(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムを170℃、20分間加熱したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ加熱前ヘイズ)は0.5未満である必要がある。△Hzが0.5以上である場合には、フィルムの後加工工程においてオリゴマーが析出し、工程を汚染する場合がある。逆に、△Hzが0.5未満である場合は、後加工での熱処理においても加熱白化が抑制され、光学用途などにおいても好適に用いることができる。発明における好ましい△Hzの上限は0.3であり、より好ましくは0.1である。△Hzは小さいことが好ましいく、△Hzの下限は0である。
【0026】
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムの少なくとも最外層のポリエステルにおけるヒドロキシル(OH)末端量は70eq/ton以下であることが重要である。本発明のポリエステルフィルムはヒドロキシル(OH)末端量が上記範囲に低減されることから、環状三量体の生成を好適に低減することができる。そのため、フィルム製膜時の溶融工程における環状三量体の再生を抑制することができ、フィルム原料の低オリゴマー量を好適に保持しやすい。上記ヒドロキシル(OH)末端量は68eq/ton以下がより好ましく、65eq/ton以下がよりさらに好ましい。上記ヒドロキシル(OH)末端量は少ないことが好ましいが、少なすぎる場合はポリエステル樹脂の加水分解が生じやすくなる。よって、フィルムの耐久性の点からは、上記ヒドロキシル(OH)末端量の下限は40eq/ton以上が好ましく、50eq/ton以上がより好ましい。本発明はポリエステル樹脂中のヒドロキシル(OH)末端のオリゴマー再生に及ぼす影響を見出したことが重要であり、ポリエステルフィルムのヒドキシル(OH)末端量を制御する方法は特に問わないが、フィルム原料を水雰囲気下で熱処理を施すことにより好適にヒドキシル(OH)末端量を制御することができる。
【0027】
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムの少なくとも最外層おける環状三量体含有量は0.45質量%以下である必要がある。環状三量体含有量が0.45質量%以上である場合には、フィルム製膜工程においてオリゴマーが析出し、加熱白化が生じやすくなったり、フィルム製膜工程や後工程を汚染により光学欠点が生じる場合がある。ポリエステルフィルムの環状三量体量を上記範囲にするためには、ポリエステル原料に熱処理などを施すことが好ましいが、本発明ではヒドロキシル(OH)末端量を低減させることにより、フィルム中の環状三量体量を上記範囲に好適に低減することができる。本発明における好ましい環状三量体含有量の上限は0.40質量%である。環状三量体量は少ないことが好ましいが、生産性の点を考えると、上記環状三量体量の下限は0.05質量%が好ましく、0.10質量%がより好ましく、0.20質量%よりさらに好ましい。
【0028】
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムの固有粘度は、0.40dl/gから0.68dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.40dl/gよりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、0.70dl/gより大きいと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となる。PETの固有粘度の上限は0.65dl/gが好ましく、0.63dl/gがより好ましい。さらに、上記下限は0.50dl/gが好ましく、0.55dl/gがより好ましい。
【0029】
本発明のフィルムは、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応により得られるポリエステル樹脂からなる。ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。本発明では強度や透明性などの点からポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートが好適であり、中でもポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0030】
ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0031】
また、前記ポリエステルの固有粘度は、0.45dl/gから0.70dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.45dl/gよりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、0.70dl/gより大きいと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となる。PETの固有粘度の上限は0.68dl/gが好ましく、0.65dl/gがより好ましい。さらに、上記下限は0.48dl/gが好ましく、0.50dl/gがより好ましい。
【0032】
粗製ポリエステル調製時の触媒として、従来公知のMn、Mg、Ca、Ti、Ge、Al、Sb、Co化合物、リン化合物、アンチモン化合物などが使用される。ポリエステル溶融時にオリゴマーの再生を抑制する方法として触媒を失活させる方法が提案されているが、本発明では係る工程を経ることなく好適にオリゴマーの再生を抑制することができる。なお、ここで「粗製ポリエステル」とは後述の熱処理前のポリエステルを区分して表現するものである。
【0033】
上記ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含む組成物には、ポリエステルの最終用途に応じて、安定剤、顔料、染料、核剤、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤などの添加剤が含有され得る。
【0034】
次に、得られた粗製ポリエステルをシートカット法、ストランドカット法などにより、適宜、チップ状(例えば、円柱状)、粒子状などに成形する。例えば、チップの成形は、粗製ポリエステルの溶融体をギヤーポンプでダイスから押出しストランドを形成し、このストランドをカッターで切断して、長軸×短軸×長さが約2.2×3.1×3.4mmの楕円柱状のチップを成形する。係るチップ形状に成型することにより、後述の熱処理により好適にフィルム原料のオリゴマー量の低減を図りつつ、チップ内部まで調湿効果を好適に及ぼすことができる。
【0035】
ポリエステルのヒドロキシル(OH)末端量を低減させる方法としては、ポリエステルの分子量を大きくして単位当たりの末端量を低減させる方法や、原料チップを水飽和させる方法などが挙げられる。なかでも、本発明ではフィルム原料となる粗製ポリエステルを水雰囲気下で熱処理を施すことにより、オリゴマー含有量を好適に低減させるとともに、ヒドロキシル(OH)末端量を好適に低減させることができるので好ましい。係る熱処理は、水含有の湿調不活性ガスの流量下で190〜260℃での高温の熱処理を施すことを特徴とする。熱処理を不活性ガスの流量下で行うことにより、PET固有粘度を必要以上に上昇させることなく、好適にオリゴマーの低減を図ることができる。この点が従来の固相重合と相違する点である。また、従来、バッチ法で行なわれる固相重合法と異なり、流量下で連続的に処理ができる点で生産性にも優れる。
【0036】
さらに、係る熱処理を所定の水雰囲気下で行うことにより、ポリエステル樹脂中のヒドロキシル(OH)末端量を好適に低減させることができる。水雰囲気下でヒドロキシル(OH)末端量が低減する理由については、以下のように考えている。すなわち、加熱処理によりヒドロキシル(OH)末端同士が脱エチレングリコール反応により結合し、ヒドロキシル(OH)末端が消費される。一方、水雰囲気下によりエステル反応の逆反応が生じ、ポリエステル分子量が低減し、新たな分子鎖末端が生じる。これらの反応が混合して生じるため、結果としてヒドロキシル(OH)末端が低減することになると考えられる。
【0037】
以下に、本発明における粗製ポリエステルの熱処理条件について詳細に述べる。
熱処理においては不活性ガス中の含水量は好ましくは3.5〜30.0g/Nm
3であり、より好ましくは4.0〜20.0g/Nm
3である。調湿不活性ガス中の含水量が3.5g/Nm
3未満の場合には、得られるポリエステルの固有粘度の上昇が著しい。調湿不活性ガス中の含水量が過剰である場合には、加水分解反応が起こり、得られるポリエステルの固有粘度が低下するおそれがある。
【0038】
不活性ガスとしては、ポリエステルに対して不活性なガスが用いられ、例えば、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウムガスなどが挙げられる。特に、窒素ガスが安価であるため好ましい。
【0039】
加熱処理装置としては、上記粗製ポリエステルと不活性ガスとを均一に接触し得る装置が望ましい。このような加熱処理装置としては、例えば、静置型乾燥機、回転型乾燥機、流動床型乾燥機、攪拌翼を有する乾燥機などが挙げられる。
【0040】
また、熱処理を実施する前にポリエステルの水分は適度に除去しておくことと、熱処理時におけるポリマー同士の融着を防止するためにもポリマーを一部結晶化させておくのがより好ましい。
【0041】
熱処理において、加熱処理温度は好ましくは190℃〜260℃であり、より好ましくは200℃〜250℃である。加熱処理温度が190℃未満の場合には、粗製ポリエステル中の環状三量体の減少速度が小さくなる場合がある。加熱処理温度がポリエステルの融点を越える温度の場合には、ポリエステルが融解してしまい、接着が起こりやすい。そのため、得られるポリエステルを加熱処理装置から取り出すことが困難となり、また、成形操作も困難となる場合がある。
【0042】
加熱処理時間は、通常、1〜70時間が好ましく、さらに好ましくは2〜60時間、さらに好ましくは、4〜50時間である。1時間未満の場合には、粗製ポリエステル中の環状三量体が充分に減少せず、70時間を越える場合には、粗製ポリエステル中の環状三量体の減少速度が小さく、逆に熱劣化などの問題が生じるおそれがあり、色調が損なわれる。
【0043】
不活性気体の流量は、ポリエステルの固有粘度と密接な関係がある。また、調湿不活性気体中に含まれる含水量もポリエステルの固有粘度の変化に影響する。そのため、不活性気体の流量は、含水量および所望のポリエステルの固有粘度、加熱処理温度などに応じて適宜選択されるべきである。
【0044】
例えば、調湿不活性気体の含水量が高い場合、水による加水分解などの悪影響を回避するために、流量は多くすることが好ましい。また、加熱処理温度を高温とする場合、ポリエステルの固有粘度の上昇を抑制するために、不活性気体の流量は少なくすることが好ましい。
【0045】
不活性気体の流量は、好ましくはポリエステル1kg当たり毎時1リットル以上、より好ましくは5リットル以上である。不活性気体の流量がポリエステル1kg当たり毎時1リットルより少ない場合には、酸素の混入などにより、得られる樹脂が黄色味を帯びるなどの悪影響が生じるおそれがある。不活性気体の流量の上限は、不活性気体中に含まれる含水量および加熱処理温度によって決定されるが、ポリエステル1kg当たり毎時10,000リットル以下、好ましくは5,000リットル以下、さらに好ましくは2,000リットル以下である。不活性気体の流量を、10,000リットル以上としても、本発明の目的から逸脱するようなことはないが、経済的な面を考慮すれば、むやみに流量を多くする必要はない。
【0046】
本発明の熱処理は、常圧から微加圧状態下で不活性ガスを流通させながら、加熱処理することにより実施される。
【0047】
この場合、加圧は、加熱処理中に大気中の水分や酸素が反応機に混入するのを抑制することが目的であるから、加圧条件は5.0kg/cm
2以下で充分である。加圧条件が5.0kg/cm
2を越える場合でも、本発明の目的を逸脱することはないが、設備にコストがかかるため、必要以上に圧力を高くすることは意味がない。
【0048】
さらに、色調の面から流通させる不活性ガス中の酸素濃度は、50ppm以下、好ましくは25ppm以下が必要である。酸素濃度が50ppm以上では、本発明のポリエステルの劣化による色調悪化、具体的には黄変が激しく製品品質上問題となる。
【0049】
このようにして得られたポリエステルは、好適には次式を満たす。
−0.05dl/g≦加熱処理前の極限粘度−加熱処理後の極限粘度≦0.05dl/g
【0050】
これらの処理によって、加熱処理後のポリエステル組成物の固有粘度(B)は0.50dl/g以上、0.70dl/g以下が好ましく、さらに加熱処理前のポリエステル組成物(粗製ポリエステル)の固有粘度(A)との間に、−0.05dl/g≦{(A)−(B)}≦0.05dl/gを満足することが好ましく、さらに、−0.02dl/g≦{(A)−(B)}≦0.02dl/gを満足することが好ましい。加熱処理後の固有粘度(B)を0.50dl/g以上とすることで製膜時の膜破れなどの発生が軽減され有利である。また、0.70dl/g以下とすることで、溶融成形時の剪断発熱で温度が上昇するのを軽減でき、製品中のオリゴマー量を抑えるのに有利である。
【0051】
また、−0.05dl/g≦{(A)−(B)}≦0.05dl/gを満足することで、フィルム成形時の不必要な温度上昇が無く、ポリエステルのオリゴマー量が少なく色調の良好なフィルムが得られる他、加熱処理前のポリエステル組成物(粗製ポリエステル)に関して、特別に低粘度又は高粘度の銘柄を新たに設ける必要が無く、他の製品として利用可能な既存のポリマーを用いてオリゴマー量を低くすることが可能となり、経済的に有利である。
【0052】
また、加熱処理後のポリエステル組成物の環状三量体の含有量は0.4質量%以下とする必要がある。さらに好ましくは0.35質量%である。0.4質量%を超える場合は、フィルム成形時にオリゴマーが再生し、フィルム製造時やフィルム加工工程でオリゴマーがフィルム表面に析出して工程を汚しフィルム製品欠点となるなどの問題を生じる場合がある。
【0053】
さらに、加熱処理後のポリエステル組成物のヒドロキシル(OH)末端量は65eq/ton以下である必要がある。ヒドロキシル(OH)末端量が低いほど、ポリエステル原料のフィルム化工程における溶融押出し時のオリゴマー再生成を抑制できる。60eq/ton以下がさらに好ましい。
【0054】
本発明のフィルムは、共押出法により3層以上の積層構成であって、両最外層に不活性粒子を含有する。例えば、最外層をB層、他の層をA層、C層とすると、フィルム厚み方向の層構成は、B/A/B、B/A/C/B、あるいはB/A/C/A/B等の構成が考えられる。A〜C層の各層は、それぞれ、ポリエステル樹脂の構成は同じであっても良いし、異なっていても良いが、バイメタル構成によるカールの発生を抑制すためには、各層のポリエステル樹脂を同構成にする、および/もしくは、B/A/B構成(2種3層構成)とすることが好ましい。
【0055】
上記のように環状三量体量を低減したポリエステルはフィルム各層に適用可能であるが、少なくとも最外層を構成するポリエステルは環状三量体量を低減したポリエステルを用いる。これにより、フィルム表面でのオリゴマーの析出を好適に抑制することができる。
【0056】
本発明では、最外層以外の中心層(例えば、B/A/B構成ではA層)を構成するポリエステル樹脂は、粒子を含有してもよいが、高い透明性を得るためには、中心層を構成するポリエステル樹脂は実質的に粒子を含有しないことが好ましい。最外層にのみ不活性粒子を含有させることで、より好適に高い透明性を得ることができる。最外層以外の中心層に粒子を添加する場合、50ppm以下、好ましくは10ppm以下であることが好ましい。
【0057】
最外層に含まれる不活性粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、不定形シリカ、球状シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子や、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子微粒子が挙げられる。なかでも、シリカはポリエステルと屈折率が比較的近いため、より透明性に優れたフィルムを確保し得る点で最も好適である。
【0058】
本発明のフィルムの最外層に含まれる不活性粒子の平均粒径は2.1〜2.5μmであり、更に好ましくは2.2〜2.4μmである。不活性粒子の平均粒径が2.1μm以下だと粒子の凝集力が非常に大きく、粒子の凝集による粗大な異常粒子が発生しやすくなり好ましくない。さらに、後述するような表面形状を構成するためには、不活性粒子の平均粒径は2.1μm以上であることが望ましい。また、平均粒径が2.5μm以上だと、粒子単体としての粗大粒子の含有量が多くなり好ましくない。本発明では、光学欠点の要因となる粗大粒子を極限まで低減させるため、このように特定の非常に狭い範囲の粒子を用いる。
【0059】
ここでいう不活性粒子の平均粒径の範囲は、後述する測定方法により測定したものである。なお、例えば後述するような、一次粒子が凝集した二次粒子の場合は、当該二次粒子の平均粒径をいう。つまり、ここでの不活性粒子の平均粒径とは、フィルム内において実際に不活性粒子として存在しうる態様での平均粒径である。
【0060】
最外層中の不活性粒子の含有量は、0.015〜0.03質量%であることが望ましく、更に好ましくは0.02〜0.025質量%である。不活性粒子の含有量が0.015質量%以上の場合は、微小キズを低減する程度の有効な滑り性を奏する上で好ましい。不活性粒子の含有量が0.03質量%以下の場合は、高透明性を保持する上で好ましい。
【0061】
本発明者は、表面凹凸の付与による光学欠点の減少と、高速加工により生じる粉落ちとの如何に両立すべきかを検討した結果、特定の表面構造を有する場合に、これら両特性が顕著に両立することを見出した。すなわち、本発明は、最外層表面における、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である突起の数の割合が30%以下であることを特徴とする。
【0062】
光学欠点を抑制する程度の、滑り性を奏するには、不活性粒子による2nm以上の突起高さを有する表面突起を有することが重要である。表面突起の高さが2nm未満では、マクロの表面形状がほぼ平坦となり、滑り性に有効に寄与することが困難である。しかしながら、表面突起が高くなると、超高速度の加工において、ロールやフィルム同士の擦れにより、突起を形成する粒子が脱落する。このような工程中の僅かな粉落ちが長期の操業により工程を汚し、微小キズが生じる要因となる。また、係るフィルムに後述の塗布層を設ける場合もまた同様である。そこで、本発明者は、粉落ちの要因となる表面形状を検討した結果、表面突起の高さによって粒子の脱落のし易さが決まるのではなく、表面突起の山の形状が不活性粒子の脱落のし易さに影響するという新たな知見を見出し、本発明に至った。すなわち、高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50を越える、なだらか裾野を有する表面突起は、粒子の脱落が生じにくい。一方、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である、比較的裾野の小さい表面突起が粒子の脱落が顕著に生じやすい。
【0063】
本発明のフィルムは、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である突起の数の割合が30%以下であり、好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。直径Lと高さhの比L/hが50以下である表面突起の割合が、30%を超えると、粉落ちによる光学欠点が生じやすくなる。当該形状を有する表面突起の割合は、少ない方が好ましいが、生産性の点から1%程度が下限であると考える。
【0064】
上記特定の表面構成を形成するには、なだらかな山裾を有する表面突起を多くすることが望ましい。そのため、最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径の5倍以上にすることが必要である。表面突起は、最外層中に存在する不活性粒子により形成される。なだらかな表面突起を形成するためには、不活性粒子が表面直下にあるのではなく、ある程度以上の大きさを有する粒子が、適当な深さをもって存在することが望ましい。最外層の厚みが不活性粒子の平均粒径の5倍未満であると、不活性粒子による表面突起の形状が比較的鋭利になるため、粉落ちが生じやすくなる。最外層の厚みの上限は、粉落ち発生の観点からは特に設けないが、厚みが厚くなりすぎるとフィルム内部にある不活性粒子の量が多くなりすぎ、フィルム内部で発生する光の散乱が多くなり透明性が低下するため好ましくない。最外層の厚みの上限はヘイズ上昇を許容できる範囲から、11倍未満とした。尚、ここで最外層の厚みとはフィルム両面に積層されている最外層の、片側の厚みのことである。
【0065】
上述のように不活性粒子と不活性粒子含有層の厚みを制御することにより、好適にフィルム表面の突起形状をコントロールし、個々の突起の傾斜角度を極力小さくすることが出来、透明性の低下を極力抑えながら光学欠点低減効果を高めることが可能となる。
【0066】
さらに、より好適に上記の特定の表面形状を形成するためには、例えば(1)ポリエステル樹脂の固有粘度を高めることで表面形状をなだらかにする方法、(2)熱固定温度を高温で処理することで表面形状をなだらかにする方法、などを組み合わせることによっても可能である。また、後述するように、(3)フィルムの延伸で追従的な変形が生じやすい不活性粒子を用いることも好適である。
【0067】
フィルムの延伸で追従的な変形が生じやすい不活性粒子としては、数nmから数百nmの一次粒子が凝集した二次粒子であって、その細孔容積を1.5ml/g以上であるものが好ましい。特に透明性や取り扱い性、価格の観点から、不定形塊状シリカが好適である。不活性粒子の細孔容積を1.5ml/g以上とすることで、延伸による粒子の変形が発生しやすくなり、本発明の範囲に突起形状をコントロールしやすくなる。なお、不活性粒子の細孔容量はBJH法など公知の窒素脱吸着により算出することができる。不活性粒子がフィルム中にある場合は、例えばフェノール/テトラクロロエタン混合溶液などにより溶解し、残渣である不活性粒子を回収し、十分乾燥した後、BJH法など公知の窒素脱吸着により算出することができる。る。
【0068】
ポリエステルに上記不活性粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0069】
中でも、本発明ではポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中、又はエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度のため、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。
【0070】
特に、前記不定形塊状シリカを用いる場合は、スラリーの添加、混合により、粒子が凝集し、凝集粗大粒子が生じる場合がある。シリカの凝集は高温で生じやすいため、光学欠点の要因となる凝集粗大粒子を低減するために、前記不定形塊状シリカを含有するエチレングリコール溶液を添加する場合は、エステル化反応もしくはエステル交換反応を行ってオリゴマーを生成する前の工程において、好ましくは10〜50℃、より好ましくは10〜30℃の範囲に保持しながら、ポリエステル原料とブレンドすることが好ましい。このタイミングでスラリーを添加することで、スラリー温度を低温に保ったまま添加することが可能となり、新たな凝集体の生成を抑制することができる。
【0071】
一般的に不活性粒子の粒径はある程度の幅を有する分布を示すが、本発明で用いる不活性粒子は、好ましくは10μm以上の粒径を有する不活性粒子が全体の1%以下であることが好ましい。10μm以上の粒径を有する不活性粒子が1%を超える場合は、光学欠点の要因となる粗大粒子の数が多くなるため好ましくない。不活性粒子の分布を上記範囲にする方法としては、(1)不活性粒子を分散させたエチレングリコールもしくはポリエステルを精密濾過する方法、(2)不活性粒子を分散させたエチレングリコールもしくはポリエステルをバッチ式または間欠式の遠心分離機で処理する方法、(3)所定の粒度分布を有する不活性粒子を選定する方法、などを用いることができる。
【0072】
本発明においてはフィルムのヘイズが2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズが2.0%以上となると、レンズシートとして使用した場合、バックライトユニットの正面輝度を低下させる恐れがあるため好ましくない。また、後述するような粒子を含有する接着性改質層を積層した場合、接着性改質層付きフィルムのヘイズは、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましい。
【0073】
本発明のフィルムの三次元中心面平均粗さ(SRa)は0.008〜0.015μmであることが好ましい。また、十点平均粗さ(SRz)が0.5〜1.5μmであることが好ましく、0.6〜1.0μmであることがより好ましい。三次元中心面平均粗さ(SRa)もしくは十点平均粗さ(SRz)が上記範囲内であると、微小キズを有効に抑制しながら、光透明性を維持できるため好ましい。
【0074】
本発明は、上記特定の表面構造を有し、また好ましくは上記特定の表面粗さを有するため、加工工程、製膜工程で生じる微小キズを抑制しうる程度の、良好な滑り性を奏することができる。そのため、後述の測定方法により測定する本発明のフィルムの動摩擦係数(μd)は1.5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。動摩擦係数が上記範囲内であれば、耐スクラッチ性が保持され、工程中でのキズが生じにくい。
【0075】
本発明のフィルムの厚みは特に限定されないが、好ましくは75〜350μm、より好ましくは100〜300μmである。フィルムの厚みが75μm以上であると、ベースフィルムとしての強度が保持しやすい。また、フィルム厚みが350μm以下であると、レンズシートの軽量化の点で好ましい。
【0076】
本発明のフィルムは上記特定の表面構造を有するため、光透明でありながら製膜中に生じる光学欠点を抑制することができる。本発明のフィルムは、後述する方法により測定した場合、高低差が0.3μmの微小キズが1m
2当り好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下、さらに好ましくは0個にすることができる。高低差が0.3μmの非常に浅い深さを有する微小キズは、製膜工程中または加工工程中にフィルム同士やガイドロールと擦れることにより生じるものである。このような顕微レベルの微小なキズは、従来あまり問題となされていなかったが、今後進展するであろう高精細化に対応するためには課題とされるべき光学欠点となりうるものである。このため、本発明のフィルムは特に高精細が要求されるようなレンズシートに好適である。
【0077】
また、本発明のフィルムは上記特定の粒子構成を有するため、フィルムに粒子を含有しながら、光学欠点の要因となる凝集異物を極限まで抑制することが可能となる。本発明のフィルムは、後述する方法により測定した場合、長径20μm以上の異物が1m
2当り好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下、さらに好ましくは0個にすることができる。長径20μm以上の異物は、微小粒子の凝集により形成される粗大粒子に起因するものである。このため、本発明のフィルムは特に高精細が要求されるようなレンズシートに好適である。
【0078】
本発明においては、レンズ樹脂との接着性を向上させるために、二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に接着性改質樹脂層を有することも好ましい様態である。接着性改質層の成分は特に限定しないが、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分」とは接着性改質樹脂層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。本発明の接着性改質樹脂層の形成に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、特許第4150982号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、ポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
【0079】
接着性改質樹脂層は、前記塗布液を縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。接着性改質樹脂の厚みは特に限定されないが、通常は0.01〜5μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜2μm、最も好ましくは0.05〜0.5μmである。厚みが薄すぎると接着性不良となる可能性がある。また、本発明の範囲において、接着性改質樹脂を複数層積層することや、複数の接着性改質樹脂を混合して使用すること、両面に異なる接着性改質樹脂を塗工することも可能である。
【0080】
接着性改質樹脂層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。接着性改質樹脂層に含有させる粒子としては、前述した微粒子と同様のものが例示される。
【0081】
また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。なお、本発明の接着改質樹脂層付きレンズシート用フィルムについて、フィルム表面形状の特性を評価する場合は、例えばメチルエチルケトンなどのような溶剤のより接着性改質樹脂層を除去したものを用いて評価することができる。
【0082】
本発明においてレンズシートは、集光機能が付与された樹脂シートであって、液晶表示装置、スクリーン投影装置、その他のディスプレイ装置の光学部材として用いられるものである。レンズシートとして本発明のフィルムに付与する集光機能層は、集光機能を有するものであればよく、その形状は特定されないが、例えば、プリズムレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズなどが例示される。このような集光機能層を形成するための樹脂としては、例えば、紫外線硬化型または電子線硬化型アクリル系樹脂が挙げられる。
【実施例】
【0083】
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
【0084】
[評価方法]
(1)最外層(不活性粒子含有層)の厚み
レンズシート用ベースフィルムをフィルムの流れ方向に対して垂直に切り出し、光硬化樹脂で包埋した。包埋した試料をミクロトームにて70〜100nm程度の厚みの極薄切片とし、四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色した。この染色された極薄切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、TEM2010)を用いて断面観察し、不活性粒子の位置から最外層(不活性粒子含有層)の厚みを求めた。尚、観察倍率は1500倍から10000倍の範囲で適宜設定した。
【0085】
(2)最外層表面の突起形状の評価
各実施例、比較例において接着性改質樹脂層を設けずに作成したレンズシート用ベースフィルムを用意し、レンズシート用ベースフィルムを任意の場所で切り出した後、原子間力顕微鏡(SII社製、SPI3800)を用いて、観察モード=DFMモード、スキャナー=FS−20A、カンチレバー=DF−3、観察視野=5×5μm
2、分解能1024×512pixelsにて表面形態観察を行い観察像を得た。次いで同一測定視野の断面プロファイル表示モードを表示させた。断面移動画面で、カーソルの両端をつまんで高さ2nm以上の表面突起の長尺方向に沿うように、かつ、カーソルが表面突起の最高高さ位置を通るように移動させた。断面プロファイル曲線と測定範囲内の平均高さ線である高さ0nmの線とが交わった2箇所の交点間の距離を読み取り、表面突起の直径を測定した。さらに、測定範囲内の平均高さ線である高さ0nmとして表面突起の高さを測定下。こうして得られた観察像から、少なくとも100個以上の高さ2nm以上の突起について、突起の直径Lと突起の高さhを計測して直径と高さの比L/hを算出し、L/hが50以下である突起の比率を算出した。
【0086】
(3)全光線透過率
各実施例、比較例において接着性改質樹脂層を設けずに作成したレンズシート用ベースフィルム、および接着性改質層付きレンズシート用ベースフィルムを用意し、JIS−K7105に準じ、濁度計(NHD2000、日本電色工業製)を使用して、基材フィルムのヘイズ、全光線透過率を測定した。
【0087】
(4)最外層表面の三次元表面粗さ(SRa、SRz)
各実施例、比較例において接着性改質樹脂層を設けずに作成したレンズシート用ベースフィルムを用意し、レンズシート用ベースフィルムの最外層表面を、触針式三次元粗さ計(SE−3AK、株式会社小阪研究所社製)を用いて、針の半径2μm、荷重30mgの条件下に、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたり、針の送り速度0.1mm/秒で測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(SPA−11)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、すなわちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に解析装置を用いて中心面平均粗さ(SRa)、十点平均粗さ(SRz)を求めた。
【0088】
(5)不活性粒子の平均粒子径、10μm以上の粒子数
不活性粒子を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−51O型)で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーした。次いで、ランダムに選んだ少なくとも200個以上の粒子について各粒子の外周をトレースし、画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、これらの平均を平均粒子径とした。またこうして得られた200個以上の粒子の粒子径から、10μm以上の粒子の比率を算出した。
【0089】
(6)キズ、異物の検出方法
各実施例、比較例において接着性改質樹脂層を設けずに作成したレンズシート用ベースフィルムを用意し、以下に説明する光学欠点検出装置により、100mm×100mmのフィルム片20枚について検査を行い、1m
2あたりの欠点数に換算した。
【0090】
(光学欠点の検出方法)
作製したフィルム片を2枚の偏光板の間に挟みこみ、クロスニコル状態とし、消失位が保たれる状態にセットする。この状態でニコン万能投影機V‐12(投影レンズ50x、透過照明光束切り替えノブ50x、透過光検査)を用い検査を行う。フィルム片にキズ、異物が存在する場合、その部分から光が透過し、光り輝くように見える長径が20μm以上あるものを検出する。
【0091】
(キズの深さ測定)
前述の光学欠点の検出方法により検出した欠点部分から、キズによる欠点を選出した。さらに適当な大きさに切り取って、三次元非接触形状計測システム Micromap MM500N−M100(菱化システム製、測定条件:waveモード、対物レンズ10倍)を用いてフィルム面に対して垂直方向から観察を行い、キズの断面形状を計測した。この断面形状よりキズの高低差(最も高い所と最も低い所の差)を算出した。このように測定した高低差0.3μm以上のキズの数を測定した。
【0092】
(異物の大きさ測定)
前述の光学欠点検出方法により検出した欠点部分から、異物による欠点を選出した。さらに適当な大きさに切り取って、光学顕微鏡を用いて透過光により観察し、光学的に異常な範囲として観察される部分の最大径を異物の大きさ(長径)とした。光学的に異常な範囲とは、クロスニコル状態(暗視野)にした際に光が漏れて透過する範囲を言う。異物周辺に存在する空洞(ボイド)が光学的に異常な範囲として観察される場合は、この空洞も含めて異物の大きさとする。このように測定した大きさ20μm以上の異物の数を測定した。
【0093】
(7)ヘイズ
JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘイズ(曇価)に準拠して測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。
【0094】
(8)ヘイズ変化量(△Hz)評価
フィルムを50mm四方に切り出し、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘイズ(曇価)に準拠して加熱前ヘイズを測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。測定後、フィルムを170℃に加熱したオーブン内にセットし、20分間経過後フィルムを取り出す。その加熱後フィルムを上記と同様の方法でヘイズを測定し、加熱後ヘイズを得る。この加熱前後ヘイズ差を△Hzとする。
△Hz=(加熱後ヘイズ)−(加熱前ヘイズ)
【0095】
(9)ポリエステルフィルム、ポリエステル樹脂のヒドロキシル(OH)末端量
ポリエステルフィルム、または樹脂を細かく粉砕し、15mgを秤量した。0.1mlのヘキサフルオロイソプロパノールール(HFIP)−d2に完全に溶解させた後、重クロロホルム0.6mlで希釈した。さらに、HFIPのOH基ピークをシフトさせるために、ピリジン−d5を30μl添加し、H−NMR(BBO−5mmプローブ)で測定した。
【0096】
(10)環状三量体量
ポリエステルフィルム、またはポリエステル樹脂を細かく粉砕し、0.1gをヘキサフルオロイソプロパノールール(HFIP)/クロロホルム(2/3(容量比))の混合溶媒3mlに溶解した。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合した。得られた混合液にメタノール10mlを加え、線状ポリエステルを再沈殿させた。次いで、この混合液を濾過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(2/1(容量比))の混合溶媒30mlで洗浄し、さらに濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、環状三量体測定溶液とした。この測定溶液を横河電機(株)社製LC100型の高速液体クロマトグラフィーを使用して定量した。
【0097】
(11)最外層の環状三量体量
未延伸シートを用いて、表面から最外層の厚みの50%以下の部分まで削り出し、上記と同様の方法を用いて環状三量体量を定量する。
【0098】
(11)固有粘度
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/g。
【0099】
(12)融点測定
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定した。試料10mgを使用し、昇温速度20℃/分で昇温し、290℃で3分間保持した。昇温時に観察される融解ピ−クの頂点温度を融点(Tm)とした。
【0100】
(実施例1)
(接着性改質樹脂液の作製)
(共重合ポリエステル樹脂の合成)
ジメチルテレフタレート(95質量部)、ジメチルイソフタレート(95質量部)、エチレングリコール(35質量部)、ネオペンチルグリコール(145質量部)、酢酸亜鉛(0.1質量部)および三酸化アンチモン(0.1質量部)を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(6.0質量部)を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量が19,500で、ガラス転移温度が62℃である共重合ポリエステル樹脂(A)を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂300質量部とブチルセロソルブ140質量部を160℃で3時間撹拌し粘稠な溶融液を得、この溶融液に水を徐々に添加し1時間後に均一な淡白色の固形分濃度30%の水分散液を得た。
【0101】
(ポリウレタン系樹脂の合成)
アジピン酸//1.6ーヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール(モル比:4//2/3)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:2000eq/ton)100質量部と、キシリレンジイソシアネートを41.4質量部混合し、窒素気流下、80〜90℃で1時間反応させた後、60℃まで冷却し、テトラヒドロフラン70質量部を加えて溶解し、ウレタンプレポリマー溶液(NCO/OH比:2.2、遊離イソシアネート基:3.30質量%)を得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマー溶液を40℃にし、次いで、20質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を45.5質量部加えて激しく撹拌を行いつつ、40〜50℃で30分間反応させた。遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)の消失を確認した後、乳化水で希釈し、固形分20質量%の重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液(B)を得た。ガラス転移温度は45℃であった。
【0102】
得られた共重合ポリエステル(A)の30質量%の水分散液を7.5質量部、自己架橋型ポリウレタン(B)の20質量%の水溶液を11.3質量部、触媒(ジブチルチンラウレート)を0.02質量部、水を37.9質量部およびイソプロピルアルコールを39.6質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.3質量部、粒子Aとして平均粒径40nmの球状シリカの20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。次いで、重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフィルターで精密濾過し、接着性改質樹脂液とした。
【0103】
(ポリエステル樹脂(A)の作成)
ジメチルテレフタレート1,000部、エチレングリコール700部、および酢酸亜鉛・2水塩0.3部をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で、リン酸0.13および三酸化アンチモン0.3部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で1mmHg以下とした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。同条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押し出し、カッターによって、直径約3mm、長さ約5mmの円柱状チップとした。得られた粗製ポリエステルの固有粘度は0.610dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は70eq/tonであり、環状三量体の含有量は1.05質量%、融点は252℃であった。なお、実施例中にある「部」とは全て重量部を表す。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(A)とする。
【0104】
ポリエステル樹脂(A)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルの割合で流通し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.631dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は59eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.27質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(B)とする。
【0105】
(ポリエステル樹脂(C)の作成)
平均粒径2.3μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカ粒子をエチレングリコールに分散させ、不定形塊状シリカ粒子を濃度15質量%含有するエチレングリコールスラリーを作製した。
【0106】
テレフタル酸を86.4部及びエチレングリコールを64.4部、および三酸化アンチモン、酢酸マグネシウム(4水和物)を、生成ポリエチレンテレフタレート(PET)に対してSb原子として250ppm、Mg原子として65ppmを添加した後、攪拌した。その後、30℃以下に保持した状態で上記グリコールスラリーを、生成PETに対して2000ppmとなるよう添加してから、窒素で加圧し昇温を開始した。エステル化反応は、3.5Kg/cm
2G(ゲージ圧:0.34MPa)の加圧下で、240℃で2時間行った。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。
【0107】
重縮合反応終了後、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットし、不活性粒子を含有する固有粘度0.621dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は71eq/tonであり、環状三量体の含有量は1.03質量%、融点は253℃であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(C)とする。
【0108】
ポリエステル樹脂(C)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルの割合で流通し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.639dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は58eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.28質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(D)とする。
【0109】
(レンズシート用ベースフィルムの作製)
A層用原料としてポリエステル樹脂(A)を、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のポリエステル樹脂(A)をA層用押出機(1)に供給した。B層用原料として、上述のポリエステル樹脂(B)と、ポリエステル樹脂(D)を、90:10の比率で混合した後、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後の混合ポリエステル樹脂をB層用押出機(2)に供給した。押出機に供給したポリマーを、285℃に溶融した後、それぞれ濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が15μmの濾過材でろ過し、B層/A層/B層となるように積層し、積層比率が8/84/8となるように押出機の吐出量を調整した後、285℃でTダイスから層状に押出し、25℃の回転式冷却ロールに密着固化させて未延伸PETフィルムを得た。
【0110】
得られた未延伸PETフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記の接着性改質樹脂液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmの濾材で精密濾過し、乾燥後の塗布量が7mg/m2になるようにロールコート法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。
【0111】
引き続き、この一軸延伸PETフィルムをクリップ方式の横延伸機に導き、130℃で横方向に4.0倍延伸し、次いで230℃で熱固定処理した後、200℃で横方向に3%緩和処理し、厚み188μmのレンズシート用ベースフィルムを得た。
【0112】
(実施例2)
実施例1において、フィルム厚みを250μmとした以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。
【0113】
(実施例3)
実施例1において、B層/A層/B層の比率を12/76/12とした以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。
【0114】
(実施例4)
(ポリエステル樹脂Eの作成)
ポリエステル樹脂(A)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、230℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.617dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は63eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.28質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(E)とする。
【0115】
(ポリエステル樹脂Fの作成)
ポリエステル樹脂(B)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、230℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.617dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は62eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.29質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(F)とする。
【0116】
実施例1のB層に用いられるポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(E)に、ポリエステル樹脂(F)にする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0117】
(実施例5)
(ポリエステル樹脂Gの作成)
ポリエステル樹脂(A)の作成と同様の方法を用いて、固有粘度が0.648dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は64eq/tonであり、環状三量体の含有量が1.2質量%、融点が245℃である粗製ポリエステルを得た。得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.623dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は57eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.27質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(G)とする。
【0118】
(ポリエステル樹脂Hの作成)
ポリエステル樹脂(C)の作成と同様の方法を用いて、固有粘度が0.648dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は64eq/tonであり、環状三量体の含有量が1.2質量%、融点が245℃である粗製ポリエステルを得た。得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.623dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は57eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.27質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(H)とする。
【0119】
実施例1のポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(G)に、ポリエステル樹脂(D)をポリエステル樹脂(H)にする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0120】
(実施例6)
(ポリエステル樹脂(I)の作成)
ポリエステル樹脂(A)の作成と同様の方法を用いて、固有粘度が0.613dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は70eq/tonであり、環状三量体の含有量が1.03質量%、融点が255℃である粗製ポリエステルを得た。該ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルで流通し、この反応系を1.2kg/cm2の微加圧に調整し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.629dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は60eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.28重量であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(I)とする。
【0121】
(ポリエステル樹脂(J)の作成)
ポリエステル樹脂(C)の作成と同様の方法を用いて、固有粘度が0.613dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は70eq/tonであり、環状三量体の含有量が1.03質量%、融点が255℃である粗製ポリエステルを得た。該ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルで流通し、この反応系を1.2kg/cm2の微加圧に調整し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.629dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は60eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.28重量であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(J)とする。
【0122】
実施例1のポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(I)に、ポリエステル樹脂(D)をポリエステル樹脂(J)にする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0123】
(比較例1)
実施例1のポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)に、ポリエステル樹脂(D)をポリエステル樹脂(C)にする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0124】
(比較例2)
(ポリエステル樹脂(K)の作成)
実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂(A)を減圧下160℃にて乾燥し、窒素雰囲気下0.1kg/cm2の微加圧に調整し、215℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.622dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は73eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.30質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(K)とする。
【0125】
(ポリエステル樹脂(L)の作成)
実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂(C)を減圧下160℃にて乾燥し、窒素雰囲気下0.1kg/cm2の微加圧に調整し、215℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.625dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は74eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.30質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(L)とする。
【0126】
実施例1のB層に用いられるポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(K)に、ポリエステル樹脂(D)をポリエステル樹脂(L)にする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0127】
(
参考例3)
実施例1において、ポリエステル樹脂(D)の代わりに、平均粒径2.3μmの塊状シリカを篩いに掛けて粗粒を除去して得た、平均粒径1.3μmの不定形塊状シリカを2000ppm含有した固有粘度0.621dl/gのポリエステル樹脂を用い、ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)とする以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性には優れるが、製膜工程で発生するキズを低減することが出来なかった。また、シリカによる凝集異物が確認された。
なお、表2において、比較例3は参考例3と読み替えるものとする。
【0128】
(
参考例4)
実施例1において、B層/A層/B層の比率を3/94/3とした以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に優れるが、粒子の脱落による工程汚染が発生しやすく、製膜工程で発生するキズが増加する傾向にあった。
なお、表2において、比較例4は参考例4と読み替えるものとする。
【0129】
(
参考例5)
実施例1において、ポリエステル樹脂(D)の代わりに、平均粒径2.0μm、細孔容積1.2ml/gの不定形塊状シリカを2000ppm含有した、固有粘度0.620dl/gのポリエステル樹脂を用い、ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)とする以外は、実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に劣り、粒子の脱落による工程汚染が発生しやすく、製膜工程で発生するキズが増加する傾向にあった。
なお、表2において、比較例5は参考例5と読み替えるものとする。
【0130】
(
参考例6)
実施例1において、ポリエステル樹脂(D)の代わりに、平均粒径3.5μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカを2000ppm含有した固有粘度0.621dl/gのポリエステル樹脂を用い、ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)とする以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に劣り、フィッシュアイ状の異物が多い結果となった。
なお、表2において、比較例6は参考例6と読み替えるものとする。
【0131】
(
参考例7)
実施例1において、ポリエステル樹脂(D)とポリエステル樹脂(B)の比率を75:25とした以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に劣る結果となった。
なお、表2において、比較例7は参考例7と読み替えるものとする。
【0132】
(比較例8)
(ポリエステル樹脂(M)の作成)
実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂(C)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、170℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステル中の環状三量体の含有量は1.03質量%と全く減少しなかった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(M)とする。
【0133】
(ポリエステル樹脂(O)の作成)
実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂(A)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、170℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステル中の環状三量体の含有量は1.05質量%と全く減少しなかった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(O)とする。
【0134】
実施例1のB層に用いられるポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(M)に、ポリエステル樹脂(D)をポリエステル樹脂(O)にする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0135】
(比較例9)
実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂(A)を、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nm
3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、263℃で12時間加熱処理を行った。処理後のポリエステルは、缶内で融着を起こしており、得ることができなかった。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】