(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921148
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】流体継手
(51)【国際特許分類】
F16L 23/036 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
F16L23/036
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-239927(P2011-239927)
(22)【出願日】2011年11月1日
(65)【公開番号】特開2013-96507(P2013-96507A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100083149
【弁理士】
【氏名又は名称】日比 紀彦
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】野々宮 啓介
(72)【発明者】
【氏名】稲田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】浅野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小艾 睦典
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
実開平3−78189(JP,U)
【文献】
実開昭60−118088(JP,U)
【文献】
特開2009−162252(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3032378(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/02 − 23/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する流体通路を有している第1および第2継手部材と、継手部材同士を結合する結合手段とを備えている流体継手において、
各継手部材の突き合わせ端部にフランジが形成されており、結合手段は、上壁および1対の側壁からなり、1対の側壁によって両フランジを軸方向の両側から挟持するクリップを有し、
結合手段は、第2継手部材の外周面に当接させられて弾性力によって軸方向に直交する方向から第1継手部材を押さえることなく第2継手部材を押さえる抜け止めばねをさらに有し、
第2継手部材のフランジに、第1継手部材のフランジ外周面を囲む大径部が設けられて、第1継手部材のフランジ外周面と大径部内周面との間に、シール部材が介在されており、
第1継手部材の突き合わせ端面に、環状凸部が形成されており、第2継手部材の突き合わせ端面には、環状凸部の外径よりも大きい径を有し、環状凸部に接触しない環状凹所が形成されていることを特徴とする流体継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体継手に関し、特に、着脱が繰り返される用途に好適な流体継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに連通する流体通路を有している第1および第2継手部材と、両継手部材の突合わせ端面の間に介在させられるシール手段と、継手部材同士を結合する結合手段とを備えている流体継手は、よく知られており、流体継手の結合手段としては、いずれか一方の継手部材に設けられたおねじ部材と他方の継手部材に設けられためねじ部材とによって継手部材同士が結合されるものが一般的である。
【0003】
これに対し、特許文献1には、ばねクリップを使用することで、ねじによる締結を無くすことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−266742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の流体継手によると、ねじによる締結を無くすことで、結合作業を簡素化することができるが、継手部材の外周面に傷が付く可能性があり、特に着脱を繰り返す場合には、この傷が問題になる可能性がある。
【0006】
この発明の目的は、ねじによる締結を無くすとともに、継手部材の外周面に傷が付くことを防止した流体継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による流体継手は、互いに連通する流体通路を有している第1および第2継手部材と、継手部材同士を結合する結合手段とを備えている流体継手において、各継手部材の突き合わせ端部にフランジが形成されており、結合手段は、上壁および1対の側壁からなり、1対の側壁によって両フランジを軸方向の両側から挟持するクリップを有
し、結合手段は、第2継手部材の外周面に当接させられて弾性力によって軸方向に直交する方向から第1継手部材を押さえることなく第2継手部材を押さえる抜け止めばねをさらに有し、第2継手部材のフランジに、第1継手部材のフランジ外周面を囲む大径部が設けられて、第1継手部材のフランジ外周面と大径部内周面との間に、シール部材が介在されており、第1継手部材の突き合わせ端面に、環状凸部が形成されており、第2継手部材の突き合わせ端面には、環状凸部の外径よりも大きい径を有し、環状凸部に接触しない環状凹所が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
この流体継手によると、クリップの1対の側壁によって両フランジを軸方向の両側から挟持するので、ねじによる締結を無くすことができる。また、両フランジを軸方向の両側から挟持することで、継手部材の外周面に傷が付くことを防止することができる。また、摩耗や焼付きなどが起こらないため、ねじによる締結に比べて、長期間使用することができる。
【0009】
結合手段は、第2継手部材の外周面に当接させられて弾性力によって軸方向に直交する方向から第2継手部材を押さえる抜け止めばねをさらに有していることが好ましい。
【0010】
両フランジを軸方向の両側から挟持するのに加えて、弾性力によって軸方向に直交する方向からも押さえることによって、継手部材同士が分離することをより確実に防止することができる。抜け止めばねは、継手部材を挟持するのではなく、軸方向に直交する方向から当接させられるものとされ、これにより、継手部材の外周面に傷が付きにくいものとできる。
【0011】
第2継手部材のフランジに、第1継手部材のフランジ外周面を囲む大径部が設けられて、第1継手部材のフランジ外周面と大径部内周面との間に、シール部材が介在されていることが好ましい。
【0012】
シール部材は、通常、Oリングとされる。第1継手部材のフランジ外周面と大径部内周面との間にシール部材が設けられていることで、クリップによる結合作業のじゃまになることなく、シール性が確保される。
【0013】
第1継手部材の突き合わせ端面に、環状凸部が形成されており、第2継手部材の突き合わせ端面には、環状凸部の外径よりも大きい径を有する環状凹所が形成されていることが好ましい。
【0014】
第1継手部材は、第2継手部材と分離された後に、別の継手部材と結合されて配管を構成するものとされることがある。第1継手部材の環状凸部は、その際、ガスケットの端面に当接してシールを形成するためのものであり、第2継手部材の突き合わせ端面に環状凸部の外径よりも大きい径を有する環状凹所が設けられることで、シールを形成するための環状凸部が保護される。
【発明の効果】
【0015】
この発明の流体継手によると、クリップの1対の側壁によって両フランジを軸方向の両側から挟持するので、ねじによる締結を無くすことができる。また、両フランジを軸方向の両側から挟持することで、継手部材の外周面に傷が付くことを防止することができる。また、摩耗や焼付きなどが起こらないため、ねじによる締結に比べて、長期間使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、この発明による流体継手の1実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、
図1の上下・左右を上下・左右とする。
【0018】
図1は、この発明による流体継手の1実施形態を示しており、流体継手(1)は、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の管状継手部材(2)(3)と、両継手部材(2)(3)同士を結合する結合手段(4)とを備えている。
【0019】
第1継手部材(2)は、段付き状の円筒状本体(11)と、本体(11)の突き合わせ端部に設けられたフランジ(12)とを有している。第2継手部材(3)は、段付き状の円筒状本体(16)と、本体(16)の突き合わせ端部に設けられたフランジ(17)とを有している。
【0020】
第1継手部材(2)の本体(11)の突き合わせ端面には、フランジ(12)端面の内径縁部に若干掛かるように環状凸部(13)が設けられている。第2継手部材(3)の本体(16)の突き合わせ端面には、環状凸部(13)の外径よりも大きい径を有する環状凹所(18)が形成されている。
【0021】
第1継手部材(2)のフランジ(12)は、突き合わせ端面側の小径部(12a)とこれの左方(軸方向内方)に連なる大径部(12b)とからなる。第2継手部材(3)のフランジ(17)は、第1継手部材(2)のフランジ(12)の小径部(12a)の外径よりも内径が小さくかつその小径部(12a)に突き合わされている小径部(17a)と、小径部(17a)と外径が同じで内径が第1継手部材(2)のフランジ(12)の大径部(12b)より大きくなされて第1継手部材(2)のフランジ(12)の外周面を囲むように突出させられている大径部(17b)とからなる。大径部(17b)の内周面には、環状の凹所(17c)が形成されている。
【0022】
第1継手部材(2)のフランジ(12)の小径部(12a)外周面と第2継手部材(3)のフランジ(17)の環状の凹所(17c)との間に、Oリング(シール部材)(5)が介在されている。
【0023】
結合手段(4)は、U字状のクリップ(6)とこれに取り付けられた抜け止めばね(7)とからなる。
【0024】
クリップ(6)は、上壁(21)と左右の側壁(22)(23)とを有し、左右の側壁(22)(23)によって両フランジ(12)(17)を左右(軸方向の)両側から挟持している。左右の側壁(22)(23)には、継手部材(2)(3)との干渉を避ける切欠き(24)が設けられている。各切欠き(24)は、
図3に示すように、継手部材(2)(3)の本体(11)(16)の外径にほぼ等しい直径の半円部(24a)と、半円部(24a)の下方に連なり側壁(22)(23)下端まで延びる方形部(24b)とからなる形状とされている。
【0025】
抜け止めばね(7)は、クリップ(6)の右側壁(23)上部に固定されている基部(7a)と、基部(7a)に一体に設けられて第2継手部材(3)を押さえる屈曲部(7b)とからなる。屈曲部(7b)は、基部(7a)に対して変形可能とされており、フリーの状態では、
図3に示す第2継手部材(3)と干渉するようになっている。そして、このフリー状態から
図3に示す位置に変形させられることで、第2継手部材(3)の外周面に当接させられ、第2継手部材(3)を弾性力によって軸方向と直交する方向に押圧する。これにより、第2継手部材(3)は、クリップ(6)の切欠き(24)の周縁部と抜け止めばね(7)の屈曲部(7b)とによって挟持される。
【0026】
クリップ(6)の左右の側壁(22)(23)によって両フランジ(12)(17)を挟持するための弾性力は必要ないが、ある程度の弾性力があってもよい。弾性力を有する構成の場合、左右の側壁(22)(23)や半円部(24a)および方形部(24b)の角部、面と面とのつなぎ部などに、面取りまたはR加工が施されていることがより好ましい。
【0027】
この流体継手(1)によると、クリップ(6)の1対の側壁(22)(23)によって第1継手部材(2)および第2継手部材(3)の両フランジ(12)(17)を軸方向の両側から挟持するので、ねじによる締結を無くすことができる。また、両フランジ(12)(17)を軸方向の両側から挟持することで、第1および第2継手部材(2)(3)の外周面に傷が付くことが防止されている。しかも、摩耗や焼付きなどが起こらないため、ねじによる締結に比べて、長期間使用することができる。そして、両フランジ(12)(17)を軸方向の両側から挟持するのに加えて、抜け止めばね(7)によって軸方向に直交する方向からも押さえることによって、継手部材(2)(3)同士が分離することがより確実に防止されている。
【0028】
この流体継手(1)は、着脱を繰り返す際により有用なものであり、例えば、第2継手部材(3)が検査用継手側のスリーブとされて、検査対象の装置に取り付けられている第1継手部材(2)に着脱可能に取り付ける用途に適している。抜け止めばね(7)は、第2継手部材(3)に当接するものとされ、第1継手部材(2)の外周面に傷が付きにくいものとされる。また、第1継手部材(2)は、第2継手部材(3)と分離された後に、別の継手部材と結合されて配管を構成するものとされ、第1継手部材(2)の環状凸部(13)は、その際、ガスケットの端面に当接してシールを形成するためのものとなっており、第2継手部材(3)の環状凹所(18)によってこの環状凸部(13)が保護される。これにより、第1継手部材(2)としては、従来の継手の構成部品をそのまま使用することができ、第2継手部材(3)および結合手段(4)がワンタッチ継手として機能することで、第1継手部材(2)側の装置と第2継手部材(3)側の装置との接続時間を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0029】
(1):流体継手、(2):第1継手部材、(3):第2継手部材、(4):結合手段、(5):Oリング(シール部材)、(6):クリップ、(7):抜け止めばね、(12):フランジ、(13):環状凸部、(17):フランジ、(17b):大径部、(18):環状凹所、(21):上壁、(22)(23):側壁