(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920812
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ターボ機械翼において運転中に発生する機械的な振動に対して影響を及ぼす方法、該方法を実施するためのターボ機械翼、及び該ターボ機械翼に組み付けるための圧電式の減衰部材
(51)【国際特許分類】
F01D 5/16 20060101AFI20160428BHJP
F01D 25/06 20060101ALI20160428BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20160428BHJP
F03D 80/00 20160101ALI20160428BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20160428BHJP
H01L 41/187 20060101ALI20160428BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20160428BHJP
H01L 41/08 20060101ALI20160428BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
F01D5/16
F01D25/06
F01D25/00 C
F03D11/00 A
F04D29/66 M
H01L41/18 101B
H01L41/08 C
H01L41/08 Z
F16F15/02 Z
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-255808(P2011-255808)
(22)【出願日】2011年11月24日
(65)【公開番号】特開2012-112383(P2012-112383A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】01966/10
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスラフ レシェク シュヴェドヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング カピス
(72)【発明者】
【氏名】ラース パニング
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン マーク シュヴァーツェンダール
(72)【発明者】
【氏名】マークス ノイバウアー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホール
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ヴァラシェク
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−247605(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01422440(EP,A1)
【文献】
特開2004−257311(JP,A)
【文献】
米国特許第7360996(US,B2)
【文献】
特開平8−61295(JP,A)
【文献】
特開2003−138904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/16
F01D 25/00
F01D 25/06
F03D 80/00
F04D 29/66
F16F 15/02
H01L 41/08
H01L 41/09
H01L 41/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械翼、特にタービン翼(10,26,29)において運転中に発生する機械的な振動に対して影響を及ぼす、特に機械的な振動を減衰又は抑制する方法であって、前記ターボ機械翼(10,26,29)の機械的な振動エネルギをまず電気的なエネルギに変換し、生じた電気的なエネルギを次に損失熱に変換し、機械的な振動エネルギを電気的なエネルギに変換するために圧電効果を利用し、少なくとも1つの圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)を堅固に減衰したいターボ機械翼(10,26,29)に組み付け、該圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)を前記ターボ機械翼(10,26,29)の機械的な振動により変形させ、電圧を生じさせ、生じた電圧により、接続された電気的な回路網(21)内においてオーム損失熱を発生させる、ターボ機械翼において運転中に発生する機械的な振動に対して影響を及ぼす方法において、前記圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)を前記ターボ機械翼(10,26,29)に組み付けるために中空室(25,33)を設け、前記圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)を前記中空室(25,33)内に装入し、該中空室(25,33)において前記ターボ機械翼(10,26,29)に特に素材結合又は機械固定により堅固に連結することを特徴とする、ターボ機械翼において運転中に発生する機械的な振動に対して影響を及ぼす方法。
【請求項2】
前記電気的な回路網が分路(21)としてインダクタンス(L)及びオーム抵抗(R)からなる直列回路を備え、かつ前記圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)がキャパシタンス(Cp)の形態で電極(24)間に配置される圧電体(22,23)を備えるようにし、結果として生じる振動回路の共振周波数をターボ機械翼(10,26,29)の減衰したい機械的な振動に合わせて調整する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)内の電気的な振動を測定し、かつ前記ターボ機械翼(10,26,29)内の機械的な振動を測定及び監視するために評価する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法を実施するためのターボ機械翼、特にタービン翼(10,26,29)であって、前記ターボ機械翼(10,26,29)内に少なくとも1つの圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)が堅固に組み付けられているターボ機械翼において、該ターボ機械翼(10,26,29)内に中空室(25,33)が形成されており、該中空室(25,33)内に、少なくとも1つの圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)が格納されていることを特徴とする、ターボ機械翼。
【請求項5】
前記少なくとも1つの圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)が、電気的な回路網(21)に接続されて、特にオーム抵抗(R)を含む分路(21)により電気的に減衰されている圧電素子(22,23,24)として形成されている、請求項4記載のターボ機械翼。
【請求項6】
前記電気的な回路網又は前記分路(21)が、オーム抵抗(R)及びインダクタンス(L)からなる直列回路を備える、請求項5記載のターボ機械翼。
【請求項7】
前記電気的な回路網又は前記分路(21)が、コイル(27)を備える、請求項5又は6記載のターボ機械翼。
【請求項8】
前記圧電素子(22,23,24)が、圧電体(22,23)及び電極(24)からなるスタックを備える、請求項5から7までのいずれか1項記載のターボ機械翼。
【請求項9】
前記少なくとも1つの圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)が、固有のハウジング(28;28a,b)により包囲されている、請求項4から8までのいずれか1項記載のターボ機械翼。
【請求項10】
前記ハウジング(28)が、上側の部分ハウジング(28a)及び下側の部分ハウジング(28b)から構成されている、請求項9記載のターボ機械翼。
【請求項11】
前記少なくとも1つの圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)が、前記ターボ機械翼(10,26,29)に特に素材結合又は機械固定により堅固に連結されている、請求項4から10までのいずれか1項記載のターボ機械翼。
【請求項12】
前記ターボ機械翼(10,26,29)にわたって分配されて、複数の圧電式の減衰部材(SPE1,SPE2)が、前記ターボ機械翼(10,26,29)に配置されている、請求項4から11までのいずれか1項記載のターボ機械翼。
【請求項13】
前記少なくとも1つの圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)が無線で、該圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)において生じる信号を受信及び評価するための測定装置(34)に接続されている、請求項4から12までのいずれか1項記載のターボ機械翼。
【請求項14】
前記圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)が、電気的な回路網(21)に接続されて、特にオーム抵抗(R)を含む分路(21)により電気的に減衰されている圧電素子(22,23,24)として形成されている、請求項4から13までのいずれか1項記載のターボ機械翼。
【請求項15】
前記圧電素子(22,23,24)が、圧電体(22,23)及び電極(24)からなるスタックを備える、請求項14記載のターボ機械翼。
【請求項16】
前記電気的な回路網又は前記分路(21)が、オーム抵抗(R)及びインダクタンス(L)からなる直列回路を備える、請求項14又は15記載のターボ機械翼。
【請求項17】
前記電気的な回路網又は前記分路(21)が、コイル(27)を備える、請求項16記載のターボ機械翼。
【請求項18】
前記圧電式の減衰部材(SPE,SPE1,SPE2)が、ハウジング(28;28a,b)により包囲されており、該ハウジング(28)が、有利には上側の部分ハウジング(28a)及び下側の部分ハウジング(28b)から構成されている、請求項14から17までのいずれか1項記載のターボ機械翼。
【請求項19】
前記電気的な回路網に、時間的に可変の抵抗が設けられている、請求項14から18までのいずれか1項記載のターボ機械翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械(Turbomaschine)、例えば風力タービン、蒸気タービン、ガスタービン又は圧縮機等の分野に係り、ターボ機械翼、特にタービン翼において運転中に発生する機械的な振動に対して影響を及ぼす、特に機械的な振動を減衰又は抑制する方法であって、ターボ機械翼の機械的な振動エネルギをまず電気的なエネルギに変換し、生じた電気的なエネルギを次に損失熱に変換する、ターボ機械翼において運転中に発生する機械的な振動に対して影響を及ぼす方法に関する。さらに本発明は、上述の方法を実施するためのターボ機械翼、特にタービン翼、及びこのターボ機械翼に組み付けるための圧電式の減衰部材に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン(又は圧縮機)の運転時、非同期及び同期の翼振動が、空力学的な効果(例えばフラッタ)又は機械的な効果(例えばハウジングにおける翼の摩擦により)により発生し得る。翼における共振は、振動き裂形成(「HCF:high‐cycle fatigue」)の問題に至る場合がある。振動き裂形成は、タービン翼及び圧縮機翼の危険な故障事例である。
【0003】
ターボ機械翼をこの種のHCF欠陥から保護するために、翼板は、タービン段の翼アッセンブリの剛性を高め、かつ振動を隣接する翼間の摩擦により減衰又は抑制する一体的なシュラウドエレメント又はウイングレットに連結される。この種のアッセンブリは、例えば刊行物EP0214393A1号又は刊行物US3752599号において公知である。
【0004】
タービンのコンセプトが独立した翼を必要とする場合、摩擦を生じる装置は、翼に、プラットフォームの下若しくは翼間に摩擦ピンとして配置可能であるか、又は翼内に格納可能である。この種の解決手段は、例えば刊行物EP1538304A2号、刊行物US4460314号又は刊行物US6979180B2号において公知である。
【0005】
しかし、この種の摩擦を生じる装置及び摩擦結合の減衰効果は、関心のある(減衰したい)共振周波数に合わせて適当に調整されなければならない、連結接触部の剛性及び最適な法線力に依存している。換言すれば、摩擦減衰は、翼の所定の振動周波数のためだけに効果的に使用可能である一方、他の周波数は、不十分に減衰されるにすぎないか、又はまったく減衰されない。
【0006】
摩擦ダンパは、著しく振幅に依存しており、系内の磨耗その他の変化プロセスに基づく関与する質量系及び剛性のあらゆる変化は、共振周波数の変化をもたらし、摩擦ダンパの効率を悪化させる。
【0007】
しかし、タービン翼の振動を、永久磁石と翼との相互作用によって渦電流を発生させ、損失熱に変換することにより減衰することも既に提案されている(例えば刊行物EP0727564A1号参照)。しかし、このような解決手段の使用範囲は、上述の相互作用が翼先端部と対向するハウジング壁との間の領域に制限されているので、著しく制限されている。したがって、翼板内に発生する振動を効果的に減衰することは不可能である。
【0008】
さらに、隣接するタービン翼間の摩擦結合をアクティブ制御するために翼内に圧電素子を装入することが公知である(例えば刊行物特開2003−138904号公報参照)。圧電素子により、摩擦接触は運転中最適化され、後調整可能である。独立した翼のためにこの解決手段は不向きである。しかし、この種の圧電素子は、このような摩擦結合の接触圧を測定し、かつ監視するために使用されてもよい(特開2003−138910号公報)。
【0009】
全体として、摩擦に基づく減衰システムは、その構造及び使用が複雑であり、周波数に合わせて調整するのが困難である一方、渦電流発生に基づく原理は、その使用が著しく制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP0214393A1号
【特許文献2】US3752599号
【特許文献3】EP1538304A2号
【特許文献4】US4460314号
【特許文献5】US6979180B2号
【特許文献6】EP0727564A1号
【特許文献7】特開2003−138904号公報
【特許文献8】特開2003−138910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ本発明の課題は、公知の方法の欠点を回避し、簡単かつ極めて広範な使用可能性の点で優れた冒頭で述べた類の方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の課題は、上述の方法を実施するためのターボ機械翼を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の課題は、ターボ機械翼に組み付けるための圧電式の減衰部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る、ターボ機械翼、特にタービン翼において運転中に発生する機械的な振動に対して影響を及ぼす、特に機械的な振動を減衰又は抑制する方法では、前記ターボ機械翼の機械的な振動エネルギをまず電気的なエネルギに変換し、生じた電気的なエネルギを次に損失熱に変換する、ターボ機械翼において運転中に発生する機械的な振動に対して影響を及ぼす方法において、機械的な振動エネルギを電気的なエネルギに変換するために圧電効果を利用するようにした。
【0015】
好ましくは、機械的な振動エネルギを電気的なエネルギに変換するために、少なくとも1つの圧電式の減衰部材を堅固に減衰したいターボ機械翼に組み付け、該圧電式の減衰部材を前記ターボ機械翼の機械的な振動により変形させ、電圧を生じさせ、生じた電圧により、接続された電気的な回路網内においてオーム損失熱を発生させる。
【0016】
好ましくは、前記電気的な回路網が分路としてインダクタンス及びオーム抵抗からなる直列回路を備え、かつ前記圧電式の減衰部材がキャパシタンスの形態で電極間に配置される圧電体を備えるようにし、結果として生じる振動回路の共振周波数をターボ機械翼の減衰したい機械的な振動に合わせて調整する。
【0017】
好ましくは、前記圧電式の減衰部材内の電気的な振動を測定し、かつ前記ターボ機械翼内の機械的な振動を測定及び監視するために評価する。
【0018】
好ましくは、前記圧電式の減衰部材を前記ターボ機械翼に組み付けるために中空室を設け、前記圧電式の減衰部材を前記中空室内に装入し、該中空室において前記ターボ機械翼に特に素材結合又は機械固定により堅固に連結する。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係る、上述の方法を実施するためのターボ機械翼、特にタービン翼において、前記ターボ機械翼内に少なくとも1つの圧電式の減衰部材が堅固に組み付けられているようにした。
【0020】
好ましくは、前記少なくとも1つの圧電式の減衰部材が、電気的な回路網に接続されて、特にオーム抵抗を含む分路により電気的に減衰されている圧電素子として形成されている。
【0021】
好ましくは、前記電気的な回路網又は前記分路が、オーム抵抗及びインダクタンスからなる直列回路を備える。
【0022】
好ましくは、前記電気的な回路網又は前記分路が、コイルを備える。
【0023】
好ましくは、前記圧電素子が、圧電体及び電極からなるスタックを備える。
【0024】
好ましくは、前記ターボ機械翼内に中空室が形成されており、該中空室内に、少なくとも1つの圧電式の減衰部材が格納されている。
【0025】
好ましくは、前記少なくとも1つの圧電式の減衰部材が、固有のハウジングにより包囲されている。
【0026】
好ましくは、前記ハウジングが、上側の部分ハウジング及び下側の部分ハウジングから構成されている。
【0027】
好ましくは、前記少なくとも1つの圧電式の減衰部材が、前記ターボ機械翼に特に素材結合又は機械固定により堅固に連結されている。
【0028】
好ましくは、前記ターボ機械翼にわたって分配されて、複数の圧電式の減衰部材が、前記ターボ機械翼に配置されている。
【0029】
好ましくは、前記少なくとも1つの圧電式の減衰部材が無線で、該圧電式の減衰部材において生じる信号を受信及び評価するための測定装置に接続されている。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明に係る、上述のターボ機械翼に組み付けるための圧電式の減衰部材において、該圧電式の減衰部材が、電気的な回路網に接続されて、特にオーム抵抗を含む分路により電気的に減衰されている圧電素子として形成されているようにした。
【0031】
好ましくは、前記圧電素子が、圧電体及び電極からなるスタックを備える。
【0032】
好ましくは、前記電気的な回路網又は前記分路が、オーム抵抗及びインダクタンスからなる直列回路を備える。
【0033】
好ましくは、前記電気的な回路網又は前記分路が、コイルを備える。
【0034】
好ましくは、前記圧電式の減衰部材が、ハウジングにより包囲されており、該ハウジングが、有利には上側の部分ハウジング及び下側の部分ハウジングから構成されている。
【0035】
好ましくは、前記電気的な回路網に、時間的に可変の抵抗が設けられている。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る、ターボ機械翼において運転中に発生する機械的な振動に対して影響を及ぼす、特に機械的な振動を減衰又は抑制する方法では、ターボ機械翼の機械的な振動エネルギをまず電気的なエネルギに変換し、生じた電気的なエネルギを次に損失熱に変換する。本発明に係る方法は、機械的な振動エネルギを電気的なエネルギに変換するために圧電効果を利用することを特徴とする。これにより、簡単かつ極めて広範な使用可能性の点で優れた方法を提供することができる。
【0037】
本発明に係る方法の一態様は、機械的な振動エネルギを電気的なエネルギに変換するために、少なくとも1つの圧電式の減衰部材を堅固に減衰したいターボ機械翼に組み付け、圧電式の減衰部材をターボ機械翼の機械的な振動により変形させ、電圧を生じさせ、生じた電圧により、接続された電気的な回路網内においてオーム損失熱を発生させることを特徴とする。
【0038】
特に、電気的な回路網が分路としてインダクタンス及びオーム抵抗からなる直列回路を備え、かつ圧電式の減衰部材がキャパシタンスの形態で電極間に配置される圧電体を備えるようにし、結果として生じる振動回路の共振周波数をターボ機械翼の減衰したい機械的な振動に合わせて調整する。
【0039】
さらに、圧電式の減衰部材内の電気的な振動を測定し、かつターボ機械翼内の機械的な振動を測定及び監視するために評価すると有利である。
【0040】
本発明に係る方法の別の態様は、圧電式の減衰部材をターボ機械翼に組み付けるために中空室を設け、圧電式の減衰部材を中空室内に装入し、中空室においてターボ機械翼に特に素材結合又は機械固定により堅固に連結することを特徴とする。
【0041】
本発明に係る方法を実施するための本発明に係るターボ機械翼は、ターボ機械翼内に少なくとも1つの圧電式の減衰部材が堅固に組み付けられていることを特徴とする。
【0042】
本発明に係るターボ機械翼の一態様は、少なくとも1つの圧電式の減衰部材が、電気的な回路網に接続されて、特にオーム抵抗を含む分路により電気的に減衰されている圧電素子として形成されていることを特徴とする。
【0043】
特に、電気的な回路網又は分路は、オーム抵抗及びインダクタンスからなる直列回路を備える。
【0044】
この場合、電気的な回路網又は分路は、有利にはコイルを備える。
【0045】
別の態様では、圧電素子が、圧電体及び電極からなるスタックを備える。
【0046】
本発明に係るターボ機械翼の別の態様は、ターボ機械翼内に中空室が形成されており、中空室内に、少なくとも1つの圧電式の減衰部材が格納されていることを特徴とする。
【0047】
特に、少なくとも1つの圧電式の減衰部材が、固有のハウジングにより包囲されており、ハウジングは、有利には上側の部分ハウジング及び下側の部分ハウジングから構成されている。
【0048】
本発明の別の態様では、少なくとも1つの圧電式の減衰部材が、ターボ機械翼に特に素材結合又は機械固定により堅固に連結されている。
【0049】
別の態様は、ターボ機械翼にわたって分配されて、複数の圧電式の減衰部材が、ターボ機械翼に配置されていることを特徴とする。
【0050】
さらに別の態様は、少なくとも1つの圧電式の減衰部材が無線で、圧電式の減衰部材において生じる信号を受信及び評価するための測定装置に接続されていることを特徴とする。
【0051】
本発明に係るターボ機械翼に組み付けるための本発明に係る圧電式の減衰部材は、圧電式の減衰部材が、電気的な回路網に接続されて、特にオーム抵抗を含む分路により電気的に減衰されている圧電素子として形成されていることを特徴とする。
【0052】
圧電式の減衰部材の一態様は、圧電素子が、圧電体及び電極からなるスタックを備えることを特徴とする。
【0053】
別の態様は、電気的な回路網又は分路が、オーム抵抗及びインダクタンスからなる直列回路を備えることを特徴とする。
【0054】
特に、電気的な回路網又は分路が、コイルを備える。コイルは、任意の形状を有していてよい。
【0055】
別の態様では、圧電式の減衰部材が、ハウジングにより包囲されており、ハウジングが、有利には上側の部分ハウジング及び下側の部分ハウジングから構成されている。
【0056】
最後に、電気的な回路網に、時間的に可変の抵抗が設けられていてよい。
【0057】
以下に、本発明について実施の形態に基づいて図面との関連で詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る圧電式の減衰部材が内部に配置されている例示的なタービン翼の斜視図である。
【
図2】機械的な1自由度を有する、分路を備える組み込まれた圧電素子の代替回路図である。
【
図3】本発明に係る圧電式の減衰部材の一実施の形態の断面図である。
【
図4】タービン翼への
図3に示した圧電式の減衰部材の組み付けの一例を示す図である。
【
図5】2つの部分からなるハウジング内に格納されている、分路内にコイルを含む
図3に示した圧電式の減衰部材の斜視図である。
【
図6】タービン翼への
図5に示した圧電式の減衰部材の組み付けの一例を
図4と対比可能に示す図である。
【
図7】本発明の一実施の形態における、タービン翼に圧電式の減衰部材を組み付ける際のそれぞれ異なるステップを示す部分図(a)〜(c)である。
【
図8】タービン翼に組み付けられる圧電式の減衰部材からの信号を伝送及び評価するアッセンブリの原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、主に圧電効果に基づく。圧電効果は、外力が加えられると電荷を形成する、つまり機械的なエネルギを電気的なエネルギに変換する材料の性質である。電圧を生じる箇所を、オーム抵抗を有する電気的な回路網に接続すると、発生した電気的なエネルギの一部を損失熱に変換することができる。外部からエネルギを、回転するターボ機械翼あるいはタービン翼に供給する必要がないように、分路を形成する電気的な回路網は、受動的に形成されていることが望ましい。減衰に関して特に有効な受動的な回路網は、電気的な抵抗Rと直列に接続されたインダクタンスLからなる(
図2の分路21参照)。このような分路は、しばしば「LR分路(LR‐Nebenschluss)」と呼称され、一般に、直列回路及び/又は並列回路中のインダクタンスL及び抵抗Rの種々異なる組み合せ、自給式のスイッチング回路網(「SSDI:self−powered synchronized switch damping on inductor」形式)及びこれに類するものを有していてよい。しかし、負のキャパシタンスを有する能動的な解決手段を使用するか、又は一般に回路網に、時間的に可変の抵抗を設けることも可能である。
【0060】
図2は、機械的な1自由度(基準平面に対して垂直)を有して組み込まれた、分路21を備える圧電式の減衰部材SPEの代替回路
図17である。圧電式の減衰部材SPEは、基準平面18と、弾性的に基準平面18に連結されている、大きさmの質量20との間に位置している(ばね19はばね定数cを有する。)。対向する表面に電極を備える圧電素子(
図2で見て灰色の枠)は、電気的に、大きさC
pのキャパシタンスと見なすことが可能である。このキャパシタンスは、内部の電圧源lに対して並列に位置しており、キャパシタンスの外部には、機械的な負荷の際に電圧vが生じる。圧電素子が、抵抗R及びインダクタンスLからなる直列回路を備える分路21を有している場合(
図5のコイル27参照)、周波数同調形の振動ダンパのように挙動する振動回路が生じる。同調形の振動ダンパと同様に、振動回路は、減衰性に作用するために、系18,19,20の振動に同調されなければならない。しかし、振動回路は、動吸振器(Tilger)の形式で翼及び該翼の振動に反作用して、程度の差こそあれ強く減衰される独自の周波数で振動してもよい。
【0061】
図1に示すように、この種の圧電式の減衰部材SPE1,SPE2が、図示の実施の形態では翼根部11と、プラットフォーム12と、前縁14及び後縁15を備える翼板13と、翼先端部16とを備える、双方向矢印により示すように振動するタービン翼10の内部に組み付けられると、タービン翼10の振動は、圧電素子内に変形を引き起こす。この変形は、圧電式の減衰部材SPEのキャパシタンスC
pに相応の電圧を充電する。分路21は、翼の振動エネルギを、予め規定されたパラメータ及び振動する翼における減衰部材の位置に基づいて損失エネルギに変換する。
【0062】
このような圧電式の減衰部材SPEの利点は、減衰が、摩擦減衰では重要な役割を果たす機械的な接触の剛性及び法線力に依存しない点にある。さらに、このアッセンブリの減衰作用は、例えば対応する種々異なるパラメータを有する複数のLR分路が設けられることによって、翼の1つより多くの共振周波数のために調節可能である。しかし、複数の圧電式の減衰部材が、1つの共通の電気的な回路網により互いに接続されていてもよい。
【0063】
さらに、従来慣用の摩擦ダンパと比較して、圧電式の減衰部材は、その作用が共振周波数における隣接する翼の振動振幅の大きさ及び位相シフトに依存しないという利点を有している。また、圧電式の減衰部材の減衰作用は、電気的な回路が変更されるだけで、別の共振周波数に容易に適合可能である。こうして、例えば、翼内部への適当な接近性があれば、分路21のパラメータを事後的にレーザビームにより(例えば抵抗路の幾何学形状の変更により)又はこれに類するものにより変更することができる。
【0064】
さらに、従来慣用の摩擦ダンパと比較して、提案するダンパの使用により、乱されていない翼の共振周波数が別の値にシフトされることが少ないという技術的な利点が生じる。このことは、タービン設計時の重要な基準である。また、圧電式のダンパでは、摩擦減衰の場合に考慮しなければならない磨耗の問題も生じない。
【0065】
本発明に係る圧電式の減衰部材は、例えば蒸気、ガス及び風力機械のタービン翼及び圧縮機翼のために使用可能である。圧電式の減衰部材は、有利には、翼又は対応する翼支持体内に設けられた中空室に組み付けられる。中空室の形状と場所は、ほぼ無関係に最適に選択可能である。
【0066】
本発明に係る圧電式の減衰部材の一実施の形態は、
図3の断面図に示されている。
図3に示した圧電式の減衰部材SPEは、スタックとして、圧電効果及びタービンの運転温度に適した材料からなる2つの面状のディスク状の圧電体22,23から形成されている。圧電体22,23は、スタック内で、コンタクトエレメントあるいは電極24と交互に配置されている。エレメント22〜24のための材料選択及び結合技術は、当業者にとって原則公知である。
【0067】
図3の圧電式の減衰部材SPEは、直接、
図4に示すように、翼26内にこのために設けられた中空室25内に組み付け可能であるか、又は中空室25内に組み立て可能である。圧電式の減衰部材SPEの対向する外面は、堅固に中空室25の内壁に連結されている。この連結は、種々異なる形式で、例えば接着、ろう接、又は摩擦若しくは熱膨張に基づく機械的な固定あるいは締め付けにより実施可能である。減衰部材の組み付け後、中空室25は、例えばろう接又は溶接により中空室25の縁に結合されるカバーにより保護可能である。閉鎖後、アッセンブリの表面は、翼に対する空力学的な要求を満たすために後加工可能である。しかし、圧電式の減衰部材SPEが組み込まれた中空室25に、例えば熱作用により固化し、減衰部材及び翼とともに1つの堅固なユニットを形成する材料を充填又は注入することも可能である。
【0068】
しかし、
図4に示した翼26内に設けられた中空室25内への圧電式の減衰部材SPEの直接的な組み込みの他に、圧電式の減衰部材SPEを、
図5に示すように、まず、金属又はこの使用目的に合ったその他の材料からなり、相俟って1つのハウジング28を形成する上側の部分ハウジング28aと下側の部分ハウジング28bとの間に装入することも可能である。
図6に示すように、その後で、圧電式の減衰部材SPEは、ハウジング28とともに、翼26内に設けられた中空室25内に組み込み可能である。ハウジング28における適当な材料選択により、場合によっては、圧電式の減衰部材SPEがハウジングなしに直接組み込まれるときとは異なる結合技術が、ハウジング28と翼26との間を結合するために使用可能である。
【0069】
ハウジング28の外側の輪郭は、正確にタービン翼の外側の輪郭に適合可能である。この場合、後加工は不要である。この種の適合された輪郭は、例えば、選択的レーザ溶融法(SLM:Selective Laser Melting)により、対応するタービン翼の3次元的に走査された幾何学形状にしたがって形成可能である。その他の急速製造技術の使用も可能である。
【0070】
別の可能性は、
図7に示すように、タービン翼29から局所的に使用箇所において切片30を切り出し(
図7(a))、この切片30を次に上側部分30a及び下側部分30bに分割し(
図7(b))、両部分30a,bにそれぞれ1つの凹部31,32を形成し、その後、両部分を圧電式の減衰部材SPEのための部分ハウジング(
図5及び
図6に図示するような部分ハウジング)として使用することにある。圧電式の減衰部材SPE及びハウジング30a,bからなるアッセンブリは、その後、再び翼29内に組み込まれる(
図7(c))。
【0071】
本実施の形態でも、やはり、内部に圧電式の減衰部材SPEを備えるハウジング30a,bと、タービン翼との間を堅固に結合する種々異なる技術が使用可能である。例えば、硬ろう付けプロセスが使用可能である。このプロセスにおいて、ろうは、450℃を上回る溶融温度に加熱され、次にハウジング30a,bとタービン翼29との間に分配される。その際に重要であるのは、圧電式の減衰部材がキュリー温度を超えて加熱されないことである。キュリー温度を超えると、圧電性が失われてしまうからである。
【0072】
圧電式の減衰部材SPEの位置は、タービン翼の該当する振動の可及的高い減衰に関して決定される。その際に重要であるのは、翼の寿命が総じて短縮されないことにある。特に、
図1に示すように、そこに相応の伸張が発生するのであれば、複数の圧電式の減衰部材SPE1,SPE2をタービン翼10の種々異なる箇所に配置可能である。
【0073】
実際の使用では、1つのタービン段(ロータディスク)のすべての翼が、圧電式の減衰部材SPEを有していてよい。しかし、1つのタービン段の選択された翼又は翼板にのみこのような減衰部材を装備することも可能である。その際、選択は、存在するタービン段における予め決められた意図的な離調パターン(Verstimmungsmuster)又は測定された離調パターンに基づいて実施可能である。所望の場合、1つのタービン段の種々異なるタービン翼に配置されている複数の圧電式の減衰部材は、このタービン段における減衰効果を増強及び最適化するために、1つの(電気的な)回路網内で互いに接続可能である。
【0074】
許容される運転温度及びその他の負荷量は、圧電材料及び結合技術の選択によってのみ規定あるいは制限される。高いキュリー温度を有する圧電材料は入手可能である。ターボ機械での使用にとって、例えばチタン酸バリウムは、良い選択である。チタン酸バリウムは、約500℃の高い運転温度を有している。しかしながら、残念なことに、チタン酸バリウムは、比較的低い圧電率及び低い誘電率を有している。それゆえ、350℃の温度までは、メタニオブ酸鉛が好ましい。PZTタイプの材料(チタン酸ジルコン酸鉛)は、最高の圧電率を有しているが、180℃の温度までしか使用可能でない。
【0075】
さらに、翼内の総減衰を最適化するために、提案する圧電式の減衰部材を従来慣用の摩擦ダンパとともに使用することもできる。
【0076】
さらに、
図8に示すように、圧電式の減衰部材SPEを同時に、翼振動を測定するためのセンサとして使用することも可能である。測定された振動は、無線式(遠隔式)に、回転するタービンから固定の測定装置34に伝送可能である。測定装置34は、(受信)アンテナ35、信号受信器36及び評価ユニット37を装備している。得られたデータは、タービン、特にタービンの振動挙動を監視するために使用可能である。その際、減衰及び振動測定の両機能は、同時にこのシステム内で実施可能である。
【0077】
圧電式の減衰部材SPEの上記用途は、運転温度が、使用される圧電材料のキュリー温度を上回らない限り、航空機、船舶、工業及び大型のエンジンにおけるガスタービン、蒸気タービン及び圧縮機の種々異なるコンポーネントに拡張可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 タービン翼、 11 翼根部、 12 プラットフォーム、 13 翼板、 14 前縁、 15 後縁、 16 翼先端部、 17 代替回路図、 18 基準平面、 19 ばね、 20 質量、 21 分路、 22,23 圧電体、 24 コンタクトエレメント(電極)、 25 中空室、 26,29 タービン翼、 27 コイル(インダクタンス)、 28 ハウジング、 28a,b 部分ハウジング、 30 切片、 30a 上側部分、 30b 下側部分、 31,32 凹部、 34 測定装置、 35 アンテナ、 36 信号受信器、 37 評価ユニット、 SPE,SPE1,SPE2 圧電式の減衰部材