【実施例】
【0012】
以下本発明の一実施例によるポンプ装置を搭載した作業車について説明する。
図1は本実施例によるポンプ装置を搭載した消防車の側面図、
図2は同消防車の使用状態を示す概念図である。
本実施例による消防車は、車両フレーム10上に、乗車キャビン11とポンプ装置20とを搭載している。
ポンプ装置20は、車両両側面にそれぞれ吸口21、放口22、中継口23を備えている。吸口21には、吸水ホース24が接続されており、この吸水ホース24を用いて池やプールなどの貯水源25から吸水を行う。
吸口21とポンプ26とは配管27で接続され、ポンプ26と放口22とは配管28で接続され、吸口21で吸い込まれた水(流体)は、タンクに蓄水されることなくポンプ26に導かれ、ポンプ26から吐出される水(流体)も、タンクに蓄水されることなく、放口22に導かれる。放口22には、
図2に示すように、放水ホース29が接続される。
ポンプ装置20には、ポンプ26を回転する駆動源30と、駆動源30の駆動力を変更する操作手段31が設けられている。ここで、駆動源30には、車両に搭載しているエンジンが用いられる他、電動モータを用いてもよい。操作手段31は、例えばエンジンへの燃料供給量を変更するスロットルである。
また、ポンプ装置20内の配管には、複数のドレン32が設けられ、ポンプ装置20の使用後には、これらのドレン32からポンプ装置20内に残留する水を排出する。また、吸口21には、放水を停止することなく複数の吸口を使用するために、エジェクタ33が設けられている。なお、中継口23は、消火栓に接続するもので、消火栓では圧力流体が供給される。
【0013】
図3は同消防車に搭載するポンプ装置のブロック図である。
ポンプ装置20には、ポンプ26又は駆動源30の回転数を検出する回転センサ34と、ポンプ26の吐出圧力を検出する圧力センサ35と、制御手段40とを有する。
ドレン32は、図示のように、ポンプ26、配管27、及び配管28に設けている。
制御手段40は、圧力センサ35の検出値を記憶する圧力記憶手段41と、圧力記憶手段41に記憶した検出値から所定時間における圧力変動を演算する圧力変動演算手段42と、圧力変動演算手段42で演算した圧力変動の値と、あらかじめ設定した設定値とを比較する比較手段43と、操作手段31による駆動源30の駆動力の変更が行われていない場合に、比較手段43によって圧力変動の値が設定値を越えたときにポンプ内異常を判断する異常判断手段44とを備えている。
なお、異常判断手段44は、駆動源30の駆動力の変更が行われていないことを回転センサ34で行うものであってもよい。
また、制御手段40は、回転センサ34の検出値を記憶する回転数記憶手段45と、回転数記憶手段45に記憶した検出値から回転数上昇を判断する回転数判断手段46と、圧力センサ35の検出値から圧力低下を判断する圧力判断手段47とを備えている。異常判断手段44では、回転数判断手段46によって回転数上昇が判断され、圧力判断手段47によって圧力低下が判断されたときにポンプ内異常を判断する。
警報手段50は、異常判断手段44でポンプ内異常を判断した場合に警報を発する。警報手段50による警報は、キャビテーションや気密漏れによる吐出圧力低下だけでなく、ドレン32やエジェクタ33の閉め忘れによる吐出圧力低下を促すものであってもよい。
【0014】
図4及び
図5は同消防車に搭載するポンプ装置のフロー図である。
図4では、第1の異常判断を行う処理流れを示している。
ステップ1では、操作手段31によって駆動源30の操作が行われているか否かを判断する。ステップ1において、操作手段31での操作が行われていないと判断した場合には、回転センサ34からの検出値に基づいて回転数判断手段46において回転数が降下していないかが判断される(ステップ2)。
ステップ2において、回転数が低下していないと判断された場合には、圧力センサ35の検出値に基づいて圧力変動演算手段42によって圧力変動が演算される(ステップ3)。
ステップ3において演算された圧力変動の値と、あらかじめ設定した設定値ΔP1とを比較手段43で比較する(ステップ4)。
ステップ4において、演算された圧力変動の値が設定値ΔP1を越える場合には異常判断手段44においてキャビテーションであると判断され、警報手段50により警報が発せられる(ステップ5)。
なお、ステップ1において操作手段31での操作が行われていると判断された場合、ステップ2において回転数が低下していると判断された場合、ステップ4において演算された圧力変動の値が設定値ΔP1以下の場合には、いずれも異常判断手段44では、キャビテーションでないと判断する(ステップ6)。
【0015】
図5では、第2の異常判断を行う処理流れを示している。
ステップ11では、操作手段31によって駆動源30の操作が行われてスロットルダウン(回転数低下)指示が行われているか否かを判断する。ステップ11において、操作手段31での操作でスロットルダウン指示が行われていないと判断した場合には、操作手段31によって駆動源30の操作が行われてスロットルアップ(回転数上昇)指示が行われているか否かを判断する(ステップ12)。ステップ12において、操作手段31での操作でスロットルアップ指示が行われていると判断した場合には、回転数判断手段46によって回転数が回転数上限を越えているか否かが判断される(ステップ13)。ここで回転数上限は現在の回転数+ΔR2であり、回転数がΔR2を越えた上昇にあるか否かが判断される。
ステップ13において、回転数がΔR2を越えた上昇にあると判断された場合には、圧力センサ35の検出値に基づいて圧力判断手段47によって圧力が圧力上限を下回っているか否かが判断される(ステップ14)。ここで圧力上限は現在の圧力+ΔP2であり、圧力がΔP2を下回った上昇に過ぎないか否かが判断される。
ステップ14において、圧力が圧力上限を下回っている場合には異常判断手段44においてキャビテーションであると判断され、警報手段50により警報が発せられる(ステップ15)。
なお、ステップ11において操作手段31での操作でスロットルダウン指示が行われていると判断された場合、ステップ12において操作手段31での操作でスロットルアップ指示が行われていないと判断された場合、ステップ13において回転数がΔR2を越えた上昇にないと判断された場合、ステップ14において圧力がΔP2を下回った上昇でない
場合には、いずれも異常判断手段44では、キャビテーションでないと判断する(ステップ16)。
【0016】
図6は、
図4で示した第1の異常判断を行う処理流れを行う場合の圧力変動の値の変化を示す図である。
図6では、時間T1まで、操作手段31によって駆動源30の操作が行われてスロットルアップ(回転数上昇)指示が行われていることを示している。
図4におけるステップ1では、この状態においては、圧力センサ35の検出値に基づいた圧力変動演算手段42による圧力変動の演算は行われない。
スロットルアップ(回転数上昇)指示が無くなった時間T1の後、時間T2までは、圧力センサ35の検出値は低下し、回転数も低下するが、この時間T1から時間T2の間は、圧力センサ35の検出値に基づいた圧力変動演算手段42による圧力変動の演算は行われない(ステップ2)。
時間T2から時間T3の間は、操作手段31によって駆動源30の操作が行われておらず、回転数が一定の状態を示している。ステップ3による演算とステップ4における比較は、この時間T2から時間T3の間で行われる。
ここで、設定値ΔP1を−4とすると、
図6では時間T2から時間T3の間では異常検出は行われていない。
図6に示す時間T2から時間T3の間で、演算された圧力変動の値が設定値ΔP1が−4を越える(下回る)場合には異常判断手段44においてキャビテーションであると判断される。
なお、
図6では、時間T3以降は、操作手段31によって駆動源30の操作が行われてスロットルダウン(回転数低下)指示が行われていることを示している。
【0017】
図7は、モータの回転数と圧力との変化によるキャビテーション発生を示す実験結果の図である。
図7では、操作手段31によって駆動源30の操作を行い、スロットルアップ(回転数上昇)指示とスロットルダウン(回転数低下)指示によって変動する回転数と圧力を示している。
時間T4、T5、T6は、いずれも、スロットルアップ指示を与えた場合に、圧力が圧力上限を下回っている場合である。
時間T7は、操作手段31による駆動源30の操作指示が行われていない期間に、演算された圧力変動の値が設定値ΔP1を越える場合である。
【0018】
本実施例によるポンプ装置によれば、圧力センサ35の検出値を記憶して、所定時間における圧力変動を演算する圧力変動演算手段42と、圧力変動演算手段42で演算した圧力変動の値と、あらかじめ設定した設定値とを比較する比較手段43と、操作手段31による駆動源30の駆動力の変更が行われていない場合に、比較手段43によって圧力変動の値が設定値を越えたときにポンプ内異常を判断する異常判断手段44と、異常判断手段44でポンプ内異常を判断した場合に警報を発する警報手段50とを備えたことで、キャビテーションや気密漏れなどによるポンプ内異常を早期に知ることができ、流体の放出を正常な状態に戻すことができる。
また、本実施例によるポンプ装置によれば、吸口21から放口22までの間にドレン32を有し、警報手段50による警報をドレン32の開放とすることで、ドレン32の閉鎖忘れを知ることができる。
また、本実施例によるポンプ装置によれば、異常判断手段44において、駆動源30の駆動力の変更が行われていないことを回転センサ34で行うことで、操作手段31による駆動源30の駆動力の変更を検出するために別途の検出器を設けることがなく、コスト面で優れている。
また、本実施例によるポンプ装置によれば、回転センサ34の検出値から回転数上昇を判断する回転数判断手段46と、圧力センサ35の検出値から圧力低下を判断する圧力判断手段47とを有し、異常判断手段44では、回転数判断手段46によって回転数上昇が判断され、圧力判断手段47によって圧力低下が判断されたときにポンプ内異常を判断するものであり、キャビテーションや気密漏れなどによるポンプ内異常を早期に知ることができる。