(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921553
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】プラスチックボトルの底部構造
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
B65D1/02 C
【請求項の数】17
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-529574(P2013-529574)
(86)(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公表番号】特表2013-538760(P2013-538760A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2011004717
(87)【国際公開番号】WO2012038075
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2013年7月25日
(31)【優先権主張番号】A1577/2010
(32)【優先日】2010年9月22日
(33)【優先権主張国】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510221733
【氏名又は名称】レッド・ブル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】RED BULL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒュルス,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】コンツィン,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ベーバー−トリンクファス,ガブリエレ
(72)【発明者】
【氏名】クッチャイト,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー,ティルマン
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−208813(JP,A)
【文献】
特開2002−308245(JP,A)
【文献】
特開平04−294735(JP,A)
【文献】
特開2004−149157(JP,A)
【文献】
特開2005−112361(JP,A)
【文献】
特開2005−119742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された飲料用のプラスチックボトルの底部であって、
環状ヒール部(6)と、
ヒール部(6)に包囲され、かつヒール部(6)と一体化した凹部(7)とを有し、
凹部(7)は、星形に配置され剛性を増強する補強要素を有し、
補強要素は、凹部(7)の凸領域(9)により形成され、
凹部(7)と凸領域(9)とは、同じ壁厚を有し、
底部は、ヒール部(6)の隣りにまたは凸領域とヒール部(6)との間に、少なくとも1つの環状溝(8)を有し、
前記環状溝(8)の内周側エッジおよび外周側エッジは、前記凸領域(9)よりも外側に突出し、
前記環状溝(8)の外周側エッジは、前記プラスチックボトルの底部の接触領域を形成することを特徴とする、プラスチックボトルの底部。
【請求項2】
凸領域(9)は、互いに離間して周方向に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の底部。
【請求項3】
凸領域(9)は、接触領域に平行するまたは接触領域を形成する部分(10)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の底部。
【請求項4】
環状ヒール部(6)は、底部の接触領域を含むことを特徴とする、請求項1、2または3に記載の底部。
【請求項5】
凸領域(9)は、横方向および内側径方向に沿って、接触領域に平行するまたは接触領域を形成する部分(10)にそれぞれ隣接する湾曲部(11、12)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の底部。
【請求項6】
凸領域(9)は、中央凹領域(13)を包囲することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の底部。
【請求項7】
底部は、凸領域(9)と中央凹領域(13)との間に、少なくとも1つの環状溝(14)を有することを特徴とする、請求項6に記載の底部。
【請求項8】
凸領域(9)は、ヒール部(6)と中央凹領域(13)との間の径方向間隔に実質的に対応する径方向伸びを有することを特徴とする、請求項6または7に記載の底部。
【請求項9】
凸領域(9)は縦長形状を有し、径方向伸びは周方向伸びより長いことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の底部。
【請求項10】
環状ヒール部(6)および/または凹部(7)は、1.95mm以下の平均壁厚を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の底部。
【請求項11】
底部は、20℃の温度で最大5g/LのCO2濃度の瓶内圧に耐えるように設計されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の底部。
【請求項12】
環状ヒール部(6)および/または凹部(7)は、ポリエチレンテレフタラート(PET)を含むまたはポリエチレンテレフタラート(PET)からなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の底部。
【請求項13】
環状ヒール部(6)はボトルの側壁(2)と一体化した、請求項1に記載の底部。
【請求項14】
環状ヒール部(6)および/または凹部(7)は、1.5mm以下の平均壁厚を有することを特徴とする、請求項10に記載の底部。
【請求項15】
加圧された飲料用のプラスチックボトルであって、請求項1〜14のいずれか1項に記載の底部を有する、加圧された飲料用のプラスチックボトル。
【請求項16】
プラスチックボトルおよび底部は、ポリエチレンテレフタラート(PET)を含むまたはポリエチレンテレフタラート(PET)からなることを特徴とする、請求項15に記載のプラスチックボトル。
【請求項17】
前記環状ヒール部(6)がボトルの側壁(2)と一体化している、請求項15に記載のプラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトルの底部、特に加圧された飲料用のプラスチックボトルの底部に関する。底部は、好ましくはボトルの側壁と一体化した環状ヒール部と、ヒール部に包囲され、かつヒール部と一体化した凹部とを有する。凹部は、星形に配置され剛性を増強する補強要素を有する。
【0002】
本発明はさらに、加圧された飲料用のプラスチックボトルに関する。このプラスチックボトルは、好ましくはボトルの側壁と一体化した環状ヒール部を有する底部を含む。
【背景技術】
【0003】
上記種類の底部は、たとえば、DE−OS1801368に記載されている。
プラスチックボトルは、特定の設計条件を満たす場合に限り、加圧された飲料等の収納および貯蔵に適する。この目的でプラスチックボトルを使用するときに生じる主な問題の1つは、ボトルの底部中央部分が底部の周縁から外側へ歪むまたは膨らむ傾向があるため、ボトルの位置安定性を損なうことである。ボトルの底部を、シャンパンボトル型の底部または花弁状の底部のように設計することが知られている。シャンパンボトル型の底部が内側へ湾曲しているため、外側へ歪むことなく、特定の内部圧力に耐えることができる。このようなシャンパンボトル型の底部はガラス瓶において特に一般的である。加圧された飲料用のプラスチックボトルの適合性は、決定的に底部の壁厚に依存する。底部の壁が薄過ぎると、ボトル構造に柔軟性があり過ぎるとなり、ボトル底部の過剰な膨らみを防ぐことができなくなる。底部の壁が厚過ぎると、材料消費、製造コストおよびボトルの重さが大きくなり過ぎる。従来型のシャンパンボトル型の底部は、飲料の特定のCO
2濃度的観点から、もはや経済的に使用することができない。花弁状の底部は側壁上に延在するくびれを含み、それらのくびれの間に、湾曲した花弁状の領域が形成されている。花弁状の底部は、底部の壁が比較的薄くても高内部圧力に耐えられるため、特にプラスチックボトルにおいて非常に一般的である。位置安定性が弱く、特に静的安定限界角が小さいという欠点があるため、このようなボトルの転倒危険性がシャンパン底部を有する同等のボトルよりも大きくなる。ボトルの外観も、側壁上に延在する花弁状の領域により損なわれる。
【0004】
プラスチックボトルで使用するために、シャンパン底部の強度または剛性を向上させる、さまざまな試みがなされている。たとえば、DE−OS1801368は、ボトルの凹み底部に、補強リブを星形に配置することを提案している。しかしながら、補強リブを形成する材料が底部に加えられるため、結果的に過剰な材料が消費され、よってボトルの重さが大きくなる。また、このようなボトル底部の製造は普通のシャンパンボトル底部の製造よりもはるかに複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プラスチックボトルの底部を改良し、軽量かつ材料消費の面で経済的でありながら、高圧飲料の貯蔵に適するプラスチックボトルを提供することにある。製造が、簡単に、安価で、かつ短周期で自動化されて行われる。さらに、ボトルが魅力的で高品質な外観を有する。特に、ボトルの底部がボトルの設計に制限を課すことはない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、冒頭で述べた種類の底部により実質的に達成される。この底部において、補強要素が凹部の凸領域により形成され、凹部と凸領域とが実質的に均一の壁厚を有する。この底部がシャンパンボトル型の底部の形状に基づき、底部の凹部が本発明が提案した要素により補強されるため、普通のシャンパンボトル型の底部に比べて材料の消費が増加しないまたはわずかしか増加しない。本発明により提供された補強要素は、底部における凹部の凸領域から形成されているだけであるため、材料の厚みが増加することはない。驚くべきことに、そのような補強部分が非常に薄い底部壁の場合でも非常に頑丈な構造をもたらし、非常に高い瓶内圧でも底部において外側への歪みが起きないことは分かった。
【0007】
このような底部であるため、プラスチックボトルは従来確立された方法を用いて簡単に製造され得る。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)から作られるボトルは、好ましくはPET予成形品と呼ばれる射出成形の予成形品から製造される。PET予成形品からPETボトルを製造するプロセスは、以下のステップを含む。まず、予成形品を加熱する。すなわち、温度プロファイルが、所望の壁厚分布に応じて、予成形品に適用される。たとえば、赤外線輻射加熱器を使用してもよい。その後、予成形品を3つの部分からなる金型に固定し、予成形品の中にマンドレルを挿入し、予成形品を最終のボトル長さに伸ばす。このようにして得られた円筒状予成形品に、圧縮空気を吹込み、最終形状に形成する。その後、金型を冷却して、ボトルをガラス転移温度より低い温度に下げる。最後に、金型を開き、完成品のボトルが排出される。
【0008】
本発明に係る底部を得るために、底部領域に合わせて金型を調整する必要があるが、基本的なプロセスは同じままであり、追加の処理ステップが必要としない。上記製造プロセスを用いて、凸領域を含め、凹部を実質的に均一の壁厚になるように簡単に製造することができる。「実質的に」という用語は、製造プロセスによって、壁厚がわずかに変化してもよいということを意味する。たとえば、金型に予成型品を押込むときに、隣接する領域に比べて材料が凸領域でより多く伸ばされ、これらの領域において底部が少し薄くてもよい。
【0009】
好ましくは、凸領域が縦長形状を有する。すなわち、凸領域の径方向伸びが周方向伸びより大きい。よって、底部が特に安定する。
【0010】
本発明の好ましい展開例によれば、凸領域は、周方向で互いに離間している。凸部は、特に周方向に均等に配置される。ボトルの直径に応じて、このような領域としては、領域3,4,5,7,8,9,10,11または12が考えられる。
【0011】
底部の凹部を補強することに加えて、凸領域はまたボトルの接触領域としての役割を果たしている。この目的のために、凸領域を、接触領域に平行するまたは接触領域を形成する部分を含むように設計することが好ましい。接触領域に平行する部分は、たとえば接触領域から突出した隆起などを含んでもよい。
【0012】
上述の突出補強領域の部分により形成された接触領域の代わりにまたはそれに加えて、ボトルを底部のヒール部により通常通りに置くことも可能である。この場合、底部の環状ヒール部は底部の接触領域を含む。このようにして、シャンパンボトル型の底部を有する従来のボトルと同様に、ボトルの底部は、底部のヒール部に沿って床面に接触する。よって、たとえばシャンパンボトル型のようなボトルに対して審美的要求および高品質のボトル設計を考案することができるようになり、側壁を自由な設計で底部まで延在させることができ、補強要素などが見えなくなる。
【0013】
好ましい展開例によれば、凸領域が、横方向および内側径方向に沿って、接触領域に平行するまたは接触領域を形成する部分に隣接する湾曲部を含むと、良い補強特性を得ることができる。
【0014】
凸領域を、中央凹領域を包囲するようにすれば、底部の安定性がさらに改善され得る。
底部を、特にヒール部の隣りにまたは凸領域とヒール部との間に、少なくとも1つの環状溝を有するようにすれば、底部の安定性がさらに好ましく改善され得る。
【0015】
底部を、凸領域と中央凹領域との間に、少なくとも1つの環状溝を有するようにすれば、底部の安定性がさらに好ましく改善され得る。
【0016】
底部を、凸領域と中央凹領域との間に、環状溝を有するようにすれば、底部の安定性がさらに好ましく改善され得る。
【0017】
好ましくは、凸領域が、ヒール部と中央凹領域との間の径方向間隔に実質的に対応する径方向伸びを有する。よって、最大の補強が得られる。
【0018】
上述したように、本発明に係る底部は、主に飲料のCO
2含量に依存する高内圧に適する。1つの有利な展開例では、底部は、20℃の温度で最大5g/LのCO
2濃度の瓶内圧に耐えるように設計される。
【0019】
高コスト効率および軽量であって、少ない材料を必要とする設計を得るために、ボトルの壁を薄くすることは重要である。しかし、安定性上の理由で壁厚を無制限に減らすことができない。この点に関する好ましい実施形態では、環状ヒール部および/または凹部は、1.95mm以下、好ましくは1.5mmの平均壁厚を有し、凹部は、いずれの箇所においても1.95mm、好ましくは1.5mm、好ましくは1mmの壁厚を越えない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の図面において線図により示された実施形態を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
図1は、プラスチックボトル、特に側壁2と、側壁2と一体化した底部3とを含むペットボトル1を示している。ボトルネック4が図面に示されない雄ねじを有し、ねじ蓋5がボトルネック4にねじ込まれる。
【0023】
図2は、底部3の底面図である。底部3は環状ヒール部6を含む。ボトルは、環状ヒール部6を介して支持面と接触する。ヒール部6と凹部7との間には、環状溝8が設けられている。凹部7は、外側へ突出するドーム状、すなわち、凸状の領域9を含む。凸領域9の各々は、接触領域に平行する部分10と、接触領域に平行するように形成された部分10に横方向で隣接する湾曲部11と、接触領域に平行するように形成された部分10に径方向で隣接する湾曲部12とを含む。別の環状溝14が、凸領域9と中央凹領域13との間に設けられている。
【0024】
図3の断面図は、凸領域9の各々の湾曲、および底部3の壁厚または材料厚さが全体に亘って実質的に同様であることをよく示している。
【0025】
本発明のさまざまな実施形態を実施するために、上記説明において開示された本発明の特徴、特許請求の範囲および図面は、個別で関連してもよく、組合わせで関連してもよい。