【実施例】
【0039】
本発明を以下の製造例、実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例および実施例により限定されるものではない。
製造例の各工程において得られた化合物を、以下の機器および条件で分析して同定し、またそれらの物性を評価した。
【0040】
(NMR)
核磁気共鳴スペクトル装置(ブルカーバイオスピン株式会社(Bruker BioSpin K.K.)製、型式:AV−300N)を用いて、中間化合物を含む製造例で得られた化合物を測定した。
溶媒として重クロロホルム、基準物質としてテトラメチルシランを用いた。
【0041】
(マススペクトル)
質量分析装置(日本電子株式会社製、型式:JMS−700/700S)を用いて、中間化合物を含む製造例で得られた化合物を測定した。
3-ニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いて、FAB+によりイオン化させて測定した。
【0042】
(製造例1)
一般式(I)におけるXがSであり、ZがFであり、かつRおよびR’がイソプロピル基であるジアリールエテン化合物(DE(O2)-iPr)を製造した。
【0043】
2-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)チオフェンの合成
【化5】
【0044】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコにチオフェン 9.3 g (110 mmol) とエーテル 100 mL を加えた。0 ℃に冷却し、n-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6 mol/L) 83 mL (130 mmol)をゆっくり滴下した。その後、1 時間還流し、0 ℃に冷却し、無水アセトン 9.8 mL (130 mmol) を滴下し、室温で 1 時間撹拌した。その後、水を入れ、希塩酸で酸性にして、エーテルで抽出を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 3)で精製を行った。
【0045】
収量: 11 g (77 mmol)
収率: 70 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 1.67 (s, 6H), 2.06 (s, 1H), 6.92-6.98 (m, 2H), 7.19 (dd, J = 4.7, 1.5 Hz, 1H)
【0046】
2-イソプロピルチオフェンの合成
【化6】
【0047】
アルゴン雰囲気下でフラスコに塩化アルミニウム 36 g (270 mmol)を入れ、氷冷しながら、無水エーテル 80 mL をゆっくり滴下した。水素化リチウムアルミニウム 5.0 g (130 mmol) を加え、2-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)チオフェン 11 g (77 mmol)の無水エーテル (100 mL) 溶液をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、20 wt %の希硫酸で処理した。エーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、減圧蒸留 (55 (C/3.9 kPa)で精製を行った。
【0048】
収量: 2.2 g (17 mmol)
収率: 23 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 1.34 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 3.19 (sept, J = 6.9 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 6.92 (dd, J = 5.1, 3.6 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 5.1 Hz, 1H)
【0049】
3,5-ジブロモ-2-イソプロピルチオフェンの合成
【化7】
【0050】
フラスコに酢酸 15 mL、水 1 mL、2-イソプロピルチオフェン 2.2 g (17 mmol) を入れ、氷冷しながら 臭素 6.0 g (38 mmol) をゆっくり滴下した。その後、水浴で終夜攪拌した。 その後、 水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルで抽出した。チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で精製を行った。
【0051】
収量: 3.0 g (11 mmol)
収率: 61 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 1.27 (d, J = 6.8 Hz, 6H), 3.30 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 6.85 (s, 1H)
【0052】
3-ブロモ-2-イソプロピル-5-フェニルチオフェンの合成
【化8】
【0053】
アルゴン雰囲気にした四つ口フラスコに 3,5-ジブロモ-2-イソプロピルチオフェン 1.1 g (3.9 mmol) を無水 THF 20 mL に入れ -78℃で 1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 2.6 mL (4.2 mmol)をゆっくり滴下した。1 時間攪拌した後、ホウ酸トリ-n-ブチル 2.2 mL (8.0 mmol) を滴下し攪拌した。1 時間攪拌した後、水でクエンチして反応を止め、20 wt% 炭酸ナトリウム水溶液 7 mL、Pd(PPh
3)
4 84 mg (0.074 mmol)、ヨードベンゼン 0.75 g (3.7 mmol) を入れ 9 時間加熱還流した。その後、希塩酸で中和しエーテルで抽出し硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトマトフィー (溶離液: ヘキサン)で分離精製を行った。
【0054】
収量: 730 mg (2.6 mmol)
収率: 67 %
1H NMR (CDCl
3, TMS): δ = 1.33 (d, J = 6.8 Hz, 6H), 3.34 (sept, J = 6.8 Hz, 3H), 7.10 (s, 1H), 7.20-7.55 (m, 5H)
【0055】
DE-iPrの合成
【化9】
【0056】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコに3-ブロモ-2-イソプロピル-5-フェニルチオフェン 730 mg (2.6 mmol)と無水THF 11 mL を加え、-78 (C で1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 1.9 mL (3.0 mmol)をゆっくり滴下し、1 時間攪拌した。その後、ペルフルオロシクロペンテン 0.17 mL (1.3 mmol)をゆっくり滴下し、2 時間攪拌した。その後、室温に戻してクエンチし、希塩酸を用いて中和し、エーテルで抽出、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で分離、精製を行った。
【0057】
収量: 410 mg (0.71 mmol)
収率: 55%
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 0.95 (d, J = 6.8 Hz, 12H), 2.80 (sept, J = 6.8 Hz, 2H), 7.18 (s, 2H), 7.25-7.57 (m, 10H)
【0058】
DE(O2)-iPrの合成
【化10】
【0059】
ジクロロメタン 8 mL、DE-iPr 0.20 g (0.35 mmol)を入れたフラスコに、m-クロロ過安息香酸 (純度 ca. 70%、含水) 0.20 g (0.79 mmol)を加え 3 日間攪拌した。その後、中和し、ジクロロメタンで抽出を行った。飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 85 : 15)で分離、精製を行った。
【0060】
収量: 140 mg (0.23 mmol)
収率: 66 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 1.13 (d, J = 7.0 Hz, 6H), 1.25 (d, J = 6.8 Hz, 6H), 2.79 (sept, J = 7.0 Hz, 1H), 2.88 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 6.79 (s, 1H), 7.15 (s, 1H), 7.28-7.70 (m, 10H)
FAB-MS: 609.1332 (MH
+). Calculated for C
31H
27F
6S
2: 609.1357.
【0061】
(製造例2)
一般式(I)におけるXがSであり、ZがFであり、かつRおよびR’がsec-ブチル基であるジアリールエテン化合物(DE(O2)-sBu)を製造した。
【0062】
2-(2-ヒドロキシ-2-ブチル)チオフェンの合成
【化11】
【0063】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコにチオフェン 17 g (200 mmol) とエーテル 180 mL を加えた。0 ℃に冷却し、n-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6 mol/L) 150 mL (240 mmol)をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、0 ℃に冷却し、メチルエチルケトン 22 mL (240 mmol) を滴下し、室温で 1 時間撹拌した。その後、水を入れ、希塩酸で酸性にして、エーテルで抽出を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 3)で精製を行った。
【0064】
収量: 20 g (130 mmol)
収率: 63 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 0.89 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.61 (s, 3H), 1.89 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 2.00 (s, 1H), 6.85 (dd, J = 3.6, 1.2 Hz, 1H), 6.89 (dd, J = 5.0, 3.6 Hz, 1H), 7.14 (dd, J = 5.0, 1.2 Hz, 1H)
【0065】
2-sec-ブチルチオフェンの合成
【化12】
【0066】
アルゴン雰囲気下でフラスコに塩化アルミニウム 26 g (190 mmol)を入れ、氷冷しながら、無水エーテル 70 mL をゆっくり滴下した。水素化リチウムアルミニウム 3.6 g (94 mmol) を加え、2-(2-ヒドロキシ-2-ブチル)チオフェン 7.8 g (50 mmol)の無水エーテル (70 mL) 溶液をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、20 wt %の希硫酸で処理した。エーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、減圧蒸留 (58 (C/2.7 kPa)で精製を行った。
【0067】
収量: 1.7 g (12 mmol)
収率: 25 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 0.88 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.30 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.57-1.70 (m, 2H), 2.84-2.98 (m, 1H), 6.71 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 5.1, 3.5 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 5.1 Hz, 1H)
【0068】
3,5-ジブロモ-2-sec-ブチルチオフェンの合成
【化13】
【0069】
フラスコに酢酸 11 mL、水 1 mL、2-sec-ブトキシチオフェン 1.7 g (12 mmol) を入れ、氷冷しながら 臭素 1.36 g (26 mmol) をゆっくり滴下した。その後、水浴で終夜攪拌した。 その後、 水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルで抽出した。チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で精製を行った。
【0070】
収量: 2.9 g (9.7 mmol)
収率: 80 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 0.90 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.24 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.54-1.66 (m, 2H), 3.00-3.14 (m, 1H), 6.78 (s, 1H)
【0071】
3-ブロモ-2-sec-ブチル-5-フェニルチオフェンの合成
【化14】
【0072】
アルゴン雰囲気にした四つ口フラスコに 3,5-ジブロモ-2-sec-ブチルチオフェン 1.6 g (5.4 mmol) を無水 THF 30 mL に入れ -78℃で 1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 3.7 mL (5.9 mmol)をゆっくり滴下した。1 時間攪拌した後、ホウ酸トリ-n-ブチル 2.2 mL (8.0 mmol) を滴下し攪拌した。1 時間攪拌した後、水でクエンチして反応を止め、20 wt% 炭酸ナトリウム水溶液 10 mL、Pd (PPh
3)
4 120 mg (0.11 mmol)、ヨードベンゼン 1.1 g (5.4 mmol) を入れ 10 時間加熱還流した。その後、希塩酸で中和しエーテルで抽出し硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトマトフィー (溶離液: ヘキサン)で分離精製を行った。
【0073】
収量: 840 mg (2.8 mmol)
収率: 52 %
1H NMR (CDCl
3, TMS): δ = 0.93 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.30 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.60-1.72 (m, 2H), 3.03-3.17 (m, 1H), 7.01 (s, 1H), 7.16-7.47 (m, 5H)
【0074】
DE-sBuの合成
【化15】
【0075】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコに3-ブロモ-2-sec-ブチル-5-フェニルチオフェン 700 mg (2.4 mmol)と無水THF 10 mL を加え、-78 (C で1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 1.7 mL (2.7 mmol)をゆっくり滴下し、1 時間攪拌した。その後、ペルフルオロシクロペンテン 0.16 mL (1.2 mmol)をゆっくり滴下し、2 時間攪拌した。その後、室温に戻してクエンチし、希塩酸を用いて中和し、エーテルで抽出、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で分離、精製を行った。
【0076】
収量: 420 mg (0.69 mmol)
収率: 58%
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 0.55-0.70 (m, 6H), 0.70-0.90 (m, 6H), 1.10-1.55 (m, 4H), 2.38-2.58 (m, 2H), 7.15 (s, 2H), 7.18-7.53 (m, 10H)
【0077】
DE(O2)-sBuの合成
【化16】
【0078】
ジクロロメタン 7 mL、DE-sBu 0.20 g (0.33 mmol)を入れたフラスコに、m-クロロ過安息香酸 (純度 ca. 70%、含水) 0.18 g (0.73 mmol)を加え 8 日間攪拌した。その後、中和し、ジクロロメタンで抽出を行った。飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 9 : 1)で分離、精製を行った。
【0079】
収量: 90 mg (0.14 mmol)
収率: 42 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 0.50-1.95 (m, 16H), 2.33-2.63 (m, 2H), 6.75-7.75 (m, 12H)
【0080】
(製造例3)
一般式(I)におけるXがSであり、ZがFであり、かつRおよびR’がシクロヘキシル基であるジアリールエテン化合物(DE(O2)-cHx)を製造した。
【0081】
2-(1-ヒドロキシ-1-シクロヘキシル)チオフェンの合成
【化17】
【0082】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコにチオフェン 6.7 g (80 mmol) とエーテル 75 mL を加えた。0 ℃に冷却し、n-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6 mol/L) 59 mL (94 mmol)をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、0 ℃に冷却し、シクロヘキサノン 10 mL (97 mmol) を滴下し、室温で 1 時間撹拌した。その後、水を入れ、希塩酸で酸性にして、エーテルで抽出を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 3)で精製を行った。
【0083】
収量: 14 g (77 mmol)
収率: 96 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 1.2-2.0 (m, 10H), 2.04 (s, 1H), 6.95 (dd, J = 4.8, 3.6 Hz, 1H), 6.98 (dd, J = 3.6, 1.4 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 4.8, 1.4 Hz, 1H)
【0084】
2-シクロヘキシルチオフェンの合成
【化18】
【0085】
アルゴン雰囲気下でフラスコに塩化アルミニウム 41 g (310 mmol)を入れ、氷冷しながら、無水エーテル 90 mL をゆっくり滴下した。水素化リチウムアルミニウム 5.7 g (0.15 mol) を加え、2-(1-ヒドロキシ-1-シクロヘキシル)チオフェン 14 g (77 mmol)の無水エーテル (110 mL) 溶液をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、20 wt %の希硫酸で処理した。エーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。
【0086】
収量: 11 g (66 mmol)
収率: 86 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 1.0-2.2 (m, 10H), 2.7-2.9 (m, 1H), 6.80 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 6.92 (dd, J = 5.1, 3.4 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 5.1 Hz, 1H)
【0087】
3,5-ジブロモ-2-シクロヘキシルチオフェンの合成
【化19】
【0088】
フラスコに酢酸 62 mL、水 4 mL、2-シクロヘキシルチオフェン 11 g (0.066 mol) を入れ、氷冷しながら 臭素 7.6 mL (24g; 0.15 mol) をゆっくり滴下した。その後、水浴で終夜攪拌した。 その後、 水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルで抽出した。チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で精製を行った。
収量: 14 g (0.043 mol)
収率: 65 %
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 1.0-2.0 (m, 10H), 2.8-3.0 (m, 1H), 6.85 (s, 1H)
【0089】
3-ブロモ-2-シクロヘキシル-5-フェニルチオフェンの合成
【化20】
【0090】
アルゴン雰囲気にした四つ口フラスコに 3,5-ジブロモ-2-シクロヘキシルチオフェン 14 g (0.043 mol) を無水 THF 60 mL に入れ -78℃で 1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 30 mL (0.048 mol)をゆっくり滴下した。1 時間攪拌した後、ホウ酸トリ-n-ブチル 13 mL (0.048 mol) を滴下し攪拌した。1 時間攪拌した後、水でクエンチして反応を止め、20 wt% 炭酸ナトリウム水溶液 35 mL、Pd (PPh
3)
4 180 mg (0.17 mmol)、ヨードベンゼン 5.6 mL (10 g; 0.049 mol) を入れ 10 時間加熱還流した。その後、希塩酸で中和しエーテルで抽出し硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトマトフィー (溶離液: ヘキサン)で分離精製を行った。
【0091】
収量: 4.6 g (0.014 mol)
収率: 33 %
1H NMR (CDCl
3, TMS): δ = 1.1-2.1 (m, 10H), 2.87-3.05 (m, 1H), 7.11 (s, 1H), 7.2-7.6 (m, 5H)
【0092】
DE-cHの合成
【化21】
【0093】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコに3-ブロモ-2-シクロヘキシル-5-フェニルチオフェン 4.6 g (14 mmol)と無水THF 65 mL を加え、-78 (C で1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 11 mL (17 mmol)をゆっくり滴下し、1 時間攪拌した。その後、ペルフルオロシクロペンテン 0.95 mL (7.3 mmol)をゆっくり滴下し、2 時間攪拌した。その後、室温に戻してクエンチし、希塩酸を用いて中和し、エーテルで抽出、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で分離、精製を行った。
【0094】
収量: 600 mg (0.91 mmol)
収率: 6.4%
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 0.9-1.7 (m, 20H), 2.3-2.5 (m, 2H), 7.23 (s, 2H), 7.25-7.60 (m, 10H)
【0095】
DE(O2)-cHxの合成
【化22】
【0096】
ジクロロメタン 10 mL、DE-cH 0.24 g (0.37 mmol)を入れたフラスコに、m-クロロ過安息香酸 (純度 ca. 70%、含水) 0.46 g (1.86 mmol)を加え 8 日間攪拌した。その後、中和し、ジクロロメタンで抽出を行った。飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 9 : 1)で分離、精製を行った。
【0097】
収量: 51 mg (0.074 mmol)
収率: 20%
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, TMS): δ = 0.8-2.2 (m, 20H), 2.3-2.6 (m, 2H), 6.7-7.8(m, 12H)
【0098】
(実施例1)
製造例で得られたジアリールエテン化合物および比較化合物をそれぞれ5 mgとポリスチレン50 mgとをトルエン10 mLに溶解させた。得られた溶液をシャーレに移し、ろ紙に浸漬し、室温で2時間乾燥させた。
得られたろ紙の塗膜部分に、紫外線ランプ(アズワン株式会社製、型式:SLUV−4)を用いて、紫外光(波長365nm)を10秒間照射し、蛍光灯の可視光下(紫外線カット)、30℃で2日放置し、経時的に塗膜部分の色の変化を観察した。
製造例2のジアリールエテン化合物(DE(O2)-sBu)の場合、紫外光照射により、ろ紙の塗膜部分が紫色に着色し、その着色は蛍光灯の可視光下で安定であったが、2日後にはほぼ無色になった。
【0099】
(実施例2)
下記の一般式(II)表される化合物について、温度センサーへの応用の可能性を検討した。
一般式(II)で表される化合物のトルエン溶液を石英セルに入れ熔封した後、紫外線を照射して、その着色を確認後、100℃で放置して、経時的にセル中の色の変化を観察し、一部の試料については、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式:V−560)を用いて、吸収スペクトルを測定した。
【0100】
【化23】
【0101】
表2「ジアリールエテン閉環異性体の熱安定性」に示すように、Y = SO
2, R =
iPrおよび s-Buの2種類の化合物のみ、本発明の所望の機能を示した。
すなわち、これら2種類の化合物は、紫外光照射で紫色に着色し、着色状態は光によって安定で、100 ℃において半減期10分(R =
iPr)、1.2分(R = s-Bu)で退色し、退色した状態も光に安定である。なお、着色状態はY = Sの化合物に比べて、100倍の光安定性を有し、可視光下で極めて安定である。これら2種類の化合物の反応は不可逆であり、温度センサーとしては一度しか使うことができず、元に戻すことはできない。なお、Rの置換基が1級のアルキル基の場合には、このような現象は起こらない。
【0102】
ここで、「半減期」とは、相当する物質が半分の量に達するのに要する時間を意味し、着色状態の可視域の吸収極大波長における吸光度変化から決定することができる。
【0103】
【表2】
【0104】
(実施例3)
Y = SO
2, R =
iPrおよび s-Buの2種類の化合物について、放置温度をそれぞれ30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃および90℃とすること以外は実施例2と同様にして、半減期を測定した。得られた結果を表3に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
図2は、ジアリールエテン化合物の開環体と閉環体との吸収スペクトルを示す図である。
Y = SO
2, R = s-Buの化合物では、開環体で282 nm、閉環体で555 nmに吸収スペクトルのピークを有することがわかる。
【0107】
図3は、ジアリールエテン化合物の開環体と閉環体の吸収波長、モル吸光係数および反応量子収率を示す図である。
【0108】
図4は、ジアリールエテン化合物の閉環体の熱安定性を示す図である。
すなわち、Y = SO
2, R =
iPrの化合物の閉環体における60℃、70℃、80℃および90℃の熱安定性、Y = SO
2, R =
iPrおよび s-Buの化合物の閉環体における50℃、60℃および70℃の熱安定性を示す図である。これらの図によれば、加温により熱退色が進行されることがわかる。