特許第5920975号(P5920975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920975
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】顔料分散用樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/34 20060101AFI20160510BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20160510BHJP
   C08J 3/05 20060101ALI20160510BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20160510BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160510BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20160510BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20160510BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   C08F220/34
   C08L33/04
   C08J3/05CEY
   C09D5/02
   C09D7/12
   C09D201/00
   C08F220/12
   C08L33/14
【請求項の数】8
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2012-95001(P2012-95001)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-221131(P2013-221131A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坪内 剛士
(72)【発明者】
【氏名】山下 文男
(72)【発明者】
【氏名】神守 功
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】神田 将司
(72)【発明者】
【氏名】小畑 政示
(72)【発明者】
【氏名】千野 芳明
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−087232(JP,A)
【文献】 特開2003−012744(JP,A)
【文献】 特開2002−155106(JP,A)
【文献】 特開2002−194037(JP,A)
【文献】 特開昭60−123564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00− 35/08
C08F 20/00− 22/40
C08F 120/00−122/40
C08F 220/00−222/40
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー、及び(b)その他の重合性不飽和モノマーの共重合体であることを特徴とする顔料分散用樹脂。
一般式(1)
【化1】
[式中、Xは下記一般式(2)〜(4)で示される基を表し、は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基を表す
一般式(2)
【化2】
[式中、Yはアルキレン基もしくは、繰り返し単位1以上のポリオキシアルキレン基を表す。また、pは、Yがアルキレン基の場合は1以上の整数を表し、Yが繰返し単位1以上のポリオキシアルキレン基の場合は0以上の整数を表す。]
一般式(3)
【化3】
[式中、qは0以上の整数を表す]
一般式(4)
【化4】
[式中、Zは直鎖でも分岐でも良いアルキル鎖または繰り返し単位1以上のポリオキシアルキレン基を表す。]
【請求項2】
その他の重合性不飽和モノマー(b)が下記一般式(5)で示される(b1)ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーを含有する請求項1に記載の顔料分散用樹脂。
【化5】
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子又は分岐してもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは分岐してもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜150の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位(RO)はそれぞれ互いに同じであっても又は互いに異なっていてもよい]
【請求項3】
その他の重合性不飽和モノマー(b)が(b2)ポリオキシアルキレン鎖を有さない水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有する請求項1または2に記載の顔料分散用樹脂。
【請求項4】
一般式(1)で示されるカチオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー(a)のXが、上記一般式(2)においてpが1または2である請求項1ないしのいずれか1項に記載の顔料分散用樹脂。
【請求項5】
共重合体が500〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有する請求項1ないしのいずれか1項に記載の顔料分散用樹脂。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の顔料分散用樹脂、顔料及び水性媒体を含有する水性顔料分散体。
【請求項7】
請求項に記載の水性顔料分散体を含有する水性塗料組成物。
【請求項8】
請求項に記載の水性塗料組成物を用いて塗装された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料に好適な顔料分散用樹脂、該顔料分散用樹脂を含有する水性顔料分散体及び該顔料分散用樹脂を含有する水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、揮発性有機物含有量(VOC)が低い塗料が要求され、溶剤型塗料から水性塗料への切り換えが進められている。
【0003】
ここで塗料の水性化に伴う問題点としては、塗料に使用される顔料は一般に表面が疎水性で水に濡れにくく、また、従来、溶剤型の着色塗料に用いられている顔料分散用樹脂は水に対する溶解性が低く水性媒体中での分散安定性に劣っている点などが挙げられる。したがって、水系塗料における顔料分散用樹脂の設計にあたっては、顔料の濡れ性と顔料分散用樹脂の水性媒体中での分散安定性を両立させることが重要である。
【0004】
顔料の濡れ性に関しては、顔料分散用樹脂が低粘度、低分子量であることが有利であるといわれ、分散安定化については、顔料表面での立体反発層の形成性や顔料分散用樹脂の連続相(水性媒体)への溶解性が良いことが有利であるといわれている。また、顔料表面の疎水部と顔料分散用樹脂の疎水部との相互作用による、顔料表面への顔料分散用樹脂の濡れや顔料への吸着に関しては、顔料の濡れ性と顔料分散用樹脂の分散安定性の両方が関与しているものと考えられる。
【0005】
これまで上記の観点から水性塗料用あるいは水性インキ用の顔料分散用樹脂や助剤の開発が行われてきた。例えば、特許文献1には、顔料分散用樹脂として、(メタ)アクリル酸などの酸性官能基含有重合性不飽和単量体を単量体成分の一部として含有する単量体混合物が重合されてなる酸性官能基を有する直鎖型アニオン性重合体を用いることが提案されている。
また、特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、顔料分散用樹脂として、カルボキシル基含有マクロモノマーを共重合して得られるグラフト共重合体が開示されている。
さらに、特許文献5、特許文献6及び特許文献7には、ポリオキシアルキレン鎖をもつノニオン系の界面活性剤を顔料分散剤として使用することが開示されている。
また、特許文献8及び特許文献9には、イオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー及びポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマーを共重合成分とする共重合体である顔料分散用樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭50−154328号公報
【特許文献2】特開平1−182304号公報
【特許文献3】特開平7−316240号公報
【特許文献4】特表平10−502097号公報
【特許文献5】特開平9−255728号公報
【特許文献6】特開平9−267034号公報
【特許文献7】特公平8−19201号公報
【特許文献8】WO02/31010号公報
【特許文献9】特開2003−12744
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に開示されている顔料分散用樹脂は、酸性官能基を有する直鎖型アニオン性重合体が水性媒体への高い溶解性を有するため、顔料分散体の分散安定化という点で不十分であるとともに、それを用いて形成される分散体は著しく粘度が高く、取り扱いが困難となるという問題がある。
【0008】
また、前記特許文献2、特許文献3及び特許文献4に開示されている顔料分散用樹脂は、カルボキシル基含有マクロモノマーを共重合して得られるグラフト共重合体が、重合体の幹部分が疎水性であり且つ枝部分が親水性であることから、顔料の分散安定化に優れているが、該グラフト共重合体を用いて形成される顔料分散体は粘度が高く、今後、コスト面やVOC削減の観点からますます高顔料濃度の顔料分散体が必要とされることから、上記グラフト共重合体も決して満足のいくものではない。
【0009】
さらに、前記特許文献5、特許文献6及び特許文献7に開示されているノニオン系の界面活性剤は水系顔料分散体の中で安定に存在することはできるが、顔料への吸着性が不十分であり、特にレットダウン安定性が悪く、塗膜の仕上り外観に劣る傾向にある。
【0010】
また、前記特許文献8及び特許文献9に開示されている顔料分散用樹脂を用いることによって、高顔料濃度においても、低粘度で、発色性に優れ、しかも塗膜の仕上がり外観に優れた水性顔料分散体を得ることができる。しかしながら現在、自動車塗装用上塗塗料においては、高度の耐久性、耐酸性、耐洗車擦り傷性、耐チッピング性などの塗膜性能はもちろんのこと、これまで以上に鮮映性、透明性、発色性などの塗膜の仕上り外観が要求されている。その点で、上記顔料分散用樹脂では得られる塗膜の発色性や鮮映性が十分ではない場合があり、特にカーボンブラックなどの黒色顔料を分散する場合、漆黒性(発色性のうち特に顔料が黒顔料であるとき漆黒性ということがある)に欠ける場合があった。
【0011】
本発明はこれらの点を考慮してなされたものであり、発色性、漆黒性、鮮映性などの塗膜の仕上がり外観に優れた顔料分散用樹脂を得ることを目的とする。また、該顔料分散用樹脂を用いて発色性、漆黒性、鮮映性などの塗膜の仕上がり外観に優れた水性塗料組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、特定のカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー、及びその他の重合性不飽和モノマーの共重合体が水性塗料における顔料分散用樹脂として極めて適していることを見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、以下の顔料分散用樹脂及び水性塗料組成物を提供するものである。
項1.
(a)一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー、及び(b)その他の重合性不飽和モノマーの共重合体であることを特徴とする顔料分散用樹脂。
一般式(1)
【0014】
【化1】
【0015】
[式中、Xは下記一般式(2)〜(4)で示される基を表し、は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基を表す
一般式(2)
【0016】
【化2】
【0017】
[式中、Yはアルキレン基もしくは、繰り返し単位1以上のポリオキシアルキレン基を表す。また、pは、Yがアルキレン基の場合は1以上の整数を表し、Yが繰返し単位1以上のポリオキシアルキレン基の場合は0以上の整数を表す。]
一般式(3)
【0018】
【化3】
【0019】
[式中、qは0以上の整数を表す]
一般式(4)
【0020】
【化4】
【0021】
[式中、Zは直鎖でも分岐でも良いアルキル鎖または繰り返し単位1以上のポリオキシアルキレン基を表す。]
項2.
その他の重合性不飽和モノマー(b)が下記一般式(5)で示される(b1)ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーを含有する上記項1に記載の顔料分散用樹脂。
【0022】
【化5】
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子又は分岐してもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは分岐してもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜150の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位(RO)はそれぞれ互いに同じであっても又は互いに異なっていてもよい]
項3.
その他の重合性不飽和モノマー(b)が(b2)ポリオキシアルキレン鎖を有さない水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有する上記項1または2に記載の顔料分散用樹脂。
項4.
一般式(1)で示されるカチオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー(a)のXが、上記一般式(2)においてpが1または2である上記項1ないしのいずれか1項に記載の顔料分散用樹脂。
.
共重合体が500〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有する上記項1ないしのいずれか1項に記載の顔料分散用樹脂。
.
上記項1ないしのいずれか1項に記載の顔料分散用樹脂、顔料及び水性媒体を含有する水性顔料分散体。
.
上記項に記載の水性顔料分散体を含有する水性塗料組成物。
.
上記項に記載の水性塗料組成物を用いて塗装された物品。

【発明の効果】
【0023】
本発明の顔料分散用樹脂によれば、従来技術における課題が解決される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の顔料分散用樹脂及び水性塗料組成物についてさらに詳細に説明する。
顔料分散用樹脂
本発明により提供される顔料分散用樹脂は、以下に述べる一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)、及びその他の重合性不飽和モノマー(b)の共重合体である。
【0025】
一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)
一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)(「モノマー(a)」と略記することがある)は、本発明の顔料分散用樹脂に比較的長鎖の2級または3級アミノ基を導入するためのモノマー成分である。
【0026】
ここで、一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)は一般式(1)で示される。
一般式(1)
【0027】
【化6】
【0028】
[式中、Xは、主鎖が炭素数6以上の直鎖状でも分岐状でもよいアルキレン基、または下記一般式(2)〜(4)で示される基を表し、R及びRは水素原子またはメチル基を表す]
一般式(2)
【0029】
【化7】
【0030】
[式中、Yはアルキレン基もしくは、繰り返し単位1以上のポリオキシアルキレン基を表す。また、pは、Yがアルキレン基の場合は1以上の整数を表し、Yが繰返し単位1以上のポリオキシアルキレン基の場合は0以上の整数を表す。]
一般式(3)
【0031】
【化8】
【0032】
[式中、qは0以上の整数を表す]
一般式(4)
【0033】
【化9】
【0034】
[式中、Zは直鎖でも分岐でも良いアルキレン鎖または繰り返し単位1以上のポリオキシアルキレン基を表す。]
一般式(1)中のXは主鎖が炭素数6以上の直鎖状でも分岐状でもよいアルキレン基、または上記一般式(2)〜(4)で示される基を表す。Xが炭素数6以上の直鎖でも分岐状でも良いアルキル基である場合のうち、発色性、漆黒性、鮮映性などの塗膜の仕上がり外観に優れた水性塗料組成物を得る観点から直鎖のヘキシレン基、ヘプチレン基及びオクチレン基であることが好ましい。
【0035】
また、一般式(2)〜(4)で示される基のうち、合成の簡便さの観点から一般式(2)で示される基であることが好ましい。
【0036】
一般式(2)である場合、Yとしては材料の入手のし易さの観点からメチレン基、オキシエチレン基及び/またはオキシプロピレン基であることが好ましい。
【0037】
一般式(2)中のpは、Yがアルキレン基の場合は1以上の整数を表し、Yが繰返し単位1以上のポリオキシアルキレン基の場合は0以上の整数を表す。Yが繰返し単位1以上のポリオキシアルキレン基の場合、発色性、漆黒性、鮮映性などの塗膜の仕上がり外観に優れた水性塗料組成物を得る観点からpは好ましくは0または1であることが好ましい。
【0038】
一般式(3)中のqは0以上の整数を表すが、発色性、漆黒性、鮮映性などの塗膜の仕上がり外観に優れた水性塗料組成物を得る観点から、qは0または1であることが好ましい。
【0039】
一般式(4)中のZは直鎖でも分岐でも良いアルキル鎖または繰り返し単位1以上のポリオキシアルキレン基を表すが、発色性、漆黒性、鮮映性などの塗膜の仕上がり外観に優れた水性塗料組成物を得る観点から、繰返し単位1以上のポリオキシアルキレンであることがより好ましい。ポリオキシアルキレン基として材料の入手のし易さの観点から繰返し単位が1であるオキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。
【0040】
上記一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
また、上記一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)は発色性、漆黒性、鮮映性などの塗膜の仕上がり外観に優れた水性塗料組成物を得る観点からオキシエチレン鎖を持つことが好ましい。
【0042】
上記一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)の調製方法
Xが主鎖が炭素数6以上であって直鎖状でも分岐状でもよいアルキレン基であるモノマー(a)の調製
Xが主鎖が炭素数6以上であって直鎖状でも分岐状でもよいアルキレン基であるモノマー(a)(「モノマー(a−1)」と呼ぶことがある)は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、末端に1級水酸基を有しかつアルキル鎖をもつアミン化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0043】
上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、反応性の観点から、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0044】
末端に1級水酸基を有しかつアルキル鎖をもつアミン化合物は、炭素数9以上であって直鎖状のアルキル基を有するものであるか、または、分岐状であっても主鎖が炭素数9以上であってアミノ基が結合した炭素と、その隣の炭素からは分岐していないアルキル基を有するものであれば、特に制限なく使用することができる。該末端に1級水酸基を有しかつアルキル鎖をもつアミン化合物としては、例えば、N−メチルアミノ−ノナノール、N,N−ジメチルアミノ−ノナノール、N−メチルアミノ−デカノール、N,N−ジメチルアミノ−デカノール、N−メチルアミノ−ドデカノール、N,N−ジメチルアミノ−ドデカノール、N−メチルアミノ−テトラデカノール、N,N−ジメチルアミノ−テトラデカノール、N−メチルアミノ−ペンタデカノール、N,N−ジメチルアミノ−ペンタデカノール、N−メチルアミノ−ヘキサデカノール、N,N−ジメチルアミノ−ヘキサデカノール、N−メチルアミノ−オクタデカノール、N,N−ジメチルアミノ−オクタデカノール等が挙げられる。
【0045】
なかでも、常温で低粘性であり扱いやすいという観点から、N,N−ジメチルアミノ−9−ノニルアルコール、N,N−ジメチルアミノ−10−デシルアルコールが好ましい。
上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物と末端に1級水酸基を有しかつアルキル鎖をもつアミン化合物との反応は、それ自体既知の方法で行なうことができ、例えばエステル交換反応させることによって製造することができる。このときの(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び末端に1級水酸基を有しかつアルキル鎖をもつアミン化合物の使用量は、該アミン化合物中の水酸基1当量に対して、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましくは0.1〜10当量、さらに好ましくは0.5〜8当量、特に好ましくは1〜5当量となるように調整する。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の使用量が0.1当量未満ではカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)の収率が低く、一方10当量を超えると、未反応の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が残存し、得られる重合体溶液、顔料分散用樹脂、水性顔料分散体及び水性塗料組成物の保存安定性が低下することがある。
【0046】
Xが一般式(2)で示される基であるモノマー(a)の調製
Xが一般式(2)で示される基であるモノマー(a)(「モノマー(a−2)」と呼ぶことがある)は、(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物(以下、「不飽和イソシアネート化合物」と略記することがある)と、末端に1級水酸基を持つアミン化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0047】
上記不飽和イソシアネート化合物としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−アクリロイルオキシブチルイソシアネート、6−アクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、8−アクリロイルオキシオクチルイソシアネート、10−アクリロイルオキシデシルイソシアネート、
アクリル酸2−(2−イソシアナトエトキシ)エチル、
アクリル酸2−[2−(2−イソシアナトエトキシ)エトキシ]エチル、
アクリル酸2−{2−[2−(2−イソシアナトエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル、
アクリル酸2−(2−イソシアナトプロポキシ)エチル、
アクリル酸2−[2−(2−イソシアナトプロポキシ)プロポキシ]エチル等のアクリル酸誘導体;
2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−メタクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−メタクリロイルオキシブチルイソシアネート、6−メタクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、8−メタクリロイルオキシオクチルイソシアネート、10−メタクリロイルオキシデシルイソシアネート、
メタクリル酸2−(2−イソシアナトトエトキシ)エチル、
メタクリル酸2−[2−(2−イソシアナトエトキシ)エトキシ]エチル、
メタクリル酸2−{2−[2−(2−イソシアナトエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル、
メタクリル酸2−(2−イソシアナトプロポキシ)エチル、
メタクリル酸2−[2−(2−イソシアナトプロポキシ)プロポキシ]エチル等のメタクリル酸誘導体を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
また、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの市販品としては、「カレンズAOI」(商品名、昭和電工社製)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの市販品としては、「カレンズMOI」(商品名、昭和電工社製)、メタクリル酸2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルの市販品としては、商品名で、「カレンズMOI―EG」(商品名、昭和電工社製)を挙げることができる。
【0049】
これらの不飽和イソシアネート化合物のうち、末端に1級水酸基を持つアミン化合物との反応性の点から、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、4−メタクリロイルオキシブチルイソシアネート、メタクリル酸2−(2−イソシアナトエトキシ)エチル等が好ましい。
【0050】
上記末端に1級水酸基を持つアミン化合物としては、例えば、末端に1級水酸基を有しかつアルキル鎖をもつアミン化合物、末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物などが挙げられる。
【0051】
上記末端に1級水酸基を有しかつアルキル鎖をもつアミン化合物は、本発明で用いるモノマー(a)においてpが0の場合に、N,N−ジメチルアミノエタノールが挙げられる。
【0052】
上記末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物としては、例えばN−メチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N−メチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール等を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
なかでも、入手容易性の観点から、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール(2‐[2‐(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール)、N,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール(2‐[2‐[2‐(ジメチルアミノ)エトキシ]エトキシ]エタノール)が好ましい。
【0054】
本発明で用いるモノマー(a)が、Xが上記一般式(2)で示される基である場合において、Yがアルキレン基となる前記不飽和イソシアネート化合物を選択した場合には、発色性、漆黒性、鮮映性などの塗膜の仕上がり外観に優れた水性塗料組成物を得る観点からpが1以上となる末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物を選択する。
【0055】
上記不飽和イソシアネート化合物と、末端に1級水酸基を持つアミン化合物との反応は、例えば、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(IV)等の触媒やp−メトキシフェノール等の重合禁止剤を含む末端に1級水酸基を持つアミン化合物の溶液に、室温または加温下で、攪拌しつつ、不飽和イソシアネート化合物を投入することによって実施することができる。
【0056】
その際の不飽和イソシアネート化合物及び末端に1級水酸基を持つアミン化合物の使用量は、該アミン化合物中の水酸基1当量に対して、不飽和イソシアネート化合物中のイソシアネート基が好ましくは0.5〜2.0当量、さらに好ましくは0.7〜1.5当量、特に好ましくは0.8〜1.2当量となるように調整する。不飽和イソシアネート化合物の使用量が0.5当量未満では、カチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマーの収率が低く発色性に劣り、一方2.0当量を超えると、未反応の不飽和イソシアネート化合物が残存し、得られる重合体溶液、顔料分散用樹脂、水性顔料分散体及び水性塗料組成物の保存安定性が低下することがある。
【0057】
Xが一般式(3)で示される基であるモノマー(a)の調製
Xが一般式(3)で示される基であるモノマー(a)(「モノマー(a−3)」と呼ぶことがある)は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0058】
上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、前記モノマー(a−1)において列挙した化合物を用いることができる。なかでも、反応性の観点から、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0059】
上記末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物としては、例えば、前記モノマー(a−2)において列挙した化合物を用いることができる。なかでも、入手容易性の観点から、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール(2‐[2‐(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール)、N,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール(2‐[2‐[2‐(ジメチルアミノ)エトキシ]エトキシ]エタノール)が好ましい。
【0060】
上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物と末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物との反応はそれ自体既知の方法で行なうことができ、例えばエステル交換反応させることによって製造することができる。
【0061】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物の使用量は、該アミン化合物中の水酸基1当量に対して、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、好ましくは0.1〜10当量、さらに好ましくは0.5〜8当量、特に好ましくは1〜5当量となるように調整する。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の使用量が0.1当量未満ではカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマーの収量が少なく、一方10当量を超えると、未反応の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が残存し、得られる重合体溶液、顔料分散用樹脂、水性顔料分散体及び水性塗料組成物の保存安定性が低下することがある。
【0062】
Xが一般式(4)で示される基であるモノマー(a)の調製
Xが一般式(4)で示される基であるモノマー(a)(「モノマー(a−4)」と呼ぶことがある)は、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネート及び末端に1級水酸基を有するアミン化合物を反応させることによって得ることができる。
【0063】
尚、モノマー(a−4)としては、イソホロンジイソシアネートの持つ2つのイソシアネート基のうちどちらのイソシアネート基にヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び末端に1級水酸基を有するアミン化合物が反応したモノマーでも良いため、一般式(4)は、一般式(4)−Iおよび(4)−IIと書き分けている。
【0064】
上記末端に1級水酸基を有するアミン化合物としては、末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物及び末端に1級水酸基を有しかつアルキル鎖をもつアミン化合物を挙げることができる。末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物としては、例えば、前記モノマー(a−2)において列挙した化合物を用いることができる。また、末端に1級水酸基を有しかつアルキル鎖をもつアミン化合物は、末端に1級水酸基を有し、かつ直鎖状あるいは分岐状で炭素数1以上のアルキル鎖を有したアミン化合物であれば制限なく用いることが出来る。例えば、前記モノマー(a−1)において列挙した化合物に加えて、N−メチルアミノメタノール、N−メチルアミノエタノール、N−メチルアミノプロパノール(3−メチルアミノ−1−プロパノール、1−メチルアミノ−2−プロパノール)、N−メチルアミノブタノール(4−メチルアミノ−1−ブタノール、2−メチルアミノ−イソブチルアルコール等)、N−メチルアミノペンタノール(5−メチルアミノ−1−ペンタノール、4−メチルアミノ−2−メチル−1−ブタノール等)、N−メチルアミノヘキサノール(6−メチルアミノ−1−ヘキサノール、5−メチルアミノ−3−メチル−1−ペンタノール、4−メチルアミノ−2,2−ジメチル−1−ブタノール等)、N−メチルアミノヘプタノール(7−メチルアミノ−1−ヘプタノール、5−メチルアミノ−3,3−ジメチル−1−ペンタノール等)、N−メチルアミノオクタノール(8−メチルアミノ−1−オクタノール、6−メチルアミノ−2−エチル−1−ヘキサノール等)
N,N−ジメチルアミノメタノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノプロパノール(3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール)、N,N−ジメチルアミノブタノール(4−ジメチルアミノ−1−ブタノール、2−ジメチルアミノ−イソブチルアルコール等)、N,N−ジメチルアミノペンタノール(5−ジメチルアミノ−1−ペンタノール、4−ジメチルアミノ−2−メチル−1−ブタノール等)、N,N−ジメチルアミノヘキサノール(6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール、5−ジメチルアミノ−3−メチル−1−ペンタノール、4−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル−1−ブタノール等)、N,N−ジメチルアミノヘプタノール(7−ジメチルアミノ−1−ヘプタノール、5−ジメチルアミノ−3,3−ジメチル−1−ペンタノール等)、N,N−ジメチルアミノオクタノール(8−ジメチルアミノ−1−オクタノール、6−ジメチルアミノ−2−エチル−1−ヘキサノール等)等を用いることができる。
【0065】
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びイソホロンジイソシアネートとの反応は、例えば、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(IV)等の触媒やp−メトキシフェノール等の重合禁止剤を含む2−ヒドロキシエチルメタクリレートの溶液に、室温または加温下で、攪拌しつつ、イソホロンジイソシアネートを投入して、両者を反応させ、さらに室温または加温下で末端に1級水酸基を有するアミン化合物を添加することによって実施することができる。両者の仕込み順序に限定はない。
【0066】
その際の上記イソホロンジイソシアネートの使用量は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び末端に1級水酸基を有しかつエチレンオキサイド鎖を持つアミン化合物中の化合物の水酸基1当量に対して、好ましくは0.5〜2.0当量、さらに好ましくは0.7〜1.5当量、特に好ましくは0.8〜1.2当量である。イソホロンジイソシアネートの使用量が0.5当量未満では、カチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマーの収率が低く、一方2.0当量を超えると、未反応のイソホロンジイソシアネートが残存し、得られる重合体溶液、顔料分散用樹脂、水性顔料分散体及び水性塗料組成物の保存安定性が低下することがある。
【0067】
尚、上記モノマー(a−1)〜(a−4)には副生成物が含まれていても良い。
【0068】
上記一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)は、モノマー(a)及び(b)の合計量を基準として、一般に3〜35質量%、特に5〜33質量%の範囲内で使用することが好適である。
【0069】
その他の重合性不飽和モノマー(b)
その他の重合性不飽和モノマー(b)には、前記モノマー(a)と共重合可能な、モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマーが包含される。
【0070】
その他の重合性不飽和モノマー(b)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;後述するポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー(b1);後述するポリオキシアルキレン鎖を有さない水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2);n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−トなどの(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートなどの(シクロ)アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー;3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタン環含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0071】
なかでも、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、その他の重合性不飽和モノマー(b)がポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー(b1)を含有することが好適である。また、形成塗膜の耐水性の観点から、その他の重合性不飽和モノマー(b)がポリオキシアルキレン鎖を有さない水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)を含有することが好適である。
【0072】
さらにまた、形成塗膜の発色性、漆黒性、平滑性及び鮮映性の観点から、その他の重合性不飽和モノマー(b)がアルキル(メタ)アクリレート、特にメチルメタクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートを含有することが好適である。
【0073】
また、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、なかでも、その他の重合性不飽和モノマー(b)がビニル芳香族化合物、特にスチレンを含有することが好適である。
【0074】
その他の重合性不飽和モノマー(b)は、モノマー(a)及び(b)の合計量を基準として、一般に65〜97質量%、特に67〜95質量%の範囲内で使用することが好適である。
【0075】
ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー(b1)
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー(b1)は、形成される共重合体に親水性を付与するためのモノマー成分であり、1分子中にポリオキシアルキレン鎖と重合性不飽和基を含有するモノマーである。
【0076】
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックからなる鎖などを挙げることができ、これらのポリオキシアルキレン鎖は一般に200〜5,000、特に250〜3,500、さらに特に300〜2,500の範囲内の分子量を有することが好適である。
【0077】
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー(b1)の代表例としては、例えば、一般式(5)
【0078】
【化10】
【0079】
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは分岐してもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜150、好ましくは10〜80、さらに好ましくは25〜50の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位(RO)はそれぞれ互いに同じであっても又は互いに異なっていてもよい]
で示される化合物を挙げることができる。
【0080】
式(5)の化合物の具体例としては、例えば、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラピロプレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。なかでも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0081】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートとメタクリレートを総称するものである。
【0082】
また、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー(b1)は、一般に200〜7,000、特に500〜3,000、さらに特に1,200〜2,500の範囲内の分子量を有することが好適である。
【0083】
ポリオキシアルキレン鎖を有さない水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)
ポリオキシアルキレン鎖を有さない水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を含有する重合性不飽和モノマーであって、且つポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー(b1)以外の重合性不飽和モノマーである。
【0084】
ポリオキシアルキレン鎖を有さない水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコ−ルなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0085】
上記モノマー(b2)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、なかでも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0086】
その他の重合性不飽和モノマー(b)がポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー(b1)を含有する場合、モノマー(b1)は、形成塗膜の発色性、漆黒性、鮮映性などの観点から、モノマー(a)及び(b)の合計量を基準として、一般に5〜40質量%、特に7〜35質量%、さらに特に10〜30質量%の範囲内で使用することが好適である。
【0087】
上記ポリオキシアルキレン鎖を有さない水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)は、形成塗膜の発色性、漆黒性、鮮映性などの観点から、モノマー(a)及び(b)の合計量を基準として、一般に5〜40質量%、特に7〜35質量%、さらに特に10〜30質量%の範囲内で使用することが好適である。
【0088】
その他の重合性不飽和モノマー(b)がアルキル(メタ)アクリレートを含有する場合、アルキル(メタ)アクリレートは、モノマー(a)及び(b)の合計量を基準として、一般に35〜90質量%、特に40〜70質量%、さらに特に45〜65質量%の範囲内で使用することが好適である。
【0089】
その他の重合性不飽和モノマー(b)がビニル芳香族化合物を含有する場合、ビニル芳香族化合物は、モノマー(a)及び(b)の合計量を基準として、一般に0〜20質量%、特に0〜15質量%、さらに特に0〜10質量%の範囲内で使用することが好適である。
【0090】
共重合体
本発明の顔料分散用樹脂において使用される共重合体は、以上に述べた一般式(1)で示されるカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a)、及びその他の重合性不飽和モノマー(b)を共重合することによって得られる。共重合に際してのモノマー(a)及び(b)の使用割合は厳密に制限されるものではなく、形成される共重合体に望まれる物性などに応じて変えることができる。
【0091】
モノマー(a)及び(b)の共重合は、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法などの方法により行なうことができるが、なかでも溶液重合法が好適である。溶液重合法による共重合法としては、例えば、モノマー(a)及び(b)とラジカル重合開始剤の混合物を、有機溶媒に溶解もしくは分散せしめ、通常、約80℃〜約200℃の温度で1〜10時間程度撹拌しながら加熱して重合させる方法を挙げることができる。
【0092】
共重合の際に用いうる有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリットなどの炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;コスモ石油社製のスワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500などの芳香族石油系溶剤などを挙げることができる。これらの有機溶剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。上記有機溶媒は、モノマー(a)及び(b)の合計量に対して、通常400質量部以下となる割合で使用することができる。
【0093】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレートなどのパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート類;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類などの有機過酸化物系重合開始剤;2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン2,2’−アゾビスメチルバレロニトリル、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などのアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、モノマー(a)及び(b)の合計100質量部あたり、通常0.1〜15質量部、特に0.3〜10質量部の範囲内であることが望ましい。
【0094】
上記重合反応において、モノマー成分や重合開始剤の添加方法は特に制約されるものではないが、重合開始剤は重合初期に一括仕込みするよりも重合初期から重合後期にわたって数回に分けて分割滴下することが、重合反応における温度制御、ゲル化物のような不要な架橋物の生成の抑制などの観点から好適である。
【0095】
このようにして得られる共重合体の分子量は、特に制限されるものではないが、水分散性や形成塗膜の平滑性などの観点から、重量平均分子量で、一般に5,000〜100,000、特に8,000〜70,000、さらに特に10,000〜50,000の範囲内にあることが好ましい。
【0096】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することによって得られた値である。
【0097】
また、共重合体は、形成塗膜の耐水性などの観点から、通常0〜150mgKOH/g、特に30〜100mgKOH/g、さらに特に50〜90mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。
【0098】
共重合体は、発色性、平滑性及び鮮映性の観点から、一般に3〜100mgKOH/g、特に10〜80mgKOH/g、さらに特に15〜60mgKOH/gの範囲内のアミン価を有するのが好適である。
【0099】
重合体は酸性中和剤を用いて中和して、水分散性ないし水溶性とすることができる。該酸性中和剤としては、例えば、リン酸、スルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などが挙げられ、なかでも、乳酸を好適に使用することができる。上記酸性中和剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0100】
以上に述べた如くして製造される共重合体からなる本発明の顔料分散用樹脂は、水性顔料分散体の作製に用いられるので、顔料への吸着性と分散安定化を両立できるものであることが必要である。本発明の顔料分散用樹脂を構成するモノマー(a)成分は、顔料分散用樹脂の顔料への吸着を向上させることができ、特にカーボンブラックなどの酸化処理を施された無機着色顔料への吸着性の向上と樹脂の分散安定性の向上の両面で有利に働くことができる。したがって、本発明の顔料分散用樹脂は、顔料、水性媒体などと共に水性顔料分散体を調製するのに極めて有用である。
【0101】
また、なかでもその他の重合性不飽和モノマーとしてモノマー(b1)成分を用いた場合、モノマー(b1)成分は、顔料分散用樹脂の連続相(水性媒体)への溶解性の向上に寄与し、特に顔料分散用樹脂の分散安定性の向上に有利に働くことができる。さらに、その他の重合性不飽和モノマーとしてモノマー(b2)成分を用いて、かつ硬化剤を併用した場合、モノマー(b2)成分は、本発明の水性塗料組成物中に含まれる硬化剤成分、例えばアミノ樹脂やブロック化されてもよいポリイソシアネート化合物と反応し、架橋塗膜中にとりこまれることで得られる塗膜の耐水性向上させるのに役立つ。したがって、本発明の顔料分散用樹脂は、顔料、水性媒体などと共に水性顔料分散体を調製するのに極めて有用で、顔料が均一に分散した顔料分散体を得ることができる。そしてさらに、本発明の顔料分散体を水性塗料に適用すれば、顔料が均一に分散されるため、発色性、鮮映性に優れた塗膜を得ることができる。
水性顔料分散体
本発明の水性顔料分散体は、以上に述べた顔料分散用樹脂に、顔料、水性媒体、分散助剤、塩基性中和剤、その他の添加剤などを配合することにより調製することができる。また、本願発明の顔料分散樹脂以外のその他の顔料分散樹脂を配合してもよい。
【0102】
上記顔料としては、例えば、アルミニウム粉、銅粉、ニッケル粉、ステンレス粉、クロム粉、雲母状酸化鉄、酸価チタン被覆マイカ粉、酸化鉄被覆マイカ粉、光輝性グラファイト等の光輝性顔料;ピンクEB、アゾ系やキナクリドン系等の有機赤系顔料、シアニンブルー、シアニングリーンなどの有機青系顔料、ベンゾイミダゾロン系、イソインドリン系及びキノフタロン系等の有機黄色系顔料;酸化チタン、チタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、黄鉛、酸化鉄、及び各種焼成顔料等の無機着色顔料等が挙げられる。また、体質顔料を含んでもよい。これらの顔料は、それ自体既知の表面処理、例えば酸・塩基処理、カップリング剤処理、プラズマ処理、酸化/還元処理などが施されたものであってもよい。これらのうち、特にカーボンブラックなどの酸化処理を施された無機着色顔料が好適である。
【0103】
これらの顔料の配合割合は、特に制限されるものではないが、通常、顔料分散用樹脂100重量部あたり、10〜3,000重量部、特に15〜2,000重量部、さらに特に15〜1,500重量部の範囲内にあることが、顔料分散性、分散安定性、得られる顔料分散体の着色力の面などから好ましい。
【0104】
水性媒体としては、水、または水に水溶性有機溶媒などの有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液などを挙げることができる。ここで用いる有機溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノールなどの水溶性有機溶媒;キシレン、トルエン、シクロヘキサノン、ヘキサン、ペンタンなどの難溶性又は不溶性有機溶剤などが挙げられる。該有機溶剤は1種のみ又は2種以上混合して使用できる。有機溶剤としては水溶性有機溶媒を主体とするものが好適である。また、水と有機溶媒との混合割合は特に制限はないが、有機溶媒の含有量は混合溶液の50重量%以下、特に35重量%以下が望ましい。水性媒体の配合割合は、特に制限されるものではないが、通常、顔料分散用樹脂100重量部あたり、50〜5,000重量部、特に100〜3,000重量部、さらに特に100〜2,000重量部の範囲内にあることが顔料分散時の粘度、顔料分散性、分散安定性及び生産効率などの面から好ましい。
【0105】
必要に応じて用いられる他の顔料分散用樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有重合性不飽和モノマーと、その他の重合性不飽和モノマーとをラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られるアクリル樹脂などを挙げることができる。該アクリル樹脂としては、重量平均分子量が約2,000〜150,000、特に5,000〜100,000、酸価が5〜150mgKOH/g、特に15〜100mgKOH/g、水酸基価が10〜160mgKOH/g、特に30〜120mgKOH/gの範囲内にあるものが好ましい。
【0106】
本発明の顔料分散用樹脂と他の顔料分散用樹脂の使用割合(固形分)は、通常、本発明の顔料分散用樹脂100重量部あたり、他の顔料分散用樹脂5〜300重量部、特に20〜150重量部の範囲内が適当である。
【0107】
塩基性中和剤は、顔料分散用樹脂がカルボキシル基を有する場合、これを中和し、顔料分散用樹脂を水溶化ないしは水分散化するために使用されるものであって、その具体例としては、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール、アミノメチルプロパノールなどのアミン類を挙げることができる。これらの塩基性中和剤の配合量は、顔料分散用樹脂を水溶化ないしは水分散化するのに必要な量以上であり、通常、顔料分散用樹脂中のカルボキシル基の中和当量が0.3〜1.5、特に0.4〜1.3となるような割合であることが好適である。
【0108】
必要に応じて用いられる分散助剤としては、例えば、BYK−Chemie社のDisper BYK−182やDisper BYK−180、アビシア社のSolsperse12000やSolsperse27000などを挙げることができ、また、その他の添加剤としては、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤などを挙げることができる。これらの配合量は、顔料の分散性やペーストの安定性、レットダウン安定性や塗膜性能を考慮すると、いずれも顔料分散用樹脂100重量部に対して50部以下であることが望ましい。
【0109】
水性顔料分散体は、以上に述べた各成分を、例えば、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、LMZミル、DCPパールミルなどの分散機を用いて均一に混合、分散させることにより調製することができる。
水性塗料組成物
上記の如くして調整される水性顔料分散体は、被膜形成性樹脂、及び必要に応じて硬化剤、水性媒体、疎水性媒体、硬化触媒、塩基性中和剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、塗面調整剤、酸化防止剤、流動性調整剤、シランカップリング剤等の塗料添加剤を配合し、水性媒体中に安定に分散せしめることによって水性塗料組成物とすることができる。
【0110】
被膜形成性樹脂
被膜形成性樹脂としては、従来から水性塗料のバインダー成分として使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性の被膜形成性樹脂を使用することができる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。被膜形成性樹脂は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有していることが好ましく、水酸基含有樹脂であることが特に好ましい。
【0111】
なお、本発明の顔料分散性樹脂は、被膜形成性樹脂に含まないものとする。したがって、被膜形成性樹脂は、本発明の顔料分散性樹脂以外の被膜形成性樹脂である。
【0112】
本発明の水性塗料組成物は、さらに、後述する硬化剤を含有してもよい。本発明の水性塗料組成物が硬化剤を含有する場合、上記被膜形成性樹脂としては、通常、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基を有し、該硬化剤と反応することにより、硬化被膜を形成することができる樹脂(基体樹脂)が用いられる。上記基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、上記基体樹脂は、水酸基含有樹脂であることが好ましく、水酸基含有アクリル樹脂及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂であることがさらに好ましい。また、水酸基含有アクリル樹脂と水酸基含有ポリエステル樹脂とを、併用することが、塗膜の平滑性及び光輝性(フリップフロップ性)の向上の観点から、より好ましい。また、併用する場合の割合としては、水酸基含有アクリル樹脂と水酸基含有ポリエステル樹脂との合計量に基づいて、前者が20〜80質量%程度、特に30〜70質量%程度で、後者が80〜20質量%程度、特に70〜30質量%程度であるのが好ましい。
【0113】
また、被膜形成性樹脂は、カルボキシル基等の酸基を有する場合、酸価が5〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、10〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、15〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、該被膜形成性樹脂は、水酸基を有する場合、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0114】
水酸基含有アクリル樹脂
水酸基含有アクリル樹脂としては、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法などの方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
【0115】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、本発明の顔料分散用樹脂の説明において記載した、モノマー成分(b1)及び(b2)の中から適宜選んで使用することができる。これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−トなどの(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィンなどのフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基などの光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物などの含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩などのスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどのリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの紫外線安定性重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)などのカルボニル基を有する重合性不飽和モノマー化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0117】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂は、アミド基を有することが好ましい。前記のアミド基を有する水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの1種として、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性不飽和モノマーを用いることにより、製造することができる。
【0118】
上記水酸基含有アクリル樹脂を製造する際の前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、1〜50質量%程度が好ましく、2〜40質量%程度がより好ましく、3〜30質量%程度がさらに好ましい。
【0119】
上記水酸基含有アクリル樹脂は、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐水性等の観点から、酸価が、0.1〜200mgKOH/g程度であることが好ましく、2〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、5〜100mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
【0120】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が、0.1〜200mgKOH/g程度であることが好ましく、2〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、5〜100mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
【0121】
水酸基含有アクリル樹脂としては、形成される塗膜の平滑性及び光輝性が向上する観点から、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂を単独使用するか、又はコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂と水溶性アクリル樹脂とを併用することが好ましい。
【0122】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂としては、形成される塗膜の平滑性及び光輝性が向上する観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%程度及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%程度を共重合成分とする共重合体(I)であるコア部と、水酸基含有重合性不飽和モノマー1〜40重量%程度、疎水性重合性不飽和モノマー5〜50質量%程度及びその他の重合性不飽和モノマー10〜94質量%程度を共重合成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。また、共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、形成される塗膜の平滑性及び光輝性が向上する観点から、固形分質量比で10/90〜90/10程度が好ましく、50/50〜85/15程度がより好ましく、65/35〜80/20程度がさらに好ましい。
【0123】
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0124】
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーは、コア部共重合体(I)に架橋構造を付与する機能を有する。重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(I)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜30質量%程度であるのが好ましく、0.5〜10質量%程度であるのがより好ましく、1〜7質量%程度であるのが更に好ましい。
【0125】
また、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜のメタリックムラ抑制の観点から、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマーを使用することが好ましい。このアミド基含有モノマーを使用する場合の使用量としては、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜25質量%程度であるのが好ましく、0.5〜8質量%程度であるのがより好ましく、1〜4質量%程度であるのが更に好ましい。
【0126】
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーは、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
【0127】
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂に要求される性能に応じて、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0128】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いられる水酸基含有重合性不飽和モノマーは、得られる水分散性アクリル樹脂に、硬化剤と架橋反応する水酸基を導入せしめることによって塗膜の耐水性等を向上させると共に、該水分散性アクリル樹脂の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いるのが好ましい。
【0129】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜40質量%程度であるのが好ましく、4〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
【0130】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いられる疎水性重合性不飽和モノマーは、炭素数が6以上、好ましくは6〜18の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマーとしては、例えば、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香環含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0131】
また、得られる塗膜の平滑性及び光輝性を向上させる観点から、上記疎水性重合性不飽和モノマーとして、炭素数6〜18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー及び/又は芳香環含有重合性不飽和モノマーを用いるのが好ましい。特に、スチレンを用いるのがより好ましい。
【0132】
上記疎水性重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、5〜50質量%程度であるのが好ましく、7〜40質量%程度であるのがより好ましく、9〜30質量%程度であるのが更に好ましい。
【0133】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び疎水性重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーである。当該モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの具体例は、前記コア部共重合体(I)用モノマーとして例示したものと同じである。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、特に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。その他の重合性不飽和モノマーとして、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含むことにより、得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂の水性媒体中における安定性を確保できる。
【0134】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合の使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜30質量%程度であるのが好ましく、5〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
【0135】
また、シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の光輝性向上の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用せず、該共重合体(II)を未架橋型とすることが好ましい。
【0136】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂における共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、塗膜の外観向上の観点から、固形分質量比で10/90〜90/10程度であるのが好ましく、50/50〜85/15程度であるのがより好ましく、65/35〜80/20程度であるのが更に好ましい。
【0137】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、水酸基価が1〜70mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜50mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜30mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0138】
また、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、塗料組成物の貯蔵安定性及び得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、酸価が5〜90mgKOH/g程度であるのが好ましく、8〜50mgKOH/g程度であるのがより好ましく、10〜35mgKOH/g程度あるのが更に好ましい。
【0139】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%程度、及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%程度からなるモノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを得た後、このエマルション中に、水酸基含有重合性不飽和モノマー1〜40質量%程度、疎水性重合性不飽和モノマー5〜50質量%程度、及びその他の重合性不飽和モノマー10〜94質量%程度からなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を調製することによって得られる。
【0140】
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
【0141】
上記乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤が好適である。該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0142】
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用することもできる。これらのうち、反応性アニオン性乳化剤を使用することが好ましい。
【0143】
上記反応性アニオン性乳化剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。これらのうち、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が、得られる塗膜の耐水性に優れるため、好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王社製)等を挙げることができる。
【0144】
また、上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がより好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製)、「ラテムルPD−104」(商品名、花王社製)、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製)等を挙げることができる。
【0145】
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1〜15質量%程度が好ましく、0.5〜10質量%程度がより好ましく、1〜5質量%程度が更に好ましい。
【0146】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
【0147】
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1〜5質量%程度が好ましく、0.2〜3質量%程度がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量などに応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0148】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、上記で得られるコア部共重合体(I)のエマルションに、水酸基含有重合性不飽和モノマー、疎水性重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって、得ることができる。
【0149】
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、乳化剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0150】
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(I)をコア部とし、水酸基含有重合性不飽和モノマー、疎水性重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
【0151】
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、一般に10〜1,000nm程度、特に20〜500nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
本明細書において、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0152】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂の粒子の機械的安定性を向上させるために、該水分散性アクリル樹脂が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水などが挙げられる。これらの中和剤は、中和後の該水分散性アクリル樹脂の水分散液のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0153】
上記水酸基含有アクリル樹脂としては、ポリエステル及び/またはポリウレタン樹脂で変性された水酸基含有アクリル樹脂を用いることもできる。
【0154】
水酸基含有ポリエステル樹脂
本発明の水性塗料組成物において、被膜形成性樹脂として、水酸基含有ポリエステル樹脂を使用することによって、得られる塗膜の平滑性等の塗膜性能を向上させることができる。
【0155】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0156】
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0157】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0158】
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0159】
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0160】
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0161】
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0162】
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
【0163】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0164】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
【0165】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することも出来る。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0166】
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃程度で、5〜10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0167】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて添加してもよい。また、まず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、まず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0168】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0169】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0170】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸などが挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0171】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネートなどの3価以上のポリイソシアネートなどの有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物などが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
【0172】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂としては、得られる塗膜の平滑性及び耐水性に優れる観点から、原料の酸成分中の脂環族多塩基酸の含有量が、該酸成分の合計量を基準として20〜100モル%程度であるものが好ましく、25〜95モル%程度であるものがより好ましく、30〜90モル%程度であるものが更に好ましい。特に、上記脂環族多塩基酸が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが、得られる塗膜の平滑性に優れる観点から、好ましい。
【0173】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂が、更にカルボキシル基を有する場合は、その酸価が5〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、10〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、15〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量は、500〜50,000程度であるのが好ましく、1,000〜30,000程度であるのがより好ましく、1,200〜10,000程度であるのが更に好ましい。
【0174】
硬化剤
前記必要に応じて使用される硬化剤は、被膜形成性樹脂中の水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基と反応して、本発明の水性塗料組成物を硬化し得る化合物である。硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましく、アミノ樹脂が特に好ましい。硬化剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0175】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0176】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
【0177】
また、上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000程度であるのが好ましく、800〜5,000程度であるのがより好ましく、1,000〜4,000程度であるのが更に好ましく、1,200〜3,000程度であるのが最も好ましい。
【0178】
メラミン樹脂としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0179】
また、本発明の水性塗料組成物としては、被膜形成性樹脂として、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂等の水酸基含有アクリル樹脂を使用し、且つ硬化剤として、重量平均分子量が1,000〜4,000程度、特に1,200〜3,000程度のメラミン樹脂を使用することが、得られる塗膜の光輝性(フリップフロップ性)及び耐水性に優れる観点から、好ましい。
【0180】
また、硬化剤として、メラミン樹脂を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、モノ2−エチルヘキシルリン酸、ジ2−エチルヘキシルリン酸等のアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミン化合物との塩等を触媒として使用することができる。
【0181】
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。ブロック剤としては、例えば、オキシム類、フェノール類、アルコール類、ラクタム類、メルカプタン類等を挙げることができる。
【0182】
上記1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)などの3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体;これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマーなどが挙げられる。
【0183】
前記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。該カルボジイミド基含有化合物としては、1分子中に少なくとも2個のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。
【0184】
上記ポリカルボジイミド化合物としては、得られる塗膜の平滑性などの観点から、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。該水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物としては、水性媒体中に安定に溶解又は分散し得るポリカルボジイミド化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
【0185】
上記水溶性ポリカルボジイミド化合物としては、具体的には、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」「カルボジライトV−04」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。また、上記水分散性ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。
【0186】
上記ポリカルボジイミド化合物は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0187】
本発明に係る水性塗料組成物における前記被膜形成性樹脂と上記硬化剤との配合割合は、塗膜の平滑性及び耐水性向上の観点から、両者の合計量に基づいて、前者が30〜95質量%程度、好ましくは50〜90質量%程度、さらに好ましくは60〜80質量%程度で、後者が5〜70質量%程度、好ましくは10〜50質量%程度、さらに好ましくは20〜40質量%程度であることが好適である。
【0188】
本発明に係る水性塗料組成物が水酸基含有アクリル樹脂を含有する場合、水酸基含有アクリル樹脂の配合量は、水性塗料組成物中の固形分を基準として、2〜70質量%程度であるのが好ましく、10〜55質量%程度であるのがより好ましく、20〜45質量%程度であるのが更に好ましい。
【0189】
本発明に係る水性塗料組成物が水酸基含有ポリエステル樹脂を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂の配合量は、水性塗料組成物中の固形分を基準として、2〜70質量%程度であるのが好ましく、10〜55質量%程度であるのがより好ましく、20〜45質量%程度であるのが更に好ましい。
【0190】
前記水性媒体としては、本発明の水性顔料分散体の説明において記載した水性媒体の中から適宜選んで用いることができる。
【0191】
本発明の水性塗料組成物は、疎水性媒体を含有することが好ましい。必要に応じて使用される該疎水性媒体は、20℃において100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、さらに好ましくは1g以下の有機溶媒であり、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルオール、キシロール、ソルベントナフサなどの炭化水素系溶媒;n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、プロピなどのエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0192】
本発明の水性塗料組成物が疎水性媒体を含有する場合、該疎水性媒体の配合量は、共重合体(A)、水酸基含有樹脂(B)及びメラミン樹脂(C)の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常10〜100質量部、特に20〜80質量部、さらに特に30〜60質量部の範囲内であることが好適である。
【0193】
上記疎水性媒体としては、形成塗膜の鮮映性などの観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒、好ましくはn−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル及びジプロピレングリコールn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒が特に好適である。
【0194】
前記硬化触媒としては、硬化剤としてブロック化していてもよいポリイソシアネート化合物を用いる場合には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機金属触媒; トリエチルアミン、ジエタノールアミン等などのアミン類などを好適に使用することができ、硬化剤としてメラミン樹脂などのアミノ樹脂を用いる場合には、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸化合物やこれらのスルホン酸化合物のアミン中和物などを
好適に使用することができる。
【0195】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリシレート系、蓚酸アニリド系などの化合物を挙げることができる。
【0196】
前記紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物などを挙げることができる。
【0197】
本発明の水性塗料組成物を適用し得る基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛メッキ鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Feなど)メッキ鋼板などの金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂類や各種のFRPなどのプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリートなどの無機材料;木材;繊維材料(紙、布など)などを挙げることができ、中でも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
【0198】
また、本発明の水性塗料組成物を適用し得る被塗物としては、特に限定されないが、乗用車、トラック、オートバイ、バスなどの自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器などの家庭電気製品の外板部などを挙げることができ、中でも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0199】
また、被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体などの金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されたものであってもよい。さらに、被塗物は、上記金属基材や車体などに、各種電着塗料などの下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。
【0200】
本発明の水性塗料組成物の塗装方法は、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などが挙げられ、これらの塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加されていてもよい。なかでも、エアスプレー塗装及び回転霧化塗装が好ましい。該水性塗料組成物の塗布量は、通常、硬化膜厚として、5〜70μm、好ましくは10〜50μm程度となる量が好ましい。
【0201】
ウエット塗膜の硬化は、被塗物に本発明の水性塗料組成物を塗装した後、加熱することにより行われる。加熱は、それ自体既知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉などの乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、通常約80〜約180℃、好ましくは約100〜約170℃、さらに好ましくは約120〜約160℃の範囲内が適している。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常10〜40分間、好ましくは15〜30分間程度とすることができる。
【0202】
本発明の水性塗料組成物は、着色顔料、メタリック顔料、干渉色顔料などの各種顔料を配合した着色塗料組成物(メタリック塗料、干渉色塗料も包含する)として使用することができる。なかでも自動車用塗料として好適に用いることができ、被塗物上に、光輝性顔料及び/又は着色顔料を含有する水性ベースコート塗料を塗装し、次いでクリヤー塗料を塗装する塗装方法における水性ベースコート塗料として好適に使用することができる。
【0203】
本発明の水性塗料組成物を水性ベースコート塗料として使用する場合、例えば、電着塗装及び/又は中塗り塗装が施された被塗物上に、本発明の水性塗料組成物を塗装し、形成塗膜を硬化させることなく、その未硬化塗膜上にクリヤー塗料を塗装した後、該未硬化塗膜とクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる2コート1ベーク方式を用いて、複層塗膜を形成せしめることができる。なお、上記未硬化塗膜には、指触乾燥状態の塗膜及び半硬化乾燥状態の塗膜が含まれる。
【0204】
本発明の水性塗料組成物を2コート1ベーク方式で塗装する場合、該水性塗料組成物は、硬化膜厚で通常5〜40μm、好ましくは10〜30μm、さらに好ましくは10〜20μmの範囲内となるように塗装することができ、上記クリヤー塗料は、硬化膜厚で通常10〜80μm、好ましくは15〜60μmの範囲内となるように塗装することができる。
【0205】
また、上記の2コート1ベーク方式で複層塗膜を形成する場合、ハジキなどの塗膜欠陥の発生を防止するという観点から、本発明の水性塗料組成物の塗装後、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアーブローなどを行うことが好ましい。プレヒートは、通常、約40〜約100℃、好ましくは約50〜約90℃、さらに好ましくは約60〜約80℃の温度で行うことができ、プレヒートの時間は、通常30秒間〜15分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間程度とすることができる。エアーブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。また、上記クリヤー塗料の塗装後、必要に応じて、室温で1〜60分間、好ましくは3〜20分間程度のインターバルをおいたり、約40〜約80℃の温度で1〜60分間程度予備加熱し、次いで塗膜を加熱硬化させることができる。
【0206】
上記水性塗料組成物及びクリヤー塗料は、前述したそれ自体既知の加熱手段により行うことができ、通常約80〜約180℃、好ましくは約100〜約170℃、さらに好ましくは約120〜約160℃の温度で10〜40分間、好ましくは15〜30分間程度加熱して両塗膜を同時に硬化させることが好適である。
【0207】
また、本発明の水性塗料組成物は、被塗物上に中塗り塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、その未硬化の中塗り塗膜上にベースコート塗料を塗装し、さらに該塗膜を硬化させることなく、その未硬化のベースコート塗膜上にクリヤー塗料を塗装して、中塗り塗料、ベースコート塗料及びクリヤー塗料の3層の塗膜を同時に加熱硬化させる3コート1ベーク方式による複層塗膜形成方法において、中塗り塗料及び/又はベースコート塗料として好適に用いることができる。
【0208】
本発明の水性塗料組成物を上記3コート1ベーク方式で塗装する場合、中塗り塗料は、硬化膜厚で通常10〜60μm、好ましくは20〜40μmの範囲内となるように塗装することが好適であり、ベースコート塗料は、硬化膜厚で通常5〜40μm、好ましくは10〜30μm、さらに好ましくは10〜20μmの範囲内となるように塗装することが好適であり、クリヤー塗料は、硬化膜厚で通常10〜80μm、好ましくは15〜60μmの範囲内となるように塗装することが好適である。
【0209】
また、中塗り塗料及び/又はベースコート塗料として、本発明の水性塗料組成物を用いる場合は、該水性塗料組成物の塗装後に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアーブローなどを行うことが好ましい。プレヒートは、通常、約40〜約100℃、好ましくは約50〜約90℃、さらに好ましくは約60〜約80℃の温度で行うことができ、プレヒートの時間は、通常30秒間〜15分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間程度とすることができる。エアーブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。また、上記クリヤー塗料の塗装後、必要に応じて、室温で1〜60分間、好ましくは3〜20分間程度のインターバルを設けたり、約40〜約80℃の温度で1〜60分間程度予備加熱し、次いで塗膜を加熱硬化させることができる。
【0210】
塗膜の硬化は、前述したそれ自体既知の加熱手段により行うことができ、通常約80〜約180℃、好ましくは約100〜約170℃、さらに好ましくは約120〜約160℃の温度で10〜40分間、好ましくは15〜30分間程度加熱して3層の塗膜を同時に硬化させることが好適である。
【0211】
本発明の水性塗料組成物を用いることにより、塗膜性能と外観に優れた塗膜を形成せしめることができるので、本発明の水性塗料組成物は自動車用塗料として好適に用いることができる。
【0212】
本発明の水性塗料組成物を、中塗り塗料として用いる場合、ベースコート塗料としては、それ自体既知の熱硬化型ベースコート塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂系などの基体樹脂と、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、カルボジイミド基含有化合物などの硬化剤を含んでなる塗料を使用することができる。ベースコート塗料としては、環境問題、省資源などの観点から、有機溶剤の使用量の少ないハイソリッド型塗料、水性塗料などを好適に使用することができる。
【0213】
本発明の水性塗料組成物を、ベースコート塗料として用いる場合、中塗り塗料としては、それ自体既知の熱硬化型中塗り塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂系などの基体樹脂と、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、カルボジイミド基含有化合物などの硬化剤を含んでなる塗料を使用することができる。中塗り塗料としては、環境問題、省資源などの観点から、有機溶剤の使用量の少ないハイソリッド型塗料、水性塗料、粉体塗料などを好適に使用することができる。
【0214】
また、前記クリヤー塗料としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物もしくは樹脂、エポキシ基含有化合物もしくは樹脂などの架橋剤を樹脂成分として含有する有機溶剤系熱硬化型塗料、水性熱硬化型塗料、熱硬化型粉体塗料などが挙げられる。なかでも、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂を含む熱硬化型塗料、及び水酸基含有樹脂とブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含む熱硬化型塗料が好適である。
【0215】
さらに上記クリヤー塗料組成物の形態は、特に制限されるものではなく、有機溶剤型、非水分散液型、水溶液型、水分散液(スラリー)型、ハイソリッド型、粉体型など任意の形態のものを使用することができる。
【0216】
上記クリヤー塗料には、また、必要に応じて、形成塗膜の透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料などを含有させることができ、さらに、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤などを適宜含有せしめることができる。
【実施例】
【0217】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。また、実施例中の「部」および「%」は、特記しない限りそれぞれ、「質量部」及び「質量%」を示す。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
顔料分散用樹脂:
モノマー成分(a)の合成
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口反応容器に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート77.6部、p−メトキシフェノール0.07部を加えた。次いで、反応容器中に乾燥空気を通気し、攪拌しながら30℃以下に保ちながら、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール66.6部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で2時間攪拌して熟成を行なうことにより、有効成分100%の重合性不飽和モノマー(a1)を得た。該モノマーは、一般式(1)においてXは一般式(2)であり、Yはメチレン基、p=1であるモノマーである。
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口反応容器に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート77.6部、p−メトキシフェノール0.08部を加えた。次いで、反応容器中に乾燥空気を通気し、攪拌しながら30℃以下に保ちながら、N,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール88.6部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で2時間攪拌して熟成を行なうことにより、有効成分100%の重合性不飽和モノマー(a2)を得た。該モノマーは、一般式(1)においてXは一般式(2)であり、Yはメチレン基、p=2であるモノマーである。

製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口反応容器に、2−メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート59.6部、p−メトキシフェノール0.05部を加えた。次いで、反応容器中に乾燥空気を通気し、攪拌しながら30℃以下に保ちながら、N,N−ジメチルアミノエタノール44.5部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で2時間攪拌して熟成を行なうことにより、有効成分100%の重合性不飽和モノマー(a3)を得た。該モノマーは、一般式(1)においてXは一般式(2)であり、Yは繰返し単位1のオキシエチレン基であり、p=0であるモノマーである。
製造例4
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口反応容器に、2−メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート59.6部、p−メトキシフェノール0.05部を加えた。次いで、反応容器中に乾燥空気を通気し、攪拌しながら30℃以下に保ちながら、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール88.6部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で2時間攪拌して熟成を行なうことにより、有効成分100%の重合性不飽和モノマー(a4)を得た。該モノマーは、一般式(1)においてXは一般式(2)であり、Yは繰返し単位1のオキシエチレン基であり、p=1であるモノマーである。
製造例5
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び空気導入管を備えた4つ口反応容器に、メタクリル酸メチル252部、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール146.5部およびフェノチアジン3.30部を加え、混合物を攪拌しながら、95度で1時間反応させた。次いで、反応混合物を90℃に冷却し、ジ−n−ブチル錫酸化物1.73部を添加し、90〜115℃で6時間反応させた。その間、共沸物を除去しながら反応を行った。反応後、反応器を徐々に減圧して有効成分100%の重合性不飽和モノマー(a5)を得た。該モノマーは、一般式(1)においてXは一般式(3)であり、q=0のモノマーである。
製造例6
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口反応容器に、メタクリル酸メチル252部、N,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール195.0部およびフェノチアジン4.39部を加え、混合物を攪拌しながら、95度で1時間反応させた。次いで、反応混合物を90℃に冷却し、ジ−n−ブチル錫酸化物1.73部を添加し、90〜115℃で6時間反応させた。その間、共沸物を除去しながら反応を行った。反応後、反応器を徐々に減圧して有効成分100%の重合性不飽和モノマー(a6)を得た。該モノマーは、一般式(1)においてXは一般式(3)であり、q=1のモノマーである。
製造例7
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管、乾燥管及び滴下装置を備えた反応容器に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート111.2部及びp−メトキシフェノール0.11部を加え、乾燥空気を毎分20mLで導入しながら、60℃に昇温した。次いで、60℃を維持しつつ、攪拌と乾燥空気の導入とを行いながら、イソホロンジイソシアネート71.6部を1時間かけて滴下し、滴下終了後、60℃で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、80℃に昇温し、同温度でさらに1時間攪拌して熟成を行った。次いで、室温まで降温し、30℃以下を維持しつつ、攪拌しながら、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール44.5部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間攪拌して熟成を行うことにより、有効成分100%の重合性不飽和モノマー(a7)を得た。なお該モノマーは、一般式(1)においてXは一般式(4)であり、Z=繰り返し単位1のオキシエチレン基のモノマーである。
製造例8
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口反応容器に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート77.6部、p−メトキシフェノール0.06部を加えた。次いで、反応容器中に乾燥空気を通気し、攪拌しながら30℃以下に保ちながら、N,N−ジメチルアミノエタノール44.5部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で2時間攪拌して熟成を行なうことにより、有効成分100%の重合性不飽和モノマー(a8)を得た。該モノマーは、一般式(1)においてXは一般式(2)であり、Yはメチレン基であり、p=0のモノマーである。
【0218】
顔料分散用樹脂の製造
実施例1
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル15部及びプロピレングリコールモノブチルエーテル25部を仕込み、加熱撹拌して110℃に保持した。この中に、製造例1で得られたモノマー(a1)18.4部、「NFバイソマーS20W」(商品名、デグサ社製、前記一般式(5)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Rがエチレン基、mが45であり、分子量が約2,000であるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの50%水希釈品。)20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、メチルメタクリレート25.8部、n−ブチルアクリレート25.8部、アゾビスイソブチロニトリル1部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル20部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で30分間熟成し、次にプロピレングリコールモノメチルエーテル15部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。さらに110℃で1時間熟成したのち冷却し、固形分50%の顔料分散用樹脂(A1)を得た。
実施例2〜14、比較例1〜3
上記実施例1において、成分組成及び配合割合を下記表1に示すようにする以外は実施例1と同様にして、顔料分散用樹脂(A2)〜(A14)及び(AC1)〜(AC3)を得た。得られた顔料分散用樹脂の固形分、アミン価、水酸基価及び重量平均分子量を下記表1に示す。なお、下記表1における各重合性不飽和モノマーの量は固形分量である。
【0219】
【表1】
【0220】
(注1)MPEG1000: 商品名、デグサ社製、前記一般式(5)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Rがエチレン基、mが21であり、分子量が約1,000以上であるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート。
(注2)ジメチルアミノエチルメタクリレート
(注3)ジメチルアミノプロピルアクリレート
水性顔料分散体:
水性顔料分散体の製造
実施例15
攪拌混合容器に、実施例1で得た顔料分散用樹脂(A1)200部(固形分100部)、「Raven5000UIII」(商品名、コロンビアンカーボン社製、カーボンブラック顔料)60部及び脱イオン水750部を入れ、均一に混合した。次いで、得られた混合液を容量225ccの広口ガラス瓶中に入れ、分散メジアとして直径約0.5mmφのジルコニアビーズを加えて密閉し、ペイントシェーカーにて5時間分散して水性顔料分散体(B1)を得た。
【0221】
実施例16〜34、比較例4〜8
実施例15において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、実施例15と同様にして、水性顔料分散体(B2)〜(B20)および(BC1)〜(BC5)を得た。

(注4)シアニンブルー5206: 大日精化工業社製、商品名、有機系青顔料
(注5)S#12000: アビシア社製、湿潤分散剤、商品名「Solsperse12000」
(注6)RT355D: BASF社製、有機系赤顔料、商品名「シンカシャマゼンタRT355D」
性能試験
上記実施例15〜34及び比較例4〜8で得られた各水性顔料分散体について、下記の試験方法に基づいて性能試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0222】
試験方法
鮮映性(光沢):顔料分散体を透明なPETフィルム上に硬化膜厚25μmとなるよう塗布し140℃で30分間焼付けることによって得た塗膜の光沢をJIS K5400 7.6(1990)に準じて、各塗膜の60度鏡面反射率を測定した。値が大きいほど光沢が高く鮮映性に優れることを示す。
【0223】
発色性:上記鮮映性(光沢)試験で記載の如くして得られた塗膜について「MA−68II」(商品名、X−Rite社製、多角度分光測色計)を使用し、塗膜について、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から標準の光D65を照射し、反射した光のうち測定対象面に垂直な方向の光(正反射光に対して45°の角度で受光した光)についてL*値(L*45)を測定した。黒色以外の顔料ではL*45の値で発色性を評価した。黒色顔料ではL*45値に加えて、25°、75°の角度から標準の光D65を照射したときのL*値(それぞれL*25、L*75)を測定し、3つの値の和で評価した。
値が低いほど発色性が良好であることを示す。
【0224】
粘度特性:JIS−K−5400に準拠し、デジタル表示型回転粘度計(Brook Field社製、B型粘度計)にて、25℃における回転数6rpmの粘度(A)と、回転数60rpmの粘度(B)とを測定した。また、(A)/(B)を算出して、チクソトロピーインデックス値(TI値)とした。(A)及び(B)が小さいほど、得られた水性顔料分散体の顔料分散性が良好であることを示す。またTI値が1に近いほど得られた水性顔料分散体の顔料分散性が良好であることを示す。
【0225】
【表2】
【0226】
【表3】
【0227】
【表4】
【0228】
水性塗料組成物:
被膜形成性樹脂の合成
水酸基含有アクリル樹脂の合成
製造例9
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0229】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂(C1)を得た。
【0230】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR−1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0231】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR−1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0232】
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
製造例10
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、固形分70%、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(D1)を得た。
【0233】
水性塗料組成物の製造
実施例35
撹拌混合容器に、実施例15で得た水性顔料分散体(B1)84.2部、製造例9で得た水酸基含有アクリル樹脂(C1)168部、製造例10で得た水酸基含有ポリエステル樹脂(D1)26.2部、メラミン樹脂(E1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量2,000)41.7部、を入れ、均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分24%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度50秒の水性塗料組成物(X1)を得た。
【0234】
実施例36〜54及び比較例9〜13
実施例35において、配合組成を下記表3に示す通りとする以外は、実施例35と同様にして、pH8.0、固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度50秒である水性塗料組成物(X2)〜(X20)及び(XC1)〜(XC5)を得た。
【0235】
上記実施例35〜54及び比較例9〜13で得られた各水性塗料について、下記の試験方法に基づいて性能試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0236】
試験塗膜の作成方法
各水性塗料をそれぞれ透明なPETフィルム上に硬化膜厚25μmとなるよう塗布し、室温で10分間静置し、その後80℃で15分間プレヒートし、次いで140℃で30分間焼付けることによって試験塗膜を得た。
【0237】
評価試験
上記各試験板について顔料分散体の試験方法と同様にして、鮮映性及び発色性の評価を行なった。評価結果を下記表3に示す。
【0238】
【表5】
【0239】
【表6】
【0240】
【表7】