(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クラッドロッドの長手方向に沿った貫通孔が前記クラッドロッドの中心を通る直線上に並んで配置されるように、前記クラッドロッド内に複数の貫通孔を穿設する穿設工程と、
コアロッドがガラス層で被覆されたコア被覆ロッドを、前記複数の貫通孔それぞれに挿入する挿入工程と、
前記クラッドロッド及び前記コア被覆ロッドを加熱して前記クラッドロッドと前記コア被覆ロッドとを一体化させる一体化工程と、
前記一体化工程により一体化されたロッドを線引きする線引き工程と
を備え、
前記複数の貫通孔は、最も外側に位置する1対の外側貫通孔と、前記1対の貫通孔に挟まれる1以上の内側貫通孔とを有し、
前記挿入工程において前記外側貫通孔に挿入される前記コア被覆ロッド内の前記コアロッドは、前記複数の貫通孔が並べられる第1方向の直径と前記第1方向に直交する第2方向の直径とが同程度とされ、
前記挿入工程において前記内側貫通孔に挿入される前記コア被覆ロッド内の前記コアロッドは、前記第2方向の直径よりも前記第1方向の直径のほうが小さくされる
ことを特徴とするマルチコアファイバの製造方法。
クラッドロッドの長手方向に沿った貫通孔が前記クラッドロッドの中心を通る直線上に並んで配置されるように、前記クラッドロッド内に複数の貫通孔を穿設する穿設工程と、
コアロッドがガラス層で被覆されたコア被覆ロッドを、前記複数の貫通孔それぞれに挿入する挿入工程と、
前記クラッドロッド及び前記コア被覆ロッドを加熱して前記クラッドロッドと前記コア被覆ロッドとを一体化させる一体化工程と、
前記一体化工程により一体化されたロッドを線引きする線引き工程と
を備え、
前記複数の貫通孔は、最も外側に位置する1対の外側貫通孔と、前記1対の貫通孔に挟まれる1以上の内側貫通孔とを有し、
前記挿入工程では、前記複数の貫通孔が並べられる第1方向における前記内側貫通孔と前記コア被覆ロッドとの間の第1空隙は、前記第1方向とは直交する第2方向における前記内側貫通孔と前記コア被覆ロッドとの間の第2空隙よりも小さくされ、
前記第1空隙と前記第2空隙との差は、前記第1方向における前記外側貫通孔と前記コア被覆ロッドとの間の第3空隙と、前記第2方向における前記外側貫通孔と前記コア被覆ロッドとの間の第4空隙との差よりも大きくされる
ことを特徴とするマルチコアファイバの製造方法。
クラッドロッドの長手方向に沿った貫通孔が前記クラッドロッドの中心を通る直線上に並んで配置されるように、前記クラッドロッド内に複数の貫通孔を穿設する穿設工程と、
コアロッドがガラス層で被覆されたコア被覆ロッドを、前記複数の貫通孔それぞれに挿入する挿入工程と、
前記クラッドロッド及び前記コア被覆ロッドを加熱して前記クラッドロッドと前記コア被覆ロッドとを一体化させる一体化工程と、
前記一体化工程により一体化されたロッドを線引きする線引き工程と
を備え、
前記複数の貫通孔は、最も外側に位置する1対の外側貫通孔と、前記1対の貫通孔に挟まれる1以上の内側貫通孔とを有し、
前記穿設工程では、前記一体化工程で埋められる1対の応力緩衝用孔が、前記内側貫通孔を挟んで前記複数の貫通孔が並べられる第1方向に直交する第2方向に穿設される
ことを特徴とするマルチコアファイバの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1には、マルチコアファイバ母材の線引き条件によって、そのマルチコアファイバ母材から得られるマルチコアファイバの各コアが楕円状に変形する場合があると記載されている。また、コアの変形方向とは逆の逆楕円コアを有するマルチコアアファイバ母材を線引きすれば、そのマルチコアファイバ母材から得られるマルチコアファイバの各コアが変形することを防止できると記載されている。
【0007】
しかしながら、マルチコアファイバ母材の線引き条件などが厳密に制限されたとしても、そのマルチコアファイバ母材から得られるマルチコアファイバの各コアが少なからず変形してしまう傾向がある。
【0008】
マルチコアファイバの各コアが変形した場合、これらコアにおけるカットオフ波長のばらつきが生じる。このばらつきが大きくなると、シングルモードで光を伝搬させ得る通信波長帯域が狭くなり、この結果、通信波長帯の選択幅が狭まってしまう。
【0009】
特に、マルチコアファイバの長さが1000m以下の短距離用として用いられる場合、そのマルチコアファイバの各コアにおけるカットオフ波長が長くなり易いため、当該カットオフ波長のばらつきがより一段と大きくなることが懸念される。
【0010】
そこで本発明は、通信波長帯の選択幅を広げ得るマルチコアファイバ及びそのマルチコアファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、直線上に並べられて配置される複数のコアをクラッドで囲んだ構造のマルチコアファイバでは、当該マルチコアファイバの外側に配置されるコアに比べて中央に配置されるコアが変形し易いことを見出した。そこで、本発明者らはこのことを踏まえてさらに鋭意検討を重ね本発明に至った。
【0012】
上記課題を解決するため本発明は、複数のコアと、前記複数のコアを囲むクラッドとを備えるマルチコアファイバであって、前記複数のコアは、前記クラッドの中心を通る直線上に並べられて配置され、最も外側に位置する外側コアとその外側コアの隣に位置する内側コアとのカットオフ波長の差は、100nm以下とされることを特徴とする。
【0013】
このようなマルチコアファイバでは、最もカットオフ波長のばらつきが生じ易い外側コアと内側コアとのカットオフ波長の差が100nm以下とされているため、クラッドに囲まれる複数のコアおいて互いに隣り合うコアすべてのカットオフ波長の差を100nm以下とすることができる。したがって、本発明のマルチコアファイバによれば、外側コアと内側コアとのカットオフ波長の差が100nmを超える場合に比べて、シングルモードで光を伝搬させ得る通信波長帯域を広げることができる。こうして、通信波長帯の選択幅を広げ得るマルチコアファイバが実現される。
【0014】
なお、互いに隣り合うコアの中心軸間の距離は、24μm以上35μm以下とされることが好ましい。
【0015】
互いに隣り合うコアの中心軸間の距離が24μm以上とされた場合、当該互いに隣り合うコア間のクロストークを有効に抑えることができる。また、互いに隣り合うコアの中心軸間の距離が35μm以下とされた場合、マルチコアファイバの外径が大きくなることを抑制することができる。
【0016】
また、前記外側コアの外周面と前記クラッドの外周面との最短距離は、15μm以上62.5μm以下とされることが好ましい。
【0017】
このようにされた場合、コアに対する外乱の影響を有効に抑えつつも薄厚化することができる。
【0018】
また、前記コアを囲み、前記コアの平均屈折率よりも低い平均屈折率の内側クラッド層と、前記内側クラッド層を囲み、前記内側クラッド層の平均屈折率よりも低い平均屈折率のトレンチ層とをさらに有することが好ましい。
【0019】
このようにした場合、内側クラッド層及びトレンチ層を有しない場合に比べて、互いに隣り合うコア間のクロストークを抑えることができる。
【0020】
また、互いに隣り合うコアの間に配置され、前記コアの平均屈折率及び前記クラッドの平均屈折率よりも低い平均屈折率の障壁層をさらに有することが好ましい。
【0021】
このようにした場合、障壁層がない場合に比べて、互いに隣り合うコア間のクロストークを抑えることができる。
【0022】
また、互いに隣り合うコアの間に配置される空孔をさらに有することが好ましい。
【0023】
このようにした場合、空孔がない場合に比べて、互いに隣り合うコア間のクロストークを抑えることができる。
【0024】
また、前記空孔は、前記コアの中心軸間の中心位置に配置されることが好ましい。
【0025】
このようにした場合、互いに隣り合うコアの間のうちコアの中心軸間の中心位置以外に空孔が配置される場合に比べて、コアに対する外乱の影響を抑えつつもコア間のクロストークを抑えることができる。
【0026】
また、前記コアを挟んで前記複数のコアが並べられる第1方向とは直交する第2方向に配置される1対の空孔をさらに有することが好ましい。
【0027】
このようにした場合、複数のコアが並べられる第1方向とは直交する第2方向に1対の空孔を配置しない場合に比べて、互いに隣り合うコア間のクロストークをより一段と抑えることができる。
【0028】
また、上記課題を解決するため本発明に係るマルチコアファイバの第1の製造方法は、クラッドロッドの長手方向に沿った貫通孔が前記クラッドロッドの中心を通る直線上に並んで配置されるように、前記クラッドロッド内に複数の貫通孔を穿設する穿設工程と、コアロッドがガラス層で被覆されたコア被覆ロッドを、前記複数の貫通孔それぞれに挿入する挿入工程と、前記クラッドロッド及び前記コア被覆ロッドを加熱して前記クラッドロッドと前記コア被覆ロッドとを一体化させる一体化工程と、前記一体化工程により一体化されたロッドを線引きする線引き工程とを備え、前記複数の貫通孔は、最も外側に位置する1対の外側貫通孔と、前記1対の貫通孔に挟まれる1以上の内側貫通孔とを有し、前記挿入工程において前記外側貫通孔に挿入される前記コア被覆ロッド内の前記コアロッドは、前記複数の貫通孔が並べられる第1方向の直径と前記第1方向に直交する第2方向の直径とが同程度とされ、前記挿入工程において前記内側貫通孔に挿入される前記コア被覆ロッド内の前記コアロッドは、前記第2方向の直径よりも前記第1方向の直径のほうが小さくされることを特徴とする。
【0029】
一体化工程にてクラッドロッドとコア被覆ロッドとが加熱された場合、当該クラッドロッドの収縮等によって応力がクラッドロッドの中央に集中し易いため、外側貫通孔に比べて内側貫通孔に大きな応力が加わる。また、クラッドロッド内では、複数の貫通孔が並べられる第1方向に直交する第2方向に比べて第1方向のほうが、各貫通孔の空隙の総量としては大きいため、当該貫通孔には第1方向に比べて第2方向に大きな応力が加わる。
本発明に係るマルチコアファイバの第1の製造方法は、挿入工程において内側貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド内のコアロッドについて、第2方向の直径よりも第1方向の直径のほうを小さくしている。
このため、第1方向に比べて第2方向に大きな応力が加わる内側貫通孔では、その内側貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド内のコアロッドは第1方向に変形することになる。一方、内側貫通孔に比べて応力が加わらない外側貫通孔では、その外側貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド内のコアロッドはおおむね変形しない。
したがって、第1の製造方法は、内側貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド内のコアロッドの外形を、外側貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド内のコアロッドの外形に近づくように変形させることが可能となる。
このように第1の製造方法によれば、各コアの形状が同程度のマルチコアファイバを得ることができるので、互いに隣り合うコアにおけるカットオフ波長のばらつきを抑え、シングルモードで光を伝搬させ得る通信波長帯域を広げることができる。こうして、通信波長帯の選択幅を広げ得るマルチコアファイバの製造方法が実現される。
【0030】
また、上記課題を解決するため本発明に係る他のマルチコアファイバの製造方法は、クラッドロッドの長手方向に沿った貫通孔が前記クラッドロッドの中心を通る直線上に並んで配置されるように、前記クラッドロッド内に複数の貫通孔を穿設する穿設工程と、コアロッドがガラス層で被覆されたコア被覆ロッドを、前記複数の貫通孔それぞれに挿入する挿入工程と、前記クラッドロッド及び前記コア被覆ロッドを加熱して前記クラッドロッドと前記コア被覆ロッドとを一体化させる一体化工程と、前記一体化工程により一体化されたロッドを線引きする線引き工程とを備え、前記複数の貫通孔は、最も外側に位置する1対の外側貫通孔と、前記1対の貫通孔に挟まれる1以上の内側貫通孔とを有し、前記挿入工程では、前記複数の貫通孔が並べられる第1方向における前記内側貫通孔と前記コア被覆ロッドとの間の第1空隙は、前記第1方向とは直交する第2方向における前記内側貫通孔と前記コア被覆ロッドとの間の第2空隙よりも小さくされ、前記第1空隙と前記第2空隙との差は、前記第1方向における前記外側貫通孔と前記コア被覆ロッドとの間の第3空隙と、前記第2方向における前記外側貫通孔と前記コア被覆ロッドとの間の第4空隙との差よりも大きくされることを特徴とする。
【0031】
この製造方法は、複数の貫通孔が並べられる第1方向における貫通孔とコア被覆ロッドとの間の第1空隙を、第1方向とは直交する第2方向における貫通孔とコア被覆ロッドとの間の第2空隙よりも小さくしている。このため、内側貫通孔において第1方向に比べて第2方向に大きな応力が加わっても、内側貫通孔内のコア被覆ロッドに加わる単位時間あたりの応力量が第1方向と第2方向とで同程度となる。
また、この製造方法は、内側貫通孔における第1空隙と第2空隙との差を、外側貫通孔における第3空隙と第4空隙との差よりも大きくしている。このため、内側貫通孔に加わる応力が外側貫通孔に加わる応力よりも大きくても、貫通孔内のコア被覆ロッドに加わる単位時間あたりの応力量としては各コア被覆ロッド間で同程度となる。
したがって、この製造方法は、貫通孔に加わる応力に相違を有していても、外側貫通孔内のコア被覆ロッドの外形と同程度に内側貫通孔内のコア被覆ロッドを変形させることが可能となる。
このような製造方法によれば、各コアの形状が同程度のマルチコアファイバを得ることができるので、上述の第1のマルチコアファイバ製造方法と同様に、シングルモードで光を伝搬させ得る通信波長帯域を広げることができる。こうして、通信波長帯の選択幅を広げ得るマルチコアファイバの製造方法が実現される。
【0032】
なお、上述の第1空隙と第2空隙との差は、次のようにして差を設けることができる。すなわち、前記内側貫通孔は、前記第1方向の直径と前記第2方向の直径とが同程度とされ、前記内側貫通孔に挿入される前記コア被覆ロッドは、前記第1方向の直径よりも前記第2方向の直径のほうが小さくされる。例えば、前記内側貫通孔の断面の外形は円状であり、前記コア被覆ロッドの断面の外形は楕円状である。
【0033】
あるいは、上述の第1空隙と第2空隙との差は、次のようにして差を設けることもできる。すなわち、前記内側貫通孔は、前記第2方向の直径よりも前記第1方向の直径のほうが小さくされ、前記内側貫通孔に挿入される前記コア被覆ロッドは、前記第1方向の直径と前記第2方向の直径とが同程度とされる。例えば、前記内側貫通孔の断面の外形は楕円状であり、前記コア被覆ロッドの断面の外形は円状である。
【0034】
また、上記課題を解決するため本発明に係るマルチコアファイバの他の製造方法は、クラッドロッドの長手方向に沿った貫通孔が前記クラッドロッドの中心を通る直線上に並んで配置されるように、前記クラッドロッド内に複数の貫通孔を穿設する穿設工程と、コアロッドがガラス層で被覆されたコア被覆ロッドを、前記複数の貫通孔それぞれに挿入する挿入工程と、前記クラッドロッド及び前記コア被覆ロッドを加熱して前記クラッドロッドと前記コア被覆ロッドとを一体化させる一体化工程と、前記一体化工程により一体化されたロッドを線引きする線引き工程とを備え、前記複数の貫通孔は、最も外側に位置する1対の外側貫通孔と、前記1対の貫通孔に挟まれる1以上の内側貫通孔とを有し、前記穿設工程では、前記一体化工程で埋められる1対の応力緩衝用孔が、前記内側貫通孔を挟んで前記第2方向に穿設されることを特徴とする。
【0035】
この製造方法は、一体化工程で埋められる1対の応力緩衝用孔を、内側貫通孔を挟んで第2方向に穿設している。このため、内側貫通孔に加わる応力が第1方向に比べて第2方向が大きくても、当該第2方向に穿設される応力緩衝用孔によって、内側貫通孔内のコア被覆ロッドに加わる単位時間あたりの応力量が第1方向と第2方向とで同程度となる。
したがって、この製造方法は、貫通孔に加わる応力に相違を有していても、外側貫通孔内のコア被覆ロッドの形状と同程度に内側貫通孔内のコア被覆ロッドを変形させることが可能となる。
このような製造方法によれば、各コアの形状が同程度のマルチコアファイバを得ることができるので、上述の第1又は第2のマルチコアファイバ製造方法と同様に、シングルモードで光を伝搬させ得る通信波長帯域を広げることができる。こうして、通信波長帯の選択幅を広げ得るマルチコアファイバの製造方法が実現される。
【0036】
なお、前記一体化工程と前記線引き工程とは同時に行われるようにすることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上のように本発明によれば、通信波長帯の選択幅を広げ得るマルチコアファイバ及びそのマルチコアファイバの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施するために好適となる実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。
【0040】
(1−1)第1実施形態
図1は、第1実施形態におけるマルチコアファイバ1の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア11と、複数のコア11を被覆するクラッド12と、クラッド12を被覆する第1保護層13と、第1保護層13を被覆する第2保護層14とを主な構成要素として備える。
【0041】
複数のコア11は、クラッド12の中心C1を通る直線LN上に並べられて配置される。すなわち、複数のコア11は、最も外側に位置する1対の外側コア11Aと、当該1対の外側コア11Aに挟まれる内側コア11Bとを有し、当該外側コア11A及び内側コア11Bはクラッド12の径方向に沿って配置されている。
【0042】
なお、
図1では、内側コア11Bが2本でコア11が4本である場合を例示しているが、内側コア11Bが1本以上でコア11が3本以上であれば、当該
図1の例示以外の本数が適用されていても良い。また、
図1では、クラッド12の中心C1を通る直線LN上に各コア11の中心が位置しているが、当該直線LN上に並べられて各コア11が配置されていれば、各コア11の中心はクラッド12の中心C1を通る直線からずれた位置であっても良い。
【0043】
外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとのカットオフ波長の差は、100nm以下とされる。また、互いに隣り合うコアの中心軸間の距離Λ1は24μm以上35μm以下の範囲内とされ、外側コア11Aの外周面とクラッド12の外周面との最短距離SDは、15μm以上62.5μm以下の範囲内とされる。
【0044】
以上のマルチコアファイバ1では、最もカットオフ波長のばらつきが生じ易い外側コア11Aと内側コア11Bとのカットオフ波長の差が100nm以下とされているため、クラッド12に囲まれる複数のコア11おいて互いに隣り合うコアすべてのカットオフ波長の差を100nm以下とすることができる。
【0045】
したがって、本実施形態のマルチコアファイバによれば、外側コア11Aと内側コア11Bとのカットオフ波長の差が100nmを超える場合に比べて、シングルモードで光を伝搬させ得る通信波長帯域を広げることができる。こうして、通信波長帯の選択幅を広げ得るマルチコアファイバ1が実現される。
【0046】
また本実施形態では、互いに隣り合うコアの中心軸間の距離Λ1が24μm以上とされているため、当該互いに隣り合うコア間のクロストークを有効に抑えることができる。また、互いに隣り合うコアの中心軸間の距離Λ1が35μm以下とされているため、マルチコアファイバ1の外径が大きくなることを抑制することができる。
【0047】
さらに本実施形態では、外側コア11Aの外周面とクラッド12の外周面との最短距離SDは、15μm以上62.5μm以下とされているため、各コア11に対する外乱の影響を有効に抑えつつも薄厚化することができる。なお、この最短距離SDは、20μm以上35μm以下とされることがより好ましい。
【0048】
なお、本実施形態におけるマルチコアファイバ1の長さは特に規定していなかったが、当該マルチコアファイバ1の長さが1000m以下であっても上述の効果を得ることができる。
【0049】
(1−2)第2実施形態
次に、第2実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、第2実施形態におけるマルチコアファイバの構成要素のうち第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0050】
図2は、第2実施形態におけるマルチコアファイバ2の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図2に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ2は、内側クラッド層21及びトレンチ層22をさらに有している点で、第1実施形態のマルチコアファイバ1と相違する。
【0051】
図3は、第2実施形態におけるクラッド12内の屈折率プロファイルを示す図である。
図3に示すように、内側クラッド層21は、コア11を囲み、当該コア11の平均屈折率n
1よりも低い平均屈折率n
2とされる。トレンチ層22は、内側クラッド層21を囲み、当該内側クラッド層21の平均屈折率n
2及びクラッド12の平均屈折率n
4よりも低い平均屈折率n
3とされる。
【0052】
なお、
図3では、内側クラッド層21の平均屈折率n
2がクラッド12の平均屈折率n
4と同程度となっているが、当該内側クラッド層21の平均屈折率n
2はクラッド12の平均屈折率n
4より高くても低くても良い。
【0053】
以上のマルチコアファイバ2によれば、内側クラッド層21及びトレンチ層22を有しない第1実施形態の場合に比べて、互いに隣り合うコア間のクロストークを抑えることができる。
【0054】
なお、本実施形態におけるマルチコアファイバ2の長さは特に規定していなかったが、当該マルチコアファイバ1の長さが1000m以下であっても上述の効果を得ることができる。
【0055】
(1−3)第3実施形態
次に、第3実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、第3実施形態におけるマルチコアファイバの構成要素のうち上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0056】
図4は、第3実施形態におけるマルチコアファイバ3の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図4に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ3は、障壁層31をさらに有している点で、第1実施形態のマルチコアファイバ1と相違する。
【0057】
この障壁層31は、互いに隣り合うコア間に配置される第1障壁層31Aと、外側コア11Aとクラッド12の外周面との間に配置される第2障壁層31Bとを有している。
図5は、第3実施形態におけるクラッド12内の屈折率プロファイルを示す図である。
図5に示すように、障壁層31(第1障壁層31A及び第2障壁層31B)の平均屈折率n
5は、コア11の平均屈折率n
1及びクラッド12の平均屈折率n
4よりも低くされる。
【0058】
なお、
図4では、第1障壁層31A及び第2障壁層31Bの断面形状が円弧状である場合を例示しているが、円弧状以外の断面形状が適用されていても良い。また、
図4では、第1障壁層31Aと第2障壁層31Bとの断面積が同じである場合を例示しているが、当該断面積が異なっていても良い。
【0059】
本実施形態の場合、第1障壁層31Aは互いに隣り合うコアの中心軸間に配置され、第2障壁層31Bは外側コア11Aとその外側コア11Aに最も近接するクラッド12の外周面との間に配置される。
【0060】
以上のマルチコアファイバ3では、互いに隣り合うコア間に第1障壁層31Aが配置されているため、当該第1障壁層31Aがない第1実施形態の場合に比べて、互いに隣り合うコア間のクロストークを抑えることができる。
【0061】
また本実施形態では、外側コア11Aとクラッド12の外周面との間に第2障壁層31Bが配置されているため、当該第2障壁層31Bが配置されていない場合に比べて外側コア11Aの損失を抑えることができる。
【0062】
なお、本実施形態におけるマルチコアファイバ3の長さは特に規定していなかったが、当該マルチコアファイバ1の長さが1000m以下であっても上述の効果を得ることができる。
【0063】
(1−4)第4実施形態
次に、第4実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、第4実施形態におけるマルチコアファイバの構成要素のうち上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0064】
図6は、第4実施形態におけるマルチコアファイバ4の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図6に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ4は、空孔41をさらに有している点で、第1実施形態のマルチコアファイバ1と相違する。
【0065】
この空孔41は、互いに隣り合うコア間に配置される第1空孔41Aと、外側コア11Aとクラッド12の外周面との間に配置される第2空孔41Bとを有している。これら第1空孔41A及び第2空孔41Bは、コア11の平均屈折率及びクラッド12の平均屈折率よりも低い状態である。
【0066】
なお、
図6では、第1空孔41A及び第2空孔41Bの断面形状が円状である場合を例示しているが、円状以外の断面形状が適用されていても良い。また、
図6では、第1空孔41Aと第2空孔41Bとの断面形状が同じである場合を例示しているが、当該断面形状が異なっていても良い。さらに、
図6では、第1空孔41A及び第2空孔41Bの断面積とコア11の断面積とが異なる場合を例示しているが同じであっても良い。
【0067】
本実施形態の場合、第1空孔41Aは互いに隣り合うコアの中心軸間の中心位置に配置され、第2空孔41Bは外側コア11Aとその外側コア11Aに最も近接するクラッド12の外周面との中間位置に配置される。
【0068】
なお、
図6では、コア11と第1空孔41Aとの中心軸間の距離D1は、コア11と第2空孔41Bとの中心軸間の距離D2と異なっているが、当該距離D1と距離D2とが同程度とされても良い。
【0069】
以上のマルチコアファイバ4では、互いに隣り合うコア間に第1空孔41Aが配置されているため、当該第1空孔41Aがない第1実施形態の場合に比べて、互いに隣り合うコア間のクロストークを抑えることができる。
【0070】
また本実施形態では、外側コア11Aとクラッド12の外周面との間に第2空孔41Bが配置されているため、当該第2空孔41Bが配置されていない場合に比べて外側コア11Aの損失を抑えることができる。
【0071】
さらに本実施形態では、第1空孔41Aが互いに隣り合うコアの中心軸間の中心位置に配置されているため、当該中心位置に配置されていない場合に比べて、コア11に対する外乱の影響を抑えつつもコア間のクロストークを抑えることができる。
【0072】
同様に、第2空孔41Bが外側コア11Aとその外側コア11Aに最も近接するクラッド12の外周面との中間位置に配置されているため、当該中心位置に配置されていない場合に比べて、コア11に対する外乱の影響を抑えつつもコア間のクロストークを抑えることができる。
【0073】
なお、本実施形態におけるマルチコアファイバ4の長さは特に規定していなかったが、当該マルチコアファイバ1の長さが1000m以下であっても上述の効果を得ることができる。
【0074】
(1−5)第5実施形態
次に、第5実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、第5実施形態におけるマルチコアファイバの構成要素のうち上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0075】
図7は、第5実施形態におけるマルチコアファイバ5の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図7に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ5は、複数のコアが並べられる第1方向とは直交する第2方向にコア11を挟んで配置される1対の空孔51をさらに有している点で、第4実施形態のマルチコアファイバ4と相違する。
【0076】
本実施形態の場合、コア11と空孔51との中心軸間の距離D3は、当該コア11と第1空孔41Aとの中心軸間の距離D1と同程度とされる。
【0077】
なお、
図7では、空孔51の断面形状が円状である場合を例示しているが、円状以外の断面形状が適用されていても良い。また、
図7では、空孔51と第1空孔41A又は第2空孔41Bとの断面形状が同じである場合を例示しているが、当該断面形状が異なっていても良い。さらに、
図7では、空孔51の断面積とコア11の断面積とが異なる場合を例示しているが同じであっても良い。
【0078】
以上のマルチコアファイバ5では、複数のコア11が並べられる第1方向とは直交する第2方向に1対の空孔51を配置しない第4実施形態の場合に比べて、互いに隣り合うコア間のクロストークをより一段と抑えることができる。
【0079】
また本実施形態では、コア11と空孔51との間の距離D1は、当該コア11と第1空孔41Aとの間の距離D3と同程度とされている。このため、コア11と空孔51との間の距離D1が同程度とされていない場合に比べて、コア11における電界分布に異方性が生じることを抑制してそのコア11での導波特性を良好にすることができる。
【0080】
なお、本実施形態におけるマルチコアファイバ5の長さは特に規定していなかったが、当該マルチコアファイバ1の長さが1000m以下であっても上述の効果を得ることができる。
【0081】
(2−1)マルチコアファイバの第1の製造方法
次に、マルチコアファイバの第1の製造方法について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、説明の便宜上、第1の製造方法を用いて第1実施形態におけるマルチコアファイバ1を製造する場合について説明する。
【0082】
図8は、マルチコアファイバ1の第1の製造方法を示すフローチャートである。
図8に示すように、第1の製造方法は、穿設工程P1、挿入工程P2、一体化工程P3、線引き工程P4及び保護層形成工程P5を主工程として備える。
【0083】
<穿設工程>
図9は、第1の製造方法における穿設工程後の様子を示す図である。
図9に示すように、穿設工程P1は、クラッドロッド71の長手方向に沿った貫通孔がクラッドロッドの中心C10を通る直線LN上に並んで配置されるように、当該クラッドロッド71内に複数の貫通孔HLを穿設する工程である。
【0084】
具体的には、例えばドリル等を用いてクラッドロッド71の長手方向に沿って複数の貫通孔HLが穿設される。複数の貫通孔HLは、最も外側に位置する1対の外側貫通孔HLAと、当該1対の外側貫通孔HLAに挟まれる内側貫通孔HLBとを有し、当該外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBはクラッドロッド71の直径に沿って配置される。クラッドロッド71は円柱状のガラス体であり、例えば純粋な石英で構成される。
【0085】
なお、
図9では、クラッドロッドの中心C10を通る直線上に各貫通孔HLの中心が位置している。しかしながら、クラッドロッドの中心C10を通る直線上に並んで各貫通孔HLが配置されていれば、各貫通孔HLの中心はクラッドロッドの中心C10を通る直線LNからずれた位置であっても良い。
【0086】
<挿入工程>
図10は、第1の製造方法における挿入工程後の様子を示す図である。
図10に示すように、挿入工程P2は、コア被覆ロッド72を複数の貫通孔HLそれぞれに挿入する工程である。
【0087】
コア被覆ロッド72は、貫通孔HLのいずれかに挿入される部材であり、コアロッド72Aをガラス層72Bで被覆した2層構造となっている。コアロッド72Aの平均屈折率はガラス層72Bの平均屈折率よりも高くされる。例えば、ゲルマニウム等のドーパントを付加した石英でコアロッド72Aが構成され、純粋な石英でガラス層72Bが構成される。なお、ガラス層72Bの平均屈折率はクラッドロッド71の平均屈折率と同程度とされる。
【0088】
本工程に用いられる複数のコア被覆ロッド72のうち外側貫通孔HLAに挿入すべきコア被覆ロッド72の断面は同程度の直径を有し、当該断面における外形は円形状とされる。一方、内側貫通孔HLBに挿入すべきコア被覆ロッド72の断面は短径に比べて大きい長径を有し、当該断面における外形は楕円形状とされる。
【0089】
すなわち、外側貫通孔HLAに挿入されるコア被覆ロッド72内のコアロッド72Aにおいては、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向の直径D10とその第1方向に直交する第2方向の直径D20とが同程度とされる。一方、内側貫通孔HLBに挿入されるコア被覆ロッド72内のコアロッド72Aにおいては、第1方向の直径D30のほうが第2方向の直径D40よりも小さくされる。
【0090】
なお、
図10では、外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBの中心軸に対して、当該貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド72の中心軸が一致した状態である。しかしながら、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向及びその第1方向に直交する第2方向における外側貫通孔HLA又は内側貫通孔HLBとコア被覆ロッド72との隙間が同程度であれば、コア被覆ロッド72の中心軸が当該貫通孔HLの中心軸からずれていても良い。
【0091】
<一体化工程>
図11は、第1の製造方法における一体化工程後の様子を示す図である。
図11に示すように、一体化工程P3は、クラッドロッド71及びコア被覆ロッド72を加熱してクラッドロッド71とコア被覆ロッド72とを一体化させる工程である。
【0092】
具体的には、クラッドロッド71と、当該クラッドロッド71の貫通孔HLに挿入されたコア被覆ロッド72とが真空中にて加熱される。このようにした場合、クラッドロッド71の収縮等によってクラッドロッド71内に応力が生じて貫通孔HLが埋まるとともに、クラッドロッド71とコア被覆ロッド72の外層であるガラス層72Bとが融着して一体化する。この結果、
図11に示すようなマルチコアファイバ用母材80が得られる。
【0093】
ところで、また、クラッドロッド71内では、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向における単位体積あたりの空隙量が、第1方向に直交する第2方向における単位体積あたりの空隙量よりも大きい。このため、貫通孔HLには第1方向に比べて第2方向に大きな応力が加わるとともに、内側貫通孔HLBには外側貫通孔HLAに比べて大きい応力が加わる。
【0094】
したがって、第1方向に比べて第2方向に大きな応力が加わる内側貫通孔HLBでは、コア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aの第2方向が潰されるように変形する一方、当該コアロッド72Aの第1方向が延びるように変形することになる。
【0095】
これに対して、内側貫通孔HLBに比べて応力が加わらない外側貫通孔HLAでは、コア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aはおおむね変形しない。
【0096】
したがって、内側貫通孔HLBに挿入されるコア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aの外形は、外側貫通孔HLAに挿入されるコア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aの外形に近づくように変形されることになる。
【0097】
<線引き工程>
線引き工程P4は、一体化工程P3により一体化されたロッド(マルチコアファイバ用母材80)を線引きする工程である。
【0098】
具体的には、一体化工程P3にて得られたマルチコアファイバ用母材80の一端を円錐状の凸部として形成する末端加工処理が前処理として施される。なお、この末端加工処理は一体化工程P3にて施されても良い。
【0099】
そして、マルチコアファイバ用母材80が紡糸炉に設置され、当該紡糸炉によってマルチコアファイバ用母材80の凸部が溶融するまで加熱される。そして、溶融状態にあるマルチコアファイバ用母材80の凸部が線引きされ、当該線引きされた部分が冷却装置により適切な温度にまで冷却される。
【0100】
この結果、線引きされた部分におけるコアロッド72Aがコア11として形成され、当該部分において融着されているガラス層72B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0101】
<保護層形成工程>
保護層形成工程P5は、クラッド12の周りに保護層を形成する工程である。具体的には、クラッド12の外周面が例えば紫外線硬化性樹脂で被覆され、当該紫外線硬化性樹脂に対して紫外線が照射されて第1保護層13が形成される。
【0102】
その後、第1保護層13の外周面が例えば紫外線硬化性樹脂で被覆され、当該紫外線硬化性樹脂に対して紫外線が照射されて第2保護層14が形成される。こうして、
図1に示すマルチコアファイバ1が製造される。
【0103】
<作用・効果>
以上の第1の製造方法は、挿入工程P2において内側貫通孔HLBに挿入されるコア被覆ロッド72のコアロッド72Aについて、第1方向の直径D30を第2方向の直径D40よりも小さくしている。
【0104】
このため、上述したように、内側貫通孔HLB内のコア被覆ロッド72では、コアロッド72Aの第2方向が潰されるように変形する一方、当該コアロッド72Aの第1方向が延びるように変形する。これに対して、内側貫通孔HLBに比べて応力が加わらない外側貫通孔HLA内のコア被覆ロッド72ではコアロッド72Aがおおむね変形しない。
【0105】
したがって、第1の製造方法は、内側貫通孔HLBに挿入されるコア被覆ロッド72内のコアロッド72Aの外形を、外側貫通孔HLAに挿入されるコア被覆ロッド72内のコアロッド72Aの外形に近づくように変形させることが可能となる。
【0106】
このように第1の製造方法によれば、各コア11の形状が同程度のマルチコアファイバ1を得ることができるので、互いに隣り合うコア11におけるカットオフ波長のばらつきを抑え、シングルモードで光を伝搬させ得る通信波長帯域を広げることができる。こうして、通信波長帯の選択幅を広げ得るマルチコアファイバ1の第1の製造方法が実現される。
【0107】
<他の実施形態の応用>
ところで、上述の第1の製造方法を用いて第2実施形態におけるマルチコアファイバ2を製造する場合には、上記挿入工程P2が変更となる。すなわち、貫通孔HLに挿入されていた上述のコア被覆ロッド72が、
図12に示すコア被覆ロッド82に変更される。
【0108】
図12は、第1の製造方法を用いて第2実施形態におけるマルチコアファイバ2を製造する場合の挿入工程後の様子を示す図である。
図12に示すように、コア被覆ロッド82は、コアロッド82A、そのコアロッド82Aを被覆する第1ガラス層82B、及び、その第1ガラス層82Bを被覆する第2ガラス層82Cの3層構造とされる。
【0109】
第1ガラス層82Bの平均屈折率はコアロッド82Aの平均屈折率よりも低くされ、第2ガラス層82Cの平均屈折率は第1ガラス層82Bの平均屈折率よりも低くクラッドロッド71の平均屈折率よりも高くされる。
【0110】
例えば、ゲルマニウム等の平均屈折率を上げるドーパントが添加された石英でコアロッド82Aが構成され、純粋な石英で第1ガラス層82B及びクラッドロッド71が構成され、フッ素等の平均屈折率を下げるドーパントが添加された石英で第2ガラス層82Cが構成される。なお、一体化工程P3にてコア被覆ロッド82に加わる応力の量に応じてドーパントの量などを調整することが可能である。
【0111】
また、外側貫通孔HLAに挿入されるコア被覆ロッド82のコアロッド82Aにおいては、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向の直径D10とその第1方向に直交する第2方向の直径D20とが同程度とされる。一方、内側貫通孔HLBに挿入されるコア被覆ロッド82内のコアロッド82Aにおいては、第1方向の直径D30のほうが第2方向の直径D40よりも小さくされる。
【0112】
このようなコア被覆ロッド82が外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBに挿入された後、上述の一体化工程P3及び線引き工程P4を順次経る。これによりコア被覆ロッド82におけるコアロッド82Aがコア11として形成され、第1ガラス層82Bが内側クラッド層21として形成され、第2ガラス層82Cがトレンチ層22として形成される。また、クラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0113】
その後、上述の保護層形成工程P5を経ることで、
図2に示すマルチコアファイバ2が製造される。
【0114】
なお、
図12では、外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBの中心軸に対して、当該貫通孔HLに挿入されるコア被覆ロッド82の中心軸が一致した状態である。しかしながら、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向及びその第1方向に直交する第2方向における外側貫通孔HLA又は内側貫通孔HLBとコア被覆ロッド82との隙間が同程度であれば、コア被覆ロッド82の中心軸が当該貫通孔HLの中心軸からずれていても良い。
【0115】
また、上述の第1の製造方法を用いて第3実施形態におけるマルチコアファイバ3を製造する場合、上記挿入工程P2が変更となる。すなわち、貫通孔HLに挿入されていた上述のコア被覆ロッド72が、
図13に示すコア被覆ロッド92に変更される。
【0116】
図13は、第1の製造方法を用いて第3実施形態におけるマルチコアファイバ3を製造する場合の挿入工程後の様子を示す図である。
図13に示すように、コア被覆ロッド92は、コアロッド92A、そのコアロッド92Aを被覆する第1ガラス層92B、及び、その第1ガラス層92Bの一部の外周面上に設けられる第2ガラス層92Cの3層構造とされる。
【0117】
第2ガラス層92Cは、ガラスチューブをその長手方向に沿っておおむね半分に割った状態とされる。そして、1対の外側貫通孔HLAの一方及び内側貫通孔HLBでは、第2ガラス層92Cが、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向において互いに対向する第1ガラス層82Bの外周面の一方に設けられる。
【0118】
また、1対の外側貫通孔HLAの他方では、第2ガラス層92Cが、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向において互いに対向する第1ガラス層82Bの外周面の双方に設けられる。
【0119】
なお、外側貫通孔HLAに挿入されるコア被覆ロッド92のコアロッド82Aの外形はコア被覆ロッド82と同様に円形状とされ、内側貫通孔HLBに挿入されるコア被覆ロッド92のコアロッド82Aの外形はコア被覆ロッド82と同様に楕円形状とされる。
【0120】
このようなコア被覆ロッド92が外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBに挿入された後、上述の一体化工程P3及び線引き工程P4を順次経る。これによりコア被覆ロッド92におけるコアロッド82Aがコア11として形成され、第1ガラス層82B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成され、第2ガラス層82Cが障壁層31として形成される。
【0121】
その後、上述の保護層形成工程P5を経ることで、
図3に示すマルチコアファイバ3が製造される。
【0122】
なお、
図13では、外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBの中心軸に対して、当該貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド92の中心軸が一致した状態である。しかしながら、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向及びその第1方向に直交する第2方向における外側貫通孔HLA又は内側貫通孔HLBとコア被覆ロッド92との隙間が同程度であれば、コア被覆ロッド92の中心軸が当該貫通孔HLの中心軸からずれていても良い。
【0123】
また、上述の第1の製造方法を用いて第4実施形態におけるマルチコアファイバ4を製造する場合、上記一体化工程P3と線引き工程P4との間に空孔形成工程が加えられる。
【0124】
図14は、第1の製造方法を用いて第4実施形態におけるマルチコアファイバ4を製造する場合の空孔形成工程後の様子を示す図である。
図14に示すように、空孔形成工程では、マルチコアファイバ用母材80における互いに隣り合うコアロッド72A間の例えば中心位置に第1空孔41A及び第2空孔41Bが形成される。
【0125】
続いて、線引き工程P4において、第1空孔41A及び第2空孔41Bに内面に圧力が与えられている状態において線引きされる。この結果、線引きされた部分において第1空孔41A及び第2空孔41Bが残るとともに、当該部分におけるコアロッド72Aがコア11として形成される。また、線引きされた部分において融着されているガラス層72B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0126】
その後、上述の保護層形成工程P5を経ることで、
図4に示すマルチコアファイバ4が製造される。
【0127】
また、上述の第1の製造方法を用いて第5実施形態におけるマルチコアファイバ5を製造する場合、上記一体化工程P3と線引き工程P4との間に空孔形成工程が加えられる。
【0128】
図15は、第1の製造方法を用いて第5実施形態におけるマルチコアファイバ5を製造する場合の空孔形成工程後の様子を示す図である。
図15に示すように、空孔形成工程では、マルチコアファイバ用母材80における互いに隣り合うコアロッド72A間の例えば中心位置に第1空孔41A及び第2空孔41Bが形成される。
【0129】
また、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向とは直交する第2方向に、例えばコアロッド72Aから第1空孔41Aまでの距離と同程度となるように1対の空孔51がコアロッド72Aを挟んで形成される。
【0130】
続いて、線引き工程P4において、第1空孔41A及び第2空孔41Bと空孔51とに内面に圧力が与えられている状態において線引きされる。この結果、線引きされた部分において第1空孔41A及び第2空孔41Bと空孔51とが残るとともに、当該部分におけるコアロッド72Aがコア11として形成される。また、線引きされた部分において融着されているガラス層72B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0131】
その後、上述の保護層形成工程P5を経ることで、
図5に示すマルチコアファイバ5が製造される。
【0132】
(2−2)マルチコアファイバの第2の製造方法
次に、マルチコアファイバの第2の製造方法について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、説明の便宜上、第2の製造方法を用いて第1実施形態におけるマルチコアファイバ1を製造する場合について説明する。また、上述したマルチコアファイバの第1の製造方法と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0133】
マルチコアファイバの第2の製造方法は、上述したマルチコアファイバの第1の製造方法と同様に、穿設工程P1、挿入工程P2、一体化工程P3、線引き工程P4及び保護層形成工程P5を主工程として備える。
【0134】
第2の製造方法では、これら工程P1〜P5のなかで挿入工程P2の内容が上述したマルチコアファイバの第1の製造方法と異なるため、当該挿入工程P2を主に説明する。
【0135】
図16は、マルチコアファイバ1の第2の製造方法における挿入工程後の様子を示す図である。
図16に示すように、挿入工程P2では、第1の製造方法に用いられていたコア被覆ロッド72に代えてコア被覆ロッド102が貫通孔HLに挿入される。
【0136】
コア被覆ロッド102は、上述のコア被覆ロッド72と同様に、コアロッド72Aと、そのコアロッド72Aを被覆するガラス層72Bとの2層構造とされる。
【0137】
本工程に用いられる複数のコア被覆ロッド102のうち外側貫通孔HLAに挿入すべきコア被覆ロッド102の断面は同程度の直径を有し、当該断面における外形は円形状とされる。一方、内側貫通孔HLBに挿入すべきコア被覆ロッド102の断面は短径に比べて大きい長径を有し、当該断面における外形は楕円形状とされる。
【0138】
すなわち、外側貫通孔HLAに挿入されるコア被覆ロッド102においては、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向の直径D11とその第1方向に直交する第2方向の直径D21とが同程度とされる。一方、内側貫通孔HLBに挿入されるコア被覆ロッド102においては、第1方向の直径D31よりも第2方向の直径D41のほうが小さくされる。
【0139】
したがって、第1方向における内側貫通孔HLBとコア被覆ロッド102との間の第1空隙SP1は、第2方向における内側貫通孔HLBとコア被覆ロッド102との間の第2空隙SP2よりも小さくされる。
【0140】
また、第1方向における外側貫通孔HLAとコア被覆ロッド102との間の第3空隙SP3と、第2方向における外側貫通孔HLAとコア被覆ロッド102との間の第4空隙SP4とは同程度とされる。
【0141】
すなわち、第1空隙SP1と第2空隙SP2との差は、第3空隙SP3と第4空隙SP4との差よりも大きい状態である。
【0142】
なお、外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBに挿入されるコア被覆ロッド102のコアロッド72A断面は同程度の直径を有し、当該断面における外形は円形状とされる。
【0143】
このようなコア被覆ロッド102が外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBに挿入された後、上述の一体化工程P3及び線引き工程P4を順次経る。これによりコア被覆ロッド102におけるコアロッド72Aがコア11として形成され、ガラス層72B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0144】
その後、上述の保護層形成工程P5を経ることで、
図1に示すマルチコアファイバ1が製造される。
【0145】
<作用・効果>
以上のとおり第2の製造方法は、第1方向における内側貫通孔HLBとコア被覆ロッド102との間の第1空隙SP1を、第2方向における内側貫通孔HLBとコア被覆ロッド102との間の第2空隙SP2よりも小さくしている。
【0146】
このため、一体化工程P3において内側貫通孔HLBに対して第1方向に比べて第2方向に大きな応力が加わっても、内側貫通孔HLB内のコア被覆ロッド102に加わる単位時間あたりの応力量は第1方向と第2方向とで同程度となる。
【0147】
また、この第2の製造方法は、内側貫通孔HLBにおける第1空隙SP1と第2空隙SP2との差を、外側貫通孔HLAにおける第3空隙SP3と第4空隙SP4との差よりも大きくしている。
【0148】
このため、一体化工程P3において内側貫通孔HLBに加わる応力が外側貫通孔HLAに加わる応力よりも大きくても、当該貫通孔HL内のコア被覆ロッド102に加わる単位時間あたりの応力量としては各コア被覆ロッド間で同程度となる。
【0149】
したがって、第2の製造方法は、各貫通孔HLに加わる応力に相違を有していても、外側貫通孔HLA内のコア被覆ロッド102の外形と同程度に内側貫通孔HLB内のコア被覆ロッド102を変形させることが可能となる。
【0150】
このように第2の製造方法によれば、上述した第1の製造方法と同様に、各コア11の形状が同程度のマルチコアファイバ1を得ることができるので、シングルモードで光を伝搬させ得る通信波長帯域を広げることができる。こうして、通信波長帯の選択幅を広げ得るマルチコアファイバ1の製造方法が実現される。
【0151】
<他の実施形態の応用>
ところで、上述の第2の製造方法を用いて第2実施形態におけるマルチコアファイバ2を製造する場合には、上記挿入工程P2が変更となる。すなわち、貫通孔HLに挿入されていた上述のコア被覆ロッド102が、
図17に示すコア被覆ロッド112に変更される。
【0152】
図17は、第2の製造方法を用いて第2実施形態におけるマルチコアファイバ2を製造する場合の挿入工程後の様子を示す図である。
図17に示すように、コア被覆ロッド112は、上述のコア被覆ロッド82と同様に、コアロッド82A、第1ガラス層82B及び第2ガラス層82Cの3層構造とされる。
【0153】
また、複数のコア被覆ロッド112のうち外側貫通孔HLAに挿入すべきコア被覆ロッド112の断面は同程度の直径を有し、当該断面における外形は円形状とされる。一方、内側貫通孔HLBに挿入すべきコア被覆ロッド112の断面は短径に比べて大きい長径を有し、当該断面における外形は楕円形状とされる。
【0154】
すなわち、第1空隙SP1は第2空隙SP2よりも小さく、当該第1空隙SP1と第2空隙SP2との差は第3空隙SP3と第4空隙SP4との差よりも大きくされる。
【0155】
このようなコア被覆ロッド112が外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBに挿入された後、上述の一体化工程P3及び線引き工程P4を順次経る。これによりコア被覆ロッド112におけるコアロッド82Aがコア11として形成され、第1ガラス層82Bが内側クラッド層21として形成され、第2ガラス層82Cがトレンチ層22として形成される。また、クラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0156】
その後、上述の保護層形成工程P5を経ることで、
図2に示すマルチコアファイバ2が製造される。
【0157】
なお、
図17では、外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBの中心軸に対して、当該貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド112の中心軸が一致した状態である。しかしながら、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向及びその第1方向に直交する第2方向における外側貫通孔HLA又は内側貫通孔HLBとコア被覆ロッド112との隙間が同程度であれば、コア被覆ロッド112の中心軸が当該貫通孔HLの中心軸からずれていても良い。
【0158】
また、上述の第2の製造方法を用いて第3実施形態におけるマルチコアファイバ3を製造する場合、上記挿入工程P2が変更となる。すなわち、貫通孔HLに挿入されていた上述のコア被覆ロッド72が、
図18に示すコア被覆ロッド122に変更される。
【0159】
図18は、第2の製造方法を用いて第3実施形態におけるマルチコアファイバ3を製造する場合の挿入工程後の様子を示す図である。
図18に示すように、コア被覆ロッド122は、上述のコア被覆ロッド92と同様に、コアロッド92A、そのコアロッド92Aを被覆する第1ガラス層92B、及び、その第1ガラス層92Bの一部の外周面上に設けられる第2ガラス層92Cの3層構造とされる。
【0160】
複数のコア被覆ロッド122のうち外側貫通孔HLAに挿入すべきコア被覆ロッド122の断面は同程度の直径を有し、当該断面における外形は円形状とされる。一方、内側貫通孔HLBに挿入すべきコア被覆ロッド122の断面は短径に比べて大きい長径を有し、当該断面における外形は楕円形状とされる。すなわち、第1空隙SP1は第2空隙SP2よりも小さく、当該第1空隙SP1と第2空隙SP2との差は第3空隙SP3と第4空隙SP4との差よりも大きくされる。
【0161】
このようなコア被覆ロッド122が外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBに挿入された後、上述の一体化工程P3及び線引き工程P4を順次経る。これによりコア被覆ロッド122におけるコアロッド82Aがコア11として形成され、第1ガラス層82B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成され、第2ガラス層82Cが障壁層31として形成される。
【0162】
その後、上述の保護層形成工程P5を経ることで、
図3に示すマルチコアファイバ3が製造される。
【0163】
なお、
図18では、外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLBの中心軸に対して、当該貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド122の中心軸が一致した状態である。しかしながら、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向及びその第1方向に直交する第2方向における外側貫通孔HLA又は内側貫通孔HLBとコア被覆ロッド122との隙間が同程度であれば、コア被覆ロッド122の中心軸が当該貫通孔HLの中心軸からずれていても良い。
【0164】
また、上述の第2の製造方法を用いて第4実施形態におけるマルチコアファイバ4を製造する場合、及び、第5実施形態におけるマルチコアファイバ5を製造する場合、上記一体化工程P3と線引き工程P4との間に空孔形成工程が加えられる。
【0165】
この空孔形成工程における内容は、上述の第1の製造方法を用いてマルチコアファイバ4又は5を製造する場合と同様であるためここでは省略する。
【0166】
(2−3)マルチコアファイバの第3の製造方法
次に、マルチコアファイバの第3の製造方法について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、説明の便宜上、第3の製造方法を用いて第1実施形態におけるマルチコアファイバ1を製造する場合について説明する。また、上述したマルチコアファイバの製造方法と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0167】
マルチコアファイバの第3の製造方法は、上述したマルチコアファイバの第1の製造方法と同様に、穿設工程P1、挿入工程P2、一体化工程P3、線引き工程P4及び保護層形成工程P5を主工程として備える。
【0168】
第3の製造方法では、これら工程P1〜P5のなかで挿入工程P2の内容が上述したマルチコアファイバの第1の製造方法と異なるため、当該挿入工程P2を主に説明する。
【0169】
図19は、マルチコアファイバ1の第3の製造方法における挿入工程後の様子を示す図である。
図19に示すように、挿入工程P2では、第1の製造方法における内側貫通孔HLBに代えて内側貫通孔HLCがクラッドロッド71に穿設される。
【0170】
この内側貫通孔HLCは、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向に直交する第2方向の直径D50よりもその第1方向の直径D60のほうが小さくされる。なお、この内側貫通孔HLCは、ドリルで断面円状の孔を穿設した後、第2方向において研磨することにより形成される。
【0171】
したがって、第1方向における内側貫通孔HLCとコア被覆ロッド72との間の第1空隙SP1は、第2方向における内側貫通孔HLCとコア被覆ロッド72との間の第2空隙SP2よりも小さくされる。
【0172】
また、第1方向における外側貫通孔HLAとコア被覆ロッド72との間の第3空隙SP3と、第2方向における外側貫通孔HLAとコア被覆ロッド72との間の第4空隙SP4とは同程度とされる。
【0173】
すなわち、第1空隙SP1と第2空隙SP2との差は、第3空隙SP3と第4空隙SP4との差よりも大きい状態である。
【0174】
なお、外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLCに挿入されるコア被覆ロッド72のコアロッド72A断面は同程度の直径を有し、当該断面における外形は円形状とされる。
【0175】
このような外側貫通孔HLA及び内側貫通孔HLCにコア被覆ロッド72が挿入された後、上述の一体化工程P3及び線引き工程P4を順次経る。これによりコア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aがコア11として形成され、ガラス層72B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0176】
その後、上述の保護層形成工程P5を経ることで、
図1に示すマルチコアファイバ1が製造される。
【0177】
<作用・効果>
以上のとおり第3の製造方法は、内側貫通孔HLCとコア被覆ロッド72の断面外形を第2の製造方法の場合と逆にしている。すなわち第2の製造方法では、内側貫通孔HLBの断面外形が円形状とされ、コア被覆ロッド102の断面外形が円形状とされていた。これに対して第3の製造方法では、内側貫通孔HLCの断面外形が楕円形状とされ、コア被覆ロッド72の断面外形が円形状とされている。
【0178】
しかしながら、第3の製造方法では、第2の製造方法と同様に、第1方向における内側貫通孔HLCとコア被覆ロッド72との間の第1空隙SP1が、第2方向における内側貫通孔HLCとコア被覆ロッド72との間の第2空隙SP2よりも小さくされる。また、この第3の製造方法では、第2の製造方法と同様に、第1空隙SP1と第2空隙SP2との差が、第3空隙SP3と第4空隙SP4との差よりも大きくされる。
【0179】
したがって、第3の製造方法は、各貫通孔HLに加わる応力に相違を有していても、第2の製造方法と同様に、外側貫通孔HLA内のコア被覆ロッド72の外形と同程度に内側貫通孔HLC内のコア被覆ロッド72を変形させることが可能となる。
【0180】
ところで、上述の第3の製造方法を用いてマルチコアファイバ2〜5を製造する場合においては、上述した第1の製造方法を用いてマルチコアファイバ2〜5を製造する場合と同様であるためここでは省略する。
【0181】
(2−4)マルチコアファイバの第4の製造方法
次に、マルチコアファイバの第4の製造方法について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、説明の便宜上、第4の製造方法を用いて第1実施形態におけるマルチコアファイバ1を製造する場合について説明する。また、上述したマルチコアファイバの製造方法と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0182】
マルチコアファイバの第4の製造方法は、上述したマルチコアファイバの第1の製造方法と同様に、穿設工程P1、挿入工程P2、一体化工程P3、線引き工程P4及び保護層形成工程P5を主工程として備える。
【0183】
第4の製造方法では、これら工程P1〜P5のなかで穿設工程P1の内容が上述したマルチコアファイバの第1の製造方法と異なるため、当該穿設工程P1を主に説明する。
【0184】
図20は、マルチコアファイバ1の第4の製造方法における穿設工程後の様子を示す図である。
図20に示すように、穿設工程P1では、第1の製造方法における貫通孔HLに加えて応力緩衝用孔150がクラッドロッド71に穿設される。
【0185】
応力緩衝用孔150は、一体化工程P3においてクラッドロッド71に生じる応力を緩衝するための孔であり、当該一体化工程P3で埋められる孔である。この応力緩衝用孔150は、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向とは直交する第2方向に内側貫通孔HLBを挟んで穿設される。
【0186】
なお、
図20では、応力緩衝用孔150の断面形状が円状である場合を例示しているが、円状以外の断面形状が適用されていても良い。また、
図20では、各応力緩衝用孔150それぞれ断面形状が同じである場合を例示しているが、当該断面形状が異なっていても良い。さらに、
図20では、応力緩衝用孔150の断面積と貫通孔HLの断面積とが異なる場合を例示しているが同じであっても良い。
【0187】
このような応力緩衝用孔150及び複数の貫通孔HLが穿設された後、上述の挿入工程P2、一体化工程P3及び線引き工程P4を順次経る。これによりコア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aがコア11として形成され、ガラス層72B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0188】
その後、上述の保護層形成工程P5を経ることで、
図1に示すマルチコアファイバ1が製造される。
【0189】
<作用・効果>
以上のとおり第4の製造方法は、一体化工程P3で埋められる1対の応力緩衝用孔150を、内側貫通孔HLBを挟んで複数の貫通孔HLが並べられる第1方向とは直交する第2方向に穿設している。
【0190】
このため、内側貫通孔HLBに加わる応力が第1方向に比べて第2方向が大きくても、当該第2方向に穿設される応力緩衝用孔150によって、内側貫通孔HLB内のコア被覆ロッド72に加わる単位時間あたりの応力量が第1方向と第2方向とで同程度となる。
【0191】
したがって、第4の製造方法は、貫通孔に加わる応力に相違を有していても、外側貫通孔内のコア被覆ロッドの形状と同程度に内側貫通孔内のコア被覆ロッドを変形させることが可能となる。
【0192】
ところで、上述の第4の製造方法を用いてマルチコアファイバ2〜5を製造する場合においては、上述した第1の製造方法を用いてマルチコアファイバ2〜5を製造する場合と同様であるためここでは省略する。
【0193】
なお、第4の製造方法を用いてマルチコアファイバ5を製造する場合、穿設工程P1においてクラッドロッド71に穿設すべき応力緩衝用孔150の位置は、第1方向とは直交する第2方向に内側貫通孔HLBを挟んでいれば、空孔41と空孔51との間であっても、空孔51とクラッドロッド71の外周面との間であっても良い。
【0194】
(3)変形例
以上、マルチコアファイバ1〜5とその製造方法とが一例として説明されたが、本発明のマルチコアファイバ及びその製造方法は上記マルチコアファイバ1〜5とその製造方法に限定されるものではない。
【0195】
例えば上記第1〜第4の製造方法では、一体化工程P3が行われた後に線引き工程P4が行われたが、当該一体化工程P3と線引き工程P4とが同時に行われても良い。一体化工程P3と線引き工程P4とを同時に行う場合、挿入工程P2を経て得られるクラッドロッド71及びコア被覆ロッドの一端を円錐状の凸部として形成する末端加工処理が施される。その後、クラッドロッド71が紡糸炉に設置され、当該紡糸炉によってクラッドロッド71及びコア被覆ロッドの一端が一体化しながら線引きされる。
【0196】
なお、第1〜第4の製造方法のいずれかの方法を用いて、空孔41を有するマルチコアファイバ4、あるいは、空孔41と1対の空孔51とを有するマルチコアファイバ5を製造する場合、一体化しながら線引きする際に、当該空孔を形成する必要がある。
【0197】
具体的には、例えば、クラッドロッド71及びコア被覆ロッドの一端を一体化しながら線引きする際に、空孔41と1対の空孔51との一方又は双方を形成するための圧をクラッドロッド71に与え続ける。このようにすれば、クラッドロッド71及びコア被覆ロッドの一端を一体化するとともに空孔を形成しながら線引きすることができる。
【0198】
また、本発明のマルチコアファイバ及びその製造方法は、上述した内容以外に、適宜、本願目的を逸脱しない範囲で組み合わせ、省略、変更、周知技術の付加などをすることができる。