【実施例】
【0018】
DCDモノクローナル抗体の製造方法
1.抗原タンパクの作製
免疫抗原として、全長ヒトDCDのアミノ酸配列のうち63番目から81番目の配列(SSLLEKGLDGAKKAVGGLGKLG:配列表配列番号7)をもつペプチド(以下、DCDペプチド)を合成により作製し、それにキャリアプロテインとしてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を付加したタンパクを用いた。
KLHの付加は、上記DCDペプチドのC末端にシステインを付加して、マレイミド法を用いて行った。以上のKLH付加DCDペプチドの合成は、Sigma Aldrich社に依頼して行った。
【0019】
2.ハイブリドーマの作製
(1)免疫
上記1.で作製した抗原のPBS溶液(KLHを除くDCDペプチド濃度:3.0mg/ml)をアジュバンドであるTiterMax Gold(CytRx社製)とを等量混合し、W/Oミセルの状態でマウス(BALB/C、7週齢)の背部皮下に投与した(投与量:KLHを除くDCDペプチド量として150μg/マウス)。さらに同様にTiterMax Goldと混合した抗原を10〜14日間隔で2回追加免疫した。最後の追加免疫から2週間後、抗原をPBS溶液に等量混合して腹腔内注射し最終免疫を行った。最終免疫の3日後に脾臓細胞を摘出した。
なお、抗体価は、追加免疫の7日後、マウス眼下静脈叢から血液を採取し、下記の酵素免疫測定法にて血清中の抗体価を測定し、抗原に対する抗体が産生されていることを確認した。
【0020】
(2)抗体価の確認
抗体価はKLH付加DCDペプチドを固相とした酵素免疫測定法により確認した。まず、コーティングバッファー(炭酸―重炭酸緩衝液、pH10)を用い、KLH付加DCDペプチドを10μg/mlに希釈し、96穴EIA/RIAプレート(Costar社製、High Binding)に分注(50μL/ウェル)して4℃で一昼夜(約14時間)インキュベートすることにより物理吸着させた。プレートを0.1%Tween20含有PBS(以下、PBSTと略記する)で3回洗浄後、ブロッキング液(0.5%BSAを含むPBS)を100μL/ウェル加え、室温で2時間ブロッキングした。
【0021】
ブロッキング液除去後、1次抗体としてマウスから得られた血清(50μl/ウェル)のPBSによる段階希釈液を入れて、室温で2時間インキュベートした。プレートをPBSTで4回洗浄後、2次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスIg(G+M)ヤギポリクローナル抗体(Tago Products社製)を室温で1時間反応させた後、オルトフェニレンジアミン(Sigma社製)を含むペルオキシダーゼ基質溶液を加え発色させた。10分後、1.5N硫酸を加え発色を停止した後、マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定した。
本実施例において免疫したマウスでは、未感作のマウスから得た血清と比較して、吸光度の差が認められた。1000倍希釈した血清を用いて測定した吸光度は、未感作のマウスでは0.05以下であったが、免疫したマウスの血清は2.0であり、抗体価が上昇していることが確認された。この抗体価が十分上昇したマウスを抗体産生細胞の供給原として次の工程に用いた。
【0022】
(3)細胞融合、ハイブリドーマのスクリーニング
抗体価の十分高くなったマウスの脾臓から摘出した脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞(FO)(ATCC)とを5対1の割合で混合し、50%ポリエチレングリコール(分子量1400〜1600、Sigma社製)存在下にて細胞融合させた。
融合細胞は脾臓細胞として2×10
6/mLになるようにHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含むRPMI培地)に懸濁し、フィーダー細胞を播種しておいた96穴培養プレート(CORNING社製)に0.1mLずつ分注した。これを5%CO
2インキュベーター中で37℃にて培養し、おおよそ2週間後に、ハイブリドーマの生育してきたウェルの培養上清について、上記抗体価の測定で示した酵素免疫測定法において固相をKLH付加DCDペプチドおよびKLH、1次抗体を培養上清に置き換えた実験により、KLH付加DCDペプチドに反応し、KLHに反応しない抗体の産生が有望な株を選択した。DCDは立体構造をとらず、抗原認識性が悪いため、1,000クローンのスクリーニングでは目的のモノクローナル抗体が得られず、10,000クローンでスクリーニングを実施し、抗DCDモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを8種樹立した。8種のうち、5種はIgMクラスであり、3種がIgGクラスであった。このIgGクラスのハイブリドーマのうち抗原に対して顕著に反応性の高い抗体を産生する1株は、出願人によって独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に2011年6月23日に寄託手続がされ、受領番号(FERM
P−22134)が付与されている。以下、このハイブリドーマ6B−10株(FERM
P−22134)が産生する抗DCDモノクローナル抗体を6B−10抗体と示す。
【0023】
3.モノクローナル抗体の生産
ハイブリドーマ投与の2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた8週齢の雌BALB/Cマウスに、上記で得られたハイブリドーマを細胞数5×10
6個の量で腹腔内に投与した。ハイブリドーマ投与の約10日後に腹水を採取し、遠心処理して上清を得た。上清を等量の吸着用緩衝液(3mol/L NaCl−1.5mol/L Glycine−NaOH、pH8.5)と混和後、濾過した。この濾液を吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAカラム(ファルマシア社製)に通して抗体をカラムに吸着させた後、0.1mol/Lクエン酸緩衝液(pH3.0)でカラムより溶出させ、抗DCDモノクローナル抗体(6B−10抗体)を精製した。
【0024】
4.抗DCDモノクローナル抗体(6B−10抗体)の免疫グロブリンクラスおよびサブクラスの同定
上記3.で調製された6B−10抗体の免疫グロブリンクラスを、Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Test Kit(Serotec社製)を用いて確認した。
0.1%BSA含有PBSを用いて6B−10抗体を1.0μg/mlに希釈し、キット付属のチューブに加え、チューブ内の試薬を溶解させた。ただちにキット付属のストリップをチューブ内の溶解液に浸し、10分後、ストリップ上に現れるバンドの位置を観察し、免疫グロブリンクラスを判定した。その結果、6B−10抗体の免疫グロブリンクラスは、本発明において望まれるIgG2a)、κ軽鎖であることを確認した。
【0025】
以下、本発明によって得られた6B−10抗体と、従来技術として得られているIgGクラスの抗DCDマウスモノクローナル抗体(10C−3抗体(FERM P−21792))またはIgMクラスの抗DCDマウスモノクローナル抗体(G−81抗体)とを比較し、6B−10抗体の抗原認識特異性の確認等を行った。
【0026】
5.抗DCDモノクローナル抗体(6B−10抗体)の抗原認識特異性の確認
上記3.で調製された6B−10抗体の抗原認識の特異性を確認するため、ウェスタンブロット解析を行った。ウェスタンブロットの抗原として、大腸菌において組換え発現させた約16kDaのポリヒスチジン(以下、His−tagと略す)とDCDタンパク(Full−DCD;全長DCDのアミノ酸配列の20番目〜110番目をもつ)の融合タンパクを用いた。
組換え発現の手法は一般的な手法を用いた。すなわち、ヒト皮膚組織から抽出したトータルRNAにランダムプライマー(GEヘルスケアサイエンス社製)を用いた逆転写酵素反応を行い、cDNAを作製した。
得られたcDNAをTAクローニングによって市販のプラスミドベクターであるpGEM T Easy Vector(Promega社製)に挿入し安定化した。このDCD挿入pGEM T Easy Vectorを鋳型にして、ヒトDCDのcDNA配列からシグナルシークエンス領域を除いた配列(配列表配列番号1)をPCR法により増幅し、市販のプラスミドベクターであるpET28(Novagen社製)のマルチクローニングサイトに挿入することで、DCD/pET28プラスミドベクターを作製した。
このDCD/pET28プラスミドベクターを大腸菌(BL21(DE3)株)にトランスフォーメーションし、カナマイシン含有寒天培地上にコロニー形成させた。1個のコロニーを採取しカナマイシン含有培地中にて振とう培養し、対数増殖期にイソプロピル−β−チオガラクトピラノシドを添加することにより組換えタンパクの発現を誘導した。
遠沈した大腸菌をグアニジン塩酸塩含有トリス塩酸バッファーにより溶解した。溶解液を、Ni−NTAアガロース(QIAGEN社製)を用いて固定化金属アフィニティークロマトグラフィー法により精製した後、透析によりグアニジン濃度を徐々に下げて巻き戻しを行い、ポリヒスチジン融合タンパクを得た。ここで、目的物のHis−tag融合DCDに該当する約16kDaと異なる分子量のタンパクが少量混在していることが確認されたため、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、目的の分子量のバンドをゲルから切り出し、エレクトロエリューター(BioRad製)を用いてゲルからタンパクを溶出した。
得られたHis−tag融合DCDタンパクを還元条件下でSDS−PAGE展開後、PVDF膜に転写し、0.1%BSAを含むTBST(0.05%Tween20を含むTBS、pH7.4)で4℃にて一昼夜ブロッキング後、一次抗体として6B−10抗体(3.3mg/ml)の4000倍希釈液または10C−3抗体(3.1mg/ml)の4000倍希釈液、二次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG抗体(CAPPEL社製)を反応させた。PVDF膜をTBSTで洗浄後、NBT(ニトロブルーテトラゾリウムクロライド)およびBCIP(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェート)の混合液を基質として加え、発色させた。
その結果、6B−10抗体は、10C−3抗体と同様に、His−tag融合DCDタンパクと反応することが確認された(
図1)。なお、
図1において、レーンMは分子量マーカー、レーンAはHis−tag融合DCDタンパクのPVDF膜上におけるクーマシーブルー(CBB)染色結果を表し、レーンBは6B−10抗体、レーンCは10C−3抗体によるウェスタンブロット解析の結果を表す。
【0027】
6.抗DCDモノクローナル抗体(6B−10抗体)の認識エピトープの同定
上記3.で調製された6B−10抗体の認識エピトープを確認するため、DCDの分解された型(切断型)として汗中に存在することが知られているペプチド(非特許文献3)から下記表1に示したアミノ酸配列(配列表配列番号2〜6)からなる合成ペプチドを作製し(AnyGen社製)、これらを抗原とした酵素免疫測定法により6B−10抗体の反応性を確認した。
【0028】
【表1】
【0029】
酵素免疫測定法は、以下の方法により実施した。
まず、各合成ペプチドを―PBS(−)を用い100pmol/mlに希釈し、96穴EIA/RIAプレート(Costar社製、High Binding)に分注(50μL/ウェル)して室温で約18時間インキュベートすることにより物理吸着させた。
プレートを滅菌蒸留水で10回洗浄後、ブロッキング液(1%BSAを含むPBS)を100μL/ウェル加え、37℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング液除去し滅菌蒸留水で10回洗浄後、1次抗体として6B−10抗体(3.3mg/ml)の8000倍希釈液、10C−3抗体(3.1mg/ml)の8000倍希釈液またはG−81抗体(50μl/ウェル)を分注し、4℃で約18時間インキュベートした。
プレートを滅菌蒸留水で10回洗浄後、2次抗体として希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウスIg(G+M)ヤギポリクローナル抗体(Tago Products社製)を37℃で1時間反応させた後、オルトフェニレンジアミン(Sigma社製)を含むペルオキシダーゼ基質溶液を加え発色させた。10分後、1.5N硫酸を加え発色を停止した後、マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定した。
その結果、6B−10抗体、10C−3抗体およびG−81抗体の合成ペプチドに対する反応性は、表2に示す結果となった。すなわち、6B−10抗体の認識エピトープは10C−3抗体およびG−81抗体と異なること、および、6B−10抗体の認識エピトープとして必須の部位は、次に示すアミノ酸配列の範囲に存在することが明らかになった。
認識エピトープ範囲:LEKGLDGAKKAVGGLG(全長DCDのアミノ酸配列の66番目〜81番目)
また、6B−10抗体は、Full−DCD、DCD−1L(配列番号2)、SSL−46(配列番号3)、SSL−29(配列番号4)、SSL−25(配列番号5)、LEK−45(配列番号6)のペプチドと反応するモノクローナル抗体であった。
一方、10C−3抗体は、Full−DCD、DCD−1L(配列番号2)、SSL−46(配列番号3)、LEK−45(配列番号6)のペプチドと反応し、SSL−29(配列番号4)、SSL−25(配列番号5)のペプチドと反応しないモノクローナル抗体であった。
また、G−81抗体は、Full−DCD、DCD−1L(配列番号2)、SSL−46(配列番号3)、SSL−29(配列番号4)、LEK−45(配列番号6)のペプチドと反応し、SSL−25(配列番号5)のペプチドと反応しないモノクローナル抗体であった。
従って、6B−10抗体と10C−3抗体、G−81抗体は抗原認識性が異なるので、それらを併用することにより、DCDの各切断型の分布状況についての情報を得ることができる。すなわち、抗菌活性の個人差についての情報を得ることができる。
また、6B−10抗体と10C−3抗体、G−81抗体の認識エピトープが異なることから、いずれか2種以上を用いることにより、サンドイッチイムノアッセイ法に応用できる可能性がある。
【0030】
【表2】
【0031】
7.抗DCDモノクローナル抗体(6B−10抗体)の汗中DCDに対する反応性
上記3.で調製された6B−10抗体の生体試料中のDCDに対する反応性を、汗検体を用いたウェスタンブロット解析により確認した。
汗検体は、運動負荷によりヒト(n=6)の顔面および背中に発生した汗を回収して得られた。汗検体をスペクトラ/ポアCE透析用チューブ(MWCO:2000、フナコシ製)に入れ、超純水中で透析を行った後、その溶液の一部を、遠心乾燥機を用いて10倍濃縮した。濃縮および非濃縮サンプルを還元条件下でSDS−PAGE展開後、PVDF膜に転写し、0.1%BSAを含むTBST(0.05%Tween20を含むTBS、pH7.4)で4℃にて一昼夜ブロッキング後、一次抗体として6B−10抗体(3.3mg/ml)の4000倍希釈液、10C−3抗体(3.1mg/ml)の4000倍希釈液、G−81抗体の100倍希釈液または市販のヤギポリクローナル抗体であるA−20抗体の2000倍希釈液を用いて反応させ、二次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG抗体、マウスIgM抗体または抗ヤギIgG抗体(全てCAPPEL社製)をそれぞれ反応させた。
【0032】
PVDF膜をTBSTで洗浄後、NBT(ニトロブルーテトラゾリウムクロライド)およびBCIP(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェート)の混合液を基質として加え、発色させた。その結果、ポリクローナル抗体であるA−20抗体により示されたように、検体5を除く全ての検体において、DCDとして検出されうるバンドが存在するところ、モノクローナル抗体であるG−81抗体では全ての検体においてバンドが検出されず、6B−10抗体では、検体1、検体2、検体4、検体6において約5kDaのバンドを検出した(
図2)。10C−3抗体では、検体1、検体2、検体4、検体6において約5kDaのバンドを検出し、6B−10抗体と同様の結果を示した。
この結果から、6B−10抗体は、G−81では検出できないDCD、DCD複合体またはDCD結合タンパクを認識できることが明らかとなった。本実施例に用いた汗の検体においては、6B−10抗体と10C−3抗体の反応性に違いがみられなかった。
図2において、レーンMは分子量マーカーを表す。
【0033】
8.抗DCDモノクローナル抗体(6B−10抗体)を用いたDCDの定量方法
6B−10抗体を用いてDCDを定量的に検出できることを、合成ペプチドを抗原とした酵素免疫測定法により確認した。
酵素免疫測定法は、上記2.の抗体価の測定と同様の方法にて行った。
まず、純度95%以上の合成DCD−1L(AnyGen社製)をコーティングバッファー(炭酸―重炭酸緩衝液、pH10)を用いて0.04〜5.0μg/mlの濃度範囲において2段階希釈し、96穴EIA/RIAプレート(Costar社製、High Binding)に分注(50μL/ウェル)して、4℃で一昼夜(約14時間)インキュベートすることにより合成DCD−1Lをプレートに物理吸着させた。
プレートを0.1%Tween20含有PBS(以下、PBSTと略記する)で3回洗浄後、ブロッキング液(0.5%BSAを含むPBS)を100μL/ウェル加え、室温で2時間ブロッキングした。ブロッキング液除去後、1次抗体として6B−10抗体(3.3mg/ml)の8000倍希釈液(50μl/ウェル)を分注し、室温で2時間インキュベートした。
プレートをPBSTで4回洗浄後、2次抗体として希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウスIg(G+M)ヤギポリクローナル抗体(Tago Products社製)を室温で1時間反応させた後、オルトフェニレンジアミン(Sigma社製)を含むペルオキシダーゼ基質溶液を加え発色させた。10分後、1.5N硫酸を加え発色を停止した後、マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定した。
得られた吸光度を合成DCD−1L濃度に対してプロットした結果、0.04〜1.25μg/mlの濃度範囲において、直線性が得られることを確認した(
図3)。よって、酵素免疫測定法により、本発明の抗体を用いてDCD含有検体中のDCD量を定量できることが確認された。
【0034】
9.抗DCDモノクローナル抗体(6B−10抗体)を用いた汗に含まれるDCDの定量(10C−3抗体との比較)
6B−10抗体を用いることにより、汗に含まれるDCD分解ペプチドを、10C−3抗体よりも大きな検出量で検出できることを、酵素免疫測定法により確認した。
酵素免疫測定法は、上記8.の測定方法と同様の方法にて行った。
汗検体は、成人40人に対する運動負荷によりヒトの顔面および背中に発生した汗を回収して得られた。汗検体をPhosphate buffered saline(PBS(−)、pH7.0)を用いて100倍希釈し、96穴EIA/RIAプレート(Costar社製、High Binding)に分注(50μL/ウェル)して、4℃で一昼夜(約14時間)インキュベートすることにより汗に含まれるタンパクおよびペプチド
をプレートに物理吸着させた。
プレートを0.1%Tween20含有PBS(以下、PBSTと略記する)で3回洗浄後、ブロッキング液(0.5%BSAを含むPBS)を100μL/ウェル加え、室温で2時間ブロッキングした。ブロッキング液除去後、1次抗体として6B−10抗体(3.3mg/ml)の8000倍希釈液または10C−3抗体(3.1mg/ml)の8000倍希釈液を50μl/ウェル分注し、室温で2時間インキュベートした。
プレートをPBSTで4回洗浄後、2次抗体として希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウスIg(G+M)ヤギポリクローナル抗体(Tago Products社製)を室温で1時間反応させた後、オルトフェニレンジアミン(Sigma社製)を含むペルオキシダーゼ基質溶液を加え発色させた。10分後、1.5N硫酸を加え発色を停止した後、マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定した。適当な濃度に調製した純度95%以上の合成DCD−1L(AnyGen社製)を用いて検量線を作成し、吸光度から汗に含まれるDCD濃度を計算した。
その結果、検査を実施した汗検体40検体すべてにおいて、6B−10抗体により定量した汗中DCDの検出量が10C−3抗体による検出量よりも大きいことを確認した(
図4)。本実施例により、6B−10抗体は10C−3抗体よりも、汗に含まれるDCD分解ペプチドの検出量が大きいことが示された。
本発明の6B−10抗体は全てのDCD由来の分解ペプチドの共通配列を認識することから、全DCDペプチド量を正確に定量することができ、公知の10C−3抗体では検出できない分解ペプチドを検出することができるようになった。また、
図4の両棒グラフの差から、10C−3抗体よりも6B−10抗体の方が検出できる分解ペプチドの量がはるかに大きいことを示している。また、これらの2種類の抗体を用いて検出を行えば、6B−10抗体により汗中のDCD分解ペプチドの全量が測定され、10C−3抗体によりDCDペプチドのうちのある群(全長DCDの92番目〜108番目のアミノ酸配列を持つペプチド群、例えば配列番号2、3、6)が測定されることから、配列番号2,3,6のペプチド群とそれ以外のペプチド群(例えば配列番号4,5)の比率などを算出することも可能となる。