【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明に係る熱源装置の施工方法は、
熱を発生して冷却水を加熱する熱発生部と、熱を放出して冷却水を冷却する熱放出部と、前記熱発生部と前記熱放出部との間で冷却水を循環させる冷却水循環流路と、前記冷却水循環流路に配置され冷却水を大気開放状態で内部に一時的に貯留する膨張タンクとを備えた熱源装置を、所定の設置場所へ設置する施工方法であって、その特徴構成は、
前記熱源装置を前記設置場所に移送する前に、前記冷却水循環流路における冷却水の状態を、冷却水に含まれる添加剤の濃度が標準濃度よりも高く且つ液面レベルが標準液面レベルよりも低い高濃度低液面レベル状態とし、
前記熱源装置を前記設置場所に移送した後に、前記冷却水循環流路に上水を加えて、前記冷却水循環流路における冷却水の状態を、前記添加剤の濃度が前記標準濃度となり且つ液面レベルが前記標準液面レベルとなる標準状態とする点にある。
尚、標準液面レベル及び標準濃度とは、通常の状態で熱源装置が使用される際の冷却水の液面レベル及び濃度である。
【0008】
上記熱源装置の施工方法の特徴構成によれば、膨張タンク内の冷却水の液面レベルを標準液面レベルよりも低い高濃度低液面レベル状態として、熱源装置を移送することができるので、熱源装置の移送時において、熱源装置の振動に伴って膨張タンク内の冷却水が波打つ状態となる場合でも、大気開放状態にある膨張タンクの大気開放部から冷却水が零れ落ちることを防止することができる。
また、移送後において、移送前において高濃度低液面レベル状態に調整されている冷却水に対して上水を加えるだけで、冷却水の添加剤の濃度が標準濃度となり且つ冷却水の液面レベルが標準液面レベルとなる標準状態として、容易且つ迅速に冷却水を通常使用する状態とすることができる。
【0009】
また、この目的を達成するための本発明に係る熱源装置は、
熱を発生して冷却水を加熱する熱発生部と、熱を放出して冷却水を冷却する熱放出部と、前記熱発生部と前記熱放出部との間で冷却水を循環させる冷却水循環流路と、前記冷却水循環流路に配置され冷却水を大気開放状態で内部に一時的に貯留する膨張タンクとを備え、
本発明に係る施工方法で所定の設置場所へ設置される熱源装置であって、その第1特徴構成は、
前記膨張タンク内の冷却水の液面レベルを検出する液面レベル検出手段と、当該膨張タンク内に上水を断続供給して前記液面レベル検出手段で検出される液面レベルを標準液面レベルに維持する給水手段とを備え、
前記給水手段は、前記熱源装置を前記設置場所に移送した後に、前記高濃度低液面レベル状態にある冷却水に上水を供給して、前記冷却水循環流路における冷却水の状態を、前記標準状態とする点にある。
【0010】
また、この目的を達成するための本発明に係る貯湯システムの特徴構成は、
本発明に係る熱源装置を備えると共に、前記熱源装置の熱放出部が、前記加熱した冷却水との熱交換により被加熱流体を加熱する排熱熱交換器で構成され、
前記排熱熱交換器で加熱された前記被加熱流体を貯留する貯湯タンクを備えた点にある。
【0011】
上記熱源装置の第1特徴構成及び貯湯システムの特徴構成によれば、上述したような本発明の熱源装置の施工方法を好適に実施することができる。
つまり、膨張タンク内の冷却水の液面レベルを標準液面レベルよりも低い高濃度低液面レベル状態として、熱源装置を移送することができるので、移送時において、大気開放状態にある膨張タンクの大気開放部から冷却水が零れ落ちることを防止することができる。また、移送後においては、高濃度低液面レベル状態に調整されている冷却水に対して上水を加えるだけで、冷却水を標準状態にすることができる。
【0012】
本発明に係る熱源装置の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記熱源装置を前記設置場所に移送した後に、前記給水手段による上水の供給に先立って、前記冷却水循環流路に設けられた冷却水循環ポンプを一時的に作動させて、前記冷却水循環路に冷却水を循環させる一時循環処理を実行する点にある。
【0013】
上記熱源装置の第2特徴構成によれば、熱源装置を移送した後に、給水手段による上水の供給に先立って、冷却水循環ポンプを一時的に作動させるので、熱源装置の移送時において、冷却水循環流路等に空気が混入した場合でも、その混入した空気を大気開放状態にある膨張タンクから大気中に放出することができる。これにより、空気の混入のない高濃度低液面レベル状態にある冷却水に対して標準液面レベルまで上水を供給して、冷却水を正確に標準状態とすることができる。
【0014】
本発明に係る熱源装置の第3特徴構成は、上記第1乃至第2特徴構成の何れかに加えて、
前記熱源装置を前記設置場所に移送する前に、前記給水手段の作動を禁止した状態で、前記液面レベル検出手段で検出した液面レベルを判定基準液面レベルとして記録する判定基準液面レベル記録処理を実行し、
前記熱源装置を前記設置場所に移送した後に、前記液面レベル検出手段で検出した液面レベルが前記判定基準液面レベルと一致した場合に、前記給水手段の作動を許可する液面レベル判定処理を実行する運転制御手段を備えた点にある。
【0015】
上記熱源装置の第3特徴構成によれば、熱源装置を設置場所に移送する前に、冷却水循環流路における冷却水の状態を、添加剤の濃度が標準濃度よりも高く且つ液面レベルが標準液面レベルよりも低い高濃度低液面レベル状態として、運転制御手段が判定基準液面レベル記録処理を実行するので、給水手段の作動が禁止された状態で、液面レベル検出手段で検出した液面レベルが判定基準液面レベルとして記録される。
次に、熱源装置を設置場所に移送した後に、運転制御手段が、液面レベル判定処理を実行し、そのときに検出した液面レベルが、移送前に記録した判定基準液面レベルと一致した場合には、移送時に膨張タンクから冷却水が零れ落ちなかったと判断する。この場合、給水手段の作動が許可されて、冷却水が標準状態となるまで上水が加えられるので、容易且つ迅速に冷却水を通常使用する状態とすることができる。
一方、移送した後に検出した液面レベルが、移送前に記録した判定基準液面レベルと一致しなかった場合には、移送時に膨張タンクから冷却水が零れ落ちたと判断して、冷却水に上水を加えることなく、例えばエラー表示等を行って、添加剤の補充等の措置を促すことができる。
【0016】
本発明に係る熱源装置の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、
前記運転制御手段が、前記熱源装置を前記設置場所に移送した後に、前記液面レベル判定処理に先立って、前記冷却水循環流路に設けられた冷却水循環ポンプを一時的に作動させて、前記冷却水循環流路に冷却水を循環させる一時循環処理を実行する点にある。
【0017】
上記熱源装置の第4特徴構成によれば、熱源装置を移送した後に、液面レベル判定処理に先立って、冷却水循環ポンプを一時的に作動させて冷却水を循環させるので、熱源装置の移送時において、冷却水循環流路等に空気が混入した場合でも、その混入した空気を大気開放状態にある膨張タンクから大気中に放出して、冷却水の液面レベルを正確に検出できる状態とすることができる。
よって、液面レベル判定処理において、移送後の液面レベルが判定基準液面レベルと一致するかどうかを正確に判断することができる。
【0018】
本発明に係る熱源装置の第5特徴構成は、上記第1乃至第4特徴構成の何れかに加えて、
前記膨張タンクの側面の前記標準液面レベルよりも上方に、冷却水を外部へ排出するオーバーフロー用排出口を備え、
前記膨張タンクの内部に前記オーバーフロー用排出口の下縁部側から前記膨張タンクの内側へ向かって延びる仕切板が設けられた点にある。
【0019】
上記熱源装置の第5特徴構成によれば、オーバーフロー用排出口の下縁部側から前記膨張タンクの内側へ向かって延びる仕切板が設けられているので、熱源装置の移設時に、熱源装置の振動に伴い膨張タンク内の冷却水が波打った場合でも、波打った冷却水がオーバーフロー用排出口に流入することを仕切板が阻止するので、オーバーフロー用排出口から冷却水が膨張タンクの外部へ零れ落ちることを防止することができる。
【0020】
本発明に係る熱源装置の第6特徴構成は、上記第5特徴構成に加えて、
前記仕切板は、前記膨張タンクの内側に位置する先端部が、前記膨張タンクの側面側に位置する基端部よりも下方に位置するように傾斜されている点にある。
【0021】
上記熱源装置の第6特徴構成によれば、仕切板は、膨張タンクの内側に位置する先端部が、膨張タンクの側面側に位置する基端部よりも下方に位置するように傾斜されて設けられるので、例えば、移動中に波打って仕切板の上面側に付着した水滴や、膨張タンクの天井面から仕切板の上面側に滴下した水滴を、仕切板の先端部側に流動させて、膨張タンク内に戻すことができ、オーバーフロー用排出口から膨張タンクの外部へ冷却水が零れ落ちることを一層防止することができる。