特許第5920946号(P5920946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5920946加入者認証モジュールの不正使用防止装置および不正使用防止方法ならびに通信端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920946
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】加入者認証モジュールの不正使用防止装置および不正使用防止方法ならびに通信端末
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/675 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   H04M1/675
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-173779(P2014-173779)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-48882(P2016-48882A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】榊原 淳
【審査官】 浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−362366(JP,A)
【文献】 特開2013−247534(JP,A)
【文献】 特開2014−165580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04M 1/00− 1/82
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末に取り外し可能に装着されると共に加入者識別情報を有する加入者認証モジュールが、前記通信端末から取り外し可能な状態にあることを検出する検出部と、
前記検出部の検出信号に基づいて、前記加入者識別情報を読み出すためのパスワードを前記加入者認証モジュールに設定するパスワード設定部と、を有し、
前記検出部は、
前記通信端末に設けられた前記加入者認証モジュールの出し入れ口の少なくとも一部を開放可能に閉鎖するカバーと、
前記カバーが開放されたときに前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にある旨の検出信号を発生するセンサと、を有することを特徴とする加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【請求項2】
前記パスワード設定部が前記加入者認証モジュールに前記パスワードを設定することにより、前記通信端末から取り外された前記加入者認証モジュールの不正使用を防止することを特徴とする請求項1に記載の加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【請求項3】
前記パスワードを記憶したパスワード記憶部をさらに有し、
前記パスワード設定部は、前記検出部の検出信号に基づいて、前記パスワード記憶部に記憶されている前記パスワードを前記加入者認証モジュールに設定することを特徴とする請求項1または2に記載の加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【請求項4】
前記検出部及び前記パスワード設定部を駆動するための電源部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【請求項5】
前記電源部は、前記通信端末の電源部とは独立して設けられていることを特徴とする請求項に記載の加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【請求項6】
前記通信端末は、少なくとも記憶部と制御部とを有し、
前記通信端末の記憶部は、前記パスワード記憶部として機能し、
前記通信端末の制御部は、前記パスワード設定部として機能することを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【請求項7】
通信端末に取り外し可能に装着されると共に加入者識別情報を有する加入者認証モジュールが、前記通信端末から取り外し可能な状態にあることを、検出部によって検出する工程と、
前記取り外し可能状態検出工程にて、前記検出部によって前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にあると検出した場合に、前記加入者識別情報を読み出すためのパスワードを前記加入者認証モジュールに設定する工程と、を有し、
前記検出部は、
前記通信端末に設けられた前記加入者認証モジュールの出し入れ口の少なくとも一部を開放可能に閉鎖するカバーと、
前記カバーが開放されたときに前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にある旨の検出信号を発生するセンサと、を有することを特徴とする加入者認証モジュールの不正使用防止方法。
【請求項8】
前記パスワードをメモリに予め記憶しておく工程と、
前記取り外し可能状態検出工程にて、前記検出部によって前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にあると検出した場合に、前記パスワード記憶工程にてメモリに記憶されている前記パスワードを読み出す工程とをさらに有し、
前記パスワード設定工程にて、前記パスワード読み出し工程にて読み出した前記パスワードを前記加入者認証モジュールに設定することを特徴とする請求項に記載の加入者認証モジュールの不正使用防止方法。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の不正使用防止装置を有することを特徴とする通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン等の通信端末に用いられるSIMカード等の加入者認証モジュールの不正使用を防止する加入者認証モジュールの不正使用防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンや携帯電話機等の通信端末には、通常、SIM(Subscriber Identity Module)カード、UIM(User Identity Module)カード、USIM(Universal Subscriber Identity Module)カード等の加入者認証モジュールが装着されている。
【0003】
加入者認証モジュールは、一般に、情報記憶媒体を兼ねた小型の接触型ICカードによって構成され、通信端末に取り外し可能に装着される。加入者認証モジュールには少なくとも、加入者識別符号(IMSI:International Mobile Subscriber Identity)と呼ばれるモジュール毎に固有の符号が、一般ユーザには書き換え不能な状態で記憶されている。
【0004】
ユーザが通信端末を用いて通話やデータ通信等の通信を行うべくネットワークにアクセスする際、通信端末は、装着されている加入者認証モジュールから加入者識別符号を読み出し、通信サービスを提供するネットワーク事業者側の装置に対してネットワークを介して送信する。ネットワーク事業者側の装置は、受信した加入者識別符号と、予め記憶している電話番号を含む加入者契約情報とを照合し、加入者識別符号に一義的に対応した電話番号での通信を許可する仕組みとなっている。
【0005】
ところで、ユーザは、加入者識別符号を書き換えることはできないが、加入者認証モジュールを通信端末から取り外すことは自由にできる。したがって、加入者認証モジュールを別の通信端末に差し替え、その通信端末を用いて通信を行うことが可能である。その反面、第三者が、他人の加入者認証モジュールを用いて不正な通信(なりすましの通信)を行うことも可能である。
【0006】
上記のような第三者による加入者認証モジュールの不正使用の対策として、通信端末の多くは、加入者認証モジュールの記憶領域に、PIN(Personal Identification Number)と呼ばれる、加入者認証モジュールに記憶された加入者識別符号等の情報の読み出しを許可するためのパスワード(以後、モジュールパスワードとも呼ぶ)を記憶させる機能を有し、通信開始前もしくは通信端末の電源オン時の都度、正しいモジュールパスワードを入力しない限りは、加入者識別符号の読み出しや送信ができない、即ち、通信ができないようになっている。
【0007】
ところが、モジュールパスワードを設定した場合は設定していない場合に比べてネットワークアクセス操作が煩雑化するため、モジュールパスワードを設定せずに通信端末を使用するユーザが多いのが実情である。そのため、悪意を持った第三者が、紛失したり盗難に遭った通信端末からPIN設定がされていない加入者認証モジュールを取り出し、他の通信端末に装着してなりすましの通信を行う虞が依然としてある。
【0008】
加入者認証モジュールの不正使用防止策に関する関連技術は、例えば、特許文献1〜5に開示されている。
【0009】
特許文献1には、SIMカードが携帯電話機に装着されているか否かを検出し、脱着があった場合に警告をユーザに報知する携帯電話機が開示されている。
【0010】
特許文献2には、所定の認証条件のときにUSIMカードを機械的にロックすることにより、携帯電話機が盗難された場合であってもUSIMカードが取り出されることを防止する携帯電話機が開示されている。
【0011】
特許文献3には、加入者認証モジュールに関する技術ではないが、デバイスロック機能が有効とされた状態で電源がオンされた際に暗号化機能が有効とされることにより、録音されたデータが自動的に暗号化されて記録媒体に記録されるようにした音声記録再生装置が開示されている。
【0012】
特許文献4には、携帯端末が電源オンされた時に、PINコード設定が無効になっていた場合、携帯端末の製造番号と予め加入者認証モジュールに登録されている製造番号を比較し、一致しない場合、加入者識別符号の出力を停止することで不正使用を防止する加入者認証モジュールが開示されている。
【0013】
特許文献5には、通信装置に装着したUSIMカードに当該通信装置に固有の装置固有情報を記憶しておき、USIMカードが取り外された後にいずれかの通信装置に新たに装着されたときに、USIMカードに記憶されている装置固有情報と、USIMカードが新たに装着された通信装置に記憶されている装置固有情報とを比較し、不一致であればUSIMカードの不正使用であると判断し、不正使用である旨を所定の連絡先に向けて報知するようにした通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−238260号公報
【特許文献2】特開2007−251244号公報
【特許文献3】特開2010−026785号公報
【特許文献4】特開2007−336219号公報
【特許文献5】特開2010−034862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、第三者による加入者認証モジュールの不正使用の対策としてのモジュールパスワードではあるが、加入者認証モジュールにモジュールパスワードを設定せずに通信端末を使用するユーザが多いのが実情である。
【0016】
本発明の目的は、ユーザがモジュールパスワードを設定せずとも、第三者が他人の加入者認証モジュールを用いて不正ななりすましの通信を行うことを防止できる加入者認証モジュールの不正使用防止装置および加入者認証モジュールの不正使用防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様に係る加入者認証モジュールの不正使用防止装置は、通信端末に取り外し可能に装着されると共に加入者識別情報を有する加入者認証モジュールが、前記通信端末から取り外し可能な状態にあることを検出する検出部と、前記検出部の検出信号に基づいて、前記加入者識別情報を読み出すためのパスワードを前記加入者認証モジュールに設定するパスワード設定部と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の他の態様に係る加入者認証モジュールの不正使用防止方法は、通信端末に取り外し可能に装着されると共に加入者識別情報を有する加入者認証モジュールが、前記通信端末から取り外し可能な状態にあることを検出する工程と、前記取り外し可能状態検出工程にて前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にあると検出した場合に、前記加入者識別情報を読み出すためのパスワードを前記加入者認証モジュールに設定する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに他の態様に係る通信端末は、前記不正使用防止装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ユーザがモジュールパスワードを設定せずとも、第三者が他人の加入者認証モジュールを用いて不正ななりすましの通信を行うことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る加入者認証モジュールの不正使用防止装置の実施形態1を示すブロック図である。
図2図1に示された加入者認証モジュールの不正使用防止装置の動作を説明するための図であり、(a)はカバーが閉じられた状態を示し、(b)はカバーが開かれた状態を示す。
図3図1に示された加入者認証モジュールの不正使用防止装置の動作を説明するためのフロー図である。
図4】本発明に係る加入者認証モジュールの不正使用防止装置の実施形態2を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態1]
図1を参照すると、本発明の実施形態1による加入者認証モジュールの不正使用防止装置100は、スマートフォンである通信端末600に適用される。そして、加入者識別符号(IMSI)を含む情報が記憶されたSIM(Subscriber Identity Module)である加入者認証モジュール200が通信端末600から取り外された後に、悪意を持った第三者によって別の通信端末に装着されて不正ななりすまし通信が実行されることを防止する。
【0023】
通信端末600は、記憶部620と、制御部610と、電源部630と、無線通信部640と、ユーザーインターフェース(U/I)部650(具体的には図示せず)と、インターフェース部(モジュールスロット680以外は図示せず)と、これら構成部位を収容する筐体(図1中、概念的にのみ図示している)とを有している。
【0024】
記憶部620は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションソフトウエアならびに各種処理データを記憶する。
【0025】
制御部610は、記憶部620に記憶されているオペレーティングシステムおよびアプリケーションソフトウエアにしたがって各種演算処理を行う演算素子を含む。
【0026】
電源部630は、電源回路631および充電式のバッテリ632から成る。
【0027】
無線通信部640は、携帯電話回線を利用した通話およびデータ通信、無線LAN(Local Area Network)通信、さらに、ブルートゥース(商標または登録商標)通信等を実行可能である。
【0028】
ユーザーインターフェース(U/I)部650は、タッチパネルディスプレイ、操作ボタン、マイクロフォン、スピーカ、およびカメラ等を有している。
【0029】
インターフェース部は、加入者認証モジュール200が取り外し可能に装着されるモジュールスロット680、マイクロSD(Security Digital)カード(商標または登録商標)が取り外し可能に装着されるマイクロSDカードスロット、USB(Universal Serial Bus)端子、ならびにヘッドフォン端子等である。
【0030】
さて、本発明による加入者認証モジュールの不正使用防止装置100は特に、モジュール取り外し予検出部160と、PIN(Personal Identification Number)設定部(モジュールパスワード設定部)110と、モジュールパスワードを記憶したPIN記憶部(モジュールパスワード記憶部)120とを有している。
【0031】
モジュール取り外し予検出部160は、通信端末600のモジュールスロット680に取り外し可能に装着された加入者認証モジュール200が通信端末600から取り外し可能な状態にあることを検出する。
【0032】
より具体的には、モジュール取り外し予検出部160は、カバー161と、開閉センサ162とを有している。
【0033】
カバー161は、通信端末600のモジュールスロット680の開口部である加入者認証モジュール200の出し入れ口に、図1中左右方向にスライド可能に構成されており、これにより、加入者認証モジュール200の出し入れ口の少なくとも一部を開放可能に閉鎖する。
【0034】
開閉センサ162は、図1のごとくカバー161が開放されたときに加入者認証モジュール200が取り外し可能な状態にある旨の検出信号を、発生する。尚、本例において開閉センサ162は、プッシュスイッチによって構成されているが、カバー161が開放されたことを検出できるのであれば、磁気式、光学式等の他の形式のセンサであってもよい。
【0035】
PIN設定部110は、モジュールパスワード(PIN)を記憶したPIN記憶部(モジュールパスワード記憶部)120を有している。そして、カバー161が開かれた旨のモジュール取り外し予検出部160の検出信号に基づいて、PIN記憶部120に記憶されているモジュールパスワードを加入者認証モジュール200に設定する。
【0036】
加入者認証モジュールの不正使用防止装置100はさらに、電源部130を有している。
【0037】
電源部130は、電源回路131と、充電可能なバッテリ132とを有している。電源部130は、通信端末600本体用の電源部630とは個別に、かつ、通信端末600の筐体内に封入して設けられている。バッテリ132は、通信端末600の電源部630を介して充電されるように構成されている。尚、充電可能であるならば、バッテリに代えてキャパシタを用いてもよい。また、バッテリ132を通信端末600の筐体内に封入して設けている理由は、加入者認証モジュールの不正使用防止装置100が動作する前に、悪意の第三者によって電源供給を断たれてしまうことを回避するためである。
【0038】
次に、図1図3を参照して、本加入者認証モジュールの不正使用防止装置100の動作を説明する。
【0039】
ここで、通信端末600のモジュールスロット680に加入者認証モジュール200が装着され、さらに、図2(a)に示されるように、カバー161が閉じられ、通信端末600の正規のユーザが通信端末600を正常に使用しているとする。また、電源部130の充電可能なバッテリ132は、通信端末600の電源部630を介して充電されている。
【0040】
さて、ステップS10において、通信端末600の電源部630から電源供給されている制御部610は、モジュールスロット680に加入者認証モジュール200が装着されているか否かを、常に監視する。尚、制御部610による監視の結果は、加入者認証モジュールの不正使用防止装置100のPIN設定部110と共有している。ただし、加入者認証モジュール200の装着の当否を、制御部610による監視に拠らずに、PIN設定部110自体によって監視するように構成してもよい。
【0041】
ステップS20において、加入者認証モジュールの不正使用防止装置100の電源部130から電源供給されているPIN設定部110は、カバー161の開/閉状態を、常に監視する。
【0042】
ここで、例えば正規のユーザが通信端末600を紛失し、この通信端末600を拾った悪意の第三者が通信端末600の筐体を開けて加入者認証モジュール200をモジュールスロット680から取り出そうとしているとする。この第三者は、加入者認証モジュール200を取り出すために、図2(a)に示されるように閉じられているカバー161をスライドし、図2(b)に示されるようにカバー161を開放する。その結果、ステップS20において、PIN設定部110は、開閉センサ162を用いてカバー161が開かれたことを検出し、即時にステップS30に移行する。
【0043】
ステップS30において、PIN設定部110は、PIN記憶部120に予め記憶されているモジュールパスワード(PIN)を読み出し、ステップS40に移行する。
【0044】
次いで、ステップS40において、PIN設定部110は、加入者認証モジュール200に対してPIN設定(モジュールパスワードを設定)を行う。即ち、加入者認証モジュール200に記憶されている加入者識別符号(IMSI)を含む秘匿にすべき情報を、正しいモジュールパスワードを入力しない限りは読み出しができないようにモジュールパスワードと関連付けて加入者認証モジュール200に記憶させる。
【0045】
以上の加入者認証モジュールの不正使用防止装置100の動作により、悪意の第三者によってモジュールスロット680から取り出された加入者認証モジュール200は、PIN設定が既になされたものである。その結果、この第三者が、取り出した加入者認証モジュール200を別の通信端末に装着してなりすましの通信を行おうとしても、正しいモジュールパスワードを入力しない限りは加入者識別符号(IMSI)が出力されず、通信を行うことはできない。
【0046】
[実施形態2]
本発明の実施形態2の加入者認証モジュールの不正使用防止装置は、モジュールパスワード記憶部およびモジュールパスワード設定部がそれぞれ、通信端末の記憶部および制御部と兼用に構成されている点で、実施形態1と異なっている。このため、実施形態1と同一または同様の部分については、実施形態1における説明および図面を援用することとし、詳細な説明は省略する。
【0047】
図4を参照すると、本発明の実施形態2による加入者認証モジュールの不正使用防止装置100’は、実施形態1の不正使用防止装置100と同様に、スマートフォンである通信端末600’に適用され、加入者識別符号(IMSI)を含む情報が記憶されたSIM(Subscriber Identity Module)である加入者認証モジュール200が通信端末600’から取り外された後に、悪意を持った第三者によって別の通信端末に装着されて不正ななりすまし通信が実行されることを防止する装置である。
【0048】
通信端末600’は、記憶部620’と、制御部610’と、電源部630と、無線通信部640と、ユーザーインターフェース(U/I)部650(具体的には図示せず)と、インターフェース部(モジュールスロット680以外は図示せず)と、これら構成部位を収容する筐体(図4中、概念的にのみ図示している)とを有している。
【0049】
通信端末600’は、記憶部620’と、制御部610’と、電源部630と、無線通信部640と、ユーザーインターフェース(U/I)部650(具体的には図示せず)と、インターフェース部(モジュールスロット680以外は図示せず)と、これら構成部位を収容する筐体(図1中、概念的にのみ図示している)とを有している。
【0050】
記憶部620’は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションソフトウエアならびに各種処理データを記憶する。制御部610’は、記憶部620’に記憶されているオペレーティングシステムおよびアプリケーションソフトウエアにしたがって各種演算処理を行う演算素子を含む。電源部630は、電源回路631および充電式のバッテリ632から成る。無線通信部640は、携帯電話回線を利用した通話およびデータ通信、無線LAN(Local Area Network)通信、さらに、ブルートゥース(商標または登録商標)通信等を実行可能である。ユーザーインターフェース(U/I)部650は、タッチパネルディスプレイ、操作ボタン、マイクロフォン、スピーカ、およびカメラ等を有している。インターフェース部は、加入者認証モジュール200が取り外し可能に装着されるモジュールスロット680、マイクロSD(Security Digital)カード(商標または登録商標)が取り外し可能に装着されるマイクロSDカードスロット、USB(Universal Serial Bus)端子、ならびにヘッドフォン端子等である。
【0051】
さて、本加入者認証モジュールの不正使用防止装置100’は、モジュール取り外し予検出部160と、PIN(Personal Identification Number)設定部(モジュールパスワード設定部)110’と、モジュールパスワードを記憶したPIN記憶部(モジュールパスワード記憶部)120’とを有している。
【0052】
モジュール取り外し予検出部160は、通信端末600’のモジュールスロット680に取り外し可能に装着された加入者認証モジュール200が通信端末600’から取り外し可能な状態にあることを検出する。より具体的には、モジュール取り外し予検出部160は、カバー161と、開閉センサ162とを有している。カバー161は、通信端末600’のモジュールスロット680の開口部である加入者認証モジュール200の出し入れ口に、図4中左右方向にスライド可能に構成されており、これにより、加入者認証モジュール200の出し入れ口の少なくとも一部を開放可能に閉鎖する。開閉センサ162は、図4のごとくカバー161が開放されたときに加入者認証モジュール200が取り外し可能な状態にある旨の検出信号を発生する。
【0053】
PIN設定部110’は、カバー161が開かれた旨のモジュール取り外し予検出部160の検出信号に基づいて、PIN記憶部120’に記憶されているモジュールパスワードを加入者認証モジュール200に設定する。
【0054】
加入者認証モジュールの不正使用防止装置100’はさらに、電源部130を有している。電源部130は、電源回路131と、充電可能なバッテリ132とを有している。電源部130は、通信端末600’本体用の電源部630とは個別に、かつ、通信端末600’の筐体内に封入して設けられている。バッテリ132は、通信端末600’の電源部630を介して充電されるように構成されている。尚、バッテリ132を通信端末600’の筐体内に封入して設けている理由は、加入者認証モジュールの不正使用防止装置100が動作する前に、悪意の第三者によって電源供給を断たれてしまうことを回避するためである。
【0055】
特に、本実施形態においては、PIN記憶部120’およびPIN設定部110’がそれぞれ、通信端末600’の記憶部620’および制御部610’と兼用に構成されている。ただし、電源部に関しては、通信端末600’本体と、加入者認証モジュールの不正使用防止装置100’とで個別に設ける。即ち、通信端末600’本体には電源部630を設ける一方、加入者認証モジュールの不正使用防止装置100’には通信端末600’の筐体内に封入した状態で電源部130を設けている。
【0056】
実施形態2による加入者認証モジュールの不正使用防止装置100’も、実施形態1による加入者認証モジュールの不正使用防止装置100と同様に動作する。
【0057】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0058】
(付記1)
通信端末に取り外し可能に装着されると共に加入者識別情報を有する加入者認証モジュールが、前記通信端末から取り外し可能な状態にあることを検出する検出部と、
前記検出部の検出信号に基づいて、前記加入者識別情報を読み出すためのパスワードを前記加入者認証モジュールに設定するパスワード設定部と、
を有することを特徴とする加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【0059】
(付記2)
前記パスワード設定部が前記加入者認証モジュールに前記パスワードを設定することにより、前記通信端末から取り外された前記加入者認証モジュールの不正使用を防止することを特徴とする付記1の加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【0060】
(付記3)
前記検出部は、
前記通信端末に設けられた前記加入者認証モジュールの出し入れ口の少なくとも一部を開放可能に閉鎖するカバーと、
前記カバーが開放されたときに前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にある旨の検出信号を発生するセンサとを有することを特徴とする付記1または2の加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【0061】
(付記4)
前記パスワードを記憶したパスワード記憶部をさらに有し、
前記パスワード設定部は、前記検出部の検出信号に基づいて、前記パスワード記憶部に記憶されている前記パスワードを前記加入者認証モジュールに設定することを特徴とする付記1乃至3のいずれかの加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【0062】
(付記5)
前記検出部及び前記パスワード設定部を駆動するための電源部をさらに有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか一項の加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【0063】
(付記6)
前記電源部は、前記通信端末の電源部とは独立して設けられていることを特徴とする付記5の加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【0064】
(付記7)
前記通信端末は、少なくとも記憶部と制御部とを有し、
前記通信端末の記憶部は、前記パスワード記憶部として機能し、
前記通信端末の制御部は、前記パスワード設定部として機能することを特徴とする付記4乃至6のいずれかの加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【0065】
(付記8)
前記電源部は、バッテリまたはキャパシタをさらに有し、かつ、前記通信端末の筐体内に取り出し不可能に封入して設けられていることを特徴とする付記5乃至7のいずれかの加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【0066】
(付記9)
前記バッテリまたは前記キャパシタは、前記通信端末の電源部を介して充電されるように構成されていることを特徴とする付記5乃至8のいずれかの加入者認証モジュールの不正使用防止装置。
【0067】
(付記10)
付記1乃至9のいずれかの不正使用防止装置を有することを特徴とする通信端末。
【0068】
(付記11)
通信端末に取り外し可能に装着されると共に加入者識別情報を有する加入者認証モジュールが、前記通信端末から取り外し可能な状態にあることを検出する工程と、
前記取り外し可能状態検出工程にて前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にあると検出した場合に、前記加入者識別情報を読み出すためのパスワードを前記加入者認証モジュールに設定する工程と、
を有することを特徴とする加入者認証モジュールの不正使用防止方法。
【0069】
(付記12)
前記パスワード設定工程にて前記加入者認証モジュールに前記パスワードを設定することにより、前記通信端末から取り外された前記加入者認証モジュールの不正使用を防止することを特徴とする付記11の加入者認証モジュールの不正使用防止方法。
【0070】
(付記13)
前記通信端末に設けられた前記加入者認証モジュールの出し入れ口の少なくとも一部を開放可能に閉鎖するカバーを予め設ける工程をさらに有し、
前記取り外し可能状態検出工程にて、前記カバーが開放されたときに前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にある旨を検出することを特徴とする付記11または12の加入者認証モジュールの不正使用防止方法。
【0071】
(付記14)
前記パスワードをメモリに予め記憶しておく工程と、
前記取り外し可能状態検出工程にて前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にあると検出した場合に、前記パスワード記憶工程にてメモリに記憶されている前記パスワードを読み出す工程とをさらに有し、
前記パスワード設定工程にて、前記パスワード読み出し工程にて読み出した前記パスワードを前記加入者認証モジュールに設定することを特徴とする付記11乃至13のいずれかの加入者認証モジュールの不正使用防止方法。
【0072】
(付記15)
通信端末に設けられ、記憶手段と、演算手段とを備えたコンピュータに、
前記通信端末に取り外し可能に装着されると共に加入者識別情報を有する加入者認証モジュールが、前記通信端末から取り外し可能な状態にあることを検出する工程と、
前記取り外し可能状態検出工程にて前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にあると検出した場合に、前記加入者識別情報を読み出すためのパスワードを前記加入者認証モジュールに設定する工程と、
を実行させることを特徴とする加入者認証モジュールの不正使用防止プログラム。
【0073】
(付記16)
前記パスワード設定工程にて前記加入者認証モジュールに前記パスワードを設定することにより、前記通信端末から取り外された前記加入者認証モジュールの不正使用を防止することを特徴とする付記15の加入者認証モジュールの不正使用防止プログラム。
【0074】
(付記17)
前記通信端末には、前記加入者認証モジュールの出し入れ口と、該出し入れ口の少なくとも一部を開放可能に閉鎖するカバーとが予め設けられており、
前記取り外し可能状態検出工程にて、前記カバーが開放されたときに前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にある旨を検出することを特徴とする付記15または16の加入者認証モジュールの不正使用防止プログラム。
【0075】
(付記18)
前記パスワードをメモリに予め記憶しておく工程と、
前記取り外し可能状態検出工程にて前記加入者認証モジュールが取り外し可能な状態にあると検出した場合に、前記パスワード記憶工程にてメモリに記憶されている前記パスワードを読み出す工程とをさらに有し、
前記パスワード設定工程にて、前記パスワード読み出し工程にて読み出した前記パスワードを前記加入者認証モジュールに設定することを特徴とする付記15乃至17のいずれかの加入者認証モジュールの不正使用防止プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術範囲内であれば、種々の変形が可能であることは云うまでもない。
【0077】
例えば、本発明が適用される通信端末としては、スマートフォンに限定されず、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistance)、各種無線通信機、または、それぞれ通信機能を持つ携帯ゲーム機、携帯型音声/映像再生機、携帯型ナビゲーション装置、デジタルカメラ、あるいは、POS(Point Of Sales)システムにおけるハンディータミナル、オーダーエントリー端末、またはラベラー等、通信機能を持ち、かつ、加入者認証モジュールが装着されるように構成された電子機器全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
100、100’ 加入者認証モジュールの不正使用防止装置
110、110’ PIN設定部(モジュールパスワード設定部)
120、120’ PIN記憶部(モジュールパスワード記憶部)
130 電源部
131 電源回路
132 バッテリ
160 モジュール取り外し予検出部
161 カバー
162 開閉センサ
200 加入者認証モジュール
600、600’ 通信端末
610、610’ 制御部
620、620’ 記憶部
630 電源部
631 電源回路
632 バッテリ
640 無線通信部
650 ユーザーインターフェース部
680 モジュールスロット
図1
図2
図3
図4