(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図11を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は機体全体を示す側面図、(b)は座席とフレームの位置関係を示す側面図、(c)はヒンジ部の拡大図、である。
図2は、
図1に示した垂直離着陸機の飛行状態を示す図であり、(a)はホバリング時、(b)は前進時、を示している。
図3は、
図1に示した垂直離着陸機の飛行状態を示す図であり、(a)は右旋回時、(b)は左旋回時、を示している。
【0016】
本発明の第一実施形態に係る垂直離着陸機1は、
図1〜
図3に示したように、揚力及び推力を発生させるファン21を有する推進器2と、推進器2に動力を供給する原動機3と、推進器2及び原動機3を連結するフレーム4と、フレーム4に対して前後方向に回動可能に接続されるとともにフレーム4に吊下げ支持された座席5と、フレーム4に接続されたハンドル6と、座席5に接続された接地脚7と、を有し、推進器2は、着陸時にファン21の駆動軸が鉛直方向となるようにフレーム4に接続されており、ハンドル6を操作することによって、座席5に対してフレーム4を相対移動させ、推進器2の向きを変更するようにしたものである。
【0017】
前記推進器2は、原動機3の両側に配置される2つのファン21を有する。具体的には、座席5よりも左側に配置される左側ファン21aと、座席5よりも右側に配置される右側ファン21bと、を有する。ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)は、例えば、ダクテッドファンにより構成されるが、かかる構成に限定されるものではなく、プロペラやエジェクター等であってもよい。また、
図1(a)に示したように、推進器2は、例えば、座席5の上部に配置される。
【0018】
前記原動機3は、ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)に動力を伝達する駆動源であり、例えば、電動モータやレシプロエンジン等により構成され、過給機を有していてもよい。原動機3から各ファン21に動力を伝達する動力伝達機構は、各機器の配置構成等により、適宜設定される。動力伝達機構は、例えば、原動機3の出力軸の先端に接続された傘歯車と、両端に傘歯車を備えた一対のシャフトと、各ファン21の駆動軸に接続された傘歯車と、を有し、傘歯車を介して出力軸の回転を駆動軸に伝達するように構成される。動力伝達機構には、その他の歯車機構を使用してもよいし、減速機を介在させるようにしてもよい。また、各ファン21の回転数を個別に制御したい場合には、各ファン21に個別に原動機3を接続するようにしてもよい。
【0019】
前記フレーム4は、
図3に示したように、原動機3と左側ファン21a及び右側ファン21bとを接続する構成部品である。また、
図1(b)では、原動機3及びファン21の図を省略してある。
図1(b)及び(c)に示したように、フレーム4は、左右方向に延設された枢動軸41を有し、枢動軸41は、支持部材42によりフレーム4に連結されている。枢動軸41をフレーム4に直接連結できる場合には、支持部材42を省略するようにしてもよい。枢動軸41は、例えば、ファン21の揚力の作用点と一致する位置に配置することが好ましい。
【0020】
前記座席5は、例えば、
図1(a)に示したように、乗員が着座する腰掛部51と、乗員の背面を支持する背もたれ部52と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト53、乗員の足を支持するフットレスト54と、乗員を座席5に拘束するシートベルト55と、を有する。また、座席5は、前部座席5a及び後部座席5bを有する。前部座席5aは、操縦者が着座する座席5であり、後部座席5bは、救助者や護衛が着座する座席である。後部座席5bは、物資等を載置する荷物置場に使用することもできる。また、前部座席5aの前方には整流手段であるカウル5cが接続されている。カウル5cの一部は、視界を確保するために透明の部材により構成される。また、前部座席5aとカウル5cとの接続部5dは、コンソールボックスとして使用するようにしてもよいし、原動機3の操作スイッチや操作レバーを配置する制御部として使用するようにしてもよい。
【0021】
また、座席5は、フレーム4に接続された枢動軸41を挿通可能な挿通部56を有する。前部座席5a及び後部座席5bは、それぞれ支持フレーム57を有し、支持フレーム57は、挿通部56に接続されている。フレーム4の枢動軸41と座席5の挿通部56によりヒンジを構成し、フレーム4及び座席5は、枢動軸41に沿って互いに回動可能、すなわち、相対移動可能に構成されている。座席5は、枢動軸41に吊下げ支持された構成となっているが、前後方向の重量を調節することによって、通常時は平行を維持することができるようにバランス調整されている。また、一人乗りの場合や二人乗りの場合等のように、飛行時の積載重量に応じてバランスウェイトを適宜加減して、その都度バランス調整するようにしてもよい。なお、後部座席5bの支持フレーム57には、尾翼58を配置するようにしてもよい。
【0022】
前記ハンドル6は、フレーム4から斜め下方に向かって延出されるようにフレーム4に接続される。ハンドル6は、
図1(b)及び(c)に示したように、支持部材42に接続するようにしてもよい。かかる構成により、前部座席5aに着座した乗員(操縦者)が、ハンドル6を身体に近付けたり遠ざけたりすることによって、座席5に対してフレーム4を相対移動(回動)させることができ、推進器2の向き(ファン21の駆動軸の前後方向角度)を変更することができる。
【0023】
前記接地脚7は、着陸時に地面等に接地する脚部である。接地脚7は、例えば、
図1(a)に示したように、座席5の下部に接続されている。また、
図3(a)及び(b)に示したように、左右一対の接地脚7を有している。
【0024】
ここで、上述した垂直離着陸機1の飛行状態(ホバリング時、前進時、右旋回時、左旋回時)について、
図2及び
図3を参照しつつ説明する。各図において、垂直離着陸機1には、前部座席5aに操縦者Mのみが搭乗(一人乗り)しているものとする。
【0025】
ホバリング時は、
図2(a)に示したように、操縦者Mは、推進器2(ファン21)の駆動軸が略鉛直方向となるようにハンドル6を操作する。かかる操作によって、推進器2の推力は機体に揚力のみを発生させ、機体に推力を発生しないようにすることができる。また、ホバリング時は、推進器2の揚力と機体の重力とが略一致するように原動機3の出力を調整する。ホバリングは、空中で垂直離着陸機1を停止させた状態であるが、鉛直方向に離着陸するときの上昇時や下降時もホバリングと実質的に同じ姿勢となる。すなわち、離陸時は、推進器2の揚力が機体の重力よりも大きくなるように原動機3の出力を調整し、着陸時は、推進器2の揚力が機体の重力よりも小さくなるように原動機3の出力を調整すればよい。
【0026】
前進時は、
図2(b)に示したように、操縦者Mは、ハンドル6を身体に近付けて座席5に対してフレーム4、すなわち、推進器2(ファン21)を前方に傾動させる。かかる操作により、推進器2(ファン21)は、斜め後方に向かって空気を噴出することができ、推進器2の推力の前後方向成分により、機体を前進させることができる。また、前方に直進したい場合には、推進器2の推力の鉛直方向成分(揚力)と機体の重力とが略一致するように原動機3の出力を調整すればよい。
【0027】
右旋回時は、
図3(a)に示したように、操縦者Mから見て右側に操縦者Mが体重移動することによって、機体を右側に傾ける。かかる操作によって、機体の左側に向かって推力を発生させることができ、右に旋回することができる。
【0028】
左旋回時は、
図3(b)に示したように、操縦者Mから見て左側に操縦者Mが体重移動することによって、機体を左側に傾ける。かかる操作によって、機体の右側に向かって推力を発生させることができ、左に旋回することができる。
【0029】
続いて、上述した垂直離着陸機1の飛行原理について、
図4及び
図5を参照しつつ説明する。ここで、
図4は、第一実施形態に係る垂直離着陸機の飛行原理を示す図であり、(a)はホバリング時、(b)はホバリング外乱発生時、を示している。
図5は、第一実施形態に係る垂直離着陸機の飛行原理を示す図であり、(a)は前進時、(b)は左旋回時、を示している。各図において、ファン21以外の機体の図を省略し、機体の重心をGとし、揚力の作用点をFとしている。第一実施形態に係る垂直離着陸機1では、重心Gよりも作用点Fは上方に位置している。
【0030】
図4(a)はホバリング時の飛行原理を示している。
図4(a)において左図は側面図、右図は正面図を示している。
図4(a)に示したように、ホバリング時には、ファン21の駆動軸は鉛直方向に向いており、作用点Fと重心Gとを結ぶ機体軸FGも鉛直方向に向いている。このとき、ファン21は、鉛直方向上方に推力fを発生し、この推力fが揚力として機体に作用する。また、機体には、鉛直方向下方に重力gが生じている。したがって、ホバリング時には、推力f(揚力)と重力gとが同じ大きさを有し、釣り合った状態となっている。
【0031】
図4(b)はホバリング外乱発生時の飛行原理を示している。
図4(b)において左図は側面図、右図は正面図を示している。まず、
図4(b)の側面図に示したように、ホバリング時に風等の外乱を受けて機体が前方に傾いた場合を想定する。この場合、ファン21の駆動軸及び機体軸FGは、前方に傾斜した状態となる。このとき、ファン21の推力fの鉛直方向成分fvは揚力として機体に作用し、この鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、機体軸FGが前方に傾斜していることから、重力gは機体軸FG方向の軸方向成分gaと傾斜方向成分gtとに分離することができる。この傾斜方向成分gtは、重心Gを作用点Fに対して前方向に移動させることとなるため、復元力として機体に作用する。
【0032】
次に、
図4(b)の正面図に示したように、ホバリング時に風等の外乱を受けて機体が左側に傾いた場合を想定する。この場合も同様に、推力fの鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整され、重力gの傾斜方向成分gtは、重心Gを作用点Fに対して左方向に移動させることとなるため、復元力として機体に作用する。
【0033】
図5(a)は前進時の飛行原理を示している。
図5(a)は側面図を示している。
図5(a)に示したように、前進時には、機体軸FGに対してファン21の駆動軸は前方に傾斜しており、ファン21は駆動軸方向に推力fを発生している。このとき、推力fの鉛直方向成分fvは揚力として機体に作用し、この鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、推力fの水平方向成分fhは、機体軸FGを前方に移動させるように作用し、この水平方向成分fhは機体の推力として作用し、機体を前方に移動(前進)させる。
【0034】
図5(b)は左旋回時の飛行原理を示している。
図5(b)は正面図を示している。
図5(b)に示したように、左旋回時には、ファン21の駆動軸及び機体軸FGは、左側に傾斜している。このとき、ファン21の推力fの鉛直方向成分fvは揚力として機体に作用し、この鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、推力fの水平方向成分fhは、作用点Fを左側に移動させるように向心力として作用し、その反作用として重心Gを右側に移動させるように遠心力fcが作用する。その結果、機体は姿勢を維持したまま左旋回することとなる。なお、右旋回時の飛行原理は、左旋回時の飛行原理を左右反転させた場合と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0035】
続いて、上述した飛行原理と同じ飛行原理を有する第二実施形態に係る垂直離着陸機1について、
図6を参照しつつ説明する。ここで、
図6は、本発明の第二実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は機体全体を示す側面図、(b)は座席とフレームの位置関係を示す側面図、(c)はヒンジ部の拡大図、である。なお、上述した第一実施形態に係る垂直離着陸機1と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0036】
図6(a)〜(c)に示した第二実施形態に係る垂直離着陸機1は、接地脚7をフレーム4に接続したものである。接地脚7を座席5ではなく、フレーム4に接続することにより、座席5の重量を軽くすることができ、ヒンジ(枢動軸41及び挿通部56)に係る負荷を軽減することができる。具体的には、接地脚7は、フレーム4に接続された支持フレーム43に接続されている。支持フレーム43は、例えば、略台形状のフレームにより構成されており、接地脚7が台形の下底を構成するように配置されている。また、支持フレーム43は、
図6(c)にその一部を記載したように、下方に向かって左右の間隔が広くなるように形成されており、座席5の両側に支持フレーム43が配置されるように構成されている。なお、ハンドル6は、支持フレーム43に接続するようにしてもよい。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態に係る垂直離着陸機1について、
図7を参照しつつ説明する。ここで、
図7は、本発明の他の実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は第三実施形態、(b)は第四実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態又は第二実施形態に係る垂直離着陸機1と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0038】
図7(a)に示した第三実施形態に係る垂直離着陸機1は、原動機3を座席5の下部に配置し、推進器2(ファン21)を座席5の隣接部に配置したものである。他の構成については、第二実施形態に係る垂直離着陸機1と同じ構成であるため、詳細な説明を省略する。また、図示しないが、推進器2(ファン21)は、座席5の下部に配置された原動機3の隣接部に配置して座席5よりも下部に配置するようにしてもよい。
【0039】
図7(b)に示した第四実施形態に係る垂直離着陸機1は、推進器2が座席5の後部に配置される後部ファン22を有するものである。他の構成については、第三実施形態に係る垂直離着陸機1と同じ構成であるため、詳細な説明を省略する。後部ファン22は、例えば、ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)よりも小型のダクテッドファンにより構成される。例えば、後部ファン22が一基の場合には、左側ファン21a、右側ファン21b及び後部ファン22は、三角形の頂点を形成する位置に配置され、フレーム4は、三角形の各辺を構成するように形成される。また、例えば、後部ファン22が二基の場合には、左側ファン21a、右側ファン21b及び後部ファン22は、四角形(例えば、正方形、長方形、台形等)の頂点を形成する位置に配置され、フレーム4は、四角形の各辺を構成するように形成される。
【0040】
また、後部ファン22の駆動軸は、ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)の駆動軸と平行となるように配置してもよいし、図示したように、後部ファン22の駆動軸を前方に傾斜するように配置してもよい。なお、ファン21を座席5の下部又は隣接部に配置した場合には、ファン21及び後部ファン22の駆動軸を内側に傾斜させるように、すなわち、正面視したときにファン21及び後部ファン22が略V字形状を構成するように配置して、静安定を保持し易くするようにしてもよい。
【0041】
続いて、第三実施形態に係る垂直離着陸機1の飛行原理について、
図8及び
図9を参照しつつ説明する。ここで、
図8は、第三実施形態に係る垂直離着陸機の飛行原理を示す図であり、(a)はホバリング時、(b)はホバリング外乱発生時、を示している。
図9は、第三実施形態に係る垂直離着陸機の飛行原理を示す図であり、(a)は前進時、(b)は左旋回時、を示している。各図において、ファン21以外の機体の図を省略し、機体の重心をGとし、揚力の作用点をFとしている。第三実施形態に係る垂直離着陸機1では、重心Gは作用点Fよりもわずかに下方に位置しているものとする。また、ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)は、正面視したときに略V字形状を構成するように配置されているものとする。
【0042】
図8(a)はホバリング時の飛行原理を示している。
図8(a)において左図は側面図、右図は正面図を示している。
図8(a)に示したように、ホバリング時には、ファン21の駆動軸は鉛直方向に向いており、作用点Fと重心Gとを結ぶ機体軸FGも鉛直方向に向いている。このとき、ファン21は、鉛直方向上方に推力fを発生し、この推力fが揚力として機体に作用する。なお、正面図に示したように、ファン21の推力fは、左側ファン21aの推力faと右側ファン21bの推力fbの合力によって求められる。また、機体には、鉛直方向下方に重力gが生じている。したがって、ホバリング時には、推力f(揚力)と重力gとが同じ大きさを有し、釣り合った状態となっている。
【0043】
図8(b)はホバリング外乱発生時の飛行原理を示している。
図8(b)において左図は側面図、右図は正面図を示している。まず、
図8(b)の側面図に示したように、ホバリング時に風等の外乱を受けて機体が前方に傾いた場合を想定する。この場合、ファン21の駆動軸及び機体軸FGは、前方に傾斜した状態となる。このとき、ファン21の推力fの鉛直方向成分fvは揚力として機体に作用し、この鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、機体軸FGが前方に傾斜していることから、重力gは機体軸FG方向の軸方向成分gaと傾斜方向成分gtとに分離することができる。この傾斜方向成分gtは、重心Gを作用点Fに対して前方向に移動させることとなるため、復元力として機体に作用する。
【0044】
次に、
図8(b)の正面図に示したように、ホバリング時に風等の外乱を受けて機体が左側に傾いた場合を想定する。この場合も同様に、推力fの鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整され、重力gの傾斜方向成分gtは、重心Gを作用点Fに対して左方向に移動させることとなるため、復元力として機体に作用する。また、ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)が略V字形状に配置されていることから、左側ファン21aの推力faは略鉛直方向に生じており、右側ファン21bの推力fbは内側に傾斜した方向に生じている。したがって、左側ファン21aの推力faは揚力として機体に作用し、右側ファン21bの推力fbの鉛直方向成分fbvは揚力として機体に作用する。いま、左側ファン21a及び右側ファン21bの推力fは同じ大きさに調整されているとすれば、推力fa>鉛直方向成分fbvの関係が成り立つ。この揚力の差分(fa−fbv)は、左側ファン21aを上方に押し上げるように作用し、復元力として機体に作用する。
【0045】
図9(a)は前進時の飛行原理を示している。
図9(a)は側面図を示している。
図9(a)に示したように、前進時には、機体軸FGに対してファン21の駆動軸は前方に傾斜しており、ファン21は駆動軸方向に推力fを発生している。このとき、推力fの鉛直方向成分fvは揚力として機体に作用し、この鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、推力fの水平方向成分fhは、機体軸FGを前方に移動させるように作用し、この水平方向成分fhは機体の推力として作用し、機体を前方に移動(前進)させる。
【0046】
図9(b)は左旋回時の飛行原理を示している。
図9(b)は正面図を示している。
図9(b)に示したように、左旋回時には、機体軸FGは左側に傾斜している。また、ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)が略V字形状に配置されており、左側ファン21aの推力faは略鉛直方向に生じ、右側ファン21bの推力fbは内側に傾斜した方向に生じているものとする。このとき、左側ファン21aの推力faは揚力として機体に作用し、右側ファン21bの推力fbの鉛直方向成分fbvは揚力として機体に作用する。そして、ファン21の推力f(推力faと推力fbの合力)の鉛直方向成分fv(すなわち、推力faと鉛直方向成分fbvの合力)は揚力として機体に作用し、この鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、推力fの水平方向成分fh、すなわち、右側ファン21bの推力fbの水平方向成分fbhは、作用点Fを左側に移動させるように向心力として作用し、その反作用として重心Gを右側に移動させるように遠心力fcが機体に作用する。その結果、機体は姿勢を維持したまま左旋回することとなる。なお、右旋回時の飛行原理は、左旋回時の飛行原理を左右反転させた場合と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
続いて、第四実施形態に係る垂直離着陸機1の飛行原理について、
図10及び
図11を参照しつつ説明する。ここで、
図10は、第四実施形態に係る垂直離着陸機の飛行原理を示す図であり、(a)はホバリング時、(b)はホバリング外乱発生時、を示している。
図11は、第四実施形態に係る垂直離着陸機の飛行原理を示す図であり、(a)は前進時、(b)は左旋回時、を示している。各図において、ファン21及び後部ファン22以外の機体の図を省略し、機体の重心をGとし、揚力の作用点をFとしている。第四実施形態に係る垂直離着陸機1では、重心Gは作用点Fよりもわずかに上方に位置しているものとする。また、ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)は、正面視したときに略V字形状を構成するように配置されているものとする。また、後部ファン22はファン21に対して前方に傾斜した状態に配置されているものとする。
【0048】
図10(a)はホバリング時の飛行原理を示している。
図10(a)において左図は側面図、右図は正面図を示している。
図10(a)に示したように、ホバリング時には、ファン21の推力f1と後部ファン22の推力f2の合力が作用点Fに対して鉛直方向の推力fを発生させるように機体の姿勢が調整される。具体的には、ファン21の駆動軸は後方側に傾斜し、後部ファン22の駆動軸は前方側に傾斜した状態に維持される。なお、正面図に示したように、ファン21の推力f1は、左側ファン21aの推力faと右側ファン21bの推力fbの合力によって求められる。また、作用点Fと重心Gとを結ぶ機体軸FGも鉛直方向に向いており、機体には鉛直方向下方に重力gが生じている。したがって、ホバリング時には、推力f(揚力)と重力gとが同じ大きさを有し、釣り合った状態となっている。
【0049】
図10(b)はホバリング外乱発生時の飛行原理を示している。
図10(b)において左図は側面図、右図は正面図を示している。まず、
図10(b)の側面図に示したように、ホバリング時に風等の外乱を受けて機体が前方に傾いた場合を想定する。この場合、ファン21の推力f1と後部ファン22の推力f2の合力である推力f及び機体軸FGは、前方に傾斜した状態となる。このとき、推力fの鉛直方向成分fvは揚力として機体に作用し、この鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、ファン21及び後部ファン22が前方に傾斜した結果、ファン21の揚力(推力f1の鉛直方向成分)は大きくなり、後部ファン22の推力f2の鉛直方向成分f2vは小さくなる。したがって、ファン21の揚力の増加分は機体の前部を上方に押し上げるように作用し、後部ファン22の揚力の減少分は機体の後部を下方に押し下げるように作用する。すなわち、この揚力の変動分は、機体に対して復元力として作用することとなる。なお、図では、ファン21の推力f1が鉛直方向に向いている場合を図示している。
【0050】
次に、
図10(b)の正面図に示したように、ホバリング時に風等の外乱を受けて機体が左側に傾いた場合を想定する。この場合も同様に、推力fの鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)が略V字形状に配置されていることから、左側ファン21a及び右側ファン21bが左側に傾斜した結果、左側ファン21aの揚力(推力faの鉛直方向成分)は大きくなり、右側ファン21bの推力fbの鉛直方向成分fbvは小さくなる。したがって、左側ファン21aの揚力の増加分は機体の左側を上方に押し上げるように作用し、右側ファン21bの揚力の減少分は機体の右側を下方に押し下げるように作用する。すなわち、この揚力の変動分は、機体に対して復元力として作用することとなる。なお、図では、左側ファン21aの推力faが鉛直方向に向いている場合を図示している。
【0051】
図11(a)は前進時の飛行原理を示している。
図11(a)は側面図を示している。
図11(a)に示したように、前進時には、機体軸FGが前方に傾斜した状態に固定されており、ファン21及び後部ファン22の駆動軸も前方に傾斜した状態になっている。このとき、ファン21の推力f1は鉛直方向成分f1v及び水平方向成分f1hに分離することができ、後部ファン22の推力f2は鉛直方向成分f2v及び水平方向成分f2hに分離することができる。鉛直方向成分f1vと鉛直方向成分f2vの合力は、推力fの鉛直方向成分fvを構成し、この鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、水平方向成分f1hと水平方向成分f2hの合力は、推力fの水平方向成分fhを構成し、この水平方向成分fhは機体の推力として作用し、機体を前方に移動(前進)させる。
【0052】
図11(b)は左旋回時の飛行原理を示している。
図11(b)は正面図を示している。
図11(b)に示したように、左旋回時には、機体軸FGは左側に傾斜している。また、ファン21(左側ファン21a及び右側ファン21b)が略V字形状に配置されており、左側ファン21aの推力faは略鉛直方向に生じ、右側ファン21bの推力fbは内側に傾斜した方向に生じているものとする。このとき、左側ファン21aの推力faは揚力として機体に作用し、右側ファン21bの推力fbの鉛直方向成分fbvは揚力として機体に作用する。そして、ファン21の推力f(推力faと推力fbの合力)の鉛直方向成分fv(すなわち、推力faと鉛直方向成分fbvの合力)は揚力として機体に作用し、この鉛直方向成分fv(揚力)は重力gと釣り合うように調整される。また、推力fの水平方向成分fh、すなわち、右側ファン21bの推力fbの水平方向成分fbhは、作用点Fを左側に移動させるように向心力として作用し、その反作用として重心Gを右側に移動させるように遠心力fcが機体に作用する。その結果、機体は姿勢を維持したまま左旋回することとなる。なお、ここでは、説明の便宜上、後部ファン22の作用を無視している。また、右旋回時の飛行原理は、左旋回時の飛行原理を左右反転させた場合と同じであるため説明を省略する。
【0053】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。