【実施例】
【0040】
(試験1)
VMC法において着火エネルギーとシリコン粒子の粒径との関係を検討した。
【0041】
シリコン粒子としては本発明のシリコン粒子製造工程の条件を変化させて得た種々の粒径分布を持つシリコン粒子を用いた。具体的には体積平均粒径が1.0μm(試験例1)、3.5μm(試験例2)、5.5μm(試験例3)、7.8μm(試験例4)、18.5μm(試験例5)のシリコン粒子を試験に供した。
【0042】
これらの試験例のシリコン粒子について比表面積と着火に必要なエネルギーとを測定した。比表面積は窒素ガスを用いたBET法にて測定した。着火エネルギーの測定は着火エネルギー装置及び吹き上げ式粉じん爆発試験装置を組み合わせ測定した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1より明らかなように、体積平均粒径が5.5μm(試験例3)を超えると(特に3.5μmを超えると)着火エネルギーが急激に大きくなることが明らかになった。従って、シリコン粒子の体積平均粒径としては5.5μm以下(特には3.6μm以下)にすることにより着火エネルギーを小さくすることが可能になることが分かった。
【0045】
また、比表面積が3.6m
2/gより小さい(特に3.9m
2/gより小さいと)着火エネルギーが急激に大きくなることが明らかになった。従って、シリコン粒子の比表面積としては3.6m
2/g以上(3.9m
2/g以上)にすることにより着火エネルギーを小さくすることが可能になることがわかった。
【0046】
体積平均粒径が0.01μm以上にすると粉じん爆発の可能性を小さくできるため、工業的には、体積平均粒径が5.5μm以下、0.01μm以上のシリコン粒子を用いると着火エネルギーが小さくなることにより燃焼が安定するため好ましい。
【0047】
(試験2)
試験例2−1
エチレングリコールを冷却液として用いてシリコンインゴットをダイヤモンドワイヤーソーでスライスした時(シリコン粒子製造工程)に発生したエチレングリコールのシリコン粒子懸濁液(シリコン粒子の体積平均粒径は1.0μm)をセラミックスフィルターで濃縮したのち、脱イオン水を入れて、鉱酸でpHを5に調整した。シリコン粒子100質量部に対してメチルトリメトキシシラン1.5質量部添加して表面処理を行った(疎水化工程)。フィルタープレスで固液分離し、ケーキを脱イオン水で洗浄した(固液分離工程及び洗浄工程)。ケーキを乾燥して試験例2−1の表面疎水性シリコン粒子を得た。
試験例2−2
エチレングリコールを冷却液として用いてシリコンインゴットをダイヤモンドワイヤーソーでスライスした時(シリコン粒子製造工程)に発生したエチレングリコールのシリコン粒子懸濁液(シリコン粒子の体積平均粒径は1.0μ)を遠心分離機で固液分離し、ケーキを脱イオン水で洗浄した(固液分離工程及び洗浄工程)。ケーキを乾燥して試験例2−2のシリコン粒子を得た。
【0048】
・球状シリカ生成工程(その1)
試験例2−1及び2−2のシリコン粒子についてVMC法により球状シリカを製造した。以下、具体的に説明する。
図1に本工程で使用した製造装置の概要を示す。この製造装置は、反応室10をもつ反応容器1と、反応容器1の上部に設けられ反応室10に開口する燃焼器2と、反応容器1の下部側壁に設けられ反応室10と連通する捕集装置3と、ホッパー4と、ホッパー4内の原料粉末を燃焼器2へ供給する粉末供給装置5とから構成されている。
【0049】
燃焼器2は、
図2に拡大して示すように、軸中心に設けられ反応室10に開口する粉末供給路20と、粉末供給路20と同軸的に設けられ反応室10にリング状に開口する可燃ガス供給路21と、可燃ガス供給路21の外側に同軸的に設けられ反応室10にリング状に開口する酸素供給路22とから構成されている。捕集装置3は、反応室10に開口する排気管30と、排気管30の他端に接続されたバグフィルタ31と、ブロア32とからなり、ブロア32の駆動により反応室10内の燃焼排ガスを吸引して排気するとともに、生成した球状シリカを捕集する。なお、ブロア32の吸引により、反応室10内は負圧に保たれる。
【0050】
上記した製造装置を用い、以下に示す製造方法により球状シリカを製造した。試験例2−1にて得た、体積平均粒径1.0μmのシリコン粒子(純度99.9%以上)を原料にした。
【0051】
このシリコン粒子をホッパ4に投入し、粉末供給装置5から空気とともに反応室10内に供給した。このときシリコン粒子は80kg/hrの割合で供給され、搬送空気の量は20Nm
3 /hrであった。また、着火用の燃料である可燃ガスは、可燃ガス供給路21から7Nm
3 /hrの量で供給され、支燃性ガスである酸素ガスは、酸素供給路22から140Nm
3 /hrの量で供給した。
【0052】
すなわち粉末供給装置5から燃焼器2へ供給された混合粉末は、酸素ガスとともに連続的に可燃ガスの燃焼により形成された着火炎で着火され、爆発的に燃焼して火炎を生成した。この火炎は燃焼器2から反応室10に延び、生成した球状シリカが捕集装置3により捕集される。この操作を表2に示す時間だけ継続して行った。
【0053】
試験例5のシリコン粒子を原料として同様の操作を行い球状シリカを得た。このようにして得られた球状シリカについて、粒径、比表面積をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2より明らかなようにこの結果から、試験例2−1のシリコン粒子を原料として用いると、試験例5のシリコン粒子を原料に用いた場合と比べて粒径及び比表面積のバラツキが小さくなることが分かった。これは試験例2−1のシリコン粒子が試験例5のシリコン粒子よりも体積平均粒径が小さく、特に試験例2−1のシリコン粒子の体積平均粒径が1.0μmと5.5μmよりも小さかったため着火エネルギーが小さくなって安定的な火炎を生成することができたことが一因であると推測された。
【0056】
・球状シリカ生成工程(その2)
球状シリカ生成工程(その1)に記した装置と同様な製造装置を用い、試験例2−2のシリコン粒子と試験例5のシリコン粒子とを原料に用いて球状シリカを製造した。
【0057】
これらのシリコン粒子をホッパ4に投入し、粉末供給装置5から空気とともに反応室10内に供給した。このときシリコン粒子は60kg/hrの割合で供給され、搬送空気の量は15Nm
3 /hrであった。また、着火用の燃料である可燃ガスは、可燃ガス供給路21から0.5Nm
3 /hrの量で供給し、支燃性ガスである酸素ガスは、酸素供給路22から70Nm
3 /hrの量で供給した。
【0058】
すなわち粉末供給装置5から燃焼器2へ供給された混合粉末は、酸素ガスとともに連続的に可燃ガスの燃焼により形成された着火炎で着火され、爆発的に燃焼して火炎を生成した。この火炎は燃焼器2から反応室10に延び、生成した二酸化珪素粉末が捕集装置3により捕集された。このようにして得られる球状シリカについて、粒径、比表面積をそれぞれ測定した。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表3より明らかなようにこの結果から、試験例2−2のシリコン粒子を原料として用いると、試験例5のシリコン粒子を原料に用いた場合と比べて粒径及び比表面積のバラツキが小さくなることが分かった。これは試験例2−2のシリコン粒子が試験例5のシリコン粒子よりも体積平均粒径が小さく、特に試験例2−2のシリコン粒子の体積平均粒径が1.0μmと5.5μmよりも小さかったため着火エネルギーが小さくなって安定的な火炎を生成することができたことが一因であると推測された。なお、本試験において搬送空気の供給速度、可燃ガスの供給速度、支燃ガスの供給速度をその1の試験の条件から変化させていることにより、試験例2−1のシリコン粒子を用いた場合よりも試験例2−2のシリコン粒子を用いて得られた球状シリカの平均粒径が大きくなった。
【0061】
なお、疎水化されたシリコン粒子は凝集性が低いため、疎水化していない場合と比べて、搬送空気の供給速度を相対的に小さくすることができ、最終的に得られる球状シリカの体積平均粒径などを変化させる幅を大きくすることも原理的に可能である。
【0062】
(試験3)
シリコン粒子製造工程にて採用する砥粒の組成の影響についての検討
試験2−1にて用いた表面疎水性シリコン粒子についてSiC粒子を混合した以外、同様の方法にて試験を行った。得られた球状シリカ粒子について炭素の含有量を測定したが検出限界(1質量%)以下であった。なお、SiCの混合量は11%、33%、55%とした。