(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921046
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】燃料要素、燃料集合体、及び燃料要素を製造する方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/08 20060101AFI20160510BHJP
G21C 3/06 20060101ALI20160510BHJP
G21C 3/60 20060101ALI20160510BHJP
G21C 3/62 20060101ALI20160510BHJP
G21C 3/30 20060101ALI20160510BHJP
G21C 21/10 20060101ALI20160510BHJP
G21C 21/02 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
G21C3/08
G21C3/06 Z
G21C3/60
G21C3/62 N
G21C3/06 G
G21C3/30 A
G21C21/10
G21C21/02 N
【請求項の数】25
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-114955(P2014-114955)
(22)【出願日】2014年6月3日
(62)【分割の表示】特願2010-540611(P2010-540611)の分割
【原出願日】2007年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-209121(P2014-209121A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】510161299
【氏名又は名称】トリウム・パワー、インク
【氏名又は名称原語表記】THORIUM POWER,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・ミハイロヴィッチ・バシュキルツェフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン・フェドロヴィッチ・クズネツォフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ヴラディミロヴィッチ・ケヴロイエフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ・グレボヴィッチ・モロゾフ
【審査官】
青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭41−002279(JP,B1)
【文献】
特公昭41−021399(JP,B1)
【文献】
特開平11−352272(JP,A)
【文献】
特開平11−183674(JP,A)
【文献】
特公昭38−005344(JP,B1)
【文献】
特公昭42−012028(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/06
G21C 3/08
G21C 3/30
G21C 3/60
G21C 3/62
G21C 21/02
G21C 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の燃料集合体において使用される燃料要素であって、
核分裂性物質を含むらせん状の複数のリブを形成する多数葉の輪郭を有するカーネルと、
前記カーネルの長軸に沿って延伸する中央の金属の減速材と、
前記カーネルを切れ目なく囲む金属の被覆材と、
を備え、
前記らせん状の複数のリブは、前記燃料要素の長さの5%から20%の間のねじれの軸方向ピッチを有する、燃料要素。
【請求項2】
前記カーネルは、前記核分裂性物質および非核分裂性金属の合金を有する、請求項1に記載の燃料要素。
【請求項3】
前記カーネルにおける前記合金の前記核分裂性物質がウランを含む、請求項2に記載の燃料要素。
【請求項4】
前記カーネルにおける前記合金の前記非核分裂性金属がジルコニウムを含む、請求項2または3に記載の燃料要素。
【請求項5】
前記カーネルは、ウランの割合が容積比で0%よりも大きく30%以下であり、当該ウランは、ウラン同位体U−235が重量比で0%よりも大きく20%以下に濃縮されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料要素。
【請求項6】
前記カーネルが、原子炉級プルトニウムの割合が当該カーネルの容積比で0%より大きく30%以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料要素。
【請求項7】
前記被覆材がジルコニウムを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料要素。
【請求項8】
前記被覆材は、前記カーネルの全体を被覆する、請求項7に記載の燃料要素。
【請求項9】
前記減速材が、ジルコニウムを有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の燃料要素。
【請求項10】
前記減速材は、横方向にそって外側へ延伸し、らせん状の複数のリブのそれぞれと対向する複数のらせん状の突起を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の燃料要素。
【請求項11】
前記らせん状の複数のリブは周方向に等間隔の複数のリブを有し、
前記減速材の断面形状は、前記複数のリブのそれぞれに対するかどを有した正多角形の形を取る、請求項10に記載の燃料要素。
【請求項12】
前記正多角形の複数の頂点は、前記カーネルの前記らせん状の複数のリブと対向する、請求項11に記載の燃料要素。
【請求項13】
前記輪郭は3つのリブを有する、請求項1から12のいずれか1項に記載の燃料要素。
【請求項14】
陸上原子炉と組合せられて、前記燃料要素が当該原子炉に配置される、請求項1から13のいずれか1項に記載の燃料要素。
【請求項15】
複数の前記燃料要素を支持するフレームを備えた燃料集合体と組み合わせられる、請求項1から13のいずれか1項に記載の燃料要素。
【請求項16】
陸上原子炉と組合せられ、
前記燃料要素が当該原子炉に配置され、前記カーネルがジルコニウムを有し、
前記カーネルの前記核分裂性物質は、ウランを当該カーネルの容積比で0%よりも大きく30%以下の割合で有し、かつ、ウラン同位体U−235が重量比で0%よりも大きく20%以下の濃縮をされており、
前記被覆材は、ジルコニウムを有し、
前記減速材は、ジルコニウムを有し、
前記減速材は、横方向にそって外側へ延伸し、らせん状の複数のリブのそれぞれと対向する複数のらせん状の突起を有する、請求項1に記載の燃料要素。
【請求項17】
原子炉において用いられる燃料集合体であって、
原子炉に取り外し可能に配置されるように構成されるフレームと、
前記フレームにより支持された複数の燃料要素と、
を備え、
前記複数の燃料要素のうちの少なくとも幾つかのそれぞれは、
核分裂性物質を含むらせん状の複数のリブを形成する多数葉の輪郭を有するカーネルと、
前記カーネルの長軸に沿って延伸する中央の金属の減速材と、
前記カーネルを切れ目なく囲む金属の被覆材と、
を備える、燃料集合体。
【請求項18】
陸上原子炉と組合せられて、前記燃料集合体が当該原子炉に配置される、請求項17に記載の燃料集合体。
【請求項19】
前記複数の燃料要素の前記少なくとも幾つかにおける前記金属の被覆材は、ジルコニウムを含む、請求項17または18に記載の燃料集合体。
【請求項20】
前記複数の燃料要素の前記少なくとも幾つかにおける前記カーネルは、ウラン‐ジルコニウム金属を有する、請求項17から19のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項21】
前記カーネルにおける前記核分裂性物質は、当該カーネルの容積比で、0%よりも大きく30%以下のウランを有し、かつウラン同位体U−235が0%よりも大きく20%以下に濃縮されている、請求項17から20のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項22】
原子炉において用いられる燃料要素を製造する方法であって、
カーネル、中央の金属の減速材、及び被覆材を、前記燃料要素を形成すべく、金型によるジョイント押出成型を行う段階と、
を備え、
前記ジョイント押出成型の後、
前記カーネルは、核分裂性物質を含むらせん状の複数のリブを形成する多数葉の輪郭を有し、
前記減速材は、前記カーネルの長軸に沿って延伸し、
前記金属の被覆材が前記カーネルを囲み、
前記らせん状の複数のリブは、前記燃料要素の長さの5%から20%の間のねじれの軸方向ピッチを有する、方法。
【請求項23】
前記被覆材が、ジルコニウムを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記カーネルが、ウラン‐ジルコニウム金属を有する、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
請求項22から24のいずれか1項に記載の方法で製造された前記燃料要素を陸上原子炉における原子炉に配置する段階を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリウムを核燃料として用いる軽水炉の設計に関し、特に、VVER−1000等の加圧水型原子炉(PWR)の炉心を構成するジャケットレス核燃料集合体の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電は、世界中で、依然として重要なエネルギー源である。十分な化石燃料資源を産出しない国々の多くは、電力供給の多くを原子力発電に依存している。それ以外の多くの国においても、使用電力の種類の多様性を確保するための競争力のあるエネルギー源として原子力発電が利用されている。また、原子力発電は、化石燃料による汚染(酸性雨や地球温暖化等)を抑制し、将来世代のために化石燃料を節約するという目標の達成に大きく貢献している。
【0003】
原子炉の設計や運転において安全性は確かに重大な問題であるが、核兵器に使用される物質が拡散する危険も重大な問題である。この問題は、政権が不安定な国において特に懸念される。このような国による核兵器の保有は、世界の安全保障にとって大きな脅威である。それゆえ、原子力エネルギーは、核兵器の拡散や核兵器使用の危険を生じることのないように生成され、使用されなければならない。
【0004】
現存するすべての原子炉では、いわゆる原子炉級プルトニウムと呼ばれる物質が大量に生成されている。例えば、一般的な1000MW原子炉では、毎年200〜300kg程度の原子炉級プルトニウムが生成されている。このような原子炉級プルトニウムは、核兵器製造に用いることができる。したがって、従来の原子炉の炉心から排出された核燃料は極めて拡散しやすい物質であり、権限の無い者による廃棄核燃料の入手を阻止するためのセキュリティ対策が必要である。米国及び旧ソビエト連邦が核兵器を廃棄したときに生じた兵器級プルトニウムが大量に貯蔵されており、セキュリティ面で同様の問題がある。
【0005】
従来の原子炉においては、長期間に亘って放射能を放出する放射性廃棄物を廃棄する必要があり、天然ウラン鉱の供給が世界的に急激に減少していることも問題である。
【0006】
このような問題に対処するため、比較的少量の非拡散性濃縮ウラン(この濃縮ウランは濃縮度20%以下のU−235成分を有する。)を使用し、プルトニウムのような拡散性物質を大量に生じることのない原子炉の開発が進められてきた。このような原子炉の例が、国際公開第WO85/01826号公報及び国際公開第WO93/16477号公報に開示されている。これらの公報には、トリウム燃料を備えるブランケット領域から出力の多くを取り出すシードブランケット型原子炉が開示されている。このブランケット領域は、非拡散性濃縮ウランの燃料棒を含むシード領域を取り囲んでいる。シード燃料棒のウランから放出された中性子がブランケット領域のトリウムに捕獲されることによって、核分裂性のU−233が生成され、このU−233が燃焼して原子力発電用の熱を発生させる。
【0007】
トリウムの埋蔵量はウランの埋蔵量を大きく上回っているため、原子炉用核燃料としてトリウムが有望視されている。また、上記の原子炉は、装着された当初の核燃料と各燃料サイクルの最後に排出される核燃料のいずれもが核兵器製造に適したものではないという点で「非拡散的」である。このような非拡散性は、非拡散性の濃縮ウランのみをシード核燃料として用い、プルトニウムの生成量を最小にするように減速材対燃料比を選択し、ブランケットサイクルの終了時にはU−238成分と残留物U−233とが均一に混合されているブランケット領域に少量の非拡散性濃縮ウランを添加してU−233を「変性させる」(つまり、U−233の特性を変える)ことで核兵器の製造に適さないものにすることによって実現される。
【0008】
残念ながら、上述したタイプの原子炉は、いずれも真の意味で「非拡散的」ではない。特に、上述した構造の原子炉のいずれにおいても、拡散可能な下限よりも大量の拡散性のあるプルトニウムがシード領域に生じることが分かった。内側の中央のブランケット領域と外側の外周ブランケット領域とを有する環状シードを使用すると、厚みのない環状のシード領域はそれに対応した小さな「光学的厚さ」しか有していないため、内側のブランケット領域の非常に硬いスペクトルがシード(中性子)スペクトルによって支配されるので、「非拡散的」原子炉として運転される原子炉を提供することができない。この結果、シード領域において、熱外中性子の割合が高くなり、拡散可能な下限よりも多くの拡散性のプルトニウムが製造されることになる。
【0009】
また、上述したタイプの原子炉は、運転時のパラメータの観点から最適化されたものではない。例えば、シード領域におけるプルトニウムの量を最小限に抑え、シード燃料棒から十分な熱を発生させ、ブランケット領域においてトリウムがU−233に最適に転換されるようにするためには、シード領域とブランケット領域における減速材対燃料比が極めて重要である。上述した国際出願で望ましいとされている減速材対燃料比は、シード領域では高すぎ、ブランケット領域では低すぎることが研究から分かった。
【0010】
さらに、上述したタイプの炉心は、シード燃料要素中での非拡散性の濃縮ウランの消費の点で特に効率的なものでなかった。そのために、各シード燃料サイクルの終了時に排出される燃料ロッドは、別の炉心で再利用するために再処理しなければならない大量の残留ウランを含むことになる。
【0011】
また、国際公開第WO93/16477号公報に開示されている原子炉には、複雑な原子炉制御システムが必要であるため、従来の原子炉の炉心に再装着するのに適さないものである。同様に、国際公開第WO85/01826号公報に開示されている原子炉は、その設計パラメータが従来の炉心のパラメータに適合しないために、従来の炉心に転用することは容易ではない。
【0012】
最後に、従来の原子炉はトリウムと一緒に非拡散濃縮ウランを燃焼するように設計されているので、大量のプルトニウムを消費するには不適当である。このように、これらのいずれの設計も貯蔵されているプルトニウムの問題を解決するものでない。
【0013】
ロシア連邦特許2176826号によれば、一組のシードブランケットアッセンブリを有する炉心を備えた原子炉であって、そのシードブランケットアッセンブリの各々が、ウラン−235及びウラン−238を含む核分裂可能な物質からなるシード燃料要素を含む中央のシード領域と、シード領域を取り囲む環状ブランケットと、主としてトリウム、容積比10%以下の濃縮ウラン、及びシード領域における減速材を含み、減速材の核燃料に対する容積比が2.5から5.0の範囲にあるブランケット燃料要素と、減速材の核燃料に対する容積比が1.5から2.0の範囲にあるブランケット領域における減速材と、を含むものが知られている。シード燃料要素の各々はウラン・ジルコニウム合金からなり、シード領域はシードブランケットモジュール各々の容積の25〜40%を占める。
【0014】
公知の原子炉は、経済性の観点から最適な運転を行い、「拡散的」ではない。このような原子炉を用いることにより、拡散性のある廃棄物を生成することなく、トリウムとともに大量のプルトニウムを消費することができる。この原子炉は、高レベル放射性廃棄物をほとんど生成しないので、長期にわたって廃棄物を貯蔵する場所を確保する必要がほとんどない。
【0015】
しかしながら、この原子炉で用いられるシードブランケットアッセンブリは、VVER−1000等の既存の軽水炉で用いるには適さないものである。
【0016】
ロシア連邦特許2176826号によれば、上述した原子炉と同様の軽水炉向けの核燃料集合体が知られており、この核燃料集合体は六角形の断面形状を有し、これによりシードブランケットモジュールから既存の軽水炉へ核燃料集合体を装着することを可能にしている。
【0017】
しかしながら、上記ロシア連邦特許は、アッセンブリの断面形状以外には、原子炉の設計を変更せずにVVER−1000等の既存の軽水炉へアッセンブリを装着するための構成について、何ら開示していない。
【0018】
ロシア連邦特許2294570号によれば、スペーサグリッド内の燃料要素束及びガイドチャネル、テール部、及びヘッド部を含む軽水炉用の核燃料集合体が知られている。このスペーサグリッドは、核燃料集合体の長さ方向に沿って配置された部材によって互いに及びテール部に接続されている。ヘッド部は、上部タイプレート及び下部タイプレート、このタイプレート間に配置された被覆部材、及びバネ部材を含む。このヘッド部外殻に接する複数の外部リブは、その突起部及び下部部材に沿うように有孔プレートによって互いに接続される。
【0019】
この公知の核燃料集合体は、ジャケットレス核燃料集合体タイプに分類される。このジャケットレス核燃料集合体タイプの核燃料集合体は、VVER−1000等の加圧水型原子炉(PWR)の炉心を構成し、剛性に優れ、ヘッド部の長さが短縮され、燃料棒束とヘッド部との空間が拡張され、これらと同時に燃料棒の長さを長くすることができるため、運転上の特性を向上させることができる。このタイプの核燃料集合体によって、核燃料集合体への核燃料の搭載量を増加させて分裂深さ(depletion depth)を大きくでき、これによって炉心出力を増加させ、核燃料集合体のライフサイクルを長サイクル化することができる。
【0020】
しかしながら、この集合体のすべての燃料要素は、VVER−1000等の従来の原子炉において利用される核分裂性物質からなるため、原子炉級プルトニウムが大量に生成される。この点が、同タイプの燃料集合体を備える原子炉に特徴的な欠点である。
【0021】
本発明の目的は、トリウム燃料のブランケット領域において出力の相当部分を生成し、拡散性の廃棄物を生成せず、その構造に実質的な変更を加えることなくVVER−1000等の既存の軽水炉に搭載可能な核燃料集合体を提供することである。
【発明の概要】
【0022】
本発明の一実施形態によれば、本発明の目的は、平面視正六角形の形状を有する軽水炉用の核燃料集合体によって実現される。この核燃料集合体は、シードサブアッセンブリと、当該シードアッセンブリを囲むブランケットサブアッセンブリと、ヘッド部と、テール部と、フレーム構造と、を備え、前記シードサブアッセンブリが燃料要素の束を含み、前記燃料要素は、濃縮ウラン又は原子炉級プルトニウムを含むカーネルをそれぞれ有し、前記カーネルは、ジルコニウム合金からなる被覆材によって囲まれるとともに、らせん状のスペーサリブを形成する三葉の断面を有し、前記シードサブアッセンブリの前記下部タイプレート(前記テール部)は、シードサブアッセンブリの燃料要素を保持するサポートグリッドを備え、前記核燃料集合体は、さらに、平面視正六角形の形状を有する前記シードサブアッセンブリの前記テール部へ接続され、燃料棒束の周囲に収納されたチャネルと、燃料要素を収容する前記チャネルの前記上部部材に接続され、前記燃料要素を軸方向へ自由移動可能に収容するガイドグリッドと、ガイドチャネルを形成し、制御部材を収容する中央管と、吸収棒及び制御棒を挿入するためのガイドチャネルを形成し、前記ヘッド部に軸方向に弾性変位可能に収容される前記サポートグリッドへ接続された外管と、を備え、前記ブランケットサブアッセンブリは、スペーサグリッドが取り付けられた6つの縦長のアングル部材を有するとともに、前記シードサブアッセンブリの前記チャネルを収容する開口部を有する中央部にするフレーム構造と、前記フレーム構造内に配置され、濃縮ウラン添加物を有するトリウムを含む燃料要素の束と、を有し、前記軽水炉の前記サポート管に接続可能な前記ブランケットサブアッセンブリの前記テール部には、前記ブランケットサブアッセンブリの燃料要素が取り付けられ、前記ブランケットサブアッセンブリの前記テール部及び前記シードサブアッセンブリの前記テール部が固定機構によって取り付けられて核燃料集合体の前記テール部を形成する。
【0023】
ヘッド部は、前記シードサブアッセンブリの前記チャネルに接する圧力部材を備えてもよい。
【0024】
本発明の他の実施形態においては、平面視正六角形の形状を有する核燃料集合体は、シードサブアッセンブリと、前記シードサブアッセンブリを囲むブランケットサブアッセンブリと、上部タイプレート(前記ヘッド部)と軽水炉の前記サポート管に接続された下部タイプレート(前記テール部)と、フレーム構造と、を有する平面視正六角形の形状を有する軽水炉用の核燃料集合体であって、前記シードサブアッセンブリが燃料要素の束を含み、前記燃料要素は、濃縮ウラン又は原子炉級プルトニウムを含むカーネルをそれぞれ有し、前記カーネルは、ジルコニウム合金からなる被覆材によって囲まれるとともに、らせん状のスペーサリブを形成する三葉の断面を有し、前記シードサブアッセンブリの前記下部タイプレート(前記テール部)は、シードサブアッセンブリの燃料要素を保持するサポートグリッドを備え、前記核燃料集合体は、さらに、平面視正六角形の形状を有する前記シードサブアッセンブリの前記下部タイプレート(前記テール部)へ接続され、燃料棒束の周囲に収納されたチャネルと、燃料要素を収容する前記チャネルの前記上部部材に接続され、前記燃料要素を軸方向へ自由移動可能に収容するガイドグリッドと、ガイドチャネルを形成し、制御部材を収容する中央管と、吸収棒及び制御棒を挿入するためのガイドチャネルを形成し、前記上部タイプレート(前記ヘッド部)に軸方向に弾性変位可能に収容される前記サポートグリッドへ接続された外管と、を備え、前記ブランケットサブアッセンブリは、スペーサグリッドが取り付けられた6つの縦長のアングル部材を有するとともに、前記シードサブアッセンブリの前記チャネルを収容する開口部を有する中央部にするフレーム構造と、前記フレーム構造内に配置されて前記下部タイプレート(前記テール部)に取り付けられた、濃縮ウラン添加物を有するトリウムを含む燃料要素の束と、前記下部タイプレート(前記テール部)に配置された複数のサポート管とを備え、前記上部タイプレート(前記ヘッド部)が前記サポート管の軸方向への弾性変位を可能にするように設けられる。
【0025】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、正三角形の断面形状を有するジルコニウム又はジルコニウム合金からなる減速材が前記カーネルの長軸に沿って配置され、カーネルにおいてより均一な温度分布が促進される。
【0026】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、らせん状のスペーサリブのコイルピッチは、前記燃料要素の長さの5%から20%である。
【0027】
また、本発明の少なくとも1つの実施形態において、前記燃料棒束の少なくとも1つの断面において、任意の互いに近接する2つの燃料要素の前記三葉の断面が当該近接する燃料要素の軸を横切る対称な共通の平面を有するように、前記シードサブアッセンブリの前記燃料要素が前記周辺部に配置される。
【0028】
また、本発明の少なくとも1つの実施形態において、前記カーネルは、好ましくは、ウランの割合が容積比30%以下のウラン・ジルコニウム合金を含み、前記ウランが、ウラン同位体U−235の濃度が20%以下であるように濃縮されており、また、前記カーネルが、原子炉級プルトニウムの割合が容積比30%以下であるプルトニウム・ジルコニウム合金を含む。
【0029】
また、本発明の目的は、一組の核燃料集合体を含む軽水炉である。この核燃料集合体の少なくとも1つは、上述した代替的な構成に従って構成される。原子炉に収納された核燃料集合体の一部又は全部が、上述した代替手段と同じであってもよい
【0030】
本発明の特徴及び効果は、好ましい実施形態の詳細な説明及び添付図面を参照して明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る核燃料集合体を備える原子炉の炉心の断面模式図である。
【0032】
【
図2】本発明の第1実施形態に係る核燃料集合体の側面全体図であり、断面図を含む。
【0033】
【
図3】
図2に示した核燃料集合体のヘッド部の拡大縦断面図である。
【0034】
【
図4】
図2に示した核燃料集合体のテール部の拡大縦断面図である。
【0035】
【0036】
【
図6】
図2に示した核燃料集合体のA−A断面図である。
【0037】
【
図7】本発明の第2実施形態に係る核燃料集合体の側面全体図であり、断面図を含む。
【0038】
【
図8】
図7に示した核燃料集合体のヘッド部の拡大縦断面図である。
【0039】
【
図9】
図7に示した核燃料集合体のテール部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の他の実施形態
図1は、六角形形状を形成するシード領域とブランケット領域とを含む一組の核燃料集合体2を備える炉心1を示す。核燃料集合体自身は、平面視正六角形形状を有する。炉心1は、従来のVVER−1000軽水炉の炉心と同様の幾何学的構成及び寸法を有しており、原子炉に上述の核燃料集合体を装着して163本の核燃料集合体2を有する炉心を形成することができる。炉心1とVVER−1000原子炉の炉心との違いは、以下に詳述される核燃料集合体2の構成及び構造にある。本明細書における炉心1と核燃料集合体2は、従来のVVER−1000軽水炉において使用できるように開発されているが、本発明の範囲から外れることなく、同様の炉心及び核燃料集合を、他の標準に従った原子炉や特別に設計された原子炉において使用できるように製造することも可能である。
【0041】
炉心1は、反射体3に囲まれている。反射体3は、好ましくは、一組の反射体集合体4を含む。反射体集合体4の各々は、好ましくは、水と炉心バスケット又は圧力容器の金属とが混合されたものである。また、扱いの容易な反射体集合体4として、酸化トリウムを主に含むものもある。
【0042】
図2は、核燃料集合体2の第1の代替構成の全体図を示す。核燃料集合体2は、シードサブアッセンブリ5、シードサブアッセンブリ5を囲むブランケットサブアッセンブリ6、ヘッド部7、及び原子炉の図示しないサポート管に接触する支持部9を備えるテール部8を有する。この核燃料集合体は、平面視正六角形の形状を有する。シードサブアッセンブリ5は、例えば108本の多数の燃料棒を有する燃料棒束10を含み、シードサブアッセンブリ5のテール部に取り付けられた支持グリッド11に設置される。六角形断面を有するチャネル12は、シードサブアッセンブリ5のテール部に接続されており、燃料棒束10を含んでいる。燃料要素10を軸方向に自由移動可能に収容するガイドグリッド13は、チャネル12の上部部材に取り付けられる。シード燃料要素の各々は、濃縮ウラン又は原子炉級プルトニウムを含むカーネル14を有する。このカーネルは、ウラン・ジルコニウム合金を主構成要素とし、25容積%以下のウランと濃縮度19.7%のウラン−235とを含む。カーネル14は、ジルコニウム合金の被覆材15に囲まれており、らせん状のスペーサリブ16を形成する三葉の断面(
図5)を有する。正三角形の断面形状を有するジルコニウム又はジルコニウム合金の減速材(displacer)17は、カーネルの長軸に沿って配置される。シード燃料棒10は、ジョイントプレス(金型による押出成型)により単一の部材として製造される。らせん状のスペーサリブ16の軸方向のコイルピッチは、燃料棒断面における対角距離に等しい間隔で配置された近接する燃料棒10の軸の配置の状態に応じて選択され、燃料棒長さの5%から20%である。燃料棒10の鉛直方向配置の安定性は、底部においては支持グリッド11によって、上部においてはガイドグリッド13によって、炉心の高さに関してはチャネル内に自身の高さに対して均一な間隔で配置された不図示のベルトによって、それぞれ与えられる。シード燃料要素10の周方向の配置は、2つの近接する燃料棒の三葉の断面が、燃料棒束の少なくとも1つの断面において2つの近接する燃料要素(
図5)の軸を横切る対称な共通の平面を有するように決められる。
【0043】
また、シードサブアッセンブリは、制御用部材を収容するガイドチャネルを形成する中央管18と、サポートグリッド13に取り付けられた外管19とを備える。サポートグリッド13は、炭化ホウ素(B
4C)及びチタン酸ジスプロシウム(D
y2O
3TiO
2)を基材とする不図示の制御用吸収体と炭化ホウ素及び酸化ガドリニウム(Gd
2O
3)を基材とする不図示の可燃吸収棒を挿入するためのガイドチャネルを形成し、軸方向に弾性変位可能にヘッド部7に配置される。ガイドチャネルを形成する外管19はジルコニウム合金からなる。
【0044】
ヘッド部7(
図3)は、圧縮バネ20、上部プレート21、被覆部22、及び下部プレート23を含むバネ部材を備える。被覆部22は、2つの嵌合部、すなわち、上部プレート21に固定された上部部材24と下部プレート23に固定された下部部材25とからなる。この圧縮バネ20を含むバネ部材は、被覆部22の内部に配置される。外管19は、スリーブ26に嵌め込まれ、(例えば、外管19の外面に設けられた段差によって)このスリーブの下端に力を加えることができる。スリーブ26は、バネ部材20の圧縮バネを支持するフランジを有する。圧縮バネ20の他端は上部プレート21に支持される。外管19の上端は、上部プレート21に形成された開口を自由に通過し、スリーブ26は、下部プレート23に形成された開口を自由に通過する。外管19は、その上端に止め具27を有する。中央管18は、外管19と同様の方法で装着されるが、スリーブが無く下部プレートを自由に通過できる点が異なる。中央管18が貫通するバネ20は、ヘッド部7の下部プレート23に直接支持される。支柱28は、上端に止め具29を有しており、下部プレート23に取り付けられて、プレート21とプレート23との距離を制限する。支柱28は、上部プレート21の開口を自由に通過する。圧力部材30は、シードサブアッセンブリ5のチャネル12と接触しており、下部プレート23に取り付けられる。したがって、上部プレート21へ加えられた荷重は、チャネル12が軸方向の動きに対して固定されているので、外管19のルートと直接チャネル12を経由するルートの両方で支持グリッド11に伝えられる。
【0045】
ヘッド部にはスリーブ26を設けなくともよい。この場合、バネ部材の全ての圧縮バネ20は、下部プレート23に支持され、外管19は、(中央管18と同様に)対応する下部プレート23の開口部を自由に通過する。チャネル12が 動かないように固定されているので、上部プレート21に加えられる全荷重は、チャネル12を介して支持グリッド11に直接伝達される。
【0046】
シードサブアッセンブリ5のテール部は、ケーシングに取り付けられた固定装置31を備える。このケーシングは、開口部33を有する円筒状壁部32、当該開口に配置されたボール34、及び軸方向移動可能な環状スロット36を有する固定部材35を備える。固定装置31は、シードサブアッセンブリ5とブランケットサブアッセンブリのテール部37とを接続する。シードサブアッセンブリ及びブランケットサブアッセンブリのテール部を着脱可能に接続することが重要であり、固定装置31は、他のいかなる形態に形成することも可能である。
【0047】
ブランケットサブアッセンブリ6は、フレーム構造38、当該フレームに配置された燃料棒束39、及びテール部材40を含む。
【0048】
フレーム構造38は、6つの縦長のアングル部材41を有し、このアングル部材41には、スペーサグリッド42が抵抗スポット溶接で溶接されている。各スペーサグリッド42は、リムに取り付けられた一組のセル(例えば、228個のセル)を、外側及び内側の六角形に形成するハニカム形状のグリッドである。このスペーサグリッド42によって、燃料棒39間の必要とされる間隔及び燃料棒39とスペースグリッドセルとの接触部分の必要とされる長さが与えられ、放射能や熱によって燃料棒39が長さ方向に伸張した場合に、当該燃料棒39は、当該スペースグリッドセル内でスライドすることができる。スペーサグリッド42は、また、燃料棒が燃料棒束内の内部応力を減少させるための最低限のすべり力、及び、運転中の摩擦による損耗を避けるのに必要な締まりを与える。スペーサグリッド42は、その中央部に、シードサブアッセンブリのチャネル12を収容する開口部を備える。
【0049】
このアングル部材は、その下部において、ブランケットサブアッセンブリ6のテール部材40に固定されている。テール部材40には、ブランケットサブアッセンブリの支持グリッド43が、燃料棒39を保持するために取り付けられている。ブランケットサブアッセンブリ6の支持グリッド43は、通常運転時、通常運転に違反したとき、及び設計ミスによる事故が起こったときに発生する荷重に対する機械的強度と、計算上必要な水圧耐性とを与える。
【0050】
ブランケットサブアッセンブリの燃料棒束39は、容積比12%のUO
2と容積比88%のThO
2とを含み、濃縮度19.7%のウラン−235を有する組成物からなる一組の燃料要素(例えば、228個の燃料要素)を含む。
【0051】
シードサブアッセンブリ V
seedの全燃料要素の体積とブランケットサブアッセンブリV
blankの全燃料要素の体積との比率は、概ね0.72である。
【0052】
ブランケットサブアッセンブリ6のテール部材40は、支持グリッド43、ケーシング44、及び留め具45によってテール部材40に固定されたリング46を含む。このリングは、固定装置31と接している。ブランケット燃料要素39の端部は、支持グリッド43に取り付けられる。支持グリッド43は、通常運転時、通常運転に違反したとき、及び設計ミスによる事故が起こったときに発生する荷重に対する機械的強度と、冷却液(水)の流れに対する水圧耐性とを与える。ケーシング44は、軽水炉の不図示のサポート管と接続され、シードサブアッセンブリ及びブランケットサブアッセンブリの区域へ冷却液を送り込むガイド装置として働く。
【0053】
図7〜9は、核燃料集合体2の構成の第2の代替手段を示す。この第2の態様の構造は、シードサブアッセンブリ及びブランケットサブアッセンブリが互いに固定されていない点で、
図2〜4に示されたものと異なる。
図9に示されるように、シードサブアッセンブリのテール部は、固定装置31に代えて円筒状の下部タイプレート47を有し、ブランケットサブアッセンブリ6のテール部40のケーシング44には、
図4に示された留め具45及びリング46が備えられていない。ヘッド部7(
図8)の被覆部22は、
図3に示されたものと異なり、一つの部材で構成されている。この被覆部22には、追加のバネ部材48が固定(例えば、溶接)されている。追加のバネ部材48は、周囲に均一に分布し被覆部22に固定された複数の(例えば、6つの)追加上部プレート49と、下部プレート23に固定された追加の下部プレート50と、プレート49、50に取り付けられた被覆材51と、圧縮バネ52と、サポート管53とを主に含む。サポート管53は、その下端で、ブランケットモジュール6の支持グリッド43に取り付けられる。サポート管53の上部部材は、外管19と同様に、追加の上部プレート49及び下部プレート50に配置される。つまり、サポート管53はスリーブ26に嵌め込まれ、スリーブに上方向きの力を作用させることができる。バネ部材48の圧縮バネ52は、その一端をスリーブ26のフランジに支持され、他端を上部プレート21に支持される。サポート管53の上部部材は、上部プレート49の開口部を自由に通過し、スリーブ26は下部プレート50の開口部を自由に通過する。サポート管53は、その上端に止め具54を有する。
【0054】
核燃料集合体が原子炉に設置される前に、シードサブアッセンブリ5及びブランケットサブアッセンブリ6は、個別に組み立てられる。
【0055】
第1の実施形態に係るシードサブアッセンブリの組み立てにおいて、燃料要素10は、チャネル12に取り付けられたガイドグリッド13に接続され、中央管18及び外管19は、ガイドグリッド13へ取り付けられ、さらにヘッド部に接続される。中央管18及び外管19は、圧縮バネ20及び上部プレート21の開口部を介して、下部部材に配置されたスリーブ17を自由に通過する。そして、止め具27は、これらの管の上端に(例えば、ネジ継ぎ手やバイオネット継ぎ手によって)取り付けられる。
【0056】
ブランケットサブアッセンブリの燃料要素39は、スペーサグリッド42を通過させて支持グリッド43に取り付けることにより、フレーム構造9に収納される。
【0057】
そして、組み立てられたシードサブアッセンブリ及びブランケットサブアッセンブリは、シードサブアッセンブリ5のチャネル12をスペーサグリッド42の中央部に設けられた開口部を通過させることによって接続され、単一の核燃料集合体を形成する。スペーサグリッド42の中央部における開口部の構成は、チャネル12の断面形状に一致しており、チャネル12がその開口部を自由に通過することができるようになっている。シードサブアッセンブリのテール部における固定部材35は、円筒状壁部32の開口部33に配置されたボール34が環状溝36において移動することができるように上方にシフトしており、これにより、円筒状壁部32がリング46を通過することができるようになっている。前記シードサブアッセンブリのテール部がリング46の上端面に突き当たった後、ロック部材36が下方にシフトされる。ボール34は、溝36の外へ押し出され、開口部33において外側に壁のすぐ外側までシフトする。これにより、変位したボールとリング46の底端面との相互作用により、シードサブアッセンブリのテール部は、ブランケットサブアッセンブリのテール部よりも上方に移動することができない。このようにして、シードサブアッセンブリ及びブランケットサブアッセンブリは、単一の核燃料集合体2を形成する。
【0058】
核燃料集合体2が原子炉1に収容されたのち、テール部8は、軽水炉の不図示のサポート管内に配置され、核燃料集合体2は、ヘッド部7の上部プレート21の被覆部材表面に支えられることによって、不図示の原子炉の上部プレートによって押し下げられる。そして、この力は、圧縮バネ20によってバネ部材に伝達される。圧縮バネ20は、核燃料集合体2が冷却液の中で底面から浮かび上がらないように決められた量で圧縮される。ヘッド部7の上部プレート21は、バネ部材の圧縮量によって、下部プレート23に対して下方へ移動する。上部プレート21に固定された被覆部22の上部部材24と、下部プレート23に固定された被覆部22の下部部材25とを嵌め合わせることにより、ヘッド部7の上部プレート21が下部プレート23に対して下方へ移動することができるようになる。
【0059】
そして、バネ部材の圧縮バネ20の底部側端部からの力は、外管19にその底部側端部を介して作用し、これにより、スリーブ26を介して外管19及び支持グリッド11へ伝達され、また、シードサブアッセンブリのテール部、固定装置31、リング46、及び留め具45を介して、軽水炉の不図示のサポート管に接触しているブランケットサブアッセンブリ6のテール部44に伝達される。
【0060】
また、原子炉の上部プレートからの圧縮力の一部は、中央管18を囲うとともに当該圧力部材30に固定されている下部プレート23に支持されているバネ20の力が圧力部材30に作用することによって、シードサブアッセンブリのチャネル12に伝達される。ヘッド部7がスリーブ26を有していない場合には、チャネル12によって圧縮力の全体が伝達される。
【0061】
冷却液は、ブランケットサブアッセンブリ6のテール部のケーシング44を通じて核燃料集合体2へ流入する。この冷却液の流れは2つに分岐する。一方の流れはシードサブアッセンブリのケーシング12へ流入してシード燃料要素10を浸す流れであり、他方の流れはケーシング12から流出してブランケットサブアッセンブリの燃料要素39を浸す流れである。
【0062】
不図示の原子炉の上部プレートから作用するヘッド部7の圧縮力は、特定の冷却液の流れで燃料要素が浮くことを防ぐ。
【0063】
アッセンブリの有用性を保ったままで、(例えば核燃料集合体から公称出力を得るために)必要とされるシードサブアッセンブリ及びブランケットサブアッセンブリを通過する冷却液流の流路は、既存のVVER−1000原子炉で用いられる核燃料集合体の高さに対する公称圧力勾配において、以下のものによって提供される。
‐ シードサブアッセンブリ及びブランケットサブアッセンブリの間でのチャネル12の使用;‐ シード燃料要素10の形状(三葉の断面)、当該シード燃料要素10の周方向の相互配置、及び、らせん状のスペーサリブ16のコイルピッチ。これにより、よく発達した熱伝導表面及び強制的な対流による冷却液の混合に基づくシードサブアッセンブリ断面における非常に均一な冷却液温度分布が促進される。
【0064】
核燃料集合体2の完全な水力特性は、実用上、標準的な核燃料集合体の特性と一致しており、これによって、本発明に係る核燃料集合体を備えたVVER−1000原子炉の炉心の公称レベルにおける耐久度を維持することができる。したがって、本発明に係る核燃料集合体をVVER−1000に設置しても、原子炉の主ループにおける冷却液の流速に変化を生じさせることはない。
【0065】
シードサブアッセンブリの燃料要素10は、運転中に加熱するにつれて、熱膨張及び放射線膨張によって上方に長くなる。外管19は確保された間隔を維持してガイドグリッド13のセルを通過するので、燃料要素束は、外管19とは独立に膨張する。したがって、燃料要素10の束は、耐力外管19に影響を及ぼさず、外管19に変形を生じさせない。したがって、運転中、核燃料集合体2の形状の幾何学的安定性が保たれる。
【0066】
ブランケットサブアッセンブリの燃料要素39は、運転中に長さ方向に膨張し、放射線膨張によって両端とヘッド部7との間に自由空間が生じ始める。
【0067】
本発明の第2の実施形態に係る核燃料集合体2の運転も同様に行われるが、ブランケットサブアッセンブリのケーシング44が原子炉の上部プレートからサポート管53を介して伝達される圧縮力によって原子炉のサポート管に押し付けられる点で異なっている。また、サブアッセンブリの支持グリッド11の力を伝達する圧縮バネ20がスリーブ26のフランジに作用することによって、ブランケットサブアッセンブリに取り付けられるシードサブアッセンブリの浮上が防止される。
【0068】
本発明を利用することにより、核燃料集合体の構造中にトリウムの部材(ブランケットサブアッセンブリ)が存在するので、天然ウランを節約することができる。トリウムは、分裂の過程でウラン−233の形で2次的な核燃料を蓄積し、このような燃料を燃焼させることにより当該核燃料集合体を有する原子炉炉心の出力に大きく貢献する。これによって、VVER−1000原子炉用の従来の2次的核燃料(核兵器製造にも用いることができる原子炉級プルトニウム)の蓄積が大きく減少(80%減少)し、新たな2次的核燃料であるウラン−233(より正確には、トリウムブランケットモジュール内に「適切に配置」されて燃焼した後に生じるもの)は、ウラン−232同位体及びプルトニウム同位体が混入していて核兵器製造に用いることができないため、非拡散特性を向上させることができ、使用済核燃料集合体の取り扱いの問題を簡素化することができる。使用済核燃料集合体の取り扱いに関する問題は、廃棄物の量を減らし、核燃料の特定のライフサイクルを増加させ、排出された核燃料に含まれる長寿命の放射性毒物を有する同位体の含有量を減少させることで、簡素化することができる。
【0069】
本発明に係る核燃料集合体の構造は、機械的、水力学的、及び中性子の側面から見て、標準的な核燃料集合体の構造と互換性があるため、VVER−1000原子炉において本発明に係る核燃料集合体を使用することが可能となる。
【0070】
VVER−1000原子炉用の標準的な核燃料集合体との機械的互換性は以下に掲げるものにより確保される。− 長期運転中の耐変形性及び核燃料の高分裂レベルを可能にするフレーム構造の存在;− 同一の接続寸法;− テール部、ヘッド部、及びフレーム構造について標準的な核燃料集合体の対応する部分と互換性のある設計をすること;− シードサブアッセンブリ設計が標準的な制御機構及び荷重処理装置と互換性があること。
【0071】
シードサブアッセンブリ及びブランケットサブアッセンブリによって形成され、共通の供給(輸送)・回収ヘッダによって連結される2つの平行なチャネルのシステムが存在するため、本発明に係る核燃料集合体の水力特性は、標準的な核燃料集合体の特性と全般的に一致する。シードサブアッセンブリ及びブランケットサブアッセンブリは、吸入部及び排出部において水力学的に接続される。この核燃料集合体の構造によって、本発明に係る核燃料集合体を備えたVVER−1000原子炉の炉心の公称レベルにおける耐久性を維持することができる。したがって、本発明に係る核燃料集合体をVVER−1000原子炉に搭載しても、原子炉の主ループにおける冷却液流速に変化は生じない。ブランケットサブアッセンブリの活動部分であるアッセンブリの吸入部とアッセンブリからの排出部との間の水力学的耐久度の比率は、本発明に係る核燃料集合体と標準的な核燃料集合体とで同程度であり、これによって、本発明に係る核燃料集合体と標準的な核燃料集合体との水力学的互換性が確保され、流入部と排出部との間で冷却液のオーバーフローも起こらない。これにより、原子炉用の標準的な核燃料集合体と同時に、本発明に係る核燃料集合体を何本か原子炉において使用することができる。
【0072】
標準的な核燃料集合体との中性子的な互換性は、以下のものによって提供される。− 特定の核燃料組成及び可燃吸収剤を有する組成を用いることにより、特定の燃焼レベルが実現される;− シードに装荷される核燃料の特定の部分及びブランケット燃料組成を用いることにより、核燃料集合体の標準的な出力が実現される;− シード棒の様々な列に装荷される核燃料の特定の部分及びブランケットに装荷される核燃料の組成によって、出力の不均一さに関する要件が満たされる;− 標準的な核燃料集合体の一般的な範囲内での反応度効果は、核燃料組成の特定の特性を用いることによって維持される;− 出力レベルの規制及び標準的な制御システムを用いて出力を減少させることは、集合体と互換性のあるシードサブアッセンブリの外管に制御棒を導入する標準的なチャネルを用いることによって実現される。
【0073】
本発明の他の効果は、本発明に係るシードブランケット核燃料集合体が組み立て式であることであり、これにより、シードサブアッセンブリを独立に交換することができる。シードサブアッセンブリを頻繁に交換することによって、核燃料集合体のブランケットサブアッセンブリに収納されたトリウムにとってより好ましい条件(中性子バランスと照射時間)を作り出すことができる。