(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気刺激装置は、前記施療モードとして、前記麻痺部位から検出された筋電位に応じた強度の電気刺激を前記電気刺激手段から前記麻痺部位に印加する第一の施療モードと、前記被施療者の前記麻痺部位以外の部位または前記被施療者以外の者に属する部位から検出された筋電位に応じた強度の電気刺激を前記電気刺激手段から前記麻痺部位に印加する第二の施療モードと、を少なくとも備えることを特徴とする請求項1記載の電気刺激装置システム。
前記施療履歴情報には、前記他の電気刺激装置による施療時間を積算した積算施療時間、前記電気刺激が前記麻痺部位に印加された回数、前記電気刺激が前記麻痺部位に対し印加された時間を積算した積算印加時間の少なくとも一つの情報が含まれることを特徴とする請求項5記載の電気刺激装置システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、電気刺激の印加による施療及び他の電気刺激装置の施療条件の設定が1台の装置で行え、経済性と可搬性に優れた電気刺激装置を提供することを第一の目的とする。また、医師等が、電気刺激装置を用いて、他の電気刺激装置による施療履歴情報を正確に把握し管理できる電気刺激装置システムを提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、前記施療モードなどの施療条件を設定する施療条件設定手段と、前記施療条件設定手段により設定された前記施療条件を少なくとも表示する表示手段と、少なくとも他の電気刺激装置に対して前記施療条件を送信する情報通信手段と、これら各手段を制御する制御部と、を備えた電気刺激装置
と、施療モードに応じた電気刺激を電極を介して被施療者の麻痺部位に印加する電気刺激手段と、少なくとも前記電気刺激装置から前記施療条件を受信する情報通信手段と、これら各手段を制御する制御部と、を備えた他の電気刺激装置と、前記電気刺激装置及び前記他の電気刺激装置の各電源を非充電式又は充電式の電池とし、前記電気刺激装置は、前記電池の電圧を所定電圧値にレギュレートするDC−DCコンバータを有し、前記他の電気刺激装置は、前記電池の電圧を所定電圧値にレギュレートするDC−DCコンバータを有し、前記各DC−DCコンバータは同一の所定電圧値となるように前記各電池の電圧をレギュレートする。
【0010】
従来の電気刺激装置システムにおいては、プログラム装置は電気刺激装置の施療条件を設定する機能を有するに過ぎず施療に用いることは不可能であったが、本発明に係る電気刺激装置によれば、電気刺激手段も兼ね備えているので、他の電気刺激装置(背景技術に記載の電気刺激装置に相当)の施療条件の設定は勿論のこと、電気刺激手段による施療も電気刺激装置一台で実現できることになる。
【0011】
よって、医療機関は従来のようにプログラム装置と電気刺激装置からなる電気刺激装置システムを常に一セットとして購入する必要性はなくなり、他の電気刺激装置が不要の場合は、電気刺激装置のみを購入すれば事足り、購入コストを削減でき経済性に優れたものとなり、施療場所を変更するにあたって、電気刺激装置のみを運搬すればよく可搬性の面でも優れたものとなる。
【0012】
従来のプログラム装置を駆動させるには商用電源に接続する必要があり、使用可能な場所が商用電源付近に限定されていたが、本発明によれば電源を非充電式又は充電式の電池としたので電池残量が残っている限り場所を選ぶことなく、電気刺激装置の使用が可能となる。
【0013】
医療機関において電気刺激装置での施療を受けている被施療者が、この電気刺激装置で設定されている施療条件をそのまま他の電気刺激装置に記憶させて持ち帰り、在宅にて施療を行う場合に、両装置で同一の施療条件が設定されているにもかかわらず、電池種類の相違(例えば、電気刺激装置の電池電源を乾電池とし、他の電気刺激装置の電池電源を二次電池とする)による電気刺激の出力変動が生じたり、また、電池容量の低下による出力変動が生じたりすることもなく、在宅での施療を行う上で一層好ましいものとなる。
【0014】
また、前記施療モードとして、前記麻痺部位から検出された筋電位に応じた強度の電気刺激を前記電気刺激手段から前記麻痺部位に印加する第一の施療モードと、前記被施療者の前記麻痺部位以外の部位または前記被施療者以外の者に属する部位から検出された筋電位に応じた強度の電気刺激を前記電気刺激手段から前記麻痺部位に印加する第二の施療モードと、を少なくとも備えることが好ましい。
【0015】
これによれば、被施療者の病状や施療目的に応じて第一と第二の施療モードを適宜選択でき、施療バリエーションが豊富なものとなる。
【0016】
また、前記電池の電圧を検出する電池電圧検出手段を備え、該電池電圧検出手段の検出結果に基づいて前記電池電圧の低下を報知することが好ましい。
【0017】
これによれば、施療者や被施療者が電気刺激装置の電池電圧の低下を容易に把握できるので、電池交換や電池充電をし忘れ、施療途中に突然電池残量が零になり施療の中断を余儀なくされるという状況に陥ることを防止できる。
【0018】
また、少なくとも前記施療条件を読み出し可能に記憶する記憶手段を備え、該記憶手段は複数個の前記施療条件を記憶可能であることが好ましい。
【0019】
これによれば、1台の電気刺激装置を以って複数名の被施療者を施療せざるをえない場合に、被施療者ごとに施療条件を個別設定しておくことで被施療者が替わるたびに施療条件を一々設定し直す手間が省け、煩わしくなく、効率的な施療を行う上で適したものとなる。
【0020】
また、本発明は、前記電気刺激装置と、他の電気刺激装置とを備え、前記電気刺激装置は、前記情報通信手段を介して前記他の電気刺激装置の施療履歴情報を受信し、該施療履歴情報を前記表示手段により表示可能であることを特徴とする。
【0021】
これによれば、医師が、他の電気刺激装置の施療履歴情報を電気刺激装置に取り込み表示手段に表示することで被施療者の施療履歴情報を容易に確認できる。
【0022】
また、前記施療履歴情報には、前記他の電気刺激装置による施療時間を積算した積算施療時間、前記電気刺激が前記麻痺部位に印加された回数、前記電気刺激が前記麻痺部位に対し印加された時間を積算した積算印加時間の少なくとも一つのデータが含まれることが好ましい。
【0023】
これによれば、積算施療時間、電気刺激の印加回数、電気刺激の積算印加時間の諸データを確認することで医師が在宅での被施療者の施療履歴情報を直ちに確認でき、指示した通りの施療を被施療者が行っているかどうかなど、在宅での施療状況の把握が容易なものとなる。
【0024】
また、本発明は、前記電気刺激装置と、他の電気刺激装置とを備え、該他の電気刺激装置が、前記電気刺激装置との間で情報を送受信する情報通信手段と、該情報通信手段を介して受信した前記情報を記憶する記憶手段と、これら各手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
これによれば、電気刺激装置で設定した情報、例えば施療条件を他の電気刺激装置に取り込み記憶することが可能となり、或被施療者に対する施療条件を電気刺激装置で一旦設定した後、他の電気刺激装置に移行する必要が生じた場合において、他の電気刺激装置の側で再度同様の設定作業をする必要がなく煩わしさがない。
【0026】
また、前記他の電気刺激装置は、前記電気刺激装置から前記施療条件を受信し記憶可能であることが好ましい。
【0027】
これによれば、医療機関にて電気刺激装置を所有管理している場合であっても、この電気刺激装置から施療条件を他の電気刺激装置に取り込み自宅に持ち帰ることで、医療機関へ通院することなく、在宅での施療が可能となる。
【0028】
また、前記他の電気刺激装置の側で、受信した前記施療条件の全部または一部の変更を不可能としたり可能にしたりできるようにすることができる。
【0029】
これによれば、在宅で被施療者が他の電気刺激装置を用いて施療をする場合は、変更を不可能とすることで他の電気刺激装置の施療条件を勝手に変更して施療することを防止でき、例えば、医療従事者が不在の在宅環境下で被施療者が不適切な施療条件での施療を行うことで効果的な施療の妨げになることはなく、安全性を確保し適切な施療を行う上で好ましいものとなる。
【0030】
逆に、施療条件の変更を可能とすれば、医療機関において施療者が他の電気刺激装置の施療条件を変更して施療を行うことができ、また、在宅において被施療者が自身の体調変化に応じて施療条件を微調整することで、きめこまやかな施療を行うことができる。
【0031】
また、前記他の電気刺激装置の本体は、被施療者が携帯可能なサイズに形成されることが好ましい。
【0032】
これによれば、他の電気刺激装置の本体の持ち運びが容易なものとなるばかりでなく、被施療者は本体を常時携帯しておくことで、施療場所を選ぶことなく施療したいときにいつでも気軽に施療を行うことが可能となる。
【0033】
また、前記電気刺激装置と、他の電気刺激装置とを備え、前記他の電気刺激装置は、前記電気刺激装置との間で情報を送受信する情報通信手段を有し、前記電気刺激装置の前記情報通信手段及び前記他の電気刺激装置の前記情報通信手段によって前記電気刺激装置から送信した前記施療条件が前記他の電気刺激装置で受信されるとともに前記他の電気刺激装置から送信した施療履歴情報が前記電気刺激装置で受信され、前記電気刺激装置は、主に医療機関において医師等の施療者が施療に用いるものであり、前記他の電気刺激装置は、主に前記施療者の指導の下に被施療者が在宅での施療に用いるものであり、前記施療者は、前記電気刺激装置を以って前記他の電気刺激装置の施療条件の設定及び施療履歴情報の管理が可能であることが好ましい。
【0034】
これによれば、医師が医療機関にある電気刺激装置を用いて他の電気装置の施療条件を設定することができるので、医療従事者が不在の在宅環境下で被施療者が不適切な施療条件を設定し施療を行うことを防止でき、安全性を確保し適切な施療を行う上で好ましいものとなり、また、他の電気刺激装置を用いて指示通りの施療を被施療者が在宅で行っているかどうかなど被施療者による在宅での施療状況を施療者が電気刺激装置を用いて確実に把握・管理することができるので、被施療者に対して効果的な施療指導を行えることになる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の電気刺激装置によれば、他の電気刺激装置の施療条件の設定は勿論のこと、電気刺激手段による施療も一台の装置で実現できることになり、また、医療機関は、従来のようにプログラム装置と電気刺激装置からなる電気刺激装置システムを常に一セットとして購入する必要性はなくなり、他の電気刺激装置が不要の場合は電気刺激装置のみを購入すれば事足り、購入コストを削減でき経済性に優れたものとなる。また、医師等が別の施療場所で施療をする場合も、電気刺激装置のみを持ち運べばよく、可搬性にも優れたものとなる。
【0036】
また、本発明の電気刺激装置システムによれば、被施療者本人またはその家族が在宅により他の電気刺激装置による施療を行う場合であっても、医師は電気刺激装置に他の電気刺激装置に取り込み施療履歴情報を表示することで、被施療者の施療履歴情報を直ちに確認でき、指示通りの施療を被施療者が行っているかどうかなど、在宅での施療状況の把握や管理が容易なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置1、他の電気刺激装置2及び電気刺激装置システム3について、
図1〜10を参照して詳細に説明する。電気刺激装置1は、病院や診療所などの医療機関において、医師等の施療者が施療に用いる親機ユニットであり、一方、他の電気刺激装置2は、主に施療者の指導の下に被施療者や被施療者の家族が在宅での施療を行う際に用いる子機ユニットである。電気刺激装置システム3は、この電気刺激装置1と他の電気刺激装置2とから構成されるシステムのことを示す。他の電気刺激装置2は、1台の電気刺激装置1に対し、複数台を組み合わせることも可能であるが、本実施形態では、1台の電気刺激装置1と、1台の他の電気刺激装置2とからなる電気刺激装置システム3を例として説明する。
【0039】
まず、
図1、
図3〜4、
図7〜9を参照して電気刺激装置1の構成について説明する。
図1、
図3〜4に示すように、電気刺激装置1は、片麻痺の被施療者の麻痺部位の皮膚表面に配されて筋電信号の検出及び電気刺激の印加を行う筋電検出・電気刺激両用電極15と、麻痺部位の皮膚表面に配されて電気刺激の印加を行う電気刺激用電極38と、筋電検出・電気刺激両用電極15及び電気刺激用電極38に電気刺激を供給する電気刺激手段14が内蔵される筐体11などでなる電気刺激装置本体5と、筋電検出・電気刺激両用電極15及び電気刺激用電極38の各々を電気刺激装置本体5に接続する電極ケーブル6及び電極ケーブル29とを主たる構成としている。
【0040】
筋電検出・電気刺激両用電極15は、電極4aと電極4bの二個が一体構成とされる二極型電極4と、一個の電極39とから構成され、各電極は裏面が被施療者の皮膚表面に貼り付ける貼付面とされるホック式のゲル電極である。電極4a、電極4b及び電極39の各ホックは中途位置で三本に分岐した電極ケーブル6の各先端側に係着され、電極ケーブル6基端側の接続プラグ6aは筐体11の上側面右方に開設される第一出力コネクタ28に着脱自在に挿嵌される。
【0041】
電極4a及び電極4bは、対象筋肉の筋腹の皮膚表面に配置され、被施療者の筋活動から発生する微弱筋電位を電極4aと電極4bの電極間で検出するとともに、電気刺激を印加するための電気刺激用電極として機能する。電極39は、電気刺激を印加したい筋肉の筋腹の皮膚表面に配置され、電気刺激を筋肉に印加するための電気刺激用電極として機能する一方、電極4aと電極4bの電極間で筋電位を検出するときに基準電位を決めるグランド電極としても機能する。
【0042】
また、
図4に示すように、電極38a、電極38bの二個の電極から構成され、各電極の裏面が被施療者の皮膚表面に貼り付ける貼付面とされるホック式のゲル電極よりなる電気刺激用電極38が筋電検出・電気刺激両用電極15とは別に設けられている。電極38a及び電極38bの各ホックは中途位置で二本に分岐した電極ケーブル29の各先端側に係着され、電極ケーブル29基端側の接続プラグ29aは筐体11の上側面左方に開設される第二出力コネクタ30に着脱自在に挿嵌される。
【0043】
図1、
図3に示すように、電気刺激装置本体5は、略直方体状の筐体11、筐体11上面の下方部に配設され施療モードに応じた施療条件を設定及び変更する各種スイッチなどよりなる操作スイッチ部13(施療条件設定手段22)、設定された施療条件などを読み出し可能に記憶する不揮発性メモリ(EEPROM)でなる記憶部18(記憶手段23)、筐体11上面の上方に設けられ設定された施療条件などの情報を表示する液晶表示部12(表示手段24)、筐体11内部に設けられる電気刺激手段14、他の電気刺激装置2との間で施療条件や施療履歴情報を送受信する情報通信手段16、これら各手段を制御するマイコンよりなる制御部19などから構成されている。
【0044】
図1に示すように、操作スイッチ部13は、主電源の入切を行う電源スイッチ32、電気刺激の出力及び筋電検出の感度を調整する調節摘み33、液晶表示部12のカーソルの上移動及び施療条件の設定値の増加を行う上スイッチ34、液晶表示部12のカーソルの下移動及び施療条件の設定値の減少を行う下スイッチ35、液晶表示部12のカーソルの左移動及び右移動を各々行う左スイッチ36及び右スイッチ37、施療条件の設定及び変更を行う決定スイッチ40、電源スイッチ32と操作ロックスイッチ63以外の操作を無効にする操作ロックスイッチ63の各種スイッチ群より構成されている。
【0045】
電気刺激装置1の施療条件としては、
図7に示すように、施療モード、施療時間、電気刺激の最小出力及び最大出力、筋電検出感度を操作スイッチ部13にて設定することが可能となっている。施療モードは第一、第二の施療モードのどちらか一方を選択して設定可能である。電気刺激の最大出力及び最小出力は調節摘み33の回転量に応じて増減する。具体的にはスイッチ34・35・36・37を適宜操作しカーソルを該当欄に移動させた後、調節摘み33を時計回りに回すと出力(%)が増加し、反時計回りに回すと出力が減少する。最小出力は零%に設定した場合でも微弱な電気刺激が出力されるように構成されている。同様に筋電検出感度も調節摘み33の回転量に応じて増減し、調節摘み33を時計回りに回すと感度値が増加し、反時計回りに回すと感度値が下降する。施療時間は、上スイッチ34または下スイッチ35を適宜操作して時間設定をする。記憶部18は、操作スイッチ部13で設定された上記の施療条件を読み出し可能に記憶するもので、複数個の施療条件が記憶可能になっている。これにより1台の電気刺激装置1を以って複数名の被施療者を施療せざるをえない場合などに、被施療者ごとに施療条件を個別設定しておくことが可能となる。
【0046】
電気刺激手段14は、電池電源7、電池電源7の電圧を昇圧し出力用電源として供給するDC−DCコンバータ8、DC−DCコンバータ8から入力された電圧を制御する出力制御回路9、出力制御回路9からの出力電圧を昇圧する出力トランス10、出力トランス10からの出力電流を検出する電流検出回路17から構成されている。電流検出回路17で検出された出力電流信号は制御部19に入力され、制御部19は出力制御回路9を制御する。
【0047】
電池電源7は、具体的には単三乾電池(例えば、1.5V)4本が直列に接続されて構成され、図示は省略するが筐体11裏面に形成される電池収容部に装填することが可能となっている。尚、電池電源7の種類や使用本数は、単三乾電池4本に限定されることなく、アルカリ、ニッケル・カドミウム、ニッケル水素などの他の市販乾電池のほか、リチウムイオン二次電池などの充電式電池を採用しても構わない。また、電池電源7の電圧値を検出する電池電圧検出回路25(電池電圧検出手段26)が設けられており、電池電圧検出回路25により電池電源7の電圧値が第一の閾値にまで低下したことが検出されると、制御部19は電圧値の低下を液晶表示部12に画像表示して施療者等に報知する。また、電池電源7の電圧値が第一の閾値より低い電圧値とされる第二の閾値に到達すると、制御部19は電気刺激装置1の電源を切断する。尚、
図3中、27は電池電源7に接続され制御部19に制御用電源を供給するための電源回路である。
【0048】
次に、筋電位検出の構成について説明する。出力トランス10から所定周波数(具体例では20Hz)で所定パルス幅(具体例では50μs)の双方向性方形波を、三回をひとつの単位として繰返し二極型電極4と電極39間に出力し、この繰返しの間(具体例では8ms)の筋電位を電極4aと電極4bの電極間で検出する。電極4aと電極4bの電極間で検出された筋電位は筋電検出回路20に入力され、不図示の増幅器等により制御部19が認識できる程度にまで増幅されて制御部19に取り込まれる。制御部19は、信号処理を行って筋電位を算出し、次の電気刺激の出力強度を算出した筋電位量の強度に応じた出力となるよう出力制御回路9を制御する。これにより二極型電極4と電極39間に出力電流が流れ、麻痺部位に電気刺激が印加される。筋電位の強度に応じた電気刺激の出力は操作スイッチ部13で設定された最大出力で制限され、それ以上の出力が印加されることはなく、また、筋電検出回路20にて筋電位が検出されない場合でも操作スイッチ部13で設定した最小出力の電気刺激が常時印加されることになる。
【0049】
また、筐体11にはLED表示部46が設けられ、LED表示部46は液晶表示部12の上辺近傍にLEDが横方向に5個等間隔に列設されてなり、LEDは検出された筋電位強度に応じて点灯し、筋電位強度がどのレベルにあるかを視覚的に施療者や被施療者に知らしめるための筋電位レベルLEDである。筋電位強度は零から最大値の範囲で6つの区間に区分し、筋電位強度が最低の強度区分に属するときは5個のLEDは全く点灯せず、筋電位強度が増加し次の区間に属すると最左のLEDが1個だけ点灯し(レベル1)、その次の区分に属すると最左から2個目までの計2個のLEDが点灯する(レベル2)。以下、筋電位強度が属する区間に応じてそれぞれ計3〜5個のLEDが点灯(レベル3〜5)するようになっている。尚、
図1中、41は電気刺激が出力されている場合に点灯する出力表示LEDである。
【0050】
上述した電気刺激装置1の施療モードには、被施療者の麻痺部位から検出された筋電位に応じた強度の出力電流(電気刺激)を電気刺激手段14から麻痺部位に対して印加する第一の施療モード、及び被施療者の麻痺部位以外の部位または被施療者以外の者に属する部位から検出された筋電位に応じた強度の出力電流を電気刺激手段14から麻痺部位に印加する第二の施療モードが含まれている。第一の施療モードでの施療を行う場合は筋電検出・電気刺激両用電極15のみを利用し、第二の施療モードで施療を行う場合は筋電検出・電気刺激両用電極15及び電気刺激用電極38の双方を利用する。
【0051】
また、出力トランス10からの出力電流は、ラッチングリレー31でなる出力切替部21によって第一出力コネクタ28側、または第二出力コネクタ30側にその出力方向が自動で切り替えられる。即ち、通常、出力切替部21は第一出力コネクタ28側から出力電流が出力するように接点が接続されているが、施療モードとして上述の第二の施療モードが操作スイッチ部13を介して設定されると、第二出力コネクタ30側に出力電流が流れるように接点の接続が自動で切り替えられる。
【0052】
電気刺激装置1には、他の電気刺激装置2との間で情報を送受信する情報通信手段16としての通信回路42が設けられ、通信回路42はRS−232Cコンバータなどから構成される。通信回路42は本体5の左側面中央部に形成される信号入出力部43(通信コネクタ44)と接続される。電気刺激装置本体5は、信号入出力部43に接続される通信ケーブル45を介して後述する他の電気刺激装置本体51と有線接続され、電気刺激装置本体5の記憶部18に記録されている施療条件を他の電気刺激装置本体51側に送信したり(
図8参照)、逆に他の電気刺激装置2の施療履歴情報を受信して液晶表示部12に表示する(
図9参照)ことが可能となっている。
【0053】
次に、
図2、
図3及び
図5を参照して他の電気刺激装置2の構成について説明する。尚、
図3において電気刺激装置1の有する構成要素と同等の構成要素については、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。
図2に示すように、他の電気刺激装置2は、片麻痺の被施療者などの麻痺部位の皮膚表面に配されて筋電信号の検出及び電気刺激の印加を行う筋電検出・電気刺激両用電極48と、筋電検出・電気刺激両用電極48に電気刺激を供給する電気刺激手段49が内蔵される筐体50などでなる他の電気刺激装置本体51と、筋電検出・電気刺激用電極48を他の電気刺激装置本体51に接続する電極ケーブル52、他の電気刺激装置本体51の充電を行う充電装置66とを主たる構成としている。
【0054】
筋電検出・電気刺激用電極48は、電気刺激装置1の筋電検出・電気刺激両用電極15と同様の構成となっており、電極ケーブル52基端側の接続プラグ52aは筐体50の上側面中央に開設される出力コネクタ53に着脱自在に挿嵌される。
【0055】
他の電気刺激装置本体51は、略直方体形状の筐体50、筐体50上面の下方部に配設される操作スイッチ部54、施療条件などを読み出し可能に記憶する不揮発性メモリ(EEPROM)でなる記憶部55(記憶手段47)、筐体50内部に設けられる電気刺激手段49、電気刺激装置1との間で施療条件や施療履歴情報を送受信する情報通信手段56、これら各手段を制御するマイコンよりなる制御部57などから構成されている。
【0056】
他の電気刺激装置2の筐体50は、被施療者等が在宅などで携帯して施療が行えるように電気刺激装置1の筐体11よりも小型に、好ましくは20本入りの煙草箱のサイズ程度にその寸法を形成することが望ましい。これにより、被施療者の上衣の胸ポケットに筐体50を収納したり、または、不図示の装着手段を別途設けて筐体50を腰部や腕部などに装着して携帯することも可能となる。
【0057】
図2に示すように、操作スイッチ部54は、主電源の入切を行う電源スイッチ58、筋電検出の感度を微増調整する感度微増調整スイッチ59、筋電検出の感度を微減調整する感度微減調整スイッチ60、電気刺激の出力を開始する出力開始スイッチ61、電気刺激の出力を一時停止する出力停止スイッチ62の各種スイッチ群より構成されている。他の電気刺激装置2は、基本的に被施療者や被施療者の家族が在宅での施療に用いることを想定しており、医療従事者が不在の在宅環境下で被施療者等が不適切な施療条件での施療を行うことを回避するため、他の電気刺激装置本体51単体での施療条件の設定は勿論、筋電検出感度の微調整を除いて電気刺激装置本体5から受信した施療条件の変更は他の電気刺激装置本体51側では不可能となっている。筋電検出感度は、被施療者の皮膚状態により、検出できる筋電位に差が生じるため、電気刺激装置1から受信した筋電検出感度を基準として感度微増調整スイッチ59及び感度微減調整スイッチ60により他の電気刺激装置本体51の側で感度の変更(微調整)が可能となっている。尚、他の電気刺激装置本体51側での筋電検出感度の変更を不可能となるように構成しても構わない。
【0058】
また、筐体50上面の上方部には7個のLEDが縦方向に配置され、LED表示部79を構成している。最下位から5個目までは電気刺激装置5と同様であって、検出された筋電位強度に応じて点灯する筋電位レベルLED群で、下から6個目は電気刺激が出力されている場合に点灯する出力表示LED、最上位は他の電気刺激装置本体51の電源を入れた場合に点灯する電源表示LEDである。
【0059】
記憶手段47としての記憶部55は、電気刺激装置1から送信された施療条件や他の電気刺激装置2による施療履歴情報を記憶する。施療履歴情報としては、他の電気刺激装置2による施療時間を積算した積算施療時間、電気刺激が被施療者の麻痺部位に印加された回数(電気刺激印加回数)のほか、電気刺激が麻痺部位に対し印加された時間を積算した積算時間(積算印加時間)の各データを記憶するように構成されている。施療積算時間は、不図示のタイマによりカウントされる電気刺激の出力を開始してから停止するまでの時間を積算した時間である。電気刺激印加回数は、上述した筋電位レベルLEDが3個以上点灯する筋電位強度に対応して印加された電気刺激の回数をカウントしたもので、積算印加時間は不図示のタイマによりカウントされる筋電位レベルLEDが3個以上点灯する筋電位強度に対応して印加された電気刺激の印加時間を積算した時間である。
【0060】
他の電気刺激装置2の電池電源64にはニッケル水素二次電池(例えば、2.4V)が用いられ、図示は省略するが筐体50裏面に形成される二次電池収容部に装填することが可能となっている。電池電源64はニッケル水素二次電池に限定されることなく、例えば、リチウムイオン二次電池などの他の電池を用いても構わない。また、電池電源64の電池電圧値を検出する電池電圧検出回路71と、制御部57に制御用電源を供給するための電源回路75が設けられている。電池電圧検出回路71により電池電源64の電圧値が第一の閾値にまで低下したことが検出されると、制御部57は電源表示LEDを所定周期で点滅させて電圧値の低下を被施療者に報知する。また、電池電源64の電圧値が第一の閾値より低い電圧値とされる第二の閾値に到達すると、制御部57は他の電気刺激装置2の電源を切断する。
【0061】
他の電気刺激装置2の電気刺激手段49の構成のうち、電池電源64を除く、DC−DCコンバータ67、出力制御回路68、出力トランス69、電流検出回路70の構成及び筋電検出回路78の構成は電気刺激装置1と同様となっている。電池電源64とDC−DCコンバータ67はB接点スイッチ76で電気的に接続されている。DC−DCコンバータ67は、電気刺激装置1で設定した或被施療者に対する施療条件をそのまま他の電気刺激装置2に送信し記憶させて施療を行う場合などに、両装置の電池電源の相違による電気刺激の出力変動が生じないようにするため、電気刺激装置1のDC−DCコンバータ8と同一の所定電圧値(例えば、7.0V)にまで電池電源64の電圧値を昇圧する。
【0062】
筐体50内には充電切替回路65が内蔵され、充電切替回路65と電源回路75との間にはA接点スイッチ77が設けられている。充電装置66は充電器72とACアダプタ73からなり、充電器72に接続されたACアダプタ73の電源コードプラグ74を商用電源コンセントに差し込むことで他の電気刺激装置本体51を充電することが可能となっている。充電器72は、
図5に示すように他の電気刺激装置本体51を載置した状態で充電できるクレイドル型に形成されている。
【0063】
他の電気刺激装置本体51を充電装置66にセットし充電を開始すると、B接点スイッチ76が開状態となり出力制御回路68と電池電源64が切り離されるとともに、A接点スイッチ77が閉状態となり、電源回路75を通じて商用電源の電力が制御部57に供給される。他の電気刺激装置本体51の充電中は、被施療者等によって不用意にスイッチ操作が行われないようにするため、電源スイッチ58の入切以外の操作は受付けないようにしている。
【0064】
他の電気刺激装置2には、電気刺激装置1との間で情報を送受信する情報通信手段56としての通信回路81が設けられ、通信回路81はRS−232Cコンバータなどから構成される。通信回路81は、本体51右側面中央に形成される信号入出力部82(通信コネクタ80)と接続される。他の電気刺激装置本体51は、信号入出力部82に接続される通信ケーブル45を介して電気刺激装置本体5と有線接続され、電気刺激装置1の記憶部18に記憶された施療条件を受信し記憶部55に記憶したり、記憶部55に記憶している施療履歴情報を電気刺激装置本体5側に送信することが可能となっている。
【0065】
電気刺激装置1と他の電気刺激装置2との間の施療条件及び施療履歴情報のやり取りは具体的には
図10に示す通信形式で行われる。まず、電気刺激装置1で設定した施療条件を他の電気刺激装置2に送信する場合のやり取りについて説明する。電気刺激装置1から通信問合せに係る信号を他の電気刺激装置2に対して送信する(S1)。他の電気刺激装置はこの通信問合せに係る信号を受信し(S2)、電気刺激装置1に対して通信許可に係る信号を送信する(S3)。電気刺激装置1は通信許可に係る信号を受信し(S4)、施療条件に係る設定値情報を送信するコマンドとともに記憶部18に記憶されている施療条件に係る設定値情報を送信用の情報として他の電気刺激装置2に対して送信する(S5)。他の電気刺激装置2はこのコマンド及び設定値情報を受信し(S6)、電気刺激装置1に対してコマンド結果に係る信号を送信する(S7)とともに、コマンド実行、即ち、記憶部55へ受信した設定値情報の書き込みを実行する(S9)。電気刺激装置1は他の電気刺激装置2からコマンド結果に係る信号を受信する(S8)。尚、上述のコマンド及び設定値情報の送信時にノイズ等で設定値情報が書き換えられるエラーが発生した場合、他の電気刺激装置2はS7においてエラーのコマンド結果を電気刺激装置1に対し送信し、通信問合せ受信(S2)の状態に戻る。また、S8において、エラーのコマンド結果を受信した電気刺激装置1は通信問合せ送信(S1)の状態に戻り、通信問合せ(S1)を再開する。
【0066】
S10〜S17は、電気刺激装置1から送信した設定値情報が正確に他の電気刺激装置2の記憶部55に書き込まれ記憶されているか否かを確認する手順を示す。即ち、S9にてコマンド実行した後、他の電気刺激装置2は、通信問合せに係る信号を電気刺激装置1に対して送信し(S10)、電気刺激装置1はこの通信問合せに係る信号を受信する(S11)。電気刺激装置1は通信許可に係る信号を送信し(S12)、他の電気刺激装置2はこの通信許可に係る信号を受信する(S13)。他の電気刺激装置2は、S6にて受信し制御部57に一時記憶されているコマンド及びS9にて記憶部55に記憶された設定値情報を読み出して電気刺激装置1に対して送信する(S14)。電気刺激装置1は、このコマンド及び設定値情報を受信し(S15)、S5にて送信し制御部19に一時記憶されているコマンド及びS5にて送信した設定値情報と一致しているかどうかを制御部19で判断する。コマンド及び設定値情報が一致していると判断した場合、電気刺激装置1は一致のコマンド結果を他の電気刺激装置2に対し送信(S16)し、通信問合せ送信(S1)の状態に戻り、また、一致のコマンド結果を受信(S17)した他の電気刺激装置2は通信問合せ受信(S2)の状態に戻る。これにより電気刺激装置1から他の電気刺激装置2への施療条件に係る設定値情報の送信が終了する。一方、コマンド及び設定値情報が不一致となるエラーが発生したと制御部19が判断した場合は、電気刺激装置1はエラーのコマンド結果を他の電気刺激装置2に対して送信(S16)し、通信問合せ送信(S1)の状態に戻り、S1からの通信問合せを再開する。エラーのコマンド結果を受信(S17)した他の電気刺激装置2は通信問合せ受信(S2)の状態に戻る。
【0067】
次に、他の電気刺激装置2の施療履歴情報を電気刺激装置1に対して送信する場合の情報のやり取りを説明する。S1〜S4は電気刺激装置1で設定した施療条件を他の電気刺激装置2に送信する場合と同様なので説明を省略する。電気刺激装置1は、他の電気刺激装置2の施療履歴情報を要求するコマンドのみを他の電気刺激装置2に対して送信する(S5)。他の電気刺激装置2はコマンドを受信し(S6)、コマンド結果を電気刺激装置1に対して送信する(S7)とともにコマンド実行、即ち、記憶部55に記憶されている施療履歴情報を読み出し送信用の情報を作成する(S9)。S10〜S13を経由し、他の電気刺激装置2はS6にて受信し制御部57に一時記憶されている施療履歴情報のコマンド及び作成した施療履歴情報を併せて電気刺激装置1に対して送信する(S14)。電気刺激装置1は、このコマンドと施療履歴情報を受信し(S15)、受信したコマンドと、S5にて送信し制御部19に一時記憶されているコマンドとが一致しているかどうかを制御部19にて判断した後、コマンド結果を送信する(S16)。コマンドが一致している場合、電気刺激装置1は、通信問合せ送信(S1)の状態に戻り、
図9に示すような施療履歴情報を液晶表示部12に表示する。コマンド不一致のエラーが発生した場合は、電気刺激装置1は通信問合せ送信(S1)の状態に戻り、S1からの通信問合せを再開し、他の電気刺激装置2はエラーのコマンド結果を受信(S17)し、通信問合せ受信(S2)の状態に戻る。
【0068】
施療履歴情報を削除する場合は
図9左下に示す履歴消去欄にカーソルを合せた後、決定スイッチ40を押下する。この押下により以下の流れで施療履歴情報が削除される。S1〜S4を経由し、S5において施療履歴情報を削除するコマンドを他の電気刺激装置2に対して送信する。他の電気刺激装置2はコマンドを受信し(S6)、コマンド結果を電気刺激装置1に対して送信する(S7)とともにコマンド実行、即ち、記憶部55に記憶されている施療履歴情報を零リセットする。S10〜S13を経由し、S14において他の電気刺激装置2はS6にて受信し制御部57に一時記憶されている施療履歴情報の削除に係るコマンドを電気刺激装置1に対して送信する。電気刺激装置1は、このコマンドを受信し(S15)、受信したコマンドと、S5にて送信し制御部19に一時記憶されているコマンドとが一致しているかどうかを制御部19にて判断した後、コマンド結果を送信する(S16)。コマンドが一致している場合、電気刺激装置1は、通信問合せ送信(S1)の状態に戻り、全てのデータを零リセットした施療履歴情報を液晶表示部12に表示する。コマンド不一致のエラーが発生した場合は、電気刺激装置1は通信問合せ送信(S1)の状態に戻り、S1からの通信問合せを再開し、他の電気刺激装置2はエラーのコマンド結果を受信(S17)し、通信問合せ受信(S2)の状態に戻る。
【0069】
次に、電気刺激装置1の動作について説明する。まず、医療機関において施療者が第一の施療モードを用いて手関節の背屈動作や手指の伸展動作に障害を有する被施療者を施療する例を説明する。電気刺激装置本体5の第一出力コネクタ28に電極ケーブル6の接続プラグ6aを差し込み、電極ケーブル6と電気刺激装置本体5とを接続する。電極4a、4b及び電極39の各ホックに電極ケーブル6の各先端を係着させて、筋電検出・電気刺激両用電極15の電気刺激装置本体5への接続を完了する。施療者は、電極4a、4b(二極型電極4)を施療対象となる被施療者の麻痺部位である前腕の手関節背屈筋群や手指伸展筋群の筋腹上に、電極39を被施療者の前腕の手関節背屈筋群や手指伸展筋群の筋腹の一端(手首側)付近にそれぞれ貼り付けする。
【0070】
施療者は、電気刺激装置本体5の電源スイッチ32を入れ、液晶表示部12の表示を見ながら操作スイッチ部13の各種スイッチを操作して、施療モードを第一の施療モードに設定するほか、施療時間、電気刺激の最小出力及び最大出力、筋電検出感度の諸々の施療条件を設定する。筋電検出感度は前腕に力を入れたときにLED表示部46の筋電位レベルLEDが5個全て点灯し、脱力したときに筋電位レベルLEDが全て消灯するよう調節摘み33にて筋電検出感度値を調節する。力を強く入れても筋電位レベルLEDが全て点灯しないときや施療中に電気刺激の出力が弱いと感じたときは筋電検出感度値が高くなるように調節を行い、一方、脱力しても筋電位レベルLEDが全て消灯しない場合や施療中に電気刺激の出力が強いと感じときは筋電検出感度値が低くなるよう調整を行えばよい。脱力したときに筋電位レベルLEDが全て消灯するように筋電検出感度値を調整するのは、筋電検出回路20にノイズが侵入すると、筋から筋電位が出ていないにもかかわらず、筋電位が検出されたと誤認識して予期しない電気刺激が出力される可能性があるためである。尚、この被施療者に対する第一の施療モードに係る施療条件が記憶部18に予め記憶されている場合は、これを読み出して設定を行えばよい。尚、第一の施療モードで周波数は常時20Hzに固定されているが、周波数を変更して施療できるように構成しても構わない。
【0071】
第一の施療モードでは電気刺激の大きさは電極4aと電極4bの電極間で検出された筋電位の大きさによって決定されるため、調節摘み33での出力調整は不要である。前腕に力を入れると、電極4aと電極4bの電極間で検出された筋電位は筋電検出回路20に入力され、制御部19が筋電位量を算出して、その大きさに応じた出力電流が二極型電極4と電極39の電極間に流れ、手関節背屈筋群や手指伸展筋群に電気刺激が印加される。この電気刺激の印加により、手関節背屈筋群や手指伸展筋群の筋収縮が促され、この結果として手関節の背屈動作及び手指の伸展動作が強要され、被施療者は手関節及び手指関節の運動機能訓練を行うことができる。設定した施療時間が経過すると、電気刺激の出力が自動で停止するので、施療を終了する。
【0072】
電気刺激装置1での施療を繰り返し行い電池電源7の電圧値が低下した事象が液晶表示部12へ表示されたら、施療者は電気刺激装置本体5の電池収容部から使用済の単三乾電池4本を取り出し、新品の単三乾電池4本に取り替えればよい。
【0073】
次に、左右いずれか一方側の手関節の背屈動作や手指の伸展動作に障害を有する被施療者に対して第二の施療モードを用いて施療を行う例を説明する。第二の施療モードは、麻痺部位からの筋電位の検出が困難な重度麻痺の被施療者などに対して有効な施療モードであり、例えば、健側部位から検出された筋電位に応じた強度の電気刺激を麻痺部位に対して印加することが可能で、健側部位を麻痺側部位とともに動作させることで、一次運動野と補足運動野を活性化させ、麻痺部位の随意筋収縮の促進が期待できる。
【0074】
施療者は、電気刺激装置本体5の第二出力コネクタ30に電極ケーブル29の接続プラグ29aを差し込み、電極ケーブル29と電気刺激装置本体5とを接続した後、電極38a、38bの各ホックに電極ケーブル29の各先端を係着させて、電気刺激用電極38を電気刺激装置本体5への接続を完了する。これにより電気刺激装置本体5には、筋電検出・電気刺激両用電極15に加えて、電気刺激用電極38が接続された状態になる(
図4参照)。被施療者の麻痺部位に対応する前腕の手関節背屈筋群や手指伸展筋群(麻痺部位の筋と同名筋)の筋腹上に筋電検出・電気刺激両用電極15を、被施療者の麻痺部位となる前腕の手関節背屈筋群や手指伸展筋群の筋腹の両端に電気刺激用電極38をそれぞれ貼り付けする。
【0075】
電気刺激装置本体5の電源スイッチ32を入れ、液晶表示部12の表示を見ながら操作スイッチ部13の各種スイッチを操作して、施療モードを第二の施療モードに設定するほか、施療時間、電気刺激の最小出力及び最大出力、筋電検出感度の諸々の施療条件を設定する。第二の施療モードでも周波数は20Hzに固定されている。
【0076】
電極4aと電極4bの電極間で検出された前腕(健側)の筋電位は筋電検出回路20に入力され、制御部19が筋電位量を算出して、その大きさに応じた出力電流が電極38aと電極38bの電極間に流れ、麻痺部位の手関節背屈筋群や手指伸展筋群に電気刺激が印加される。
【0077】
また、第二の施療モードは、電気刺激を印加する麻痺部位の筋と非同名筋となる部位から筋電位を検出して、この筋電位をトリガーとする施療を行いたい場合などにも有効であり、例えば、肩関節筋群の筋電位を検出し、この筋電位に応じた強度の電気刺激を前腕の手関節背屈筋群や手指伸展筋群に印加するケースなどが考えられる。また、施療者や被施療者の家族など被施療者以外の者に属する部位から筋電位を検出して、被施療者に電気刺激を印加することも可能である。
【0078】
次に、他の電気刺激装置2の動作を説明する。他の電気刺激装置2は、施療者の指導の下に被施療者が在宅等での施療を行う際に主に使用する。上述の通り、他の電気刺激装置2単体では施療条件の設定が不可能となっているため、予め医療機関等において施療者が通信ケーブル45を介して電気刺激装置本体5と有線接続し、電気刺激装置本体5から他の電気刺激装置本体51に施療条件を取り込んでおく必要がある。まず、電気刺激装置本体5の電源を入れ、他の電気刺激装置本体51と通信ケーブル45で接続を行った後、他の電気刺激装置本体51の電源を入れる。施療者は電気刺激装置本体5のスイッチ群を操作し記憶部18に記憶されている施療条件を読み出す。他の電気刺激装置2に送信する直前の電気刺激装置1の液晶表示部12は
図8に示すようになっているので、読み出した施療条件に係る各設定値情報を確認し、また必要に応じ設定値情報を修正した後、液晶表示部12のカーソルを送信欄に合わせ決定スイッチ40を押下し送信処理を行う。これにより設定値データが通信ケーブル45、信号入出力部82、通信回路81を経由して他の電気刺激装置本体51に送信され記憶部55に記憶される。
【0079】
出力コネクタ53に筋電検出・電気刺激用電極48を接続した後、筋電検出・電気刺激用電極48を上述したように被施療者の前腕(麻痺部位)の所定位置に貼り付ける。被施療者の筋電位を筋電位レベルLEDで確認しつつ、必要に応じ感度微増調整スイッチ59及び感度微減調整スイッチ60を操作して筋電検出感度を微調整する。最小出力、最大出力、施療時間に係る施療条件は被施療者が他の電気刺激装置2側で変更することは不可能となっているため、被施療者が勝手に施療条件を変更し不適切な施療条件での施療を継続することはなく、効果的な施療の妨げになることはない。
【0080】
施療準備が整ったら、出力開始スイッチ61を押下し施療を開始する。他の電気刺激装置本体51は被施療者が携帯可能なサイズに形成されているので、例えば、本体51を上衣の胸ポケットなどに収納し常時携帯しておくことで、在宅で日常生活動作を行う中での施療も実現できる。つまり、日常生活動作を行う中で、無意識のうちに麻痺部位に力が入り筋電位が検出され、この筋電位に応じた強度の電気刺激が印加されることで、自然に麻痺部位の施療(運動機能訓練)が行えることになるわけである。この場合、筋電検出・電気刺激両用電極48が皮膚表面から剥離し脱落しないように不図示の固定帯などで筋電検出・電気刺激両用電極48を被施療者の肢体部位に固定しておくことが望ましい。他の電気刺激装置2のDC−DCコンバータ67は、電気刺激装置1のDC−DCコンバータ8と同一の所定電圧値にまで電池電源64の電圧値を昇圧し電気刺激を出力するので、電気刺激装置1から受信した施療条件に基づいて施療を行っても、両装置の電池電源の相違に起因する電気刺激の出力変動は生じないようになっている。
【0081】
施療時間の途中で施療を中断する場合は出力停止スイッチ62を押下すればよい。他の電気刺激装置2での施療を繰り返し行った結果、電池電源64の電圧値が低下し電源表示LEDの点滅事象が発生したら、
図5に示すように他の電気刺激装置本体51を充電器72に載置し、充電を開始する。また、一度設定した他の電気刺激装置本体51の施療条件を変更する場合は、通信ケーブル45を介して電気刺激装置本体5と再度接続し、他の電気刺激装置本体51に施療条件の取り込み(上書き)を行えばよい。
【0082】
他の電気刺激装置2による施療に伴い、積算施療時間、電気刺激印加回数、積算印加時間の施療履歴情報が他の電気刺激装置本体51の記憶部55に蓄積されていくので、施療者は、指示通りの施療を被施療者が在宅で行っているかどうかなど被施療者による在宅での施療状況を把握・管理したい場合は、通院時のタイミングで被施療者に他の電気刺激装置2を持参させ、医療機関にある電気刺激装置1と
図6に示すように通信ケーブル45を介して接続し、他の電気刺激装置2での施療履歴情報を電気刺激装置1に取り込み、液晶表示部12に表示する。新たに施療履歴情報を他の電気刺激装置2に記憶させたい場合は、電気刺激装置本体5の下スイッチ35などを操作し液晶表示部12に表示される履歴消去欄にカーソルを合わせた後、決定スイッチ40を押下して記憶部55に記憶されている施療履歴情報を零リセットすればよい。
【0083】
尚、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。詳細説明及び図示は省略するが、例えば、以下のような構成を採用することができる。
【0084】
電気刺激装置1の電池電源7の電圧値低下を被施療者等に報知する手段として、液晶表示部12への表示のほかに音声メッセージや警告音の鳴動などを採用してもよい。また、液晶表示部12への表示と音声メッセージまたは警告音の鳴動を併用してもよい。また、電池電源7の残量を液晶表示部12に表示することもできる。
【0085】
情報通信の方法は、通信ケーブル45による有線接続ではなく、赤外線通信などの無線通信によるものとすることもできる。電気刺激装置1と他の電気刺激装置2との間の情報のやり取りに係る通信形式も両装置間で施療条件及び施療履歴情報のやり取りが可能であれば如何なる形式を採用しても構わない。
【0086】
電気刺激装置1に設けられる施療モードの態様も第一及び第二の施療モードの二種類だけでなく、予め設定された条件で筋電位強度に依存しない電気刺激を出力するノーマルモードなど、その他の施療モードを加え、適宜選択できるようにしてもよい。
【0087】
上述の実施形態では、他の電気刺激装置2は第一の施療モードに係る施療条件のみを電気刺激装置1から受信して記憶する例を説明したが、電気刺激装置1に用意されているその他の施療モードも必要に応じ受信して施療が行えるように他の電気刺激装置本体51を構成してもよい。また、他の電気刺激装置2が取り込み記憶する施療条件も、必ずしも電気刺激装置1の記憶部18に記憶されている必要はなく、他の電気刺激装置2が電気刺激装置1を介して施療条件を取り込み記憶さえできれば他の構成を採用してもよい。また、電気刺激装置1に用意されているその他の施療モードを他の電気刺激装置で受信して施療が行えるようにした場合、その他の施療モードでの施療履歴情報を電気刺激装置1の液晶表示部に表示させることが好ましい。
【0088】
また、電気刺激装置1と同様に他の電気刺激装置2にも液晶表示部を付設し、施療者や被施療者が、電気刺激装置1から取り込んだ施療条件や他の電気刺激装置2による施療履歴情報を液晶表示部にて確認できるように他の電気刺激装置2を構成してもよい。また、液晶表示部に加えて、電気刺激装置1から受信した施療条件を変更する変更スイッチや被施療者による施療条件の変更を不可能とするパスワード設定手段などを他の電気刺激装置2に付設し、液晶表示部に表示された施療条件の全部または一部を施療者だけが必要に応じ変更し使用できるように構成してもよい。この構成によれば、例えば、医療機関において、電気刺激装置1が使用中であり、空いているのが他の電気刺激装置2であって、しかも他の電気刺激装置2の施療条件を変更せざるをえない場合などに、電気刺激装置1が空くまで被施療者を待機させることなく、施療者が施療条件を変更して即座に施療を開始することができ、また、被施療者が他の電気刺激装置2を持ち帰り在宅で施療する場合はパスワード設定手段によりパスワードを設定し被施療者による施療条件の変更を不可にすることで、被施療者が施療条件を勝手に変更することも防止でき、利便性に優れたものとなる。