特許第5921185号(P5921185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921185
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】スイング式逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/03 20060101AFI20160510BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   F16K15/03 D
   F16K47/02 H
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-282939(P2011-282939)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133842(P2013-133842A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】▲たか▼木 孝作
(72)【発明者】
【氏名】黒木 博文
(72)【発明者】
【氏名】武田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】波多江 寛明
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−153766(JP,U)
【文献】 特開2009−174175(JP,A)
【文献】 実開平3−35378(JP,U)
【文献】 特開昭54−25527(JP,A)
【文献】 米国特許第4249568(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15
F16K 47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口部から出口部へ延びる流路が形成された弁ケースと、前記流路の途中部に設けられた弁座と、この弁座の上側に設けられた回動軸を中心にスイング可能なアームと、このアーム先端に取付けられた弁体とを備え、前記弁体が自重により閉弁するスイング式逆止弁において、
前記弁体の外周部分に前記弁座に当接する弁部を形成すると共に、前記弁体に前記弁部の少なくとも一部から弁体の径方向外側へ張り出した拡張部を設け
前記拡張部の軸心方向の厚さが弁部の軸心方向の厚さよりも小さく形成され、
前記拡張部は、前記弁体が閉弁状態のとき前記弁座の外周側の壁部から前記流路を流れる流体の流れ方向の下流側へ離隔するように形成されたことを特徴とするスイング式逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を流れる流体の逆流を防止し、流体を一方向のみに流すスイング式逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LNGプラントや化学プラント等において、各種流体の輸送用配管の途中部に配置され、輸送用配管内を流れる流体流量が多いとき、弁座から離隔して開弁し、流体の流れが少量又は止められたとき、自重により弁座に当接して閉弁する弁体を備えたスイング式逆止弁が知られている。
【0003】
このスイング式逆止弁51は、図4に一例を示すように、入口部53aから出口部53bへ延びる流路53が形成された弁ケース52と、流路53の途中部に設けられた弁座54と、この弁座54上側に設けられた回動軸56を中心にスイング可能なアーム55と、このアーム55先端に取付けられた弁体57と、この弁体57の外周部分に弁座54に当接する弁部57aとを備え、流路53内を流れる流体流量が多いとき、弁部57aが弁座54から離隔して開弁し、流体の流れが止まったとき、弁体57の自重により弁部57aが弁座54に当接して閉弁するように構成されている。
【0004】
このようなスイング式逆止弁では、入口側の流体が吹き出し圧力(セット圧力ともいう)を僅かに超えた状態で一定流量に安定したとき、弁体57が数10Hz以下の比較的低周波の振動を繰り返し、この振動に伴う往復運動により弁部57aが弁座54を周期的に打撃する現象、所謂チャタリングを生じることがある。このチャタリングが発生した場合、弁体57と弁座54の打撃による損傷や、これに起因して弁座54からの漏洩や打撃部分の摩耗及び配管振動等を引き起こす虞がある。
【0005】
弁体と弁座に係るチャタリング発生のメカニズムは、以下のように考えられている。
(i)弁体上流側の流体圧が吹き出し圧力を僅かに超えた状態で一定流量に安定した、所謂チャタリング発生域のとき、流体から弁体に加わる揚弁力(開弁力)が弁体を押し上げ、弁体が弁座から微小距離離隔して開弁状態になる。
(ii)弁体上流側の流体速度が増加し、流体の運動量と圧力損出が増すことにより、弁体上流側の流体圧が減少する。
(iii)弁体上流側の流体圧が吹き止まり圧力を下回り、弁部が弁座に当接して閉弁状態になる。
(iv)弁体上流側の流体速度が低下し、流体の運動量と圧力損出が減少することにより、弁体上流側の流体圧が増加する。
(v)前記(i)〜(iv)を繰り返す。
【0006】
前述したチャタリングの発生を回避するための対策として、
(1)弁体上流側の流体の圧力変化を吹き出し圧力と吹き止まり圧力との差(吹下り圧力)よりも小さくする、
(2)流路を流れる流体流量を多くする(揚弁力を大きくする)、
(3)弁体の重量を軽くして吹き出し圧力を低下する、
等が知られている。
前記(1)は、配管長等の設備側の要求や流体の流路抵抗等の要因によって決定されるものであり、弁体上流側の流体の圧力変化を調整することは容易ではない。前記(2)についても、流体の受入側の要求によって決定されるものであり、チャタリング防止のために流体を増量することは前記(1)と同様の問題がある。
【0007】
前記(3)では、吹き出し圧力を低下して、チャタリング発生域を吹き出し圧力に応じて低圧側に移動でき、これに伴い発生頻度自体も減少させることができる。
しかし、このような逆止弁では、流体逆流時の流体圧に耐え得る強度が要求されるため、要求される強度に応じた厚さが必要であり、その重量も大きくなる。それ故、逆止弁機能との関係上、弁体の軽量化には限界がある。
【0008】
特許文献1のスイング式逆止弁は、流路が形成された弁ケースと、流路の途中部に設けられた弁座と、この弁座の上側に設けられた回動軸を中心にスイング可能なアームと、このアーム先端に取付けられた弁体と、この弁体の外周部分に弁座に当接する弁部と、弁体が全開状態のとき弁体と当接するストッパと、回動軸回りに設けられたねじりコイルばねとを備え、ねじりコイルばねが開弁状態から全開状態に至るまでの間、弁体を閉弁側へ付勢するように構成されている。このスイング式逆止弁では、開弁状態のとき、弁体を閉弁側に付勢して弁体と受け座に相当するストッパとの当接頻度を抑制することにより、ストッパ側チャタリング発生域におけるチャタリングの発生防止を図っている。
【0009】
また、弁体に、小流量の流体を流通可能な小孔部を形成し、弁体の出口側面部に、自重で小孔部に接することにより小孔部を塞ぎ且つ小孔部を通る流体により押し上げられて小孔部を開く小弁体を設けたスイング式逆止弁も公知である。このスイング式逆止弁では、チャタリング発生域において、弁体の開弁を伴うことなく小弁体が開閉するため、弁体のチャタリングの発生を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−229480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1のスイング式逆止弁は、開弁状態から弁体とストッパとが当接する全開状態への回動を抑制しているため、配管長等の設備側の要求に拘わらずストッパ側チャタリング発生域におけるチャタリング発生を回避することができる。しかし、特許文献1の技術を弁座側に発生するチャタリング対策に適用した場合、次のような課題が生じる。
即ち、開弁状態から閉弁状態に至るまでの間では、弁体を開弁側へ付勢するねじりコイルばねを設けた場合、チャタリング発生域における開弁状態の弁体と弁座との当接頻度を抑制することはできる。しかし、閉弁状態であっても弁体が開弁側へ付勢されているため、本来は開動作しない程度の弁体上流側の流体圧であっても、弁体が開弁し、結果的に弁体と弁座との当接頻度を抑制できずチャタリングの発生を招く虞がある。
【0012】
また、チャタリング発生域において小孔部を開く小弁体を備えたスイング式逆止弁では、弁体と弁座との当接頻度を抑制できるものの、依然として小弁体のチャタリングが発生する。しかも、小弁体が水平よりも上向きに押し上げられた状態から急激に流体が逆流したとき、流体が小弁体を押し上げる方向に流れるため、小孔部の開状態が継続し、逆止弁機能が阻害される虞もある。
【0013】
本発明の目的は、逆止弁機能の向上とチャタリング防止とを両立することができるスイング式逆止弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1のスイング式逆止弁は、入口部から出口部へ延びる流路が形成された弁ケースと、前記流路の途中部に設けられた弁座と、この弁座の上側に設けられた回動軸を中心にスイング可能なアームと、このアーム先端に取付けられた弁体とを備え、前記弁体が自重により閉弁するスイング式逆止弁において、前記弁体の外周部分に前記弁座に当接する弁部を形成すると共に、前記弁体に前記弁部の少なくとも一部から弁体の径方向外側へ張り出した拡張部を設け、前記拡張部の軸心方向の厚さが弁部の軸心方向の厚さよりも小さく形成され、前記拡張部は、前記弁体が閉弁状態のとき前記弁座の外周側の壁部から前記流路を流れる流体の流れ方向の下流側へ離隔するように形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、弁部の少なくとも一部から弁体の径方向外側へ張り出した拡張部を設けたことにより、開弁状態における流体を受ける弁体の受圧面積を閉弁状態における流体を受ける弁体の受圧面積よりも増加することができるため、開弁により弁体上流側の流体圧が減少しても、弁体に作用する揚弁力の低下を抑制でき、弁体と弁座との当接頻度を抑制してずチャタリングの発生を回避することができる。しかも、開弁状態において急激に流体が逆流したとき、弁体下流側の流体に対する受圧面積が大きく、弁体を閉弁方向に回動するための閉弁力を大きくすることができるため、閉弁動作の応答性を高くでき、逆止弁機能を向上することができる。
【0017】
そして、閉弁状態のとき、拡張部が弁座の外周側の壁部と当接しないため、拡張部の軸心方向の厚さを小さくすることができ、弁体の軽量化によりチャタリングの発生を一層防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係るスイング式逆止弁の全体構成を示す縦断面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3】弁体と弁座との要部拡大断面を示し、(a)は閉弁状態、(b)は開弁直後の状態、(c)は開弁直後の弁体に作用する力を模式的に示す図である。
図4】従来のスイング式逆止弁の全体構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
実施例1について、図1〜3に基づいて説明する
本実施例のスイング式逆止弁1は、流体を流すための流路3が形成された弁ケース2と、流路3の途中部に設けられた弁座4と、回動軸6を中心にスイング可能なアーム5と、このアーム5先端に取付けられた弁体7とを備え、この弁体7が自重により閉弁可能に構成されることにより流体を一方向のみに流す逆止弁である。
【0021】
図1図2に示すように、弁ケース2は、流体(例えば、天然ガス等)の輸送用配管(図示略)の途中部に接続され、入口部3aと、出口部3bと、作業部3cの3つの開口を備えた金属製ケーシングで構成されている。弁ケース2の内部には、入口部3aから出口部3bに亙って直線状に延びる流路3と、ストッパ8とが形成されている。
このストッパ8は、流路3を流れる流体流量が増加し、弁体7が全開状態のとき、弁体7の下流側背面部と当接して弁体7の開度を一定に保持している。
【0022】
入口部3aは、流体を加圧するコンプレッサ(図示略)に連なる上流側配管(図示略)とフランジ2aを介して接続され、出口部3bは、受け側設備と連なる下流側配管(図示略)とフランジ2bを介して接続される。作業部3cは、フランジ2cに複数のボルト10により固定された円盤状蓋部材9によって閉鎖され、弁体7の組付けやメインテナンスのとき、蓋部材9をフランジ2cから取り外して所定の作業を行う。
【0023】
図1に示すように、環状の弁座4は、流路3の入口部3a側途中部に形成された壁部2dの径方向内側部分において流体の流れ方向下流側へ突出するように形成されている。
尚、以下、流体の流れ方向における上下流側を上下流側として説明する。
【0024】
アーム5は、略L字状に形成され、一端に回動軸6へ外装可能な回動部5aを備え、他端に筒状の弁体支持部5bを備えている。回動軸6は、壁部2dにおいてフランジ2cと弁座4の上端との略中間位置に設けられ、回動部5aを回動自在に枢支している。この回動軸6は、図2に示すように、弁ケース2に設けられた挿通穴に挿通され、その基端部分に内嵌されたブッシュ11を介してプラグ12によって抜け止めされている。
【0025】
図1に示すように、弁体7は、ステンレス鋼(例えば、SUS316)により円板状に形成され、弁座4と当接可能な弁部7aと、弁体7を弁体支持部5bに固定するための軸部7bと、凹部7cと、環状の拡張部13とが同心状に一体形成されている。
この弁体7は、流路3内を流れる流体流量が多いとき、弁部7aが弁座4から下流側へ離隔して開弁し、流体の流れが止まったとき、弁体7の自重により弁部7aが弁座4に当接して閉弁するように構成されている。
【0026】
弁部7aは、閉弁状態の弁体7の外周部分において上流側へ突出するように形成され、弁部7aの上流側端面が弁座4の下流側端面と面接触するように環状に構成されている。軸部7bは、閉弁状態の弁体7の中央部分から下流側へ延びるように形成され、下流端部分には雄ねじが形成されている。この軸部7bは、弁体支持部5bに上流側から挿通され、雄ねじに螺合可能なナット15によって弁体支持部5bに固定される。
凹部7cは、閉弁状態の弁体7の上流側部分に凹入形成され、凹部7cの軸心方向の厚さが、弁部7aの軸心方向の厚さよりも小さく設定されている。
【0027】
図1に示すように、拡張部13は、閉弁状態の弁部7aの下流端全周から弁体7の径方向外側へ環状に張り出し、その軸心方向の厚さが、弁部7aの軸心方向の厚さ、更には、凹部7cの軸心方向の厚さよりも小さく形成されている。それ故、拡張部13は、弁体7が閉弁状態のとき弁座4の外周側の壁部2dから下流側へ離隔して配置されている。
【0028】
次に、スイング式逆止弁1の作用・効果について説明する。
図3(a)に示すように、流路3内の流体の流速が略零の閉弁状態のとき、弁体7の揚弁力(弁体7が流体から受ける力)Fwaは、次式(1)のように表すことができる。
Fwa=π(ra)×△P …(1)
raは弁部7a(内周端)の半径、△Pは配管内の流体圧変化に起因する一次圧と二次圧との差圧である。尚、説明の便宜上、弁体7に作用する圧力分布の項を省略し、流体の動圧が弁体7に一律に作用する簡易モデルにより説明する。
【0029】
図3(b),図3(c)に示すように、弁部7aが弁座4から下流側へ離隔した開弁状態直後のとき、弁体7の揚弁力Fwbは、次式(2)のように表すことができる。
Fwb=(1/2)×ρ×π(rb)×cosθ×(Vb)×Cx …(2)
ρは流体密度、rb(ra<rb)は拡張部13を含む弁体7の半径、θは鉛直方向に対する弁体7の傾き、Cxは抵抗係数、Vbは流速であり、この流速Vbは傾きθに依存する。
【0030】
ここで、次式(3)に示す閉弁モーメントMcが次式(4)に示す開弁モーメントMoよりも大きいとき、チャタリングが発生する。
Mc=M×g×sinθ×L …(3)
Mはアーム5と弁体7の合計重量、gは重力加速度、Lは回動軸6からアーム5と弁体7との重心Gまでの距離である。
Mo=Fwb×L …(4)
そこで、スイング式逆止弁1の弁体7では、所定の低流量でも開弁モーメントMoが閉弁モーメントMcよりも大きくなるように、Mを抑え、rb(拡張部13の面積)を大きくなるように設定している。
【0031】
以上のように、スイング式逆止弁1では、弁体7の重量増加を抑制しつつ、開弁状態の弁体7の受圧面積π(rb)を、閉弁状態の弁体7の受圧面積π(ra)よりも拡大することができる。即ち、開弁状態の流体流量が同じ従来型の弁体(半径がra)と弁体7とを比較したとき、弁体7の受圧面積π(rb)を従来型の弁体の受圧面積π(ra)よりも大きくすることができ、これに伴い揚弁力も大きくできるから、弁体7上流側の流体圧変化が生じた場合でも、従来型の弁体と比べて開弁モーメントMoを閉弁モーメントMcよりも大きな状態に維持することができる。
【0032】
次に、3種類の弁体A〜Cを用いた検証実験により実証されたスイング式逆止弁1の効果について説明する。この検証実験では、図4に示す従来の弁体Aと、弁体7から拡張部13を省略した弁体Bと、弁体7と同じ構造の弁体Cとを準備した上で、上流側からコンプレッサにより加圧された流体を流し、チャタリング発生が停止したときのコンプレッサ出力を夫々計測した。尚、弁体Aの半径と弁体Bの半径と弁体Cの弁座半径は同一とされ、その他、弁ケース、アーム等の構成は何れも同じ仕様に設定されている。
【0033】
検証実験の結果を下記対比表に示す。
【表1】

以上のように、弁体B,Cは、弁体Aに比べて軽量化されているため、チャタリング発生域を低流量(低圧)側に移動でき、チャタリングが早期に抑制されている。
弁体Cは、弁体Bに比べて弁体重量は増加しているものの、拡張部13による受圧面積の拡大により、開弁状態における揚弁力を増加でき、弁体Bよりもチャタリングの抑制効果が格段に高いことが分かる。
【0034】
スイング式逆止弁1によれば、弁部7aの少なくとも一部から弁体7の径方向外側へ張り出した拡張部13を設けたことにより、開弁状態における流体を受ける弁体7の受圧面積を従来型の弁体Aの受圧面積よりも増加することができるため、開弁により弁体7上流側の流体圧が減少しても、弁体7に作用する揚弁力の低下を抑制でき、弁体7と弁座4との当接頻度を抑制してチャタリングの発生を回避することができる。
【0035】
拡張部13の軸心方向の厚さが弁部7aの軸心方向の厚さよりも小さく形成され、拡張部13は、弁体7が閉弁状態のとき弁座4の外周側の壁部2dから流路3を流れる流体の流れ方向の下流側へ離隔するように形成されたため、閉弁状態のとき、拡張部13が弁座4の外周側の壁部2dと当接しないため、拡張部13の軸心方向の厚さを小さくすることができ、弁体7の軽量化によりチャタリングの発生を一層防止することができる。
【0036】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、拡張部を弁部の下流端全周から径方向外側へ張り出した例を説明したが、少なくとも開弁状態における流体の受圧面積を閉弁状態における流体の受圧面積よりも増加出来ればよく、全周のうちの一部から部分的に径方向外側へ張り出した拡張部であっても良い。また、他のチャタリング防止技術と併用することも可能である。
【0037】
2〕前記実施例においては、流体として気体用のスイング式逆止弁の例を説明したが、液体用のスイング式逆止弁に適用することも可能である。
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、流路を流れる流体の逆流を防止し、流体を一方向のみに流すスイング式逆止弁において、開弁状態における流体を受ける弁体の受圧面積を閉弁状態における流体を受ける弁体の受圧面積よりも増加したため、逆止弁機能の向上とチャタリング防止とを両立できる。
【符号の説明】
【0039】
1 スイング式逆止弁
2 弁ケース
2d 壁部
3 流路
3a 入口部
3b 出口部
4 弁座
5 アーム
6 回動軸
7 弁体
7a 弁部
13 拡張部

図1
図2
図3
図4