【実施例】
【0026】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0027】
本発明者は、蕎麦粉と、0.2[M]の塩化ナトリウム溶液とを、(蕎麦粉 1[g]):(溶媒 3[mL])の割合で混合した後、4[℃]の温度条件下で1時間撹拌することによって、第1混合物を作製した。次いで、本発明者は、第1混合物を、8000[rpm]の回転数で70分間、遠心分離して沈殿物と抽出物とに分けた。
【0028】
次いで、本発明者は、得られた抽出物9[mL]に、金属塩1[mL]を添加した後、70℃の温度条件下で10分間加熱することによって第2混合物を作製した。この際、本発明者は、抽出物に添加する金属塩として、(A)塩化カルシウム10[mM]、(B)塩化マグネシウム10[mM]、(C)硫酸マグネシウム10[mM]、(D)塩化カルシウム5[mM]及び塩化マグネシウム5[mM]の混合液、(E)塩化カルシウム5[mM]及び硫酸マグネシウム5[mM]の混合液、の五種類を使用した。また、本発明者は、(F)GDL(グルコノデルタラクトン)を抽出物に添加した場合、及び、(G)水を抽出物に添加した場合についても実験を行った。
【0029】
次いで、本発明者は、第2混合物を、抽出物のpHが6〜8となる範囲内で放置することによって、豆腐状の凝固物である蕎麦豆腐を作製した。
図2(a),(b)〜
図5(a),(b)は、紙面左側から右側に向かって、各試験管内において、(A)塩化カルシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(B)塩化マグネシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(C)硫酸マグネシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(D)塩化カルシウム5[mM]及び塩化マグネシウム5[mM]の混合液を抽出物に添加した場合、(E)塩化カルシウム5[mM]及び硫酸マグネシウム5[mM]の混合液を抽出物に添加した場合、(F)GDL(グルコノデルタラクトン)10[mM]を抽出物に添加した場合、(G)水を抽出物に添加した場合をそれぞれ示している。なお、
図2(a),(b)〜
図5(a),(b)中の(G)における「NONE」とは、金属塩又はGDL(グルコノデルタラクトン)を抽出物に添加せず、水のみを抽出物に添加した状態を意味している。
【0030】
図2は、抽出物のpH調整を行わずに、抽出物に水を添加した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。
【0031】
図3は、抽出物を弱酸性のpH6に調整した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。ここでのpH調整は、酢酸緩衝液0.05[M]を第2混合物に別途添加することによって実現した。
【0032】
同様に、
図4は、抽出物を中性のpH7に調整した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。ここでのpH調整は、トリス塩酸緩衝液0.05[M]を第2混合物に別途添加することによって実現した。
【0033】
同様に、
図5は、抽出物を弱アルカリ性のpH8に調整した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。ここでのpH調整は、トリス塩酸緩衝液0.05[M]を第2混合物に別途添加することによって実現した。
【0034】
図6は、
図2(b)〜
図5(b)に示す各試験管内において、沈殿せずに残留した上澄み液中に含まれるタンパク質濃度[mg/ml]を示している。
図6は、紙面左側から右側に向かって、各試験管内において、(A)塩化カルシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(B)塩化マグネシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(C)硫酸マグネシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(D)塩化カルシウム5[mM]及び塩化マグネシウム5[mM]の混合液を抽出物に添加した場合、(E)塩化カルシウム5[mM]及び硫酸マグネシウム5[mM]の混合液を抽出物に添加した場合、(F)GDL(グルコノデルタラクトン)10[mM] を抽出物に添加した場合、(G)水を抽出物に添加した場合をそれぞれ示している。
【0035】
以下の表1〜9は、モニター10名で蕎麦豆腐の試食を行い、「◎:食感が優良」、「○:食感が良い」、及び、「×:食感が悪い」の採点基準で食感を評価した結果を示している。また、各表中の項目『溶媒[mL]』は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を示している。また、各表中の項目『撹拌温度[℃]』は、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を示している。また、各表中の項目『加熱温度[℃]』は、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を示している。なお、各表のうち、表5〜9は、本発明の比較例を示している。
【表1】
上記表1中の実施例1は、本実施例で得られた蕎麦豆腐を示している。本蕎麦豆腐では、上記表1に示すように、食感評価として「◎:食感が優良」の結果が得られた。
【0036】
【表2】
上記表2中の実施例2〜7は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を4[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を2[℃]、6[℃]、及び、10[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を60[℃]及び80[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表2に示すように、食感評価として「○:食感が良い」の結果が得られた。
【0037】
【表3】
上記表3中の実施例8〜13は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を12[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を2[℃]、6[℃]、及び、10[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を60[℃]及び80[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表3に示すように、食感評価として「○:食感が良い」の結果が得られた。
【0038】
【表4】
上記表4中の実施例14〜19は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を20[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を2[℃]、6[℃]、及び、10[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を60[℃]及び80[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表4に示すように、食感評価として「○:食感が良い」の結果が得られた。
【0039】
【表5】
上記表5中の比較例1〜4は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を2[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を1[℃]及び11[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を50[℃]及び90[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表5に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0040】
【表6】
上記表6中の比較例5〜8は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を21[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を1[℃]及び11[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を50[℃]及び90[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表6に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0041】
【表7】
上記表7中の比較例9,10は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を2[mL]及び21[mL]のいずれかとし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を4[℃]に設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を70[℃]に設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表7に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0042】
【表8】
上記表8中の比較例11,12は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を3[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を1[℃]及び11[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を70[℃]に設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表8に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0043】
【表9】
上記表9中の比較例13,14は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を3[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を4[℃]に設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を50[℃]及び90[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表9に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0044】
(本実施形態に係る蕎麦豆腐の製造方法、及び、蕎麦豆腐の特徴)
上記構成によれば、第1混合物を2℃以上10℃以下の温度範囲内で撹拌することによって、蕎麦粉に含まれるタンパク質のうち、水に溶けるアルブミンと、水には溶けず、溶媒に溶けるグロブリンとの双方を、第1混合物からの抽出物として抽出することができる。また、タンパク質とともにポリフェノール等の有用物質も、第1混合物からの抽出物として抽出することができるため、栄養価の高い蕎麦豆腐を容易に得ることができる。さらに、抽出物に、GDL(グルコノデルタラクトン)、又は、一種以上の金属塩を加えた後、60℃以上80℃以下の温度範囲内で加熱することによって得られた第2混合物を、抽出物のpHが6〜8となる範囲内で放置することによって、豆腐様の食感を従来よりも付与することのできる蕎麦豆腐を容易に得ることができる。
【0045】
また、上記構成によれば、2℃以上10℃以下の温度範囲内における撹拌処理に適した蕎麦粉と溶媒との混合物を作製できるので、該撹拌処理によって第1混合物を確実に得ることができる。
【0046】
また、上記構成によれば、2℃以上10℃以下の温度範囲内における撹拌処理に最適な蕎麦粉と溶媒との混合物を作製することができる。
【0047】
また、上記構成によれば、60℃以上80℃以下の温度範囲内における加熱処理に最適な抽出物と金属塩との混合物を作製できるので、該加熱処理によって第2混合物を確実に得ることができる。
【0048】
また、上記構成によれば、タンパク質とともにポリフェノール等の有用物質を含んだ栄養価の高い蕎麦豆腐を得ることができる。さらに、蕎麦豆腐に豆腐様の食感を従来よりも付与することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。