(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の空気調和装置によれば、部分スイッチング回路が故障しても、所望の回転速度でモータを駆動させると過負荷となると制御部により判定されない限り、エラーとして処理されなかった。
そのため、部分スイッチング回路が故障しても、制御部により負荷が軽負荷と判定された場合には、空気調和装置の運転が継続されて、部分スイッチング回路の故障がユーザに報知されないという問題があった。
【0006】
一方で、部分スイッチング回路が故障するとともに負荷が重負荷であるため、所望の回転速度でモータを駆動させると過負荷となると制御部により判定された場合には、エラーとして処理され、インバータの出力電力が遮断して空気調和装置の運転が停止していた。
そのため、空気調和装置にエラーが生じたとして、部分スイッチング回路の故障をユーザに報知させることができたが、空気調和装置の運転が継続されないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、前記する背景に鑑みて創案された発明であって、部分スイッチング回路が故障しても、ユーザへの報知と運転の継続が可能な空気調和装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本願発明に係る空気調和装置は、電源に接続されて直流電力を供給する電源回路と、前記電源回路から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータと、モータを有し、冷媒を圧縮するコンプレッサと、前記冷媒が送り込まれて熱交換する熱交換器と、前記モータの駆動を制御する制御部と、を備える空気調和装置であって、前記電源回路は、前記電源の一端に接続されて電磁エネルギとして蓄積可能なリアクトルと、前記リアクトルの他端に一端が接続されたヒューズと、前記ヒューズの他端と前記電源の他端との間の短絡/開放を逐次実行する部分スイッチング回路と、
前記ヒューズの他端と前記電源の他端との間の電圧を観測することにより、前記短絡/開放を検出する通電検出手段とを備え、前記通電検出手段が前記短絡/開放の遷移停止を検出すると、前記部分スイッチング回路の故障を報知させる報知部を備えることを特徴とする。また、前記電源は、商用電源又は内部直流電源であることを特徴とする。
【0009】
本願発明の空気調和装置によれば、通電検出手段により、短絡/開放の遷移停止、つまり、ヒューズが溶断して、部分スイッチング回路がスイッチング機能しない状態であることを検出できる。そのため、空気調和装置は、報知部を起動させることで、ユーザに部分スイッチング回路の故障を認識させることができる。
また、通電検出手段により、部分スイッチング回路の故障に対応して、制御部がモータの回転速度を抑制可能に構成することで、空気調和装置の継続運転が確保される。
【0010】
また、前記する空気調和装置は、前記通電検出手段が前記遷移停止を検出した場合に、前記モータの出力が低出力となるように前記モータの回転速度を抑制することが好ましい。
【0011】
前記する空気調和装置によれば、前記モータの回転速度が抑制されるため、モータが低出力ながら空気調和装置の運転の継続が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、部分スイッチング回路が故障したとき、ユーザへの報知と運転の継続が可能な空気調和装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施形態に係る空気調和装置について、図面を適宜参照しながら説明する。なお、実施形態の空気調和装置の説明において、技術的に同一要素であるものについては、同一の符号を付している。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の空気調和装置1は、コンプレッサ2と、室内空気と熱交換する室内用熱交換器3と、室外空気と熱交換する室外用熱交換器4と、報知機能を有する報知部3aと、冷媒の減圧を行う膨張弁5と、四方弁6と、商用電源11に接続する電源回路7と、インバータ8と、制御部9と、を備えている。
そして、空気調和装置1は、例えば、室内空気を暖房する暖房運転の場合、四方弁6を介してコンプレッサ2の吐出側から吐出される冷媒を室内用熱交換器3に送り込み、室内空気と冷媒との間で熱交換されることで、室内空気の温度が上昇して室内温度の調整を図るものである。
なお、室内用熱交換器3で熱交換された冷媒は、膨張弁5を介して室外用熱交換器4へ送られて再び熱交換された後に、四方弁6を介してコンプレッサ2の吸入側に戻る。
【0016】
コンプレッサ2は、冷媒を高圧・高温にするためのものであって、インバータ8から供給される電力により駆動して、冷媒の圧縮を行う三相交流モータMを備えている。
また、四方弁6は、冷媒の流路を切り替えるためのものであって、暖房運転の際に、コンプレッサ2により圧縮された冷媒を室内用熱交換器3に送り込み、冷房運転の際には、コンプレッサ2により圧縮された冷媒を室外用熱交換器4に送り込んでいる。
【0017】
室内用熱交換器3と室外用熱交換器4とには、熱交換量を調節する送風機(不図示)が設けられており、熱交換量が制御可能に構成されている。
報知部3aは、室内に設けられて、制御部9からのヒューズ溶断信号を受信した場合にユーザに故障を報知させるためのものである。報知部3aによるユーザへの報知方法は、音による報知、表示による報知などが挙げられる。
【0018】
インバータ8は、直流電力を任意の周波数の三相交流電力に変換可能なスイッチング回路(不図示)を備えており、電源回路7から供給される直流電力を三相交流電力に変換して、コンプレッサ2の三相交流モータMに三相交流電力を供給している。
【0019】
電源回路7は、商用電源11とインバータ8とを接続して、商用電源11から供給される電力をインバータ8に直流電力に変換して出力するための回路であって、商用電源11の一端に接続されたリアクトル12と、リアクトル12に対してインバータ8側に接続された部分スイッチング回路13と、部分スイッチング回路13に対しインバータ8側に接続された全波整流化を行うダイオードブリッジ14と、全波整流化された電流の平滑化を行う平滑器15と、通電検出手段16とが設けられている。
【0020】
部分スイッチング回路13は、ダイオードブリッジ13aとトランジスタ13bとを備え、短絡又は開放を逐次実行可能に構成された回路である。そして、トランジスタ13bのスイッチング機能がオン時に、部分スイッチング回路13が短絡してリアクトル12に電磁エネルギが蓄積され、トランジスタ13bのスイッチング機能がオフ時に、リアクトル12から電磁エネルギが放出する。
なお、トランジスタ13bのベース側は、制御部9の後記するスイッチング回路制御部26に接続されて、トランジスタ13bのスイッチング機能がスイッチング回路制御部26により制御されている。
【0021】
また、部分スイッチング回路13上には、一端がリアクトル12の他端側(インバータ8側)に接続し、他端がダイオードブリッジ13aに接続するヒューズ13dが設けられている。このヒューズ13dは、部分スイッチング回路13に所定値以上の電流が流れた場合に溶断して、部分スイッチング回路13を構成する素子を保護するための素子である。なお、部分スイッチング回路13には、トランジスタ13bに並列接続されて電流の逆流を防止するダイオード13cがさらに設けられている。
【0022】
通電検出手段16は、ヒューズ13dが溶断しているか否かを検出するためのものである。本実施形態の通電検出手段16は、一端がヒューズ13dとダイオードブリッジ13aとの間に接続され、他端が商用電源11の他端側(リアクトル12が設けられていない側)に接続されて、ヒューズ13dとリアクトル12と商用電源11とを含んでなる検出用の回路を備えている。
【0023】
また、ヒューズ13dとリアクトル12と商用電源11とを含む検出用の回路には、プルダウン用の抵抗器16eと、ダイオード16dとが設けられており、商用電源11の交流電圧である交流信号が半波整流化されて信号(以下、「パルス信号」という)に変換されるように構成されている。
さらに、通電検出手段16の検出用の回路上のヒューズ13dとダイオード16dとの間には、フォトカプラ16aの発光ダイオードが設けられている。なお、フォトカプラ16aのフォトトランジスタのエミッタ側は接地されており、フォトトランジスタのコレクタ側が定電圧電源16bに接続されている。さらに、定電圧電源16bとフォトカプラ16aとの間には、プルダウン用の抵抗器16cは配設されている。
この通電検出手段16によれば、検出用の回路に商用電源11のパルス信号が入力されることで、フォトカプラ16aの発光ダイオードが発光し、フォトカプラ16aのフォトトランジスタ側で、コレクタ側からエミッタ側に定電圧電源16bの印加による電流が流れる。
【0024】
また、通電検出手段16において、フォトカプラ16aのフォトダイオードのコレクタ側には、制御部9の後記する通電検出部22が接続されている。そのため、フォトカプラ16aに、商用電源11からのパルス信号が入力されない場合、通電検出部22に電流が流れ込むように構成されている。
【0025】
以上、通電検出手段16によれば、商用電源11からパルス信号の周期に対応して、通電検出部22に断続的に電流が流れ込み、一方で、検出用の回路上のヒューズ13dが溶断した場合には、商用電源11からパルス信号が入力されず、通電検出部22に電流が継続的に流れ込む。
【0026】
図2に示すように、制御部9は、三相交流モータMの負荷状態を判定する負荷状態判定部21と、三相交流モータMの回転速度を制御するベクトル制御部23と、部分スイッチング回路13により昇圧されてインバータ8に印加される直流電圧の値を設定する出力電圧値設定部24と、通電検出手段16による信号を検出する通電検出部22と、PWM信号を生成するPWM信号生成部25と、部分スイッチング回路13を制御するスイッチング回路制御部26と、モータ保護部27とを備えている。
【0027】
負荷状態判定部21は、図示しない圧力検出手段により検出されたコンプレッサ2の吐出側の冷媒圧力値を検出し、三相交流モータMの負荷状態を判定する。なお、三相交流モータMの負荷情報は、モータ保護部27に出力される。
【0028】
モータ保護部27は、負荷状態判定部21から出力される三相交流モータMの負荷情報に基づいて、ベクトル制御部23が生成する3相電圧指令及び周波数指令で三相交流モータMを駆動させた場合に、三相交流モータMが過負荷となるか否かについての判定を行う。
そして、モータ保護部27は、たとえば、三相交流モータMが重負荷状態であり、目標回転速度に対応する回転速度で駆動させると三相交流モータMが過負荷状態となると判定した場合に、エラーとして処理し、インバータ8を停止させる。これにより、過負荷状態で三相交流モータMが駆動して故障することを回避できる。
【0029】
通電検出部22は、通電検出手段16からの信号によりヒューズ13dが溶断しているか否かを判定する。そして、通電検出部22は、ヒューズ13dが溶断していると判定した場合には、ヒューズ13dが溶断しているという情報を含んだヒューズ溶断信号をベクトル制御部23と出力電圧値設定部24と報知部3aとに出力している。
【0030】
ベクトル制御部23は、ユーザからの運転命令信号に含まれる運転命令にしたがって、三相交流モータMの回転速度を目標回転速度に近づけるような周波数である3相電圧指令値及び周波数指令値を生成し、生成された3相電圧指令値及び周波数指令値をPWM信号生成部25に出力する。
また、ベクトル制御部23は、ヒューズ溶断信号を受けたときに、モータ保護部27が機能しない程度の出力、つまり、モータ保護部27により生成した3相電圧指令値及び周波数指令値で三相交流モータMを駆動させても過負荷となると判定されない程度に、
三相交流モータMの回転速度が抑制された3相電圧指令値及び周波数指令値を生成するにように構成されている。
この三相交流モータMの回転速度が抑制された3相電圧指令値及び周波数指令値によれば、三相交流モータMの出力が低出力となるものの、モータ保護部27によりインバータ8からの交流電力の供給が遮断されることがない。
【0031】
出力電圧値設定部24は、インバータ8からコンプレッサ2の三相交流モータMに出力される電圧の最大値を適切にするために、負荷状態判定部21から送られる負荷情報を基に、部分スイッチング回路13による昇圧後の電圧値を設定するものである。
また、三相交流モータMが重負荷の場合に、出力電圧値設定部24が設定する電圧値は、三相交流モータMが高出力のときに必要となる高い電圧値に設定している。
一方で、三相交流モータMが軽負荷の場合には、三相交流モータMが低出力でも足りる低い電圧値に設定して、インバータ8のスイッチング損失(電力ロス)を低減するようになっている。
なお、出力電圧値設定部24は、ヒューズ溶断信号を受信した場合には、部分スイッチング回路13による昇圧ができないため、昇圧しない場合の電圧の値を設定する。
【0032】
PWM信号生成部25は、3相電圧指令値に相当する交流電圧及び周波数指令値の等価正弦波のPWM信号を生成して、生成したPWM信号をインバータ8に出力する。また、スイッチング回路制御部26は、出力電圧値設定部24が設定した電圧値となるように、部分スイッチング回路13のトランジスタ13bによるスイッチング機能を制御する。
【0033】
以上、本実施形態に係る空気調和装置1は、上記する構成を基本的構成としている。つぎに、ヒューズ13dが溶断した場合の空気調和装置1の動作について説明する。
なお、通常運転時においては、部分スイッチング回路13のパルス信号により電力の力率改善又は電圧の昇圧が行われる。また、商用電源11から出力されるパルス信号を通電検出手段16が検出し、通電検出部22は、部分スイッチング回路13が正常に機能すると判定される。
【0034】
本実施形態において、ヒューズ13dが溶断した場合、通電検出手段16は、商用電源11の交流信号を半波整流したパルス信号を検出しない。
そのため、通電検出部22は、ヒューズ13dが溶断して、部分スイッチング回路13が機能しないと判定して、ヒューズ溶断信号をベクトル制御部23と室内用熱交換器3の報知部3aとに送信する。
そして、ヒューズ溶断信号を受信した報知部3aは、報知機能を起動させることで、部分スイッチング回路13が故障したことをユーザに認識させる。
【0035】
一方で、ヒューズ溶断信号を受信したベクトル制御部23は、三相交流モータMの目標回転速度を抑制した3相電圧指令値及び周波数指令値を生成する。これによって、モータ保護部27により、3相電圧指令値及び周波数指令値で三相交流モータMを駆動させても過負荷となると判定されないため、インバータ8からの交流電力の供給が遮断されることなく、三相交流モータMが駆動する。
その結果、目標とする回転速度よりも抑制された回転速度で、コンプレッサ2の三相交流モータMが駆動して、空気調和装置1の運転が継続される。
【0036】
以上、実施形態における空気調和装置1の動作について説明したが、上記する空気調和装置1によれば、ヒューズ13dが溶断して、部分スイッチング回路13が機能しない場合、つまり、部分スイッチング回路13が故障した場合に、報知部3aがユーザに部分スイッチング回路13が故障したことを報知するため、ユーザは部分スイッチング回路13が故障したことを認識できる。
また、部分スイッチング回路13が故障したとしても、空気調和装置1の運転が継続されるため、室内をユーザが要望する室内環境とすることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
たとえば、
図3に示すように、空気調和装置1aがダイオードブリッジ14により全波整流化された直流電力を昇圧させる部分スイッチング回路13Aを備える場合に、通電検出手段16Aを、部分スイッチング回路13Aのヒューズ13dが溶断しているか否かを検出可能に構成してもよい。
なお、変形例に係る部分スイッチング回路13Aは、トランジスタ13bとダイオード13cとを備えているとともに、一端がリアクトル12の他端に接続されており、他端側がダイオードブリッジ14の他端(リアクトル12が設けられていない側)に接続されてなる回路である。
【0038】
この変形例の場合において、通電検出手段16Aは、一端がヒューズ13dとトランジスタ13bとの間に接続され、他端が電源回路7aのリアクトル12が設けられていない側に接続されて、ヒューズ13dとリアクトル12とを含んでなる検出用の回路を備えている。
そして、変形例の通電検出手段16Aの検出用の回路には、プルダウン用の抵抗器16eが設けられて、直流電圧である直流信号が入力されるように構成されている。
また、通電検出手段16Aの検出用の回路上のヒューズ13dと抵抗器16eとの間には、パルス信号を検出するためのフォトカプラ16aの発光ダイオードが設けられている。なお、フォトカプラ16aのフォトトランジスタ側の接続は、実施形態の通電検出手段16と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0039】
この変形例の通電検出手段16Aによれば、ヒューズ13dが溶断しない限り、直流信号が入力されてフォトカプラ16aの発光ダイオードが発光し、フォトカプラ16aのフォトトランジスタ側で、コレクタ側からエミッタ側に定電圧電源16bの印加による電流が流れる。
よって、通電検出部22は、直流信号が断続的に入力されている場合には、部分スイッチング回路13Aの故障していないことを判定し、一方で、直流信号が入力されない場合には、ヒューズ13dが溶断して、部分スイッチング回路13Aが機能しないため、故障していると判定することができる。
【0040】
以上、変形例の空気調和装置1aによれば、ヒューズ13dが溶断して、部分スイッチング回路13が機能しない場合、つまり、部分スイッチング回路13が故障した場合に、報知部3aがユーザに部分スイッチング回路13が故障したことを報知するため、ユーザは部分スイッチング回路13が故障したことを認識できる。また、部分スイッチング回路13が故障したとしても、空気調和装置1の運転の継続が確保されることとなる。