特許第5921350号(P5921350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルパイン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5921350-音楽再生装置 図000002
  • 特許5921350-音楽再生装置 図000003
  • 特許5921350-音楽再生装置 図000004
  • 特許5921350-音楽再生装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921350
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】音楽再生装置
(51)【国際特許分類】
   G10L 21/0324 20130101AFI20160510BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20160510BHJP
   G10L 25/51 20130101ALI20160510BHJP
【FI】
   G10L21/0324
   G10H1/00 B
   G10L25/51 300
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-134877(P2012-134877)
(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-257509(P2013-257509A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】玉村 雅志
【審査官】 千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−008698(JP,A)
【文献】 特許第4467601(JP,B2)
【文献】 特開2009−098262(JP,A)
【文献】 特開2010−055076(JP,A)
【文献】 特開昭63−070294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L21/00−21/18
G10H 1/00− 7/12
G10L25/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される音楽信号に含まれるビート音成分の発生タイミングを検出するビート音検出手段と、
前記ビート音検出手段による検出対象となっているビート音成分を強調する純音信号を生成する純音生成手段と、
前記ビート音検出手段によって検出された発生タイミングに合わせて、前記音楽信号に前記純音生成手段によって生成した純音信号を重畳する合成手段と、
前記合成手段によって前記純音信号が重畳された音楽信号を出力する音楽信号出力手段と、
を備え、前記純音生成手段は、第1の波長を有する第1のサイン波と、前記第1の波長よりも長い第2の波長を有する第2のサイン波を順番に発生することにより前記純音信号を生成することを特徴とする音楽再生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記合成手段による合成対象となる前記音楽信号と前記純音信号の少なくとも一方のタイミングを調整するタイミング調整手段をさらに備えることを特徴とする音楽再生装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記合成手段は、前記音楽信号に含まれるビート音成分の位相に前記純音信号の位相を合わせて、前記音楽信号に前記純音信号を重畳することを特徴とする音楽再生装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記純音生成手段による前記純音信号の発生時間は、前記ビート音検出手段によって検出される発生タイミングの繰り返し周期よりも短いことを特徴とする音楽再生装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記純音生成手段は、前記第1および第2のサイン波のそれぞれを1波長分発生することを特徴とする音楽再生装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記第2の波長は、前記第1の波長の2倍であることを特徴とする音楽再生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記合成手段によって重畳される前記純音信号の波長は変更可能であることを特徴とする音楽再生装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記合成手段によって重畳される前記純音信号の振幅は変更可能であることを特徴とする音楽再生装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記ビート音成分は、打楽器を叩いたときに発生する周波数成分であることを特徴とする音楽再生装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記打楽器は、バスドラムまたは、バスドラムに類似した特性を持つ低音を強調する打楽器であることを特徴とする音楽再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビート成分を含む音楽信号を再生して出力する音楽再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入力された音楽信号からビート成分を抽出し、音楽信号にビート成分を強調する加工を施して出力するようにした音楽再生装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この音楽再生装置は、入力された音楽信号からスペクトルを算出し、この算出したスペクトルの時間微分に基づいてビートのタイミングを判定することで、このタイミングで所定の時間幅を持たせたビート波形を生成する。そして、このビート波形に合わせて音楽信号の一部または全部の周波数帯域を増幅することで、音楽信号に含まれるビート成分を強調している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4467601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された従来手法では、ビートが現れるタイミングで音楽信号を増幅しているため、ビート以外の音も一緒に増幅されてしまい、再生音に違和感が生じるという問題があった。例えば、バスドラムによるビートを強調する際に、同じタイミングで生じる他の楽器の音も同時に増幅してしまい、ビートの周期に合わせて他の楽器の音が大きくなったり小さくなったりして不自然な音になり、想定しているビート感が得られないばかりか音質の悪化にもつながる。この点は、増幅対象となる音楽信号の周波数帯域幅を狭くすることで改善することができるが、帯域幅を狭くしてもこの周波数帯域に他の楽器の音が含まれることに変わりはないため、本質的な改善にはならない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、音楽信号を再生する際に違和感なくビート音を強調することができる音楽再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の音楽再生装置は、入力される音楽信号に含まれるビート音成分の発生タイミングを検出するビート音検出手段と、ビート音検出手段による検出対象となっているビート音成分を強調する純音信号を生成する純音生成手段と、ビート音検出手段によって検出された発生タイミングに合わせて、音楽信号に純音生成手段によって生成した純音信号を重畳する合成手段と、合成手段によって純音信号が重畳された音楽信号を出力する音楽信号出力手段とを備えている。ビート音成分に同期するように純音信号を音楽信号に重畳しているため、音楽信号自体を増幅する必要はなく、音楽信号を再生する際に違和感なくビート音を強調することができる。
【0007】
また、上述した合成手段による合成対象となる音楽信号と純音信号の少なくとも一方のタイミングを調整するタイミング調整手段をさらに備えることが望ましい。これにより、ビート音成分の発生タイミング検出に要する時間等を考慮した音楽信号と純音信号の合成処理が可能となり、純音信号を重畳するタイミングを容易かつ正確に調整することができる。
【0008】
また、上述した合成手段は、音楽信号に含まれるビート音成分の位相に純音信号の位相を合わせて、音楽信号に純音信号を重畳することが望ましい。音楽信号の含まれるビート音成分の位相と純音信号の位相を合わせることにより、ビート音を強調する際に逆にビート音が弱まったり、違和感が生じることを防止することができる。
【0009】
また、上述した純音生成手段による純音信号の発生時間は、ビート音検出手段によって検出される発生タイミングの繰り返し周期よりも短いことが望ましい。これにより、ビート音の発生タイミングに合わせて純音信号を短時間発生するだけであるため、純音信号発生に必要な構成を簡素化することができる。また、ビート音成分を検出する毎に純音信号を合成するタイミングを決めればよいため、純音信号の合成タイミングの決定が容易となる。
【0010】
また、上述した純音生成手段は、第1の波長を有する第1のサイン波と、第1の波長よりも長い第2の波長を有する第2のサイン波を順番に発生することにより純音信号を生成する。さらに、上述した第2の波長は、第1の波長の2倍であることが望ましい。これにより、実際に発生するビート音に含まれる基本周波数成分に近い純音信号を生成することが可能になり、ビート音を強調する際の違和感をなくすことができる。
【0011】
また、上述した純音生成手段は、第1および第2のサイン波のそれぞれを1波長分発生することが望ましい。これにより、純音信号発生に必要な構成をさらに簡素化することができる。また、2種類の波長のサイン波を切り替える際に信号振幅が連続するよう設定することが容易となる。
【0012】
また、上述した合成手段によって重畳される純音信号の波長は変更可能であることが望ましい。これにより、ビート音を強調する際の音色を調整することができ、利用者の好みを反映したビート音の強調が可能となる。
【0013】
また、上述した合成手段によって重畳される純音信号の振幅は変更可能であることが望ましい。これにより、ビート音を強調する際の音色を調整することができ、利用者の好みを反映したビート音の強調が可能となる。
【0014】
また、上述したビート音成分は、打楽器を叩いたときに発生する周波数成分であることが望ましい。また、上述した打楽器は、バスドラムあるいは、それに類似した特性を持つ低音を強調する打楽器であることが望ましい。これにより、バスドラム等の低音を強調する打楽器を叩いたときに発生するビート音が含まれる音楽信号に適したビート音の強調を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の音楽再生装置の構成を示す図である。
図2】ビート音検出部の詳細構成を示す図である。
図3】ビート音検出部の動作を示す説明図である。
図4】音楽再生装置に入力される音楽信号とサイン波生成部によって生成される純音信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した一実施形態の音楽再生装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態の音楽再生装置の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の音楽再生装置は、音楽信号入力部10、イコライザ処理部12、遅延部14、ビート音検出部20、極性検出部22、サイン波生成部30、合成部40、デジタル−アナログ変換器(DAC)42、アンプ44、スピーカ46を備えている。この音楽再生装置は、デジタル音楽信号が入力されており、この音楽信号に含まれるビート音成分を強調して出力する。
【0017】
音楽信号入力部10は、デジタル音楽信号を後段のイコライザ処理部12、極性検出部16、ビート音検出部20に入力する。このデジタル音楽信号は、CDやDVD等のディスク型記録媒体や半導体メモリなどから読み出したものを用いる場合や、ラジオ放送やテレビ放送を受信して抽出したものを用いる場合や、音楽コンテンツを配信する各種サーバからインターネット経由で取得したものを用いる場合などが考えられる。また、アナログ形式の音楽信号を取得して、音楽信号入力部10の前後あるいは内部でデジタルデータに変換してもよい。
【0018】
イコライザ処理部12は、音楽信号入力部10から入力される音楽信号について、複数の周波数帯域のそれぞれ毎に信号レベルを強調(増幅)したり減衰させたりする処理を行う。なお、このイコライザ処理部12は省略してもよい。
【0019】
ビート音検出部20は、音楽信号入力部10から入力される音楽信号に含まれるビート音成分の発生タイミング(発生開始位置)を検出する。極性検出部22は、ビート音検出部20によってビート音成分が検出された時点での音楽信号の波形の極性を検出する。本実施形態では、音楽信号は、0レベルを中心に正あるいは負の振幅を有しており、ビート音成分が検出された際の音楽信号の振幅が正負のいずれであるかが極性検出部22によって検出される。
【0020】
サイン波生成部30は、ビート音検出部20による検出対象となっているビート音成分を強調する純音信号を生成する。具体的には、サイン波生成部30は、第1の波長を有する第1のサイン波と、第1の波長よりも長い第2の波長を有する第2のサイン波を順番に発生することにより純音信号を生成する。例えば、第1のサイン波として100Hzで1波長分のサイン波が用いられ、第2のサイン波として50Hzで1波長分のサイン波が用いられる。また、一般に、このような純音信号の継続時間は、ビート音検出部20によって検出されるビート音成分の発生タイミングの検出周期よりも短くなっている。さらに、このサイン波の生成は、極性検出部16によって検出された極性にあわせて行われる。例えば、極性検出部22によって極性が正であることが検出された場合には、先頭部分の極性が正となるサイン波が生成される。反対に、極性検出部22によって極性が負であることが検出された場合には、先頭部分の極性が負となるサイン波が生成される。ビート音検出部20、極性検出部22、サイン波生成部30の具体的な動作については後述する。
【0021】
合成部40は、ビート音検出部20によって検出された発生タイミングに合わせて、イコライザ処理部12から出力される音楽信号に、サイン波生成部30によって生成した純音信号を重畳する合成処理を行う。遅延部14は、合成部40による合成対象となる音楽信号と純音信号の少なくとも一方のタイミングを調整する。図1に示した構成では、遅延部14は、イコライザ処理部12と合成部40との間に設けられており、イコライザ処理部12を通した音楽信号に対してタイミング調整を行う。なお、合成部40に入力される純音信号のタイミングを遅延させる必要がある場合にはサイン波生成部40と合成部40の間に遅延部14を設けたり、イコライザ処理部12とサイン波生成部30のそれぞれの後段に別々に遅延部14を設けてもよい。
【0022】
デジタル−アナログ変換器42は、合成部40から出力されるデジタルの音楽信号をアナログの音楽信号に変換する。この音楽信号は、アンプ44によって増幅された後にスピーカ46から出力される。なお、スピーカ46の代わりにイヤホンやヘッドホンを用いるようにしてもよい。
【0023】
上述したビート音検出部20がビート音検出手段に、サイン波生成部30が純音生成手段に、合成部40が合成手段に、デジタル−アナログ変換器42、アンプ44、スピーカ46が音楽信号出力手段に、遅延部14がタイミング調整手段にそれぞれ対応する。
【0024】
図2は、ビート音検出部20の詳細構成を示す図である。図2に示すように、ビート音検出部20は、帯域通過フィルタ50、52、重み付け合成ノルム生成部54、エンベロープ生成部56、開始位置検出部58を備えている。
【0025】
一方の帯域通過フィルタ50は、ドラム音などの低域成分を音楽信号から抽出する。例えば、低域通過フィルタによって構成されている。他方の帯域通過フィルタ52は、シンバル音などの高域成分を音楽信号から抽出する。例えば、高域通過フィルタによって構成されている。異なる通過帯域を有するこれら2つの帯域通過フィルタ50、52を用いることにより、ビート音の発生開始位置検出の邪魔になる中音域を除去している。
【0026】
重み付け合成ノルム生成部54は、一般に振幅レベルが小さい帯域通過フィルタ52の出力信号(高域成分)の重みを大きくして帯域通過フィルタ50の出力信号(低域成分)と合成するとともに正出力を得るなど、2つの帯域通過フィルタ50、52の出力を重み付け合成しながら正出力を得る。具体的には、帯域通過フィルタ50の出力をLPF 、帯域通過フィルタ52の出力をHPFとし、重み付け係数をa、b(a≪b)としたときに、例えばa(LPF)2+b(HPF)2やa|LPF|+b|HPF|などの演算が重み付け合成ノルム生成部54によって行われる。
【0027】
エンベロープ生成部56は、重み付け合成ノルム生成部54から出力される信号の振幅エンベロープを生成する。例えば積分回路を用い、その正出力をスムージング処理することにより、振幅エンベロープが生成される。
【0028】
開始位置検出部58は、エンベロープ生成部56から出力される振幅エンベロープを、予め設定された振幅しきい値と比較し、振幅エンベロープが振幅しきい値を超えた位置より時間的に遡って振幅しきい値が極小となる位置を探索してビート音の発生開始位置として決定する。また、開始位置検出部58は、一度発生開始位置を検出した後は、所定時間の間発生開始位置の検出を休止する。
【0029】
図3は、ビート音検出部20の動作を示す説明図である。図3において、Pはエンベロープ生成部56によって生成された振幅エンベロープを、ATは開始位置検出部58において用いられる振幅しきい値をそれぞれ示している。また、図3の横軸は時間経過(t)を示している。開始位置検出部58は、振幅エンベロープPが振幅しきい値ATを超えた時点T1を検出すると、この時点T1から時間的に遡って振幅しきい値Pが極小となる時点T0を探索し、この時点T0をビート音の発生開始位置として決定する。なお、このようにして発生開始位置T0を検出すると、開始位置検出部58は、振幅エンベロープPが振幅しきい値ATを超えた時点T1から時間Tthが経過するまでは、発生開始位置の検出動作を休止する。これは、1つのビート音のみが存在する場合に誤って複数の発生開始位置検出を行わないようにするためである。
【0030】
本実施形態の音楽再生装置はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。図4は、音楽再生装置に入力される音楽信号とサイン波生成部30によって生成される純音信号を示す図である。図4において、Mは入力される音楽信号を、Sは生成される純音信号を、Tsは純音信号の発生開始タイミングをそれぞれ示している。
【0031】
ビート音検出部20に音楽信号Mが入力されると、ビート音検出部20内のエンベロープ生成部56は、入力された音楽信号に基づいて振幅エンベロープP(図3)を生成し、開始位置検出部58は、振幅エンベロープPが振幅しきい値ATを超えた時点T1から時間的に遡って極小となる時点T0を検出する。図3に示すPKは、振幅エンベロープPが振幅しきい値ATを超えた時点の周辺に存在する振幅エンベロープPのピークを示しており、図4に示すPKは、対応する音楽信号のピークを示している。
【0032】
極性検出部22は、音楽信号のピークPK近傍の極性を検出する。図4に示す例では、音楽信号のピークPK近傍の極性は「負」であり、極性「負」が極性検出部22によって検出される。また、サイン波生成部30は、極性検出部22によって検出された極性「負」に合わせて、第1のサイン波の最初の半波長の極性が負となるように純音信号S(図4)を生成する。
【0033】
遅延部14は、ビート音検出部20によって検出されたビート音の発生開始位置T0(図3)に対応する純音信号の発生タイミングTs(図4)と、実際にサイン波生成部30から出力される純音信号の発生開始時点とが一致するように音楽信号の出力タイミングを調整する。このようにしてタイミング調整がなされた後の音楽信号と純音信号とが合成部40によって合成され、純音信号を合成することによりビート音が強調された音楽信号がスピーカ46から出力される。
【0034】
このように、本実施形態の音楽再生装置では、ビート音成分に同期するように純音信号を音楽信号に重畳しているため、音楽信号自体を増幅する必要はなく、音楽信号を再生する際に違和感なくビート音を強調することができる。また、遅延部14を用いて音楽信号と純音信号の少なくとも一方(図1に示す構成では音楽信号のみ)のタイミングを調整することにより、ビート音成分の発生タイミング検出に要する時間等を考慮した音楽信号と純音信号の合成処理が可能となり、純音信号を重畳するタイミングを容易かつ正確に調整することができる。
【0035】
また、合成部40において音楽信号と純音信号とを合成する際に、音楽信号に含まれるビート音成分の位相(極性)に純音信号の位相(極性)を合わせているため、ビート音を強調する際に逆にビート音が弱くなったり、違和感が生じることを防止することができる。
【0036】
また、純音信号の発生時間(継続時間)は、ビート音検出部22によって検出される発生タイミングの繰り返し周期よりも短くなっている。このように、ビート音の発生タイミングに合わせて純音信号を短時間発生するだけであるため、純音信号発生に必要な構成を簡素化することができる。また、ビート音成分を検出する毎に純音信号を合成するタイミングを決めればよいため、純音信号の合成タイミングの決定が容易となる。
【0037】
また、サイン波生成部30によって生成する純音信号として、第1の波長を有する第1のサイン波と、第1の波長よりも長い第2の波長を有する第2のサイン波を順番に発生して用いるとともに、第2の波長を第1の波長の2倍とすることにより、実際に発生するビート音に含まれる基本周波数成分に近い純音信号を生成することが可能になり、ビート音を強調する際の違和感をなくすことができる。特に、第1および第2のサイン波のそれぞれを1波長分発生することにより、純音信号発生に必要な構成をさらに簡素化することができる。また、2種類の波長のサイン波を切り替える際に信号振幅が連続するよう設定することが容易となる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、ビート音検出部20を用いて低域成分や高域成分として現れる幅広いビート音を検出するようにしたが、検出対象となるビート音の種類を限定するようにしてもよい。例えば、バスドラムなどの打楽器によって生じる低域のビート音を検出対象とする場合が考えられる。この場合には、帯域通過フィルタ52によって抽出される高域成分を考慮する必要がなくなるため、この帯域フィルタ52を省略することができるとともに、重み付け合成ノルム生成部54による演算内容を簡略化することができる。これにより、バスドラム等の打楽器を叩いたときに発生するビート音が含まれる音楽信号に適したビート音の強調を簡単な構成で行うことが可能となる。
【0039】
また、上述した実施形態のサイン波生成部30によって生成する純音信号の波長や振幅は適宜変更したり、利用者の指示に応じて変更可能としてもよい。例えば、波長について、第1の波長と第2の波長の少なくとも一方を変更したり、第2の波長を第1の波長の2倍以外としたり、第1および第2のサイン波のそれぞれの発生時間を1波長分以外としたりする場合が考えられる。また、振幅について、第1および第2のサイン波の少なくとも一方の値を変更する場合が考えられる。さらに、利用者の指示に応じて、第1および第2のサイン波の少なくとも一方の波長や振幅を変更可能とすることにより、ビート音を強調する際の音色を調整することができ、利用者の好みを反映したビート音の強調が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上述したように、本発明によれば、ビート音成分に同期するように純音信号を音楽信号に重畳しているため、音楽信号自体を増幅する必要はなく、音楽信号を再生する際に違和感なくビート音を強調することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 音楽信号入力部
12 イコライザ処理部
14 遅延部
20 ビート音検出部
22 極性検出部
30 サイン波生成部
40 合成部
42 デジタル−アナログ変換器(DAC)
44 アンプ
46 スピーカ
50、52 帯域通過フィルタ
54 重み付け合成ノルム生成部
56 エンベロープ生成部
58 開始位置検出部
図1
図2
図3
図4