特許第5921312号(P5921312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5921312光学活性縮合系ポリマー、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921312
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】光学活性縮合系ポリマー、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 85/00 20060101AFI20160510BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20160510BHJP
   C08G 69/28 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   C08G85/00
   C08G69/26
   C08G69/28
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-98838(P2012-98838)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-227378(P2013-227378A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 和夫
(72)【発明者】
【氏名】廣井 良一
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−131758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 85/00
C08G 69/26
C08G 69/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不斉中心を有さない光学活性縮合系ポリマーであって、前記縮合系ポリマーが、カルボニルハライド基を2個有するモノマーとアミノ基を2個有するモノマーとの界面重合反応生成物であるポリアミドである、光学活性縮合系ポリマー
【請求項2】
キラルネマティック液晶に溶解した第1モノマーと、液体に溶解した第2モノマーとを、界面重合させる光学活性縮合系ポリマーの製造方法であって、
前記第1モノマーが、カルボニルハライド基を2個有するモノマーであり、前記第2モノマーが、アミノ基を2個有するモノマーである、光学活性縮合系ポリマーの製造方法
【請求項3】
前記液体が水である、請求項に記載の光学活性縮合系ポリマーの製造方法。
【請求項4】
(a)キラルネマティック液晶中に第1モノマーを溶解し、液晶反応物相を形成する工程、
(b)液体中に第2モノマーを溶解し、液体反応物相を形成する工程、及び
(c)液晶反応物相と液体反応物相とを接触させる工程、
を含む、請求項又はに記載の光学活性縮合系ポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光学活性縮合系ポリマー、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、汎用ポリマーは三次元ではランダムな形をしているが、近年、一方向にねじれた三次元らせん構造を有するポリマーが開発されている。当該らせん構造を有するポリマーは、キラル触媒を用いて、重合反応時に分子レベルで特定方向からの反応を生じさせることにより製造される。しかしながら、この方法では、ポリマー合成後の溶融又は溶解により、そのらせん構造の多くが失われてしまうという欠点がある。そのため、生成するポリマーのらせん構造を安定に存在させるために、数多くの方法が提案されている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、等方性有機溶媒中、トリフェニルメチルメタクリレート等の、嵩高く、キラリティを有するモノマーを重合することにより、らせん構造を有するポリマーを製造している。この方法は、モノマーが有するキラリティにより、安定ならせん構造を維持することができる。しかしながら、当該方法は、分子構造中に嵩高い置換基かつキラリティを有するモノマーを用いる必要があり、工業的に有利な方法ではない。
【0004】
また、特許文献1では、キラルネマティック液晶にて、パラジウム触媒又はニッケル触媒を用いて、らせん構造を有するポリマーを製造することを提案している。しかしながら、この方法も、嵩高い置換基を有するモノマーを用いる必要があり、工業的製法には適していない。さらに、付加系ポリマーについて開示されるのみであり、縮合系ポリマーについては、何ら開示されていない。
【0005】
さらに、非特許文献2では、キラルネマティック液晶中、アセチレンガスと触媒を接触させることにより、らせん状ポリアセチレンを製造することを提案している。また、特許文献2では、キラルネマティック液晶中にて、電解重合法によりらせん状共役系ポリマーを製造することを提案している。しかしながら、これらの方法は、いずれも製造されるポリマーが付加系ポリマーに限られており、多種類のポリマーの製造には適していない。
【0006】
いずれにしても、上記各種の方法では、らせん構造を有する縮合系ポリマーは全く製造できず、らせん構造を有する縮合系ポリマーの合成については示唆すらされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−131758号公報
【特許文献2】特開2003−306531号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chem.Rev.,1994,Vol.94,pp.349
【非特許文献2】Science,1998,Vol.282,pp.1683
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規である三次元らせん構造を有する縮合系ポリマー、すなわち、全く新規な光学活性縮合系ポリマーを提供すること、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、キラルネマティック液晶に溶解した第1モノマーと、液体に溶解した第2モノマーとを、界面重合させることにより、らせん構造を有し、不斉中心を有さない光学活性縮合系ポリマーが得られることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の、不斉中心を有さない光学活性縮合系ポリマー、及びその製造方法を提供するものである。
項1.不斉中心を有さない光学活性縮合系ポリマー。
項2.前記縮合系ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、又はポリチオエステルである、項1に記載の光学活性縮合系ポリマー。
項3.キラルネマティック液晶に溶解した第1モノマーと、液体に溶解した第2モノマーとを、界面重合させることを特徴とする、光学活性縮合系ポリマーの製造方法。
項4.前記液体が水である、項3に記載の光学活性縮合系ポリマーの製造方法。
項5.(a)キラルネマティック液晶中に第1モノマーを溶解し、液晶反応物相を形成する工程、
(b)液体中に第2モノマーを溶解し、液体反応物相を形成する工程、及び
(c)液晶反応物相と液体反応物相とを接触させる工程、
を含む、項3又は4に記載の光学活性縮合系ポリマーの製造方法。
項6.前記第1モノマーが、カルボニルハライド基又はスルホニルハライド基を2個以上有するモノマーである、項5に記載の光学活性縮合系ポリマーの製造方法。
項7.前記第2モノマーが、アミノ基、水酸基及びチオール基から選ばれる置換基を2個以上有するモノマーである、項5に記載の光学活性縮合系ポリマーの製造方法。
項8.項3〜7のいずれか1項に記載の製造方法で得られた光学活性縮合系ポリマー。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学活性縮合系ポリマーは、直接、粉末状、繊維状やフィルム状の任意の形状で得ることができるため、再溶融又は再溶解を行うことなく、種々の用途で用いることができる。
【0013】
本発明の製造方法によれば、ポリマーの繰り返し単位に不斉中心を含まない光学活性縮合系ポリマーを製造することができる。
【0014】
本発明の製造方法によれば、キラリティを有するモノマーや嵩高い置換基を有するモノマーを用いることなく、種々の光学活性縮合系ポリマーを任意に製造することができる。
【0015】
本発明の製造方法によれば、液晶反応物相の表面形態を、ポリマーの微細構造に反映させることができるため、フィブリル構造(フィブリル束)によるらせん形態を表面に有する光学活性縮合系ポリマーであって、当該フィブリル束によるらせん形態が様々な大きさのドメインからなり、当該フィブリル束の少なくとも一部がらせん状構造を形成している、らせん状のポリマーを得ることができる。
【0016】
本発明の製造方法によれば、用いる液晶反応物相を制御することで、得られる光学活性縮合系ポリマーのヘリシティーやヘリカルピッチを制御することができる。
【0017】
また、本発明の製造方法は、得られる光学活性縮合系ポリマー中への、ネマティック液晶やキラルドーパントのような不純物の混入が少ないため、これら不純物を除去するための洗浄工程が簡便であり、工業化に適している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1で得られたポリアミド6,10のSEM写真である。
図2】実施例2で得られたポリアミド6,10のSEM写真である。
図3】実施例3で得られたポリアミド6,10のSEM写真である。
図4】実施例4で得られたポリアミド6,10のSEM写真である。
図5】比較例1で得られたポリアミド6,10のSEM写真である。
図6】実施例5で得られたポリアミド6,6のSEM写真である。
図7】実施例6で得られたポリアミド6,6のSEM写真である。
図8】比較例2で得られたポリアミド6,6のSEM写真である。
図9】実施例7で得られたポリアミド6TのSEM写真である。
図10】実施例8で得られたポリアミド6TのSEM写真である。
図11】比較例3で得られたポリアミド6TのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
光学活性縮合系ポリマー
本発明の光学活性縮合系ポリマーは、不斉中心を有さずに光学活性を示す縮合系ポリマーである。
【0021】
縮合系ポリマーとしては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、ポリチオエステルなどが挙げられる。中でも、ポリアミドが好ましい。
【0022】
ポリアミドとしては、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドが挙げられる。
脂肪族ポリアミドとしては、具体的には、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10などが挙げられる。
【0023】
芳香族ポリアミドとしては、具体的には、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T、ポリフェニレンテレフタルアミドなどが挙げられる。
【0024】
ポリエステルとしては、脂肪族ポリエステル及び芳香族ポリエステルが挙げられる。
【0025】
脂肪族ポリエステルとしては、具体的には、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンンサクシネート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケートなどが挙げられる。
【0026】
芳香族ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,4−ナフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリエチレン−2,7−ナフタレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロピレンテレフタレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロピレンイソフタレートなどが挙げられる。
【0027】
ポリカーボネートとしては、具体的には、ビスフェノールA型のポリカーボネートなどが挙げられる。
【0028】
ポリスルホンアミドとしては、具体的には、ポリヘキサメチレンベンゼンスルホンアミド、ポリヘキサメチレンビフェニルスルホンアミド、ポリヘキサメチレンジフェニルメタンスルホンアミド、ポリヘキサメチレンジフェニルエーテルスルホンアミド、ポリヘキサメチレンジフェニルケトンスルホンアミド、ポリノナメチレンベンゼンスルホンアミド、ポリデカメチレンベンゼンスルホンアミド、ポリウンデカメチレンベンゼンスルホンアミド、ポリフェニレンベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0029】
ポリチオエステルとしては、具体的には、ポリフェニレンチオアジペート、ポリエチレンチオテレフタレート、ポリ−2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロピルチオカーボネートなどが挙げられる。
【0030】
本発明の光学活性縮合系ポリマーの重量平均分子量に特に制限はなく、重合時に界面から粉末、繊維、又はフィルムとして析出する程度の重量平均分子量以上であればよいが、例えば、1万以上、好ましくは1万〜100万程度であることが好ましい。
【0031】
本発明の光学活性縮合系ポリマーは、不斉中心に依らない光学活性を有することにより、フィブリル構造(フィブリル束)によるらせん形態を表面に有している。このフィブリル束によるらせん形態は、様々な大きさのドメインからなっている。さらに、このフィブリル束は、少なくとも一部がらせん状構造を形成している。
【0032】
本発明の光学活性縮合系ポリマーの表面におけるらせん形態は、液晶反応物相の表面形態を反映した構造である。よって、液晶反応物相の表面形態を調整することにより、ポリマーの表面形態を任意に調整することができる。
【0033】
本発明の光学活性縮合系ポリマーは、その特異ならせん形状から、機械強度などの物性が向上する。そのため、今日までポリマーが使用されている様々な用途、特に、衣料用材料、分離膜、不織布、包装材料、光学フィルム、電気・電子材料、建築材料等の用途に好適に使用できる。
【0034】
光学活性縮合系ポリマーの製造方法
本発明の光学活性縮合系ポリマーは、キラルネマティック液晶に溶解した第1モノマーと、液体に溶解した第2モノマーとを、界面重合させることにより製造される。
【0035】
より具体的には、
(a)キラルネマティック液晶中に第1モノマーを溶解して液晶反応物相を形成する工程、
(b)液体中に第2モノマーを溶解して液体反応物相を形成する工程、及び
(c)液晶反応物相と液体反応物相とを接触させる工程、
を経て、本発明の光学活性縮合系ポリマーを製造することができる。
【0036】
以下、工程(a)〜(c)について、それぞれ説明する。
【0037】
工程(a)
<キラルネマティック液晶>
本発明の製造方法において用いられるキラルネマティック液晶(コレステリック液晶)は、公知であり、例えば、ネマティック液晶にキラルドーパントを添加することにより得られる。
【0038】
ネマティック液晶としては、重合反応を阻害しないものである限り、公知のネマティック液晶を使用できる。また、ネマティック液晶の形態は、どのような形態であってもよい。使用の簡便さという観点からは、溶媒を包含しなくても液晶形態が実現されるサーモトロピック液晶が好ましい。また、液晶の構造にも何ら制限はなく、液晶形成基(メソゲン)が主鎖にある主鎖型の液晶であっても、ある程度の柔軟性がある主鎖にメソゲン側鎖を導入した側鎖型の液晶であってもよい。液晶の構造としては、例えば、トランス−スチルベン、アゾキシベンゼン、ニトロンなどの二重結合を含む連結基を有するもの、ビフェニル又はシクロヘキサンなどの連結基を有するものが挙げられる。さらに、メソゲン化合物の末端には、アルキル基、又はアルコキシ基などのフレキシブルな置換基が導入されていることが好ましい。当該置換基は、脂肪族鎖、又は芳香族環若しくは複素環を含む分子鎖で、対称又は非対称構造を有していてもよい。置換基の鎖長は、用いるモノマーに適した重合温度に合わせて、液晶の転移温度を調整するために適宜選択すればよい。
【0039】
以上の各種液晶の中でも、室温以上で液晶の状態を保持でき、かつ液晶を示す温度範囲の広いものが好ましい。例えば、シアノビフェニル系(CB系)液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶などが挙げられる。
【0040】
CB系液晶としては、例えば、4’−アルキル−4−シアノビフェニルなどが挙げられ、具体的には、5CB、6CBなどが挙げられる。
【0041】
ビフェニル系液晶としては、例えば、4,4’−ジアルキルビフェニルなどが挙げられ、具体的には、BPCH52などが挙げられる。
【0042】
フェニルシクロヘキサン系液晶としては、例えば、トランス−4−アルキル−(4−アルコキシフェニル)シクロヘキサンなどが挙げられ、具体的には、PCH302、PCH304、PCH506などが挙げられる。
【0043】
これらの中でも、下記式で示される5CB、6CB、BPCH52、PCH302、PCH304、及びPCH506などが好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を併用して使用される。
【0044】
【化1】
【0045】
キラルドーパントとしては、重合反応を阻害せず、ネマティック液晶との相溶性の高い軸不斉を有するキラル化合物であれば、特に限定されない。例えば、バイノール誘導体及び不斉炭素を有するフェニルシクロヘキシル系化合物が好ましい。
【0046】
具体的には、下記式(I)、(II)、(III)で表されるバイノール誘導体や、式(IV)、(V)で表されるフェニルシクロヘキシル系化合物などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を併用して使用される。
【0047】
【化2-1】
【0048】
【化2-2】
【0049】
キラルネマティック液晶のヘリシティー及びヘリカルピッチは、添加するキラルドーパントの種類や濃度により制御することができる。
【0050】
<第1モノマー>
キラルネマティック液晶に溶解する第1モノマーは、所望の生成物及び使用されるキラルネマティック液晶への溶解性に依存するが、カルボニルハライド基又はスルホニルハライド基を2個以上、好ましくは2個有しているモノマーであればよい。例えば、ジカルボン酸ジハライド、ジスルホニルジハライド、ホスゲン、トリホスゲンなどが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を併用して使用される。
【0051】
ジカルボン酸ジハライドとしては、脂肪族ジカルボン酸ジクロリド及び芳香族ジカルボン酸ジクロリドが挙げられる。
【0052】
脂肪族ジカルボン酸ジクロリドとしては、具体的には、マロン酸ジクロリド、コハク酸ジクロリド、グルタル酸ジクロリド、3,3−ジメチルグルタル酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、ピメリン酸ジクロリド、スベリン酸ジクロリド、アゼライン酸ジクロリド、セバシン酸ジクロリド、1,12−ドデカン二酸ジクロリド、1,14−テトラデカン二酸ジクロリド、1,18−オクタデカン二酸ジクロリド、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、1,4−シクロヘキサンジ酢酸ジクロリドなどが挙げられる。
【0053】
芳香族ジカルボン酸ジクロリドとしては、具体的には、p−フェニレンジ酢酸ジクロリド、フタル酸ジクロリド、4−tert−ブチルフタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリド、5−tert−ブチルイソフタル酸ジクロリド、テレフタル酸ジクロリド、1,8−ナフタル酸ジクロリド、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド、2,2′−ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、3,3′−ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、4,4′−ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、4,4′−ビナフチルジカルボン酸ジクロリド、ビス(3−カルボキシフェニル)メタンクロリド、ビス(4−カルボキシフェニル)メタンクロリド、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパンクロリド、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパンクロリド、3,3′−スルホニルジ安息香酸ジクロリド、4,4′−スルホニルジ安息香酸ジクロリド、3,3′−オキシジ安息香酸ジクロリド、4,4′−オキシジ安息香酸ジクロリド、3,3′−カルボニルジ安息香酸ジクロリド、4,4′−カルボニルジ安息香酸ジクロリド、3,3′−チオジ安息香酸ジクロリド、4,4′−チオジ安息香酸ジクロリド、4,4′−(p−フェニレンジオキシ)ジ安息香酸ジクロリド、4,4′−イソフタロイルジ安息香酸ジクロリド、4,4′−テレフタロイルジ安息香酸ジクロリド、ジチオサリチル酸ジクロリドなどが挙げられる。
【0054】
これらのジカルボン酸ジハライドは1種単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0055】
ジスルホニルジハライドとしては、脂肪族ジスルホニルジクロリド及び芳香族ジスルホニルジクロリドが挙げられる。
【0056】
脂肪族ジスルホニルジクロリドとしては、具体的には、ビス(3−プロピルジスルホン酸ジクロリド)テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0057】
芳香族ジスルホニルジクロリドとしては、具体的には、1,4−ベンゼンジスルホン酸ジクロリド、1,3−ベンゼンジスルホン酸ジクロリド、4,4’−ビフェニルジスルホン酸ジクロリド、4,4’−ジフェニルメタンジスルホン酸ジクロリド、4,4’−ジフェニルエーテルジスルホン酸ジクロリド、4,4’−ジフェニルケトンジスルホン酸ジクロリド、4,4’−フェニルスルホンジスルホン酸ジクロリド、2,2−プロパンビス(4−フェニルジスルホン酸ジクロリド)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ビス(4−フェニルジスルホン酸ジクロリド)、2,2’−ジメチルビフェニル4,4’−ジスルホン酸ジクロリドなどが挙げられる。
【0058】
これらのジスルホニルジハライドは1種単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0059】
<液晶反応物相の形成方法>
本発明における液晶反応物相は、キラルネマティック液晶中に、第1モノマーを溶解することにより形成される。当該溶解方法は、特に限定されないが、例えば、キラルネマティック液晶中に、第1モノマーを添加し、撹拌すればよい。
【0060】
キラルネマティック液晶反応物相中の第1モノマーの濃度としては、重合反応が十分に進行する濃度であれば、特に制限されないが、0.2〜0.5モル/Lの濃度範囲が好ましい。
【0061】
また、液晶反応物相のらせん巻き方向は、キラルドーパントの種類を任意に選択することにより調整することができる。
【0062】
液晶反応物相のヘリカルピッチは、ネマティック液晶、キラルドーパントの種類を任意に選択することにより調整することができる。その上限値としては、4μmが好ましく、さらには3μmが好ましい。下限値としては、200nmが好ましく、さらには500nmが好ましい。
【0063】
工程(b)
<液体>
本発明で用いる液体は、重合反応を阻害せず、重合反応に適した温度範囲内で液体状態であり、キラルネマティック液晶と混合せずに相分離する液体であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、水、アルコール、グリコールなどの極性溶媒が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を併用して使用される。これらの中でも、経済性及びモノマー種などとの相溶性の観点から、水が好ましい。
【0064】
<第2モノマー>
液体に溶解する第2モノマーは、所望の生成物及び使用される液体への溶解性に依存するが、アミノ基、水酸基、及びチオール基から選ばれる置換基を2個以上、好ましくは2個有しているモノマーであればよい。例えば、ジアミン、ジアルコール及びジチオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0065】
ジアミンとしては、脂肪族ジアミン及び芳香族ジアミンが挙げられる。
【0066】
脂肪族ジアミンとしては、具体的には、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノへプタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、1,21−ジアミノヘンティコサン、1,22−ジアミノドコサン、1,23−ジアミノトリコサン、1,24−ジアミノテトラコサン、イソホロンジアミン、ジアミノジシクロへキシルメタンなどが挙げられる。
【0067】
芳香族ジアミンとしては、具体的には、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0068】
これらのジアミンは1種単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0069】
ジアルコールとしては、脂肪族ジアルコール及び芳香族ジアルコールが挙げられる。
【0070】
脂肪族ジアルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールキシリレングリコール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0071】
芳香族ジアルコールとしては、具体的には、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0072】
これらのジアルコールは1種単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0073】
ジチオールとしては、脂肪族ジチオール及び芳香族ジチオールが挙げられる。
【0074】
脂肪族ジチオールとしては、具体的には、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、1,2−エタンジチオール、1、3−プロパンジチオール、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオールなどが挙げられる。
【0075】
芳香族ジチオールとしては、具体的には、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,2−ジメルカプトメチルベンゼン、1,3−ジメルカプトメチルベンゼン、1,4−ジメルカプトメチルベンゼン、トルエン−3,4−ジチオールなどが挙げられる。
【0076】
これらのジチオールは1種単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0077】
<液体反応物相の形成方法>
本発明における液体反応物相は、液体中に、第2モノマーを溶解することにより形成される。当該溶解方法は、特に限定されないが、例えば、液体中に、第2モノマーを添加し、撹拌すればよい。
【0078】
液体反応物相中の第2モノマーの濃度としては、重合反応が十分に進行する濃度であれば、特に制限されないが、0.4〜1.0モル/Lの濃度範囲が好ましい。
【0079】
工程(c)
上記工程(a)で得られた液晶反応物相と、工程(b)で得られた液体反応物相とを接触させることにより、液晶反応物相と液体反応物相との相界面において、第1モノマーと第2モノマーが重縮合反応し、本発明の光学活性縮合系ポリマーを得ることができる。
【0080】
液晶反応物相と液体反応物相との接触方法としては、特に限定されないが、例えば、予め反応容器に液体反応物相を入れておき、その上に、液晶が乱れないようにゆっくりと液晶反応物相を供給することにより、行うことができる。
【0081】
液晶反応物相と液体反応物相の使用割合は、第1モノマーの反応基(カルボニルハライド基及び/又はスルホニルハライド基)のモル数に対して、第2モノマーの反応基(アミノ基、水酸基及び/又はチオール基)のモル数が、1.01〜20倍の範囲となるように調整することが好ましい。
【0082】
接触温度(反応温度)は、液晶反応物相の液晶性が維持され、かつ液体の状態が維持される温度であれば、特に制限されないが、反応速度が極めて速いため、特に加熱設備を必要とせず、室温(5〜35℃)で行うことができる。
【0083】
接触時間(反応時間)は、使用するモノマーの反応速度にもよるが、通常、液晶反応物相と液体反応物相とを接触させると、瞬時に沈殿が生成し、ポリマーの粉末を得ることができる。この操作は、例えば2〜60分で反応操作を終了させることができる。また、液晶反応物相の液晶性が維持される範囲の攪拌であれば、液晶反応物相及び液体を反応中に攪拌することにより、接触効率が高まるため好ましい。さらに、界面で生成するポリマーを引き上げると、新たに界面でポリマーが生成されることから、連続的に繊維状やフィルム状のポリマーを得ることもできる。
【0084】
また、本発明の製造方法においては、上記工程(b)及び(c)に替えて、下記工程(b)’及び(c)’とすることもできる。
(b)’液晶反応物相と液体とを接触させる工程、及び
(c)’液体中に第2モノマーを溶解させる工程。
【0085】
上記工程(b)’における、液晶反応物相と液体との接触方法は、特に限定されないが、例えば、予め反応容器に水などの液体を入れておき、その上に、液晶が乱れないようにゆっくりと液晶反応物相を供給することにより、行うことができる。
【0086】
上記工程(c)’における、液体中に第2モノマーを溶解させる方法としては、特に限定されず、第2モノマーをそのまま液体中に供給してもよいし、予め少量の液体に第2モノマーを溶解させた第2モノマー溶液を、液晶反応物相と接触した液体中に供給してもよい。予め第2モノマーを溶解させる液体の量としては、最終的に得られる液体反応物相中の第2モノマーの濃度が、工程(b)と同様、0.4〜1.0モル/L程度となるように、適宜設定することができる。
【0087】
この場合、工程(c)’において、液体中に第2モノマーが拡散することにより、得られた溶液が液体反応物相として作用する。そして、上記工程(a)〜(c)の場合と同様に、液晶反応物相と液体反応物相との相界面において、第1モノマーと第2モノマーが重縮合反応し、本発明の光学活性縮合系ポリマーを得ることができる。
【0088】
工程(b)’及び(c)’を行う場合の、液晶反応物相と液体反応物相の使用割合、接触温度(反応温度)及び接触時間(反応時間)は、工程(b)及び(c)を行う場合と同様である。
【0089】
あるいは、上記工程(a)〜(c)に替えて、下記工程(a)’’〜(c)’’とすることもできる。
(a)’’液体中に第2モノマーを溶解して液体反応物相を形成する工程、
(b)’’液体反応物相とキラルネマティック液晶とを接触させる工程、及び
(c)’’キラルネマティック液晶中に第1モノマーを溶解させる工程。
【0090】
上記工程(a)’’における、液体中に第2モノマーを溶解する方法としては、上記工程(b)と同様である。
【0091】
上記工程(b)’’工程における、液体反応物相とキラルネマティック液晶との接触方法は、特に限定されないが、例えば、予め反応容器に液体反応物相を入れておき、その上に、液晶が乱れないようにゆっくりとキラルネマティック液晶を供給することにより、行うことができる。
【0092】
また、上記工程(c)’’における、キラルネマティック液晶中に第1モノマーを溶解させる方法としては、特に限定されず、第1モノマーをそのままキラルネマティック液晶中に供給してもよいし、予め少量のキラルネマティック液晶に第1モノマーを溶解させた第1モノマー液晶液を、液体反応物相と接触したキラルネマティック液晶中に供給してもよい。予め第1モノマーを溶解させるキラルネマティック液晶の量としては、最終的に得られる液晶反応物相中の第1モノマーの濃度が、工程(a)と同様、0.2〜0.5モル/L程度となるように、適宜設定することができる。
【0093】
この場合、工程(c)’’において、キラルネマティック液晶中に第1モノマーが拡散することにより、得られた溶液が液晶反応物相として作用する。そして、上記工程(a)〜(c)の場合と同様に、液晶反応物相と液体反応物相との相界面において、第1モノマーと第2モノマーが重縮合反応し、本発明の光学活性縮合系ポリマーを得ることができる。
【0094】
工程(a)’’〜(c)’’を行う場合の、液晶反応物相と液体反応物相の使用割合、接触温度(反応温度)及び接触時間(反応時間)は、工程(a)〜(c)を行う場合と同様である。
【0095】
第1モノマーと第2モノマーとの好ましい組み合わせ
ポリアミドが得られる組み合わせとしては、コハク酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、アジピン酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、コハク酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、セバシン酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸ジクロリドと1,9−ジアミノノナン、テレフタル酸ジクロリドと1,10−ジアミノデカン、テレフタル酸ジクロリドと1,11−ジアミノウンデカン、テレフタル酸ジクロリドとフェニレンジアミンが挙げられる。
【0096】
ポリエステルが得られる組み合わせとしては、コハク酸ジクロリドと1,3−プロパンジオール、コハク酸ジクロリドと1,4−ブタンジオール、セバシン酸ジクロリドと1,3−プロパンジオール、セバシン酸ジクロリドと1,3−ブタンジオール、テレフタル酸ジクロリドとエチレングリコール、テレフタル酸ジクロリドと1,4−ブタンジオール、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジクロリドとエチレングリコール、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリドとエチレングリコール、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジクロリドとエチレングリコール、テレフタル酸ジクロリドと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、イソフタル酸ジクロリドと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0097】
ポリカーボネートが得られる組み合わせとしては、ホスゲンと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリホスゲンと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0098】
ポリスルホンアミドが得られる組み合わせとしては、ベンゼンジスルホン酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビフェニルジスルホン酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジスルホン酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジフェニルエーテルジスルホン酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジフェニルケトンジスルホン酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミン、ベンゼンジスルホン酸ジクロリドと1,9−ジアミノノナン、ベンゼンジスルホン酸ジクロリドと1,10−ジアミノデカン、ベンゼンジスルホン酸ジクロリドと1,11−ジアミノウンデカン、ベンゼンジスルホン酸ジクロリドとフェニレンジアミンが挙げられる。
【0099】
ポリチオエステルが得られる組み合わせとしては、アジピン酸ジクロリドと1,4−ベンゼンチオール、ホスゲンと2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオールが挙げられる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細を説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0101】
<液晶の調製>
表1に示した配合で、液晶原料PCH302、PCH304、PCH506、及びBPCH52を混合し、ネマティック液晶N−LC5を得た。
得られたN−LC5に、表1に示す配合割合で、それぞれキラルドーパントを添加し、キラルネマティック液晶N−LC1〜4を得た。キラルドーパントとしては、キラルドーパント1;(R)−2,2’−PCH506−binaphtyl、キラルドーパント2;(S)−2,2’−PCH506−binaphtyl、キラルドーパント3;(R)−2,2’−PCH5012−6,6’−PCH5−binaphtyl、キラルドーパント4;(S)−2,2’−PCH5012−6,6’−PCH5−binaphtylを用いた。N−LC1及び2のヘリカルピッチはPOM写真より測定した。N−LC3及び4のヘリカルピッチは、液晶反応物相の選択反射に基づくλmaxを測定し算出した。ヘリカルピッチを表1に示した。
【0102】
【表1】
【0103】
<液晶反応物相の調製>
表2に示す配合割合で、N−LC1〜4及びN−LC5に、ジカルボン酸ジハライドを加え、液晶反応物相1〜11を調製した。液晶反応物相1〜11は、43℃以下で安定な液晶相であることを確認した。N−LC1及び2を用いた液晶反応物相のヘリカルピッチは、POM観察より測定した。N−LC3及び4を用いた液晶反応物相のヘリカルピッチは、液晶反応物相の選択反射に基づくλmaxを測定し算出した。ヘリカルピッチを表2に示した。
【0104】
【表2】
【0105】
<ポリアミド6,10の合成>
(実施例1)
予め重合容器に入れておいた水の上に、液晶反応物相1を加え、室温で液晶相を30分間安定化させた。液晶が乱れないように、ヘキサメチレンジアミン水溶液を重合容器下部のガラス管からゆっくり水の中に押し出しながら拡散させ、上層の液晶反応物相と下層の液体反応物相との界面にて重合を行った。液晶反応物相のセバシン酸ジクロリドと、液体反応物相中のヘキサメチレンジアミンとのモル比を1:20とし、1時間重合した。重合後、液晶反応物相と液体反応物相との界面に形成された薄膜を、ピンセットで静かにつまみあげ、アセトン/水の混合溶液、アセトン、クロロホルムの順に洗浄し、ポリアミド6,10の薄膜を得た。
【0106】
(実施例2)
液晶反応物相を液晶反応物相2に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6,10を得た。
【0107】
(実施例3)
液晶反応物相を液晶反応物相3に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6,10を得た。
【0108】
(実施例4)
液晶反応物相を液晶反応物相4に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6,10を得た。
【0109】
(比較例1)
液晶反応物相を液晶反応物相5に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6,10を得た。
【0110】
<ポリアミド6,6の合成>
(実施例5)
液晶反応物相を液晶反応物相6に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6,6を得た。
【0111】
(実施例6)
液晶反応物相を液晶反応物相7に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6,6を得た。
【0112】
(比較例2)
液晶反応物相を液晶反応物相8に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6,6を得た。
【0113】
<ポリアミド6Tの合成>
(実施例7)
液晶反応物相を液晶反応物相9に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6Tを得た。
【0114】
(実施例8)
液晶反応物相を液晶反応物相10に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6Tを得た。
【0115】
(比較例3)
液晶反応物相を液晶反応物相11に替えた以外は、実施例1と同様の方法で、目的のポリアミド6Tを得た。
【0116】
<評価>
実施例及び比較例で得られたポリアミド6,10のSEM写真において、実施例1〜4はフィブリル束によるらせん形態の微細構造が、比較例1はフィブリル束が塊状になった微細構造が観察された。
【0117】
右巻きのキラルネマティック液晶を用いた実施例1は、フィブリル構造のらせんが右巻きに、左巻きのキラルネマティック液晶を用いた実施例2は、フィブリル構造のらせんが左巻きにねじれていることが観察された。
【0118】
さらに、実施例1及び実施例2において、フィブリルの束がらせん状構造を形成していることが観察された。実施例1のフィブリル束間の距離は2.6μm、実施例2のフィブリル束間の距離は2.8μmと、合成に用いた液晶反応物相のヘリカルピッチと近似していた。
【0119】
以上から、本発明の製造方法で製造したポリアミド6,10は、合成に用いた液晶反応物相のらせん構造が反映されていることが確認された。本発明の製造方法で製造したポリアミド6,6及びポリアミド6Tにおいても、SEM写真から合成に用いた液晶反応物相のらせん構造が反映されていることが確認された。
【0120】
また、実施例1、実施例2、実施例7、比較例1及び比較例3で得たポリアミド6,10及びポリアミド6Tの比旋光度を測定した。測定サンプルには、それぞれポリアミドが濃硫酸中1質量%となるように調整したものを用い、結果を表3に示した。
【0121】
表3から、実施例1、実施例2及び実施例7はフィブリル束にねじれ構造が付与されていることが確認された。また、合成に用いたキラルネマティック液晶のねじれ構造により、異なる符号の比旋光度のポリマーが得られることが確認された。
【0122】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11