(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
養殖貝の殻の表面には、その養殖過程において様々な異物が付着する。養殖貝に付着する異物として、例えば、泥汚れ、昆布やわかめなどの海藻類、フジツボ、カキ、イソギンチャクなどの微小な貝や生物などが挙げられる。これらの異物は、養殖貝の成長を促進するために、定期的に除去する必要がある。また、これらの異物は、商品価値が低下しないように、養殖貝の出荷に際して除去することが望ましい。
【0003】
養殖貝の成長と異物が付着する場所との関係に関して、例えばホタテ貝を例にとると、成長が停止した部分と成長が持続している部分とでは、付着の仕方や付着する異物の量が異なるという特徴がある。すなわち、稚貝又は半成貝の段階では、殻全体が成長しており、その成長速度も速いため、異物が付着し難く、付着したとしてもその量は少なく、除去し易い物が多い。その後、貝は半成貝から成貝に至るが、この段階の貝は、成長が停止する部分と成長が持続する部分とが存在する。成長が停止する部分は、貝の最も隆起した部分であり、この部分には異物が付着しやすく、付着した異物は除去し難いことが多い。また、成長が持続する部分である貝刃先は、付着物が少なく、付着したとしても除去し易いものが多い。
【0004】
一方、この貝刃先の部分は、殻が薄いため、割れたり欠けたりし易く、殻が割れた貝は、商品価値が低下するという問題がある。したがって、貝の表面に付着した異物を除去する装置においては、殻の最も隆起した部分に付着した異物は効果的に除去されるが、成長が持続している貝刃先の部分の損傷は生じないようにする構成が必要である。
【0005】
貝の表面に付着した異物を除去する方法として、従来、ブラシや爪等を利用して異物を除去する方法、落下の衝撃や貝同士の摩擦を利用して異物を除去する方法、及び液体や気体を貝に噴射して異物を除去する方法、などが提案されている。
【0006】
ブラシや爪等を利用して異物を除去する方法として、例えば特許文献1(特開平7−303434)、特許文献2(特許4478405号)に記載の装置が提案されている。特許文献1の装置は、ベルトで挟まれた貝を上下から回転ブラシでブラッシングすることによって、貝表面の異物を除去する装置である。この装置は、回転ブラシがスプリングで付勢されているため、厚みの異なる貝に対して一定の圧力で回転ブラシが貝の表面に当接しながら異物が除去される。特許文献2の装置は、貝がV字状の貝移動通路内を移動する間に、移動通路の両側に設けられた金属やゴムの爪が貝表面の異物を除去する装置である。この装置は、V字状に構成された貝移動通路の内部を貝が縦に転がりながら移動するため、貝刃先を損傷することなく異物が除去される。
【0007】
落下の衝撃や貝同士の摩擦を利用して異物を除去する方法として、例えば特許文献3(特開2002−11421)、特許文献4(特開2004−329083)に記載の装置が提案されている。特許文献3及び特許文献4の装置は、いずれも、貝の大きさより小さい多数の穴が設けられたドラムに多数の貝を投入し、ドラムを回転させ、その回転によって、又はその回転とドラム内部に設けられた回転翼の回転とによって、ドラム内部の貝同士又は貝とドラムとの摩擦を発生させる。したがって、これらの装置は、この摩擦で異物が除去されたり、ドラムの穴に異物部分が入り込むことで穴の縁によって異物が削ぎ落とされたりすることを特徴とする。
【0008】
液体や空気を貝に噴射して異物を除去する方法として、例えば特許文献5(特開2000−60349)に記載の装置が提案されている。この装置は、コンベア上を移動する貝に向けて圧力水を噴射することによって、貝表面の異物を除去する装置である。こうした装置は、貝に損傷を生じることなく表面に付着した異物を除去することができるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び特許文献2のような、ブラシや爪等を利用して異物を除去する方法は、貝刃先を損傷する可能性は低いものの、貝を一定の間隔で並べて1つずつ処理する必要があるため、単位時間当たりの処理能力を向上させることが難しいという課題がある。また、金属などの爪を利用した方法の場合には、貝表面に傷がつく可能性があり、ブラシやゴムなどといった柔軟性のある爪を利用した方法の場合には、貝表面に強固に固着した異物を除去することは困難である。特許文献3及び特許文献4のような、落下の衝撃や貝同士の摩擦を利用して異物を除去する方法は、ドラム内部に大量の貝を投入して処理することができるため単位時間当たりの処理能力は高いものの、回転するドラムと貝との衝撃や貝同士が衝突する衝撃で、貝刃先が損傷する可能性が高い。特に、異物の除去効率を向上させる目的で、ドラム内部における貝の滞留時間を長くした場合には、この問題は顕著になる。また、こうした方法では、貝の両面が均等に処理されず、また、貝同士又は貝とドラムとが偶発的に衝突するだけであるため、異物除去能力を向上させることが難しい。特許文献5のような、液体や空気を貝に噴射して異物を除去する方法は、貝の表面の泥汚れや除去されやすい海藻等を除去することはできるが、強固に固着した異物を除去することは難しい。こうした方法は、養殖の中間段階での管理に用いられることが多い。
【0011】
従って、本発明は、貝刃先に損傷を生じることなく、貝の表面に付着した種々の異物を効果的に除去することができる、処理効率の高い貝表面の異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、貝表面に付着した異物を除去するための装置を提供する。本装置は、筐体と、貝の一方の表面に付着した異物を除去するための第1の除去部が設けられた第1の除去面を有する、前記筐体内部に配置された第1の異物除去体と、貝の他方の表面に付着した異物を除去するための第2の除去部が設けられた第2の除去面を有する、前記筐体内部に配置された第2の異物除去体とを備える。第1の異物除去体は、第1の除去面が水平面に対して所定の角度だけ傾斜するように筐体内部に支持され、第2の異物除去体は、第2の除去面が、第1の除去面に対して、貝の厚みに対応する所定の間隔をもって対向するように筐体内部に支持される。
【0013】
本装置は、さらに、第1の異物除去体を第1の除去面に沿って往復運動させるとともに、第2の異物除去体を、第1の異物除去体の往復運動とは異なる位相で第2の除去面に沿って往復運動させる、駆動機構を有する。駆動機構によって第1の異物除去体と第2の異物除去体とが位相で往復運動することにより、対向する第1の除去面と第2の除去面との間の空間に投入された貝は、往復運動に伴って空間内を移動しながら表面に付着した異物が除去される。一実施形態においては、こうした往復運動は、駆動機構がクランク機構を有することによって実現することができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、本装置においては、第1の異物除去体と第2の異物除去体とが異なる周期で往復運動するように、駆動機構を構成することがより好ましい。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、第1及び第2の除去部のいずれか一方又は両方は、第1及び第2の異物除去面に設けられた複数の穴であることがより好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、第1及び第2の異物除去体のいずれか一方又はその両方は、第1の除去面と第2の除去面との間の間隔を任意に変えることができるように構成された間隔可変機構をさらに備えることがより好ましい。本発明の一実施形態によれば、間隔可変機構は、さらに、第1の除去面と第2の除去面との間の空間内から第1及び第2の除去面に加えられる力に応じて間隔を変化させるように構成されることがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る装置を用いれば、貝刃先に損傷を生じず、貝の殻の表面に傷がつく可能性を低下させながら、貝表面に付着した種々の異物を効果的に除去することができるため、商品価値を低下させずに貝を出荷することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態による貝表面の異物除去装置を詳細に説明する。
図1に示されるように、貝表面異物除去装置1は、直方体の筐体10と、筐体10を支持する架台11とを有する。筐体10は、
図1に示されるように架台11上に傾斜して取り付けることができる。筐体10の内部には、
図1及び
図2に示されるように、第1の異物除去体20と、第2の異物除去体30とが配置される。第1及び第2の異物除去体20、30の各々の対向面(これらの対向面は、それぞれ第1の除去面21及び第2の除去面31という)には、複数の除去部23、33(本実施形態においては円形の複数の穴である)が設けられている。装置1は、さらに、第1及び第2の異物除去体20、30の各々を、各々の対向面に沿って互いに異なる位相で往復運動させるための駆動機構50を有する。
【0020】
第1の異物除去体20と第2の異物除去体30とは、各々の除去面21と31とが所定の間隔dで対向するように配置されている。所定の間隔dは、処理される貝Sの厚みに対応する間隔とされ、貝Sの厚みより若干狭い間隔であることが好ましく、本実施形態においては約2cmであるが、これに限定されるものではない。
図5に示されるように、間隔dをもって対向する除去面21と31との間の空間sには、筐体10の上部開口13(すなわち
図1の右上の方向)から、殻の表面に異物が付着した貝Sが投入される。空間sに投入された貝Sは、往復運動する第1の異物除去体20と第2の異物除去体30との間を、筐体10の下部開口14(すなわち、
図1の左下の方向)に移動する。その移動の過程で、貝Sの一方の表面に付着した異物は、異物除去体20の複数の除去部23によって表面から除去され、貝Sの他方の表面に付着した異物は、異物除去体30の複数の除去部33によって表面から除去される。装置1の貝が投入される部分には、投入される貝の堆積台(
図1において点線で示される)を上部開口13に連続するように設けることが好ましい。堆積台をコンベアを用いて構成して、貝Sが自動的に上部開口13から装置1に投入されるようにしてもよいし、堆積台を単なる貝のホッパとして構成して、作業者が手動で貝Sを投入するようにしてもよい。
【0021】
本実施形態の筐体10は、直方体の形状を有し、対向する側壁12a及び12bと、上部開口13と、下部開口14とを有する。上部開口13は、異物が付着した貝Sの投入口を構成し、下部開口14は、異物が除去された貝Sの排出口を構成する。筐体10は、異物除去体20、30によって除去された異物が装置1の下方に落下するように、底面15の全面又は一部を開口として構成することもできる。筐体10の上面は、開口を設けることも、開口のない壁とすることもできるが、内部の貝Sの状態を確認する目的で、少なくとも一部に開口を設けることが好ましい。
【0022】
筐体10の側壁12a、12bの内側には、複数のローラが取り付けられる。複数のローラは、
図2に示されるように、第1の異物除去体20を支持するローラ群17a、17bと、第2の異物除去体30を支持するローラ群18a、18b、19a、19bとから構成される。なお、符号に付されたアルファベットについて、「a」は側壁12a側の部材を示し、「b」は側壁12b側の部材を示す(以下、同様)。複数のローラ17aと17b、複数のローラ18aと18b、及び複数のローラ19aと19bは、側壁12a、12bの各々の内側において対応する同じ位置に設けられることが好ましい。これらの複数のローラと、第1及び第2の異物除去体20、30との関係は、後述する。
【0023】
筐体10の内部には、第1の異物除去体20及び第2の異物除去体30が配置される。本実施形態においては、
図2及び
図3に示されるように、第1の異物除去体20は、四角形の第1の除去面21と、側部に設けられた支持部22a、22bとを有するものとすることができる。第1の除去面21には、複数の第1の除去部23が設けられる。第1の異物除去体20は、支持部22a、22bを、筐体10の側壁12のローラ群17a、17b上に乗せることによって、筐体10に移動可能に支持される。なお、
図3には現れないが、第1の除去面21の裏面側には、
図5に示されるように、クランク機構52の接続ロッド55の端部が回転可能に接続される接続部25が設けられている。
【0024】
第2の異物除去体30は、
図2及び
図4に示されるように、四角形の第2の除去面31と、側部に設けられた支持部32a、32bとを有するものとすることができる。第2の除去面31には、複数の第2の除去部33が設けられる。第1の異物除去体30は、支持部32aが筐体10の側壁12aのローラ群18aと19aとの間に位置し、支持部32bが、側壁12bのローラ群18bと19bとの間に位置するように設置することによって、筐体10に移動可能に支持される。
【0025】
第1及び第2の異物除去体20、30の複数の除去部23、33は、第1及び第2の除去面21、31を変形又は加工することによって形成することができる。複数の除去部23、33は、本実施形態においては、第1及び第2の除去面21、31に設けられた複数の穴であることが好ましい。除去部23、33を複数の穴として構成することにより、貝Sの表面に付着した異物が異物除去体20、30の往復運動に伴って穴の縁部によって除去されるが、貝の表面には穴の縁部がある程度の長さをもって当たるため、爪などによって異物を除去する装置と比べて、貝表面に傷が付きにくいという利点がある。さらに、除去部23、33を複数の穴として構成することは、除去された異物が穴から筐体10の下面15を経て筐体10の外部に排出され、さらに除去部としての加工も容易であるという点からも、有利である。穴の形状は、本実施形態においては円形であるが、これに限定されるものではなく、三角形又は四角形などの多角形とすることもでき、様々な形状の穴が混在するようにすることもできる。穴の大きさは、処理される貝の大きさより若干小さくすることが好ましい。
【0026】
本発明の別の実施形態においては、複数の除去部23、33は、除去面21、31に設けられた穴以外に様々な構成のものとすることができる。例えば、除去面21、31の複数の箇所を裏側から空間sの側に向けて隆起させて、その隆起を除去部23、33として構成することができる。また、除去面21、31を波状に加工し、その波の頂部を複数の除去部23、33として機能させることもできる。さらに、第1及び第2の異物除去体20、30と除去部23、33とを別個に作成し、除去部23、33を溶接などによって除去面21、31に取り付けるようにすることもできる。
【0027】
除去部23、33の構成、形状、大きさ等が異なる異物除去体20、30を複数個準備しておき、処理される貝Sの大きさや異物の付着の状況に応じて、異物除去体20及び30の一方又は両方を適切な除去部23、33を有する異物除去体20、30に交換することもできる。
【0028】
第1及び第2の異物除去体20、30の除去面21、31の大きさ及び形状は、限定されるものではない。除去面21、31の傾斜に沿った方向の長さは、異物の除去の程度と装置1の処理能力とのバランスを考慮して適宜決定することができる。この長さは、短すぎると装置1の単位時間当たりの処理能力は向上する一方で異物の除去効果が低くなり、長すぎると除去効果は向上する一方で処理能力が低下することになる。第1及び第2の除去面21、31の傾斜の方向と直交する幅方向の長さは、処理能力の観点から適宜決定することができる。幅方向の長さは、複数の貝Sが幅方向に並んで同時に処理されるようにすることが可能な長さであることが好ましく、少なくとも処理される貝Sの幅の2倍以上の長さを有することがより好ましい。
【0029】
第2の異物除去体30の上端部34は、
図2及び
図4に示されるように、第1の異物除去体20から離れる方向に湾曲して構成されることが好ましい。第2の異物除去体30の上端部34をこのように構成することによって、空間sへの貝Sの進入がより容易になるとともに、複数の貝Sが上端部34の部分で一旦、横方向に整列してから空間sに進入するため、異物除去処理がより効率的に行われることになる。
【0030】
第1の異物除去体20は、支持部22a、22bが複数のローラ17a、17bの上に移動可能に支持されることによって、除去面21が傾斜方向に沿って移動し、第2の異物除去体30は、支持部32a、32bが複数のローラ18a、18bと19a、19bとの間に支持されることによって除去面31が傾斜方向に沿って移動するように構成することができる。除去面21、31の水平面からの傾斜角度は、特に限定されるものではないが、貝Sが空間sに滞留する時間を考慮して、約30°〜約50°であることが好ましい。
【0031】
本発明の一実施形態においては、装置1は、除去面21、31の傾斜角度が変更可能に構成されることが好ましい。除去面21、31の傾斜角度の変更は、例えば、架台11の複数の脚の長さを変更可能に構成しておき、必要に応じて複数の脚の長さを変えて、架台11によって支持されている筐体10の傾斜角度を変更することにより、行うことができる。あるいは、除去面21、31の傾斜角度の変更は、例えば、複数のローラ17〜19の側壁12における取付位置を変更できるように構成しておき、必要に応じてローラの位置を変えることによって、行うこともできる。
【0032】
第1の除去面21と第2の除去面31とは間隔dをもって対向するため、これらの除去面の間には、処理される貝Sの通路となる空間sが存在することになる。第1の異物除去体20と第2の異物除去体30との間に投入された貝Sは、この空間s内を傾斜の方向に沿って下方に移動しながら、異なる位相で往復運動を行う除去部23、33によって表面から異物が除去される。間隔dは、処理される貝Sの厚み及び処理中の貝Sの重なり状態などに対応できるように、変更可能であることが好ましい。間隔dは、本実施形態においては、第2の異物除去体30を以下のように構成することによって変更可能にすることができる。
【0033】
本実施形態においては、第2の異物除去体30は、
図4(a)〜(c)に示されるように、第1の部分37と第2の部分38とを有する2つの部分から構成することができる。第1の部分37は、第1の除去面31を有する部分とし、第2の部分38は、支持部32a、32bを有する部分とすることができる。第1の部分37と第2の部分38とは、間隔可変機構40によって連結される。間隔可変機構40は、
図4(b)及び(c)に示されるように、ボルト及びナットからなる間隔調整部材41と、第1の部分37と第2の部分38とに対して互いに離れる方向の力を与える付勢部材42とを有する。本実施形態においては、間隔調整部材41のボルトの一方の端部が第1の部分37に接続され、他方の端部が第2の部分38に設けられた穴39を貫通して上方に突出する。この他方の端部にはナットが螺着されており、このナットの締め付けの程度によって、第1の部分37と第2の部分38との間の相対的な位置関係を変化させることができる。また、間隔調整部材41のボルトは、一実施形態においてはコイルバネとすることができる付勢部材42の中心に通されており、付勢部材42は、第2の異物除去体30の第1の部分37と第2の部分38とに対して互いに離れる方向の力を与えることができる。
【0034】
こうした間隔可変機構40を備えることによって、装置1の使用前には、間隔可変機構40の間隔調整部材41(ボルト及びナット)を用いて第2の異物除去体30の第1の部分37と第2の部分38との相対的な位置関係を変化させることによって、間隔dを予め調整することができる。また、間隔可変機構40は、装置1の使用中には、例えば空間s内で貝Sが重なった場合や厚みの異なる貝Sが空間s内に混在した場合などのように、空間s内から除去面21及び/又は31に対して力が加わったときに、その力の大きさに応じて付勢部材42が圧縮されることによって、間隔dを変化させることができる。
【0035】
間隔可変機構40の数は限定されないが、第1の部分37と第2の部分38とを安定的に連結するためには、
図4(a)に示されるように、第1の部分37及び第2の部分38の縁部に近い4カ所の部分に設けることが好ましい。また、本実施形態においては、第2の異物除去体30が上述のような間隔可変機構40を有するものとして説明したが、第1の異物除去体20を同様に構成することもでき、第1及び第2の異物除去体20、30の両方を同様の構成することもできる。
【0036】
本発明においては、第1の異物除去体20及び第2の異物除去体30は、各々の傾斜する除去面21、31に沿って、往復運動するように構成される。一実施形態によれば、装置1は、異物除去体20、30を往復運動させる機構として、
図1及び
図5に示されるような駆動機構50を有するものとすることができる。駆動機構50は、駆動モータ51と、第1の異物除去体20を往復運動させるための第1のクランク機構52と、第2の異物除去体30を往復運動させるための第2のクランク機構56と、駆動モータ51の動力をクランク機構52、56に伝達するチェーン60並びに第1の歯車61及び第2の歯車62とを有する。
【0037】
クランク機構52は、回転軸53と、円盤54と、接続ロッド55とを有する。回転軸53の一方の端部は歯車61の中心に接続され、他方の端部は円盤54の中心に接続される。また、接続ロッド55の一方の端部は、円盤54の中心から半径方向に離れたいずれかの位置に回転可能に接続され、他方の端部は、第1の異物除去体20の接続部25に回転可能に接続される。クランク機構56も同様に、回転軸57と、円盤58と、接続ロッド59とを有する。回転軸57の一方の端部は歯車62の中心に接続され、他方の端部は円盤58の中心に接続される。また、接続ロッド59の一方の端部は、円盤58の中心から半径方向に離れたいずれかの位置に回転可能に接続され、他方の端部は、第2の異物除去体30の接続部35に回転可能に接続される。
【0038】
駆動モータ51の軸出力は、チェーン60を介して歯車61及び62に伝達され、これらの歯車を回転させる。歯車61の回転力は、回転軸53を介して円盤54に伝達され、円盤54を回転運動させる。円盤54の回転運動は、接続ロッド55によって第1の異物除去体20に伝達されることにより直線運動に変換され、第1の異物除去体20を往復運動させる。同様に、歯車62の回転力は、回転軸57を介して円盤58に伝達され、円盤58を回転運動させる。円盤58の回転運動は、接続ロッド59によって第2の異物除去体30に伝達されることにより直線運動に変換され、第2の異物除去体30を往復運動させる。
【0039】
本発明においては、第1の異物除去体20及び第2の異物除去体30の往復運動は、位相差をもって行われるように設定される。2つの異物除去体の往復運動が位相差をもって行われるとは、例えば一方の異物除去体が往復運動の上死点にあるときには他方の異物除去体が往復運動の上死点以外の位置にあるといった位置関係で、2つの異物除去体が相対的に往復運動を行うことをいう。2つの異物除去体20、30の対向する除去面21、31に挟まれた貝Sは、位相差を有する2つの異物除去体20、30の運動に伴って前進及び後退を繰り返しながら、貝Sの自重によって空間s内を除去面21、31に沿って下方に移動する。
【0040】
第1の異物除去体20及び第2の異物除去体30の各々の往復運動は、異なる周期で行われるようにすることがより好ましい。2つの異物除去体の往復運動が異なる周期で行われるとは、例えば一方の異物除去体が上死点から下死点を経由して上死点に戻るまでの時間と、他方の異物除去体が上死点から下死点を経由して上死点に戻るまでの時間とが異なるように、2つの異物除去体が相対的に往復運動を行うことをいう。2つの異物除去体20、30を異なる周期で往復運動させることによって、空間s内における貝Sの移動をよりスムーズにさせることができる。第1の異物除去体20の往復運動の周期と、第2の異物除去体30の往復運動の周期との差は、特に限定されないが、本発明者らの実験によれば、第1の異物除去体20の周期を第2の異物除去体30の周期より短くすることが好ましく、第1の異物除去体20の周期を第2の異物除去体30の周期の約0.6倍程度とすることがより好ましい。
【0041】
第1の異物除去体20の往復運動と第2の異物除去体30の往復運動との位相差及び周期差は、歯車61及び62の径、円盤54及び58の径、又は円盤54及び58と接続ロッド55及び59との接続位置のいずれか又はこれらの組み合わせを変えることによって、適宜調整することができる。また、本実施形態においては、装置1は、第1の異物除去体20及び第2の異物除去体30が、傾斜に沿って上下方向に往復運動を行うように構成されているが、第1の異物除去体20及び第2の異物除去体30の往復運動の方向はこれに限定されない。例えば、第1の異物除去体20及び第2の異物除去体30は、傾斜の方向と交差する横方向に往復運動するように構成することもできる。
【0042】
次に、本発明の一実施形態による貝の表面の異物除去装置1を用いて貝表面の異物を除去する方法を説明する。
まず、表面の異物を除去する貝Sの厚みに応じて、第1の除去面21と第2の除去面31との間の間隔dの距離を予め調整する。間隔dの調整は、第1の異物除去体20又は第2の異物除去体30のいずれか一方又はその両方に設けられた間隔可変機構40によって行うことができる。また、貝Sの重さに応じて、第1及び第2の除去面21、31の水平面からの傾斜角度を予め調整する。傾斜角度の調整は、例えば架台11の脚の長さを変えることによって行うことができる。
【0043】
次に、駆動モータ51を回転させて、第1及び第2の異物除去体20、30を往復運動させる。この往復運動は、クランク機構52、56によって実現される。次に、筐体10の上部開口13に連続する貝の堆積台から、複数の貝Sが空間sに向けて投入される。空間sの入り口では、貝Sは、第1の異物除去体20の除去面21と、第2の異物除去体30の除去面31とに挟まれて、一端停止する。停止した複数の貝Sは、第2の異物除去体30の上端部34の湾曲の効果によって横方向に整理され、その後、順次、空間s内に入り込む。
【0044】
空間sに入った貝Sは、第1及び第2の異物除去体20、30の往復運動に伴って傾斜の方向に前進又は後退しながら、傾斜に沿って下方に移動する。この移動の過程で、貝Sの殻の表面に付着した異物は、異物除去体20、30に設けられた除去部23、33によって削り取られる。
【0045】
また、移動の過程で、例えば、貝Sが空間s内を移動する間に複数の貝Sが重なったり、強固に付着した異物によって厚みが増した貝Sが空間sに入ったりした場合には、貝Sによって第1の異物除去面21及び第2の異物除去面31が互いに離れる方向に押圧され、間隔可変機構40の付勢部材41が圧縮されることによって、間隔dは広くなる。この間隔dは、貝Sの重なりが解消されたり、貝Sから異物が除去されたりした場合には、間隔可変機構40の付勢部材42が伸張することによって、元の間隔に戻る。
【0046】
空間s内を移動しながら傾斜に沿って筐体10の下部に到達すると、異物が除去された貝Sは、下部開口14から排出される。