特許第5920710号(P5920710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920710
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】蕎麦豆腐の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20160428BHJP
【FI】
   A23L1/10 H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-70590(P2012-70590)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-201899(P2013-201899A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】507307374
【氏名又は名称】学校法人神戸学院
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 清和
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−185160(JP,A)
【文献】 特開平09−183735(JP,A)
【文献】 特開2004−166601(JP,A)
【文献】 豆乳でつくる☆レンチン蕎麦豆腐,cookpad,[on line],2011年 9月26日,(URL:http://cookpad.com/recipe/1512777(2016年1月5日入手))
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/、11/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蕎麦粉と溶媒とを、(前記蕎麦粉 1[g]):(前記溶媒 3[mL]以上20[mL]以下)の割合で混合した後、2℃以上10℃以下の温度範囲内で撹拌することによって第1混合物を作製する工程と、
前記第1混合物を遠心分離して沈殿物と抽出物に分ける工程と、
前記抽出物に、GDL(グルコノデルタラクトン)、又は、一種以上の金属塩を加えた後、60℃以上80℃以下の温度範囲内で加熱することによって第2混合物を作製する工程と、
前記第2混合物のpHが6以上8以下の範囲内となるように調整し放置することによって、豆腐状の凝固物を作製する工程と、
を順に行うことを特徴とする蕎麦豆腐の製造方法。
【請求項2】
前記溶媒は、塩化ナトリウム溶液、水、塩化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、炭酸カリウム溶液、及び、酢酸のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の蕎麦豆腐の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒のうち、塩化ナトリウム溶液、塩化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、炭酸カリウム溶液、及び、酢酸の各濃度は、0.01M以上3M以下であることを特徴とする請求項2に記載の蕎麦豆腐の製造方法。
【請求項4】
前記一種以上の金属塩は、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫化亜鉛、及び、硫酸マグネシウムから選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蕎麦豆腐の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蕎麦豆腐の製造方法関するものである。
【背景技術】
【0002】
蕎麦は、世界各地で広く利用されている国際的な食糧である。蕎麦粉には、ヒトの健康に関係する様々な有益成分が含まれている。蕎麦粉は、特に、タンパク質、食物繊維、ミネラル、ビタミン、及び、ポリフェノール(ルチン、及び、ケルセチン等)などに富み、これら成分の大切な供給源である。蕎麦粉は、植物性食品として総合的に考えると、蕎麦栄養価の高い食品に属すると考えられている。
【0003】
我が国では、蕎麦粉は、麺を中心として、蕎麦菓子などとして広く利用されている。世界各地では、蕎麦粉から、パン、パンケーキ、クレープ、ガレット、シアット、プリーニ、及び、そば米(カーシャ)などの様々な食品が作られ、広く利用されている。しかし、蕎麦粉は、小麦粉又は大豆などの植物性食品に比べて、凝集性及び粘弾性などが低く、加工食品の作り難い、加工特性の低い食品に属する。
【0004】
他方で、蕎麦粉は、栄養価が高く、またヒトの健康維持・増進にかかわる成分(タンパク質、ミネラル、食物繊維、ルチン、及び、ポリフェノールなど)が多く含まれることから、麺以外の蕎麦加工食品の開発が強く望まれている。特に、我が国は、現在高齢者人口が23%を超える超高齢社会となっており、高齢者にやさしい、豆腐などのような柔軟性食品の開発が強く望まれている。一方で、高齢者のみならず多くの人々にとって、我が国では、肥満又は生活習慣病の蔓延が、大きな栄養の問題となっている。
【0005】
一方で、蕎麦粉には、肥満及び生活習慣病の予防的成分として、健全な生活を維持するタンパク質、味覚障害、創傷治癒障害、及び、貧血など多くのミネラル関連疾患の予防効果を示すミネラル、大腸ガンなどの予防効果を示唆する食物繊維、高血圧予防を示唆するルチン、動脈硬化予防を示唆するボリフェノールなど、が高いレベルで含まれており、これらの成分に関心をもつ多くの人々の利用が大いに期待される。
【0006】
かかる背景のもと、従来の蕎麦豆腐の製造方法として、蕎麦粉と凝固剤を水に溶かした液を撹拌しながら加熱した後、冷却して固める蕎麦豆腐の製造方法において、凝固剤として蕎麦の内層粉を使用することを特徴とするものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−166601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記文献の蕎麦豆腐の製造方法によって製造された蕎麦豆腐よりも、さらに豆腐様の食感が十分に付与された蕎麦豆腐の開発が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、蕎麦豆腐に豆腐様の食感を従来よりもさらに付与することのできる蕎麦豆腐の製造方法提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の蕎麦豆腐の製造方法は、蕎麦粉と溶媒とを、(前記蕎麦粉1[g]):(前記溶媒3[mL]〜20[mL]のうちいずれか一の値)の割合で混合した後、2℃以上10℃以下の温度範囲内で撹拌することによって第1混合物を作製する工程と、前記第1混合物を遠心分離して沈殿物と抽出物に分ける工程と、前記抽出物に、GDL(グルコノデルタラクトン)、又は、一種以上の金属塩を加えた後、60℃以上80℃以下の温度範囲内で加熱することによって第2混合物を作製する工程と、前記第2混合物を、前記抽出物のpHが6〜8となる範囲内で放置することによって、豆腐状の凝固物を作製する工程と、を順に行うことを特徴とする。
【0011】
上記(1)の構成によれば、第1混合物を2℃以上10℃以下の温度範囲内で撹拌することによって、蕎麦粉に含まれるタンパク質のうち、水に溶けるアルブミンと、水には溶けず、溶媒に溶けるグロブリンとの双方を、第1混合物からの抽出物として抽出することができる。また、タンパク質とともにポリフェノール等の有用物質も、第1混合物からの抽出物として抽出することができるため、栄養価の高い蕎麦豆腐を容易に得ることができる。さらに、抽出物に、GDL(グルコノデルタラクトン)、又は、一種以上の金属塩を加えた後、60℃以上80℃以下の温度範囲内で加熱することによって得られた第2混合物を、抽出物のpHが6〜8となる範囲内で放置することによって、豆腐様の食感を従来よりもさらに付与することのできる蕎麦豆腐を容易に得ることができる。
【0012】
(2) 上記(1)の蕎麦豆腐の製造方法においては、前記溶媒は、塩化ナトリウム溶液、水、塩化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、炭酸カリウム溶液、及び、酢酸のうちいずれか一つであることが好ましい。
【0013】
上記(2)の構成によれば、2℃以上10℃以下の温度範囲内における撹拌処理に適した蕎麦粉と溶媒との混合物を作製できるので、該撹拌処理によって第1混合物を確実に得ることができる。
【0014】
(3) 上記(2)の蕎麦豆腐の製造方法においては、前記溶媒のうち、塩化ナトリウム溶液、塩化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、炭酸カリウム溶液、及び、酢酸の各濃度は、0.01M以上3M以下であることが好ましい。
【0015】
上記(3)の構成によれば、2℃以上10℃以下の温度範囲内における撹拌処理に最適な蕎麦粉と溶媒との混合物を作製することができる。
【0016】
(4) 上記(1)〜(3)の蕎麦豆腐の製造方法においては、前記一種以上の金属塩は、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫化亜鉛、及び、硫酸マグネシウムから選択されることが好ましい。
【0017】
上記(4)の構成によれば、60℃以上80℃以下の温度範囲内における加熱処理に最適な抽出物と金属塩との混合物を作製できるので、該加熱処理によって第2混合物を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る蕎麦豆腐の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図2】抽出物のpH調整を行わずに、抽出物に水を添加した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。
図3】抽出物を弱酸性のpH6に調整した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。
図4】抽出物を中性のpH7に調整した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。
図5】抽出物を弱アルカリ性のpH8に調整した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。
図6図2(b)〜図5(b)に示す各試験管内において、沈殿せずに残留した上澄み液中に含まれるタンパク質濃度[mg/ml]を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図6を参照しながら、本発明の一実施形態に係る蕎麦豆腐の製造方法、及び、蕎麦豆腐について説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明の蕎麦豆腐の製造方法では、まず、第1工程S1において、蕎麦粉と溶媒とを、(蕎麦粉 1[g]):(溶媒 3[mL]以上20[mL]以下)の割合で混合した後、2℃以上10℃以下の温度範囲内で撹拌することによって第1混合物を作製する。ここでの溶媒は、塩化ナトリウム溶液、水、塩化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、炭酸カリウム溶液、及び、酢酸のうちいずれか一つ以上であることが好ましい。また、上記各溶媒のうち、塩化ナトリウム溶液、塩化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、炭酸カリウム溶液、及び、酢酸の各濃度は、0.01M以上3M以下であることが好ましい。さらに、上記撹拌に要する時間は、30分〜3時間程度であることが好ましく、1時間〜2時間であることがより好ましい。
【0023】
次いで、第2工程S2において、第1混合物を遠心分離して沈殿物と抽出物とに分ける。
【0024】
次いで、第3工程S3において、抽出物に、GDL(グルコノデルタラクトン)、又は、一種以上の金属塩を加えた後、60℃以上80℃以下の温度範囲内で加熱することによって第2混合物を作製する。ここで、一種以上の金属塩は、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫化亜鉛、及び、硫酸マグネシウムから選択されることが好ましい。
【0025】
次いで、第4工程S4において、第2混合物のpHが6〜8となるように調整し放置することによって、豆腐状の凝固物である蕎麦豆腐を作製する。ここで、第2混合物のpHを6〜8となるように調整するためには、酢酸緩衝液(Acetate
buffer)、トリス塩酸緩衝液(Tris‐HCl Buffer)などを用いることができる。
【実施例】
【0026】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0027】
本発明者は、蕎麦粉と、0.2[M]の塩化ナトリウム溶液とを、(蕎麦粉 1[g]):(溶媒 3[mL])の割合で混合した後、4[℃]の温度条件下で1時間撹拌することによって、第1混合物を作製した。次いで、本発明者は、第1混合物を、8000[rpm]の回転数で70分間、遠心分離して沈殿物と抽出物とに分けた。
【0028】
次いで、本発明者は、得られた抽出物9[mL]に、金属塩1[mL]を添加した後、70℃の温度条件下で10分間加熱することによって第2混合物を作製した。この際、本発明者は、抽出物に添加する金属塩として、(A)塩化カルシウム10[mM]、(B)塩化マグネシウム10[mM]、(C)硫酸マグネシウム10[mM]、(D)塩化カルシウム5[mM]及び塩化マグネシウム5[mM]の混合液、(E)塩化カルシウム5[mM]及び硫酸マグネシウム5[mM]の混合液、の五種類を使用した。また、本発明者は、(F)GDL(グルコノデルタラクトン)を抽出物に添加した場合、及び、(G)水を抽出物に添加した場合についても実験を行った。
【0029】
次いで、本発明者は、第2混合物を、抽出物のpHが6〜8となる範囲内で放置することによって、豆腐状の凝固物である蕎麦豆腐を作製した。図2(a),(b)〜図5(a),(b)は、紙面左側から右側に向かって、各試験管内において、(A)塩化カルシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(B)塩化マグネシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(C)硫酸マグネシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(D)塩化カルシウム5[mM]及び塩化マグネシウム5[mM]の混合液を抽出物に添加した場合、(E)塩化カルシウム5[mM]及び硫酸マグネシウム5[mM]の混合液を抽出物に添加した場合、(F)GDL(グルコノデルタラクトン)10[mM]を抽出物に添加した場合、(G)水を抽出物に添加した場合をそれぞれ示している。なお、図2(a),(b)〜図5(a),(b)中の(G)における「NONE」とは、金属塩又はGDL(グルコノデルタラクトン)を抽出物に添加せず、水のみを抽出物に添加した状態を意味している。
【0030】
図2は、抽出物のpH調整を行わずに、抽出物に水を添加した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。
【0031】
図3は、抽出物を弱酸性のpH6に調整した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。ここでのpH調整は、酢酸緩衝液0.05[M]を第2混合物に別途添加することによって実現した。
【0032】
同様に、図4は、抽出物を中性のpH7に調整した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。ここでのpH調整は、トリス塩酸緩衝液0.05[M]を第2混合物に別途添加することによって実現した。
【0033】
同様に、図5は、抽出物を弱アルカリ性のpH8に調整した状態を示す写真であって、(a)が放置開始直後の状態(時刻t=0[min])を示し、(b)が放置開始から60分経過後の状態(時刻t=60[min])であって、試験管の底に豆腐状の凝固物として沈殿した蕎麦豆腐を示している。ここでのpH調整は、トリス塩酸緩衝液0.05[M]を第2混合物に別途添加することによって実現した。
【0034】
図6は、図2(b)〜図5(b)に示す各試験管内において、沈殿せずに残留した上澄み液中に含まれるタンパク質濃度[mg/ml]を示している。図6は、紙面左側から右側に向かって、各試験管内において、(A)塩化カルシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(B)塩化マグネシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(C)硫酸マグネシウム10[mM]を抽出物に添加した場合、(D)塩化カルシウム5[mM]及び塩化マグネシウム5[mM]の混合液を抽出物に添加した場合、(E)塩化カルシウム5[mM]及び硫酸マグネシウム5[mM]の混合液を抽出物に添加した場合、(F)GDL(グルコノデルタラクトン)10[mM] を抽出物に添加した場合、(G)水を抽出物に添加した場合をそれぞれ示している。
【0035】
以下の表1〜9は、モニター10名で蕎麦豆腐の試食を行い、「◎:食感が優良」、「○:食感が良い」、及び、「×:食感が悪い」の採点基準で食感を評価した結果を示している。また、各表中の項目『溶媒[mL]』は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を示している。また、各表中の項目『撹拌温度[℃]』は、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を示している。また、各表中の項目『加熱温度[℃]』は、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を示している。なお、各表のうち、表5〜9は、本発明の比較例を示している。
【表1】
上記表1中の実施例1は、本実施例で得られた蕎麦豆腐を示している。本蕎麦豆腐では、上記表1に示すように、食感評価として「◎:食感が優良」の結果が得られた。
【0036】
【表2】
上記表2中の実施例2〜7は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を4[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を2[℃]、6[℃]、及び、10[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を60[℃]及び80[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表2に示すように、食感評価として「○:食感が良い」の結果が得られた。
【0037】
【表3】
上記表3中の実施例8〜13は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を12[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を2[℃]、6[℃]、及び、10[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を60[℃]及び80[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表3に示すように、食感評価として「○:食感が良い」の結果が得られた。
【0038】
【表4】
上記表4中の実施例14〜19は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を20[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を2[℃]、6[℃]、及び、10[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を60[℃]及び80[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表4に示すように、食感評価として「○:食感が良い」の結果が得られた。
【0039】
【表5】
上記表5中の比較例1〜4は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を2[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を1[℃]及び11[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を50[℃]及び90[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表5に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0040】
【表6】
上記表6中の比較例5〜8は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を21[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を1[℃]及び11[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を50[℃]及び90[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表6に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0041】
【表7】
上記表7中の比較例9,10は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を2[mL]及び21[mL]のいずれかとし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を4[℃]に設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を70[℃]に設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表7に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0042】
【表8】
上記表8中の比較例11,12は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を3[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を1[℃]及び11[℃]のいずれかに設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を70[℃]に設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表8に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0043】
【表9】
上記表9中の比較例13,14は、蕎麦粉1[g]に混合する塩化ナトリウム溶液[mL]を3[mL]とし、蕎麦粉と塩化ナトリウム溶液との混合物を撹拌する際の温度[℃]を4[℃]に設定し、抽出物に金属塩を添加した混合物を加熱する際の温度[℃]を50[℃]及び90[℃]のいずれかに設定した場合に得られた蕎麦豆腐をそれぞれ示している。各蕎麦豆腐では、上記表9に示すように、食感評価として「×:食感が悪い」の結果が得られた。
【0044】
(本実施形態に係る蕎麦豆腐の製造方法、及び、蕎麦豆腐の特徴)
上記構成によれば、第1混合物を2℃以上10℃以下の温度範囲内で撹拌することによって、蕎麦粉に含まれるタンパク質のうち、水に溶けるアルブミンと、水には溶けず、溶媒に溶けるグロブリンとの双方を、第1混合物からの抽出物として抽出することができる。また、タンパク質とともにポリフェノール等の有用物質も、第1混合物からの抽出物として抽出することができるため、栄養価の高い蕎麦豆腐を容易に得ることができる。さらに、抽出物に、GDL(グルコノデルタラクトン)、又は、一種以上の金属塩を加えた後、60℃以上80℃以下の温度範囲内で加熱することによって得られた第2混合物を、抽出物のpHが6〜8となる範囲内で放置することによって、豆腐様の食感を従来よりも付与することのできる蕎麦豆腐を容易に得ることができる。
【0045】
また、上記構成によれば、2℃以上10℃以下の温度範囲内における撹拌処理に適した蕎麦粉と溶媒との混合物を作製できるので、該撹拌処理によって第1混合物を確実に得ることができる。
【0046】
また、上記構成によれば、2℃以上10℃以下の温度範囲内における撹拌処理に最適な蕎麦粉と溶媒との混合物を作製することができる。
【0047】
また、上記構成によれば、60℃以上80℃以下の温度範囲内における加熱処理に最適な抽出物と金属塩との混合物を作製できるので、該加熱処理によって第2混合物を確実に得ることができる。
【0048】
また、上記構成によれば、タンパク質とともにポリフェノール等の有用物質を含んだ栄養価の高い蕎麦豆腐を得ることができる。さらに、蕎麦豆腐に豆腐様の食感を従来よりも付与することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0050】
S1〜S4 第1〜第4工程
図1
図6
図2
図3
図4
図5