(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921172
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】横型乾式粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 17/16 20060101AFI20160510BHJP
B02C 17/18 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
B02C17/16 Z
B02C17/18 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-269632(P2011-269632)
(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公開番号】特開2013-119085(P2013-119085A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】504124783
【氏名又は名称】アシザワ・ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】石川 剛
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏宏
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭51−008670(JP,A)
【文献】
実開平04−014139(JP,U)
【文献】
特開2007−319726(JP,A)
【文献】
特開平05−253509(JP,A)
【文献】
特開平04−193360(JP,A)
【文献】
特開2000−126635(JP,A)
【文献】
実開平04−005237(JP,U)
【文献】
米国特許第04844355(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 17/16
B02C 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の粉砕室およびこの粉砕室に同心状で連続し、該粉砕室に原料を供給するための円筒状の原料供給部を有する粉砕タンクと、この粉砕タンクの一端に設けられた原料投入部と、前記粉砕タンクの他端に設けられたメディア分離部材を介した原料排出部と、前記粉砕室内に入れられた粉砕メディアと、前記粉砕タンクの原料供給部および前記粉砕室内に延びる水平回転駆動軸と、前記原料供給部内に配置され、前記水平回転駆動軸に取り付けられ、該水平回転駆動軸により回転駆動されて、前記原料投入部から前記原料供給部に投入された原料を前記粉砕室に供給する原料供給部材と、前記粉砕室内に配置され、前記水平回転駆動軸に取り付けられ、該水平回転駆動軸により回転駆動されて、前記原料供給部からの供給された原料を攪拌する攪拌部材とを備える横型乾式粉砕機において、
前記原料供給部材が、回転することによって、前記原料投入部から投入された原料に前記粉砕室に向かっての推力を与えるスクリューである機械式推力発生手段であり、
前記原料供給部の直径を前記粉砕室の直径より小さくするとともに、前記スクリューの直径もこれに応じた小さな直径とし、
前記スクリューの外径と前記原料供給部における粉砕タンクの内径との間の隙間が0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間である
ことを特徴とする横型乾式粉砕機。
【請求項2】
前記スクリューの外径先端形状を、その輸送面の反対側に逃がしのための鋭角の傾斜面を設け、鋭利形状として異物や粉砕メディアをかみこまないようにした請求項1に記載の横型乾式粉砕機。
【請求項3】
前記攪拌部材が、前記水平回転駆動軸に沿って延びるとともに、該水平回転駆動軸から半径方向に延びる複数の矩形の板状体を備え、この板状体には複数の開口を有し、前記板状体の半径方向外側辺と前記粉砕室における粉砕タンクの内径との間の隙間および前記板状体の前記メディア分離部材に隣接する端辺と前記メディア分離部材との間の隙間がともに0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間である請求項1または2に記載の横型乾式粉砕機。
【請求項4】
前記攪拌部材が、前記水平回転駆動軸に沿って延びるとともに、該水平回転駆動軸から半径方向に延びる複数の板状体を備え、この板状体には水平回転駆動軸から半径方向外方に所定長さ延びる矩形開口を有してコの字状とされており、前記板状体の半径方向外側辺と前記粉砕室における粉砕タンクの内径との間の隙間および前記板状体の前記メディア分離部材に隣接する端辺と前記メディア分離部材との間の隙間がともに0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間である請求項1または2に記載の横型乾式粉砕機。
【請求項5】
前記板状体の半径方向外端部の形状を、その回転方向下流側に、逃がしのための鋭角の傾斜面を設け、鋭利形状として異物やメディアをかみこまないようにした請求項3または4に記載の横型乾式粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型乾式粉砕機に関する。本発明の横型乾式粉砕機は、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、誘電材、磁性材、酸化鉄、シリカ、電池材、カーボン、酸化マグネシューム、炭酸カルシューム、セラミックス一般、無機物、その他の乾式粉砕物等の原料を微細粒子に粉砕するための使用に特に適しているが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
従来の横型乾式粉砕機としては、実公平7−8034号に記載されたものが知られている。この公報に記載された横型乾式粉砕機は、一端に原料投入ノズルを有し、他端に粉砕された原料の排出部を有し、上記排出部の近傍にセパレーターがそれぞれ配置された円筒状の粉砕室と、この粉砕室の上記一端側に配置された推力発生部材であるスクリューと、上記粉砕室内に回転自在に設けられ、攪拌要素として回転軸の周りに植設された複数のアームを有する攪拌部材と、粉砕室内に充填されている粉砕メディアとを備えている。このような横型乾式粉砕機においては、原料投入ノズルから粉砕室内に投入された原料は、上記スクリューにより排出部に向けて推力が与えられ、上記粉砕メディアとともに攪拌され、相互摩擦、せん断等により粉砕され、この後、セパレーターにより粉砕メディアと分離され、排出部から排出される。
【0003】
しかしながら、このような横型乾式粉砕機においては、攪拌要素が単なるアームであるため、原料が流動性の良いものである場合には、原料が粉砕室の上部を充填することなく粉砕室を通過し、セパレーターまで到達してしまうため、粉砕室の容積を十分に活かすことができず、粉砕室内での原料の滞留時間が短くなり、粉砕室内に充填されている粉砕メディアを有効に利用することができなくなり、粉砕効率が著しく低下してしまう。
【0004】
そこで、本願出願人は、先に特開2007−319726で、原料の粉砕室内での滞留時間が長く、かつ粉砕メディアの粉砕能力を十分に引き出し、効率よく原料の粉砕ができる横型乾式粉砕機を提供した。
【0005】
この特開2007−319726で提案された横型乾式粉砕機は、粉砕室を有する筒状の粉砕タンク、この粉砕タンクの一端に設けられた原料投入部、前記粉砕タンクの他端に設けられたメディア分離部、前記粉砕室内に入れられた粉砕メディア、および前記粉砕室の一端と他端の間に設けられ、水平回転軸の周りに回転自在に配置された攪拌部材を備える横型乾式粉砕機において、前記攪拌部材が、前記粉砕タンクの一端側に向かって徐々に小さくなるテーパー面と垂直面を有する複数の円錐台状のディスクと複数のピンを交互に備えており、前記ディスクには、ディスクの厚さ方向に斜めに延びる連通孔が形成されており、この連通孔は、前記垂直面の比較的内周側に第1開口を有し、前記テーパー面に前記第1開口より外周側に配置された第2開口を有していることを特徴とするものである。
【0006】
この特開2007−319726で提案された横型乾式粉砕機においては、上記したように、攪拌部材の攪拌要素の一部として、円錐台形の複数のディスク用い、このディスクに、ディスクの厚さ方向に斜めに延びる連通孔を形成し、この連通孔を、前記垂直面の比較的内周側に第1開口を有し、前記テーパー面に前記第1開口より外周側に配置された第2開口を有するよう構成したので、ディスクの下流側の原料と粉砕メディアの一部が上記連通孔を通ってディスクの上流側に還流する。この還流により、粉砕室内部での砕料の滞留時間が長くなり、十分な粉砕が行われる。また、特にこの還流により、粉砕メディアに大きな運動エネルギーが与えられ、粉砕メディア間の接触確率を増大させて、粉砕能力を大きくすることもできる。これらにより、本横型乾式粉砕機においては、砕料の微粉砕が可能となった。
【0007】
ところで、上記したような構造の横型乾式粉砕機においては、粉砕室への原料の供給は、粉砕すべき原料を定量フィーダーで切り出し、粉砕室に直接自然落下で投入することにより行われていた。横型乾式粉砕機では、数100μmの原料を1パスで数μmに粉砕することができるが、粒子は、10μm以下になると急激に凝集が強くなり、再凝集する。このため凝集防止のため粉砕助剤を添加し対応しているが、撹拌部材の回転で生じる遠心力でメディアと粉砕粒子が原料投入部に押し上げられ、凝集力を増した粒子が付着堆積して閉塞してしまい運転不能となる傾向がある。
また、比重の小さい原料は、遠心力で吹き上げられ粉砕室への投入ができないなどの欠点があった。
【0008】
このような欠点は、特開2007−319726で提案された横型乾式粉砕機では、原料を撹拌部材が存在する粉砕室に直接投入するのではなく、撹拌部材の一端側に所定の長さを有する原料供給部を設け、ここに原料を投入し、投入された原料をスクリュー等により粉砕室に供給するようにしたことによってある程度改善された。
【0009】
しかしながら、この原料供給部においても、スクリュー等を使用するため、その回転による遠心力で原料等の吹き上げが生じ、原料投入部に付着するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平7−8034号公報
【0011】
【特許文献2】特開2007−319726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、原料等の原料投入部への吹き上げ、付着を防止することのできる横型乾式粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、下記(1)〜(
5)の構成の本発明の横型乾式粉砕機により達成される。
(1)
円筒状の粉砕室およびこの粉砕室に同心状で連続し、該粉砕室に原料を供給するための円筒状の原料供給部を有する粉砕タンクと、この粉砕タンクの一端に設けられた原料投入部と、前記粉砕タンクの他端に設けられたメディア分離部材を介した原料排出部と、前記粉砕室内に入れられた粉砕メディアと、前記粉砕タンクの原料供給部および前記粉砕室内に延びる水平回転駆動軸と、前記原料供給部内に配置され、前記水平回転駆動軸に取り付けられ、該水平回転駆動軸により回転駆動されて、前記原料投入部から前記原料供給部に投入された原料を前記粉砕室に供給する原料供給部材と、前記粉砕室内に配置され、前記水平回転駆動軸に取り付けられ、該水平回転駆動軸により回転駆動されて、前記原料供給部からの供給された原料を攪拌する攪拌部材とを備える横型乾式粉砕機において、
前記原料供給部材が、回転することによって、前記原料投入部から投入された原料に前記粉砕室に向かっての推力を与える
スクリューである機械式推力発生手段であり、
前記原料供給部の直径を前記粉砕室の直径より小さくするとともに、
前記スクリューの直径もこれに応じた小さな直径とし、
前記スクリューの外径と前記原料供給部における粉砕タンクの内径との間の隙間が0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間である
ことを特徴とする横型乾式粉砕機。
(2)
前記スクリューの外径先端形状を、その輸送面の反対側に逃がしのための鋭角の傾斜面を設け、鋭利形状として異物や粉砕メディアをかみこまないようにした上記(1
)に記載の横型乾式粉砕機。
(3)
前記攪拌部材が、前記水平回転駆動軸に沿って延びるとともに、該水平回転駆動軸から半径方向に延びる複数の矩形の板状体を備え、この板状体には複数の開口を有し、前記板状体の半径方向外側辺と前記粉砕室における粉砕タンクの内径との間の隙間および前記板状体の前記メディア分離部材に隣接する端辺と前記メディア分離部材との間の隙間がともに0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間である上記(1)
または(2)に記載の横型乾式粉砕機。
(4)
前記攪拌部材が、前記水平回転駆動軸に沿って延びるとともに、該水平回転駆動軸から半径方向に延びる複数の板状体を備え、この板状体には水平回転駆動軸から半径方向外方に所定長さ延びる矩形開口を有してコの字状とされており、前記板状体の半径方向外側辺と前記粉砕室における粉砕タンクの内径との間の隙間および前記板状体の前記メディア分離部材に隣接する端辺と前記メディア分離部材との間の隙間がともに0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間である上記(1)
または(2)に記載の横型乾式粉砕機。
(5)
前記板状体の半径方向外端部の形状を、その回転方向下流側に、逃がしのための鋭角の傾斜面を設け、鋭利形状として異物やメディアをかみこまないようにした上記(
3)または(
4)に記載の横型乾式粉砕機。
【発明の効果】
【0014】
本発明の横型乾式粉砕機においては、粉砕タンクに粉砕室とは別に原料供給部を設けたことにより、原料投入部を原料供給部に配置し、粉砕室に配置しなくなったので、粉砕され、凝集しやすくなった原料が撹拌部材の遠心力により、直接原料投入部やその近傍に押し上げられることがなくなった。しかも本発明の横型乾式粉砕機においては、原料供給部の直径を粉砕室の直径より小さくするとともに、機械
式推力発生手段の直径もこれに応じた小さな直径としたことにより、機械式推力発生手段が生ずる遠心力が小さくなり、原料投入部から原料供給部に投入される原料の吹き上げや、粉砕室から逆流してきた粉砕済み原料の押し上げ力が低下し、原料投入部の閉塞を極力抑えることができるようになった。
【0015】
また、本発明の横型乾式粉砕機においては、機械式推力発生手段であるスクリューの外径と原料供給部における粉砕タンクの内径との間の隙間を0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間に設定したので、粉砕済み原料の上記押し上げや、その原料投入部への付着堆積を助長する粉砕メディアが原料供給部に入り込むことがないので、上記原料の押し上げや付着堆積をさらに抑制することができる。
【0016】
上記従来の同種の乾式メディア撹拌ミルは粉砕室内壁との隙間はメディア径の3倍以上の隙間を隔てて、撹拌部材を配していたが撹拌部材の回転で発生する遠心力で処理物が粉砕室内壁に付着し、運転不能になるケースが多かった。
本発明の横型乾式粉砕機においては、撹拌部材の構成部品の構造を請求項4や5の板状体とし、この板状体の半径方向外側辺と粉砕室における粉砕タンクの内径との間の隙間を0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間に設定したので、粉砕室内壁に付着した粉砕済み原料を掻き取ることができ、堆積してしまうことがない。
【0017】
さらに、板状体のメディア分離部材に隣接する端辺とメディア分離部材との間の隙間を0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間に設定したので、メディア分離部材に付着した粉砕済み原料を掻き取ることができ、堆積して目詰まりを起こすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施態様による横型乾式粉砕機を示す断面図である。
【
図2】
図1のスクリューの外径先端部の形状を示す図である。
【
図3】本発明の他の実施態様による横型乾式粉砕機を示す断面図である。
【
図5】本発明の更に他の実施態様による横型乾式粉砕機を示す断面図である。
【
図7】本発明の更に他の実施態様による横型乾式粉砕機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態による横型乾式粉砕機について説明する。
図1は、本発明の実施形態による横型乾式粉砕機10を示すものであり、この横型乾式粉砕機10は、内部に粉砕室12およびこの粉砕室12に同心状で連続し、該粉砕室12に原料を供給するための円筒状の原料供給部13を有する横置き円筒形の粉砕タンク14を有している。この粉砕タンク14は、耐熱性材料であるアルミナ、アルミナジルコニアおよび窒化珪素等のセラミック製であることが好ましい。この粉砕タンク14の一端(原料の流れで上流側−以下、全ての部材、部品にについて、この側を一端という)にはケーシング16が、他端(原料の流れで下流側−以下、全ての部材、部品にについて、この側を他端という)にはメディア分離部材(セパレーター)18、粉砕された製品を排出する排出ボックス20がそれぞれ取り付けられている。また、上記粉砕タンク14の一端の原料供給部13には、図示したように原料投入ノズル22が設けられている。メディア分離部材(セパレーター)18の構造は特に限定されるものでなく、例えば板状の部材に複数のスリットや孔を設けたものとすることができる。
【0020】
上記粉砕タンク14内部には、上記ケーシング16から原料供給部13を介して粉砕室12に水平に延びる回転駆動軸24が延伸している。この回転駆動軸24は、粉砕タンク14と同軸に配置されている。上記原料供給部13内において、回転駆動軸24の一端側(原料投入ノズル22の下方)には、原料投入ノズル22から投入された原料である砕料に他端方向へ粉砕室12方向への推力を与える機械
式推力発生手段であるスクリュー26が設けられている。回転駆動軸24上のこのスクリュー26より他端側すなわち粉砕室12内には、攪拌部材28を構成する攪拌要素である第1攪拌アーム30と第2攪拌アーム32が軸方向に間隔をおいて交互に配置されている。上記第1攪拌アーム30は、回転駆動軸24上に植設されたピン状部材である。また、上記第2攪拌アーム32は、粉砕タンク14の一端側に向かって徐々に小さくなるテーパー面34と垂直面36を有する円錐台状のディスク38である。このディスク38には、図に示されているように、ディスクの厚さ方向に斜めに延びる複数の連通孔40が形成されている。この連通孔40は、複数個設けられるのが好ましく、ディスク38の周方向に等間隔に配置される。この連通孔40は、前記垂直面36の比較的内周側に第1開口42を有し、前記テーパー面34に前記第1開口42より外周側に配置された第2開口44を有している。このディスク38に設けられた連通孔40により、粉砕室12内に充填された粉砕メディアMと砕料との混合物には、ディスク38の周りでの還流が引き起こされる。なお、攪拌部材28は、その先端(最もメディア分離部材18側)に図示したような先端アーム38aを備えていることが好ましい。上記攪拌部材28は、耐摩耗性材料であるジルコニア、窒化珪素およびアルミナ等のセラミック製であることが好ましい。
上記粉砕メディアMは、直径数mm程度の粒状のものであって、粉砕室12に粉砕室12の容量の50〜75%程度充填されていることが好ましい。
【0021】
この横型乾式粉砕機10においては、図示したように、原料供給部13の直径を粉砕室12の直径より小さくするとともに、機械
式推力発生手段であるスクリュー26の直径もこれに応じた小さな直径とした。原料供給部13の直径は、粉砕室12の直径1/3〜1/2程度とすることが好ましい。原料供給部13の直径を上記範囲を超えて小さくすると、粉砕室12への砕料(原料)の供給が十分でなくなり、作業が効率的でなく、上記範囲を超えて大きくすると、スクリュー26の直径も大きくなり、遠心力抑制の効果が十分でなくなる。
【0022】
上記スクリュー26の外径と前記原料供給部13における粉砕タンク14の内径との間の隙間e1は、0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間に設定することが好ましい。e1の値が0.5mm未満になると、機械の設定がより難しくなり、粉砕メディアの直径の1/3の値を超えると、スクリュー26の外径先端と粉砕タンク14の内壁との間に粉砕メディアMをかみこむ恐れがある。
【0023】
スクリュー26の外径先端形状は、
図2に示したように、その輸送面26aの反対側に逃がしのための鋭角の傾斜面26bを設け、鋭利形状として異物や粉砕メディアをかみこまないようにすることが好ましい
【0024】
上記回転駆動軸24は、軸受け46によりケーシング16に回転自在に支持され、図示されていない周知の駆動機構を介して駆動源に接続されており、回転駆動される。回転駆動軸24は、上記の軸受け46とスクリュー26の間の部分でオイルシール48等で軸シールされ、粉砕室12内部を密閉状態に保っている。この回転駆動軸24のオイルシール48より粉砕室12側の部分(オイルシールに隣接した部分)には、ランタンリング50が設けられており、このランタンリング50には、ガス導入通路52が連通されている。このガス導入通路52からは、エア等のガスが導入される。この導入されたガスは、ランタンリング50を介して粉砕室12内に流入するようになっており、原料がオイルシール48内に侵入するのを防止している。また、このガスは、砕料(粉体)を流動化させ、流動性を向上させる役割も行う。
【0025】
上記粉砕タンク14の外周側には、該粉砕タンク14と間隔をおいてジャケット54が設けられており、このジャケット54内を、粉砕タンク、粉砕室を冷却する冷却水が流通するようになっている。図において、符号56は冷却水入口ノズル、符号58は冷却水出口ノズルをそれぞれ示している。
【0026】
次に、以上の横型乾式粉砕機10の作動について説明する。
まず、適当な定量フィーダー(図示せず)で原料供給ノズル22に砕料を定量供給すると、この砕料は粉砕室12内のスクリュー26に落下し、このスクリュー26により粉砕室12の他端側に進められる。このとき、ガス導入通路52からのガスによっても、砕料の推力が促進される。
原料は、粉砕室12内部を他端に向かって搬送されながら、攪拌部材28によって粉砕メディアMと共に回転攪拌され、粉砕メディアM間で挟撃され、衝撃力や磨砕作用を受け、徐々に粉砕される。この粉砕時において、原料と粉砕メディアMの一部は、ディスク34の第1開口42に侵入し、連通孔40を通って第2開口44から排出されるという動きを生じ、これにより還流が引き起こされる。この還流により、粉砕室内部での原料の滞留時間が長くなり、十分な粉砕が行われる。また、特にこの還流により、粉砕メディアに大きな運動エネルギーが与えられ、粉砕メディア間の接触確率を増大させて、粉砕能力を大きくする。
十分に粉砕され、微細化された砕料は、メディア分離部材(セパレーター)18により粉砕メディアMと分離されて、メディア分離部材を通過し、排出ボックス20内に製品として回収される。
【0027】
なお、砕料(粉体)は、微細化されると凝集を生じ、粉砕エネルギーを加えても小さくならず、逆に大きくなってしまうという問題が生ずることがある。この問題は、原料投入ノズル22からアルコール等の粉砕助剤を加えることによって解消することができる。
【0028】
また、粉砕作業中は、上記ジャケット54内に冷却水を流して、粉砕室12内の温度を所定の温度に保つ。
【0029】
上記した実施態様では、撹拌部材28を、回転駆動軸24に取り付けられた第1攪拌アーム30および上記第2攪拌アーム32で構成したが、攪拌部材28は、
図3および
図4に示した板状体100や、
図5および
図6に示した板状体200で構成することもできる。
【0030】
図3および
図4に示した板状体100は、水平回転駆動軸24に沿って延びるとともに、該水平回転駆動軸から半径方向に延びる複数の矩形の板状体である。この板状体100には複数の円形の開口102が設けられ、原料と粉砕メディアMの還流を図っている。
【0031】
図5および
図6に示した板状体200は、水平回転駆動軸24に沿って延びるとともに、該水平回転駆動軸から半径方向に延びる板状体である。この板状体200には水平回転駆動軸24から半径方向外方に所定長さ延びる矩形開口202が設けられ、原料と粉砕メディアMの還流を図っている。
【0032】
前記板状体100および200の半径方向外側辺と前記粉砕室における粉砕タンクの内径との間の隙間e2および前記板状体の前記メディア分離部材に隣接する端辺と前記メディア分離部材18との間の隙間e3は、ともに0.5mmから粉砕メディアの直径の1/3の間に設定することが好ましい。粉砕室内壁やメディア分離部材に付着した粉砕済み原料を掻き取ることができ、堆積してしまうことがない。また、上記の隙間に、粉砕メディア等をかみこんでしまうことがない。
【0033】
さらに、
図4および
図6に示したように、前記板状体100および200の半径方向外端部の形状を、その回転方向下流側に、逃がしのための鋭角の傾斜面104、204を設け、鋭利形状として異物やメディアをかみこまないようにすることが好ましい。
【0034】
以上の実施形態においては、前記回転駆動軸に、駆動源側から順に、スクリュー26、撹拌部材28と配置した構造のものについて説明したが、
図7に示したようにスクリュー26と撹拌部材28の配置関係を逆にしてもよい。
【0035】
以上説明した本発明の横型乾式粉砕機によれば、原料供給部の直径を粉砕室の直径より小さくするとともに、機械
式推力発生手段の直径もこれに応じた小さな直径としたことにより、機械式推力発生手段が生ずる遠心力が小さくなり、原料投入部から原料供給部に投入される原料の吹き上げや、粉砕室から逆流してきた粉砕済み原料の押し上げ力が低下し、原料投入部の閉塞を極力抑えることができるようになった。
【符号の説明】
【0036】
10 横型乾式粉砕機
12 粉砕室
13 原料供給部
14 粉砕タンク
16 ケーシング
18 メディア分離部材
20 排出ボックス
22 原料投入ノズル
24 回転駆動軸
26 スクリュー
26a 輸送面
26b 傾斜面
28 攪拌部材
30 第1攪拌アーム
32 第2攪拌アーム
34 テーパー面
36 垂直面
38 ディスク
40 連通孔
42 第1開口
44 第2開口
46 軸受け
48 オイルシール
50 ランタンリング
52 ガス導入通路
54 ジャケット
56 冷却水入口ノズル
58 冷却水出口ノズル
100 板状体
102 開口
104 傾斜面
200 板状体
202 開口
204 傾斜面