特許第5921589号(P5921589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921589
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】タッチ制御ディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/044 20060101AFI20160510BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   G06F3/044 124
   G06F3/041 590
   G06F3/041 500
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-46544(P2014-46544)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2014-112436(P2014-112436A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2014年3月10日
(31)【優先権主張番号】201310335041.1
(32)【優先日】2013年8月2日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515217270
【氏名又は名称】フォーカルテック・エレクトロニクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FocalTech Electronics,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】マオ, リアングア
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン, グア
【審査官】 西田 聡子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−039380(JP,A)
【文献】 特開2011−081825(JP,A)
【文献】 特開平05−134805(JP,A)
【文献】 特開2011−233019(JP,A)
【文献】 特開2009−244958(JP,A)
【文献】 特表2013−501983(JP,A)
【文献】 特表2013−501996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/044
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ制御ディスプレイ装置であって、
第1基板と、第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配設された液晶層と、共通電極と、複数の画素単位と、
前記共通電極の上に配設された複数のタッチ感知電極であって、二次元アレイに配置された複数のタッチ感知電極と、
前記複数のタッチ感知電極の各々にそれぞれワイヤを介して接続されたタッチ制御チップと、
を備え
前記複数のタッチ感知電極は、前記二次元アレイにおける1つのタッチ感知電極が検知される際に、検知されない残りのタッチ感知電極が、検知される前記1つのタッチ感知電極に印加された信号に基づき、同時に駆動される同時駆動モードで駆動されることを特徴とするタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記複数のタッチ感知電極のいずれかが、
等辺多角形、ひし形、長形、円形、または楕円形であることを特徴とする請求項1に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記複数のタッチ感知電極は、凹形および凸形構造であることを特徴とする請求項2に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記複数のタッチ感知電極は、インジウム錫酸化物またはグラフェンで作られることを特徴とする請求項1に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記タッチ制御チップは、前記第1基板または前記第2基板の表面にチップオンガラスモードで結合されることを特徴とする請求項1に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項6】
前記ワイヤと前記複数のタッチ感知電極とは同じ層に配置される、または
前記ワイヤは、前記複数のタッチ感知電極とは異なる層に配置され、バイアを通して前記複数のタッチ感知電極に接続される、ことを特徴とする請求項5に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項7】
前記第1基板または前記第2基板の表面に結合されて前記タッチ制御チップに接続された可撓性印刷回路を、さらに備えることを特徴とする請求項5に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項8】
前記タッチ制御チップは、
各タッチ感知電極の自己静電容量を検出すべく、さらには自己静電容量感知二次元アレイに基づきタッチ位置を判定すべく、構成されることを特徴とする請求項5に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記タッチ制御チップは、
前記複数のタッチ感知電極を1つの電圧源または電流源で駆動すべく、さらには前記複数のタッチ感知電極から感知データを受信すべく、構成された駆動/受信ユニットと、
前記感知データに基づき各タッチ感知電極の前記自己静電容量を計算すべく構成された信号処理ユニットと、
を備えることを特徴とする請求項8に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項10】
前記感知データは、前記複数のタッチ感知電極の電圧、周波数、または電気量を表すことを特徴とする請求項9に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項11】
前記電圧源または電流源は、2つ以上の周波数を有することを特徴とする請求項9に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項12】
前記タッチ制御チップは、
前記複数のタッチ感知電極の全ての自己静電容量を同時に検出すべく、または前記複数のタッチ感知電極の自己静電容量を群単位で検出すべく、構成されることを特徴とする請求項8に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項13】
前記タッチ制御チップは、
タッチ検出の感度および/またはダイナミックレンジを前記電圧源または電流源のパラメータによって調整すべくさらに構成され、
前記パラメータは、振幅、周波数、時系列、またはこれらのいずれかの組み合わせのうちの1つを含むことを特徴とする請求項9に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。
【請求項14】
前記タッチ制御ディスプレイ装置は、横電界スイッチング構造を有し、
前記複数のタッチ感知電極は前記共通電極の前記液晶層に面する側に設けられる、または、
前記タッチ制御ディスプレイ装置は、ねじれネマティック構造を有し、
前記複数のタッチ感知電極は前記共通電極の前記液晶層に面する側とは反対の側に設けられる、ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のタッチ制御ディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月2日に中国国家知識産権局に出願された中国特許出願第201310335041.1号に対して優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、タッチ制御技術、特にタッチ制御ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、静電容量式タッチスクリーンがさまざまな電子製品に幅広く用いられており、我々の仕事および生活に徐々に普及してきている。静電容量式タッチスクリーンのサイズは、次第に大型化しており、例えば、3インチからスマートフォンの6.1インチへと、タブレットの10インチへと、大型化している。静電容量式タッチスクリーンの用途は、スマートTVにも及びうる。ただし、既存の静電容量式タッチスクリーンは、一般に、抗干渉性能が低い、タッチ検出スキャンのフレームレートが低い、サイズが大きい、製造工程が複雑であるという問題を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本開示の目的は、上記の問題の少なくとも1つを解決しうるタッチ制御ディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の各実施形態によるタッチ制御ディスプレイ装置は、
第1基板と、第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配設された液晶層と、共通電極と、複数の画素単位と、
共通電極の上に配設された複数のタッチ感知電極であって、二次元アレイに配置され、共通電極の液晶層に面する側に設けられた複数のタッチ感知電極と、
を含む。
【0006】
これらタッチ感知電極はいずれも、等辺多角形、ひし形、長形、円形、または楕円形であってもよい。
【0007】
場合によっては、これらタッチ感知電極は凹形および凸形構造である。
【0008】
これら複数のタッチ感知電極は、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)製またはグラフェン製であってもよい。
【0009】
好ましくは、本タッチ制御ディスプレイ装置は、
タッチ制御チップであって、複数のタッチ感知電極の各々にそれぞれワイヤを介して接続され、第1基板または第2基板の表面にチップオングラスモードで結合されたタッチ制御チップを、さらに含む。
【0010】
好ましくは、これらワイヤと複数のタッチ感知電極とは同じ層に配置される、または、
これらワイヤは複数のタッチ感知電極とは異なる層に配置され、複数のバイアを通して複数のタッチ感知電極に接続される。
【0011】
本タッチ制御ディスプレイ装置は、
可撓性印刷回路であって、第1基板または第2基板の表面に結合され、タッチ制御チップに接続された可撓性印刷回路を、さらに備えうる。
【0012】
好ましくは、タッチ制御チップは、
各タッチ感知電極の自己静電容量を検出すべく、さらには自己静電容量感知二次元アレイに基づきタッチ位置を判定すべく、構成される。
【0013】
タッチ制御チップは、
複数のタッチ感知電極を1つの電圧源または電流源で駆動すべく、さらにはこれらタッチ感知電極から感知データを受信すべく、構成された駆動/受信ユニットと、
この感知データに基づき各タッチ感知電極の自己静電容量を計算すべく構成された信号処理ユニットと、
を備えうる。
【0014】
好ましくは、駆動/受信ユニットは、これらタッチ感知電極を同時駆動モードで駆動すべく構成される。
【0015】
この感知データは、これらタッチ感知電極の電圧、周波数、または電気量を表しうる。
【0016】
電圧源または電流源は、2つ以上の周波数を有しうる。
【0017】
好ましくは、タッチ制御チップは、
全てのタッチ感知電極の自己静電容量を同時に検出すべく、またはこれらタッチ感知電極の自己静電容量を群単位で検出すべく、構成される。
【0018】
タッチ制御チップは、
タッチ検出の感度および/またはダイナミックレンジを電圧源または電流源のパラメータによって調整すべくさらに構成されうる。
【0019】
これらパラメータは、振幅、周波数、時系列、またはこれらのいずれかの組み合わせのうちの1つを含む。
【0020】
好ましくは、タッチ制御ディスプレイ装置は、横電界スイッチング構造を有し、
複数のタッチ感知電極は共通電極の液晶層に面する側に設けられる、または、
タッチ制御ディスプレイ装置はねじれネマティック構造を有し、
複数のタッチ感知電極は共通電極の液晶層に面する側とは反対の側に設けられる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の各実施形態による解決策においては、二次元アレイに配置された複数のタッチ感知電極が液晶表示部の共通電極の表面に配設されるので、複数の電極でのノイズ蓄積によってエラーが引き起こされるという従来技術の問題は、リアルマルチタッチを実現する前提条件下において解決される。
【0022】
本開示の各実施形態による解決策では、電源ノイズによって引き起こされる影響が大幅に除去されうるとともに、無線周波数(RF:Radio Frequency)の干渉と液晶表示部などからの干渉とがさらに低減されうる。
【0023】
さらに、本開示の各実施形態による解決策では、複数のタッチ感知電極が同時に検出されうる。したがって、1回のタッチ検出スキャンの時間が短縮され、タッチ検出スキャンのフレームレートが向上される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1(a)】本開示の実施形態1によるタッチ制御ディスプレイ装置の略側面図である。
図1(b)】本開示の実施形態1によるタッチ制御ディスプレイ装置の略側面図である。
図1(c)】本開示の実施形態1によるタッチ感知電極層の平面図を示す。
図2(a)】本開示の実施形態2によるタッチ制御ディスプレイ装置の略側面図である。
図2(b)】本開示の実施形態2によるタッチ制御ディスプレイ装置の略側面図である。
図3】本開示の実施形態3によるタッチ制御ディスプレイ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の複数の実施形態による技術的解決策のより深い理解のため、上記図面を参照して複数の実施形態を説明する。これらの図面は本発明の複数の実施形態の一部に過ぎないことは言うまでもない。これらの図面に基づき、当業者は、発明に向けた努力なしに、他の図面を得ることができる。
【0026】
本開示の技術的解決策が当業者により深く理解されるように、本開示の複数の実施形態における技術的解決策を図面とともに以下に説明する。記載の実施形態は、本発明の全ての実施形態ではなく、一部の実施形態であるに過ぎないことは言うまでもない。当業者が、発明に向けた努力なしに、本開示のこれら実施形態に基づき得た他の実施形態はいずれも本発明の範囲に含まれるものとする。
【0027】
説明の便宜上、装置の構造を示す断面図は部分的に拡大されており、原寸に比例して描かれていない。これら図面は例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。さらに、実際の製造工程においては、三次元サイズ、すなわち、長さ、幅、および奥行き、が考慮されるべきである。
【0028】
[実施形態1]
本開示の実施形態1によると、タッチ制御ディスプレイ装置が提供される。
【0029】
本タッチ制御ディスプレイ装置は、
第1基板11と、第2基板13と、
第1基板11と第2基板13との間に配設された液晶層15と、共通電極17と、複数の画素単位と、
共通電極17の上に配設された複数のタッチ感知電極19であって、二次元アレイに配置された複数のタッチ感知電極19と、
を含む。
【0030】
本タッチ制御ディスプレイ装置は、横電界スイッチング(IPS:In−Plane Switching)構造を有しうる。この場合、複数のタッチ感知電極19は共通電極17の液晶層15に面する側に設けられる。あるいは、本タッチ制御ディスプレイ装置は、ねじれネマティック(TN:Twisted Nematic)構造を有しうる。この場合、複数のタッチ感知電極19は共通電極17の液晶層15に面する側とは反対の側に設けられる。
【0031】
図1(a)は、本開示の実施形態1によるタッチ制御ディスプレイ装置の1つの例の略側面図である。ここで、タッチ制御ディスプレイ装置はIPS構造を有する。
【0032】
図1(b)は、本開示の実施形態1によるタッチ制御ディスプレイ装置の別の例の略側面図である。ここで、タッチ制御ディスプレイ装置はTN構造を有する。
【0033】
共通電極17は、タッチ制御ディスプレイ装置の液晶表示部に属する。共通電極17は、共通電圧(Vcom)によって駆動される。この共通電極17は、スクリーン上の複数の異なる領域において光束を制御するように、複数の異なる領域において液晶材料を横切る電場を、さまざまな画素単位との組み合わせで、発生させる。
【0034】
一例として、図1(a)および図1(b)に示されているタッチ制御ディスプレイ装置は、カラーフィルタ30をさらに含む。各画素単位は、それぞれ赤、緑、および青に対応する3つの副画素単位を含む。各副画素単位は薄膜トランジスタ32を1つ含む。
【0035】
図1(c)は、本開示の実施形態1によるタッチ制御ディスプレイ装置におけるタッチ感知電極層の一例を示す。これらタッチ感知電極19は、等辺多角形、ひし形、長形、円形、または楕円形であってよい。これらタッチ感知電極19はいずれも、三角形または不規則形状であってもよい。また、各タッチ感知電極19の縁部は、凹形および凸形構造であってよい。好ましくは、タッチ感知電極19は、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)製またはグラフェン製であってよい。
【0036】
これらタッチ感知電極19は同じ、または異なる、形状にしうることを当業者は理解するはずである。例えば、中央部のタッチ感知電極19をひし形にし、縁部のものを三角形にする。さらに、これらタッチ感知電極19は同じ、または異なる、形状にしうる。例えば、内側部分のタッチ感知電極19を相対的に大きくし、縁部のものを相対的に小さくすると、縁部におけるタッチ精度および配線に有利である。
【0037】
既存のインセル型タッチ制御ディスプレイ装置において、タッチ制御部は複数の行電極と複数の列電極とを含む。これら行電極/列電極は、タッチスクリーンの一方側から反対側まで延在するため、占有範囲が長く、ノイズが各行/各列に蓄積される。例えば、複数の指が同じ行または列に触れると、これらの指からのノイズがその行または列に蓄積されるため、結果としてノイズが増加する。
【0038】
これに対して、本開示の本実施形態によるタッチ制御ディスプレイ装置においては、複数のタッチ感知電極19が二次元アレイに配置され、各電極はこのアレイ内の一ユニットである。このアレイの各行または列はいくつかのユニットから成り、これらユニット間には物理的接続がないので、ノイズが蓄積されえない。
【0039】
したがって、本開示の本実施形態によるタッチ制御ディスプレイ装置においては、最大ノイズが低減され、信号対ノイズ比が向上する。
【0040】
[実施形態2]
本開示の実施形態2によるタッチ制御ディスプレイ装置は、タッチ制御チップ21をさらに備えうる。タッチ制御チップ21は、複数のタッチ感知電極19の各々にそれぞれワイヤを介して接続され、さらにタッチ制御チップ21は第1基板11または第2基板13の表面にチップオングラス(COG:Chip−on−Glass)モードで結合される。
【0041】
図2(a)は、本開示の実施形態2によるタッチ制御ディスプレイ装置の一例の略側面図である。ここで、タッチ制御ディスプレイ装置はIPS構造を有する。
【0042】
図2(b)は、本開示の実施形態2によるタッチ制御ディスプレイ装置の別の例の略側面図である。ここで、タッチ制御ディスプレイ装置はTN構造を有する。
【0043】
本実施形態によると、共通電極17とタッチ感知電極19との間に絶縁層23が配設される。また、タッチ制御チップ21と基板との間に異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)25が配設されうる。
【0044】
各タッチ感知電極19がワイヤを介してタッチ制御チップ21に接続されるので、タッチ制御チップ21のピン数が大幅に増加しうる。従来のパッケージングに起因する問題を回避するために、タッチ制御チップ21は基板の表面にCOGモードで結合される。
【0045】
従来のパッケージングにおいては、数百のピンのためにパッケージング構造が複雑になり、例えば高価なボールグリッドアレイ(BGA:Ball Grid Array)が用いられている。さらに、BGAは印刷回路板(PCB:Printed Circuit Board)または可撓性印刷回路(FPC:Flexible Printed Circuit)31の表面にのみ作製されうる。したがって、タッチ制御チップ21を各タッチ感知電極19に接続するには、FPC31を介する必要がある。
【0046】
好ましくは、タッチ制御チップ21を各タッチ感知電極19に接続するためのワイヤは、タッチ感知電極19と同じ層に配置される。あるいは、これらワイヤはタッチ感知電極19の層とは異なる層に配置され、バイアを通して各タッチ感知電極19に接続される。タッチ感知電極19は、導電層(インジウム錫酸化物などの金属酸化物、または金属)を基板の表面にエッチングすることによって形成され、タッチ制御チップ21も同じ基板の表面に配設される。これらタッチ感知電極19とタッチ制御チップ21との間の接続ワイヤは1回のエッチング処理によって実現可能であるので、製造工程が簡略化される。
【0047】
一般に、これらワイヤは、できる限り短く一様である。また、この配線の範囲は、安全距離が保証される条件下において、できる限り狭いため、より大きな空間がタッチ感知電極19用に残される。
【0048】
必要であれば、各タッチ感知電極19をワイヤによってバスに接続しうる。これらワイヤはバスによって直接、または適切な順位付け後に、タッチ制御チップ21に接続可能である。大型タッチスクリーンには多数のタッチ感知電極19が存在しうる。この状況においては、全てのタッチ感知電極19を制御させるべく単一のタッチ制御チップ21を構成することができる。あるいは、スクリーン上の区画化された複数の異なる領域にあるタッチ感知電極19を制御させるべく複数のタッチ制御チップ21を構成することもでき、これらタッチ制御チップ21をクロックと同期させることもできる。ここで、バスをいくつかのバス群に分割して、それぞれ異なるタッチ制御チップ21に接続することもできる。各タッチ制御チップ21は、同じ数または異なる数のタッチ感知電極19を制御しうる。
【0049】
本実施形態による他の構成要素の説明は、他の複数の実施形態を参照しうるので、ここでは述べない。
【0050】
[実施形態3]
本開示の実施形態3によるタッチ制御ディスプレイ装置において、タッチ制御チップ21は、各タッチ感知電極19の自己静電容量を検出すべく、さらには自己静電容量感知二次元アレイに基づきタッチ位置を判定すべく、構成される。
【0051】
一例として、各タッチ感知電極19の自己静電容量は、タッチ感知電極19のアースに対する静電容量でもよい。
【0052】
好ましくは、タッチ制御チップ21は、
複数のタッチ感知電極19を1つの電圧源または電流源で駆動すべく、さらにはこれらタッチ感知電極19から感知データを受信すべく、構成された駆動/受信ユニット42と、
この感知データに基づき各タッチ感知電極19の自己静電容量を計算すべく構成された信号処理ユニット44と、
を含む。
【0053】
図3は、本開示の実施形態3によるタッチ制御ディスプレイ装置の概略図である。
【0054】
必要であれば、図3に示されているタッチ制御ディスプレイ装置は可撓性印刷回路(FPC:Flexible Printed Circuit)31をさらに備える。この場合、FPC31は第1基板11または第2基板13の表面に結合される。FPC31はタッチ制御チップ21をホスト46に接続する。図中、符号40はメモリである。
【0055】
本実施形態による他の構成要素の説明は、他の複数の実施形態を参照しうるので、ここでは述べない。
【0056】
[実施形態4]
本開示の実施形態4によるタッチ制御ディスプレイ装置において、タッチ制御チップ21は、全てのタッチ感知電極19の自己静電容量を同時に検出すべく、またはこれらタッチ感知電極19の自己静電容量を群単位で検出すべく、構成される。
【0057】
従来技術においては、これらタッチ感知電極は複数の行電極と複数の列電極とを含み、プログレッシブスキャンが採用されており、各フレームのタッチ検出時間が長い。
【0058】
この欠点は、特に、インセル型タッチ制御ディスプレイ装置に悪影響をもたらす。動作中の液晶表示部と動作中のタッチ制御部との間の相互干渉を減らすために、液晶表示部の動作中はタッチ制御部の動作が停止され、タッチ制御部の動作中は液晶表示部の動作が停止される。
【0059】
例えば、動作周波数が60Hz(すなわちフレーム当たり16.7ms)のインセル型タッチ制御ディスプレイ装置は、一般に、表示用のスキャン時間として10〜12msを必要とする。したがって、タッチ検出用のスキャン時間は極めて短く、既存のインセル型タッチ制御ディスプレイ装置の信号対ノイズ比を低くしている。
【0060】
ただし、本開示の各実施形態によるタッチ制御ディスプレイ装置においては、各電極がタッチ制御チップ21に接続される。並行スキャンモードを用いることによって、タッチ検出用のスキャン時間は、理論上、従来技術における1行の検出時間に等しくなりうる。従来技術における信号対ノイズ比も達成されうる。
【0061】
例えば、16行と28列とを有するインセル型タッチ制御ディスプレイ装置の場合、各行の検出時間がTであると想定すると、既存構造のスキャンには16Tが費やされる。ただし、本開示の各実施形態の構造によると、各フレームのタッチ検出の最短時間は1Tに過ぎない。
【0062】
本実施形態による他の構成要素の説明は、他の複数の実施形態を参照しうるので、ここでは述べない。
【0063】
[実施形態5]
実施形態5によるタッチ制御ディスプレイ装置は、表示制御回路をさらに含む。本タッチ制御ディスプレイ装置は、第1ステップを繰り返す。このステップでは、表示制御回路が1つのフレームをスキャンし、次にタッチ制御チップ21に設けられたタッチ制御回路が1つのフレームをスキャンする。すなわち、最初に1つのフレームに対する表示スキャンが行われ、次に1つのフレームに対するタッチ検出スキャンが行われる。これが何回も繰り返される。
【0064】
あるいは、タッチ制御ディスプレイ装置は第2ステップを繰り返す。このステップでは、タッチ制御回路が1つのフレームをスキャンし、次に表示制御回路が1つのフレームをスキャンする。すなわち、最初に1つのフレームに対するタッチ検出スキャンが行われ、次に1つのフレームに対する表示スキャンが行われる。これが何回も繰り返される。
【0065】
さらに、各フレームの表示スキャンが複数のセグメントに分割されうる。この場合、タッチ検出スキャンはセグメントごとに行われる。この方法によると、タッチ検出の頻度は、表示の頻度より数倍高い。したがって、タッチ検出のフレームレートが増大する。
【0066】
換言すると、表示制御回路によって行われる各フレームのスキャンが複数のセグメントに分割され、タッチ制御回路は、表示制御回路によって行われるスキャンの前後およびセグメント間ごとに、スキャンを行う。
【0067】
本実施形態による他の構成要素の説明は、他の複数の実施形態を参照しうるので、ここでは述べない。
【0068】
[実施形態6]
本開示の実施形態6によるタッチ制御ディスプレイ装置において、駆動/受信ユニット42は全てのタッチ感知電極19を同時駆動モードで駆動すべく構成される。
【0069】
具体的には、この同時駆動は、以下のA〜Dまたはこれらのいずれかの組み合わせのうちの1つを含みうる。
【0070】
A:駆動/受信ユニット42は、各タッチ感知電極19の駆動時に、このタッチ感知電極19に印加された信号に基づき、残りのタッチ感知電極19を同時に駆動すべく構成される。
【0071】
B:駆動/受信ユニット42は、各タッチ感知電極19の駆動時に、このタッチ感知電極19に印加された信号に基づき、このタッチ感知電極19の周囲にあるタッチ感知電極19を同時に駆動すべく構成される。
【0072】
C:駆動/受信ユニット42は、各タッチ感知電極19の駆動時に、このタッチ感知電極19に印加された信号に基づき、共通電極17を同時に駆動すべく構成される。
【0073】
D:駆動/受信ユニット42は、各タッチ感知電極19の駆動時に、このタッチ感知電極19に印加された信号に基づき、対応する画素単位内のデータ線を同時に駆動すべく構成される。
【0074】
各タッチ感知電極19はワイヤを介してタッチ制御チップ21に接続されるので、ワイヤ数が多く、面積が限られている場合は配線幅が極めて狭い。したがって、抵抗が増し、検出信号の品質が損なわれる。同時駆動モードでは、検出される電極の電圧と検出されない電極の電圧との差が小さい。これは、検出される電極の静電容量を減らすために好都合であり、水滴に起因する誤タッチを防止するためにも好都合である。
【0075】
本実施形態による他の構成要素の説明は、他の複数の実施形態を参照しうるので、ここでは述べない。
【0076】
[実施形態7]
本開示の実施形態7によるタッチ制御ディスプレイ装置において、感知データは、タッチ感知電極の電圧、周波数、または電気量を表しうる。
【0077】
必要であれば、電圧源または電流源は2つ以上の周波数を有しうる。
【0078】
必要であれば、タッチ制御チップ21は、タッチ検出の感度またはダイナミックレンジを電圧源または電流源のパラメータによって調整すべくさらに構成されうる。これらパラメータは、振幅、周波数、時系列、またはこれらのいずれかの組み合わせのうちの1つを含む。
【0079】
本実施形態による他の構成要素の説明は、他の複数の実施形態を参照しうるので、ここでは述べない。
【0080】
[実施形態8]
本開示の実施形態8によるタッチ制御ディスプレイ装置においては、現フレームのデータが無効な場合(ノイズの極性と駆動源の極性とが反対であると、有効信号が弱まりうる。この場合、弱まった有効信号が検出不能であると、現フレームのデータが無効になる)、現フレームのデータは複数フレームのデータによって回復されうる。タッチ検出のスキャン頻度は実際に必要なレポートレートより高いため、複数フレームのデータの処理によって通常のレポートレートが損なわれえないことを当業者は理解するはずである。
【0081】
同様に、ノイズがシステムのダイナミックレンジを大幅に超えない場合も、複数フレームのデータによって現フレームの回復が可能であるため、正しいタッチ位置を得ることができる。このフレーム間処理という方法は、RF干渉および液晶表示部など他のノイズ源からの干渉にも適用可能である。
【0082】
本明細書の各実施形態においては他の実施形態との違いが強調されており、各実施形態の同じ、または同様の、部分は互いに参照可能である。
【0083】
開示された各実施形態の上記説明に基づき、当業者は本発明を実施または応用しうる。当業者には各実施形態のさまざまな変更が明らかである。本願明細書で示唆されている全般的原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の複数の実施形態で実現可能である。したがって、本発明は、本願明細書に開示されている実施形態に限定されず、本願明細書に開示されている新規機能および原理に従った最も広い範囲を有するものとする。
【符号の説明】
【0084】
11 第1基板
13 第2基板
15 液晶層
17 共通電極
19 タッチ感知電極
21 タッチ制御チップ
23 絶縁層
25 異方性導電フィルム(ACF)
30 カラーフィルタ
31 可撓性印刷回路(FPC)
32 薄膜トランジスタ
40 メモリ
42 駆動/受信ユニット
44 信号処理ユニット
46 ホスト
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2(a)】
図2(b)】
図3