(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920622
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】アゾジカルボン酸ジエステル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 281/20 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
C07C281/20
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-110537(P2012-110537)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-237625(P2013-237625A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮武 正雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 康博
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 一剛
【審査官】
土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−328568(JP,A)
【文献】
特開平11−140212(JP,A)
【文献】
特公昭41−000216(JP,B1)
【文献】
特開2008−208111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 281/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(a):ヒドラジンとハロ炭酸エステルとの反応から得られる一般式(1);
【化1】
(式中、Aは炭化水素またはエーテル結合を有しても良い炭化水素を表す。)
で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を得る工程、
工程(b):一般式(1);
【化1】
(式中、Aは前記と同義である。)
で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を酸化することにより一般式(2);
【化2】
(式中、Aは前記と同義である。)
で表されるアゾジカルボン酸ジエステル化合物を得る工程、
を含有するアゾジカルボン酸ジエステル化合物の製造方法において、
工程(a)の溶媒にアセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノールおよび水からなる群より選択される1種以上の溶媒を用い、
工程(b)の移行に際して、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、芳香族溶媒、酢酸エステルまたはハロゲン化溶媒に溶媒置換することによって
一般式(1)で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を単離および精製しない製造方法。
【請求項2】
前記Aがメチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、または2−メトキシエチル基である請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的に効率的なアゾジカルボン酸ジエステル化合物の製造方法に関する。アゾジカルボン酸ジエステルはカルボン酸化合物、フェノール化合物、イミド化合物、リン酸化合物、およびアジ化水素等の酸性化合物とアルコールとを脱水縮合する光延反応に利用される化合物である。特に、光学活性なアルコールを原料に使用した場合、完全な立体反転を伴いながら縮合反応するため、医薬品等の製造に利用される有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、光延反応に使用される一般式(2)で表されるアゾジカルボン酸ジエステル化合物は、中間体である一般式(1)で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を合成後、濃縮乾固によって一旦単離し、さらに有機溶媒による再結晶やカラムクロマトグラフィーによる精製等をした後に、酸化反応を行って得られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許4094654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記方法における濃縮乾固操作は実験室スケールでは実施できるものの、商用プラントのような大規模スケールでは実施困難である。さらに、再結晶、カラムクロマトグラフィーによる精製も工業化製法に於いては非効率であり、加えて、単離および精製操作による収率の低下も生じていた。
【0004】
本発明の課題は、上記の従来技術の問題点を解決し、中間体である1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を濃縮乾固による単離や、再結晶、カラムクロマトグラフィーによる精製をすることなく、アゾジカルボン酸ジエステル化合物を高収率で得ることができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究したところ、中間体である1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を濃縮乾固による単離や、再結晶、カラムクロマトグラフィーによる精製をすることなく、アゾジカルボン酸ジエステル化合物を効率よく高収率で得ることができる製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、一般式(2)で表されるアゾジカルボン酸ジエステル化合物の高効率、高収率な製造方法を提供するものである。
項1. 工程(a):ヒドラジンとハロ炭酸エステルとの反応から得られるから一般式(1);
【化1】
(式中、Aは炭化水素またはエーテル結合を有しても良い炭化水素を表す。)
で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を得る工程、
工程(b):一般式(1);
【化1】
(式中、Aは前記と同義である。)
で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を酸化することにより、
一般式(2);
【化2】
(式中、Aは前記と同義である。)
で表されるアゾジカルボン酸ジエステル化合物を得る工程、
を含有するアゾジカルボン酸ジエステル化合物の製造方法において、
一般式(1)で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を単離および精製しない製造方法。
項2.前記Aがメチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、または2−メトキシエチル基である項1に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、上記一般式(2)で表される、アゾジカルボン酸ジエステル化合物を従来の製造方法と比較して効率的、且つ高収率で得ることができ、工業的に非常に有利な製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記一般式(1)、(2)におけるAについて説明する。Aは直鎖状でも分岐鎖状でも良い炭化水素またはエーテル結合を有しても良い炭化水素を表す。好適な具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、2−メトキシエチル基がより好ましい。
【0010】
<工程(a)>
この工程は、ヒドラジンとハロ炭酸エステル化合物を反応させることにより、一般式(1)で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を得る工程である。ハロ炭酸エステル化合物の具体例としては、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソプロピルエステル、クロロ炭酸フェニルエステル、クロロ炭酸(2−アルコキシエチル)エステル、ブロモ炭酸エチルエステル、ブロモ炭酸イソプロピルエステル、ブロモ炭酸フェニルエステル、ブロモ炭酸(2−アルコキシエチル)エステル、ヨード炭酸(2−アルコキシエチル)エステルが挙げられる。
ハロ炭酸エステル化合物の使用量は、ヒドラジン1モルに対して2.0〜5.0モルが好ましく、2.0〜3.0モルがより好ましい。
【0011】
この反応には塩基が必要であるが、塩基の種類に制限はない。具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリアリルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルイミダゾール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エンなどの3級アミンが挙げられ、これらの中で炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミンが特に好ましい。当該塩基の使用量は、ヒドラジン1モルに対して1.0〜3.0モルが好ましく、1.0〜2.0モルがより好ましい。
【0012】
反応溶媒は、反応を阻害するものでなければ特に制限はない。好適な具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソールなどのエーテル溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジクロロプロパンなどのハロゲン化溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールなどのアルコール溶媒、および水溶媒が挙げられる。これらの中で特に、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、水が好ましい。また、溶媒は単一で使用しても混合しても問題ない。当該溶媒の使用量は、ヒドラジン1gに対して、0.5〜50mLが好ましく、2mL〜20mLがより好ましい。
【0013】
この反応は、ヒドラジン、塩基、およびハロ炭酸エステル化合物を、反応溶媒中で混合することにより行われる。反応温度は、低すぎると反応速度が小さくなり、高すぎると副生成物が多くなるため、−20℃〜60℃が好ましく、0℃〜30℃程度がより好ましい。反応時間は、0.1時間〜24時間が好ましく、0.5時間〜3時間程度がより好ましい。
【0014】
反応終了後、生成した一般式(1)で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物を濃縮乾固による単離や再結晶等による精製をすることなく、工程(b)に移行する。工程(b)への移行に際して、工程(b)で使用する溶媒に置換することが好ましい。溶媒の置換方法としては、特に制限されないが、例えば、工程(a)で使用した溶媒を一定量留去し、次いで工程(b)で使用する溶媒を追加する。この操作を繰り返すことで工程(b)で使用する溶媒に完全に置換することができる。好適な留去量としては、反応液を撹拌できれば特に制限されないが、濃縮後の1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物濃度として50〜95容量%が好ましく、80〜90容量%がより好ましい。また、追加する溶媒量は1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物濃度として2〜50容量%が好ましく、5〜20容量%がより好ましい。
使用塩基の塩が晶析している場合には、ろ過にて除去する。塩のろ過は溶媒置換の前後のいずれでもよい。
【0015】
<工程(b)>
この工程は、一般式(1)で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物の酸化により、上記一般式(2)で表される、アゾジカルボン酸ジエステル化合物を得る工程である。1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物は上記の溶媒置換した単離および精製していない物を用いる。
【0016】
この反応で用いる酸化剤の制限は特にない。好適な具体例としては、塩素、臭素、ヨウ素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜ヨウ素酸ナトリウム、N−クロロコハク酸イミド、N−ブロモコハク酸イミド、N−ヨードコハク酸イミド、過酸化水素、過酸化水素−尿素錯体などが挙げられる。これらの中で特に塩素、臭素、N−ブロモコハク酸イミドが好ましい。当該酸化剤の使用量はヒドラジン1モルに対して、1.0モル〜2.0モルが好ましく、1.0モル〜1.5モルがより好ましい。
【0017】
この反応では塩基を用いる場合があるが、特に制限はない。好適な具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリアリルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルイミダゾール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エンなどの3級アミンが挙げられ、これらの中で炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジンが特に好ましい。当該塩基の使用量は、ヒドラジン1モルに対して、0.5モル〜5.0モルが好ましく、1.0モル〜3.0モルがより好ましい。
【0018】
反応溶媒は、反応に使用する試剤と反応しない限り特に制限はない。好適な具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソールなどのエーテル溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどの酢酸エステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジクロロプロパンなどのハロゲン化溶媒、水溶媒が挙げられる。これらの中で特に、酢酸エチル、トルエン、クロロホルムが好ましい。また、工程(a)から工程(b)への移行は溶媒置換によって行われるため、工程(a)で使用する溶媒よりも高沸点であるか、または工程(a)で使用する溶媒と共沸する溶媒が好ましい。当該溶媒の使用量は、ヒドラジン1gに対して0.5ml〜50mlが好ましく、2ml〜40mlがより好ましい。
【0019】
この反応は、一般式(1)で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物と酸化剤と必要に応じて塩基を、反応溶媒中で混合することにより行われる。反応温度は、低すぎると反応速度が小さくなり、高すぎると副生成物が多くなるため、0℃〜60℃が好ましく、0℃〜30℃程度がより好ましい。また、反応時間は0.5時間〜24時間が好ましく0.5時間〜12時間程度がより好ましい。
【0020】
反応終了後、水以外の溶媒を用いている場合は水を加えて反応を停止させる。次いで、抽出、洗浄、脱湿、溶媒留去などの常法により、上記一般式(2)で表されるアゾジカルボン酸ジエステル化合物が得られる。得られるアゾジカルボン酸ジエステル化合物が固体の場合は再結晶やカラムクロマトグラフィーで精製することができ、液体の場合は蒸留やカラムクロマトグラフィーで精製することができる。
【0021】
本発明によると、一般式(1)で表される1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエステル化合物合成後、濃縮乾固による単離や再結晶等による精製を行うことなく、一般式(2)で表されるアゾジカルボン酸ジエステル化合物をワンポットで効率的、且つ高収率で得ることができ、工業的に非常に有利な製造方法である。
【実施例】
【0022】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例1 ビス(2−メトキシエチル)アゾジカルボン酸エステルの製造
【0024】
【化3】
【0025】
1000mlフラスコに、ヒドラジン水和物(20.0g、400.0mmol)、エタノール(100ml)、水(160ml)及び炭酸ナトリウム(46.8g、441.6mmol)を加え、20℃以下でクロロ炭酸2−メトキシエチルエステル(121.8g、879.1mmol)を滴下した後、2時間反応した。反応終了後、ビス(2−メトキシエチル)1,2−ヒドラジンジカルボン酸エステルの約90容量%溶液となるまでエタノールおよび水を濃縮し、アセトン(400ml)を加えた後ろ過を行い、固体(副生塩)を除去した。ついで、得られたろ液をビス(2−メトキシエチル)1,2−ヒドラジンジカルボン酸エステルの約90容量%溶液となるまでアセトンを濃縮した後、トルエン(700ml)を加え、さらに残存アセトンを濃縮除去して、ビス(2−メトキシエチル)1,2−ヒドラジンジカルボン酸エステルのトルエン溶液を得た。ついで、ビス(2−メトキシエチル)1,2−ヒドラジンジカルボン酸エステルのトルエン溶液に、ピリジン(34.8g、440.0mmol)を加え、N−ブロモコハク酸イミド(71.2g、400mmol)を20℃付近でゆっくりと加え2時間反応した。反応終了後、反応液を水(300mL×2回)で洗浄し、ついで、無水硫酸マグネシウムで脱湿した後に溶媒を濃縮した。得られた残渣をトルエン(120ml)、ヘキサン(600ml)で再結晶することで、ビス(2−メトキシエチル)アゾジカルボン酸エステルを薄黄色結晶として得られた(75.5g、収率80.6%)。
【0026】
実施例2 アゾジカルボン酸ジエチルエステルの製造
【0027】
【化4】
【0028】
30mlフラスコに、ヒドラジン水和物(200mg、4.0mmol)、アセトニトリル(10ml)及び炭酸ナトリウム(551mg、5.2mmol)を加え氷冷下、クロロ炭酸エチルエステル(868mg、8.0mmol)を滴下した後、1時間反応した。反応終了後に固体をろ過により除去した後、得られたろ液を1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエチルエステルの約90容量%となるまでアセトニトリルを濃縮した後、トルエン(10ml)を加え、さらに1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエチルエステルの約90容量%となるまでアセトニトリルおよびトルエンを濃縮した後、トルエン(10ml)を加え、1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエチルエステルのトルエン溶液を得た。ついで、1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジエチルエステルのトルエン溶液に、ピリジン(316.4mg、4.0mmol)、トルエン(10ml)を加え、20℃でN−ブロモコハク酸イミド(711.9mg、4.0mmol)をゆっくりと加え2時間反応した。反応終了後、溶液を水(3mL×2回)で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱湿した後に濃縮乾固した。残渣を蒸留することで、アゾジカルボン酸ジエチルエステルを澄明液体として得られた(528.8mg、収率76.0%)。
【0029】
実施例3 アゾジカルボン酸ジイソプロピルエステルの製造
【0030】
【化5】
【0031】
30mlフラスコに、ヒドラジン水和物(200mg、4.0mmol)、テトラヒドロフラン(10ml)及び炭酸ナトリウム(551mg、5.2mmol)を加え氷冷下、クロロ炭酸イソプロピルエステル(980mg、8.0mmol)を滴下した後、1時間反応した。反応終了後に固体をろ過により除去した後、得られたろ液を1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジイソプロピルエステルの約90容量%となるまでテトラヒドロフランを濃縮した後、トルエン(10ml)を加え、さらに残存テトラヒドロフランを濃縮除去して、1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジイソプロピルエステルのトルエン溶液を得た。ついで、1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジイソプロピルエステルのトルエン溶液に、ピリジン(316.4mg、4.0mmol)、トルエン(10ml)を加え、20℃でN−ブロモコハク酸イミド(711.9mg、4.0mmol)をゆっくりと加え2時間反応した。反応終了後、溶液を水(3mL×2回)で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱湿した後に濃縮乾固した。残渣を蒸留することで、アゾジカルボン酸ジイソプロピルエステルを澄明液体として得た(628.5mg、収率77.8%)。
【0032】
実施例4 アゾジカルボン酸ジフェニルエステルの製造
【0033】
【化6】
【0034】
30mlフラスコに、ヒドラジン水和物(200mg、4.0mmol)、アセトニトリル(10ml)及び炭酸ナトリウム(551mg、5.2mmol)を加え氷冷下、クロロ炭酸フェニルエステル(1253mg、8.0mmol)を滴下した後、1時間反応した。反応終了後に固体をろ過により除去した後、得られたろ液を1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジフェニルエステルの約85容量%となるまでアセトニトリルを濃縮した後、トルエン(10ml)を加え、さらに残存アセトニトリルを濃縮除去して、1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジフェニルエステルのトルエン溶液を得た。ついで、1,2−ヒドラジンジカルボン酸ジフェニルエステルのトルエン溶液に、ピリジン(316.4mg、4.0mmol)、トルエン(10ml)を加え、20℃でN−ブロモコハク酸イミド(711.9mg、4.0mmol)をゆっくりと加え2時間反応した。反応終了後、溶液を水(3mL×2回)で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱湿した後にヘキサン(30ml)を滴下した後、析出した結晶をろ別することで、アゾジカルボン酸ジフェニルエステルを結晶として得た(83.8mg、収率77.5%)。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の製造方法によれば、光延反応に利用される化合物であるアゾジカルボン酸ジエステルを商用プラントのような大規模スケールでも高収率で効率的に製造できる。本発明の製造方法によって得られたアゾジカルボン酸ジエステルは、特に、光学活性なアルコールを原料に使用した場合、完全な立体反転を伴いながら縮合反応するため、医薬品等の製造に利用される有用な化合物である。