特許第5920562号(P5920562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920562
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】取水井の取水口構造
(51)【国際特許分類】
   E21B 43/08 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   E21B43/08
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-247632(P2011-247632)
(22)【出願日】2011年11月11日
(65)【公開番号】特開2013-104199(P2013-104199A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2014年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】305011053
【氏名又は名称】株式会社ナガオカ
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】三村 等
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−044386(JP,A)
【文献】 特開2003−314184(JP,A)
【文献】 特開平07−233800(JP,A)
【文献】 特開平07−207644(JP,A)
【文献】 特開2011−196073(JP,A)
【文献】 特開2009−208036(JP,A)
【文献】 特開2010−084388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 43/00−43/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水井の全周またはその一部に設けられ所定の高さを有する取水口であって、
該取水口の上下端面に取水井の周方向に取り付けられた一対の頂部および底部フランジと、
該取水口の周方向の両端面に取り付けられた一対の端面フランジと、
該一対の頂部および底部フランジおよび該一対の端面フランジに固定され、取水口の全面にわたり設けられたスクリーンと、
該スクリーンの取水井半径方向外側において、相互に所定の間隔で上下方向に配置され、両端部をそれぞれ頂部および底部フランジに固定された複数のスクリーン保護パイプとを備える取水井の取水口構造であって、
該複数のスクリーン保護パイプは、それぞれ上下方向に所定の間隔で該スクリーンに向けて開口する複数の逆洗用流体噴出口が形成されており、
該取水口構造は、該スクリーン保護パイプの取水井半径方向内側に配置され、逆洗用流体タンクに接続された逆洗用流体供給管と、
該逆洗用流体供給管と該スクリーン保護パイプのそれぞれとを接続し、該逆洗用流体供給管と各スクリーン保護パイプとを連通させる接続管とをさらに備えることを特徴とする取水井の取水口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取水井の取水口に関し、特に取水井の全周またはその一部に設けられた所定の高さを有する取水口に関する。
【背景技術】
【0002】
この取水口は一般にその上下端面に取水井の周方向に取り付けられた一対の頂部および底部フランジと、取水口の周方向の両端面に取り付けられた一対の端面フランジを備え、これら一対の頂部および底部フランジおよび一対の端面フランジに、取水スクリーンが取水口の全面にわたって溶接等により固定されている。
【0003】
取水井を設置する場合、取水井の直径が2m以下の比較的小径の場合は、取水地の地盤を取水井を設置するために必要な深さだけボーリングして穴を穿ち、この穴に取水井を吊り降ろして設置することができるが、取水井の直径が2mを超え10mに及ぶような比較的大径の場合は、地下水の水面以下の地盤が柔らかいので、ボーリングすると掘削した穴が崩れやすく、ボーリングで掘削することができない。そこで、地下水の水面以下の地盤に取水井を埋設するには、取水井の自重を利用するかあるいは取水井の頂部から機械を使用して加圧して取水井を圧入するようにして取水井を所定の深さまで地盤中に沈下させる工法が一般に用いられている。
【0004】
このように比較的大径の取水井を設置する場合、取水井を自重または圧入により地盤中に沈下させると、取水口に取り付けられた取水スクリーンが、取水井の下降中に地盤中の石や砂利等に接触し擦られることにより損傷や変形を生じるおそれがある。
【0005】
また、このような取水井の他の問題は、スクリーンとして例えば特許文献1に示すようならせん状または直線状ウエッジワイヤからなるスクリーンを使用すると、長期間にわたる使用中に、地下水中の砂利やごみ、砂等がスクリーンのウエッジワイヤ間のスロットに侵入して目詰まりが生じスクリーンの集水効率が悪化することである。このような場合は、取水を一旦中止し、作業員が取水井内に入ってスクリーンを洗浄することにより目詰まりの除去作業を行わなければならず極めて面倒な作業が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−314183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の取水井の取水口構造の問題点にかんがみなされたものであって、取水井の設置作業中の沈下の際にスクリーンが地盤中の石や砂利等に接触し擦られることにより損傷や変形が生じることがない取水口構造を提供しようとするものである。
【0008】
本発明の他の目的は、取水井を長期にわたり使用することにより、砂利やごみ等によりスクリーンのスロットに目詰まりが生じても、このような目詰まりを簡単に除去することができる取水口構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の目的を達成する取水井の取水口構造の第1の構成は、取水井の全周またはその一部に設けられ所定の高さを有する取水口であって、該取水口の上下端面に取水井の周方向に取り付けられた一対の頂部および底部フランジと、該取水口の周方向の両端面に取り付けられた一対の端面フランジと、該一対の頂部および底部フランジおよび該一対の端面フランジに固定され、取水口の全面にわたり設けられたスクリーンと、該スクリーンの取水井半径方向外側において、相互に所定の間隔で上下方向に配置され、両端部をそれぞれ頂部および底部フランジに固定された複数のスクリーン保護パイプとを備える取水井の取水口構造であって、該複数のスクリーン保護パイプは、それぞれ上下方向に所定の間隔で該スクリーンに向けて開口する複数の逆洗用流体噴出口が形成されており、該取水口構造は、該スクリーン保護パイプの取水井半径方向内側に配置され、逆洗用流体タンクに接続された逆洗用流体供給管と、該逆洗用流体供給管と該スクリーン保護パイプのそれぞれとを接続し、該逆洗用流体供給管と各スクリーン保護パイプとを連通させる接続管とをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記第1の構成によれば、取水口構造は、スクリーンの取水井半径方向外側において、相互に所定の間隔で上下方向に配置され、両端部をそれぞれ頂部および底部フランジに固定された複数のスクリーン保護パイプを備えているので、取水井の設置作業中の沈下の際に、地盤中の石や砂利等はこれらスクリーン保護パイプに接触し、スクリーンが地盤中の石や砂利等に直接接触し擦られることが防止され、スクリーンの損傷や変形を防止することができる。
また、複数のスクリーン保護パイプは、それぞれ上下方向に所定の間隔でスクリーンに向けて開口する複数の逆洗用流体噴出口が形成されており、取水口構造は、スクリーン保護パイプの取水井半径方向内側に配置され、逆洗用流体タンクに接続された逆洗用流体供給管と、逆洗用流体供給管とスクリーン保護パイプのそれぞれとを接続し、逆洗用流体供給管と各スクリーン保護パイプとを連通させる接続管とをさらに備えているので、スクリーンのスロットに目詰まりが生じた場合は、逆洗用流体タンクから逆洗用の水または空気等の逆洗用流体を逆洗用流体供給管から接続管を介して各スクリーン保護パイプに供給し、各スクリーン保護パイプの逆洗用流体噴出口からスクリーンに向けて噴出させることにより、スクリーンスロットの目詰まりを除去することができる。
さらに、スクリーン保護パイプを逆洗管として利用しているので、逆洗管を別途配置することを省略することができ、逆洗管設置のための手間と費用を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る取水井の取水口構造の1実施態様を示す正面図である。
図2図1のA−A矢視図である。
図3】取水口構造の拡大正面図であり、図の左半分はその外面を示し、図の右半分はその内面を示す。
図4図3において頂部フランジを外して見た平面図である。
図5図4におけるB−B矢視図である。
図6図4におけるC−C矢視図である。
図7】スクリーンの詳細を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図8図4におけるD−D矢視図である。
図9】逆洗管の逆洗水噴出口の配置を示す図である。
図10】本発明に係る取水井の取水口構造の他の実施形態を示す図4と同様の平面図である。
図11図10中F部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2において、断面楕円形の取水井1はコンクリートまたは鋼等の材料で楕円形断面の筒状に形成されており、その下部に正面視ほぼ長方形の取水口2が設けられている。4は工事の際等に作業者が利用する中間タラップである。本実施形態において、取水口は取水井の周の一部に所定の高さで形成されているが、取水井の全周にわたって形成することも可能である。取水井1の直径は通常2m〜10mであるが、これに限定されるものではない。
【0018】
取水口2は図3に示すように、取水井の外側から内側に見て、スクリーン保護パイプ5、スクリーン6、逆洗管7が配置されている。
【0019】
取水口2の上下端面には一対の頂部および底部フランジ8、9が取水井の周方向に取り付けられており、取水口の周方向の両端面には一対の端面フランジ10.11が上下方向に取り付けられている。各フランジ8、9、10、11は複数のアンカーボルト17(図6参照)により取水井1の取水口壁面に取り付けられている。一対の頂部および底部フランジ8、9および一対の端面フランジ10、11には取水口の全面にわたり設けられたスクリーン6が溶接等の手段により固定されている。
【0020】
スクリーン6は、本実施形態においては、図7に示すような線状ウエッジワイヤ13を複数本相互に所定幅のスロットを形成するようにして平行に配置し、適宜の間隔で線状ウエッジワイヤと直交するロッド20に溶接したものを使用する。線状ウエッジワイヤ13の配置方向は上下方向、水平方向のいずれでもよい。図示の実施形態においては、線状ウエッジワイヤ13は水平方向に配置している。
【0021】
スクリーン6の取水井半径方向外側には、複数のスクリーン保護パイプ5が相互に所定の間隔で上下方向に配置され、両端部をそれぞれ頂部および底部フランジ8、9に溶接等の手段により固定されている。保護パイプ5は鋼製、合金鋼製等強度が強く、取水井の沈下時に石や砂利等と接触しても容易に変形しない充分な強度を有することが望ましい。
【0022】
スクリーン保護パイプ5の外径は10〜25mmのものを使用するがこれに限定されるものではない。またスクリーン保護パイプ5の設置間隔は通常50mm〜100mmの範囲内で、スクリーン6の開口率が減少しないように配慮して決定する。
【0023】
スクリーンを外部の石や砂利に対して保護するために使用する部材としてはスクリーン保護パイプ5のかわりに鋼棒や合金製棒等の棒状部材を使用することも可能であるが、強度的に鋼棒と同等以上の強度を有する上に材料費が棒材に比べて安価なパイプを使用することが好ましい。
【0024】
スクリーン6の取水井半径方向内側には、複数の逆洗管7が相互に所定の間隔で上下方向に配置されている。各逆洗管7の両端部はそれぞれ頂部および底部フランジ8,9に溶接等の手段により固定されている。各逆洗管7は上下方向に所定の間隔でスクリーン6に向けて開口する複数の逆洗用流体噴出口7aが形成されている。また逆洗用流体供給管12は取水口2の上部において逆洗管7の取水井半径方向内側に配置され、その屈曲した両端部12a、12aは配管18を介して逆洗用流体タンク19に接続されている。逆洗用流体供給管12と逆洗管7の間には接続管15が設けられている。接続管15は逆洗用流体供給管12と逆洗管7とを接続し、逆洗用流体供給管12と各逆洗管7とを連通させるものである。
【0025】
図8に示すように、スクリーン6は、上下方向に適宜の間隔で配置されかつフランジ10、11間に延長するとともに両端がスクリーン6のロッドおよび逆洗管7に溶接された板状の補強リブ14によって支持されている。
【0026】
図9に示すように、各逆洗管7の逆洗用流体噴出口7aは隣合う逆洗管7との間で同一平面上でなく、千鳥状に配置されることが逆洗用流体を均一にスクリーン6の噴射する上で好ましい。
逆洗用流体としては、空気、水、又は空気と水の混流のいずれも用いることができる。
【0027】
次に上記構成の取水口構造の動作について説明する。
取水井1を設置後通常の取水時においては、取水井1のタラップ4等に設置した汲み上げポンプ(図示せず)を駆動して、取水口2を通して外部から取水井1内に流入する水を汲み上げて外部に取り出す。
【0028】
長期間取水を継続することによりスクリーン6のウエッジワイヤ13間のスロットに砂利やごみ、砂等による目詰まりが生じた場合は、逆洗用流体タンク19から逆洗用流体を逆洗用流体供給管12を介して逆洗管7に流し、各逆洗管7の逆洗用流体噴出口7aからスクリーン6に向けて噴出させる。これによってスクリーン6のウエッジワイヤ13間の砂利やごみ等による目詰まりは除去される。この時取水井1内の水は一時的に濁水となるので、この期間は通常の取水は中断されるが、逆洗作業が終了して逆洗用流体の噴出を停止すれば、濁水の流出も終了し、通常の取水に復帰することができる。
【0029】
次に、図10を参照して、本発明に係る取水井の取水口構造の他の実施形態について説明する。図10において、図4と同一構成要素は同一符号で示し、詳細な説明を省略する。
【0030】
この実施形態においては、図4の実施形態のような逆洗管7を設けず、スクリーン保護パイプ5に逆洗管としての機能を持たせている点で図4の実施形態と異なる。
【0031】
すなわち、複数のスクリーン保護パイプ5は、それぞれ上下方向に所定の間隔でスクリーン6に向けて開口する複数の逆洗用流体噴出口が形成されている。各保護パイプ5の逆洗用流体噴出口は隣り合う保護パイプ5との間で千鳥状に配置されていることが好ましい。逆洗用流体供給管12は、取水口2の上部においてスクリーン保護パイプ5の取水井半径方向内側に配置され、配管18を介して逆洗用流体タンク19に接続されている。逆洗用流体供給管12と各スクリーン保護パイプ5は、図11に示すように、図4に示す接続管15と同様の接続管15によって接続されている。
【0032】
スクリーン6のウエッジワイヤ13間のスロットに目詰まりが生じた場合は、逆洗用流体タンク19から逆洗用流体を逆洗用流体供給管12から接続管を介して各スクリーン保護パイプ5に供給し、各スクリーン保護パイプ5の逆洗用流体噴出口からスクリーンに向けて噴出させることにより、スクリーンスロットの目詰まりを除去することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11