(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920663
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/08 20060101AFI20160428BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
H02G3/08
B60R16/02 610A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-229979(P2012-229979)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-82881(P2014-82881A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】末永 亮
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−084728(JP,U)
【文献】
米国特許第4111517(US,A)
【文献】
米国特許第4747506(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0227331(US,A1)
【文献】
米国特許第5408045(US,A)
【文献】
米国特許第3876821(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/08
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に配設されて中央部分にロック穴が貫設されている固定用ブラケットの挿入板部が挿し入れられる挿入孔を有するブラケット装着部を備えた電気接続箱において、
前記ブラケット装着部が、水平方向に開口する筒状のケースの周壁の下面に設けられており、前記ブラケット装着部は、それぞれ前記水平方向に延出すると共に前記ケースの周方向で相互に離隔配置され、前記挿入板部の両端縁部を保持する一対の両端保持部と、それらの間に配設されて前記挿入板部の中央部分が重ね合されると共に前記ロック穴に嵌合するロック爪を備えた突条を含んで構成されていると共に、
前記挿入孔が、前記固定用ブラケットの前記挿入板部の両端縁部が挿し入れられる両端挿入孔を含んでおり、前記両端保持部には、それぞれ前記水平方向の一方の端面に開口して他方の端面に向かって延びる前記両端挿入孔がそれぞれ設けられている一方、該両端挿入孔の開口部には、前記両端保持部の前記一方の端面において、前記挿入板部の前記挿入孔への挿入方向と反対方向に向かって前記開口部から斜め外方に向かって傾斜して延びる案内面が形成されている一方、
前記案内面が、前記両端挿入孔の対向方向の外方と、前記両端挿入孔の対向方向と直交する直交方向の両側に亘って広がっている一方、前記ブラケット装着部を前記両端保持部の前記一方の端面側から見た場合において、前記開口部外縁から前記案内面の外縁までの寸法が、前記挿入板部の板厚寸法の1倍以上とされており、
前記ブラケット装着部の前記両端保持部が、前記突条よりも下方に突出していると共に、前記突条に重ね合された前記挿入板部の中央部分が、前記両端保持部の間から外部に露呈されている
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記案内面が、前記両端挿入孔の前記開口部の周囲に略円錐面形状で広がっている請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記案内面の裏面側を用いて、前記ブラケット装着部外周面に形成されて、前記両端挿入孔の深さ方向中間部分から前記両端挿入孔の開口部側に向かって広がる指掛け部が構成されている請求項1又は2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記両端挿入孔の中心軸に対する前記案内面の傾斜角度が30°〜60°の範囲に設定されている請求項1〜3の何れか1項に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側に配設された固定用ブラケットが挿し入れられるブラケット装着部を備えた電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の電装系には、リレーホルダ、コネクタホルダ、ヒューズボックス、ジャンクションボックス等の集約的に電気接続を行う各種の電気接続箱が適所に設けられており、各種電気部品への電力の供給が効率的に行われるようになっている。そして、これらの電気接続箱は、車体側に配設された固定用ブラケットを介して車体側の適所に固定的に装着保持されているのである。
【0003】
ところで、従来の電気接続箱では、例えば、特開2009−195085号公報(特許文献1)に記載されているように、電気接続箱に設けられたブラケット装着部に形成された挿入孔に対して、固定用ブラケットの先端部に形成された挿入板部を挿し入れて、挿入孔内で挿入板部を挟持することにより、電気接続箱を固定用ブラケットに対して装着保持する構造が広く採用されている。
【0004】
ところが、ブラケット装着部の挿入孔は、固定用ブラケットの挿入板部の板厚寸法と略同程度の幅寸法で開口形成されていることから、固定用ブラケットをブラケット装着部に装着する際には、固定用ブラケットの挿入板部をブラケット装着部の挿入孔の開口部に正確に位置合わせした状態で挿し入れる必要がある。それ故、作業者に非常に高度な位置決め精度が要求されることとなり、作業性の悪化を招いていた。
【0005】
特に、ブラケット装着部に対する固定用ブラケットの挿入方向が、鉛直方向でなく、斜め方向や水平方向となる場合には、挿入孔の開口部と固定用ブラケットの挿入板部の位置決めを目視確認する作業が一層困難となって、更なる作業性の悪化を招くおそれがあり、作業性向上に向けての何等かの対策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−195085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、固定用ブラケットの挿入を容易に行うことができるブラケット装着部を備えた、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、車体側に配設され
て中央部分にロック穴が貫設されている固定用ブラケットの挿入板部が挿し入れられる挿入孔を有するブラケット装着部を備えた電気接続箱において、
前記ブラケット装着部が、水平方向に開口する筒状のケースの周壁の下面に設けられており、前記ブラケット装着部は、それぞれ前記水平方向に延出すると共に前記ケースの周方向で相互に離隔配置され、前記挿入板部の両端縁部を保持する一対の両端保持部と、それらの間に配設されて前記挿入板部の中央部分が重ね合されると共に前記ロック穴に嵌合するロック爪を備えた突条を含んで構成されていると共に、前記挿入孔が、前記固定用ブラケットの前記挿入板部の両端縁部が挿し入れられる両端挿入孔を含んでおり、
前記両端保持部には、それぞれ前記水平方向の一方の端面に開口して他方の端面に向かって延びる前記両端挿入孔がそれぞれ設けられている一方、該両端挿入孔の開口部には、
前記両端保持部の前記一方の端面において、前記挿入板部の前記挿入孔への挿入方向と反対方向に向かって前記開口部から斜め外方に向かって傾斜して延びる案内面が形成されている一方、前記案内面が、前記両端挿入孔の対向方向の外方と、前記両端挿入孔の対向方向と直交する直交方向の両側に亘って広がっている一方、前記ブラケット装着部
を前記両端保持部の前記一方の端面側から見た場合において、前記開口部外縁から前記案内面の外縁までの寸法が、前記挿入板部の板厚寸法の1倍以上とされて
おり、前記ブラケット装着部の前記両端保持部が、前記突条よりも下方に突出していると共に、前記突条に重ね合された前記挿入板部の中央部分が、前記両端保持部の間から外部に露呈されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、ブラケット装着部の挿入孔を構成する両端挿入孔において、その周囲を囲う広い範囲に、比較的大きな面積を有して開口部に向かって傾斜する案内面が設けられている。これにより、固定用ブラケットの挿入板部をブラケット装着部の挿入孔に挿入する際に、例えば、挿入板部の幅方向での位置ずれは、両端挿入孔の対向方向の外方に広がる案内面に対して、挿入板部が当接することにより、挿入板部がその幅方向で両端挿入孔に向かって案内されて、挿入板部を所期の位置に導くことができる。また、挿入板部の板厚方向での位置ずれは、両端挿入孔の対向方向と直交する直交方向両側に広がる案内面に対して、挿入板部が当接することにより、挿入板部がその板厚方向で両端挿入孔に向かって案内されて、挿入板部を所期の位置に導くことができる。
【0010】
特に、本発明における案内面は、両端挿入孔の周囲を囲む比較的広い範囲(両端挿入孔の対向方向の外方/直交方向の両側)において、十分な挿入板部への当接面積(平面視で開口部外縁から案内面の外縁までの寸法が挿入板部の板厚寸法の1倍以上)を確保して形成されている。従って、作業者は、固定用ブラケットの挿入板部とブラケット装着部の挿入孔を目視にて正確に位置決めする必要はなく、概ね固定用ブラケットの挿入板部に向けてブラケット装着部の両端挿入孔を近づけていくのみの簡単な作業で、挿入板部がブラケット装着部の挿入孔に安定して導かれるようになっているのである。
【0011】
従って、目視確認が一層困難となる、電気接続箱のブラケット装着部を、固定用ブラケットに対して水平方向等で挿入する必要がある場合にも、組み付け性の悪化を伴うことなく、良好な作業性を持って、電気接続箱の固定用ブラケットに対する装着作業を行うことが可能となるのである。なお、案内面によるより有効な案内効果を発揮するためには、ブラケット装着部の平面視における両端挿入孔の開口部外縁から案内面の外縁までの寸法は、より好ましくは、挿入板部の板厚寸法の1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上とされる。
【0012】
加えて、少なくとも両端挿入孔に上記の如き案内面を形成するのみで、挿入板部全体の正規位置への案内効果が有利に達成できる。それ故、挿入孔の中央部分に案内面を必ずしも設ける必要がなく、省スペース化や設計自由度の向上も有利に達成することができる。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記案内面が、前記両端挿入孔の前記開口部の周囲に略円錐面形状で広がっているものである。
【0014】
本発明の案内面は、両端挿入孔の開口部から斜め外方に向かって延びるテーパ形状であればよく、多数のテーパ状平面が周方向で屈曲点を有して連接されていてもよいが、好ましくは、本態様の如く、開口部の周囲に略円錐形状で広がるように構成される。これにより、固定用ブラケットの挿入板部とブラケット装着部の案内面が当接した際に、それらの部材間の引っ掛かりの発生を防止することができ、一層スムーズな挿入板部の両端挿入孔への案内が可能となる。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記案内面の裏面側を用いて、前記ブラケット装着部外周面に形成されて、前記両端挿入孔の深さ方向中間部分から前記両端挿入孔の開口部側に向かって広がる指掛け部が構成されているものである。
【0016】
本態様によれば、水平方向でブラケット装着部の両端挿入孔に対して固定用ブラケットの挿入板部を挿し入れる際に、案内面による案内作用を発現させつつ、かかる案内面の裏面側を利用者が指掛け部として利用することにより、挿入作業を安定して行うことが可能となる。従って、少ない部品点数で、位置決めの容易化と挿入作業の安定化の両立を巧く達成することができる。
【0017】
本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記両端挿入孔の中心軸に対する前記案内面の傾斜角度が30°〜60°の範囲に設定されているものである。
【0018】
本態様によれば、両端挿入孔の中心軸に対する案内面の傾斜角度が30°〜60°の範囲に設定されていることにより、案内面の良好な案内性とスペース効率の両立を達成することができる。即ち、案内面の傾斜角度が30°よりも小さいと、挿入板部の挿入方向に直交する方向において、案内面の十分な広がりを確保することが難しくなる。それ故、案内面によって挿入孔の開口部を広げる効果が達成し難くなる。また、案内面の傾斜角度が60°よりも大きいと、挿入板部と案内面を摺接させる際の抵抗が大きくなって、作業者に過度の挿入抵抗を感じさせるおそれがあるのである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電気接続箱によれば、ブラケット装着部の挿入孔の両端部において、その周囲を囲う広い範囲に、比較的大きな面積を有して開口部に向かって傾斜する案内面が設けられている。これにより、作業者は、固定用ブラケットの挿入板部とブラケット装着部の両端挿入孔を目視にて正確に位置決めする必要なく、概ね挿入板部に向けて挿入孔を近づけていくのみの簡単な作業で、挿入板部を挿入孔に安定して導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態としての電気接続箱の車載状態を表す正面図。
【
図2】本発明の一実施形態としての電気接続箱の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず、
図1〜5には、本発明に係る電気接続箱の一実施形態としてのリレーホルダ10が示されている。
図1〜2に示すように、このリレーホルダ10は、車体側に配設された固定用ブラケット12の挿入板部14が挿し入れられる挿入孔16を有するブラケット装着部18を含んで構成されている。以下の説明において、
図1の上下方向を鉛直方向、リレーホルダ10のブラケット装着部18への固定用ブラケット12の挿入方向を水平方向、また前方とは、
図2中の左方、後方とは、
図2中の右方を言うものとする。
【0023】
図1〜2に示すように、リレーホルダ10のケース20は、全体として矩形枠体形状を有しており、ケース20の一方の開口部(
図2中、手前側)に設けられたリレー装着部22には、複数のリレー24が装着されている。一方、ケース20の周壁における上面及び側面には、複数のコネクタ装着部26が設けられており、リレー24に導通されるワイヤーハーネス28が組み付けられた複数のコネクタ30がそれぞれ装着されている。また、ケース20の周壁における下面には、前述のブラケット装着部18が設けられている。なお、リレーホルダ10は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。
【0024】
図2に、ブラケット装着部18の挿入孔16に挿し入れられる固定用ブラケット12の挿入板部14を示す。なお、
図2〜
図5では、図面の明瞭化のため、ワイヤーハーネス28及びワイヤーハーネス28が組み付けられたコネクタ30の図示は省略されている。
図2に示すように、固定用ブラケット12の挿入板部14は、中央部分が凹溝状に屈曲された断面ハット形状とされており、中央部分に矩形状のロック穴32が貫設されている一方、両端縁部34,34がフランジ状に突出した構造とされている。
【0025】
一方、リレーホルダ10のブラケット装着部18は、挿入板部14の両端縁部34,34を保持する略矩形ブロック状の一対の両端保持部36,36と、それらの間に配設されて挿入板部14の凹溝状の中央部分に挿入される略矩形ブロック状の突条38とを含んで構成されている。突条38は、略断面矩形状で挿入板部14の挿入方向に延出しており、突条38の下面にはロック爪40が撓み変形可能に突設されている。同様に、一対の両端保持部36,36も、略断面矩形状で挿入板部14の挿入方向に延出しており、それらの内部には、挿入板部14の両端縁部34,34が挿し入れられる一対の両端挿入孔42,42が、挿入板部14の挿入方向に延出して形成されている。
図1又は
図3の平面視に示すように、両端挿入孔42,42は、挿入板部14の両端縁部34,34に対応する逆L字の断面形状を有していると共に、一方の端部が両端保持部36,36の底壁付近にまで延出していると共に(
図4中上方)、他方の端部が両端保持部36,36の上面に開口している(
図4中下方)。
【0026】
そして、固定用ブラケット12の挿入板部14がブラケット装着部18に装着される際には、先ず、挿入板部14の両端縁部34,34がブラケット装着部18の両端挿入孔42,42に挿し入れられる。この時、挿入板部14の凹溝状の中央部分にブラケット装着部18の突条38が嵌め入れられる。その後、突条38の下面に突設されたロック爪40を撓み変形させつつさらに挿入板部14を奥方へと押し入れることにより、ロック爪40が挿入板部14のロック穴32まで到達すると、ロック爪40が弾性復帰する。その結果、ロック爪40が挿入板部14のロック穴32に嵌まり込んで係合することで、ブラケット装着部18に対して、固定用ブラケット12の挿入板部14が離脱可能に係止固定されるのである。上記説明から明らかなように、本実施形態のブラケット装着部18では、両端挿入孔42,42と突条38の下面側空間を含んで、ブラケット装着部18の挿入孔16が構成されている。
【0027】
さらに、
図1および
図3に示すように、リレーホルダ10のブラケット装着部18の両端挿入孔42,42の開口部46,46には、挿入板部14の挿入孔16への挿入方向と反対方向に向かって、開口部46,46の略全周を囲むように、斜め外方に向かって傾斜して延びる案内面47,47が形成されている。より詳しくは、各案内面47は、両端挿入孔42,42の対向方向である水平方向の外方(
図1,3中、左右両側)および対向方向に直交する直交方向である鉛直方向上下側(
図1,3中、上下側)の両方に跨って広がる第1分割案内面48a,48bと、両端挿入孔42,42の対向方向の内方において、対向方向に直交する鉛直方向の両側(
図1,3中上下方向)に広がる第2分割案内面50および第3分割案内面52を含んで構成されている。
【0028】
第1分割案内面48a,48bは、それぞれ略90°の範囲で広がる1/4円錐面とされており、2つの第1分割案内面48a,48bが協働して、両端挿入孔42,42の対向方向の外方側および鉛直方向上下側に跨って略180°の範囲で広がる1/2円錐面を形成している。また、
図3に示すように、本実施形態では、ブラケット装着部18の平面視において、両端挿入孔42,42の開口部46,46の外縁から
第1分割案内面48a,48bの外縁までの寸法:Wが、挿入板部14の板厚寸法:tの2倍程度とされている。
【0029】
また、第2分割案内面50は、両端挿入孔42,42の対向方向の内方において、かかる対向方向に直交する鉛直方向の上側に、略90°の範囲で広がる1/4円錐状面を形成している。さらに、第3分割案内面52は、両端挿入孔42,42の対向方向の内方において、かかる対向方向に直交する鉛直方向の下側に、略30°の範囲で広がる部分円錐面を形成している。そして、これらの第1〜第3分割案内面48a,48b,50,52が、協働して、両端挿入孔42,42の開口部46,46の周囲に略円錐面形状で広がる案内面47,47を構成しているのである。
【0030】
さらに、
図4に示すように、案内面47,47の裏面側を用いて、ブラケット装着部18の外周面に形成されて、両端挿入孔42,42の深さ方向中間部分から開口部46,46
を越えて案内面47に向かって広がる指掛け部56が構成されている。また、
図5に示すように、両端挿入孔42,42の中心軸に対する案内面47の傾斜角度:αが略40°に設定されている。
【0031】
このような構造とされたリレーホルダ10を固定用ブラケット12に装着する作業について説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態によるリレーホルダ10は、固定用ブラケット12の挿入板部14に対して水平方向で挿入装着する必要がある。このような水平方向での装着作業においては、鉛直方向の装着作業に比して、ワイヤーハーネス28やリレー24等に遮られて、挿入孔16と挿入板部14の挿入部分を目視確認し難い状況が発生する。このような状況においては、固定用ブラケット12の挿入板部14の両端縁部34,34を、リレーホルダ10のブラケット装着部18の一対の両端挿入孔42,42に挿し入れるのは、極めて困難となる。
【0032】
しかしながら、上述の如き構造の本実施形態のリレーホルダ10によれば、ブラケット装着部18の両端挿入孔42,42において、その周囲を囲う広い範囲に、開口部46,46に向かって円錐状に傾斜する案内面47,47が設けられている。従って、例えば、固定用ブラケット12の挿入板部14をブラケット装着部18の挿入孔16に挿入する際に、挿入板部14の挿入孔16に対する位置が、挿入板部14の幅方向でのずれている場合には、第1分割案内面48a,48bに挿入板部14の両端縁部34,34が当接することにより、挿入板部14の両端縁部34,34が両端挿入孔42,42に向かって案内されて、挿入板部14を所望の位置に導くことができる。一方、挿入板部14の挿入孔16に対する位置が、挿入板部14の板厚方向でずれている場合にも、第1分割案内面48a,48bや第2分割案内面50,第3分割案内面52に挿入板部14の両端縁部34,34が当接することにより、挿入板部14の両端縁部34,34が両端挿入孔42,42に向かって案内されて、挿入板部14を所望の位置に導くことができる。要するに、挿入板部14と挿入孔16の目視確認が一層困難となる場合であっても、作業者は、概ね固定用ブラケット12の挿入板部14に向けてブラケット装着部18の挿入孔16を近づけていくのみの簡単な作業で、挿入板部14をブラケット装着部18の挿入孔16の正規位置に安定して導かれるようになっているのである。
【0033】
特に、本実施形態における案内面47,47は、両端挿入孔42,42の開口部46の外縁から案内面47の外縁までの寸法:Wが、挿入板部14の板厚寸法:tの2倍程度とされている。従来の電気接続箱では、挿入孔の開口部は挿入板部14の板厚寸法:tと略同程度の幅寸法で開口形成されているに過ぎないが、本実施形態では、案内面47によって両端挿入孔42,42の開口部46,46が上下左右方向に挿入板部14の板厚寸法の略2倍分だけ広げられた結果、両端挿入孔42,42の開口部46,46は挿入板部14の板厚寸法:tの略5倍の幅寸法で開口形成されていることに相当するのである。このように、案内面47が、両端挿入孔42,42の開口部46の周囲において、従来にないほど大きな面積を有して広がっていることから、作業者に目視による正確に位置決めを要求することなく、挿入板部14をブラケット装着部18の挿入孔16に安定して導くことができるのである。なお、開口部46の外縁から案内面47の外縁までの寸法:Wが、挿入板部14の板厚寸法:tの1倍以上あれば、案内面47によって両端挿入孔42,42の開口幅を広げる効果を十分に達成し得るが、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは本実施形態のように2倍以上あることが望ましい。
【0034】
また、挿入孔16を構成する両端挿入孔42,42の周囲に案内面47,47を形成するのみで、挿入板部14全体の正規位置への案内効果が有利に達成できる。それ故、挿入孔16の全領域において案内面47を設ける場合に比して、リレーホルダ10の省スペース化や設計自由度の向上を図りつつ、固定用ブラケット12に対するブラケット装着部18の装着作業を容易化できるのである。
【0035】
また、本実施形態においては、第1分割案内面48a,48b、第2分割案内面50と第3分割案内面52が協働して、両端挿入孔42,42の開口部46,46の周囲に略円錐面形状で広がる案内面47が形成されている。これにより、固定用ブラケット12の挿入板部14とブラケット装着部18の案内面47が当接した際に、それらの部材間の引っ掛かりの発生を防止することができ、一層スムーズな挿入板部14の挿入孔16への案内が可能となる。
【0036】
加えて、ブラケット装着部18の外周面に、両端挿入孔42,42の深さ方向中間部分から両端挿入孔42,42の開口部46,46側に向かって広がる指掛け部56が設けられている。これにより、水平方向で固定用ブラケット12の挿入板部14を挿入孔16に挿し入れる際に、かかる指掛け部56を利用することにより、挿入作業を安定して行うことが可能となる。
【0037】
また、両端挿入孔42,42の中心軸に対する
第1分割案内面48a,48bの傾斜角度:αが略40°に設定されている(
図5参照)。これにより、案内面47の良好な案内性とスペース効率の両立を達成することができる。すなわち、案内面47の傾斜角度が30°よりも小さいと、挿入板部14の挿入方向に直交する方向において、案内面47の十分な広がりを確保することが難しくなる。また、案内面47の傾斜角度が60°よりも大きいと、挿入板部14と案内面54を摺接させる際の抵抗が大きくなって、作業者に過度の挿入抵抗を感じさせるおそれがある。それ故、案内面47によって両端挿入孔42,42の開口部46の開口領域を広げる効果が達成し難くなるのである。以上のことから、両端挿入孔42の中心軸に対する案内面47の傾斜角度:αは30°〜60°の範囲に設定されていることが好ましい。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでない。例えば、上記実施形態では、案内面47が開口部46の周囲に円錐面形状で広がる構成とされていたが、開口部46から斜め外方に向かって傾斜して延びる形状であればよく、多数のテーパ状平面が周方向で屈曲点を有して連接されているものであってもよい。
【0039】
また、案内面47は、開口部46の周囲において、両端挿入孔42,42の開口部46から、両端挿入孔42,42の対向方向外方と、対向方向の直交方向両側に広がっていればよく、案内面47を第1分割案内面48a,48bのみで構成することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
10:リレーホルダ(電気接続箱)、12:固定用ブラケット、14:挿入板部、16:挿入孔、18:ブラケット装着部、34:両端縁部、42:両端挿入孔、46:開口部、47:案内面、48a,48b:第1分割案内面(案内面)、50:第2分割案内面(案内面)、52:第3分割案内面(案内面)、56:指掛け部