(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る負荷予測装置の構成を示すブロック図である。負荷予測装置は、複数機種nの電力負荷機器(n∈{IHクッキングヒータ,食器洗い機,給湯機,リビングコンセント,エアコン,それら以外の機器の合算,・・・})に電力供給を行う配電系統について、任意の配電区間の配電系統の電力負荷を予測することが可能となっている。
【0016】
なお、以下の説明では、複数機種nの電力負荷機器を、簡単に「機種n」と呼ぶこともある。また、任意の同一配電区間から電力供給を受ける電力負荷機器を、「同一配電区間機器」と呼ぶこともある。
【0017】
図1に示す負荷予測装置は、起動確率モデル記憶部1と、機器電力特性モデル記憶部2と、機種別起動台数予測部3と、機種別消費電力予測部4と、負荷合計部5とを備えて構成されている。これら機能ブロックのうち、起動確率モデル記憶部1、及び、機器電力特性モデル記憶部2は、RAMやハードディスクなどから構成され、機種別起動台数予測部3、機種別消費電力予測部4、及び、負荷合計部5は、CPUなどから構成される。次に、負荷予測装置の各機能ブロックについて詳細に説明する。
【0018】
図2は、起動確率モデル記憶部1に記憶されている起動確率モデルの例を示す図である。起動確率モデルは、電力負荷機器の起動確率(稼動割合)を、機種別及び時刻別に示すモデルである。
図2に示す例では、起動確率モデルとして、時刻tのときに機種nが起動(稼動)している確率(割合)(%)を示す確率式である関数f
n(t)が適用されている。関数f
n(t)には、例えばm次式等の近似式が用いられる。
【0019】
なお、起動確率モデルには、
図2に示すような関数(式)に限ったものではなく、例えば、起動確率(稼動割合)と時刻とが対応付けられた表(図示しない)が適用されてもよい。
【0020】
以上のような起動確率モデルにより、IHクッキングヒータや食器洗い機の起動確率のように、生活パターンによって異なる電力負荷機器の起動確率(稼動割合)を、機種別及び時刻別に表現することが可能となる。そして、平日昼間に起動されないことが多い場合には起動確率モデルの昼間の起動確率を下げる、あるいは、料金プラン設定やタイマー付き機器(食器洗い機)の普及が高くなった場合には起動確率モデルの起動確率のピークを夜中にシフトさせる等、機種別及び時刻別の起動確率を適宜変更するシミュレーションを実施することが可能となる。なお、需要家の生活パターンが配電区間毎に異なることを想定して、起動確率モデルを配電区間毎に変更してもよい。
【0021】
図3は、機器電力特性モデル記憶部2に記憶されている機器電力特性モデルの例を示す図である。機器電力特性モデルは、1台の電力負荷機器が起動中(稼動中)に消費する平均消費電力を機種別に示すモデルである。
図3に示す例では、機器電力特性モデルとして、1台の機種nが起動中(稼動中)に消費する消費電力の平均値(例えば算術平均、中央値、最頻値など)を示す表が適用されている。
【0022】
以上のような機器電力特性モデルにより、IHクッキングヒータや食器洗い機などの機種nによって異なる平均消費電力を表現することが可能となる。そして、将来、省エネ機器が開発され、機種nの消費電力量の平均値が変化する場合には、機器電力特性モデルの機種nの平均消費電力を変化させる等、機種別の平均消費電力を適宜変更するミュレーションを実施することが可能となる。
【0023】
機種別起動台数予測部3(
図1)では、起動確率モデル記憶部1に記憶されている起動確率モデル(f
n(t))に、上述した同一配電区間機器の機種別の台数を乗じることにより、同一配電区間機器の機種別及び時刻別の起動台数の期待値g
n(t)を計算する。例えば、機種別起動台数予測部3は、次式(1)により、同一配電区間機器の時刻t及び機種n毎の起動台数の期待値g
n(t)を計算する。
【0025】
なお、機種別起動台数予測部3が計算に用いる同一配電区間機器の機種別の台数は、ユーザにより手入力されてもよい。あるいは、同一配電区間内の需要家数に機種別の普及率を乗じることにより求められてもよい。そして、この場合に、機種別の普及率はアンケートや統計調査等を元にユーザにより手入力されてもよい。
【0026】
本実施の形態では、同一配電区間機器の機種別の台数を変更することで、機種nの普及率が変化した場合のシミュレーションや、機種nの普及台数の異なる任意の配電区間の負荷予測が可能となる。
【0027】
機種別消費電力予測部4(
図1)は、機器電力特性モデル記憶部2に記憶されている機器電力特性モデル(機種nの平均消費電力)に、機種別起動台数予測部3により計算された起動台数の期待値g
n(t)を乗じることにより、同一配電区間機器の機種別及び時刻別の消費電力の期待値h
n(t)を計算する。例えば、機種別消費電力予測部4は、次式(2)により、同一配電区間機器の時刻t及び機種n毎の消費電力の期待値h
n(t)を計算する。
【0029】
図4は、機種別消費電力予測部4により式(2)で計算された機種nの消費電力の期待値h
n(t)の例を示す図である。
図4には、n=ヒーター式給湯器の期待値h
n(t)が示されている。すなわち、
図4には、同一配電区間の配電系統から電力供給を受ける全てのヒーター式給湯器が時刻tにて消費する消費電力の期待値h
n(t)が示されている。
【0030】
負荷合計部5(
図1)は、機種別消費電力予測部4により計算された消費電力の期待値h
n(t)を時刻別に合計する(ここでは全機種について合計する)ことにより、任意の同一配電区間から電力供給を受ける全ての電力負荷機器(全ての同一配電区間機器)の時刻別の消費電力総和E(t)を計算する。例えば、負荷合計部5は、次式(3)により、同一配電区間機器全体の時刻tの消費電力総和E(t)を計算する。
【0032】
図5及び
図6は、負荷合計部5により式(3)で計算された消費電力総和E(t)の例を示す図である。
図6には、
図5に示した消費電力総和E(t)が得られた状態から、機種別起動台数予測部3で機種n(n=IHクッキングヒータ)の普及率を30%増加させたシミュレーションを行った場合と、機器電力特性モデルの機種n(n=ヒーター式給湯器)をそれより消費電力が低い機種n(n=ヒートポンプ式給湯器)に変更してそのリプレース効果の見積もりを行った場合と、起動確率モデルの機種n(n=食器洗い機)の起動確率を22〜24時の時間帯から0〜2時の時間帯に変更して食器洗い機の利用時間シフトのシミュレーションを行った場合とが示されている。
【0033】
以上のような本実施の形態に係る負荷予測装置及び負荷予測方法によれば、起動確率モデルと同一配電区間機器の台数とに基づいて同一配電区間機器の機種別及び時刻別の起動台数の期待値g
n(t)を求め、当該起動台数の期待値g
n(t)と機器電力特性モデルとに基づいて同一配電区間機器の機種別及び時刻別の消費電力の期待値h
n(t)を求める。これにより、任意の配電区間について、電力負荷機器に起因する電力負荷を機種別及び時刻別に予測するので、任意の配電系統の電力負荷を精度良く予測することができる。また、時間帯別電気料金メニューの変更や機器の電力効率改善などに起因して、電力負荷機器の機種別の機器普及率、機器消費電力、及び、機器稼動時間帯が将来変化すると考えられる。このような電力負荷機器の機種別の機器普及率、機器消費電力、及び、機器稼動時間帯の変化に応じて、式(1)の起動台数、機器電力特性モデルの平均消費電力、及び、起動確率モデルの起動確率をそれぞれ変更すれば、電力負荷の将来の変化を精度良く予測することができる。
【0034】
<変形例>
以上で説明した起動確率モデルに適用される関数(式)や表は、ユーザにより手入力されて起動確率モデル記憶部1に記憶されたものであってもよい。
【0035】
あるいは、
図7に示されるように、機種別及び時刻別に計測された稼動電力の計測データを蓄積する電力データベース7と、当該計測データに基づいて関数(式)や表を起動確率モデルとして自動生成する起動確率モデル生成部8とを備える構成としてもよい。そして、起動確率モデル生成部8は、生成した起動確率モデルを起動確率モデル記憶部1に記憶させてもよく、あるいは、当該起動確率モデルを機種別起動台数予測部3に出力してもよい。また、この構成において、例えば、起動確率モデル生成部8が、電力データベース7などから、時間区間Δt(=[ta,tb))における機種nの計測データを抽出し、次式(4)により、時刻tにて起動している機種nの起動確率(すなわちf
n(t)の起動確率)を計算してもよい。
【0037】
ここで、式(4)の分数の分子に示される稼動電力閾値Th(W)には、例えば、機種n毎に異なる稼動時の最低電力(W)などが設定されている。したがって、当該分子に示される計測データ数は、稼働中の機種nの計測データ数に対応している。よって、例えば、計測の対象となる機種nの全数がΔt(=[ta,tb))の間稼動し続けている(すなわちΔtの間、稼動電力が稼動電力閾値Th以上であり続ける)場合には、分子の計測データ数と、分母の計測データ数とが同数となり、時間区間Δt(=[ta,tb))における機種nの起動確率は100(%)となる。
【0038】
なお、計測データが、稼動電力だけでなく、機種nが稼動している稼動状態及び稼動していない非稼動状態を示す情報も含んでいる場合には、起動確率モデル生成部8は、次式(5)により上述のf
n(t)を計算してもよい。
【0040】
また、起動確率モデルと同様に、機器電力特性モデルに適用される表は、ユーザにより手入力されて機器電力特性モデル記憶部2に記憶されたものであってもよい。
【0041】
あるいは、
図7に示されるように、機種別及び時刻別に計測された稼動電力の計測データを蓄積する電力データベース7と、当該計測データに基づいて表を機器電力特性モデルとして自動生成する機器電力特性モデル生成部9とを備え、機器電力特性モデル生成部9で生成された機器電力特性モデルを機器電力特性モデル記憶部2に記憶する構成であってもよい。そして、例えば、機器電力特性モデル生成部9が、電力データベース7などから、起動中(稼働中)の機種nの計測データ(例えば、稼動電力閾値Th(W)以上の計測データ)を抽出し、当該計測データが示す稼動電力の平均値を求めてもよい。
【0042】
<実施の形態2>
図8は、本発明の実施の形態2に係る負荷予測装置の構成を示すブロック図である。以下、本実施の形態に係る負荷予測装置において、実施の形態1で説明した機能ブロックと同一または類似するものについては同じ符号を付し異なる点を中心に説明する。
【0043】
本実施の形態に係る負荷予測装置では、気温Tをパラメータとする第1補正モデルを記憶する第1補正モデル記憶部1aが、実施の形態1に係る負荷予測装置に追加されている。そして、機種別起動台数予測部3は、気温Tをパラメータとする第1補正モデルを用いて補正された起動確率モデルと、同一配電区間機器の台数とに基づいて、同一配電区間機器の起動台数の期待値を計算するように構成されている。
【0044】
図9は、起動確率モデルを補正する第1補正モデルの例を示す図である。この
図9に示す例では、第1補正モデルとして、気温Tをパラメータとした補正関数が適用されている。より具体的には、補正関数の一種として、
図2に示した起動確率モデル(関数f
n(t))を乗算によって補正する補正比率を示す補正関数f
c1n(T)が示されている。
【0045】
本実施の形態では、次式(6)に示すように、
図2に示した起動確率モデル(関数f
n(t))に、
図9に示した補正関数f
c1n(T)を乗算して補正することにより、時刻t、機種n及び気温T毎の起動確率を示す関数f
n(t,T)を取得し、それを起動確率モデルとして用いる。
【0047】
なお、ここでは、第1補正モデルの一例として、乗算によって起動確率モデル(関数f
n(t))を補正する補正関数f
c1n(T)を説明した。しかし、第1補正モデルは、起動確率モデル(関数f
n(t))を補正するのであれば、補正比率を示す補正関数f
c1n(T)に限ったものではない。例えば、第1補正モデルとして、次式(7)に示すように、加算によって起動確率モデル(関数f
n(t))を補正する補正関数f
c2n(T)を適用してもよい。
【0049】
また、以上では、補正関数として、時刻tをパラメータとしない気温Tをパラメータとする関数f
c1n(T),f
c2n(T)を適用する構成について説明した。しかしこれに限ったものではなく、補正関数として、次式(8)及び(9)に示すように、時刻t及び気温Tをパラメータとする関数f
c1n(t,T),f
c2n(t,T)を適用する構成であってもよい。
【0052】
また、以上では、起動確率モデル、及び、第1補正モデルとして、関数(式)が適用された場合について説明したが、これに限ったものではない。例えば、起動確率モデルとして、起動確率と時刻とが対応付けられた表が適用されてもよく、また、第1補正モデルとして、補正値と気温とが対応付けられた表(あるいは補正値と気温と時刻とが対応付けられた表)が適応されてもよい。また、起動確率モデルを起動確率と補正関数とで表してもよいし、起動確率及び補正関数の関数や表を計算・展開してf
n(t,T)の形式で表してもよい。
【0053】
本実施の形態に係る機種別起動台数予測部3は、第1補正モデルにより補正された起動確率モデル(f
n(t,T))と、同一配電区間機器の機種別の台数とに基づいて、上式(1)と同様の次式(10)により、同一配電区間機器の機種n、時刻t及び気温T毎の起動台数の期待値g
n(t,T)を計算する。
【0055】
本実施の形態に係る機種別消費電力予測部4は、機器電力特性モデルと、起動台数の期待値g
n(t,T)とに基づいて、上式(2)と同様の次式(11)により、同一配電区間機器の機種n、時刻t及び気温T毎の消費電力の期待値h
n(t,T)を計算する。
【0057】
本実施の形態に係る負荷合計部5は、上式(3)と同様の次式(12)により、消費電力の期待値h
n(t,T)を時刻別に合計し、任意の同一配電区間から電力供給を受ける全ての電力負荷機器(全ての同一配電区間機器)の時刻別の消費電力総和E(t,T)を計算する。
【0059】
図10は、本実施の形態に係る負荷合計部5で計算された消費電力総和E(t,T)の例を示す図である。なお、消費電力総和E(t,T)の気温Tには、予測したい気温値(気温予測値)T1,T2が代入されている。
図10では、リビングエアコンの起動確率(f
n(t,T))が気温T1,T2に応じて異なることに起因にして、消費電力の期待値h
n(t,T)が異なる、具体的にはh
n(t,T1)が0、h
n(t,T2)が砂地ハッチングに示される0ではない大きさであることが示されている。そして、その結果として、同一配電区間内の消費電力総和E(t,T1),E(t,T2)が異なることが示されている。
【0060】
以上のような本実施の形態に係る負荷予測装置及び負荷予測方法によれば、配電区間、機種及び時刻だけでなく、気温(季節)に応じて起動確率(稼動割合)が変化するので、将来の電力負荷及びその変化をより正確に予測することができる。
【0061】
<変形例>
以上で説明した第1補正モデルに適用される関数や表は、ユーザにより手入力されて第1補正モデル記憶部1aに記憶されたものであってもよい。
【0062】
あるいは、
図11に示されるように、電力データベース7からの計測データに基づいて、関数や表を第1補正モデルとして自動生成する第1補正モデル生成部11を、実施の形態1の変形例で説明した構成(
図7)に追加した構成としてもよい。そして、第1補正モデル生成部11は、生成した第1補正モデルを第1補正モデル記憶部1aに記憶させてもよく、あるいは、当該第1補正モデルを機種別起動台数予測部3に出力してもよい。また、この構成において、例えば、第1補正モデル生成部11が、電力データベース7などから、気温区間ΔT(=[Ta,Tb))における機種nの計測データを抽出し、実施の形態1に記載の方法と同様の方法で、気温Tをパラメータとする、起動確率を示す関数f
n(ΔT)を求める。それとともに、第1補正モデル生成部11が、実施の形態1の変形例に記載の方法と同様の方法で起動確率を示す時刻tをパラメータとする関数f
n(Δt)を求め、次式(13)により、補正関数に適用する関数(ここではf
c2n(t,T))を求めてもよい。
【0064】
<実施の形態3>
図12は、本発明の実施の形態3に係る負荷予測装置の構成を示すブロック図である。以下、本実施の形態に係る負荷予測装置において、実施の形態1で説明した機能ブロックと同一または類似するものについては同じ符号を付し異なる点を中心に説明する。
【0065】
本実施の形態に係る負荷予測装置では、過去に得られた機種別及び時刻別の複数の起動確率を記憶する起動確率記憶部1bが、実施の形態1に係る負荷予測装置に追加されている。そして、機種別起動台数予測部3で用いる起動確率モデルの起動確率を、その所定誤差だけ変更することにより、消費電力総和E(t)の誤差を求めるように構成されている。
【0066】
図13は、起動確率記憶部1bに記憶されている機種nの時刻t1における起動確率に基づく確率分布を示す図である。ここでは、起動確率の確率分布が正規分布である例が示されている。以下、
図13に示す正規分布の平均値が、機種nの時刻t1時点での起動確率f
n(t1)であるものとして説明する。
【0067】
機種別起動台数予測部3は、
図13に示す正規分布などの分布を持つ起動確率について、平均値(f
n(t1))及び標準偏差値σ
nを計算する。そして、例えば2×σ
nを誤差(所定誤差)として見積もって、起動確率モデルの起動確率の平均値(f
n(t1))を、その誤差(2×σ
n)だけ増加方向に変更する。すなわち、本実施の形態では、実施の形態1で説明した起動確率モデルの起動確率f
n(t)の代わりに、(f
n(t)+2×σ
n)を用いる。
【0068】
例えば、機種別起動台数予測部3は、次式(14)により、起動確率f
n(t)に2×σ
n分の誤差が加味された起動台数の期待値g’
n(t)を計算する。
【0070】
機種別消費電力予測部4、及び、負荷合計部5は、起動台数の期待値g’
n(t)について、実施の形態1の起動台数の期待値g
n(t)について行った計算と同様の計算を行う。
【0071】
なお、以上の説明では、起動確率の誤差(所定誤差)は2×σ
nであり、機種n毎に設定されるものの、時刻に関して一定であった。しかし、起動確率の誤差(所定誤差)は、これに限ったものではなく、例えばσ
n(t)のように時刻t及び機種n毎に設定されてもよい。
図14に、起動確率モデルの起動確率の平均値(f
n(t1))を実線で示すとともに、それを誤差(2×σ
n(t))だけ増加方向に変更したものを2点鎖線で示す。
【0072】
また、機種nの起動確率の誤差(所定誤差)は、増加方向の誤差(例えば標準偏差σ
n+)と減少方向の誤差(例えば標準偏差σ
n−)とに分けて設定してもよい。さらに、機種nの起動確率の誤差(所定誤差)は、関数(式)の形式であってもよいし、表の形式であってもよい。また、想定誤差(所定誤差)に適用される関数(式)や表は、ユーザにより手入力されて起動確率記憶部1bに記憶されたものであってもよいし、機種別起動台数予測部3に直接入力されるものであってもよいし、機種別及び時刻別に計測された稼動電力の計測データに基づいて自動生成されるものであってもよい。
【0073】
計測データから自動生成する場合には、実施の形態1の変形例の構成(
図7)で説明した計算方法で起動確率を求め、その計算試行を数回繰り返すことにより起動確率の確率分布を求める。そして、当該確率分布から平均値及び標準偏差値σ
nを求める。計算試行の繰り返し方法としては、起動確率の計算に用いる一定数の計測データを、そのデータサンプルを変えながらデータベースから抽出して起動確率を計算し、かつ当該起動確率のばらつきから標準偏差を計算する方法や、日毎に起動確率を計算し、かつ当該起動確率のばらつきから標準偏差を計算する方法等がある。
【0074】
図15は、本実施の形態に係る負荷合計部5で計算された消費電力総和E(t)の例を示す図である。
図15では、実施の形態1で説明した消費電力総和E(t)が実線、起動確率の誤差に、全ての電力負荷機器の起動確率の標準偏差値σ
nを適用したときの消費電力総和E1(t)が破線、起動確率の誤差に、IHクッキングヒータのみの起動確率の標準偏差値σ
nを適用したときの消費電力総和E2(t)が二点鎖線(ただしその一部はE(t)の実線と重なっている)で示されている。
【0075】
以上のような本実施の形態に係る負荷予測装置及び負荷予測方法によれば、上述の消費電力総和E(t),E1(t),E2(t)等が計算可能となる。したがって、消費電力総和E(t)と、消費電力総和E1(t),E2(t)等との差を計算することにより、起動台数の予測誤差に起因する、負荷予測値の誤差範囲を予測することができる。
【0076】
<実施の形態4>
図16は、本発明の実施の形態4に係る負荷予測装置の構成を示すブロック図である。以下、本実施の形態に係る負荷予測装置において、実施の形態1で説明した機能ブロックと同一または類似するものについては同じ符号を付し異なる点を中心に説明する。
【0077】
本実施の形態に係る負荷予測装置では、気温Tをパラメータとする第2補正モデルを記憶する第2補正モデル記憶部2aが、実施の形態1に係る負荷予測装置に追加されている。そして、機種別消費電力予測部4は、気温Tをパラメータとする第2補正モデルを用いて補正された機器電力特性モデルと、機種別起動台数予測部3により計算された起動台数の期待値とに基づいて、同一配電区間機器の機種別及び時刻別の消費電力の期待値を計算するように構成されている。
【0078】
図17は、第2補正モデルにより補正された機器電力特性モデルの例を示す図である。機種nの平均消費電力は、第2補正モデルの補正により、気温Tをパラメータとした関数P
n(T)となっている。
図17に示すような機器電力特性モデルは、例えば、
図3に示した表の値に、第2補正モデルを示す気温Tの関数を乗算または加算することにより得られる。
【0079】
なお、第2補正モデルにより補正された機器電力特性モデルには、
図17に示すような関数(式)に限ったものではなく、例えば、機種nの1台の平均消費電力と気温Tとが対応付けられた表(図示しない)が適用されてもよい。
【0080】
本実施の形態に係る機種別消費電力予測部4は、第2補正モデルにより補正された機器電力特性モデル(P
n(T))と、起動台数の期待値g
n(t)とに基づいて、上式(2)と同様の次式(15)により、同一配電区間機器の機種n、時刻t及び気温T毎の消費電力の期待値h
n(t,T)を計算する。
【0082】
本実施の形態に係る負荷合計部5は、上式(3)と同様の次式(16)により、消費電力の期待値h
n(t,T)を時刻別に合計し、任意の同一配電区間から電力供給を受ける全ての電力負荷機器(全ての同一配電区間機器)の時刻別の消費電力総和E(t,T)を計算する。
【0084】
図18は、本実施の形態に係る負荷合計部5で計算された消費電力総和E(t,T)の例を示す図である。なお、消費電力総和E(t,T)の気温Tには、予測したい気温値(気温予測値)T1,T3が代入されている。
図18では、給湯器の平均消費電力(P
n(T))が気温T1,T3に応じて異なることに起因して、消費電力の期待値h
n(t,T)が異なる、具体的にはh
n(t,T1)が斜線ハッチングに示される大きさ、h
n(t,T3)が斜線ハッチング及び砂地ハッチングに示される大きさの合計であることが示されている。そして、その結果として、同一配電区間内の消費電力総和E(t,T1),E(t,T3)が異なることが示されている。
【0085】
以上のような本実施の形態に係る負荷予測装置及び負荷予測方法によれば、配電区間、機種及び時刻だけでなく、気温(季節)に応じて平均消費電力が変化するので、将来の電力負荷及びその変化をより正確に予測することができる。
【0086】
<変形例>
以上で説明した第2補正モデルに適用される関数(式)や表は、ユーザにより手入力されて第2補正モデル記憶部2aに記憶されたものであってもよい。
【0087】
あるいは、
図19に示されるように、電力データベース7からの計測データに基づいて関数や表を第2補正モデルとして自動生成する第2補正モデル生成部12を、実施の形態1の変形例で説明した構成(
図7)に追加した構成としてもよい。そして、第2補正モデル生成部12は、生成した第2補正モデルを第2補正モデル記憶部2aに記憶させてもよく、あるいは、当該第2補正モデルを機種別消費電力予測部4に出力してもよい。
【0088】
<実施の形態5>
図20は、本発明の実施の形態5に係る負荷予測装置の構成を示すブロック図である。以下、本実施の形態に係る負荷予測装置において、実施の形態1で説明した機能ブロックと同一または類似するものについては同じ符号を付し異なる点を中心に説明する。
【0089】
本実施の形態に係る負荷予測装置では、過去に得られた機種別の複数の消費電力を記憶する消費電力記憶部2bが、実施の形態1に係る負荷予測装置に追加されている。そして、機種別消費電力予測部4で用いる機器電力特性モデルの平均消費電力を、その所定誤差だけ変更することにより、消費電力総和E(t)の誤差を求めるように構成されている。
【0090】
図21は、消費電力記憶部2bに記憶されている機種nの消費電力に基づく確率分布を示す図である。ここでは、消費電力の確率分布が正規分布である例が示されている。以下、
図21に示す正規分布の平均値が、平均消費電力P
nであるものとして説明する。
【0091】
機種別消費電力予測部4は、
図21に示す正規分布などの分布を持つ消費電力について、平均値(P
n)及び標準偏差値σ
nを計算する。そして、例えばσ
nを誤差(所定誤差)として見積もって、機器電力特性モデルの平均消費電力P
nを、その誤差(σ
n)だけ増加方向に変更する。すなわち、本実施の形態では、実施の形態1で説明した機器電力特性モデルの平均消費電力P
nの代わりに、(P
n+σ
n)を用いる。
【0092】
例えば、機種別消費電力予測部4は、次式(17)により、平均消費電力P
nにσ
n分の誤差が加味された消費電力の期待値h’
n(t)を計算する。
【0094】
負荷合計部5は、消費電力の期待値h’
n(t)について、実施の形態1の消費電力の期待値h
n(t)について行った計算と同様の計算を行う。
【0095】
なお、以上の説明では、消費電力の誤差(所定誤差)はσ
nであり、機種n毎に設定されるものの、気温に関して一定であった。しかし、消費電力の誤差(所定誤差)は、これに限ったものではなく、例えばσ
n(T)のように気温T及び機種n毎に設定されてもよい。
図22に、機器電力特性モデル2の平均消費電力P
nを実線で示すとともに、それを誤差(σ
n(T))だけ増加方向に変更したものを破線で示す。
【0096】
また、機種nの消費電力P
nの誤差(所定誤差)は、増加方向の誤差(例えば標準偏差σ
n+)と減少方向の誤差(例えば標準偏差σ
n−)とに分けて設定してもよい。さらに、機種nの消費電力P
nの誤差(所定誤差)は、関数(式)の形式であってもよいし、表の形式であってもよい。また、想定誤差(所定誤差)に適用される関数(式)や表は、ユーザにより手入力されて消費電力記憶部2bに記憶されたものであってもよいし、機種別消費電力予測部4に直接入力されるものであってもよいし、実施の形態1の変形例の構成(
図7)と同様に機種別及び気温別に計測された稼動電力の計測データに基づいて自動生成されるものであってもよい。また、誤差分はσ
nに限らず、機器電力特性モデルでの機種毎の標準偏差を用いて計算してもよい。
【0097】
図23は、本実施の形態に係る負荷合計部5で計算された消費電力総和E(t)の例を示す図である。
図23では、実施の形態1で説明した消費電力総和E(t)が実線、消費電力の誤差に、全ての電力負荷機器の消費電力の標準偏差値σ
nを適用したときの消費電力総和E1(t)が破線、消費電力の誤差に、IHクッキングヒータのみの消費電力の標準偏差値σ
nを適用したときの消費電力総和E2(t)が二点鎖線(ただしその一部はE(t)の実線と重なっている)で示されている。
【0098】
以上のような本実施の形態に係る負荷予測装置及び負荷予測方法によれば、上述の消費電力総和E(t),E1(t),E2(t)等が計算可能となる。したがって、消費電力総和E(t)と、消費電力総和E1(t),E2(t)等との差を計算することにより、平均消費電力の予測誤差に起因する、負荷予測値の誤差範囲を予測することができる。
【0099】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。