【実施例】
【0012】
図1は、本実施例の磁性体回収装置が備わる浄水システムを示す図である。
図1に示すように、本実施例の浄水システムS1は、原水タンク1に蓄えられている排水などの処理すべき被処理水を原水ポンプ2で急速攪拌槽6に送水する。被処理水が送水された急速攪拌槽6には、凝集剤タンク3に蓄えられている凝集剤が凝集剤注入ポンプ23によって注入され、凝集剤が注入された被処理水が攪拌装置6aによって攪拌される。凝集剤として、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム等が使用される。被処理水に含まれる、表面が負に帯電した浮遊物質、油等のエマルジョンなどの被除去物は、注入される凝集剤によって表面の電荷が中和されて凝集される。
【0013】
なお、急速攪拌槽6の攪拌装置6aで被処理水を急速攪拌することによって、浮遊物質やエマルジョンの相互の衝突頻度を高めることができ、凝集を促進できる。そして、マイクロフロックと呼ばれる微小なフロックが急速攪拌槽6に多数形成される。
【0014】
急速攪拌槽6での急速攪拌によって生じるフロックを含む被処理水は、緩速攪拌槽7に送水される。緩速攪拌槽7には、磁性粉タンク4に蓄えられている、マグネタイト粒子等の磁性粉が磁性粉注入ポンプ24によって注入され、高分子凝集剤タンク5に蓄えられている高分子凝集剤が、高分子凝集剤注入ポンプ25によって注入される。
緩速攪拌槽7では、攪拌装置7aによって被処理水がゆっくりと攪拌され、磁性粉を含んだ状態での凝集が促進されて磁性フロックが生成される。
なお、緩速攪拌槽7が2段の槽で構成され、それぞれの槽で被処理水が攪拌装置7aで攪拌されることによって磁性フロックを効果的に成長させることができる。
【0015】
緩速攪拌槽7に高分子凝集剤タンク5から注入される高分子凝集剤は、アニオン系が望ましく、例えば、ポリアクリルアミドが好適である。高分子凝集剤としてポリアクリルアミドが使用される場合、ポリアクリルアミドは粉末の状態で保管され、図示しないフィーダで必要量が高分子凝集剤タンク5に注入されて、高分子凝集剤タンク5に備わる攪拌装置5aで攪拌される構成とすればよい。
【0016】
緩速攪拌槽7での攪拌によって生じる磁性フロックを含んだ被処理水は、磁気分離部8に送水される。磁気分離部8は、例えば、ネオジム磁石等の永久磁石で磁力を発生する磁気ドラム8aと、磁気ドラム8aの周囲に吸着されている磁性フロックを剥がすスクレーパ8bと、緩速攪拌槽7から送水される被処理水を溜める貯水槽8cと、を含んで構成される。
磁気ドラム8aは、例えば、円筒状に形成されて円形の両端部の中心を結ぶ軸線を回転中心として回転し、両端部の間に形成される側面の一部が貯水槽8cに溜まる被処理水に浸るように構成される。
さらに、磁気ドラム8aは、側面に磁力が発生するように構成され、貯水槽8cで被処理水に浸る側面に磁性フロックが吸着するように構成される。また、スクレーパ8bは、例えば、ブレード状の部材が磁気ドラム8aの側面に摺接するように構成される。そして、磁気ドラム8aの側面に吸着した磁性フロックは磁気ドラム8aの回転によって被処理水から引き上げられ、スクレーパ8bによって側面から剥がされる。磁気ドラム8aの側面から剥がされた磁性フロックは、被処理水とともに磁性フロック収集管8dを介して磁性体再利用装置50に送られる。
一方、磁気分離部8の貯水槽8cで磁性フロックが取り除かれた被処理水は、最終生成物である浄水として浄水タンク10に流入して蓄えられる。
【0017】
磁性体再利用装置50は、磁性体回収装置9と、磁性フロックポンプ26(第1ポンプ)と、浄水ポンプ27(第2ポンプ)と、入口切替弁30と、出口切替弁31と、を含んで構成される。
磁性体回収装置9は、磁性フロックを含む被処理水および浄水タンク10から送水される浄水が流通する流路9aが配管され、磁力発生部51が発生する磁力を利用して流路9aを被処理水とともに流通する磁性フロックから磁性粉を分離回収するように構成される。磁性体回収装置9の詳細は後記する。
【0018】
磁性フロックポンプ26は、磁気分離部8の磁気ドラム8aからスクレーパ8bで剥がされて磁性フロック収集管8dで収集される、磁性フロックを含む被処理水を、入口切替弁30を介して磁性体回収装置9の流路9aに送水するポンプ(第1ポンプ)である。また、浄水ポンプ27は、浄水タンク10に蓄えられている浄水を、入口切替弁30を介して磁性体回収装置9の流路9aに洗浄水として送水するポンプ(第2ポンプ)である。
【0019】
また、入口切替弁30は磁性体回収装置9の流路9aの入口部92aに備わり、出口切替弁31は流路9aの出口部92bに備わっている。
入口切替弁30は、例えば、モータMなどのアクチュエータで駆動する電磁弁であり、磁性フロックポンプ26(第1ポンプ)が流路9aの入口部92aに接続される第1切替状態(取込状態)と、浄水ポンプ27(第2ポンプ)が流路9aの入口部92aに接続される第2切替状態(洗浄状態)と、のいずれか一方に選択的に切り替わるように構成される。入口切替弁30が取込状態に切り替わると磁性フロック収集管8dから磁性体回収装置9に磁性フロックを含んだ被処理水が流入し、入口切替弁30が洗浄状態に切り替わると、浄水タンク10から磁性体回収装置9に浄水(洗浄水)が流入するように構成される。
【0020】
出口切替弁31は、例えば、モータMなどのアクチュエータで駆動する電磁弁であり、磁性体回収タンク13が流路9aの出口部92bに接続される切替状態(回収状態)と、汚泥タンク11が流路9aの出口部92bに接続される切替状態(廃棄状態)と、のいずれか一方に選択的に切り替わるように構成される。出口切替弁31が回収状態に切り替わると磁性体回収装置9で磁性フロックから分離された磁性粉が磁性体回収タンク13に流入して蓄えられ、出口切替弁31が廃棄状態に切り替わると磁性体回収装置9を洗浄した洗浄液等が汚泥タンク11に流入して蓄えられるように構成される。
【0021】
また、浄水システムS1には、磁性体回収タンク13に蓄えられる磁性粉を急速攪拌槽6に返送する回収磁性体返送ライン12が備わる。回収磁性体返送ライン12には回収磁性体ポンプ29が配設され、磁性体回収タンク13に蓄えられている磁性粉は回収磁性体ポンプ29によって回収磁性体返送ライン12に送り込まれ、回収磁性体返送ライン12を流通して急速攪拌槽6に供給される。
【0022】
図2は磁性体回収装置の構成を示す斜視図であり、(a)は磁力発生部が一方の磁性体流通部の側に移動した状態を示す図、(b)は磁力発生部が他方の磁性体流通部の側に移動した状態を示す図である。
図2の(a),(b)に示すように、磁性体回収装置9は、一方の平面90Sに溝状の流路9aが形成される2枚のプレート90a,90bが平行に対峙して配置される磁性体流通部90と、平行に対峙する2枚のプレート90a,90bの間に、プレート90a,90bの平面90Sと平行に配置される平板状の磁力発生部51と、を含んで構成される。磁力発生部51は、磁力を発生する平面(磁力発生面51S)が2枚のプレート90a,90bの平面90Sと略平行になるように配設される。また、磁性体回収装置9には、磁力発生部51を移動させる移動機構が備わり、磁力発生部51は、2枚のプレート90a,90bと平行な方向(所定の移動方向)に移動可能に構成される。
【0023】
なお、本実施例の磁性体回収装置9には、プレート90a,90bの平面90SをXY平面とし、プレート90a,90bがZ軸方向に対峙するようなXYZ座標系が仮想的に設定される。そして、このように設定されるXYZ座標系において、磁力発生部51がX軸方向に移動するように構成される。つまり、X軸方向が、磁力発生部51の所定の移動方向になる。
【0024】
磁力発生部51を移動させる移動機構の構造は限定されるものではなく、例えば、X軸方向に延設されるガイドレール51aに嵌合して自転しながら移動するローラ51bが磁力発生部51に備わり、さらに、磁力発生部51をX軸方向に移動可能なアクチュエータ等の駆動装置52が備わる構成とすればよい。
また、駆動装置52の構成は限定されるものではない。例えば、図示しない電動機等を駆動源とするボールねじ機構で、磁力発生部51と連結されるロッド52aをX軸方向に変位させる構成であればよい。または、空気圧や油圧を駆動源とするリニアアクチュエータでロッド52aをX軸方向に変位させる構成であってもよい。
【0025】
また、プレート90a(90b)に形成される流路9aの形状は限定されるものではない。例えば、
図2の(a),(b)に示すように、平面90Sに沿ってX軸方向に延設される複数の平行な直線部9Lのそれぞれの一端が一方に隣接する直線部9Lの一端と接続され、それぞれの直線部9Lの他端が他方に隣接する直線部9Lの一端と接続されて、つづら折り状に形成される1本の流路9aとすればよい。
なお、
図2には説明を容易にするために図示省略してあるが、例えば、プレート90a(90b)と同じ形状の平板等によって、平面90Sに溝状に形成される流路9aの開口側が閉塞されて、プレート90a(90b)に管状の流路9aが形成されている構成とすればよい。
【0026】
また、一方のプレート(例えば、プレート90b)に形成される流路9aの一端を入口部92a、他方のプレート(例えば、プレート90a)に形成される流路9aの一端を出口部92bとし、一方のプレート(例えば、プレート90b)の流路9aにおいて入口部92aが形成されない一端と、他方のプレート(例えば、プレート90a)の流路9aにおいて出口部92bが形成されない一端が連結部(連結管91)で接続される構成とする。この構成によって、プレート90aの流路9aとプレート90bの流路9aが連結管91によって連結され、入口部92aから出口部92bまで連通する1本の流路9aが磁性体流通部90に形成される。
そして、本実施例の磁性体回収装置9には、同様に構成される2つの磁性体流通部90がX軸方向、つまり、プレート90a,90bの平面90Sと平行な方向に隣接して配設される。また、駆動装置52が磁力発生部51をX軸方向に移動させることによって、磁力発生部51が、2つの磁性体流通部90の間で往復動可能となる。
【0027】
このように形成される磁性体回収装置9は、磁性体流通部90を流通する被処理水に含まれる磁性フロックを磁力発生部51が発生する磁力で吸引して流路9aの壁面(管壁9a1)に吸着し、さらに、磁性フロックが流路9aの管壁9a1に吸着している状態のときに、流路9aに洗浄水が流通するように構成される。流路9aの管壁9a1に吸着している磁性フロックには、流路9aを流通する洗浄水によってせん断力が作用し、このせん断力で磁性フロックから磁性粉が分離される。このとき、磁性フロックから分離した磁性粉は、磁力発生部51が発生する磁力に吸引されて流路9aの管壁9a1に吸着した状態であるため、例えば、磁力発生部51が磁性体流通部90の位置から移動して流路9aの位置における磁力が消失した状態で、流路9aに洗浄水を流通させて磁性粉を流して回収する構成であることが好ましい。
【0028】
また、2つの磁性体流通部90がX軸方向に隣接して配設され、磁力発生部51が2つの磁性体流通部90の間を移動する構成とした。この構成によって、一方の磁性体流通部90において、磁力発生部51が発生する磁力で被処理水に含まれる磁性フロックを吸引して流路9aの管壁9a1に吸着させる工程と、他方の磁性体流通部90において、流路9aにおける磁力を消失させて磁性粉を回収する工程と、を並行して同時に進行できる。
【0029】
図3は磁力発生部の構造を示す図であり、(a)は磁力発生部の構成を示す斜視図、(b)は磁性体流通部の流路と磁力発生部の位置関係を示す図である。また、
図4は流路に配設される金網を示す図である。
【0030】
図3の(a)に示すように、磁力発生部51は、平面形状が矩形(正方形、または長方形)の複数の永久磁石510がXY平面に平行な平面状に敷き詰められて構成される。永久磁石510は、矩形をなす平面の一方がS極(S)、S極の平面と対向する他方の平面がN極(N)となるように構成され、X軸方向(移動方向)およびY軸方向(移動方向と直交する方向)に整列して配置される。つまり、永久磁石510の平面の配列によって、磁力を発生する磁力発生面51Sが磁力発生部51に形成され、永久磁石510の両面で、磁力発生部51の両面に磁力発生面51Sが形成される。
【0031】
そして、X軸方向およびY軸方向に整列する永久磁石510は、磁力発生部51の一方の磁力発生面51SにおいてS極とN極が交互になるように配設されることが好ましい。つまり、同一の磁力発生面51Sに、S極を向ける永久磁石510と、N極を向ける永久磁石510と、が交互に配置される構成であることが好ましい。
また、磁力発生部51の両面をなす2つの磁力発生面51Sは、それぞれの永久磁石510の位置で極性が反転している。つまり、一方の磁力発生面51SがS極(N極)の位置では、他方の磁力発生面51SはN極(S極)になる。
【0032】
なお、磁力発生部51に永久磁石510を固定する方法は限定されるものではない。例えば、磁力発生部51を形成する矩形の枠組みの内側に永久磁石510が並べて配置され、周辺部の永久磁石510と枠組み、および、隣接する各永久磁石510が接着剤等によって固定される構成であってもよい。
【0033】
また、
図3の(b)に示すように、磁力発生部51を構成する永久磁石510のX軸方向に沿った各端辺が、磁性体流通部90(
図2の(a)参照)の流路9aにおいてX軸方向に延設される直線部9LのY軸方向の略中央部に配置されるように、永久磁石510が備わる構成が好ましい。
換言すると、永久磁石510において、Y軸方向(移動方向と直交する方向)に隣接する永久磁石510と接する端辺の位置が流路9aの直線部9Lの位置になり、さらに、当該端辺の位置が、直線部9LのY軸方向の略中央部の位置になるように、永久磁石510が配置されていることが好ましい。
【0034】
永久磁石510は各端辺の磁力が最も強いため、永久磁石510の端辺が流路9aのY軸方向の略中央部に配置されると、流路9aの略中央部が磁力の強い部分となる。したがって、流路9aを流通する被処理水に含まれる磁性フロックを強い磁力で吸引することができ、磁性フロックを効果的に流路9aの管壁9a1(
図2の(a)参照)に吸着させることができる。
【0035】
また、
図4に示すように、磁性体流通部90の流路9aの管壁9a1に沿って金網93が配設される構成であってもよい。
金網93は鋼材などの磁性体(強磁性体)を素材とすることが好ましく、この構成によって、磁力発生部51が発生する磁力で金網93を磁化させることができる。
また、金網93が配設されることによって流路9aの表面積が拡大する。そして、流路9aに配設された金網93が磁化することによって磁力を発生する部分の表面積が拡大し、これによって、流路9aを流通する被処理水に含まれる磁性フロックが吸着される表面積が拡大する。したがって、効率よく磁性フロックを吸着させることができる。
【0036】
つまり、流路9aを流通する被処理水に含まれる磁性フロックの少なくとも一部を、磁力発生部51が発生する磁力で吸引して流路9aの管壁9a1に吸着させ、流路9aを流通する被処理水に含まれる磁性フロックの少なくとも一部を、磁力発生部51が発生する磁力で磁化する金網93に吸着させる構成とすることができる。
なお、金網93は、流路9aの磁力発生部51の側の管壁9a1に沿って配設される構成であってもよいし、管状を呈する流路9aの全周壁に亘って配設される構成であってもよい。
また、金網93に限定されず、流路9aの表面積を拡大させる構造で磁性体(強磁性体)の物質を素材とする部材であれば、金網93と同等の効果を奏する。
【0037】
図5の(a),(b)、および
図6の(a),(b)は、磁性体回収装置で磁性粉を回収する工程を説明する図である。
図5,6を参照して、磁性体回収装置9での磁性粉の回収について説明する(以下、適宜
図1〜4参照)。
なお、磁性体回収装置9における磁性粉の回収は、浄水システムS1に備わる制御装置C1が磁性体回収装置9を制御して自動的に実行する構成であってもよいし、作業者が手動で実行する構成であってもよい。以下は、制御装置C1によって磁性体回収装置9が制御されて磁性粉を回収する場合を例にして説明する。
【0038】
以下の説明、および
図5,6の記載では、便宜上、磁性体回収装置9に備わる2つの磁性体流通部90の一方を第1磁性体流通部901、他方を第2磁性体流通部902と称する。さらに、第1磁性体流通部901の入口切替弁30を第1入口切替弁301、出口切替弁31を第1出口切替弁311と称し、第2磁性体流通部902の入口切替弁30を第2入口切替弁302、出口切替弁31を第2出口切替弁312と称する。
また、
図5,6において、入口切替弁30(第1入口切替弁301,第2入口切替弁302)および出口切替弁31(第1出口切替弁311,第2出口切替弁312)の黒塗りの流路は非開通の状態を示し、白塗りの流路は開通した状態を示す。
また、
図5,6において、磁性フロックポンプ26の矢印は磁性フロックを含む被処理水の流れ、浄水ポンプ27の矢印は浄水(洗浄水)の流れを示し、矢印が付されたポンプは駆動し、矢印が付されないポンプは停止していることを示す。
【0039】
例えば、最初の状態として、
図5の(a)に示すように、制御装置C1は、第1磁性体流通部901の側に磁力発生部51を移動する。さらに、制御装置C1は、第1入口切替弁301を取込状態に切り替えて磁性フロックポンプ26を第1磁性体流通部901の入口部92aに接続し、第2入口切替弁302を洗浄状態に切り替えて浄水ポンプ27を第2磁性体流通部902の入口部92aに接続する。また、制御装置C1は第1出口切替弁311を廃棄状態に切り替えて、汚泥タンク11を第1磁性体流通部901の出口部92bに接続し、第2出口切替弁312を回収状態に切り替えて、磁性体回収タンク13を第2磁性体流通部902の出口部92bに接続する。
【0040】
そして、制御装置C1は、磁性フロックポンプ26を駆動して磁性フロックを含む被処理水を磁性フロック収集管8dから第1磁性体流通部901の流路9aに送水する。第1磁性体流通部901の流路9aを流れる被処理水に含まれる磁性フロックは、磁力発生部51が発生する磁力によって、流路9aの管壁9a1または流路9aに配設されている金網93に吸着する。また、制御装置C1は浄水ポンプ27を駆動し、浄水タンク10に蓄えられている浄水を、第2磁性体流通部902の流路9aに洗浄水として送水する。第2磁性体流通部902の流路9aにおける磁力は消失しており、第2磁性体流通部902の流路9aに磁性粉が残留している場合、その磁性粉は洗浄水とともに流路9aを流通して磁性体回収タンク13に流入して蓄えられる。
このように、磁力発生部51が第1磁性体流通部901の位置にあり、第1入口切替弁301が取込状態、第2入口切替弁302が洗浄状態、第1出口切替弁311が廃棄状態、第2出口切替弁312が回収状態、にそれぞれ切り替わり、磁性フロックポンプ26と浄水ポンプ27が駆動している状態(
図5の(a)に示す状態)を第1の状態とする。
【0041】
磁性フロックポンプ26を駆動してから適宜時間が経過したら、制御装置C1は磁性フロックポンプ26を停止し、浄水ポンプ27を駆動してから適宜時間が経過したら、制御装置C1は浄水ポンプ27を停止する。
このときに、制御装置C1が磁性フロックポンプ26を停止するまでの時間は、磁性フロックが第1磁性体流通部901の流路9aの管壁9a1または金網93に好適に吸着されるまでの時間とし、あらかじめ実験計測等で計測されて設定されている時間とすればよい。また、制御装置C1が浄水ポンプ27を停止するまでの時間は、第2磁性体流通部902の流路9aに残存している磁性粉が洗浄水によって全て流されるまでの時間とし、あらかじめ実験計測等で計測されて設定されている時間とすればよい。
【0042】
磁性フロックポンプ26および浄水ポンプ27を停止した後、制御装置C1は、
図5の(b)に示すように、第1入口切替弁301を洗浄状態に切り替えて、浄水ポンプ27を第1磁性体流通部901の入口部92aに接続する。そして制御装置C1は、浄水ポンプ27を駆動し、浄水タンク10に蓄えられている浄水を、第1磁性体流通部901の流路9aに洗浄水として送水する。磁力発生部51が発生する磁力で第1磁性体流通部901の流路9aの管壁9a1または金網93に吸着されている磁性フロックに流路9aを流通する洗浄水によってせん断力が作用し、磁性フロックから磁性粉が分離する。磁性フロックから分離した磁性粉は流路9aの管壁9a1または金網93に吸着したままとなり、磁性粉が分離されたフロックは洗浄水とともに流路9aを流通して出口部92bから排出される。第1出口切替弁311は廃棄状態であり、磁性粉が分離されたフロックと洗浄水は汚泥タンク11に流入する。
このように、磁力発生部51が第1磁性体流通部901の位置にあり、第1入口切替弁301と第2入口切替弁302が洗浄状態、第1出口切替弁311が廃棄状態、第2出口切替弁312が回収状態、にそれぞれ切り替わり、磁性フロックポンプ26が停止して浄水ポンプ27が駆動している状態(
図5の(b)に示す状態)を第2の状態とする。
【0043】
浄水ポンプ27を駆動してから適宜時間が経過したら、制御装置C1は、浄水ポンプ27を停止する。このときに、制御装置C1が浄水ポンプ27を停止するまでの時間は、第1磁性体流通部901の流路9aの管壁9a1または金網93に吸着されている磁性フロックから磁性粉が分離するのに必要な時間とし、あらかじめ実験計測等で計測されて設定されている時間とすればよい。
【0044】
制御装置C1は、
図6の(a)に示すように、磁力発生部51を第2磁性体流通部902の側に移動し、第1出口切替弁311を回収状態に切り替えて磁性体回収タンク13を第1磁性体流通部901の出口部92bに接続する。そして、制御装置C1は浄水ポンプ27を駆動し、浄水タンク10に蓄えられている浄水を、第1磁性体流通部901の流路9aに洗浄水として送水する。
また、制御装置C1は、第2入口切替弁302を取込状態に切り替えて、磁性フロックポンプ26を第2磁性体流通部902の入口部92aに接続し、第2出口切替弁312を廃棄状態に切り替えて汚泥タンク11を第2磁性体流通部902の出口部92bに接続する。そして、制御装置C1は磁性フロックポンプ26を駆動して、磁性フロックを含む被処理水を磁性フロック収集管8dから第2磁性体流通部902の流路9aに送水する。
【0045】
第1磁性体流通部901の流路9aの位置は磁力発生部51の移動によって磁力が消失し、流路9aの磁性粉は管壁9a1または金網93に吸着することなく洗浄水とともに流路9aを流通する。そして、磁性粉は出口部92bから洗浄水とともに排出され、磁性体回収タンク13に流入して蓄えられる。
また、第2磁性体流通部902の流路9aを流れる被処理水に含まれる磁性フロックは、磁力発生部51が発生する磁力によって、流路9aの管壁9a1または金網93に吸着する。
このように、磁力発生部51が第2磁性体流通部902の位置にあり、第1入口切替弁301が洗浄状態、第2入口切替弁302が取込状態、第1出口切替弁311が回収状態、第2出口切替弁312が廃棄状態、にそれぞれ切り替わり、磁性フロックポンプ26と浄水ポンプ27が駆動している状態(
図6の(a)に示す状態)を第3の状態とする。
【0046】
制御装置C1は、浄水ポンプ27を駆動してから適宜時間が経過したら浄水ポンプ27を停止する。また、制御装置C1は、磁性フロックポンプ26を駆動してから適宜時間が経過したら磁性フロックポンプ26を停止する。
このときに、制御装置C1が磁性フロックポンプ26を停止するまでの時間は、磁性フロックが第2磁性体流通部902の流路9aの管壁9a1または金網93に好適に吸着されるまでの時間とし、あらかじめ実験計測等で計測されて設定されている時間とすればよい。また、制御装置C1が浄水ポンプ27を停止するまでの時間は、第1磁性体流通部901の流路9aに残存している磁性粉が洗浄水によって全て流されるまでの時間とし、あらかじめ実験計測等で計測されて設定されている時間とすればよい。
【0047】
そして、制御装置C1は、
図6の(b)に示すように、第2入口切替弁302を洗浄状態に切り替えて、浄水ポンプ27を第2磁性体流通部902の入口部92aに接続する。さらに、制御装置C1は浄水ポンプ27を駆動し、浄水タンク10に蓄えられている浄水を、第2磁性体流通部902の流路9aに洗浄水として送水する。第2磁性体流通部902の流路9aの管壁9a1または金網93に吸着している磁性フロックに流路9aを流通する洗浄水によってせん断力が作用し、磁性フロックから磁性粉が分離する。磁性フロックから分離した磁性粉は流路9aの管壁9a1または金網93に吸着したままとなり、磁性粉が分離されたフロックは洗浄水とともに流路9aを流通して出口部92bから排出される。第2出口切替弁312は廃棄状態であり、磁性粉が分離されたフロックと洗浄水は汚泥タンク11に流入する。
このように、磁力発生部51が第2磁性体流通部902の位置にあり、第1入口切替弁301と第2入口切替弁302が洗浄状態、第1出口切替弁311が回収状態、第2出口切替弁312が廃棄状態、にそれぞれ切り替わり、磁性フロックポンプ26が停止して浄水ポンプ27が駆動している状態(
図6の(b)に示す状態)を第4の状態とする。
【0048】
浄水ポンプ27を駆動してから適宜時間が経過したら、制御装置C1は、浄水ポンプ27を停止する。このときに、制御装置C1が浄水ポンプ27を停止するまでの時間は、第2磁性体流通部902の流路9aの管壁9a1または金網93に吸着されている磁性フロックから磁性粉が分離するのに必要な時間とし、あらかじめ実験計測等で計測されて設定されている時間とすればよい。
【0049】
そして、制御装置C1は、
図5の(a)に示すように、磁力発生部51を第1磁性体流通部901の側に移動し、第2出口切替弁312を回収状態に切り替えて磁性体回収タンク13を第2磁性体流通部902の出口部92bに接続する。さらに、制御装置C1は浄水ポンプ27を駆動し、浄水タンク10に蓄えられている浄水を、第2磁性体流通部902の流路9aに洗浄水として送水する。第2磁性体流通部902の流路9aは磁力発生部51の移動によって磁力が消失し、流路9aの磁性粉は管壁9a1または金網93に吸着することなく洗浄水とともに流路9aを流通する。そして、磁性粉は出口部92bから洗浄水とともに排出され、磁性体回収タンク13に流入して蓄えられる。
【0050】
さらに、制御装置C1は、第1入口切替弁301を取込状態に切り替えて、磁性フロックポンプ26を第1磁性体流通部901の入口部92aに接続し、第1出口切替弁311を廃棄状態に切り替えて汚泥タンク11を第1磁性体流通部901の出口部92bに接続する。そして、制御装置C1は磁性フロックポンプ26を駆動して、磁性フロックを含む被処理水を磁性フロック収集管8dから第1磁性体流通部901の流路9aに送水する。
つまり、制御装置C1は磁性体回収装置9を第1の状態に設定する。
第1磁性体流通部901の流路9aを流れる磁性フロックは磁力発生部51が発生する磁力によって、流路9aの管壁9a1または金網93に吸着する。
【0051】
この後、制御装置C1は、入口切替弁30(第1入口切替弁301,第2入口切替弁302)、出口切替弁31(第1出口切替弁311,第2出口切替弁312)を適宜切り替え、磁力発生部51を適宜移動し、磁性フロックポンプ26と浄水ポンプ27の駆動と停止を適宜設定して、磁性体回収装置9を第1の状態、第2の状態、第3の状態、および第4の状態に順次設定し、連続して、磁性体流通部90(第1磁性体流通部901,第2磁性体流通部902)で磁性粉を磁性フロックから分離して回収する。
【0052】
なお、以上の操作を制御装置C1の替わりに作業者が手動で実施する場合には、第1入口切替弁301、第1出口切替弁311、第2入口切替弁302、および第2出口切替弁312の切り替え、磁力発生部51の移動、磁性フロックポンプ26および浄水ポンプ27の駆動と停止、をそれぞれ手動で実施すればよい。
【0053】
以上のように、本実施例の磁性体回収装置9(
図2の(a)参照)は、磁力発生部51(
図2の(a)参照)が発生する磁力によって、磁性フロックを含む被処理水を加熱することなく磁性粉を分離回収することができる。したがって、回収された磁性粉は磁気分離の性能が劣化することなく再利用することができ、新たな磁性粉の使用量を低減することができる。
また、回収された磁性粉には凝集剤が付着しているが、磁性粉の回収時に加熱されないため表面電位がプラスのままとなる。したがって、回収した磁性粉は新たな凝集剤と同様に、浮遊物質やエマルジョン化した油分の表面(マイナス電位)を中和させる凝集機能が維持された状態にあり新たな凝集剤を追加する量を軽減できる。
【0054】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではない。例えば、前記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【0055】
例えば、本実施例の磁性体流通部90(
図2の(a)参照)に形成される流路9aの形状は、
図2の(a)に示すように、X軸方向に平行に形成される複数の流路が連結したつづら折りの形状としたが、この形状も限定されるものではない。例えば、Y軸方向に延設される複数の平行な流路が連結したつづら折りの形状であってもよいし、X軸方向に延設される流路とY軸方向に延設される流路が交互に連結されて矩形状または螺旋状に形成される流路9aであってもよい。
【0056】
また、流路9aの管壁9a1(
図2の(a)参照)または金網93(
図4参照)に吸着されている磁性フロックに、流路9aを流通する浄水(洗浄水)でせん断力を作用させる構成としたが、浄水(洗浄水)の替わりに空気流でせん断力を作用させる構成であってもよいし、高速噴流、マイクロバブル、超音波でせん断力を作用させる構成であってもよい。
【0057】
また、磁力発生部51(
図2の(a)参照)をX軸方向に移動する駆動装置52(
図2の(a)参照)もボールねじ機構やリニアアクチュエータに限定されるものではなく、例えば、ガイドレール51aに嵌合するローラ51b(
図2の(a)参照)自体が電動機等(図示せず)から付与される動力で自転する構成であってもよい。または、磁力発生部51が固定され、磁性体流通部90(
図2の(a)参照)が磁力発生部51に対して移動する構成であってもよい。
【0058】
または、電磁石で構成される磁力発生部51(
図2の(a)参照)であってもよい。この場合、磁力発生部51に供給される励磁電流のオンオフで、磁性体流通部90の流路9a(
図2の(a)参照)に発生する磁力をオンオフする構成とすることができ、磁力発生部51を移動する移動機構を構成する、ガイドレール51a(
図2の(a)参照)、ローラ51b(
図2の(a)参照)、駆動装置52(
図2の(a)参照)は不要となる。
【0059】
また、磁力発生部51(
図3の(a)参照)は、平面形状が矩形の永久磁石510(
図3の(a)参照)によって構成されるものに限定されず、例えば、平面形状が円形や他の形状の永久磁石(図示せず)が敷き詰められて構成されるものであってもよい。この場合も、S極を磁力発生面51S(
図3の(a)参照)に向ける永久磁石と、N極を磁力発生面51Sに向ける永久磁石と、が交互に配置される構成であることが好ましい。また、永久磁石の端辺が、流路9a(
図3の(b)参照)の位置に配置される構成が好ましい。
【0060】
また、磁力発生部51(
図2の(a)参照)の一面の側のみに流路9a(
図2の(a)参照)が形成される磁性体流通部90(
図2の(a)参照)であってもよいし、X軸方向に隣接する2つの磁性体流通部90ではなく、1つの磁性体流通部90のみが備わる構成であってもよい。
【0061】
この他、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。