特許第5921495号(P5921495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921495
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】水力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 7/00 20060101AFI20160510BHJP
   F03B 11/00 20060101ALI20160510BHJP
   F03B 11/08 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   F03B7/00
   F03B11/00 A
   F03B11/08
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-135701(P2013-135701)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-10524(P2015-10524A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150291
【氏名又は名称】株式会社中山鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】相森 冨男
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 美信
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−213342(JP,A)
【文献】 特開昭62−206273(JP,A)
【文献】 特開平09−203390(JP,A)
【文献】 実開昭61−027993(JP,U)
【文献】 特開2007−177797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 7/00
F03B 11/00
F03B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングを貫通して設けられた流路部を通る水の流れの力で羽根車を回転させ、羽根車から発電機に駆動力を伝えて発電を行う水力発電装置において、
前記ケーシング、及び当該ケーシング内側の流路部に回転中心軸を水の流れ方向と略直角となる向きとして配設される前記羽根車を少なくとも有して、所定の水路内における水路底部近傍に配設される水車部と、
前記発電機、及び当該発電機が取り付けられる支持部材を少なくとも有する、発電部と、
前記水車部のケーシングと発電部の支持部材とにそれぞれ連結されて配設され、前記水車部から上方に離れた所定箇所に発電部を位置させる中間連結体と、
前記水車部と発電部との間に回転可能に支持されて配設され、水車部の羽根車から発電部の発電機に駆動力を伝達する中間伝達軸と、
前記水路における前記水車部の流路部流入口位置での横断面の、少なくとも水車部と発電部との間の所定高さ位置より下側の領域で、且つ流路部流入口の範囲を除いた領域を、水路のより上流側部分に対し水密状態で閉塞する遮水壁部と
前記水車部と発電部との間の前記中間伝達軸を取り囲んで、当該中間伝達軸のある内側中空部分への水以外の異物の進入を阻止可能な、中空の軸カバー部とを備え、
前記水路が、水路幅に対する水路深さが大きく設定され、且つ水量の変化が大きく水路内水位の変化も大きい開水路であり、
前記中間連結体が、前記水路の最大流量における水位より上側に前記発電部の発電機を位置させられる上下方向の大きさを有する部材で形成され
前記遮水壁部が、前記水車部の流路部流入口の直上位置で、且つ前記水車部と発電部との間における所定高さ位置に、水が通過可能な開口部を設けられ、
前記軸カバー部が、周囲に空間を配置されて、前記遮水壁部と離隔させて配設され、
水路における水位が前記遮水壁部の開口部に達すると、開口部から水が溢流し、溢流した水は前記水車部と発電部の間で且つ軸カバー部の周囲の空間部分を通じて下流側に達することを
特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の水力発電装置において、
前記中間連結体が、中空の略柱状に形成されて前記水車部と発電部との間に配設され、前記軸カバー部を兼ねることを
特徴とする水力発電装置。
【請求項3】
前記請求項に記載の水力発電装置において、
前記遮水壁部が、少なくとも一部を前記発電部の支持部材に連結されて発電部を支持すると共に、下部を前記水車部のケーシングに連結されて、前記中間連結体を兼ねることを
特徴とする水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小規模の水路内に設けられて、流れる水により回転する羽根車で発電機を駆動する水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電は、これまで、ダムによる貯水等で得られる大量の水の落差を利用して発電を行う大規模のものが主流であった。しかしながら、従来、水力発電の適用対象外とされてきた、流れる水量の少ない小規模の河川や水路においても、近年、再生可能エネルギーへの注目の高まりを受け、こうした小規模の河川や水路に対応した、小型の水車を用いた水力発電装置が設置、活用されるようになっている。
【0003】
こうした小型の水力発電装置としては、水車、すなわち羽根車の中心に位置する羽根車軸を垂直に支持し、流れる水の中に羽根車を位置させる一方、発電機や、羽根車軸から発電機まで駆動力を伝達する機構は、保守性等を考慮して水上に配設する、立軸形の構造を採用したものが増えている。このような水力発電装置の例として、特開2007−177797号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−177797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の水力発電装置は前記特許文献に例示される構成を有しており、このような小型の水力発電装置の使用に際しては、これを設置される水路が降水量の季節変化などに起因する水量の自然変動を生じるものである場合、発電出力に対するこうした水量の自然変動の影響を緩和するため、水路における水力発電装置の周囲を堰き止め、水路の水が原則として水力発電装置の内部水路を一旦通過するようにして、水力発電装置の前後に水位差を生じさせ、羽根車に達する水量を安定化すると共に、水力発電装置で水の落差分のエネルギーも用いるようにするのが一般的である。
【0006】
水量の自然変動のある水路では、水路を流れて水力発電装置及びその周囲の堰き止め部に達する水量が、水力発電装置を通過可能な水量より増えることもあり得るため、水力発電装置より上流側の水位が過剰に高くなってあふれ出し、発電装置やその周囲に悪影響を与えないよう、水路の余分な水は発電装置周囲の堰き止め部における所定箇所で下流側へ溢流させるのが一般的である。こうした堰き止め部の溢流箇所については、従来の小型の水力発電装置の場合、発電機に水がかからないように発電機との位置関係を適切に設定する必要がある。
【0007】
ここで、前記特許文献に示されるような小型の水力発電装置を、自然変動による水量の変化が大きい水路に適用することを考えると、従来同様に発電装置の設置位置を水路の底近くの低い位置とした場合、水路の大きさに比べて発電装置が小さいと、発電機に影響を与えない程度に低い溢流箇所から水が下流側に溢流しやすいことで、水路の水量が多い時でも装置前面側の水位が高くならず、水路における水の落差を発電において有効活用できないという問題がある。またこの場合、水路の水量が多い時には溢流する水量も多くなるため、堰き止め部より下流側の水位が上昇して、発電機が水に浸かる危険性も生じる。
【0008】
この他、水路の水量が多くなった時に対応させて、小型の水力発電装置の設置位置を、水量が多くなり水路内の水位が高くなった場合でも発電機が水に浸かることのない程度に、水路の底から離れた高所とすることもできる。しかしながら、発電装置を高い位置に設置すると、装置前面側の水面位置と羽根車の位置が近くなるため、水路を堰き止めて生じさせた高い水位が、羽根車位置までの水の落差を大きくすることにつながらず、高水位を発電に有効利用できないことに加え、仮に水量の変動で水路の水位が極端に低くなった際には、装置設置位置を高くしたことで、発電装置の内部水路入口より水位が下となることも起こり得、発電装置の羽根車に水を導入できず、発電を行えない事態に陥る危険性がある。
【0009】
これらを考慮すると、発電装置は水路の変化する水量のうち最大量に合わせた大きさとして用いるのが望ましく、水路での最大の水量時の水位に合わせて、水力発電装置を大型化すれば、水位の変化にも問題なく対応でき、水量が多い時に水を無駄なく発電に利用できると共に、発電機に水が接触することも防止できることとなる。しかしながら、前記特許文献に示されるような小型の水力発電装置をその構造はそのままに単純に大型化する場合、コストのかかる主要部品である羽根車や発電機もそのまま大型化することになるため、装置全体のコストが著しく上昇してしまうという課題を有していた。また、水路の水量が少なくなった際には、水が大型化した羽根車を十分に駆動させられず、発電装置が小型の場合と比べて発電効率の低下が避けられないという課題を有していた。
【0010】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、水量の変化が大きく最大水量時の水位が高くなる水路に対し、羽根車及び発電機を適切に配置して、羽根車と発電機双方の大型化を避けつつ、水路の水量変化に関わりなく効率よく発電を行え、且つ、発電機と水との接触も防止できる水力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る水力発電装置は、ケーシングを貫通して設けられた流路部を通る水の流れの力で羽根車を回転させ、羽根車から発電機に駆動力を伝えて発電を行う水力発電装置において、前記ケーシング、及び当該ケーシング内側の流路部に回転中心軸を水の流れ方向と略直角となる向きとして配設される前記羽根車を少なくとも有して、所定の水路内における水路底部近傍に配設される水車部と、前記発電機、及び当該発電機が取り付けられる支持部材を少なくとも有する、発電部と、前記水車部のケーシングと発電部の支持部材とにそれぞれ連結されて配設され、前記水車部から上方に離れた所定箇所に発電部を位置させる中間連結体と、前記水車部と発電部との間に回転可能に支持されて配設され、水車部の羽根車から発電部の発電機に駆動力を伝達する中間伝達軸と、前記水路における前記水車部の流路部流入口位置での横断面の、少なくとも水車部と発電部との間の所定高さ位置より下側の領域で、且つ流路部流入口の範囲を除いた領域を、水路のより上流側部分に対し水密状態で閉塞する遮水壁部と、前記水車部と発電部との間の前記中間伝達軸を取り囲んで、当該中間伝達軸のある内側中空部分への水以外の異物の進入を阻止可能な、中空の軸カバー部とを備え、前記水路が、水路幅に対する水路深さが大きく設定され、且つ水量の変化が大きく水路内水位の変化も大きい開水路であり、前記中間連結体が、前記水路の最大流量における水位より上側に前記発電部の発電機を位置させられる上下方向の大きさを有する部材で形成され、前記遮水壁部が、前記水車部の流路部流入口の直上位置で、且つ前記水車部と発電部との間における所定高さ位置に、水が通過可能な開口部を設けられ、前記軸カバー部が、周囲に空間を配置されて、前記遮水壁部と離隔させて配設され、水路における水位が前記遮水壁部の開口部に達すると、開口部から水が溢流し、溢流した水は前記水車部と発電部の間で且つ軸カバー部の周囲の空間部分を通じて下流側に達するものである。
【0012】
このように本発明によれば、羽根車を有する水車部と発電機を有する発電部とにそれぞれ連結する中間連結体を設けると共に、水車部の流路部流入口周囲に遮水壁部を設けて水路を一部閉塞し、水路の底部に近い位置に配置した水車部では水路の水量によらず水を羽根車に十分に到達可能とする一方、水路の最大流量時の水位より高い位置に発電機を配置して、発電機に水がかかりにくい状態とすることにより、水路を流れる水量が十分多く流路部流入口位置における水位が高くなった場合に、発電機に水が達しない状態を維持しつつ、大量の水とその十分な落差で羽根車を効率よく回転させられる。逆に、水路を流れる水量が少なく、装置上流側における水位が低くなった場合でも、水路の底部に近い位置の羽根車に問題なく水が到達して、羽根車を回転させられ、水位変化に関わりなく水で羽根車を適切に回転させて発電を有効に行える。
【0013】
また、中間連結体が水車部と発電部とを離隔状態で一体に連結すると共に、中間伝達軸を介して羽根車から発電機に駆動力を伝えるようにすることで、中間連結体と中間伝達軸の大きさを適宜変化させれば、仮に水車部や発電部の大きさが一定でも様々な水路に対応可能な発電装置を製造でき、発電装置の製造に用いる水車部と発電部の種類を減らして汎用性を高められ、さらに水車部や発電部を少品種の大量生産により低コスト化可能なものにすれば、発電装置のコストを大幅に抑制できる。
【0015】
加えて、水車部と発電部との間に中間伝達軸を覆う中空のカバー部を設け、中間伝達軸を外部から隔てることにより、水車部と発電部との間に溢流した水が通る場合に、水の中に異物があったとしても、カバー部がこれら水中の異物と中間伝達軸との衝突を防いで中間伝達軸の回転に支障を与えないようにすることができ、中間伝達軸で発電機に安定して回転を伝えられ、発電を問題なく行える。また、カバー部で中間伝達軸に異物を接触させないことから、水に異物が含まれていても問題なく、遮水壁部の溢流部分に異物防止用のスクリーン等を別途設ける必要もなく、スクリーン等への異物の集積が生じたりせず、メンテナンスの機会を減らせると共に、溢流部分への水のスムーズな流れを確保でき、水路の水位を適切な状態に維持して、安定した発電を行える。
【0016】
また、本発明に係る水力発電装置は必要に応じて、前記中間連結体が、中空の略柱状に形成されて前記水車部と発電部との間に配設され、前記軸カバー部を兼ねるものである。
【0017】
このように本発明によれば、中間連結体が中間伝達軸を覆う中空略柱状体とされて軸カバー部を兼ね、中間連結体が水車部と発電部との連結を維持しつつ中間伝達軸を外部から隔てることにより、水車部と発電部との間に溢流した水が通る場合に、中間連結体が水中の異物と中間伝達軸との衝突を防ぐことができ、発電部を適切に支持すると共に中間伝達軸の回転に支障を与えない構造が、中間連結体を用いて簡略に実現することとなり、発電装置全体のコストを抑えられる。
【0018】
また、本発明に係る水力発電装置は必要に応じて、前記遮水壁部が、少なくとも一部を前記発電部の支持部材に連結されて発電部を支持すると共に、下部を前記水車部のケーシングに連結されて、前記中間連結体を兼ねるものである。
【0019】
このように本発明によれば、遮水壁部が水車部と発電部との連結を維持して中間連結体を兼ね、遮水壁部で発電部を水車部から十分離隔した適切な位置に支持することにより、水車部と発電部の位置をそれぞれ保持して発電機に水がかからないようにする構造が、遮水壁部を用いて簡略に得られることとなり、発電装置全体のコストを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る水力発電装置の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る水力発電装置の背面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る水力発電装置の右側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る水力発電装置における要部の断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る水力発電装置における通常水量時の水通過状態説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る水力発電装置における水量増加時の水通過状態説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る水力発電装置における流量調整状態の正面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る水力発電装置の概略斜視図である。
図9】本発明の別の実施形態に係る水力発電装置の概略斜視図である。
図10】本発明のさらに別の実施形態に係る水力発電装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る水力発電装置を前記図1ないし図7に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る水力発電装置1は、ケーシング11及び羽根車12を有して、水路90内に配設される水車部10と、発電機21及びこの発電機の支持部材22を有する発電部20と、水車部10と発電部20とにそれぞれ連結されて配設される中間連結体30と、水車部10と発電部20との間に回転可能に支持されて配設される中間伝達軸40と、水車部10の流路部流入口位置での水路90横断面における所定領域を水路のより上流側部分に対し水密状態で閉塞する遮水壁部50とを備える構成である。この水力発電装置1は、ケーシング11の流路部13を通る水の流れの力で羽根車12を回転させ、羽根車12から発電機21に駆動力を伝えて発電を行うものである。
【0022】
本実施形態の水力発電装置1が設けられる水路90は、水路幅に対する水路深さが比較的大きく設定された水路で、且つ、水量の自然変動が大きく、水路内水位の変化も大きくなる水路であり、例えば、河川の堰等において魚道に付随する呼び水水路(魚道の流量が少ない場合、水の流れてくる方向に進もうとする性質のある魚を魚道に誘導するため、魚道脇に設けられて呼び水となる所定水量の水が流れる、魚道とは別の水路)などの水路が挙げられる。
【0023】
前記水車部10は、内側の流路部13を取り囲む略箱状体として形成されるケーシング11と、このケーシング11内側の流路部13に回転中心軸を水の流れ方向と略直角となる向きとして配設されるクロスフロー型の羽根車12とを有して、水路90内における底部近くに、ケーシング11が一部又は全部水中に没した状態で配設される構成である。
【0024】
この水車部10は、ケーシング11内の羽根車12の回転中心軸が垂直向きとなっている立軸形であり、水の流れ方向に対し直交する横方向に羽根車12を二つ並べた構造を有する。この水車部10の水路90内への設置状態において、ケーシング11を前後に貫通する流路部13に水が流れることで、二つ並んだ羽根車12が水流を受けてそれぞれ回転する。
【0025】
水は、ケーシング11の流路部13における前面側の開口(流入口13a)から流入して、二つの羽根車12をそれぞれ回転させた後、ケーシング11の後面側の開口(流出口13b)から出ていくこととなる。
【0026】
ケーシング11の流路部13における流入口近傍には、開口端からケーシング内側へ向かって徐々に流路を狭めて水の流速を増大させつつ、水を流路部13中央に案内する縮小流路を生じさせる、上側案内板17、下側案内板18、及び左右の横案内板19がそれぞれ流路部13の上下左右の所定範囲に設けられる。これら各案内板が、横に並んだ二つの羽根車12に対し、水の流れ方向のより上流側に位置する配置となって、一種のガイドベーンの役割を果している。
【0027】
前記羽根車12は、細長い板状の羽根をその長手方向が回転中心軸方向と平行になるようにして中心軸周りに多数配設されるクロスフロー型とされ、ケーシング11内側の流路部13に、その回転中心軸を水の流れ方向と略直角となる垂直向きとして配設される構成である。
【0028】
そして、この羽根車12の回転中心となる位置を貫通するようにして、羽根車軸15が羽根車12と一体に固定配設され、この羽根車軸15が軸受を介してケーシング11に支持されることで、羽根車12はケーシング11内側の流路部13で回転可能とされる仕組みである。そして、羽根車軸15は、水車部10と発電部20との間の中間連結体30内で、中間伝達軸40と連結されており、羽根車12と羽根車軸15、並びに中間伝達軸40が一体に回転することとなる。
また、羽根車12の外側近傍には、湾曲面を有する略板状体で形成される流量調整部16が、羽根車12の回転中心軸と同じ軸を中心として傾動可能に配設される。
【0029】
前記流量調整部16は、羽根車12の回転作動する範囲の最外周部をなす仮想略円筒面に沿う湾曲面を有する略板状体で形成される構成である。この流量調整部16は、外部から回転力を伝達されて傾動することにより、横案内板19に覆われる流路部13前面側の外方寄り位置から、羽根車12の流路部13中央に位置する部位までの範囲で移動し、流路部13における最小断面積部分の開口幅を定義し、流路部13を通過する水の流量及び水の羽根車12内への流れ込み具合を調整できる仕組みである。
【0030】
例えば、水路90における水の流量が少ない場合、流量調整部16を流路部中央、すなわち内方に傾動させ、流量調整部16により流路部13を閉じる範囲を大きくして、流量調整部16のある流路部13における最小断面積部分の開口幅を狭くすることで、流路部13を通過する単位時間あたりの流量を制限して、水路90の発電装置前面位置での水位を過度に下げないようにすることができる。
【0031】
前記発電部20は、発電機21と、この発電機21が取り付けられる略台状の支持部材22とを有し、中間連結体30に支持されて水車部10から上方に離れた所定箇所に配設される構成である。この発電部20では、水車部10の各羽根車12でそれぞれ駆動される発電機21が横に二つ並べて設けられる。
【0032】
羽根車12を回転させた駆動力は、羽根車12と一体に回転する中間伝達軸40を介して発電部20側に伝えられ、発電機21には、中間伝達軸40から直接、あるいは、ベルト等の伝動手段や減速又は増速機構を介して伝達される。この駆動力で各発電機21を作動させ、発電を行う仕組みである。
【0033】
水路90における水位が上昇して、溢流した水が水車部10の流路部13以外の空間部分にも流れるような状況においても、この発電部20の発電機21は、水路90にあらかじめ設定されている最大水位より上方となる位置に中間連結体30で支持されて配設されていることで、水路90内の水との接触が起こりにくい状態となっている。
【0034】
前記中間連結体30は、中空の略柱状体として形成され、水車部10のケーシング11と発電部20の支持部材22とにそれぞれ連結されて、水車部10と発電部20との間に介在する配置として配設され、水車部10から上方に離れた所定箇所に発電部20を位置させる構成である。そして、この中間連結体30は、その上下方向の大きさにより、水路90の最大流量における水位より上側に発電部20の発電機21を位置させることとなる。
【0035】
また、中間連結体30は、水車部10と発電部20との間で、これら水車部10と発電部20との離隔状態を維持しつつこれらを一体化する一方、水車部10と発電部20との間の中間伝達軸40を中間連結体30の中空部分に位置させるように配設されて、一種の軸カバー部として中間伝達軸40を取り囲み、この中間伝達軸40のある中空部分への水以外の異物の進入を阻止可能とされる。
【0036】
前記遮水壁部50は、略板状体として形成されて、水車部10の流路部13流入口位置で、下部を水車部10のケーシング11に取り付けられると共に上部を発電部20の支持部材22に取り付けられて、水路90における水の流れ方向と直交して水路90を横断する向きで、水路90内に配設される構成である。
【0037】
遮水壁部50の、中間連結体30の前面側(水の流れ方向の上流側)となる水路横断方向中央部で、且つ水車部10と発電部20との間における所定高さ位置には、水が通過可能な開口部51が設けられ、また、水車部10における流路部13の流入口13aと重なる範囲も開口部分とされる構成である。こうして、遮水壁部50は、開口部51並びに流路部13の流入口13aの範囲を除いた水路90の底部寄り所定領域を、水路90のより上流側部分に対し水密状態で閉塞する。そして、水力発電装置1における水車部10と発電部20との間の、中間連結体30のある領域の前面側は、上部の開口部51を除いて遮水壁部50で覆われることとなる。
【0038】
水路90における水位が開口部51より下であれば、流路部13以外における水路下流側への水の通過を遮水壁部50で規制できる仕組みであり、例えば、水路90における水の流量が季節変化で少なくなる場合でも、水路における水力発電装置の前面位置と後面位置に所定の水位差を生じさせられ、水車部10における流路部13に適量の水が流れ、羽根車を回転させられることとなる。一方、水路90における水位が開口部51に達すると、開口部51から水が溢流して上流側の水位が維持される仕組みである。
【0039】
遮水壁部50の開口部51は、水車部10と発電部20間の、中間連結体30を除いた空間部分に連通しており、水路90の水が開口部51から溢流する場合、開口部51の下縁部を越えた水は、左右の中間連結体30の各周囲を通って発電装置下流側に達する。
【0040】
なお、遮水壁部50においては、開口部51が水車部10と発電部20との間の高さ範囲に設けられていれば、開口部51の上方を含む遮水壁部上縁部が水車部10と発電部20との間の範囲より高い、すなわち、発電部20以上の高さに位置していてもかまわない。
【0041】
この他、遮水壁部50の水を溢流させる箇所としては、開口部を設けない代わりに、遮水壁部50上縁部のいずれかの部位を、水車部10と発電部20との間の高さ範囲に位置させるようにしてもよく、水路90の大きさに伴い遮水壁部50が水路横断方向に発電部20を上回る大きさを有するものであれば、溢流させる箇所は発電部20の下側から外れた側方の部位としてもかまわない。遮水壁部上縁部のうち水を溢流させる箇所として形成された部位以外の各部は、より高くしてもよく、発電部20以上の高さに位置させることもできる。
【0042】
本実施形態の水力発電装置では、中間連結体30を設けることで装置設計の自由度が増すこととなる。すなわち、水路90の水量や水位変化の大きさに合わせて、全体形状が大型の発電装置を適用しようとする場合に、単純に水車部や発電部を含む全体構造を一様に大型化したものを用いるのではなく、水車部10は多種の装置間で共通化して種類を減らした中から、最適なものを選択するようにし、また、発電部20の発電機21は水量(落差)と羽根車12との関係で導かれる予想出力に見合った汎用の製品を用いるようにする。そして、水路の水量と生じ得る水位に合わせて中間連結体30を水車部10と発電部20間に介在させるようにすることで、全体として異なる大きさの発電装置が得られ、水路に応じて適切な発電が行える状態と発電機21を水から離隔した状態を確保できる。多種多様な発電装置を提供するにあたり、共通した水車部を採用することで、水車部の少品種大量生産が可能となり、水車部のコストを抑制できる。さらに、発電機を汎用製品とすれば、選択の自由度が高く、条件に応じたものを適宜選択できるだけでなく、導入コストも抑えられる。こうして、装置全体として、水路等の状況に合わせて製作するのを、単純構造の中間連結体や遮水壁部のみとすることで、発電装置のコストの低減が図れることとなる。
【0043】
次に、前記構成に基づく水力発電装置における発電時状態について説明する。前提として、水路90における水力発電装置1の前面側周囲は遮水壁部50で堰き止められて、水路90の装置前面位置での水位が装置後面位置での水位より高い状態が生じるようにされているものとする。
【0044】
水力発電装置1の通常の使用状態では、水路90における装置前面位置の水位は、水力発電装置の流入口13aより上側に位置し、また、装置後面位置の水位は、流出口13b上縁より下側に位置しており(図5参照)、水路90を流れる水が、遮水壁部50での堰き止めを受けて、流入口13a側から水車部10におけるケーシング11の流路部13に流入し、各案内板間を通過して羽根車12に達する。この水の、水路90の装置前後における水位の差に基づく流れの作用で羽根車12が回転する。この羽根車12を回転させる駆動力が、羽根車軸15及び中間伝達軸40等を介して上方の発電部20側に伝えられて発電機21が作動し、発電が行われる。
【0045】
こうして発電が行われる中、水路90における水量の増加に基づいて装置前面位置で水位の上昇が生じ、水が遮水壁部50上方の開口部51下縁部を越える場合(図6参照)には、水の開口部51からの溢流により水位が保持され、水位が過剰に上昇するのを抑えられる。溢流した水は水車部10と発電部20の間で且つ左右の中間連結体30周囲の空間部分を通じて下流側に達するが、この溢流が発電機21より下側で生じるため、水が発電機21に達することはなく、発電機21の作動に溢流した水の影響は及ばない。
【0046】
水が水車部10と発電部20の間の空間部分を通過する際、中間伝達軸40の近くを流れるものの、中間伝達軸40は中間連結体30の中空部分に収容された状態となっていることから、水の中に異物が含まれる場合でも、こうした異物が中間伝達軸40に接触するようなことはなく、中間伝達軸40の回転は妨げられることなく継続して、駆動力を発電部20側へ問題なく伝達できる。
【0047】
また水中の異物を流路部13の直上の開口部51を通じて下流側へ流して排除できることから、通常スクリーンが設けられる流路部13前面側において、スクリーン前面に異物が滞留する状態になりにくい。すなわち、スクリーン前面には通常異物が滞留して流路部13への水の流入に悪影響を与えるが、こうした異物を、流路部13の上方で水が溢流する際に水と一緒に開口部51を通過させられることとなり、こうした異物の滞留状態を緩和できる
【0048】
なお、水車部10の流路部13において、水が羽根車12を回転させながら流れて、そのまま流路部13を通過しても、水路90の装置前面位置での水位変化がほとんど生じない場合は、流量調整部16を必要に応じ傾動させ、流路部13におけるより外方に位置させるようにする。これにより、流路部13に流入した水は、羽根車12の流量調整部16で覆われず開放されている前面部分に到達、進入でき、羽根車12に力を与えてこれをスムーズに回転させることができる。
【0049】
これに対し、水路90を流れる水の流量が少なくなり、水がそのまま流路部13を通過すると、装置前面位置での水位が下がり、水の落差も小さくなるような場合には、流量調整部16を流路部13の内方に傾動させて、流量調整部16をより流路部中央に近付ける(図7参照)。これにより、流路部13における二つの流量調整部16の間の最小開口断面積部分は、流量調整部16の傾動前より小さくなって、これを通過できる水の流量も減ることとなる。
【0050】
こうして、流路部13における水の下流側への移動を抑えられることで、装置前面位置の水位が過剰に低下するのを阻止できる。そして、水位の低下を抑えて水の落差を確保することで、流路部13に流入して羽根車12の流量調整部16に覆われていない部分に到達した水は、水のエネルギーで確実に羽根車12を回転させられ、無理なく発電を行える。
【0051】
このように、本実施形態に係る水力発電装置においては、水車部10と発電部20とにそれぞれ連結する中間連結体30を設けると共に、水車部10の流路部流入口周囲に遮水壁部50を設けて水路を一部閉塞し、水路の底部に近い位置に配置した水車部10では水路の水量によらず水を羽根車12に十分に到達可能とする一方、水路の最大流量時の水位より高い位置に発電機21を配置して、発電機21に水がかかりにくい状態とすることにより、水路を流れる水量が十分多く流路部流入口位置における水位が高くなった場合に、発電機21に水が達しない状態を維持しつつ、大量の水とその十分な落差で羽根車12を効率よく回転させられる。逆に、水路を流れる水量が少なく、装置上流側における水位が低くなった場合でも、水路の底部に近い位置の羽根車12に問題なく水が到達して、羽根車12を回転させられ、水位変化に関わりなく水で羽根車12を適切に回転させて発電を有効に行える。また、中間連結体30が水車部10と発電部20とを離隔状態で一体に連結すると共に、中間伝達軸40を介して羽根車12から発電機21に駆動力を伝えるようにすることで、中間連結体30と中間伝達軸40の大きさを適宜変化させれば、水車部10や発電部20を変えることなく様々な水路に対応可能な発電装置を製造できる。
【0052】
なお、前記実施形態に係る水力発電装置において、水車部10と発電部との間に位置する中間連結体30は中空の略柱状体とされて中間伝達軸40を覆い、中間伝達軸40への水中の異物の接触を防げる構成としているが、これに限らず、図8に示すように、中間連結体31が水車部10と発電部20とを連結するのみで、中間伝達軸40を覆わない簡略な形状とされる一方、中間伝達軸40を覆うカバー部41が別途設けられる構成とすることもできる。この場合、中間伝達軸40を覆うカバー部41は、発電部20の荷重を一切支持せず、水中の異物との接触で変形、破損しない程度の必要最小限の強度とし、中間連結体より強度を下げることで部材としてのコストを抑えるのが好ましい。
【0053】
また、前記実施形態に係る水力発電装置においては、中間連結体30を中空の略柱状体として水車部10と発電部20との間に設ける構成としているが、これに限らず、図9に示すように、中間連結体32を水車部10と発電部20との間から外れた箇所、例えば水車部10と発電部20との間の領域の側方となる箇所に設けて、羽根車10と発電機20を連結支持させる構成とすることもできる。この場合も、中間伝達軸40の周囲には別途カバー部41を設けて異物と接触しないようにするのが好ましい。この他、遮水壁部を一定の強度を有する部材とした上で水車部10と発電部20とに連結し、発電部20の荷重の一部を遮水壁部でも負担するようにして、発電部20の支持を中間連結体と遮水壁部とで分担する構造とすることもでき、支持力を分散することで、中間連結体としてより強度を抑えた低コストの部材を用いることができ、装置の製造コスト低減が図れる。
【0054】
また、中間連結体として水車部10と発電部20とを連結する独立した部材を設けるのに代えて、図10に示すように、装置の前面側に設ける遮水壁部55の上部を発電部20の支持部材22と、下部を水車部10とそれぞれ連結して水車部10と発電部20とを一体に連結させると共に、遮水壁部55を、発電部20を支持可能な強度のある構造として、遮水壁部55を中間連結体としても用いる構成とすることもでき、部品点数を減らして装置全体のコストを抑えられることとなる。この場合も、中間伝達軸40は別途設けたカバー部41で覆われるようにして、異物と接触しないようにするのが好ましい。
【0055】
また、前記実施形態に係る水力発電装置において、水車部10はケーシング11内に羽根車12を二つ設け、これに合わせて発電部20も発電機21を二つ設ける構成としているが、これに限らず、水車部のケーシング内に羽根車を一つのみ設けると共に、発電部も前記羽根車で駆動される一つの発電機のみ設ける構成とすることもできる。羽根車を一つとすることで、水車部を小型化できると共に、少ない水量でも羽根車を効率よく回転させられ、こうして羽根車を一つとしたものを、選択使用可能な複数種類の水車部のうちの一つとして選択できるようにすれば、発電装置を適用可能な水路をさらに増やせることとなる。
【0056】
さらに、前記実施形態に係る水力発電装置において、発電部20は、支持部材22上に二つの発電機21を視認可能な状態で配設する構成としているが、これに限らず、箱状に形成した支持部材の内部スペースに発電機を収納して発電機を支持部材で保護しつつ支持する構成とすることもできる。この場合、発電機をはじめ、減速機等の発電機と共に用いる伝動機構や電気系統への、周囲からの影響、例えば、降水や、塵、生物との接触等による損傷や電気的不具合を回避できる。こうした発電部のレイアウトについては、河川や用水路をはじめとする発電装置の設置箇所の状況や発電機の形状等に応じて、適宜選択できる。
【符号の説明】
【0057】
1 水力発電装置
10 水車部
11 ケーシング
12 羽根車
13 流路部
13a 流入口
13b 流出口
15 羽根車軸
16 流量調整部
17 上側案内板
18 下側案内板
19 横案内板
20 発電部
21 発電機
22 支持部材
30、31、32 中間連結体
40 中間伝達軸
41 カバー部
50、55 遮水壁部
51 開口部
90 水路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10