特許第5921182号(P5921182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社きもとの特許一覧

<>
  • 特許5921182-目隠し用シート 図000004
  • 特許5921182-目隠し用シート 図000005
  • 特許5921182-目隠し用シート 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921182
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】目隠し用シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20160510BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20160510BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   B32B27/20 A
   E04F13/00 B
   B32B7/02 103
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-277947(P2011-277947)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-129059(P2013-129059A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(72)【発明者】
【氏名】原田 正裕
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−227115(JP,A)
【文献】 特開2002−221610(JP,A)
【文献】 特開2008−122832(JP,A)
【文献】 特開平11−286083(JP,A)
【文献】 特開2008−119867(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0112055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
E04F 13/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に塗布したマット層を有してなり、前記マット層はバインダー樹脂と顔料とを含み、マット層の厚みは5.4〜9.0μmであり、前記顔料はマット層の厚みより平均粒子径の大きい顔料と小さい顔料とを含み、平均粒子径の大きい顔料の含有量と平均粒子径の小さい顔料の含有量との重量比が1:0.2〜1:1.2であり、マット層のJIS−Z8741:1997に基づく鏡面光沢度の、45度鏡面光沢度、60度鏡面光沢度及び75度鏡面光沢度の最大値を最小値で割った値が1.1〜1.9であり、JIS K7136:2000のヘーズが75%以上であることを特徴とする目隠し用シート。
【請求項2】
前記2種類の顔料は、平均粒子径の大きい顔料の平均粒子径が、平均粒子径の小さい顔料の平均粒子径の2〜6倍であることを特徴とする請求項1記載の目隠し用シート。
【請求項3】
前記平均粒子径の大きい顔料の平均粒子径は前記マット層の厚みに対して1〜2倍で、前記平均粒子径の小さい顔料の平均粒子径は前記マット層の厚みに対して0.2〜0.6倍であることを特徴とする請求項1又は2記載の目隠し用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラスや間仕切りなどに用いられる目隠しシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業施設の大面積透明窓ガラス等の一部等を目隠しするために、目隠し用シートを貼合することが行なわれている。この目隠し用シート(例えば特許文献1参照)は、透明基材表面に微細な凹凸が有り、透過光線が散乱されるので外からの視界が妨げられる。
【0003】
一般に、目隠し用シートは、透明基材表面に微細な凹凸を施している。その凹凸を施す方法にはいくつかあり、代表的な方法として、透明基材表面に砂を打ち付け透明基材表面を荒らすサンドブラスト法と、透明基材表面に塗料を塗布乾燥しマット層を設ける塗工法がある。近年は量産性に優れた後者の塗工法をとることが多い。
【0004】
この塗工法によるマット層は主に、バインダーとなる樹脂と顔料の混合物であり、その目隠し度と鏡面光沢度は樹脂と顔料の種類と量の選択によるところが大きい。
【0005】
しかし、これらの手法では目隠し度が良好でも、マット層表面を見る角度により鏡面光沢度が変化し、見かけの外観に不具合が生じたり、あらゆる角度から入光する外光が反射することにより生じる反射公害の懸念が有った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−530147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、透明基材表面のマット層において、鏡面光沢度の角度依存性が抑えることが出来る 目隠しシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、マット層の顔料として平均粒子径の大きい顔料と平均粒子径の小さい顔料を選択した。そして、平均粒子径の大きい顔料と平均粒子径の小さい顔料の含有量の比を一定の割合とすることにより、透明基材表面のマット層において、鏡面光沢度の角度依存性も抑えた目隠しシートを得ることができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の目隠し用シートは、透明基材上に塗布したマット層を有してなり、前記マット層はバインダー樹脂と顔料とを含み、マット層の厚みは5.4〜9.0μmであり、前記顔料はマット層の厚みより平均粒子径の大きい顔料と小さい顔料とを含み、平均粒子径の大きい顔料の含有量と平均粒子径の小さい顔料の含有量との重量比が1:0.2〜1:1.2であり、マット層のJIS−Z8741:1997に基づく鏡面光沢度の、45度鏡面光沢度、60度鏡面光沢度及び75度鏡面光沢度の最大値を最小値で割った値が1.1〜1.9であり、JIS K7136:2000のヘーズが75%以上であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の目隠し用シートは、前記2種類の顔料は、平均粒子径の大きい顔料の平均粒子径が、平均粒子径の小さい顔料の平均粒子径の2〜6倍であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の目隠し用シートは、前記平均粒子径の大きい顔料の平均粒子径は前記マット層の厚みに対して1〜2倍で、前記平均粒子径の小さい顔料の平均粒子径は前記マット層の厚みに対して0.2〜0.6倍であることを特徴とするものである。
【0012】
以下、マット層の厚みより平均粒子径の大きい顔料を「大粒径顔料」、マット層の厚みより平均粒子径の小さい顔料を「小粒径顔料」と表現する場合もある。
【0013】
なお、本発明でいう鏡面光沢度は、JIS−Z8741:1997に基づき光沢計(商品名:VG−2000、日本電色工業社)を用いて測定した(単位は%)。鏡面光沢度は、マット層表面に入射した光の反射の程度を示すパラメータであり、この値が小さいほど低光沢度であるとされ、低光沢度であるほど艶消し効果があるものと判断される。45度鏡面光沢度(G45)とは、マット層表面の垂直方向を0度とし、ここから45度傾いた角度で入射した100の光が、反射側に45度傾いた受光部にどれだけ反射(受光部に入射)するかを示すパラメータである。60度鏡面光沢度(G60)、75度鏡面光沢度(G75)も同様の考えによる。
【0014】
また、本発明でいう平均粒子径は、コールターカウンター法によって測定した値である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の目隠しシートを窓ガラスに貼ると、外部からの視界を十分妨げることができ、優れた目隠し効果が得られる。また、透明基材表面のマット層において、鏡面光沢度の角度依存性も抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】目隠し用シートの一例を示す断面図
図2】本発明の目隠し用シートの一実施形態を示す断面図
図3】目隠し用シートの他の例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目隠し用シートは、透明基材上にマット層を有してなり、前記マット層はバインダー樹脂と顔料とを含み、前記顔料はマット層の厚みより平均粒子径の大きい顔料と小さい顔料とを含み、前記平均粒子径の大きい顔料の含有量と前記平均粒子径の小さい顔料の含有量との重量比が1:0.2〜1:1.2であることを特徴とするものである。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明の目隠し用シートは、透明基材上にマット層を有する構成となっている。
【0019】
透明基材としては、各種透明プラスチックフィルムや透明ガラスを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、フッ素系樹脂などからなるプラスチックフィルムを用いることができる。これら透明基材の厚みは特に制限されないが、6μm〜2mm程度とすることが好ましく、さらには12μm〜200μm程度とすることが好ましい。また、これらは全光線透過率が90%以上のものが好ましい。紫外線吸収剤や光安定剤を含有しているものでも良い。
【0020】
マット層は、バインダー樹脂と顔料とを含む。
【0021】
マット層に含まれるバインダー樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン/ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリイソシアネート、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。バインダー樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物が用いられ、使用するフィルム基材への接着性、透明性、使用する顔料の分散性等を考慮し、選択することができる。
【0022】
マット層に含まれる顔料としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの無機粒子、アクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ナイロン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子などの樹脂粒子があげられる。本発明では無機粒子を用いても良いが、球形の樹脂粒子を用いると、鏡面光沢度の角度依存性をより抑えることが出来るので、球形の樹脂粒子が好ましく用いられる。
【0023】
本発明では、マット層の顔料として大粒径顔料と小粒径顔料を含み、その含有量の比を一定の割合とすることにより、鏡面光沢度の角度依存性を抑えることが出来た。この理由は定かではないが、以下のように考えられる。
【0024】
まず、種々の入射角での入射光の反射光量を調べて見ると、マット層の表面に対して鉛直方向に近い角度の反射光量を抑えるには、単に表面が粗れていれば低光沢になるが、G45、G60およびG75のように水平方向に近い角度から入射した光の反射量を抑えるには、単に粗れているだけでは低光沢にならない場合があった。鋭意検討した結果、鉛直に近い方向からの入射光の反射を抑えるには、マット層の表面の小さな凹凸で均一に粗らす手段でも有効であるが、水平に近い方向からの入射光の反射を抑えるには、小さな凹凸だけでは達成できず、大きくて深い凹凸が存在している必要があることが判った。
【0025】
以下、図を用いて説明を行なう。まず、大粒径顔料だけを多く含むマット層は、大粒径顔料が隙間無く隣接しあうので、その表面には浅い凹凸が揃ったものになりやすい(図1)。一方、大粒径顔料と小粒径顔料を一定の割合で含むマット層の表面は、小粒径顔料の添加により大粒径顔料と大粒径顔料の隙間が広がり、それにより出来た大きくて深い凹凸と、小粒径顔料による小さな凹凸の両方が併存しているものになりやすい(図2)。
【0026】
そして図2のように、大粒径顔料と小粒径顔料を一定の割合で含むマット層では、水平方向に近い角度から入射した光は、大きい凸部分で遮られ、反対方向へは到達し難く、遮られた光は、小さい凹凸で吸収されるか、乱反射されて減衰すると考えられる。従って、適度に大小のマット剤が存在し大きくて深い凹凸があることにより、鏡面光沢度の角度依存性を抑えることが出来ると考えられる。
【0027】
また、マット層の顔料を、大粒径顔料の重量を1として、小粒径顔料の重量比が0.2以上になるように含有させると、小粒径顔料の添加により大粒径顔料と大粒径顔料の隙間が広がり、それにより出来た大きくて深い凹凸が存在して鏡面光沢度の角度依存性を抑えることが出来る(図2)。しかし、小粒径顔料の重量比が1.2以上になると、大きな凹凸は形成されるものの、大粒径顔料の割合が減少し大きな凹凸の割合が減少してしまうので、鏡面光沢度の角度依存性を抑えることが出来なくなる。
【0028】
以上のように、本発明では、マット層に大粒径顔料と小粒径顔料とを含み、平均粒子径の大きい顔料の含有量と平均粒子径の小さい顔料の含有量との重量比が1:0.2〜1:1.2であることにより、マット層の表面に大きくて深い凹凸と小さい凹凸が存在し、鏡面光沢度の角度依存性を抑えることが出来る。
【0029】
なお、大粒径顔料だけを多く含むマット層(図1)から、単に大粒径顔料だけを減らすと大きくて深い凹凸が形成されると考えられる。しかし、その場合には、塗膜中の顔料の割合が減少して目隠し効果が十分でなく、また、小さな凹凸も形成されないので本発明より、鏡面光沢度の角度依存性を抑えることが出来なくなる。
【0030】
さらに本発明では、大粒径顔料の平均粒子径を小粒径顔料の平均粒子径の2〜6倍とすることが好ましい。2倍以上とすることにより、大粒径顔料と小粒径顔料の平均粒子径の差から生じる大きくて深い凹凸が、マット層の表面に存在し易くなり、鏡面光沢度の角度依存性を抑えることが出来易くなる。6倍以下とすることにより、大粒径顔料同士が隣接しあい、マット層の表面に大きくて深い凹凸が形成されなくなること(図3)を防ぎ易くなる。なお、大粒径顔料の平均粒子径は、小粒径顔料の平均粒子径の3〜5倍であることが更に好ましい。
【0031】
さらに、大粒径顔料の平均粒子径はマット層の厚みに対して1〜2倍が好ましい。大粒径顔料の平均粒子径がマット層の厚みに対して1倍以上であると、マット層の表面に大きくて深い凹凸が生じやすくなり、鏡面光沢度の角度依存性を抑えやすくなる。また、大粒径顔料の平均粒子径がマット層の厚みに対して2倍以下であれば、顔料の塗膜からの脱落を防ぎやすくなる。
【0032】
また、小粒径顔料の平均粒子径はマット層の厚みに対して0.2〜0.6倍が好ましい。小粒径顔料の平均粒子径がマット層の厚みに対して0.2倍以上であると、マット層の表面に小さな凹凸が生じやすくなる。また、小粒径顔料の平均粒子径がマット層の厚みに近づくと、大きくて深い凹凸が生じにくくなるので、小粒径顔料の平均粒子径はマット層の厚みに対して0.6倍以下が好ましい。
【0033】
大粒径顔料と小粒径顔料のそれぞれの平均粒子径は、マット層の厚みにより異なるため一概には言えないが、大粒径顔料の平均粒子径は6〜12μmが好ましく、8〜10μmがより好ましい、また、小粒径顔料の平均粒子径は1〜4μmが好ましく、2〜3μmがより好ましい。
【0034】
また、大粒径顔料と小粒径顔料の合計含有量は、要求される隠蔽性や光沢度に異なるため一概には言えないが、バインダー樹脂100重量部に対して20〜80重量部にするのが好ましく、30〜70重量部とすることがさらに好ましく、40〜60重量部とすることがよりに好ましい。バインダー樹脂100重量部に対して、前記2種の顔料の合計含有量を20重量部以上とすることにより、目隠し効果が十分にしやすくなり、80重量部以下とすることにより、基材との接着性を保つことができる。
【0035】
以上の目隠し用シートの目隠し効果の指標としては、JIS K7136:2000のヘーズが75%以上であることが好ましい。
【0036】
プラスチックフィルムのマット層とは反対側の面には、被着体に貼り合わせるための接着層を設けることが好ましい。接着層としては、アクリル系感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤などの感圧接着剤、ホットメルト接着剤などの接着剤の他、熱圧着可能な熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることができる。感圧接着剤を用いる場合、接着層上には、目隠し用シートの取り扱い性を損なわないようにセパレータを貼り合わせておくことが好ましい。セパレータとしては、各種合成樹脂フィルムに離型処理を施したものなどを使用することができる。
【0037】
なお、マット層、および接着層には、紫外線吸収剤、または紫外線遮蔽剤を添加しても良い。そうすることによって、目隠し用シートを貼合した被着体の内側にある物の紫外線劣化を防ぐことができる。
【0038】
上述したマット層、接着層中には、硬化剤、レベリング剤などの添加剤を添加してもよい。
【0039】
以上のようなマット層、接着層を設ける方法としては、各層を構成する材料を、適宜必要に応じて添加剤や希釈溶剤等を加えて塗布液として調整して、当該塗布液を従来公知のコーティング方法により塗布、乾燥する方法があげられる。
【0040】
以上説明した本発明の目隠し用シートは、主として、窓ガラスや間仕切りなどの外側、または内側に貼り付けて使用されるが、接着層のないマットフィルムを透明ガラス窓の外側、または内側に吊るしても同様の効果が得られる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0042】
1.目隠し用シートの作製
基材として、厚み50μmのPETフィルム(HB3:帝人デュポン社)を使用し、その一方の面に、下記処方の塗布液をそれぞれバーコート法により乾燥後の厚みが表1の厚みとなるように塗布した。各塗布液の各顔料の平均粒子径と含有量を表1に示す。各塗布液の固形分はいずれも30%に調製した。
【0043】
その後、乾燥を行ってマット層を形成し、実施例1〜15および比較例1〜7の目隠し用シートを作製した。各マット層の厚みは、後述の表1に示した。
【0044】
<目隠し用シート塗布液の処方>
・樹脂(固形分35.2%) 41.8部
(916-257スプラクリヤーTXF:ミクニペイント株式会社)
・触媒(固形分78.5%) 4.2部
(D14-354:ミクニペイント株式会社)
・表1記載の顔料 9.0部
・希釈溶剤 35.0部
【0045】
なお、表1記載の平均粒子径10μmの大粒径顔料は綜研化学株式会社のMX1000KS、平均粒子径3μmの小粒径顔料は東芝シリコーン株式会社のトスパール130、平均粒子径8μmの大粒径顔料は積水化成品工業株式会社のMBX−8SS、平均粒子径2μmの小粒径顔料は 東芝シリコーン株式会社のトスパール120を用いた。
【0046】
【表1】
【0047】
R1:大粒径顔料の平均粒子径(μm)
R2:小粒径顔料の平均粒子径(μm)
R1/R2:大粒径顔料の平均粒子径を小粒径顔料の平均粒子径で割った値(倍)
W1:大粒径顔料の含有量(部)
W2:小粒径顔料の含有量(部)
W1とW2の比:大粒径顔料の含有量と小粒径顔料の含有量との重量比
T:マット層の厚み(μm)
R1/T:大粒径顔料の平均粒子径をマット層の厚みで割った値(倍)
R2/T:小粒径顔料の平均粒子径をマット層の厚みで割った値(倍)
【0048】
2.評価
各実験例で得られた目隠し用シートについて、下記の方法で鏡面光沢度の角度依存性の評価をした。結果を表2に示す。
【0049】
表2より、G45、G60及びG75の最大値を最小値で割った値が小さいほど、鏡面光沢度の角度依存性が低いことが認められる。
【表2】
【0050】
鏡面光沢度の最大値/最小値:G45、G60及びG75の最大値を最小値で割った値
【0051】
3.考察
表2から以下のことが理解できる。
実施例1〜15の目隠し用シートは、大粒径顔料と小粒径顔料を含み、大粒径顔料の含有量と小粒径顔料の含有量の重量比が1:0.2〜1:1.2であり、G45、G60及びG75の最大値を最小値で割った値が1.1〜1.9と小さい値となり、鏡面光沢度の角度依存性が低いことが認められた。
特に、実施例1〜6と10〜12の目隠し用シートは、大粒径顔料の平均粒子径がマット層の厚みに対して1.4倍〜1.9倍と大きく、また小粒径顔料の平均粒子径もマット層の厚みに対して0.4倍〜0.6倍と大きいので、G45、G60及びG75の最大値を最小値で割った値が1.1〜1.5と小さい値となり、特に鏡面光沢度の角度依存性が低く、優れていることが認められた。
【0052】
一方、比較例1〜7の目隠し用シートは、大粒径顔料の含有量と小粒径顔料の含有量の重量比が1:0.2〜1:1.2から外れるので、G45、G60及びG75の最大値を最小値で割った値が1.5〜2.0と大きくなり、鏡面光沢度の角度依存性が高いことが認められた。
【0053】
なお、実施例7〜9と12、14および15の目隠し用シートのG45、G60及びG75の最大値を最小値で割った値は、比較例1〜4より大きい値を示すものがある。
しかし、大粒径顔料と小粒径顔料の平均粒子径の比、大粒径顔料の平均粒子径とマット層の厚みの比および小粒径顔料の平均粒子径とマット層の厚みの比の項目を同一として、大粒径顔料の含有量と小粒径顔料の含有量の重量比のみが異なっている実施例7〜9と比較例5、実施例12と比較例6および実施例14、15と比較例7同士でG45、G60及びG75の最大値を最小値で割った値を比較すると実施例の方が小さい値となる。
したがって、大粒径顔料と小粒径顔料の2種類の顔料を含み、これら2種類の顔料の重量比を特定の範囲とした本発明の優位性は示されている。
【0054】
以上のように、すべての実施例の目隠し用シートにおいて、G45、G60及びG75の最大値を最小値で割った値が、比較例の目隠し用シートと比べて小さく、鏡面光沢度の角度依存性が低いことが認められた。また、目隠し用シートの目隠し効果の指標として、実施例のヘーズは75%以上で良好な目隠し効果が得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0055】
1・・・・目隠し用シート
2・・・・透明基材
3・・・・マット層
31・・・バインダー樹脂
32・・・大粒径顔料
33・・・小粒径顔料
図1
図2
図3