特許第5920976号(P5920976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5920976シリカ粒子及びその製造方法、半導体封止用樹脂組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920976
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】シリカ粒子及びその製造方法、半導体封止用樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20160510BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20160510BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20160510BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20160510BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   C01B33/12 A
   H01L23/30 R
   C08L101/00
   C08K3/36
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-95960(P2012-95960)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-224225(P2013-224225A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501402730
【氏名又は名称】株式会社アドマテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】永野 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】新井 雄己
(72)【発明者】
【氏名】楊原 武
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−256913(JP,A)
【文献】 特開平05−224456(JP,A)
【文献】 特開平11−035800(JP,A)
【文献】 特許第3463328(JP,B2)
【文献】 特開2006−290724(JP,A)
【文献】 特開2013−126925(JP,A)
【文献】 特開2000−247625(JP,A)
【文献】 特開2008−162849(JP,A)
【文献】 特開2008−050207(JP,A)
【文献】 特開昭62−083313(JP,A)
【文献】 特開昭58−151318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/00−33/193
H01L23/28−23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真密度が2.g/cm以上、
粒子単体の表面におけるα線生成量が0.001c/cm・h以下、
アルミニウム含有量が50ppmから5000ppm、
体積平均粒径が2nmから100nmである、
ことを特徴とするシリカ粒子。
【請求項2】
真密度が2.g/cm以上、
トリウム含有量が30ppb以下、ウラン含有量が1ppb以下、
アルミニウム含有量が50ppmから5000ppm、
体積平均粒径が2nmから100nmである、
ことを特徴とするシリカ粒子。
【請求項3】
トリウム及びウランの含有量の合計が1ppb以下である請求項1又は2に記載のシリカ粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの何れか1項に記載のシリカ粒子を製造する方法であって、
α線源の量を低減した、金属ケイ素及びケイ素化合物の何れかであるケイ素含有物を得る精製工程と、
アルカリ金属ケイ酸塩溶液を前記ケイ素含有物から製造するアルカリ金属ケイ酸塩溶液製造工程と、
得られたアルカリ金属ケイ酸塩溶液から水性シリカゾルを形成する水性シリカゾル形成工程と、
を有することを特徴とするシリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記水性シリカゾル形成工程は、
(a)コロイダルシリカの粒子径が4〜30nmであり、かつpHが2〜9であり、そしてアルミニウム含有量がAl/SiOモル比で0〜0.0008の割合で有するシリカゾルに、Al/SiOモル比が0.0006を越えるが、0.004以下になるように、アルミン酸アルカリ水溶液を添加する工程、
(b)上記(a)工程により得られたシリカゾルを80〜250℃で0.5〜20時間加熱する工程、
(c)上記(b)工程で得られたシリカゾルを陽イオン交換樹脂又は陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂に接触させることにより、pHが2〜5の酸性シリカゾルを生成させる工程、
をもつ請求項4に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のうちの何れか1項に記載のシリカ粒子と、
前記シリカ粒子を分散する樹脂組成物と、
を有することを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体封止用樹脂組成物を製造する方法であって、
請求項4又は5に記載の製造方法にてシリカ粒子を製造する工程と、
得られたシリカ粒子を樹脂組成物中に分散する工程と、
有する半導体封止用樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子及びその製造方法、半導体封止用樹脂組成物及びその製造方法に関し、特に粒径が小さいシリカ粒子であって純度が高いものを製造できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂などの樹脂中にシリカ粒子を含有させた樹脂組成物が知られている。樹脂中にシリカ粒子を含有・分散させることにより樹脂組成物に対して耐熱性を向上したり、物理的強度を向上したりできる。
【0003】
ところで、半導体素子は年々そのプロセスの微細化が進行している。半導体素子はプロセスを微細化することにより体積効率の向上、消費電力の低減、動作速度の向上などの性能向上が期待できる。
【0004】
このように半導体素子の性能向上を安定して実現するためには半導体の熱的安定性などを確保する必要がある。そうすることにより半導体素子の耐久性を向上することができる。例えば、半導体素子を保護するために樹脂組成物にて封止することなどが行われるが、その樹脂組成物の熱的特性、機械的特性が半導体素子の耐久性に直接影響することになる。
【0005】
このような樹脂組成物として先述したようなシリカ粒子を分散させた樹脂組成物を採用することがあるが、半導体素子を製造するプロセスの微細化に伴い、樹脂組成物に分散するシリカ粒子の粒径も小さくすることが求められている。例えば数nm〜十数nmのオーダーのプロセスで加工された半導体素子に対しては、同様に数nm〜数十nmの粒径をもつシリカ粒子を採用することが求められる。
【0006】
ここで、数nmから数十nm程度の粒径をもつシリカ粒子を製造する方法としては水ガラスを原料として製造する方法(特許文献1)や、シリカ前駆体としてのアルコキシドを原料にするものなどが知られている。
【0007】
ところで、半導体素子の微細化・高集積化に伴い、外部からのα線などによる影響が大きくなっている。例えば半導体素子としてメモリ素子を例に挙げると、メモリ素子は電荷の蓄積の有無により記憶するデータの種類を保持するが、微細化によって、蓄積される電荷の大きさも小さくなって、外部から照射されるα線によって変化する程度の電荷によってデータの種類が変化していまい、結果、予期しないデータの変化が生じてしまう。また、半導体素子に流れる電流の大きさも小さくなるため、α線により生じる電流(ノイズ)が信号の大きさと比べても相対的に大きくなってしまい誤動作が危惧される。そのために、半導体素子を封止する樹脂組成物についてもα線生成量が少ないことが求められる。
【0008】
従来、純度が高いシリカ粒子を製造する方法としては高純度の金属ケイ素や四塩化ケイ素などの精製が容易なケイ素化合物を製造し、その後、高純度のケイ素化合物からシリカ粒子を製造する方法が採用されていた。例えば金属ケイ素を酸化してシリカ粒子を得る方法からはサブマイクロメートルからマイクロメートルオーダーのシリカ粒子を好適に得ることが可能になり、アルコキシドを経由した方法からはナノメートルから数十ナノメートルオーダーのものが好適に得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3463328号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記実情の中、本発明者らはナノメートルオーダーのシリカ粒子について樹脂組成物に分散させた後の特性を評価した。その結果、高い純度をもちナノメートルオーダーのシリカ粒子については物理的特性が充分でない場合があることを見出した。
【0011】
本発明は上記発見された課題を解決しようとして案出されたものであり、高純度で且つ高い物理的特性をもつシリカ粒子を製造できるシリカ粒子の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来、体積平均粒径として2nm〜100nmの範囲をもち、且つ、α線生成量範囲を小さくしたり、ウランやトリウムなどの不純物の濃度を低減したシリカ粒子を得ようとすると、金属ケイ素に対して純度を高くした後、その純度が高い金属ケイ素からアルコキシドを生成することにより純度が高いシリカを得る方法、金属ケイ素から四塩化ケイ素などの精製操作が容易なケイ素化合物を生成し、生成したケイ素化合物の純度を向上することにより、ウランなどのα線源の量を低くした後にシリカを得る方法により、純度が高いシリカ粒子を製造していた。
【0013】
本発明者らの鋭意研究によると、アルコキシドから製造されたシリカ粒子はα線源の量や、粒径については満足できるものが製造できるものの、物理的特性(代表的には真密度。水ガラスから製造されたシリカ粒子においては2.2g/cmであり、金属アルコキシドから合成されるナノシリカは、密度が低く、ポーラスも多い。)が充分なものでは無かった。例えば密度が低いと充分な機械的特性を発揮させることが困難であった。とはいっても、水ガラスから製造したシリカ粒子はウランなどのα線源が除去されておらずα線の発生は避けられなかった。ここで、水ガラスの状態でウランなどのα線源を除去することは困難であった。
【0014】
しかしながら、従来は粒径が小さく且つα線の発生量が少ないシリカ粒子までは要求されても、更に真密度を高くしたシリカ粒子まで得ようとする要求は存在せず、これらの性質を両立させることは行われてはいなかった。
【0015】
この課題を解決する目的で、本発明者らが鋭意検討を行った結果、高純度な金属ケイ素から一旦水ガラスを経由してシリカ粒子を製造することにより高い純度と高い物理的特性とが両立できることを見出し以下の発明を完成した。
(1)上記課題を解決するシリカ粒子は、真密度が2.1g/cm以上、粒子単体の表面におけるα線生成量が0.001c/cm・h以下、アルミニウム含有量が50ppmから5000ppm、体積平均粒径が2nmから100nmである、ことを特徴する。
【0016】
本明細書中において「真密度」とは一次粒子について独立して測定した値である。つまり、一次粒子内に空隙を内包する場合でもその空隙と共に測定した値である。具体的には以下の様に測定する。ガス置換式密度計 AccupycII(島津製作所製)にて、サンプルホルダにサンプルを入れた後、ヘリウムガスを充填し、ヘリウムガスの充填量とサンプルの重量から真密度を算出する。
【0017】
本明細書において「α線生成量」とは以下の方法にて測定した値である。α線生成量の測定は装置として住化分析センター製LACS-4000Mを用い、測定面積を1000cmから4000cm、印加電圧を1.90kVに調製し99時間カウントした値から算出したものである。
(2)上記課題を解決するシリカ粒子は、真密度が2.1g/cm以上、トリウム含有量が30ppb以下、ウラン含有量が1ppb以下、アルミニウム含有量が50ppmから5000ppm、体積平均粒径が2nmから100nmである、ことを特徴する。
【0018】
これら(1)及び(2)はそれぞれ以下の(3)に示す構成要素を付加することが可能である。(3)トリウム及びウランの含有量の合計が1ppb以下である。
(4)上記課題を解決するシリカ粒子の製造方法は、上述の(1)〜(3)のうちの何れか1つに記載のシリカ粒子について製造する方法である。そして、α線源の量を低減した、金属ケイ素及びケイ素化合物の何れかであるケイ素含有物を得る精製工程と、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を前記ケイ素含有物から製造するアルカリ金属ケイ酸塩溶液製造工程と、得られたアルカリ金属ケイ酸塩溶液から水性シリカゾルを形成する水性シリカゾル形成工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
(4)に開示の製造方法は以下の(5)に記載の構成要素を付加することが可能である。(5)前記水性シリカゾル形成工程は、(a)コロイダルシリカの粒子径が4〜30nmであり、かつpHが2〜9であり、そしてアルミニウム含有量がAl/SiOモル比で0〜0.0008の割合で有するシリカゾルに、Al/SiOモル比が0.0006を越えるが、0.004以下になるように、アルミン酸アルカリ水溶液を添加する工程、(b)上記(a)工程により得られたシリカゾルを80〜250℃で0.5〜20時間加熱する工程、(c)上記(b)工程で得られたシリカゾルを陽イオン交換樹脂又は陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂に接触させることにより、pHが2〜5の酸性シリカゾルを生成させる工程、をもつ。
(6)上記課題を解決するシリカ粒子は、(4)又は(5)の製造方法にて製造しうることを特徴とする。
(7)上記課題を解決する半導体封止用樹脂組成物は、上述の(1)〜(3)及び(6)のうちの何れか1つに記載のシリカ粒子と、前記シリカ粒子を分散する樹脂組成物と、を有することを特徴とする。
(8)上記課題を解決する半導体封止用樹脂組成物の製造方法は、上述の(4)又は(5)に記載の製造方法にてシリカ粒子を製造する工程と、得られたシリカ粒子を樹脂組成物中に分散する工程と、有する。
【発明の効果】
【0020】
上述のシリカ粒子は真密度が上述の範囲にあるため、高い物理的特性を示す。そのため、高い機械的特性が求められる用途(半導体封止用樹脂組成物など)に適用するのに好適なものになっている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のシリカ粒子及びその製造方法、並びに、半導体封止用樹脂組成物及びその製造方法について実施形態に基づき以下詳細に説明を行う。
【0022】
(シリカ粒子)
本実施形態のシリカ粒子は真密度が2.1g/cm以上であり、望ましくは2.2g/cm以上であることが望ましい。例えば従来の製造方法であるシランを経由して製造されたシリカ粒子は1.6g/cm程度の値を示し、明確に識別できる。シランを経由して製造されたシリカ粒子は結晶構造が密で無いために真密度が低いことが推認される。ここで、後に説明する本実施形態のシリカ粒子の製造方法により製造しうるものも本実施形態のシリカ粒子の1つである。
【0023】
本実施形態のシリカ粒子は以下の(a)及び(b)のうちの少なくとも一方を充足する。(a)粒子単体の表面におけるα線生成量が0.001c/cm・h以下であることが望ましい。(b)トリウム含有量が30ppb以下、ウラン含有量が1ppb以下、特にはトリウムとウランとの含有量の和が1ppb以下であることが望ましい。つまり、α線の発生量が制限されていることを意味する。このような範囲は特に純度の向上を行わない場合には到底達成し得ない値である。
【0024】
本実施形態のシリカ粒子はアルミニウム含有量が50ppmから5000ppmである。アルミニウムの含有量をこの範囲にすることによりシリカ表面が活性化され表面処理がしやすくなる。
【0025】
アルミニウムの含有量の望ましい下限としては、500ppm、100ppm、50ppmが例示でき、望ましい上限としては1000ppm、3000ppm、5000ppmが例示できる。アルミニウムはどのように含まれていても良いが、アルミナの形態にて含まれることが予想される。なお、アルミニウムはシリカ粒子中において一次粒子内にシリカと共に含有されるものであり、シリカ粒子(アルミニウムの含有量が前述の範囲外のもの)の一次粒子と共にアルミナの一次粒子が結合した二次粒子として存在するものでは無い。
【0026】
本実施形態のシリカ粒子は体積平均粒径が2nmから100nmである。体積平均粒径の測定はレーザ散乱法にて測定したものである。体積平均粒径として好ましい下限としては5nm、10nmが挙げられ、好ましい上限としては50nm、100nmが挙げられる。
【0027】
本実施形態のシリカ粒子は真球度が0.9以上であることが望ましく、0.95以上であることが更に望ましい。真球度の測定は、SEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(真球度)={4π×(面積)÷(周囲長)}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。具体的には画像処理装置(シスメックス株式会社:FPIA−3000)を用い、無作為に抽出した100個の粒子について測定した平均値を採用する。
【0028】
(シリカ粒子の製造方法)
本実施形態のシリカ粒子の製造方法は上述した本実施形態のシリカ粒子を製造する方法である。本製造方法は精製工程とアルカリ金属ケイ酸塩溶液製造工程と水性シリカゾル形成工程とを有する。
【0029】
精製工程は原料となるケイ素含有物(金属ケイ素、ケイ素化合物)におけるα線源の量を低減する工程である。本明細書において「α線源」とはα線を放出する元素を示し、その低減の程度は上述した実施形態のシリカ粒子を製造することができる程度にする。低減の方法は特に限定されない。例えば、精製が容易なケイ素化合物を経由して行う方法、ゾーンメルティング法、単結晶を析出させる方法などが挙げられる。また、これらの方法を複数回行ったり、組み合わせたりすることもできる。
【0030】
アルカリ金属ケイ酸塩溶液製造工程はアルカリ金属ケイ酸塩溶液をケイ素含有物から製造する工程である。アルカリ金属としては特に限定しないがナトリウムが好ましい。金属ケイ酸のナトリウム塩水溶液は一般的に水ガラスと称されるものが汎用できる。金属ケイ素を直接、アルカリ金属を含む溶液に溶解させたり、金属ケイ素を酸素と反応させてシリカを形成した後に溶解させることができる。特に非晶質のシリカを用いた方が溶解性が向上できる。また、結晶性のシリカであっても、溶解性を向上することを目的としてアモルファス化して溶解性を向上して用いることができる。金属ケイ素と酸素とを反応してシリカを得る方法としては爆燃法(VMC法)と称される方法が採用できる。VMC法は比表面積が大きい(粒子状)であり且つアモルファス状のシリカを得ることができる。VMC法は、酸素を含む雰囲気中でバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に金属ケイ素粉末を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こして球状の酸化物粒子を得る方法である。アルミニウムの含有量について調製を行う場合には前述の精製工程においてケイ素含有物に対してアルミニウムの含有量を制御するか、本工程においてアルカリ金属ケイ酸塩溶液中のアルミニウムの含有量を調整することにより行う。
【0031】
水性シリカゾル形成工程は得られたアルカリ金属ケイ酸塩溶液(アルカリ性シリカゾルを含む)から水性シリカゾルを形成する工程である。アルカリ金属ケイ酸塩溶液に対して酸を添加することによりコロイドシリカが生成する。例えばpHは2〜9が好ましい。特にpH4〜7が好ましい。このpH4〜7のシリカゾルは、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を陽イオン交換樹脂又は陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂で処理し、pH2〜5の酸性シリカゾルを製造した後、アルカリ金属水酸化物水溶液、アンモニア水、アミン、第4級アンモニウム水酸化物水溶液などの塩基を添加し、pHを4〜7に調整することにより製造出来る。このゾルは製造後直ちに用いることが好ましい(例えば(a)工程。(a)工程の後には以下に説明する(b)工程、(c)工程が適用される)。
【0032】
ここで、アルカリ金属ケイ酸塩溶液中に含まれるSiO2 濃度は特に限定されないが、5〜50質量%が好ましい。そして生成したコロイダルシリカの粒子径は、BET法による比表面積又はシアーズ法による比表面積からの換算粒子径で4〜30nmにすることが例示できる。シアーズ法は、アナレティカル・ケミストリー(ANALYTICAL CHEMISTRY)第28巻第12号(1956年12月)第1981頁に説明されている様に、水酸化ナトリウムを用いた滴定による比表面積から換算される粒子径の測定方法である。
【0033】
(a)工程において使用するアルミン酸アルカリ水溶液としてはアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸第4級アンモニウム、アルミン酸グアニジンなどの水溶液を用いることが出来るが、工業薬品として市販されているアルミン酸ナトリウム水溶液が特に好ましい。アルミン酸ナトリウム水溶液のNa2 O/Al2 3 モル比は1.2〜2.0が好ましい。
【0034】
(a)工程において、pH2〜9のシリカゾルへのアルミン酸アルカリ水溶液の添加は攪拌下に0〜80℃、好ましくは5〜60℃で行なうことが出来る。攪拌はサタケ式、ファウドラー式、ディスパー型攪拌機、ホモミキサーなどにより行なうことが出来るが、攪拌速度は強い方が好ましい。添加するアルミン酸アルカリ水溶液はAl2 3 濃度0.5〜10重量%で用いるのが好ましい。アルミン酸アルカリ水溶液の添加時間は長くても差しつかえないが、通常10分以内がよい。
【0035】
(a)工程において、シリカゾルに対するアルミン酸アルカリ水溶液(例えばアルミン酸ナトリウム水溶液)の添加量は、添加後のシリカゾルのAl2 3 /SiO2 モル比で0.0006を越えるが、0.004以下が好ましい。特に0.0008を越えるが、0.004以下が好ましい。(a)工程で得られるシリカゾルはpHが5〜11である。pH6〜10が更に好ましい。
【0036】
(b)工程は(a)工程で得たシリカゾルを加熱処理する工程であり、加熱温度は80〜250℃、特に100〜200℃が好ましい。加熱時間は0.5〜20時間が好ましい。(b)工程の加熱にはSUS製やガラス製の装置及び加圧装置を使用することが出来る。
【0037】
(c)工程における陽イオン交換樹脂又は陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との接触は0〜60℃で使用できるが、特に5〜50℃が好ましい。陽イオン交換樹脂としては水素型強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく、市販の工業製品として容易に入手される。その例としては商品名アンバーライトIR−120Bが挙げられる。陰イオン交換樹脂としては水酸基型強塩基性陰イオン交換樹脂が好ましく、市販の工業製品として容易に入手される。その例としては商品名アンバーライトIRA−410が挙げられる。
【0038】
(c)工程においてシリカゾルとイオン交換樹脂との接触は、イオン交換樹脂を充填したカラム中にシリカゾルを通液させることにより好ましく行なうことが出来、シリカゾルのカラムを通過させる速度は1時間当りの空間速度1〜10程度が好ましい。(c)工程のシリカゾルと陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂との接触においては、はじめに陽イオン交換樹脂と接触し、次いで陰イオン交換樹脂と接触するのが好ましく、このシリカゾルを再び陽イオン交換樹脂と接触させると更に好ましい。
【0039】
(c)工程において(b)工程で得られたシリカゾルを希釈せず、そのままのSiO2 濃度で通液することが出来るが、希釈して通液した場合、又は(c)工程により得られたシリカゾルのSiO2 濃度が低下した場合には、蒸発法や微細多孔性膜を用いる方法などの方法で濃縮することによりSiO2 濃度を高めることが出来る。
【0040】
(c)工程により得られた酸性シリカゾルのpHは2〜5である。(a)、(b)及び(c)の各工程におけるシリカゾルの粒子径は、BET法による比表面積又はシアーズ法による比表面積からの換算粒子径として求めることができる。
【0041】
(半導体封止用樹脂組成物)
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は上述のシリカ粒子と樹脂組成物とを混合したものである。シリカ粒子と樹脂組成物との混合比は特に限定しないが、シリカ粒子の量が多い方が熱的安定性に優れたものになる。
【0042】
樹脂組成物は何らかの条件下で硬化可能な組成物である。例えば、プレポリマーと硬化剤との混合物である。硬化剤は硬貨直前に混合しても良い。樹脂組成物としてはその種類は特に限定しない。例えば、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、ブロックされたイソシアネート基、アミノ基、ハーフエステル基、アミック基、カルボキシ基及び炭素-炭素二重結合基を化学構造中に有することが望ましい。これらの官能基は好適な反応条件を設定することで互いに結合可能な官能基(重合性官能基)であり、適正な反応条件を選択することにより樹脂組成物を硬化させることができる。硬化させるための好適な反応条件としては単純に加熱や光照射を行ったり、熱や光照射によりラジカルやイオン(アニオン、カチオン)などの反応性種を生成したり、それらの官能基間を結合する反応開始剤(重合開始剤)を添加して加熱や光照射を行うことなどである。重合反応に際して必要な化合物を硬化剤として添加したり、その反応に対する触媒を添加することもできる。
【0043】
樹脂組成物としては重合により高分子材料を形成する単量体や、上述したような重合性官能基により修飾した高分子材料が好ましいものとして挙げられる。例えば、硬化前の、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などのプレポリマーが好適である。特に熱的安定性の高いものにする場合にはエポキシ樹脂を主体として組成物を構成することが望ましい。
【実施例】
【0044】
本発明のシリカ粒子及びその製造方法について実施例に基づき詳細に説明を行う。
(試験例1)
・精製工程及びアルカリ金属ケイ酸塩溶液製造工程:高純度(低トリウム、低ウラン)の水ガラス作成
水酸化ナトリウム30質量部を水75質量部に溶解させた後、アドマファイン25H/75C(体積平均粒径0.5μm)45質量部を加えて溶解するまで攪拌し、水ガラス溶液を生成した。アドマファイン25H/75Cは金属シリカ粉末と酸素とを反応させて製造されたシリカ粒子であり、原料となる金属ケイ素としてはウラン及びトリウムの量が最終的なシリカ粒子を製造したときに1ppb以下になるように生成されているものである。
・水性シリカゾル形成工程
上述した水ガラス溶液に0.2質量%の硝酸ナトリウムを加えたのち、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を適宜通過させてpHを4〜7の範囲に調節し、減圧下で加熱攪拌(90℃)することでコロイドシリカを生成させた。その後、1質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液を添加して加熱処理した。アルミン酸ナトリウム水溶液の添加量はコロイドシリカ(シリカゾル)に対するアルミン酸ナトリウムの量が、アルミナとして7000ppmになる量とした。加熱温度は80℃程度とし、加熱時間は3日間程度とした。
【0045】
その結果、体積平均粒径が10nmのシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は原料としたアドマファイン25H/75Cと同様にウラン及びトリウムの含有量は0.1ppb未満であった。また、比重は2.2g/cmであった。
【0046】
(試験例2)
イオン交換樹脂を通過させてpH調整した後の、減圧下での加熱攪拌の温度を90℃から95℃に上げて体積平均粒径が50nmのシリカ粒子を得た以外は試験例1と同じ方法で製造した。得られたシリカ粒子は原料としたアドマファイン25H/75Cと同様にウラン及びトリウムの含有量は0.1ppb未満であった。また、比重は2.2g/cm3であった。
【0047】
(試験例3:市販の水ガラスから製造したシリカ粒子について)
市販の水ガラス(ケイ酸ソーダ 3号 富士化学社製)を用いた以外は前述の試験例1と同様の方法にてシリカ粒子を製造した。得られたシリカ粒子についての物性を示すと、体積平均粒径約10nm、α線:0.03c/cmh未満、比重2.2g/cm、トリウム含有量:150ppb、ウラン含有量:4ppbであり、α線量、トリウム含有量、ウラン含有量がすべて本発明の範囲外であった。