(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920980
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】自動車用の気体燃料タンクの保護構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/063 20060101AFI20160510BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20160510BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
B60K15/063 B
F02M37/00 301D
F02M21/02 X
F02M21/02 V
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-156602(P2012-156602)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-19191(P2014-19191A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】島津 義一
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−285393(JP,A)
【文献】
特開2007−112180(JP,A)
【文献】
特開2002−195499(JP,A)
【文献】
特開2005−315294(JP,A)
【文献】
特開2000−343959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00−15/10
F02M 21/02
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に取付けられる自動車用の気体燃料タンクの保護構造において、
上記気体燃料タンクに気体燃料の注入取出し用のバルブと所定の温度で上記気体燃料タンクの内部の気体燃料を放出する安全弁を設け、
上記気体燃料タンクの少なくなくとも外部に露出する側面を覆うようにタンクプロテクタを取付け、
上記タンクプロテクタは、上記気体燃料タンク側のタンクプロテクタ内壁と該タンクプロテクタ内壁の外側に設けたタンクプロテクタ外壁を設け、上記タンクプロテクタ内壁と上記タンクプロテクタ外壁との間にタンクプロテクタ空間部を設け、該タンクプロテクタ空間部に上記安全弁に近接してタンクプロテクタ空間開口部を設けたことを特徴とする気体燃料タンクの保護構造。
【請求項2】
上記気体燃料タンクは、車体のフロアパネルの下側面に取付けられ、上記気体燃料タンクの下側面が上記タンクプロテクタで覆われ、上記気体燃料タンクの上部は、上記車体のフロアパネルで覆われた請求項1に記載の気体燃料タンクの保護構造。
【請求項3】
上記安全弁は、上記気体燃料タンクの長手方向の端部に設けられた請求項1又は請求項2に記載の気体燃料タンクの保護構造。
【請求項4】
上記タンクプロテクタは、金属製である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の気体燃料タンクの保護構造。
【請求項5】
上記タンクプロテクタは、上記タンクプロテクタ空間開口部が上記タンクプロテクタ空間部の先端に形成され、上記タンクプロテクタ空間開口部側が上方に位置するように上記タンクプロテクタ空間部が傾斜して取付けられた請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の気体燃料タンクの保護構造。
【請求項6】
上記気体燃料タンクは、炭素繊維と合成樹脂の複合材料で形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の気体燃料タンクの保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載され、気体燃料を貯蔵する自動車用の気体燃料タンクの保護構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の気体燃料タンクは、燃料電池自動車や、水素エンジンの開発にともない、天然ガスを圧縮して高圧状態で貯蔵する気体燃料タンクや、水素ガスを高圧状態で貯蔵する気体燃料タンクが使用されている。
図5に示すように、これらの気体燃料タンク110には、高圧で気体が充填されているため、気体燃料タンクに気体燃料を注入し、気体燃料を燃料パイプを通して、燃料電池や気体エンジンに供給する際には、気体燃料の注入と取出しを制御する制御バルブ111が気体燃料タンク110の先端である首部113に取付けられている。
【0003】
さらに、気体燃料タンク110には、車両が火災等に曝されても、気体燃料タンク110が破裂しないように、気体燃料タンク110の周囲の温度が所定温度以上の高温になると、気体燃料タンク110の内部の気体燃料を放出することができるように、安全弁112が制御バルブ111と近接して取付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この安全弁112は、所定温度で溶融する合金や合成樹脂で形成された溶融弁を有しており、気体燃料タンク110の温度が高くなると、合金や合成樹脂が溶融して、気体燃料タンク110内の気体燃料を外部に放出して、気体燃料タンク110の破損を防止することができるようになっている。
【0005】
一方
図5に示すように、気体燃料タンク110は、スペースの関係上、フロアパネルの下に取付けられることが多い。この場合は、走行中の飛石等から気体燃料タンク110を保護するために、タンクプロテクタ120が気体燃料タンク110の下面を覆うように取付けられている。気体燃料タンク110を他の場所に取付ける場合でも、外部からの衝撃を防ぐために、外側に面した部分にタンクプロテクタ120が取付けられている。
【0006】
また、
図6に示すように、燃料タンク210を保護するタンクプロテクタ220は、飛石等の外部からの衝撃からの保護や、耐熱性、耐騒音性、耐候性を満足させるために、タンクプロテクタ外壁221とタンクプロテクタ内壁222からなる2層構造を有するものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−112180号公報
【特許文献2】特開2003−285393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図5に示すように、気体燃料タンク110の周囲において、所定温度以上に高温になるような場合に、気体燃料タンク110を加熱する熱源5が安全弁112から離れており、しかも、タンクプロテクタ120に覆われている場合には、熱源5により加熱された空気は、
図5の矢印Aで示すように、安全弁112から離れた側から外部に出て行くため、迅速に安全弁112が作動しない恐れが生じる。安全弁112を複数設ける場合には、気体燃料タンク110に複数の排出孔を設ける必要があり、気体燃料タンク110の強度が低下するとともに、コストも増加することとなる。
【0009】
本発明は、タンクプロテクタを有していても、一つの安全弁で、気体燃料タンクのどの部分が高温にさらされても、確実に安全弁を作動させることができる自動車用の気体燃料タンクの保護構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、自動車に取付けられる自動車用の気体燃料タンクの保護構造において、
気体燃料タンクに気体燃料の注入取出し用のバルブと所定の温度で気体燃料タンクの内部の気体燃料を放出する安全弁を設け、
気体燃料タンクの少なくなくとも外部に露出する側面を覆うようにタンクプロテクタを取付け、
タンクプロテクタは、気体燃料タンク側のタンクプロテクタ内壁とタンクプロテクタ内壁の外側に設けたタンクプロテクタ外壁を設け、タンクプロテクタ内壁とタンクプロテクタ外壁との間にタンクプロテクタ空間部を設け、タンクプロテクタ空間部に安全弁に近接してタンクプロテクタ空間開口部を設けたことを特徴とする気体燃料タンクの保護構造である。
【0011】
請求項1の本発明では、気体燃料タンクに気体燃料の注入取出し用のバルブと所定の温度で気体燃料タンクの内部の気体燃料を放出する安全弁を設けたため、気体燃料タンクの周囲が所定温度以上になった場合には、気体燃料タンクの内部の気体燃料を放出して、気体燃料タンクの破損を防止することができる。
【0012】
気体燃料タンクの少なくなくとも外部に露出する側面を覆うようにタンクプロテクタを取付けたため、気体燃料タンクを車体に取付けたときに外部に露出する側面に、外部から衝撃が加わっても、気体燃料タンクの外面を保護することができる。さらに、車外からの騒音や外部からの熱を減少させることができる。
【0013】
タンクプロテクタは、気体燃料タンク側のタンクプロテクタ内壁とタンクプロテクタ内壁の外側に設けたタンクプロテクタ外壁を設け、タンクプロテクタ内壁とタンクプロテクタ外壁との間にタンクプロテクタ空間部を設けた。このため、気体燃料タンクへの外部からの断熱効果を向上させることができるとともに、車内への耐騒音効果も向上させることができる。
【0014】
タンクプロテクタ空間部に安全弁に近接してタンクプロテクタ空間開口部を設けた。このため、安全弁から離れた場所で気体燃料タンクやタンクプロテクタが熱せられるような場合でも、タンクプロテクタ空間部の熱せられた空気は、タンクプロテクタ空間開口部から迅速に排出されて、安全弁を確実に作動させることができる。従って、安全弁を1つにしても確実に、気体燃料タンクのどの部分が熱せられても、気体燃料タンクの周囲の高温を感知して、気体燃料を気体燃料タンクから排出することができる。このため、気体燃料タンクの高温による強度の低下と破損を防止して、気体燃料の漏れの可能性を低下させ、コストも減少させることができる。
【0015】
請求項2の本発明は、気体燃料タンクは、車体のフロアパネルの下面側に取付けられ、気体燃料タンクの下側面がタンクプロテクタで覆われ、気体燃料タンクの上部は、車体のフロアパネルで覆われた気体燃料タンクの保護構造である。
【0016】
請求項2の本発明では、気体燃料タンクは、車体のフロアパネルの下面側に取付けられたため、車体のスペースを有効利用することができるとともに、気体燃料タンクをフロアパネルに強固に取付けることができる。
気体燃料タンクの下側面がタンクプロテクタで覆われたため、気体燃料タンクを車体に取付けたときに下側に位置する下側面に、飛石等が衝突しても、気体燃料タンクの外面を保護することができる。
【0017】
気体燃料タンクの上部は、車体のフロアパネルで覆われたため、気体燃料タンクの上面を断熱部材で覆わなくとも、フロアパネルの車内側面にはカーッペット等の室内装飾部材があり、これ等の部材が断熱効果を有するため、気体燃料タンクの上面を断熱することができる。気体燃料タンクの上面を覆う断熱部材が不要のため、断熱部材の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0018】
請求項3の本発明は、安全弁は、気体燃料タンクの長手方向の端部に設けられた気体燃料タンクの保護構造である。
【0019】
請求項3の本発明では、安全弁は、気体燃料タンクの長手方向の端部に設けられたため、気体燃料タンクの長手方向の端部に設けられた制御バルブと連結して取付けることができる。また、気体燃料タンクの他方の長手方向の端部が高温に曝されても、タンクプロテクタのタンクプロテクタ空間開口部により、安全弁を作動させることができる。
【0020】
請求項4の本発明は、タンクプロテクタは、金属製である気体燃料タンクの保護構造である。
【0021】
請求項4の本発明では、タンクプロテクタは、金属製であるため、耐熱性が高く、高温の熱源に気体燃料タンクが曝されても、気体燃料タンクを所定時間保護することができる。また、飛石等を確実に防ぐことができる。また、気体燃料タンクの周囲が高温になったときに、熱伝導率が高く、素早くタンクプロテクタ空間部の内部の空気をタンクプロテクタ空間開口部から排出し、安全弁を作動させることができる。
【0022】
請求項5の本発明は、タンクプロテクタは、タンクプロテクタ空間開口部がタンクプロテクタ空間部の先端に形成され、タンクプロテクタ空間開口部側が上方に位置するようにタンクプロテクタ空間部が傾斜して取付けられた気体燃料タンクの保護構造である。
【0023】
請求項5の本発明では、タンクプロテクタは、タンクプロテクタ空間開口部がタンクプロテクタ空間部の先端に形成され、タンクプロテクタ空間開口部側が上方に位置するようにタンクプロテクタ空間部が傾斜して取付けられた。このため、安全弁から離れた位置で、タンクプロテクタが熱源に曝されても、タンクプロテクタ空間部はタンクプロテクタ空間開口部が上になるように傾斜して設けられたため、加熱された空気が迅速にタンクプロテクタ空間部を通り、タンクプロテクタ空間開口部から安全弁に達することができ、迅速確実に安全弁を作動させることができる。
【0024】
請求項6の本発明は、気体燃料タンクは、炭素繊維と合成樹脂の複合材料で形成された気体燃料タンクの保護構造である。
【0025】
請求項6の本発明では、気体燃料タンクは、炭素繊維と合成樹脂の複合材料で形成されたため、強度が大きく、軽量なタンクを形成することができ、車両の軽量化に貢献することができる。
【発明の効果】
【0026】
タンクプロテクタは、タンクプロテクタ内壁とタンクプロテクタ外壁との間にタンクプロテクタ空間部を設けたため、気体燃料タンクへの外部からの断熱効果を向上させることができるとともに、車内への耐騒音効果も向上させることができる。
タンクプロテクタ空間部に安全弁に近接してタンクプロテクタ空間開口部を設けたため、安全弁から離れた場所で気体燃料タンクが熱せられるような場合でも、安全弁を確実に作動させることができる。従って、安全弁を1つにしても確実に、気体燃料タンクが熱せられる場合を感知して、気体燃料を気体燃料タンクから排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態である気体燃料タンクとタンクプロテクタ内に収納した状態の平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態である気体燃料タンクと断熱部材をフロアパネルに取付けた状態の長手方向の断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態であるタンクプロテクタのタンクプロテクタ空間開口部の部分の部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態である気体燃料タンクと断熱部材をフロアパネルに取付けた状態の幅方向の断面図である。
【
図5】従来の気体燃料タンクと断熱部材をフロアパネルに取付けた状態の長手方向の断面図である。
【
図6】従来の他の燃料タンクにタンクプロテクタを取付けた状態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態である自動車用の気体燃料タンク10の保護構造について、
図1〜
図4に基づき説明する。
本発明の実施の形態に使用する気体燃料タンク10は、
図1と
図2に示すように、略円筒形状に形成されて、両方の長手方向の端部は外側に膨らんだ球面状に形成されている。そして、気体燃料タンク10は車両に搭載されるときは、通常、気体燃料タンク10の長手方向が車体の幅方向に一致するように取付けられる。
【0029】
気体燃料タンク10は、内部の高圧の天然ガスや水素ガスが充填されるために、充分な強度を有するように形成され、金属製や炭素繊維強化樹脂で製造される。車輛の軽量化に貢献するために、気体燃料タンク10を軽量化するように、炭素繊維強化樹脂で製造される場合には、炭素繊維を気体燃料タンク10の形状になるように多層に巻いて、エポキシ樹脂等で固着させて製造される。
【0030】
その気体燃料タンク10に気体燃料を注入及び取出すために制御バルブ11が気体燃料タンク10の一方の長手方向の先端である首部13に取付けられている。
制御バルブ11は、外部からタンク内へ気体燃料を注入するための注入管14と気体燃料を燃料電池(図示せず)や気体エンジンン(図示せず)へ供給する供給管15が取付けられている。そして、制御バルブ11を開閉して気体燃料を注入し供給している。
【0031】
制御バルブ11には、安全弁12が取付けられている。安全弁12は、気体燃料タンク10が高温にさらされて、気体燃料タンク10の周囲の温度が所定の温度以上に上昇したときに、気体燃料タンク10の内部の気体燃料を外部に排出することができるものである。
安全弁12には、所定温度で溶融する低融点の金属或いは低融点の合成樹脂が取付けられている。
【0032】
気体燃料タンク10の周囲の温度が所定の温度以上に上昇したときに、この低融点の金属或いは低融点の合成樹脂が溶融して、安全弁12が働き、安全弁12に取付けられた排出管16から気体燃料タンク10の内部の気体燃料が外部に排出される。これにより、気体燃料タンク10の破裂等を防止することができる。
【0033】
図1と
図2に示すように、気体燃料タンク10がフロアパネル1の下面に取付けられたときは、気体燃料タンク10の下部にはタンクプロテクタ20が取付けられている。タンクプロテクタ20は、気体燃料タンク10が車輛のフロアパネル1の下側に取付けられた場合には、気体燃料タンク10の少なくなくとも下側面を覆うようにタンクプロテクタ20を取付けることができる。
【0034】
タンクプロテクタ20は、気体燃料タンク10の端部に取付けられた制御バルブ11と安全弁12を覆うように取付けられる。これにより、制御バルブ11と安全弁12を外部からの衝撃から保護することができる。また、制御バルブ11と安全弁12に取付けられた注入管14、供給管15及び排出管16も覆うように取付けられる。
【0035】
気体燃料タンク10が車輛のフロアパネル1の下側に取付けられた場合には、気体燃料タンク10を車体に取付けたときに下側に位置する下側面に、飛石等が衝突しても、気体燃料タンク10の外面を保護することができる。さらに、車外からの騒音や外部からの熱を防止することができる。
なお、気体燃料タンク10を車輛のフロアパネル1の下側以外に取付けた場合には、タンクプロテクタ20は、下側ではなく、気体燃料タンク10が外部に露出する部分の外面を覆うことができるように取付けることができる。
【0036】
タンクプロテクタ20は、金属製或いは合成樹脂製で形成することができる。金属製で形成した場合には、耐熱性が高く、高温の熱源に気体燃料タンク10がさらされても、気体燃料タンク10を所定時間保護することができる。また、飛石等を確実に防ぐことができる。また、合成樹脂で形成した場合には、タンクプロテクタ20の重量を軽減できる。
【0037】
図1と
図2に示すように、タンクプロテクタ20は、気体燃料タンク10が車輛のフロアパネル1の下側に取付けられた場合には、タンクプロテクタ20側端に形成したプロテクタブラケット27にビス、クリップ或いはネジ等の取付部材2を挿入して、フロアパネル1に取付けることができる。この場合は、気体燃料タンク10は、車体のフロアパネル1の下面側に取付けられたため、車体のスペースを有効利用することができるとともに、気体燃料タンク10をフロアパネル1に強固に取付けることができる。
【0038】
また、気体燃料タンク10の上部は、車体のフロアパネル1で覆われたため、気体燃料タンク10の上面を断熱部材で覆わなくとも、フロアパネル1の車内側面にはカーッペット等の室内装飾部材があり、これ等の部材が断熱効果を有するため、気体燃料タンク10の上面を断熱することができる。気体燃料タンク10の上面を覆う断熱部材が不要のため、軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0039】
図4に示すように、タンクプロテクタ20は、気体燃料タンク10の下部に対応する部分に、2層になるように、気体燃料タンク10側のタンクプロテクタ内壁22とタンクプロテクタ内壁22の外側に設けたタンクプロテクタ外壁21を設け、タンクプロテクタ内壁22とタンクプロテクタ外壁21との間にタンクプロテクタ空間部23を設けた。このため、気体燃料タンク10への外部からの断熱効果を向上させることができるとともに、車内への耐騒音効果も向上させることができる。タンクプロテクタ外壁21は、タンクプロテクタ20の本体を形成する。
【0040】
タンクプロテクタ空間部23は、タンクプロテクタ20の長手方向の略先端から略先端まで連続して形成されることが好ましい。これにより、気体燃料タンク10のどの部分が高温にさらされても、加熱された空気をタンクプロテクタ空間部23内で、タンクプロテクタ空間開口部24まで移動させ、安全弁12を作動させることができる。
【0041】
タンクプロテクタ外壁21とタンクプロテクタ内壁22は、ともに板金で形成することができる。この場合は、タンクプロテクタ内壁22は、タンクプロテクタ20本体であるタンクプロテクタ外壁21に、溶接、ネジ止め等で固着される。
なお、タンクプロテクタ外壁21とタンクプロテクタ内壁22は、ともに耐熱性の合成樹脂で形成することも、タンクプロテクタ内壁22のみを耐熱性の合成樹脂で形成することもできる。
【0042】
そして、
図3に示すように、タンクプロテクタ20の長手方向に端部から端部まで延びて形成されたタンクプロテクタ空間部23に、安全弁12に近接したタンクプロテクタ空間部23の一方の端部にタンクプロテクタ空間開口部24を設けた。タンクプロテクタ空間開口部24は、タンクプロテクタ内壁22の先端とタンクプロテクタ外壁21の間に隙間を形成するようにして、形成することができる。
タンクプロテクタ空間部23は、気体燃料タンク10の下部の略全長に亘り形成され、タンクプロテクタ空間開口部24は、タンクプロテクタ空間部23の安全弁12側の先端部分に形成されることとなる。
【0043】
このため、安全弁12から離れた場所で、即ち、
図2に示す熱源5の付近で、気体燃料タンク10が熱せられるような場合でも、タンクプロテクタ空間部23の熱せられた空気は、タンクプロテクタ空間開口部24から迅速に排出されて、安全弁12の低融点の金属や合成樹脂を溶融させて、安全弁12を確実に作動させることができる。
【0044】
従って、気体燃料タンク10に対して、安全弁12を1つにしても確実に、気体燃料タンク10が熱せられる場合を感知して、気体燃料を気体燃料タンク10から排出することができる。このため、気体燃料タンク10の周囲の温度が高温になっても、気体燃料タンク10の強度の低下を防止して、気体燃料の漏れの可能性を低下させ、コストも減少させることができる。
【0045】
タンクプロテクタ20は、タンクプロテクタ空間部23が傾斜するようにして、タンクプロテクタ空間開口部24がタンクプロテクタ空間部23の上方側の先端に位置するように、タンクプロテクタ20全体を傾斜して取付けることが好ましい。この場合には、安全弁12から離れた位置で、タンクプロテクタ20が熱源に曝されても、加熱された軽い空気が迅速にタンクプロテクタ空間部23内を移動して、上方にあるタンクプロテクタ空間開口部24から安全弁12に達することができ、迅速確実に安全弁12を作動させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 フロアパネル
10 気体燃料タンク
11 制御バルブ
12 安全弁
20 タンクプロテクタ
21 タンクプロテクタ外壁
22 タンクプロテクタ内壁
23 タンクプロテクタ空間部
24 タンクプロテクタ空間開口部