(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(1)ガラス原料を調合し、ガラスバッチを得る工程と、(2)ガラスバッチを溶融し、得られた溶融ガラスを1.5mm以下のガラス基板に成形する工程と、(3)ガラス基板のおもて面と裏面に膜を形成する工程と、(4)おもて面と裏面に膜を有するガラス基板をイオン交換処理して、ガラス基板のおもて面、裏面及び端面に圧縮応力層を形成し、端面の応力深さが主表面の応力深さより大きい強化ガラス基板を得る工程と、(5)強化ガラス基板のおもて面と裏面の膜を除去する工程と、を有することを特徴とする強化ガラス基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る強化ガラス基板において、板厚は1.5mm以下であり、好ましくは1.3mm以下、1.1mm以下、1.0mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、特に0.1mm以下である。強化ガラス基板の板厚が小さい程、強化ガラス基板を軽量化することでき、結果として、デバイスの薄型化、軽量化を図ることができる。
【0025】
主表面の応力深さが大き過ぎると、内部引っ張り応力が高くなり過ぎて、強化ガラス基板が自己破壊する虞がある。一方、主表面の応力深さが小さ過ぎると、研磨痕、取り扱い傷等を起点として、強化ガラス基板が破損し易くなる。よって、板厚と機械的強度のバランスを考慮して、主表面の応力深さを規制する必要がある。
【0026】
本発明に係る強化ガラス基板において、主表面の応力深さをDT、端面の応力深さをDHとすると、DT/DHの値は、好ましくは0.1〜0.99、0.1〜0.7、0.1〜0.5、0.1〜0.45、0.15〜0.45、特に0.2〜0.4が好ましい。DT/DHの値を上記範囲にすれば、端面の応力深さが適正化されて、内部引っ張り応力を不当に上昇させずに、強化ガラス基板の機械的強度を高めることができる。
【0027】
板厚が0.5mm以下である場合、主表面の応力深さは、好ましくは50μm以下、45μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、特に10μm以下である。一方、板厚が0.5mmより大きい場合、主表面の応力深さの上限範囲は、好ましくは100μm以下、80μm、60μm、50μm以下、45μm以下、特に35μm以下であり、下限範囲は、好ましくは5μm以上、10μm以上、15μm、以上、20μm以上、25μm以上、特に30μm以上である。
【0028】
端面の応力深さは、好ましくは10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、55μm以上、特に60μm以上である。端面には、製造工程での取り扱い時、或いは端面加工(面取り加工)時に深い傷が形成され易い。端面の応力深さが10μm未満であると、これらの傷を起点として、強化ガラス基板が破損し易くなり、機械的強度を高めることが困難になる。
【0029】
主表面の圧縮応力値は、好ましくは50MPa以上、100MPa以上、200MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、特に500MPa以上である。主表面の圧縮応力値が大きい程、強化ガラス基板の機械的強度が高くなる。なお、主表面の圧縮応力値の上限は、好ましくは900MPa未満、特に800MPa以下である。このようにすれば、内部引っ張り応力が不当に上昇する事態を回避し易くなる。
【0030】
端面の圧縮応力値は、好ましくは300MPa以上、400MPa以上、500MPa以上、600MPa以上、700MPa以上、800MPa以上、900MPa以上、特に1000MPa以上である。端面の圧縮応力値が大きい程、強化ガラス基板の機械的強度が高くなる。
【0031】
本発明に係る強化ガラス基板は、主表面に膜を有することが好ましい。このようにすれば、主表面の圧縮応力値と応力深さを制御することが可能になる。例えば、ガラス基板の主表面に膜を形成した後に、膜を有するガラス基板に対して、イオン交換処理して、ガラス基板の主表面及び端面に圧縮応力層を形成すると、端面の応力深さを主表面の応力深さより大きくすることができる。なお、強化ガラス基板の反りが許容される場合(又は強化ガラス基板に積極的に湾曲形状を付与したい場合)は、主表面の一方の面のみに膜を形成してもよいが、強化ガラス基板の反りを可及的に低減したい場合は、主表面の全面(両面)に膜を形成することが好ましい。
【0032】
膜の成分としてSiO
2、Nb
2O
5、TiO
2、ITOの何れかを含むことが好ましく、特にSiO
2を含むことが好ましい。膜は、単層膜に限られず、多層膜であってもよい。更に、導電膜、反射防止膜等の機能を兼ね備えた膜設計が成されることが好ましい。
【0033】
膜厚の下限は、好ましくは5nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、80nm以上、特に100nm以上であり、上限は、好ましくは1000nm以下、800nm以下、600nm以下、400nm以下、特に300nm以下である。膜厚が小さ過ぎると、主表面の応力深さを小さくすることが困難となる。一方、膜厚が大き過ぎると、成膜に長時間を要すると共に、主表面の応力深さが低下し過ぎて、強化ガラス基板の機械的強度を担保し難くなる。
【0034】
(主表面の全面に成膜した場合の主表面の圧縮応力値)/(成膜しなかった場合の主表面の圧縮応力値)の比をR
CSとすると R
CSは、好ましくは1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、特に0.6以下である。また、(主表面の全面に成膜した場合の主表面の応力深さ)/(成膜しなかった場合の主表面の応力深さ)の比をR
DOLとすると、R
DOLは、好ましくは1.0未満、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、特に0.3以下である。このようにすれば、内部引っ張り応力を適正に低減し易くなる。
【0035】
膜の形成方法として、種々の方法を採用することができる。例えば、スパッタ法、CVD、ディップコート等を採用することができる。その中でも、膜厚制御の観点から、スパッタ法が好ましい。
【0036】
なお、膜を機能膜として有効利用したい場合は、イオン交換処理後に、別途、膜を除去する工程を設ける必要はないが、主表面の面内強度を可及的に高めたい場合は、イオン交換処理後に、別途、膜を除去する工程を設けることが好ましい。
【0037】
本発明に係る強化ガラス基板は、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 45〜75%、Al
2O
3 1〜30%、Na
2O 0〜20%、K
2O 0〜20%を含有することが好ましい。各成分の含有量を限定した理由を以下に示す。なお、ガラス組成に関する説明において、%表示は、特に断りがある場合を除き、質量%を指す。
【0038】
SiO
2は、ガラスネットワークを形成する成分である。SiO
2の含有量は、好ましくは45〜75%、50〜75%、52〜65%、特に52〜63%である。SiO
2の含有量が45%より少ないと、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなったり、ガラス化し難くなったり、耐失透性が低下し易くなる。一方、SiO
2の含有量が75%より多いと、溶融性、成形性が低下し易くなったり、熱膨張係数が低くなり過ぎて、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。
【0039】
Al
2O
3は、耐熱性、イオン交換性能、ヤング率を高める成分である。Al
2O
3の含有量は1〜30%が好ましい。Al
2O
3の含有量が少な過ぎると、イオン交換性能を十分に発揮できない虞が生じる。一方、Al
2O
3の含有量が多過ぎると、耐酸性が低下し易くなる。よって、Al
2O
3の含有量を調整して、イオン交換性能と耐酸性を両立させることは困難である。しかし、主表面に膜を形成すると、膜により耐酸性を維持しながら、Al
2O
3の増量によりイオン交換性能を高めることができる。従って、板厚0.5mm以下の強化ガラス基板について、耐酸性を確保しつつ、非常に大きな圧縮応力値、応力深さを得ることが可能になる。但し、Al
2O
3の含有量が30%より多いと、ガラスに失透結晶が析出し易くなったり、熱膨張係数が低くなり過ぎて、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。また、Al
2O
3の含有量が30%より多いと、高温粘性が高くなり、溶融性が低下する虞もある。Al
2O
3の好適な範囲は、上限が25%以下、23%以下、22%以下、21%以下、特に20%以下であり、下限が1.5%以上、3%以上、5%以上、10%以上、11%以上、12%以上、14%以上、15%以上、16.5%以上、17%以上、特に18%以上である。
【0040】
Na
2Oは、イオン交換成分であると共に、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性を高めたり、耐失透性を改善する成分である。Na
2Oの含有量は、好ましくは0〜20%、7〜20%、7〜18%、8〜16%、10〜16%、12〜16%、特に12〜15%である。Na
2Oの含有量が20%より多いと、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。また、Na
2Oの含有量が20%より多いと、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下する傾向がある。更に、Na
2Oの含有量が20%より多いと、歪点が低下し過ぎて、耐熱性が低下したり、かえってイオン交換性能が低下する場合がある。
【0041】
K
2Oは、イオン交換を促進する効果があり、アルカリ金属酸化物の中では応力深さを大きくする効果がある。また、K
2Oは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性を高めたり、クラック発生率を低減させたり、耐失透性を改善する成分である。K
2Oの含有量は、好ましくは0〜20%、0〜10%、0〜8%、0〜5%、0.1〜4%、0.1〜2%、特に0.5〜2%未満である。K
2Oの含有量が20%より多いと、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。また、K
2Oの含有量が20%より多いと、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下する傾向がある。
【0042】
質量比(Al
2O
3+K
2O)/Na
2Oの値は、好ましくは0.1〜6.5、0.1〜5、0.2〜3、0.2〜2.5、0.4〜2、0.7〜1.7、特に1.0〜1.5が好ましい。このようにすれば、イオン交換処理で応力深さを大きくすることができる。質量比(Al
2O
3+K
2O)/Na
2Oの値が0.1より小さいと、応力深さを大きくすることが困難になる。一方、質量比(Al
2O
3+K
2O)/Na
2Oの値が6.5より大きいと、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下する傾向があると共に、Na
2O成分が不足することに起因して、圧縮応力値が低下し易くなる。
【0043】
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を添加してもよい。
【0044】
B
2O
3は、液相温度、高温粘度、密度を低下させる成分である。B
2O
3の含有量は、好ましくは0〜7%、0〜5%、0.1〜3%、特に0.5〜1%である。B
2O
3の含有量が7%より多いと、イオン交換処理によって主表面にヤケが発生したり、耐水性が低下したり、低温粘性が低下して、圧縮応力値、応力深さが低下する場合がある。
【0045】
Li
2Oは、イオン交換成分であり、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、更にはヤング率を高める成分である。Li
2Oの含有量は、好ましくは0〜20%、0〜10%、0〜8%、0〜6%、0〜4%、0〜3.5%、0〜3%、0〜2%、0〜1%、特に0〜0.1%である。Li
2Oの含有量が20%より多いと、ガラスが失透し易くなり、液相粘度が低下し易くなり、更には熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。また、Li
2Oの含有量が20%より多いと、歪点が低下し過ぎて、耐熱性が低下したり、かえってイオン交換性能が低下する場合がある。なお、Li
2Oを導入する場合、その含有量は0.001%以上、特に0.01%以上が好ましい。
【0046】
Li
2O+Na
2O+K
2O(Li
2O、Na
2O及びK
2Oの合量)の含有量が少な過ぎると、イオン交換性能や溶融性が低下し易くなる。よって、Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量は、好ましくは5%以上、10%以上、13%以上、15%以上、特に17%以上である。一方、Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなることに加えて、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。また、Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎて、圧縮応力値が低下し過ぎる虞がある。よって、Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量は、好ましくは30%以下、22%以下、特に20%以下である。
【0047】
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性、歪点、ヤング率を高める成分である。また、MgOは、アルカリ土類金属酸化物の中では、イオン交換性能を高める効果が比較的に大きい。しかし、MgOの含有量が多過ぎると、密度、熱膨張係数、クラック発生率が高くなったり、ガラスが失透し易くなる。よって、MgOの含有量は、好ましくは10%以下、9%以下、6%以下、0.1〜4%、特に1〜3%である。
【0048】
CaOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性、歪点、ヤング率を高める成分である。しかし、CaOの含有量が多過ぎると、密度、熱膨張係数、クラック発生率が高くなったり、ガラスが失透し易くなる。更には大きな応力深さを得難くなる。よって、CaOの含有量は、好ましくは10%以下、8%以下、5%以下、3%以下、1%以下、1%未満、0.5%以下、特に0.1%以下である。
【0049】
SrOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性、歪点、ヤング率を高める成分である。しかし、SrOの含有量が多過ぎると、密度、熱膨張係数、クラック発生率が高くなったり、ガラスが失透し易くなったり、更にはイオン交換性能が低下する傾向がある。よって、SrOの含有量は、好ましくは10%以下、8%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.8%以下、特に0.5%以下であり、実質的に含有しないことがより好ましい。ここで、「実質的にSrOを含有しない」とは、ガラス組成中のSrOの含有量が0.2%以下の場合を指す。
【0050】
BaOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性、歪点、ヤング率を高める成分である。しかし、BaOの含有量が多過ぎると、密度、熱膨張係数、クラック発生率が高くなったり、ガラスが失透し易くなったり、更にはイオン交換性能が低下する傾向がある。また、BaOは、原料化合物が環境負荷物質であるため、環境的視点に立てば、その使用を極力控えることが好ましい。よって、BaOの含有量は、好ましくは3%以下、2.5%以下、2%以下、1%以下、0.8%以下、特に0.5%以下であり、実質的に含有しないことがより好ましい。ここで、「実質的にBaOを含有しない」とは、ガラス組成中のBaOの含有量が0.1%以下の場合を指す。
【0051】
MgO+CaO+SrO+BaO(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量)が多過ぎると、密度、熱膨張係数が高くなったり、耐失透性が低下したり、イオン交換性能が低下する傾向がある。よって、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は、好ましくは0〜16%、0〜10%、0〜6%、特に0〜3%である。
【0052】
MgO+CaO+SrO+BaOの含有量をLi
2O+Na
2O+K
2Oの含有量で割った値が大きくなると、密度が高くなったり、耐失透性が低下する傾向が現れる。よって、質量比(MgO+CaO+SrO+BaO)/(Li
2O+Na
2O+K
2O)の値は、好ましくは0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、特に0.1以下である。
【0053】
ZnOは、圧縮応力値を大きくする効果がある。また、ZnOは、高温粘度を低下させたり、ヤング率を高める効果がある。しかし、ZnOの含有量が多過ぎると、密度、熱膨張係数が高くなったり、耐失透性が低下する傾向がある。よって、ZnOの含有量は、好ましくは0〜15%、0〜10%、0〜2%、0〜0.5%、特に0〜0.1%である。
【0054】
TiO
2は、イオン交換性能を高める成分であるが、その含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなったり、着色し易くなる。よって、TiO
2の含有量は、好ましくは0〜10%、0〜5%、0〜1%、特に0〜0.5%であり、実質的に含有しないことがより好ましい。ここで、「実質的にTiO
2を含有しない」とは、ガラス組成中のTiO
2の含有量が0.1%以下の場合を指す。
【0055】
ZrO
2は、歪点、ヤング率、イオン交換性能を高める成分であり、また高温粘性を低下させる成分である。また液相温度付近の粘性を高める効果がある。しかし、ZrO
2の含有量が多過ぎると、耐失透性が極端に低下する場合がある。よって、ZrO
2の含有量は、好ましくは0〜10%、0〜9%、0〜7%、0〜5%、0〜3%、0〜1%、特に0〜0.1%未満である。
【0056】
P
2O
5は、イオン交換性能を高める成分であり、特に応力深さを増大させる成分である。しかし、P
2O
5の含有量が多過ぎると、ガラスが分相し易くなる。よって、P
2O
5の含有量は、好ましくは8%以下、5%以下、4%以下、3%以下、特に2%以下である。また、P
2O
5の含有量が多過ぎると、耐水性が低下し易くなる。なお、主表面に膜が形成されており、且つ膜による保護機能が十分である場合、耐水性の低下を考慮しなくてもよい場合がある。P
2O
5を導入する場合、その含有量は、好ましくは0.1%以上、0.5%以上、特に1%以上である。
【0057】
清澄剤としてSO
3、Cl、CeO
2、Sb
2O
3及びSnO
2から選択された一種又は二種以上を0〜3%含有することが好ましい。As
2O
3、Fは、清澄効果を奏するが、環境に対して悪影響を与える虞があるため、極力使用しないことが好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。また、Sb
2O
3は、As
2O
3に比べて、毒性が低いが、環境的観点から使用が制限される場合もあり、実質的に含有しないことが好ましい場合もある。また、環境的観点と清澄効果を考慮すれば、清澄剤として、SnO
2を0.01〜3%(望ましくは0.05〜1%)含有させることが好ましい。ここで、「実質的にAs
2O
3を含有しない」とは、ガラス組成中のAs
2O
3の含有量が0.1%以下の場合を指す。「Fを実質的に含有しない」とは、ガラス組成中のFの含有量が0.05%以下の場合を指す。「実質的にSb
2O
3を含有しない」とは、ガラス組成中のSb
2O
3の含有量が0.1%以下の場合を指す。一方、Sb
2O
3、SO
3は、清澄剤の中では、透過率の低下を防止する効果が大きい。よって、高透過率が要求される用途に用いる場合、Sb
2O
3+SO
3(Sb
2O
3とSO
3の合量)の含有量は、好ましくは0.001〜5%である。
【0058】
Co、Ni、Cu等の着色作用を有する遷移金属元素は、強化ガラス基板の透過率を低下させる虞がある。特に、ディスプレイ用途に用いる場合、遷移金属酸化物の含有量が多過ぎると、ディスプレイの視認性が損なわれる虞がある。よって、遷移金属酸化物の含有量は、好ましくは0.5%以下、0.1%以下、特に0.05%以下である。
【0059】
Nd
2O
5、La
2O
3等の希土類酸化物は、ヤング率を高める成分である。しかし、原料コストが高く、また多量に導入すると、耐失透性が低下し易くなる。よって、希土類酸化物の含有量は、好ましくは3%以下、2%以下、1%以下、特に0.5%以下であり、実質的に含有しないことがより好ましい。ここで、「実質的に希土類酸化物を含有しない」とは、ガラス組成中の希土類酸化物の含有量が0.1%以下の場合を指す。
【0060】
PbOは、環境負荷物質であるため、実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「PbOを実質的に含有しない」とは、ガラス組成中のPbOの含有量が0.1%以下の場合を指す。
【0061】
各成分の好適な含有範囲を適宜選択して、好ましいガラス組成範囲とすることができる。その中でも、より好ましいガラス組成範囲として、
(1)質量%で、SiO
2 45〜75%、Al
2O
3 1〜25%、Li
2O 0〜9%、Na
2O 7〜20%、K
2O 0〜8%を含有し、実質的にAs
2O
3、F、PbOを含有しない、
(2)質量%で、SiO
2 45〜75%、Al
2O
3 3〜25%、Li
2O 0〜3.5%、Na
2O 7〜20%、K
2O 0〜8%を含有し、質量比(Al
2O
3+K
2O)/Na
2Oが0.1〜3であり、実質的にAs
2O
3、F、PbOを含有しない、
(3)質量%で、SiO
2 45〜70%、Al
2O
3 10〜22%、Li
2O 0〜3%、Na
2O 7〜20%、K
2O 0〜5%を含有し、質量比(Al
2O
3+K
2O)/Na
2Oが0.5〜2であり、実質的にAs
2O
3、F、PbOを含有しない、
(4)質量%で、SiO
2 45〜65%、Al
2O
3 10〜22%、Li
2O 0〜3%、Na
2O 7〜16%、K
2O 0〜8%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜10%を含有し、質量比(Al
2O
3+K
2O)/Na
2Oが0.3〜1.8であり、実質的にAs
2O
3、F、PbOを含有しない、
(5)質量%で、SiO
2 45〜65%、Al
2O
3 11〜22%、Li
2O 0〜3%、Na
2O 7〜16%、K
2O 0〜5%、MgO 0〜3%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜9%を含有し、質量比(Al
2O
3+K
2O)/Na
2Oが1〜1.5であり、実質的にAs
2O
3、F、PbOを含有しない。
(6)質量%で、SiO
2 50〜63%、Al
2O
3 11〜20%、Li
2O 0〜2%、Na
2O 8〜15.5%、K
2O 0〜5%、MgO 0〜3%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜8%を含有し、質量比(Al
2O
3+K
2O)/Na
2Oが1〜1.5であり、実質的にAs
2O
3、F、PbOを含有しない、
(7)質量%で、SiO
2 50〜63%、Al
2O
3 11〜20%、Li
2O 0〜1%、Na
2O 8〜15%、K
2O 0.1〜5%、MgO 0〜2.5%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜6%を含有し、質量比(Al
2O
3+K
2O)/Na
2Oが1〜1.5であり、実質的にAs
2O
3、F、PbOを含有しない、が挙げられる。
【0062】
本発明に係る強化ガラス基板は、以下のガラス特性を有することが好ましい。
【0063】
密度は、好ましくは2.8g/cm
3以下、2.7g/cm
3以下、2.6g/cm
3以下、2.57g/cm
3以下、2.55g/cm
3以下、2.5g/cm
3以下、2.45g/cm
3以下、特に2.4g/cm
3以下である。密度が低い程、強化ガラス基板を軽量化することができる。
【0064】
歪点は、好ましくは500℃以上、510℃以上、520℃以上、530℃以上、540℃以上、550℃以上、560℃以上、特に570℃以上である。歪点が高いと、イオン交換処理の際、応力緩和が生じ難くなり、圧縮応力値を高め易くなる。ここで、「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。なお、ガラス組成中のアルカリ土類金属酸化物、Al
2O
3、ZrO
2、P
2O
5の含有量を増加、或いはアルカリ金属酸化物の含有量を低減すれば、歪点が上昇する傾向がある。
【0065】
高温粘度10
2.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1700℃以下、1600℃以下、1560℃以下、1500℃以下、1450℃以下、1420℃以下、特に1400℃以下である。高温粘度10
2.5dPa・sにおける温度が低い程、溶融窯等のガラス製造設備への負担が軽減されると共に、ガラス基板の泡品位を高めることができる。つまり、高温粘度10
2.5dPa・sにおける温度が低い程、ガラス基板の製造コストを低廉化し易くなる。ここで、「高温粘度10
2.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。なお、高温粘度10
2.5dPa・sにおける温度は、ガラスの溶融温度に相当しており、高温粘度10
2.5dPa・sにおける温度が低い程、低温でガラスを溶融することができる。
【0066】
熱膨張係数は、好ましくは40〜110×10
−7/℃、70〜105×10
−7/℃、75〜100×10
−7/℃、80〜100×10
−7/℃、特に80〜90×10
−7/℃である。熱膨張係数を上記範囲とすれば、金属、有機系接着剤等の部材の熱膨張係数に整合し易くなり、金属、有機系接着剤等の部材の剥離を防止し易くなる。ここで、「熱膨張係数」は、ディラトメーターを用いて、30〜380℃の温度範囲における平均値を測定した値を指す。
【0067】
ヤング率は、好ましくは67GPa以上、68GPa以上、70GPa以上、71GPa以上、特に73GPa以上である。ヤング率が高い程、強化ガラス基板が撓み難くなり、タッチパネルディスプレイ等のデバイスにおいて、ペン等でディスプレイを押す際に、デバイス内部の液晶素子等が圧迫され難くなる。その結果、ディスプレイに表示不良が発生し難くなる。一方、ヤング率が高過ぎると、強化ガラス基板がペン等で押されて変形する際、その変形により発生する応力が高くなり、破損に至る虞が生じる。特に、強化ガラス基板の板厚が小さい場合、この点に留意することが好ましい。よって、ヤング率は、好ましくは100GPa以下、95GPa以下、90GPa以下、85GPa以下、80GPa以下、特に78GPa以下である。
【0068】
比ヤング率は、好ましくは27GPa/(g/cm
3)以上、28GPa/(g/cm
3)以上、29GPa/(g/cm
3)以上、特に30GPa/(g/cm
3)以上である。比ヤング率が高い程、自重により強化ガラス基板が撓み難くなる。その結果、強化ガラス基板をカセット等に収納する際、強化ガラス基板同士のクリアランスを狭くして、強化ガラス基板を収納することが可能になり、強化ガラス基板及びデバイスの製造効率を高め易くなる。
【0069】
液相温度は、好ましくは1200℃以下、1100℃以下、1050℃以下、1000℃以下、930℃以下、900℃以下、特に880℃以下である。液相温度が低い程、オーバーフローダウンドロー法等でガラス基板を成形する際に、ガラスが失透し難くなる。ここで、「液相温度」は、ガラスを粉砕した後、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値を指す。
【0070】
液相粘度は、好ましくは10
4.0dPa・s以上、10
4.3dPa・s以上、10
4.5dPa・s以上、10
5.0dPa・s以上、10
5.5dPa・s以上、10
5.7dPa・s以上、10
5.9dPa・s以上、特に10
6.0dPa・s以上である。液相粘度が高い程、オーバーフローダウンドロー法等でガラス基板を成形する際に、ガラスが失透し難くなる。ここで、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。
【0071】
本発明の強化ガラス基板の製造方法は、本発明の強化ガラス基板の製造方法は、(1)ガラス原料を調合し、ガラスバッチを得る工程と、(2)ガラスバッチを溶融し、得られた溶融ガラスを1.5mm以下のガラス基板に成形する工程と、(3)ガラス基板の主表面(おもて面と裏面)に膜を形成する工程と、(4)主表面に膜を有するガラス基板をイオン交換処理して、ガラス基板の主表面及び端面に圧縮応力層を形成し、端面の応力深さが主表面の応力深さより大きい強化ガラス基板を得る工程と、(5)強化ガラス基板の主表面の膜を除去する工程と、を有することを特徴とする。本発明の強化ガラス基板の製造方法の技術的特徴(ガラス組成及びガラス特性等)について、既述の部分は、便宜上、その記載を省略する。
【0072】
本発明の強化ガラス基板の製造方法において、オーバーフローダウンドロー法で1.5mm以下のガラス基板に成形することが好ましい。オーバーフローダウンドロー法の場合、薄いガラス基板を容易に成形することができる。ここで、オーバーフローダウンドロー法は、溶融ガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス基板を成形する方法である。樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面品位を実現できる限り、特に限定されない。また、下方に延伸成形する際、力を印加する方法は特に限定されない。例えば、十分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスの端縁近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。なお、液相温度が1200℃以下、且つ液相粘度が10
4.0dPa・s以上であれば、オーバーフローダウンドロー法で薄いガラス基板を成形することができる。
【0073】
なお、オーバーフローダウンドロー法以外にも、種々の成形方法、例えば、フロート法、スロットダウン法、リドロー法、ロールアウト法、プレス法等を採用することができる。
【0074】
本発明の強化ガラス基板の製造方法は、ガラス基板に対して、イオン交換処理して、ガラス基板の主表面及び端面に圧縮応力層を形成し、強化ガラス基板を得る工程を有する。イオン交換処理は、ガラス基板の歪点以下の温度で、ガラス表面に大きなイオン半径のアルカリイオンを導入する方法である。イオン交換処理の条件は、特に限定されず、ガラス基板の粘度特性等を考慮して決定すればよい。特に、ガラス組成中のNa成分をKNO
3溶融塩中のKイオンでイオン交換すると、圧縮応力層を効率良く形成することができる。なお、イオン交換処理は、風冷強化法等の物理強化法と異なり、イオン交換処理後に強化ガラス基板を切断しても、強化ガラス基板が容易に破損しないという利点がある。
【0075】
特に、イオン交換処理の条件として、350〜500℃のKNO
3溶融塩中にガラス基板を2〜24時間浸漬することが好ましい。このようにすれば、ガラス基板に圧縮応力層を効率良く形成することができる。
【0076】
本発明の強化ガラス基板の製造方法は、膜を有するガラス基板をイオン交換処理した後、その膜を除去する工程を有するが、この工程を省略すれば、膜を導電膜、反射防止膜等の機能膜として有効利用することができ、結果として強化ガラス基板の製造効率を高めることができる。
【0077】
本発明の強化ガラス基板の製造方法は、膜を有するガラス基板をイオン交換処理した後、その膜を除去する工程を有する。本発明者等の調査によると、イオン交換処理後の膜は、主表面の面内強度を低下させる場合がある。この場合、イオン交換処理後に、別途、膜を除去する工程を設けると、そのような事態を的確に防止することができる。なお、膜を除去する工程で、完全に膜を除去してもよいが、部分的に膜を除去しても、上記効果を享受することができる。
【0078】
膜を除去する工程として、エッチングが好ましい。例えば、SiO
2膜を有する強化ガラス基板の場合、Fを含む溶液、特にHF溶液でSiO
2膜をエッチングすることが好ましい。このようにすれば、主表面の面内強度を高めつつ、膜を的確に除去することができる。
【0079】
膜をエッチングする場合、端面がエッチングされないように、端面を樹脂等で保護してもよい。このようにすれば、DT/DHの値を所定範囲に規制し易くなる。一方、膜をエッチングする場合、端面も同時にエッチングされるようにしてもよい。このようにすれば、端面に存在するクラックソースが低減されるため、端面強度を高めることができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0081】
表1、2は、強化ガラスの材質例(試料No.1〜20)を示している。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
次のようにして、各試料を作製した。まず表1、2のガラス組成となるように、ガラス原料を調合し、ガラスバッチを作製した後、このガラスバッチを白金ポットに投入して、1600℃で8時間溶融し、溶融ガラスを得た。次に、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出し、ガラス基板に成形した。得られたガラス基板について、種々の特性を評価した。
【0085】
密度は、周知のアルキメデス法で測定した値である。
【0086】
歪点Ps、徐冷点Taは、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
【0087】
軟化点Tsは、ASTM C338の方法に基づいて測定した値である。
【0088】
高温粘度10
4.0dPa・s、10
3.0dPa・s、10
2.5dPa・sにおける温度は、周知の白金球引き上げ法で測定した。
【0089】
熱膨張係数αは、ディラトメーターを用いて、30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した値である。
【0090】
液相温度TLは、ガラス基板を粉砕し、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定した値である。液相粘度logηatTLは、液相温度TLにおけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。
【0091】
ヤング率は共振法により測定した値である。また、比ヤング率は、ヤング率を密度で割った値である。
【0092】
表1、2から明らかなように、試料No.1〜20は、密度が2.48g/cm3以下、ヤング率が69GPa以上、熱膨張係数が78〜96×10
-7/℃であった。更に、試料No.1〜20は、液相粘度が10
5.1dPa・s以上、高温粘度10
2.5dPa・sにおける温度が1653℃以下であった。
【0093】
なお、未強化ガラス基板と強化ガラス基板では、表層においてガラス組成が微視的に異なっているものの、全体として見た場合、ガラス組成は実質的に相違しない。よって、密度、粘度、ヤング率等の特性は、未強化ガラス基板と強化ガラス基板で実質的に相違しない。
【0094】
更に、各試料の主表面に光学研磨を施した後、イオン交換処理を行った。イオン交換処理は、試料No.1〜17について、430℃のKNO
3溶融塩中に6時間浸漬し、No.18〜20について、430℃のKNO
3溶融塩中に4時間浸漬することで行った。次に、イオン交換処理後の各試料の表面を洗浄した上で、表面応力計(株式会社東芝製FSM−6000)を用いて、観察される干渉縞の本数とその間隔から圧縮応力層の圧縮応力値CSと応力深さDOLを算出した。なお、測定に際し、屈折率を1.50、光弾性定数を30[(nm/cm)/MPa]とした。
【0095】
表1、2から明らかなように、試料No.1〜20は、圧縮応力値CSが728MPa以上であり、応力深さDOLが34μm以上であった。また、内部引っ張り応力値は、段落[0007]に記載の関係式により算出したところ、88MPaであった。
【0096】
上記実験では、便宜上、溶融ガラスを流し出し、ガラス基板に成形した後、イオン交換処理の前に光学研磨を行った。しかし、工業的規模で強化ガラス基板を作製する場合、製造効率の観点から、オーバーフローダウンドロー法等でガラス基板を成形した後、未研磨のガラス基板をイオン交換処理することが望ましい。
【0097】
続いて、試料No.17に記載の材質について、オーバーフローダウンドロー法によりガラス基板(板厚0.55mm)を成形した。その後、スパッタ法により、ガラス基板の主表面全体(おもて面と裏面)にSiO
2の膜を形成した。成膜時の圧力として、0.3Pa又は0.1Paを設定し、厚み50〜500nmの膜を形成した。更に、膜を有するガラス基板について、イオン交換処理(430℃のKNO
3溶融塩中に6時間浸漬)を行い、試料b〜iを作製した。なお、試料aは、膜を形成せずに、上記イオン交換処理を行ったものである。最後に、得られた強化ガラス基板を定盤上に載置し、ダイヤペン(27.4g)を50mmの高さから落下させて、破損後の破片数を評価した。その結果を表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
試料aでは、主表面の圧縮応力値CSが879MPaであり、応力深さDOLが46μmであった。よって、試料a〜iの端面の圧縮応力値CSは879MPa程度、応力深さDOLは46μm程度と考えられる。
【0100】
表3から明らかなように、試料b〜iでは、端面の応力深さDOLが主表面の応力深さDOLより大きいため、試料aに比べて、内部引っ張り応力値CTが小さかった。結果として、落下試験後の破片数が少なかった。なお、試料d、e、h、iは、圧縮応力値CSと応力深さDOLが測定されていないが、破片数が低下しているため、端面の応力深さDOLが、主表面の応力深さDOLより大きく、内部引っ張り応力値CTが低下しているものと推定される。
【0101】
表3の実験では、便宜上、試料No.17に記載の材質を用いたが、試料No.1〜16、18〜20に記載の材質でも同様の傾向を示すものと考えられる。
【0102】
上記実験では、SiO
2膜を除去する工程を設けていないが、主表面の面内強度と端面の端面強度を同時に高める観点から、膜を有する強化ガラスをHF水溶液に浸漬して、SiO
2膜をエッチングすると共に、端面に存在するクラックソースを低減することが好ましい。
【解決手段】本発明の強化ガラス基板の製造方法は、(1)ガラス原料を調合し、ガラスバッチを得る工程と、(2)ガラスバッチを溶融し、得られた溶融ガラスを1.5mm以下のガラス基板に成形する工程と、(3)ガラス基板のおもて面と裏面に膜を形成する工程と、(4)おもて面と裏面に膜を有するガラス基板をイオン交換処理して、ガラス基板のおもて面、裏面及び端面に圧縮応力層を形成し、端面の応力深さが主表面の応力深さより大きい強化ガラス基板を得る工程と、(5)強化ガラス基板のおもて面と裏面の膜を除去する工程と、を有することを特徴とする。