(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、二進カウンタの最大値を増加させたり、サンプリング周波数を増加させたりすることなく、センサーの最大測定値を増加させることができる信号処理装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための本発明の一実施形態に係る信号処理装置は、物理量を累積または積分してM−ビットデジタル値で出力するセンサーから前記デジタル値を入力されて処理する信号処理装置であって、連続した二つのデータ獲得時間での前記物理量の差が予め定められた範囲内にあると、デジタルカウンタ増分の絶対値が2
M−1よりも大きい場合、前記デジタルカウンタ増分を前記センサーが測定した物理量で計算する信号処理部を含む。
【0006】
前記物理量の差の絶対値は、α×S×2
M−1/Δtよりも小さく、前記Sは、前記センサーのスケール因子であり、前記Δtは、前記センサーのデータ獲得周期であり、前記αは、1よりも小さい値を有することができる。
【0007】
前記信号処理部は、前記デジタルカウンタ増分ΔC
iが2
M−1よりも大きい場合、前記デジタルカウンタ増分から2
Mを引き、前記デジタルカウンタ増分が−2
M−1よりも小さい場合、前記デジタルカウンタ増分に2
Mを加えて前記デジタルカウンタ増分を1次補正し、時間t
i−1でデジタルカウンタ出力値がC
i−1であり、時間t
i=t
i−1+Δtでデジタルカウンタ出力値がC
iである時、前記ΔC
iは、ΔC
i=C
i−C
i−1で計算され得る。
【0008】
前記信号処理部は、ΔC
i′×ΔC
i−1″<0である場合、α×2
M−1<ΔC
i′<2
M−1であると、前記1次補正されたデジタルカウンタ増分から2
Mを引き、−2
M−1<ΔC
i′<−α×2
M−1であると、前記1次補正されたデジタルカウンタ増分に2
Mを加えて前記1次補正されたデジタルカウンタ増分を2次補正し、前記ΔC
i′は、時間t
iで前記1次補正されたデジタルカウンタ増分であり、前記ΔC
i−1″は、時間t
i−1で前記2次補正されたデジタルカウンタ増分であり得る。
【0009】
前記信号処理部が計算できる前記物理量の絶対値の最大の大きさは、(2−α)×S×2
M−1/Δtであり得る。
【0010】
本発明の他の実施形態に係る信号処理方法は、物理量を累積または積分してM−ビットデジタル値で出力するセンサーからの前記デジタル値を処理する信号処理方法であって、連続した二つのデータ獲得時間での前記物理量の差が予め定められた範囲内にあると、デジタルカウンタ増分の絶対値が2
M−1よりも大きい場合、前記デジタルカウンタ増分を前記センサーが測定した物理量で計算する段階を含む。
【0011】
前記計算段階は、前記デジタルカウンタ増分ΔC
iが2
M−1よりも大きい場合、前記デジタルカウンタ増分から2
Mを引き、前記デジタルカウンタ増分が−2
M−1よりも小さい場合、前記デジタルカウンタ増分に2
Mを加えて前記デジタルカウンタ増分を1次補正する段階を含み、時間t
i−1でデジタルカウンタ出力値がC
i−1であり、時間t
i=t
i−1+Δtでデジタルカウンタ出力値がC
iである時、前記ΔC
iは、ΔC
i=C
i−C
i−1で計算され得る。
【0012】
前記計算段階は、ΔC
i′×ΔC
i−1″<0である場合、α×2
M−1<ΔC
i′<2
M−1であると、前記1次補正されたデジタルカウンタ増分から2
Mを引き、−2
M−1<ΔC
i′<−α×2
M−1であると、前記1次補正されたデジタルカウンタ増分に2
Mを加えて前記1次補正されたデジタルカウンタ増分を2次補正する段階をさらに含み、前記ΔC
i′は、時間t
iで前記1次補正されたデジタルカウンタ増分であり、前記ΔC
i−1″は、時間t
i−1で前記2次補正されたデジタルカウンタ増分であり得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二進カウンタの最大値を増加させたり、サンプリング周波数を増加させたりすることなく、センサーの最大測定値の限界を拡張させることができ、そのため、センサーを用いた設計をより効率的且つ経済的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では本願の一部を構成する添付図面を参照する。文脈で別に指示しない限り、図面において類似する符号は一般に類似する構成要素を示す。詳細な説明、図面および特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定しようとする意図ではない。ここで提示された思想または範囲を逸脱しない範囲内で、他の実施形態が利用され、他の変更が行われ得る。本願の構成要素は、ここで一般に説明され、図面で示されているように、相異なる構成の幅広い多様性内での相異なる構成において、配列、置換、結合、設計が可能であり、これら全てが明確に考慮されており、本願の一部を構成するものであることが容易に理解され得る。
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る信号処理装置について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置を説明するためのブロック図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置が受信するセンサー出力値を示した概略図である。
【0018】
図1および
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る信号処理装置200は、センサー100の出力信号を伝達される入力部210と、伝達された信号を処理する信号処理部220とを含む。
【0019】
センサー100は、角度、加速度、角速度などの多様な種類の物理量を検出し測定する機能を備えた素子であって、物理量を累積または積分して二進カウンタ(binary counter)で表現されるデジタル値を出力する。このデジタル値は、物理量が変化すれば共に変化し、その大きさがデジタル値の最大値または最小値を越えるようになればロールオーバー(roll−over)する。
【0020】
入力部210は、センサー100からデジタル値を入力されて信号処理装置200内にデータを伝送し、信号処理装置200でデジタル値を処理することができるように適切な処理を行う。
【0021】
信号処理部220は、センサー100からのデジタル値を用いて測定しようとする物理量を算出する。便宜上、時間t
iでセンサーに印加される実際の物理量をω
iとし、信号処理部が計算する測定された物理量を
とする。例えば、センサー100がM−ビットの二進カウンタを有していると、センサー100は、最小値0と最大値2
M−1との間のデジタルカウンタ値を出力するようになる。
図2に示したように、t
i−1でデジタルカウンタ出力値がC
i−1であり、t
i=t
i−1+Δtでデジタルカウンタ出力値がC
iであると、Δtの間のデジタルカウンタ増分は、ΔC
i=C
i−C
i−1で計算され、t
iで測定された物理量の値(measured value)は、
で算出される。ここで、Sは、センサー100のスケール因子であり、Δtは、センサー100のデータ獲得周期である。
【0022】
図3は、センサー出力が正の方向にロールオーバーする時、本発明の一実施形態に係る信号処理装置の補正方法を説明するための概略図であり、
図4は、センサー出力が負の方向にロールオーバーする時、本発明の一実施形態に係る信号処理装置の補正方法を説明するための概略図である。
【0023】
図3に示したように、時間t
i−1でのセンサー100のデジタルカウンタ出力値C
i−1が最大値2
M−1以下である状態で正の物理量が印加されると、デジタルカウンタは増加して時計方向に回転するようになり、結局、最大値を越えるようになると、デジタルカウンタ出力は再び最小値0から増加する。この時、時間t
iでのデジタルカウンタ出力値C
iが再び最小値0から増加していずれかの値をとる場合、このような現象を正のロールオーバー(positive roll−over)という。この時、デジタルカウンタ増分をΔC
i=C
i−C
i−1で計算すれば、実際の物理量とは異なる値を有する。正のロールオーバーが起こった時、カウンタ値から正確な物理量を計算するためには、デジタルカウンタ増分をΔC
i=C
i−C
i−1+2
Mのように補正して計算しなければならない。
【0024】
また、
図4に示したように、時間t
i−1でのセンサー100のデジタルカウンタ出力値C
i−1が最小値0以上である状態で負の物理量が印加されると、デジタルカウンタは減少して反時計方向に回転するようになり、結局、最小値を越えるようになると、デジタルカウンタ出力は再び最大値2
M−1と大きくなってから、この値から再び減少するようになる。この時、時間t
iでのデジタルカウンタ出力値C
iが最大値2
M−1と大きくなってから減少していずれかの値をとる場合、このような現象を負のロールオーバー(negative roll−over)という。この時、デジタルカウンタ増分をΔC
i=C
i−C
i−1で計算すれば、実際の物理量とは異なる値を有する。負のロールオーバーが起こった時、カウンタ値から正確な物理量を計算するためには、デジタルカウンタ増分をΔC
i=C
i−C
i−1−2
Mのように補正して計算しなければならない。
【0025】
一方、
図5を参照すると、印加される物理量の大きさが漸次に大きくなってデジタルカウンタ増分が2
Mの半分になると、正の物理量により時計方向に増加したのか、あるいは負の物理量により反時計方向に減少したのか区分できなくなる。実際には、正の物理量が印加されたにもかかわらず反時計方向に回転したと誤って判断すれば、信号処理部220は、印加された物理量とは符号が反対である測定値を計算するようになり、このような現象をエイリアシング(Aliasing)という。エイリアシング現象が発生しないようにするためには、デジタルカウンタ増分ΔC
iが常時ΔC
max=2
M−1よりも小さくならなければならず、言い換えれば、センサーに印加される外部物理量がω
max=S×2
M−1/Δtよりも小さくならなければならない。
【0026】
結果として、センサーの最大測定領域を考慮したロールオーバー補正を次のとおり行えば、エイリアシング現象なしに正常的な値を計算することができる。
【0027】
(1)ΔC
i<−2
M−1である時、ΔC
i′=ΔC
i+2
Mに、
(2)ΔC
i>2
M−1である時、ΔC
i′=ΔC
i−2
Mに、
(3)(1)または(2)の条件に該当しない時、ΔC
i′=ΔC
iに補正する。
【0028】
この方法によって、信号処理部220は、印加された物理量を
のように計算することができる。前記(1)〜(3)の過程をデジタルカウンタ増分の1次補正とする時、この補正方法で計算できる物理量の絶対値は、ω
maxよりも小さく、これは次の[数1]のとおりである。
【0029】
【数1】
一方、センサー100が測定しようとする物理量の変化(連続した二つのデータ獲得時間での物理量の差)が一定の範囲内にある場合、センサー100の最大測定値を[数1]よりも大きく拡張させることができる。つまり、次の[数2]が常時満たされるα(0<α<1)が存在すると仮定する。
【0030】
【数2】
これは、センサーに印加される物理量の変化がセンサー100の最大測定値のα倍よりも常時小さいという仮定であり、言い換えれば、測定しようとする物理量が急激に変化しないことを意味する。デジタルカウンタ増分の1次補正のみを用いて測定物理量
を計算する場合には、印加される物理量の変化に何ら制約がないため、−ω
maxからω
maxまで、最大2ω
max=2S×2
M−1/Δtまで変化し得るが、[数2]を満たす物理量は、変化の大きさに制限があることを意味する。
【0031】
この場合、時間t
iで1次補正されたデジタルカウンタ増分ΔC
i′の符号が時間t
i−1で既に2次補正されたデジタルカウンタ増分ΔC
i−1″の符号と異なるようになる瞬間に、次のとおり時間t
iで1次補正されたデジタルカウンタ増分ΔC
i′に2次補正を行うことによって、センサー100の最大測定範囲を増加させることができる。ΔC
i′×ΔC
i−1″<0を満たす場合に限って、信号処理部220は1次補正されたデジタルカウンタ増分を、
(1)α×2
M−1<ΔC
i′<2
M−1である時、ΔC
i″=ΔC
i′−2
Mに、
(2)−2
M−1<ΔC
i′<−α×2
M−1である時、ΔC
i″=ΔC
i′+2
Mに、
(3)(1)または(2)の条件に該当しない場合、ΔC
i″=ΔC
i′に補正する。
【0032】
これをデジタルカウンタ増分の2次補正という。
【0033】
ΔC
i′×ΔC
i−1″<0が発生する場合は2種類がある。第一は、印加される物理量の大きさが漸次小さくなって、時間t
iにデジタルカウンタ増分の大きさが0を通ってその符号が変わる場合であり、第二は、印加される物理量の大きさが漸次大きくなって、デジタルカウンタ増分の大きさがΔC
max=2
M−1を越えてエイリアシング現象が発生する場合である。大きさが小さくなって符号が変わる場合には、符号が変わる状況をそのまま許容して、1次補正されたデジタルカウンタ増分を用いて物理量を算出しなければならない。しかし、大きさが漸次大きくなってエイリアシング現象が発生する瞬間には、実際に物理量の符号が変わってはならないため、デジタルカウンタ増分の1次補正値ΔC
i′の大きさがデジタルカウンタ増分の2次補正(1)、(2)の条件に該当する場合、変わった符号を還元させる2次補正を行う。
【0034】
図6は、このような場合の一例を示す。C
i−1は0であり、C
iが斜線領域内に存在する時、デジタルカウンタ増分の1次補正値ΔC
i′は、α×2
M−1<ΔC
i′<2
M−1範囲内に存在するようになる。もし、時間t
i−1での2次補正値ΔC
i−1″が正数であった場合、時間t
iでの2次補正値ΔC
i−1″は、そのままΔC
i′になるが、ΔC
i−1″が負数であった場合、時間t
iでの2次補正値ΔC
i−1″は、負数であるΔC
i′−2
Mに還元される。センサーに印加される物理量が[数2]の条件を満たせば、時間t
i−1での物理量が負数である場合(ΔC
i−1″が負数)、時間t
iでの物理量が急に正数に変わって斜線領域内に入ることはできないためである。したがって、時間t
iでの物理量がたとえ[数1]を越える量であっても、正の物理量が印加されたのか、または負の物理量が印加されたのか区別が可能であるため、エイリアシング現象なしに印加された物理量を正確に計算することができる。
【0035】
このように本発明の実施形態に係る信号処理装置によれば、連続した二つのデータ獲得時間での物理量の差に制限条件がある場合、最大測定値を拡張させることができる。増加する最大測定値は、次の[数3]のように表され得る。
【0036】
【数3】
例えばαが0.8である場合には、最大測定範囲を1.2倍向上させることができる。αは分析により決定され得る。つまり、多様な環境で測定対象の物理量が有し得る値を予測し、その変化率を算出して[数2]が満たされるαを求めることができる。
【0037】
このように本発明の実施形態に係る信号処理装置が、センサー100から入力される出力デジタル値を一定の条件下で補正することによって、信号処理部220が計算できる最大測定範囲を拡張させることができ、通常の測定範囲を越える物理量に対しても正確に該当物理量を算出することができる。
【0038】
以上で、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。