記扇状不連続強化繊維集合体(A)と同様に算出した。
【0077】
(4)拡幅角度の算出
上記扇状不連続強化繊維集合体(A)の端部幅と最狭部幅から下記式を用いて、扇状不連続強化繊維集合体(A)ごとの端部拡幅角度を算出した。
拡幅角度=tan−1{(片側端部の幅−最狭部幅)/2/片側端部と最狭部間距離}
ここで、扇状不連続強化繊維集合体(A)中の少なくとも片側端部の拡幅角度が5°を超え90°未満を満たす扇状不連続強化繊維集合体(A−5)の総重量を前記A−2〜A−4と同様に測定し、全不連続繊維重量に占める重量割合を算出した。
【0078】
(5)Vf(強化繊維複合材料中の強化繊維の含有率(%))
強化繊維複合材料から約2gのサンプルを切り出し、その質量を測定した。その後、サンプルを500〜600℃に加熱した電気炉の中で1から2時間程度加熱してマトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばした。室温まで冷却してから、残った不連続強化繊維の質量を測定した。不連続強化繊維の質量に対する、マトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばす前のサンプルの質量に対する比率を測定し、強化繊維の含有率(%)とした。
【0079】
(6)曲げ強度、曲げ弾性率、CV値、等方性
JIS−K7171に準拠して曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。曲げ強度については曲げ強度のCV値(変動係数[%])も算出した。曲げ強度のCV値が10%未満を、曲げ強度のばらつきが小さく良好(○)と判定し、10%以上を、曲げ強度のばらつきが大きく不良(×)と判定した。
【0080】
曲げ試験を行うサンプルは2次元平面の任意の方向(0°方向)と0°方向に対して90°方向に対して測定を行い、0°方向の平均値/90°方向の平均値が1.3〜0.77の範囲に入る場合は等方性(○)と判定し、それ以外を異方性(×)と判定した。
【0081】
(7)流動性の評価
<マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合>
寸法100mm×100mm×2mmt(厚み)の不連続強化繊維複合材料を1枚、熱可塑性樹脂の融点+40℃に昇温したプレス盤に配し、寸法100mm×100mmに対して、10MPaで300秒間加圧し、その後、加圧した状態で熱可塑性樹脂の固化温度−50℃まで冷却し、サンプルを取り出した。この加圧後の面積A2と加圧前のシートの面積A1を測定し、A2/A1/2mmtを流動性(%/mm)とした。
【0082】
<マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合>
寸法100mm×100mm×2mmt(厚み)、マトリックス樹脂が未硬化の不連続強化繊維複合材料前駆体を1枚、マトリックス樹脂の流動開始から硬化までの硬化時間が300〜400秒の範囲に入る温度まで昇温したプレス盤に配し、寸法100mm×100mmに対して、10MPaで600秒間加圧した。この加圧後の面積A2と加圧前のシートの面積A1を測定し、A2/A1/2mmtを流動性(%/mm)とした。
【0083】
(8)数平均繊維長測定方法
不連続強化繊維複合材料から100mm×100mmのサンプルを切り出し、その後、サンプルを500℃に加熱した電気炉の中で1〜2時間程度加熱してマトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばした。室温まで冷却した後に残った不連続強化繊維シートから無作為に400本ピンセットで不連続強化繊維を抽出し、光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡にてその長さを0.1mm単位まで測定し、数平均繊維長=ΣLi/400にて不連続強化繊維の数平均繊維長を計算した。ここで、Liは測定した繊維長である。
【実施例】
【0084】
まず、本発明の実施例、比較例で用いた強化繊維、マトリックス樹脂について説明する。
炭素繊維ストランド(1)(後述の表中では炭素繊維(1)と略記する):
繊維径7μm、引張弾性率230GPa、フィラメント数12,000本の連続した炭素繊維ストランドを用いた。
炭素繊維ストランド(2)(後述の表中では炭素繊維(2)と略記する):
繊維径7.2μm、引張弾性率242GPa、フィラメント数50,000本の連続した炭素繊維ストランドを用いた。
マトリックス樹脂(1):
ナイロン樹脂(東レ(株)製、CM1001、商品名「アミラン」(登録商標))を用いた。
マトリックス樹脂(2):
ビニルエステル(VE)樹脂(ダウ・ケミカル(株)製、“デラケン” (登録商標)790)100質量部、tert−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂(株)製、“パーブチル” (登録商標)Z)1質量部、ステアリン酸亜鉛(堺化学工業(株)製、SZ−2000)2質量部、酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製、MgO#40)4質量部を混合した樹脂を用いた。
【0085】
実施例1:
図3に示すような装置を用いて不連続炭素繊維シートを作成した。炭素繊維ストランド(1)の先端部にエア圧0.4MPaを0.2秒間、間欠的に吹き付け、片側端部を拡幅および分繊させた後に、繊維長20mmになるよう、カッターで切断し、扇状不連続炭素繊維集合体を連続的に生産し、コンベア上に堆積させ目付100g/mの不連続炭素繊維シートを得た。得られた不連続炭素繊維シートは扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートであった。次に、フィルム製膜機を用いて、マトリックス樹脂(1)からなる目付100g/mのマトリックス樹脂フィルムを作成し、得られた不連続炭素繊維シートとマトリックス樹脂フィルムを得られる炭素繊維複合材料平板が厚さ2mm、Vf=40%となるよう積層し、260℃に昇温したプレス機の平板金型内で300秒間予熱し、5MPaの圧力をかけながら300秒間加圧し、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの炭素繊維複合材料の平板を得た。得られた炭素繊維複合材料中の炭素繊維含有量はVf=40%であった。得られた平板は反りがなく、炭素繊維複合材料から0°と90°方向の曲げ強度を測定したところ、0°と90°方向の曲げ強度の平均値は520MPaであり、各方向の曲げ強度のCV値が5%未満かつ、曲げ強度および曲げ弾性率に対して、0°方向の平均値/90°方向の平均値が1.3〜0.77の範囲に入る2次元等方性であった。
【0086】
次に、得られた炭素繊維複合材料平板から100mm×100mmのサンプルを切り出し、切り出したサンプルを550℃に加熱した電気炉の中で2時間加熱し、マトリックス樹脂を焼き飛ばし、不連続炭素繊維シートを取り出した。取り出した不連続炭素繊維シートからピンセットを用いて、不連続炭素繊維シート中の不連続炭素繊維集合体を全て取り出し、幅、厚みを測定し、扇状不連続炭素繊維集合体(A)、扇状不連続炭素繊維集合体(A−2)、扇状不連続炭素繊維集合体(A−3)、および両端扇状不連続炭素繊維集合体(A−4)の不連続炭素繊維シートに占める重量割合を測定した。このとき、不連続炭素繊維シート中の扇状不連続炭素繊維集合体(A)の重量割合は13重量%であり、扇状不連続炭素繊維集合体(A−2)は12重量%、扇状不連続炭素繊維集合体(A−3)は12重量%、および両端扇状不連続炭素繊維集合体(A−4)は1重量%であった。
【0087】
さらに、炭素繊維複合材料平板から100mm×100mmのサンプルを切り出し、流動性の評価を行ったところ、流動率は150%/mmであった。条件、評価結果を表1に示す。
【0088】
実施例2:
ストランド先端部にエア圧0.25MPaを0.2秒間、間欠的に吹き付け、片側端部を拡幅および分繊させた扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0089】
実施例3:
カット長を30mmとし、カットする前にストランド端部を10Hzで振動する壁にぶつけ、あらかじめ端部を予備拡幅および分繊させた後にエア圧0.1MPaを0.1秒間、ストランド先端部に間欠的に吹き付け、片側端部を拡幅および分繊させた扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0090】
実施例4:
カットする前にストランド端部を10Hzで振動する壁にぶつけ、あらかじめ端部を予備拡幅および分繊させた後にエア圧0.07MPaを0.1秒間、ストランド端部に間欠的に吹き付け、片側端部を拡幅および分繊させた扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0091】
実施例5:
カット長を30mmとし、カットする前にストランド先端部を10Hzで振動する壁にぶつけ、あらかじめ端部を予備拡幅および分繊させた後にエア圧0.1MPaを0.1秒間、ストランド先端部に間欠的に吹き付け、カット後もう片側端部にエア圧0.1MPaを0.1秒間を間欠的に吹き付け、両側端部を拡幅および分繊させた両端扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0092】
実施例6:
カット長を30mmとし、カットする前にストランド先端部を10Hzで振動する壁ぶつけ、あらかじめ端部を予備拡幅および分繊させた後にエア圧0.07MPaを0.1秒間、ストランド端部に間欠的に吹き付け、カット後もう片側端部にエア圧0.07MPaを0.1秒間を間欠的に吹き付け、両側端部を拡幅および分繊させた両端扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0093】
実施例7:
ストランド先端部を5Hzで振動する壁にぶつけ、あらかじめ端部を予備拡幅および分繊させた後にエア圧0.1MPaを0.1秒間、ストランド端部に間欠的に吹き付け、片側端部を拡幅および分繊させた後に、カッター刃に対してストランドを搬送する角度を15°とし、角度を持たせてカットし、扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0094】
実施例8:
ストランド先端部にエア圧0.2MPaを0.1秒間、間欠的に吹き付け、片側端部を拡幅および分繊させた扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートを得た。次にマトリックス樹脂(2)ペーストをドクターブレードを用いて、ポリプロピレン製の離型フィルム上に塗布し、不連続炭素繊維シートに対して得られる炭素繊維複合材料中の炭素繊維含有量がVf=40%となるようにフィルムの目付を調整したマトリックス樹脂(2)フィルムを作成した。得られた不連続炭素繊維シートを積層した不連続炭素繊維シート積層体をマトリックス樹脂(2)フィルムで挟み込み、マトリックス樹脂(2)を不連続炭素繊維シート積層体内に含浸させた後に、40℃×24時間静置することにより、マトリックス樹脂(2)を十分に増粘化させて、シート状の、炭素繊維複合材料前駆体を得た。次に、金型135℃に昇温したプレス機の平板金型内にチャージ率(金型を上から見たときの金型面積に対するシート状の成形材料の面積の割合)が50%となるようにセットし、5MPaの圧力をかけながら600秒間加圧し、厚さ2mm、Vf=40%の炭素繊維複合材料の平板を得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0095】
実施例9:
炭素繊維ストランド(2)を用い、ストランド先端部にエア圧0.2MPaを0.1秒間、間欠的に吹き付け、片側端部を拡幅および分繊させた扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0096】
実施例10:
炭素繊維ストランド(2)を用い、ストランド先端部を5Hzで振動する壁にぶつけ、あらかじめ端部を予備拡幅および分繊させた後にエア圧0.1MPaを0.1秒間、ストランド端部に間欠的に吹き付け、片側端部を拡幅および分繊させた扇状不連続炭素繊維集合体を含む不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0097】
比較例1:
炭素繊維ストランド(1)をそのまま繊維長20mmにカットし不連続炭素繊維集合体の形態が長手方向(繊維長方向)に対して、ほぼ均一な幅および厚みを有するチョップドストランド不連続炭素繊維シートを得た。得られた不連続炭素繊維シートにマトリックス樹脂(1)からなる目付100g/mの樹脂フィルムを得られる炭素繊維複合材料中の炭素繊維含有量がVf=40%となるように積層し、260℃に昇温したプレス機の金型内で300秒間予熱し、5MPaの圧力をかけながら300秒間加圧し、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの炭素繊維複合材料の平板を得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表2に示す。得られた炭素繊維複合材料は曲げ強度、曲げ弾性率に劣り、CV値のばらつきも大きく、2次元等方性ではなかった。
【0098】
比較例2:
炭素繊維ストランド(1)を10Hzで振動する振動棒にて振動拡幅させ、炭素繊維ストランド幅が15mの拡幅炭素繊維ストランド(1)を得た。得られた拡幅炭素繊維束(1)に対して、円盤状の分割刃を用いて、0.5mm間隔にスリットし、スリットした炭素繊維ストランド(1)を繊維長15mmにカットし、不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表2に示す。得られた不連続炭素繊維シートは、構成する不連続炭素繊維のほとんどが長手方向(繊維長方向)に対して、ほぼ均一な幅を有する幅方向に分割された分割チョップドストランド、少なくとも片側端部が分割および拡幅されているが、集合体形状を満たさないチョップドストランドで構成され、得られた炭素繊維複合材料は流動性に劣っていた。
【0099】
比較例3:
炭素繊維ストランド(1)を10Hzで振動する振動棒にて振動拡幅させ、炭素繊維ストランド幅が11mの拡幅炭素繊維ストランド(1)を繊維長20mmにカットし、不連続炭素繊維シートを得た以外は実施例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表2に示す。得られた炭素繊維複合材料は流動性に劣っていた。
【0100】
比較例4:
炭素繊維ストランド(2)を用いた以外は比較例1と同様にして炭素繊維複合材料平板を製造し、評価を実施した。結果を表2に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る強化繊維複合材料は、従来技術では達成できなかった、高流動性と機械特性の両立、少ない機械特性のばらつきが要求されるあらゆる繊維強化成形品の製造に適用できる。
【符号の説明】
【0104】
1 扇状不連続強化繊維集合体(A)
2 最狭部
2A、2A、2B、2C、2D、2E、2F 各形態における最狭部
3、4 片側端部
5 (B)方向からの投影図
6 (C)方向からの投影図
21a、21b、22、23、24、25、26 扇状不連続強化繊維集合体(A)の各形態
31 搬送ロール
32 カッター
33 強化繊維ストランド
34 エアヘッド
35 端部拡幅および/または分繊用壁
36 カッター用台
37 コンベア
41 扇状不連続強化繊維集合体端部
51 最狭部の厚み測定点
52 端部の厚み測定点
53 端部幅がマイクロメーターの圧子径の2倍より大きい場合の端部厚み測定点
【要約】
不連続強化繊維集合体を含む不連続強化繊維とマトリックス樹脂とからなり、不連続強化繊維集合体の少なくとも片側端部のアスペクト比(不連続強化繊維集合体の幅/不連続強化繊維集合体の厚み)が、該不連続強化繊維集合体を2次元投影した際の、該不連続強化繊維集合体の幅が最も狭い最狭部のアスペクト比に対して1.5倍以上となる扇状部を有する扇状不連続強化繊維集合体(A)が、前記不連続強化繊維中に5重量%以上含まれていることを特徴とする強化繊維複合材料。成形時の優れた流動性と成形品の高い機械特性、2次元等方性の全てをバランス良く達成でき、しかもその機械特性のばらつきも少ない優れた強化繊維複合材料を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5