特許第5920713号(P5920713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920713
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】パーマネントウェーブ処理方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 7/06 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   A45D7/06
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-107384(P2012-107384)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-233277(P2013-233277A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】桜井 基央
(72)【発明者】
【氏名】山中 和也
(72)【発明者】
【氏名】柴野 輝美
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 礼子
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−509098(JP,A)
【文献】 特開2007−319234(JP,A)
【文献】 特開2004−196681(JP,A)
【文献】 特開2011−024832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 7/00−06
A61K 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元作用を有するパーマネント第1剤を塗布してロッドに巻き付けた毛髪を膨潤軟化し、前記パーマネント第1剤を洗い流し、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、アスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物及び、中間処理剤を前記毛髪に与え、その後、所定時間かけて加温しながら、前記ロッドに巻き付けた前記毛髪上に前記化合物を定着させるとともに前記毛髪を湿潤維持し、その後、前記ロッド内を負圧状態とし、ブロワによって乾燥させながら前記毛髪へ向けてオゾンを噴触し、前記毛髪をオゾン雰囲気で包んで、前記化合物を酸化し、この酸化した前記化合物及び前記オゾンにより前記毛髪のジスルフィド結合を再結合する、
ことを特徴とするパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項2】
その濃度を0.13〜24重量%として前記化合物を前記中間処理剤に含ませ、
前記オゾンで1.0ppm以下のオゾン雰囲気を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項3】
前記酸化した化合物が、デヒドロアスコルビン酸又はデヒドロアスコルビン酸の塩である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項4】
前記ジスルフィド結合を再結合させた毛髪に対し、酸化作用を有するパーマネント第2剤を塗布し、さらにジスルフィド結合を再結合する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のパーマネントウェーブ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の損傷を抑えることができ、ウエーブ形状のWET/DRY差を小さくすることができ、施術者の拘束時間を短縮してサロン内の作業効率を向上することができるパーマネントウェーブ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、下記特許文献1において、ロッド径に近い初期のウエーブを長期間にわたって保持することができるパーマネントウェーブ処理方法を提案している。パーマネント第1剤による処理の後に、中間水洗を実施してジスルフィド結合の開鎖の進行を止め、続いて毛髪を分子の再配列(高分子移動)に好適な状態に整え、その後、毛髪の乾燥状態に移行し、パーマネント第2剤により処理し、ジスルフィド結合を再結合させて所望のウエーブ形状を形成するようにした発明である。
【0003】
具体的には、毛髪を複数のロッドに巻き付ける第1の工程と、該巻き付けた毛髪に対して還元剤を含むパーマネント第1剤を塗布して毛髪を膨潤軟化させる第2の工程と、膨潤軟化された毛髪に付着したパーマネント第1剤を洗い流し、または、パーマネント第1剤を中和する中間処理剤にてパーマネント第1剤の作用を止め、もしくは、前記両方を行う第3の工程と、第3の工程の後に被術者の頭部にパーマネントウェーブ処理装置のフードを被せ、ブロワを駆動して毛髪を加温しながら一定時間放置して湿潤状態を維持し、または、被術者の額部分から後頭部全体を覆い布で覆った状態でブロワを弱状態で駆動しながらロッド内を負圧状態にして湿潤状態に維持する第4の工程と、前記第4の工程の後に、ブロワを強状態で駆動しながらロッド内を負圧状態として毛髪を乾燥させる第5の工程と、前記毛髪を乾燥した後に酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布し一定時間放置してジスルフィド結合が再結合されて乾燥状態での形状を記憶させる第6の工程とを含むパーマネントウェーブ処理方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4473848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1で提案されている発明を実施すると、毛髪を分子の再配列に好適な状態に整える工程、毛髪の乾燥する工程、及び、その後のパーマネント第2剤により処理する工程において、カットイス上で同一姿勢を強いるために被術者への負担が大きいという指摘がある。また、パーマネント第2剤により処理する工程において、施術者は一人の被術者に拘束され、その他の作業を並行してできなくなるため、サロン内の作業効率が低下してしまい、これを改善して欲しいという要請がある。パーマネント第2剤は水溶液であるので、WET環境下で、乾燥工程で形成した毛髪形状を弱める方向にジスルフィド結合の再結合が進み、毛髪が乾いたときにウエーブ形状が異なってしまうというWET/DRY差が発生するという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑み提案され、ウエーブ形状のWET/DRY差を小さくすることができ、施術者の拘束時間を短縮してサロン内の作業効率を向上することができ、被術者への負担も低減することができ、かつ、毛髪の損傷を抑えることができるパーマネントウェーブ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、還元作用を有するパーマネント第1剤を塗布してロッドに巻き付けた毛髪を膨潤軟化し、前記パーマネント第1剤を洗い流し、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びアスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物及び、中間処理剤を前記毛髪に与え、その後、前記毛髪にオゾンを噴触し、前記化合物を酸化し、この酸化した前記化合物及び前記オゾンにより前記毛髪のジスルフィド結合を再結合することを特徴とする。
【0008】
さらに、上記パーマネントウェーブ処理方法において、その濃度を0.13〜24重量%として上記化合物を中間処理剤に含ませ、上記オゾンで1.0ppm以下のオゾン雰囲気を形成することが好ましい。
【0009】
特に、毛髪のジスルフィド結合を再結合するに際し、所定時間かけて加温しながら、ロッドに巻き付けた毛髪上に化合物を定着させるとともに毛髪を湿潤維持し、その後、ロッド内を負圧状態とし、ブロワによって乾燥させながら毛髪へ向けてオゾンを噴触し、毛髪をオゾン雰囲気で包むことがさらに好ましい。また、本発明において酸化した化合物はデヒドロアスコルビン酸又はデヒドロアスコルビン酸の塩である。
【0010】
このほか本発明は、上記パーマネントウェーブ処理方法において、ジスルフィド結合を再結合させた毛髪に対し、酸化作用を有するパーマネント第2剤を塗布し、さらにジスルフィド結合を再結合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法では、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びアスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物及び、中間処理剤を毛髪に塗布し、その後、毛髪にオゾンを噴触し、化合物を酸化し、この酸化した化合物及びオゾンにより毛髪のジスルフィド結合を再結合している。したがって、オゾンのDRY環境下で、酸化した化合物及びオゾンにより毛髪のジスルフィド結合を再結合することができ、毛髪が乾いたときに施術過程とウエーブ形状が異なるWET/DRY差の問題を解消することができる。酸化した化合物及びオゾンの併用により、酸化作用がより良好に発揮されるため、仕上がりの良いパーマネントウェーブを形成することができる。さらに、DRY環境下でジスルフィド結合を再結合するので、中間処理剤のトリートメント成分を毛髪に十分に浸透させることができる。中間処理剤とともに毛髪に与えるアスコルビン酸等の化合物がオゾンにより酸化されると、デヒドロアスコルビン酸又はデヒドロアスコルビン酸の塩となり、これらはその場で直ちに酸化作用を発揮するため、仕上がりの良いパーマネントウェーブの形成に有効となる。
【0012】
また、パーマネント第2剤を塗布して一定時間放置する施術が不要となることで、施術者が拘束から解放され、サロン内の作業効率を向上させることができるとともに、全体の施術時間が短縮され、被術者の負担も大幅に低減される。オゾン及び酸化した化合物による毛髪の酸化効果は直ちに発揮されるため、酸化作用が残留することで懸念される毛髪のダメージを軽減することができる。アスコルビン酸等の化合物は、中間処理剤の塗布時に微還元作用を発揮するので、毛髪の分子再配列を阻害せずに乾燥/酸化工程を開始できる。
【0013】
本発明では特に、化合物を中間処理剤に含ませ、その濃度を0.13〜24重量%とし、かつ、オゾンで1.0ppm以下のオゾン雰囲気を形成することで、より良い仕上がりのパーマネントウェーブを形成することができる。さらに、化合物及びオゾンの上記パラメータの下で酸化効果が効率よく得られるため、ジスルフィド結合を再結合するために必要なオゾンの量を減らすことができる。オゾンの量を減らすことで、施術者及び被術者の安全性、快適性を確保し、かつ、施術の安全性、快適性を高めることができる。
【0014】
また、本発明では、毛髪のジスルフィド結合を再結合するに際し、所定時間かけて加温しながら、ロッドに巻き付けた毛髪上に化合物を定着させるとともに毛髪を湿潤維持する。したがって、オゾンにより酸化された化合物であるデヒドロアスコルビン酸又はデヒドロアスコルビン酸の塩による酸化作用を、ロッドに巻き付けた毛髪に有効に及ぼすことができる。酸化された化合物による酸化作用が有効に発揮されれば、オゾンの量を益々減らすこともできる。同時に、毛髪を分子の再配列(高分子移動)に好適な状態に整えることもできる。さらに、本発明では、ロッド内を負圧状態とし、ブロワによって乾燥させながら毛髪へ向けてオゾンを噴触し、毛髪をオゾン雰囲気で包む。このため、ロッドに巻き付けた毛髪へ効率よく化合物及びオゾンを接触させることが可能になり、DRY環境下でのジスルフィド結合の再結合が確実に進み、WET/DRY差を一段と解消することができる。オゾン雰囲気で包むことで毛髪全体に均一に酸化作用を及ぼすことができ、仕上がりムラを抑えることもできる。
【0015】
このほか、本発明では、酸化した化合物及びオゾンによってジスルフィド結合を再結合させた毛髪に対し、酸化作用を有するパーマネント第2剤を塗布し、さらにジスルフィド結合を再結合することが可能である。このパーマネント第2剤を塗布する施術は、1〜3分という極短時間で済ませることができる。また、この工程は、シャンプー台でのトリートメント術の中に含めることができ、プロセスタイムを実質不要とすることができる。酸化した化合物及びオゾンによってジスルフィド結合を再結合させた毛髪に対し、パーマネント第2剤を塗布することにより、仕上がりムラを一段と抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法を実施するのに利用するパーマネントウェーブ処理装置の概略全体を示す斜視図である。
図2】本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法の概略全体及びプログラム設定モードを示すフローチャートである。
図3】本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法における薬剤噴霧モード示すフローチャートである。
図4】本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法におけるクリープモード示すフローチャートである。
図5】本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法におけるガラス化モード及びクーリングモード示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法について詳述していく。以下に説明する実施形態は、本発明を具現化した1つの例示であって、これに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0018】
本発明は、還元作用を有するパーマネント第1剤を塗布してロッドに巻き付けた毛髪を膨潤軟化し、パーマネント第1剤を洗い流し、中間処理剤を塗布し、その後、毛髪のジスルフィド結合を再結合するパーマネントウェーブ処理方法に係る。中間処理剤には、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びアスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物が0.13〜24重量%(0.01〜1.87M)含まれている。なお、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びアスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物は、中間処理剤そのものに含ませないで、その化合物の粉末等を中間処理剤に対し、0.13〜24重量%となるようにサロン内で使用直前に用事調整してもよい。この場合、用事調整した化合物を毛髪に塗布し、さらに、中間処理剤も毛髪へ塗布するという手法を提案することができる。
【0019】
毛髪のジスルフィド結合を再結合する際には、1.0ppm以下のオゾン雰囲気を形成し、毛髪にオゾンを噴触させる。オゾンは、すでに毛髪に塗布されているアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びアスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物を酸化し、この酸化した化合物及びオゾンにより毛髪のジスルフィド結合を再結合する。特に、毛髪のジスルフィド結合を再結合するに際し、所定時間(例えば、3〜15分)かけて加温して、中間処理剤に含まれているアスコルビン酸等の化合物をロッドに巻き付けた毛髪上に確実に定着させる。このとき、毛髪は湿潤維持されることになる。さらに、ロッド内を負圧状態とし、ブロワによって乾燥させながら毛髪へ向けてオゾンを噴触し、オゾン雰囲気を形成することで毛髪全体が均一な濃度のオゾンで包まれるようにするとともに、ロッドに巻き付けた毛髪へ効率よく化合物及びオゾンを接触させるようにする。
【0020】
本発明では、オゾン雰囲気というDRY環境下でオゾン及び酸化した化合物(デヒドロアスコルビン酸等)によるジスルフィド結合の再結合が進む。したがって、従来のWET環境下で行うパーマネント第2剤を塗布する施術過程と、その後の毛髪が乾いた仕上がり時とでウエーブ形状が異なるWET/DRY差の問題が解消されている。さらに、オゾン雰囲気を形成することで毛髪の全体が均一な濃度のオゾンで包まれるため、その全体に均一に酸化作用が発現し、パーマネントウェーブの仕上がりムラが抑えられている。中間処理剤とともに毛髪に塗布するアスコルビン酸等の化合物を、ロッドに巻き付けた毛髪上に確実に定着させることにより、オゾンにより酸化され、デヒドロアスコルビン酸又はデヒドロアスコルビン酸の塩となったとき、その物性である不安定性から、その場で酸化作用が発揮されるため、その作用はロッドに巻き付けた毛髪に効率的に及ぶことになる。すなわち、酸化した化合物とオゾンとの併用によって酸化効果の効率が高まり、必要なオゾン量(噴触させるオゾン濃度)が低く抑えられることとなる。
【0021】
ここで、本発明において、ウエーブ形状の仕上がりムラを一段と抑えるために、ジスルフィド結合を再結合させた毛髪に対し、酸化作用を有するパーマネント第2剤を塗布し、さらにジスルフィド結合を再結合する施術を付加してもよい。この施術は、1〜3分という極短時間で済ませることができる。特に、仕上がりムラをさらに抑える目的で行う施術であるので、シャンプー台でのトリートメント術の中に含めることができ、パーマネント第2剤を塗布するプロセスタイムは実質ゼロとなる。
【0022】
アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びアスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物の濃度は、中間処理剤に対して0.01〜1.87M(0.13〜24重量%)である。0.01M(0.13重量%)より低濃度であれば、オゾンにより酸化されてデヒドロアスコルビン酸又はデヒドロアスコルビン酸の塩が生成されても、その酸化作用を毛髪に及ぼすことが期待されないから推奨することができない。1.87M(24重量%)より高濃度となれば、アスコルビン酸自身の酸化効果が飽和してしまう虞があるほか、アスコルビン酸の漂白作用、仕上がりウエーブの質感、ウエーブ形状にムラが発生する等の不都合が発生する虞等があるから、推奨することができない。
【0023】
また、毛髪にオゾンを噴触し、オゾン雰囲気を形成する濃度が1.0ppm以下であるのは、オゾンを噴霧することの人体への安全性を考慮するからである。なお、オゾン雰囲気を形成する濃度の下限は、例えば、0.05ppmであるが、パーマネントウェーブ処理において所望するウエーブ形状の仕上がり、ムラ等との関係から適宜決定すればよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法の一実施形態を図面とともに説明する。この一実施形態は、本発明を創作したことに基づいて構成した新たなパーマネントウェーブ処理装置を用いて実施した形態である。
【0025】
まず、新たなパーマネントウェーブ処理装置について説明する。図1に示すように、パーマネントウェーブ処理装置Aは、装置本体1とフード2とオゾンユニット3と薬剤噴霧ユニット4とを含んで構成されている。下部にはキャスターが設けられ、移動自在の構成である。
【0026】
装置本体1は、ハウジング11内に、モーターとファンとから構成され、ヒーターによって加温した温風をフード2内へ排出するとともにフード2内から吸引し、再びヒーターによって加温する循環式のブロワ12と、このブロワ12が吸引した温風から、これに含まれる水分やパーマネントウェーブ処理で発生する異物等を分離する汽水分離装置13と、外気を導入してフード2内へ排出する温風に混合し、これを冷却する外気導入装置(図示省略)と、が収容されて構成されている。
【0027】
循環式のブロワ12は、ハウジング11に形成されている温風排出口(図示省略)及び吸引口12aを通じ、温風をフード2内へ排出し、フード2内から吸引する。フード2内に排出された温風は、毛髪が巻かれたロッドから、このロッドに取り付けたチューブ、及び、このチューブが取り付けられる吸引口12aを通じて吸引される。なお、温風排出口(図示省略)及び吸引口12aは、フード2内の温風の流れを考慮すると、ハウジング11上部において、吸引口12aがハウジング11上部の両側部に形成され、温風排出口がハウジング11上部の吸引口12aに挟まれた領域に形成されることが好ましい形態となる。また、温風排出口は、フード2内の温度を均一に、さらには、後述するオゾン雰囲気のオゾン濃度を均一にするため、吸引口12aに挟まれた領域の所定程度の面積(例えば、吸引口12aの5〜50倍の面積)を占有して、ハウジング11上部に形成されることが、さらに好ましい形態であるといえる。
【0028】
また、ハウジング11内には、ヒーターから温風排出口に至る管路に分岐口が設けられ、この分岐口からの管路が外気導入装置に接続されている。外気導入装置はファンを備え、このファンを駆動させることで外気を、分岐口を通じて温風に混合している。なお、外気導入装置に外気を取り入れるための外気取入口は、ハウジング11の側面に形成されている。また、ロッドには外周面に多数の空気流通孔が形成されている。チューブがロッド及び吸引口12aに接続され、ブロワ12の吸引によりチューブ内が負圧状態になると、ロッド内も負圧状態となる。
【0029】
フード2は、開閉自在となるように第1フード21と第2フード22に2つに分離されて構成されている。第1フード21と第2フード22とは、ハウジング11の上部に連結部を通じて連結されている。第1フード21は、連結部を通じて第2フードと重なる方向に回動可能である。第2フード22は、第1フード21の他側に配設され、連結部を通じて第1フード21と重なる方向に回動可能である。なお、第1フード21及び第2フード22の形状は円弧状、四角、六角形状等のような頭部を覆う形状であればどのような形状であってもよい。
【0030】
オゾンユニット3は、放電法や紫外線法等により空気中の酸素からオゾンを生成するオゾン生成装置であり、ハウジング11の上部に設けられている。オゾンユニット3には、先端が第1フード21を貫通してフード2内へ突出し、生成したオゾンをフード2内へ向けて吹き出し可能とするオゾン吹出口31が形成されている。このオゾン吹出口31は、上述した温風排出口の近傍に配置される。また、オゾン吹出口31は、その吹出口形状を図1示すような丸形のほか、円弧形状、矩形状、扁平な楕円状等に形成可能である。吹出口形状は、吹出口31から吹き出されたオゾンが、温風排出口から排出された温風によってフード2内に拡散されることになるので、この温風に効率よく乗せることができるものを選択すればよい。
【0031】
すなわち、オゾンユニット3より発生するオゾンを、温風排出口の近傍において比較的広い面積で吹き出すことで温風に効率よく乗せて、フード2内に均一な濃度のオゾン雰囲気を形成するのである。このオゾンの拡散状態により、フード2内を1.0ppm以下の濃度のほぼ均一なオゾン雰囲気とすることができる。また、オゾンユニット3によりオゾンの供給を停止すれば、フード2内のオゾンは自己分解し、短時間で消失する。なお、フード2内におけるオゾン雰囲気は、オゾンユニット3によるオゾンの供給量を制御することで適宜、その濃度を調整することができる。
【0032】
薬剤噴霧ユニット4は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びアスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物を含ませた中間処理剤である薬剤を収容し、超音波等を利用して薬剤を霧化する霧化機構を備えた薬剤噴霧用ケトル41と、フード2内を移動することで、薬剤噴霧用ケトル41で霧化された薬剤を毛髪に均一に噴霧する薬剤噴霧部材42と、この薬剤噴霧部材42へ霧化された薬剤を薬剤噴霧用ケトル41から送るファン43と、薬剤噴霧部材42がフード2の内周面に沿って往復移動するための駆動力を与える薬剤噴霧口駆動用モーター44とで構成されている。
【0033】
薬剤噴霧部材42は、フード2の内部形状に対応する湾曲筒状で、その表面に複数の噴霧口が形成されている。また、薬剤噴霧部材42がフード2の内周面に沿って往復移動するのは、図1に示すように、薬剤噴霧口駆動用モーター44がフード2の連結部に内蔵され、その回転軸にギアが取り付けられ、これに対応するギアが薬剤噴霧部材42の端部に取り付けられることにより達成される。なお、薬剤噴霧部材42に複数の関節等を備えさせることにより、フード2の内周面に沿った前後方向(図1において左右方向)の往復移動のほか、フード2の内周面に沿った複雑な移動が可能である。
【0034】
薬剤は、酸リンスとしての中間処理剤であり、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びアスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物を、0.13〜24重量%含んで構成される。その噴霧量は、パーマネントウェーブ処理を行おうとする毛髪量、堅い柔らかい等の毛髪の質等に応じ、適宜調整することができる。アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びアスコルビン酸の塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物が中間処理剤そのものに含まれない場合には、その化合物の粉末等を中間処理剤に対し、0.13〜24重量%となるようにサロン内で使用直前に用事調整して毛髪に与えてから、薬剤噴霧ユニット4を動作させ、化合物を含んでいない中間処理剤を毛髪に噴霧する。
【0035】
なお、図示を省略したが、パーマネントウェーブ処理装置Aは、時間表示、温度表示、ロッドの本数表示、毛髪の量、毛髪のダメージ、オゾン噴触装置の動作表示、薬剤の噴霧表示等の表示が行われる操作表示画面及びCPUを備えた制御部を有している。制御部には、この各表示がなされるための設定ボタンが配設されている。そして、施術者の設定ボタンを通じた操作により、CPUによる情報処理が行われ、パーマネントウェーブ処理装置Aにおける各種の制御が実行される。具体的には、オゾンユニット3の例えば電流等を制御してオゾン濃度レベルを制御するオゾン制御設定ボタン、薬剤噴霧ユニット4の薬剤噴霧量を制御する薬剤噴霧量制御設定ボタン、薬剤噴霧部材42がフード2の内周面に沿って往復移動する動作を制御する薬剤噴霧口駆動用モーター設定ボタンをはじめ、被術者の毛髪を巻き付けるロッドの数を設定するロッド数設定ボタン、被術者の毛髪の量を設定する毛髪量設定ボタン、被術者の毛髪のダメージ状態を設定するダメージチェック設定ボタン等を備える。施術者は、これらの各設定ボタンを操作すれば、これに応じた施術時間や施術温度のデータが制御部に内蔵されたROMに記憶され、制御部のCPUによって情報処理が行われる。また、施術者が希望に応じて各種の設定を制御部に内蔵されたRAMに記憶させることも可能である。
【0036】
また、施術者の設定ボタン操作を通じた制御部の制御には、例えば、ヒーターへの通電をオン・オフするためのスイッチを通じたヒーターの温度制御、上述したROMによって設定された時間を演算するためのタイマを通じた時間制御、温風のオン・オフ制やその風量の調節するブロア制御等が含まれる。さらに、制御部には、これらの制御をスタートさせるためのスタートスイッチも配設されている。フード2内の温度を検出する温度センサがフード2に設けられている場合、制御部の制御にはフード2内の温度制御が含まれ、温度制御のためのスタートスイッチが制御部に配設される。制御部にはその他、異常発生時に電源をオフにする安全ボタン等が備えられることが好ましい。そして、パーマネントウェーブ処理装置Aでは、施術者による各スイッチの操作を通じて、一連のパーマネントウェーブ処理が実行される。
【0037】
以下、上述したパーマネントウェーブ処理装置Aを用いた一連のパーマネントウェーブ処理方法について説明する。なお、ここでは中間処理剤に含まれる化合物として、アスコルビン酸の塩を採用した例を取り挙げて説明する。
【0038】
まず、施術者は、被術者の毛髪にロッドを巻き付け、ロッドを巻き付けた毛髪に対して還元作用を有する公知のパーマネント第1剤を塗布し、その状態で所定時間放置し、毛髪を膨潤軟化させる。毛髪が膨潤軟化したことを確認したら、毛髪に付着しているパーマネント第1剤を洗い流し、タオルで拭く。さらに、被術者をパーマネントウェーブ処理装置Aに着座させる。このとき、第1フード21及び第2フード22を回動させて重ね、フード2を開放させておくことが便宜である。被術者を着座させたら、第1フード21及び第2フード22をそれぞれ回動させて開放しているフード2を閉じ、被術者の頭部を覆う。また、被術者の顔面側にあたる第2フード22の開口側を布で覆って温風が漏れないようにし、フード2内を密閉した状態とする。この状態で施術者は、パーマネントウェーブ処理装置Aに備わる各設定ボタンの操作を通じて本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法を実施する。
【0039】
まず、薬剤噴霧ユニット4を可動させ、薬剤噴霧部材42をフード2内で移動させながら毛髪の全体に均一に薬剤を噴霧する。このとき、薬剤に含まれるアスコルビン酸の塩の濃度は、後述するオゾン雰囲気におけるオゾン濃度との関係から適宜決定されるが、0.05〜0.72Mが合理的であり、0.05〜0.36Mであることがコスト面から推奨される。薬剤は毛髪に定着することで、毛髪にトリートメント効果を与える。また、アスコルビン酸の塩によって微還元作用が発揮され、毛髪の分子再配列を阻害せずに乾燥/酸化工程を開始することができる。施術者は、薬剤噴霧部材42に対してロッドの背後側となる部分に巻き付いている毛髪に、薬剤が定着しているかどうかを確認し、仮に、噴霧ムラが認められるようであれば、薬剤噴霧ユニット4を部分的に可動させる又は手作業により、薬剤が毛髪全体に均一に定着するように微調整する。
【0040】
続いて、ブロア12によって加温しつつ、毛髪をその硬さや量等に対応させて制御された所定時間(例えば、3〜15分程度)をかけて湿潤維持することで、ロッドに巻き付けた毛髪における薬剤の定着をさらに進める。なお、ブロワ1は、制御された温度、制御された強さ(弱ブロワ、強ブロワ等)の温風が排出されるように制御され、フード2内は一定の温度雰囲気となる。この状態で、毛髪は所定の温度(好ましい温度は60度以下である)、かつ、時間(毛髪の固さや毛髪量等によって異なる)だけ温められるので、毛髪内の分子が再配列(高分子移動)に好適な状態に整えられる。
【0041】
なお、毛髪の加温は、ブロワ1による温風とともに、適宜の手段によりフード2内を蒸気やミストの雰囲気として加温することもできる。蒸気やミストを用いて加温することにより、湿潤状態の毛髪の水分量と温度を望ましい範囲に容易にコントロールすることができ、失敗が少なく、かつ、よりウエーブ効率の高いパーマネントウェーブ処理を進めることができる。温度制御や時間制御は、上述のとおり各種の制御手段をパーマネントウェーブ処理装置Aに内蔵させているので自動化することができる。もちろん、毛髪を湿潤維持するための制御を手動で行うことも可能である。
【0042】
その後、毛髪に巻き付けたロッドにチューブを接続し、このチューブを吸引口12aにも接続したら、ブロワ1によってロッド内を負圧にするとともに、毛髪へ向けてオゾンユニット3からオゾンをフード2内へ噴霧し、毛髪の全体をオゾン雰囲気で包み、毛髪のジスルフィド結合の再結合を進行させる。ブロワ12によって温風がハウジング上部の比較的大面積を占める領域から排出され、かつ、フード2内が密閉した状態であるので、毛髪の全体は均一な濃度のオゾンで包まれる。このとき、ロッド内を負圧にしているので、オゾンの毛髪への接触効率を高め、その酸化作用を効率的に発揮させることができる。なお、噴霧するオゾンは、フード2内に1.0ppm以下のオゾン雰囲気を形成することができるが、薬剤に含まれるアスコルビン酸等の濃度との関係で適宜、調整することができる。
【0043】
フード2内ではオゾン雰囲気により、毛髪上のアスコルビン酸の塩が酸化し、デヒドロアスコルビン酸の塩となって酸化作用を発揮し、定着したその場の毛髪のジスルフィド結合の再結合が進む。さらに、オゾン自身の酸化作用により、オゾン雰囲気に包まれている毛髪全体のジスルフィド結合の再結合が進む。毛髪のジスルフィド結合の再結合は、ブロワ12によって毛髪を乾燥させているので、DRY環境で進む。また、オゾン雰囲気に包まれている環境下で酸化が進むから、毛髪全体に均一にその作用が及ぶようになる。
【0044】
最後に、施術者は、毛髪全体が十分に乾燥できたことを確認し、ロッドを毛髪から外してその仕上がりを確認する。その後、シャンプー台で被術者にトリートメント術を行う。このトリートメント術では、仕上がりムラの一段と抑えるために、ジスルフィド結合を再結合させた毛髪に対し、酸化作用を有する公知のパーマネント第2剤を塗布し、さらに毛髪のジスルフィド結合を再結合してもよい。この施術は1〜3分という極短時間で済ませることができる。なお、このようなパーマネント第2剤の塗布は、トリートメント術の中に含まれるので、プロセスタイムは実質ゼロである。施術は、毛髪を乾燥させてスタイリングを行うことで終了する。
【0045】
以下、本発明が、上記特許文献1で提案しているパーマネントウェーブ処理方法よりも優れる点について詳述する。
【0046】
上記特許文献1に係るパーマネント処理方法では、パーマネント第2剤を行って毛髪のジスルフィド結合を再結合する前に、毛髪を加温し、乾燥させて毛髪内の分子を再配列(高分子移動)に好適な状態に整えることにより、ウエーブ効率を良くしていた。しかし、パーマネント第2剤による毛髪のジスルフィド結合の再結合は、WET環境下で進むため、施術過程と、毛髪が乾いたときとでウエーブ形状が異なるWET/DRY差の問題が発生していた。一方、本発明では毛髪を加温し、乾燥させるのでウエーブ効率が良くなる効果をそのまま得ることができ、さらに、デヒドロアスコルビン酸等とオゾンとの併用により、DRY環境下で毛髪のジスルフィド結合の再結合が進むため、WET/DRY差の問題を解消することに成功している。また、フード内を密閉毛髪の全体をオゾン雰囲気で包むため、その全体に均一に酸化作用が発現され、パーマネントウェーブの仕上がりムラを抑えることにも成功している。デヒドロアスコルビン酸の塩等の併用により、噴霧するのに必要なオゾン量(噴触させるオゾン濃度)を低く抑えることを可能としている。なお、オゾンの量を減らすことで、施術者及び被術者が曝露されるオゾンの濃度を、日本産業衛生学会が推奨する許容濃度程度に抑え、施術者及び被術者の安全性、快適性を確保し、かつ、施術の安全性、快適性を高めることができる。
【0047】
特に、特許文献1に係るパーマネント処理方法では、毛髪を加温する工程、毛髪の乾燥する工程、及び、その後のパーマネント第2剤により処理する工程において、カットイス上で同一姿勢を強いているので被術者への負担が大きかった。一方、本発明では、毛髪を加温する工程、毛髪の乾燥する工程の中で、毛髪のジスルフィド結合の再結合が進むため、実質的にパーマネント第2剤により処理する工程(施術時間)を省くことができ、被術者への負担を大幅に低減することに成功している。施術者にとっても拘束から解放されることで、サロン内の作業効率が飛躍的に向上することが期待できる。
【0048】
このほか、仕上がりムラの一段と抑えるために、ジスルフィド結合を再結合させた毛髪に対し、酸化作用を有する公知のパーマネント第2剤を塗布し、さらに毛髪のジスルフィド結合を再結合させる場合にも、シャンプー台で被術者に行うトリートメント術に含ませることができるので、プロセスタイムを実質ゼロとすることができる。すなわち、サロン内の作業効率を低下させることなく、さらに仕上がりの良いパーマネントウェーブ処理を進めることに成功している。
【0049】
以下、上述したパーマネントウェーブ処理方法について、パーマネントウェーブ処理装置Aを作動させてから行う処理に関し、図2図4に示すフローチャートに基づいて補足説明する。
【0050】
図2に示すように、パーマネントウェーブ処理装置Aでは、外部交流電源を供給するための電源スイッチをオン状態とすると、施術者が制御部における各設定ボタンを操作してプログラム設定を行うプログラム設定モードS1、毛髪へ化合物を含む中間処理剤を塗布する薬剤噴霧モードS2、薬剤(化合物)の定着と毛髪の湿潤維持等を進めるクリープモードS3(乾燥工程)、オゾンを噴触することで、酸化した化合物及びオゾンによる毛髪のジスルフィド結合の再結合を進めるガラス化モードS4(酸化工程)、毛髪を冷却するクーリングモードS5の順に処理が進められる。
【0051】
まず、プログラム設定モードS1では、施術者が制御部における各スイッチを操作してプログラム設定を行う。すなわち、ロッドの数(ステップS11)、毛髪のダメージレベル(ステップS12)、毛髪の量(ステップS13)等の各種設定を行う。そうすると、制御部では、操作された条件に対応するタイマ、温度、ブロワ出力、オゾン濃度レベル及び、薬剤噴霧部材42の動作等を含んだ薬剤噴霧量がROMより読みだされ、これらのモードが決定される(ステップS14)。また、制御部に内蔵されているCPUは、図3に示す薬剤噴霧モードS2に移行し、施術者が薬剤噴霧のためのスタートスイッチをオンとしたか否かを監視し(ステップS21)、オンされたと判断するとプログラム設定モードS1で設定されたタイマが始動する(ステップS22)。
【0052】
ステップS22でタイマが始動すると、それと同時にパーマネントウェーブ処理装置Aは、制御された薬剤噴霧量と薬剤噴霧部材42の動作により、毛髪にミスト状の薬剤を吹き付ける(ステップS23)。なお、プログラム設定モードS1において毛髪の量、ダメージ、ロッド数によって噴霧量が設定されるため、薬剤の付着量も最適な状態となる。
【0053】
次に、CPUは、ステップS22のタイマの時間が設定された時間に達したか否かの監視を行う(ステップS24)。設定された時間に達したと判断すると、図4に示すクリープモードS3に移行し、施術者がクリープのためのスタートスイッチをオンしたか否かを監視し(ステップS31)、オンされたと判断するとプログラム設定S1で設定されたタイマが始動する(ステップS32)。
【0054】
ステップS32でタイマが始動すると、それと同時にパーマネントウェーブ処理装置Aは、ブロワ12と外気導入装置を駆動させるので、温風排出口から温風が吹き出す(ステップS33)。CPUは、フード2内の温度が一定となるように、すなわちROMで設定された温度の温風となるようにヒーター制御を開始する(ステップS34)。また、フード2内の温度を温度センサで監視し、ROMで設定された温度に制御する(ステップS35)。続いて、CPUは、ROMで設定されたタイマの時間が設定された時間に達したか否かを判断し(ステップS36)、設定された時間に達したと判断すると、図5に示すガラス化モードS4に移行する。
【0055】
施術者は、ロッドにチューブを接続した後に、ガラス化のためのスタートスイッチを操作することとなる。このため、ロッドにチューブを接続したことを必ず確認する必要がある。一方、CPUは、図5に示すように、施術者がガラス化のためのスタートスイッチをオンしたか否かを監視し(ステップS41)、オンされたと判断するとプログラム設定S1で設定されたタイマが始動する(ステップS42)。また、ステップS42のタイマが始動すると、それと同時にパーマネントウェーブ処理装置Aは、再びブロア12と外気導入装置を駆動させて温風が吹き出すとともに、毛髪が巻かれているロッドを通じて温風を吸引し、ロッド内を負圧状態にする(ステップS43)。
【0056】
上記ステップS43の動作開始と同時に、パーマネントウェーブ処理装置Aは、オゾンユニット3からオゾンを放出させるので、オゾンがブロア12の温風排出口の温風に乗ってフード2内に均一に拡散される(ステップS44)。続いて、CPUは、フード2内の温度が一定となるように、ヒーターの制御を開始し(ステップS45)、かつ、フード2内の温度を温度センサで監視し、ROMで設定された温度に制御する(ステップS46)。次いで、ROMで設定されたタイマの時間が設定された時間に達したか否かを判断し(ステップS47)、設定された時間に達したと判断すると、クーリングモードS5に移行する。
【0057】
この段階ではすでに、ロッド2内が負圧状態となっているので、フード2内に供給されたオゾンは毛髪を介して吸引され、自身の酸化作用によって毛髪を酸化するとともに、毛髪に塗布された薬剤に含まれるアスコルビン酸の塩を酸化してデヒドロアスコルビン酸の塩として、このデヒドロアスコルビン酸の塩によっても毛髪を酸化し、毛髪のジスルフィド結合を再結合する。
【0058】
クーリングモードS5に移行すれば、CPUは、施術者がクーリングのためのスタートスイッチを操作したか否かを監視し(ステップS51)、オンされたと判断するとプログラム設定S1で設定されたタイマが始動する(ステップS52)。このステップS52の動作開始と同時に、パーマネントウェーブ処理装置Aは、ブロア12と外気導入装置を駆動させ(ヒーターの通電を遮断し)、冷風又は送風を毛髪が巻かれているロッド2内から吸引することで毛髪のクーリングを進める(ステップS53)。
【0059】
そして、ROMで設定されたタイマの時間が設定された時間に達したか否かを判断し(ステップS54)、設定された時間に達したと判断すると、制御部による一連の制御が終了する。施術者は、フード2を開放し、毛髪からロッドを外して作業を完了させる。
【0060】
なお、上述したパーマネントウェーブ処理方法では、薬剤を毛髪に吹き付けた後に、クリープ処理を進めるものである。したがって、ロッドにチューブが接続されていないので、薬剤が毛髪に巻き付けられたロッドから吸引されることはない。しかし、本発明では、クリープ処理の後のガラス化処理を行う直前に、薬剤を毛髪に吹き付ける処理を行うことも可能である。
【0061】
この場合、ガラス化処理時において、ロッドにチューブが接続されていることから、ガラス化処理を行う直前に薬剤を吹き付け、続けてロッド2内を負圧状態とすることで、ミスト状の薬剤がロッド内の負圧によってロッドに巻かれている毛髪全体に均一にいきわたるとともに、効率よく毛髪に定着することになる。また、ロッド内を負圧状態としているため、フード2内の温風を吸引することとなって、毛髪に温風が供給されて仕上がりが良好になる。
【0062】
また、薬剤の噴霧時からロッドにチューブを接続してロッド内を負圧状態とすることによっても、薬剤を毛髪全体に均一にいきわたせるとともに、効率よく毛髪に定着することができる。この場合も、次の工程であるクリープ処理において、ロッド内が負圧状態となるので、フード2内の温風を吸引して毛髪に温風が供給されて仕上がりが良好になる。
【符号の説明】
【0063】
A・・・パーマネントウェーブ処理装置
1・・・装置本体
11・・・ハウジング
12・・・ブロワ
12a・・吸引口
13・・・汽水分離装置
2・・・フード
21・・・第1フード
22・・・第2フード
3・・・オゾンユニット
31・・・オゾン吹出口
4・・・薬剤噴霧ユニット
41・・・薬剤噴霧用ケトル
42・・・薬剤噴霧部材
43・・・薬剤噴霧用ファン
44・・・薬剤噴霧部材駆動モーター
図1
図2
図3
図4
図5