【0010】
焙煎し、粉砕したコーヒー豆を準備し、ついで抽出溶媒を準備する。このコーヒー豆に、抽出溶媒を接触させて、コーヒー液を抽出する。抽出溶媒
は30〜100℃、好ましくは60〜100℃に加熱してもよく、常温で接触させてもよい。一般的に、抽出溶媒の温度は、90℃程度が良いとされているが、抽出溶媒の温度に影響されず、その効果を発揮する。
そのコーヒー豆の抽出方法としては、ウォータードリップ、ペーパードリップ、ネルドリップ、エスプレッソマシン等を用いた濾過法
・コーヒーサイフォン、バーコレータ等を用いた煮沸後濾過法
・トルココーヒーなどの煮沸法
・プランジャー、コーヒーバッグを用いた浸漬法等が挙げられ、特に限定されるものではない。
【0012】
抽出溶媒は、果糖縮合物を含有した水溶液からなる。果糖縮合物の含有量は特に限定されるものではない
が0.003重量%以上、特
に0.003〜1.5重量%とするのが好ましい。果糖縮合物の含有量が0.003重量%より少なくなると短期間でコーヒー液を抽出する場合その効果が小さい。0.015重量%より小さいとマスキング効果が若干弱い。果糖縮合物の含有量が
1.5重量%より多くしても抽出量は特に変わらなくなる。溶媒である水も飲料水であればよいが、特にミネラル水が好ましい。
果糖縮合物は、複数の
フルクトースを縮合させたものである。特に、フルクトース二分子からなる環状の二糖が好ましい。工業的にはイヌリン(フラクタン)をイヌリン分解酵素により発酵させた
等(DFAIII、DFAIV)、果糖を添加した水溶液を加熱し、果糖
どうしを縮合させたもの
等(DFAI、DFAII、DFAV)がある。しかし、果糖縮合物は他の製造方法によって製造されてもよい。二分子の
フルクトースには、誘導体が多く存在しているが、特
に限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
「果糖縮合物を含む水溶液の精製」
果糖水を100℃以上で加熱して煮詰め、出来上がった液体に水を加えて冷却する。その後、活性炭等で濾過して果糖縮合物が30重量%の水溶液(以下、試料水1とする)を精製した。
試料水1
を液体クロマトグラフィー分析した。その結果を
図1に示す。
試料水1には、大きなピークが3本と、小さなピークが幾つか見られた。つまり、試料水1は、2種類のDFA及びフラクトースを主成分とし、複数の果糖縮合物(DFAIII、DFAIV以外のDFA誘導体)が含まれていることがわかった。
DFAIII含有の試料水として、ファンケル社のツイントースを用いた試料水(以下、試料水2)を精製した。
【0017】
「試験1」
前述の試料水1
を用いて果糖縮合物が0.15重量%となる抽出水(以下「抽出水1」とする)を精製した。
焙煎し、粉砕したコーヒー豆(4g、6g)に100度まで熱した
抽出水1をかけて熱湯抽出した。このコーヒー液を実施例1、実施例2とする。また、水100mlで抽出したコーヒー液を比較例1とする。これら実施例1、2および比較例1のコーヒー液のカフェイン量(Ca量)およびポリフェノール量(PP量)は、液体クロマトグラフィーで測定し、その味を評価した。その結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
試験1から抽出水に果糖縮合物を添加して抽出したコーヒー液(実施例2)は、果糖縮合物を添加しないで抽出したコーヒー液(比較例1)に比べて、カフェインおよびポリフェノールを多く抽出できることがわかる。実施例1のようにコーヒー豆を4gとした場合でも、比較例1と同程度のカフェインおよびポリフェノールを抽出できた。これにより果糖縮合物を添加することにより、
少量のコーヒー豆で濃いコーヒー液が抽出できることがわかる。さらに、比較例1は、多少の渋みおよび酸味があった。実施例1、2では、果糖縮合物によりコーヒーの酸化が防止され、コーヒーのエグ味がマスキングされていることが推測される。
【0020】
「試験2」
試験1と同様にコーヒー豆(6g)に
100℃の試料水1を0.005〜5.0重量%添加した抽出水100mlを注いで抽出したコーヒー液中に含まれるカフェイン(Ca量)とポリフェノール量(PP量)を測定した結果を、その味の詳細と共に[表2]に示した。
【0021】
【表2】
【0022】
試験2から、果糖縮合物量が0.0015重量%以下の水で抽出したコーヒー液(実施例3)は、カフェインおよびポリフェノールの抽出量が比較例1と変わらなかった。つまり、果糖縮合物量を0.003重量%以上添加することによって、コーヒー液のカフェインおよびポリフェノールの抽出量が向上した。また、果糖縮合物量を0.09重量%以上添加した水で抽出したコーヒー液では、渋み・酸味が感じられなかった。
一方、果糖縮合物量が0.3重量%をピークにコーヒー液のカフェインおよびポリフェノールの抽出量が頭打ちとなった。また、果糖縮合物量が0.9重量%以上のコーヒー液は、渋みおよび酸味はないが、カラメル味が感じられるようになった。これは、試料水1を精製する際に残存した糖の影響であると考えられる。
【0023】
「試験3」
焙煎し、粉砕したコーヒー豆(6g)を、100mlの100℃に沸騰させた
抽出水1に投入した。その後、その状態で10分間煮出し、ドリップした。そのコーヒー液を実施例10とする。一方、同様の方法で、試料水1を入れない水100mlで煮出したコーヒー液を比較例2とする。それらのカフェインおよびポリフェノールの抽出量を測定し、その味を評価した。その結果を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
試験3から、実施例10は、渋み・酸味を伴わない濃厚な風味のあるコーヒーが得られた。一方、比較例2では、渋み・酸味が強くなった。これにより、果糖縮合物は、コーヒー液の酸化を防止し、か
つエグ味をマスキングしていることが推測される。また、実施例10では、カフェインおよびポリフェノールの抽出量が、試験1、2に比べて2倍近い値となった。
【0026】
「試験4」
焙煎し、粉砕したコーヒー豆(6g)に、100mlの100℃の
抽出水1を注ぎ、ドリップによりコーヒー液を抽出した。 その製品の液体クロマトグラフィー分析をしたところ、少なくとも2種類のDFAの存在が確認できた(
図2参照)。
【0027】
「試験5」
焙煎し、粉砕したコーヒー豆(6g)を、100mlの100℃の
抽出水1に投入し、コーヒー液(実施例11)を抽出した。その後、このコーヒー液が50℃で維持されるように加熱し、コーヒー液の経時的な味の変化を見た。一方、同様の方法で、熱湯水100mlで抽出したコーヒー液(比較例3)を50℃に保ち、その経時的な味の変化を見た。さらに、熱湯水100mlで抽出したコーヒー液に0.5重量%となるように試料水1を添加し、50℃に保ち、その経時的な味の変化を見た(比較例4)。なお、コーヒー液の加熱は開放状態で行い、酸化しやすい条件で行った。
【0028】
【表4】
【0029】
試験5から果糖縮合物を添加し抽出したコーヒー液(実施例11)を長時間加熱してもその風味は劣化せず、渋味・酸味・エグ味は強くならず、抽出直後のコーヒーの風味を保っていた。一方、熱湯水で抽出したコーヒー液(比較例3)は、加熱10分後においてすでに風味は劣化し、60分後はコーヒーの風味が消失し、飲食できない状態となった。これは主に酸化が原因であると考えられる。
さらに、熱湯水で抽出したコーヒー液に試料水1を添加したもの(比較例4)も、時間と共に渋味、エグ味、酸味が強くなり、味も風化した。
【0030】
「試験6」
それぞれ飲料水に炭酸ナトリウムを加えてpH8、pH9としたアルカリ水1、アルカリ水2を精製した。それぞれのアルカリ水1、2に、試料水1を0.5重量%となるように添加し、抽出水2、抽出水3を精製した。
焙煎し、粉砕したコーヒー豆(6g)に、100℃に熱したアルカリ水1、2及び抽出水2、3をかけてコーヒー液(比較例5、6、実施例12、13)を抽出した。その結果を表5に示す。
【0031】
【表5】
【0032】
試験6から果糖縮合物を備えた抽出水を若干アルカリ性にすることにより、コーヒー本来の苦味が無くなることを防止し、苦味のある風味の良いコーヒーを抽出することができた(実施例12
・13)。従来、コーヒーをアルカリ性の抽出水で抽出する場合、比較例5・6からも解るように、酸性成分であるコーヒーの苦味成分が酸・アルカリ反応で中和され、呈味力を消失させられていると考えられている。しかし、果糖縮合物を含ませることにより、その酸・アルカリ中和反応を停止させているものと考えられる。また、果糖縮合物により、アルカリ臭をマスキングしているためと考えられる。
従って、コーヒーの抽出水をpH8〜9に調整し、かつ、抽出水に果糖縮合物を加えることによって、あっさりしたコーヒーであるにも関わらず、しっかりしたコーヒー本来の苦味とうま味のあるコーヒー液を得ることができた。
【0033】
「試験7」
前述の試料水2を水で薄めた抽出水(以下抽出水4)を準備する。
焙煎し、粗く粉砕したコーヒー豆(5g)を、90度の
抽出水1を用いた果糖縮合物濃度0.12重量%の抽出水150ml(実施例14)及び同様のDFAIIIの溶媒(実施例15)に入れて、コーヒー液を抽出した。
さらに、焙煎し、粗く粉砕したコーヒー豆(5g)を、90度の果糖を0.5重量%添加した水150ml及び90℃の水150ml(無添加)に入れて、コーヒー液を抽出した(比較例7、8).その結果を表6及び
図3〜6のグラフに示す。
【0034】
【表6】
【0035】
実施例14
・15のコーヒーは、それぞれに味に差はあったが、ポリフェノール及びカフェイン量が増大し、渋味及び酸味が減少した。一方、果糖を添加して抽出した比較例7は、無添加の比較例8とポリフェノール及びカフェインの抽出量は変わらなかった。つまり、ポリフェノール及びカフェインの抽出に、果糖の関与は少なく、果糖縮合物によって抽出量が増大しているものと推測される。