特許第5921591号(P5921591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921591
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】基板処理装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20160510BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20160510BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20160510BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   H01L21/31 C
   C23C16/455
   H01L21/316 X
   H01L21/318 B
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-69341(P2014-69341)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-144225(P2015-144225A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2014年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-271926(P2013-271926)
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】廣地 志有
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
【審査官】 境 周一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−516920(JP,A)
【文献】 特表2002−500276(JP,A)
【文献】 特開2010−242224(JP,A)
【文献】 特表2009−526399(JP,A)
【文献】 特開2008−135296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00−21/98
C23C 14/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス源に接続され、原料ガス供給制御部が設けられる原料ガス供給管を有する原料ガス供給系と、
反応ガス源に接続され、上流から順に反応ガス供給制御部、プラズマ生成部、イオン捕獲部が設けられる反応ガス供給管と、
前記反応ガス供給制御部と前記プラズマ生成部の間に下流端が接続されると共に、上流端が不活性ガス供給源に接続され、更に不活性ガス供給制御部が設けられる不活性ガス供給管と、
前記反応ガス供給管と前記不活性ガス供給管を有する反応ガス供給系と、
前記原料ガス供給系から原料ガスが供給され、前記反応ガス供給系から反応ガスが供給され、基板を処理する処理室と、
少なくとも前記原料ガス供給制御部と前記反応ガス供給制御部と前記不活性ガス供給制御部とを制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記原料ガス供給系から前記処理室に前記原料ガスを供給すると共に、前記反応ガス供給系から前記プラズマ生成部を稼動した状態で前記処理室に不活性ガスを供給する第一の処理ガス供給工程と、前記第一の処理ガス供給工程の後に前記プラズマ生成部の稼動及び前記不活性ガスの供給を維持した状態で前記反応ガスの供給を開始する第二の処理ガス供給工程を行なうよう制御する
基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一の処理ガス供給工程と前記第二の処理ガス供給工程を繰り返すよう制御する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
更に、不活性ガスの供給を制御する不活性ガス供給制御部が設けられた不活性ガス供給管を有する不活性ガス供給系とを有し、前記制御部は前記第一の処理ガス供給工程と前記第二の処理ガス供給工程の間に前記不活性ガス供給系から前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程を行うよう制御し、更に前記第一の処理ガス供給工程と前記第二の処理ガス供給工程と前記不活性ガス供給工程を行う間、前記プラズマ生成部の稼動を維持し続けるよう制御する請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を処理室に搬入する工程と、
原料ガス源に接続され、原料ガス供給制御部が設けられる原料ガス供給管を有する原料ガス供給系から処理室に原料ガスを供給すると共に、
反応ガス源に接続され、上流から順に反応ガス供給制御部、プラズマ生成部、イオン捕獲部が設けられる反応ガス供給管と、前記反応ガス供給制御部と前記プラズマ生成部の間に下流端が接続されると共に、上流端が不活性ガス供給源に接続され、更に不活性ガス供給制御部が設けられる不活性ガス供給管とを有する前記反応ガス供給系から、前記プラズマ生成部を稼働した状態で前記処理室に不活性ガスを供給する第一の処理ガス供給工程と、
前記第一の処理ガス供給工程の後に前記プラズマ生成部の稼動及び前記不活性ガスの供給を維持した状態で前記反応ガスの供給を開始する第二の処理ガス供給工程と
を有する半導体装置の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラッシュメモリ等の半導体装置は高集積化の傾向にある。それに伴い、パターンサイズが著しく微細化されている。これらのパターンを形成する際、製造工程の一工程として、基板に酸化処理や窒化処理等の所定の処理を行う工程が実施される場合がある。
【0003】
上記パターンを形成する方法の一つとして、回路間に溝を形成し、そこにライナー膜や配線を形成する工程が存在する。この溝は、近年の微細化に伴い、高いアスペクト比となるよう構成されている。
【0004】
ライナー膜等を形成するに際しては、溝の上部側面、中部側面、下部側面、底部においても膜厚にばらつきが無い良好なステップカバレッジの膜を形成することが求められている。良好なステップカバレッジの膜とすることで、半導体デバイスの特性を溝間で均一とすることができ、それにより半導体デバイスの特性ばらつきを抑制することができるためである。
【0005】
この高いアスペクト比の溝を処理するために、ガスを加熱して処理することや、ガスをプラズマ状態として処理することが試みられたが、良好なステップカバレッジを有する膜を形成することは困難であった。
【0006】
上記膜を形成する方法として、原料ガスと、その原料ガスと反応する反応ガスの少なくとも二種類の処理ガスを交互に基板に供給し、それらのガスを反応させ膜を形成する交互供給方法がある。交互供給方法は、原料ガスと反応ガスを基板表面で反応させて一層ずつ膜を形成し、その一層ずつの膜を積層させて所望の膜厚を形成する方法である。しかしながら、この方法では原料ガスと反応ガスを基板表面以外で反応させないために、各ガスを供給する間に残ガスを除去するためのパージ工程を有することが望ましい。
【0007】
ところで、基板に形成された回路の性質によっては、低温で交互供給方法を行うことが望ましい。その低温処理を実現するためには、いずれかのガスに対して、反応を促進するためのエネルギーを添加する必要がある。例えば反応ガスをプラズマ状態とするなどである。このようにすることで、低温でも特性の良い膜処理が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プラズマ処理は基板上の反応を促進することが可能となるが、イオンによるダメージや帯電等の問題が懸念される。したがって、例えばトランジスタ製造工程のようなダメージに過敏な工程には不向きな手法であった。更には、一層ごとにイオンダメージ等が発生するため、形成された膜全体の品質が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の目的は、イオンダメージ等が少ない高品質な膜を形成可能な基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供するものである。
【0010】
本発明の一態様によれば、原料ガス源に接続され、原料ガス供給制御部が設けられる原料ガス供給管を有する原料ガス供給系と、反応ガス源に接続され、上流から順に反応ガス供給制御部、プラズマ生成部、イオン捕獲部が設けられる反応ガス供給管と、前記反応ガス供給制御部と前記プラズマ生成部の間に下流端が接続されると共に、上流端が不活性ガス供給源に接続され、更に不活性ガス供給制御部が設けられる不活性ガス供給管と、前記反応ガス供給管と前記不活性ガス供給管を有する反応ガス供給系と、前記原料ガス供給系から原料ガスが供給され、前記反応ガス供給系から反応ガスが供給され、基板を処理する処理室と、少なくとも前記原料ガス供給制御部と前記反応ガス供給制御部と前記不活性ガス供給制御部とを制御する制御部とを有する基板処理装置が提供される。
【0011】
また、本発明の別の態様によれば、基板を処理室に搬入する工程と、原料ガスを、原料ガス供給系から処理室に供給する第一の処理ガス供給工程と、不活性ガスが供給されている状態で反応ガスの供給を開始し、前記不活性ガスと前記反応ガスの混合ガスを反応ガス供給系に設けられた稼動状態のプラズマ生成部及びイオン捕獲部を介して前記処理室に供給する第二の処理ガス供給工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、イオンダメージ等が少ない高品質な膜を形成可能な基板処理装置及び半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
図3】本発明の実施形態に係る成膜工程のガス供給タイミングを説明する説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る成膜工程を示すフロー図である。
図5】本発明の実施形態に係るガスの混合状況を説明する説明図である。
図6】本発明の第一の実施形態に係るイオン捕獲部を説明する説明図である。
図7】本発明の第二の実施形態に係るイオン捕獲部を説明する説明図である。
図8】本発明の第三の実施形態に係るイオン捕獲部を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明に係る第一の実施形態>
(1)基板処理装置の構成
本発明の第一実施形態に係る基板処理装置について、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態に係る基板処理装置の断面図である。
【0015】
(1)基板処理装置の構成
本実施形態に係る処理装置100について説明する。基板処理装置100は、薄膜を形成する装置であり、図1に示されているように、枚葉式基板処理装置として構成されている。
【0016】
図1に示すとおり、基板処理装置100は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202の側壁や底壁は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのシリコンウエハ等のウエハ200を処理する処理室201、搬送空間203が形成されている。処理容器202は、上部容器202aと下部容器202b、天井部であるシャワーヘッド230で構成される。上部容器202aと下部容器202bの間には仕切り板204が設けられる。上部処理容器202a及びシャワーヘッド230に囲まれた空間であって、仕切り板204よりも上方の空間を処理室空間と呼び、下部容器202bに囲まれた空間であって、仕切り板よりも下方の空間を搬送空間と呼ぶ。上部処理容器202a及びシャワーヘッド230で構成され、処理空間を囲む構成を処理室201と呼ぶ。更には、搬送空間を囲む構成を処理室内搬送室203と呼ぶ。各構造の間には、処理容器202内を機密にするためのOリング208が設けられている。
【0017】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ205に隣接した基板搬入出口206が設けられており、ウエハ200は基板搬入出口206を介して図示しない搬送室との間を移動する。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。更に、下部容器202bは接地されている。
【0018】
処理室201内には、ウエハ200を支持する基板支持部(基板載置部とも呼ぶ)210が位置するよう構成される。基板支持部210は、ウエハ200を載置する載置面211と、載置面211を表面に持つ載置台212、基板載置台212に内包された、ウエハを加熱する加熱源としての基板載置台加熱部213(第一の加熱部とも呼ぶ)を主に有する。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0019】
基板載置台212はシャフト217によって支持される。シャフト217は、処理容器202の底部を貫通しており、更には処理容器202の外部で昇降機構218に接続されている。昇降機構218を作動させてシャフト217及び支持台212を昇降させることにより、基板載置面211上に載置されるウエハ200を昇降させることが可能となっている。なお、シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、処理容器202内は気密に保持されている。
【0020】
基板載置台212は、ウエハ200の搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口206の位置(ウエハ搬送位置)となるよう基板支持台212が下降し、ウエハ200の処理時には図1で示されるように、ウエハ200が処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。
【0021】
具体的には、基板載置台212をウエハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン207の上端部が基板載置面211の上面から突出して、リフトピン207がウエハ200を下方から支持するようになっている。また、基板載置台212をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン207は基板載置面211の上面から埋没して、基板載置面211がウエハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン207は、ウエハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0022】
(ガス導入口)
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド230の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するためのガス導入口241が設けられている。ガス導入口241に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0023】
(シャワーヘッド)
ガス導入口241と処理室201との間には、処理室201に連通するガス分散機構としてのシャワーヘッド230が設けられている。即ち、処理室201の上流方向にシャワーヘッド230が設けられている。ガス導入口241はシャワーヘッド230の蓋231に接続されている。ガス導入口241から導入されるガスは蓋231に設けられた孔231aを介してシャワーヘッド230のバッファ室232内のバッファ空間に供給される。即ち、蓋231は、バッファ室232から見て、ガス供給方向の上流に設けられている。バッファ室232は、蓋231の下端部と後述する分散板234の上端で形成される。即ち、分散板234は、バッファ室から見て、ガス供給方向下流(ここでは処理室方向)に設けられている。
【0024】
シャワーヘッドの蓋231は導電性/熱伝導性のある金属で形成され、バッファ室232のバッファ空間又は処理室201内の空間にプラズマを生成するための電極として用いられる。蓋231と上部容器202aとの間には絶縁ブロック233が設けられ、蓋231と上部容器202aの間を絶縁している。
【0025】
シャワーヘッド230は、バッファ室232内の空間と処理室201の処理空間との間に、ガス導入口241から導入されるガスを分散させるための分散板234を備えている。分散板234には、複数の貫通孔234aが設けられている。分散板234は、基板載置面211と対向するように配置されている。分散板は、貫通孔234aが設けられた凸状部と、凸状部の周囲に設けられたフランジ部を有し、フランジ部は絶縁ブロック233に支持されている。
【0026】
バッファ室232には、供給されたガスの流れを形成するガスガイド235が設けられる。ガスガイド235は、蓋231に形成された孔231aを頂点として分散板234方向に向かうにつれ径が広がる円錐形状である。ガスガイド235の下端の水平方向の径は貫通孔234a群の最外周よりも更に外周に形成される。
【0027】
バッファ室232の上方には、シャワーヘッド用排気孔231bを介して、排気管236が接続されている。排気管236には、排気のオン/オフを切り替えるバルブ237、排気バッファ室232内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器238、真空ポンプ239が順に直列に接続されている。
【0028】
排気孔231bは、ガスガイド235の上方にあるため、後述するシャワーヘッド排気工程では次のようにガスが流れるよう構成されている。蓋231に形成された供給孔231aから供給された不活性ガスはガスガイド235によって分散され、バッファ室232の空間中央及び下方に流れる。その後ガスガイド235の端部で折り返して、排気孔231bから排気される。
尚、排気管236、バルブ237、圧力調整器238をまとめて第一の排気系と呼ぶ。
【0029】
(供給系)
第一ガス供給管243aを含む第一ガス供給系243からは第一元素含有ガスが主に供給され、第二ガス供給管244aを含む第二ガス供給系244からは主に第二元素含有ガスが供給される。第三ガス供給管245aを含む第三ガス供給系245からは、ウエハを処理する際には主に不活性ガスが供給され、処理室をクリーニングする際はクリーニングガスが主に供給される。
【0030】
(第一ガス供給系)
第一ガス供給管243aには、上流方向から順に、第一ガス供給源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。マスフローコントローラ243cとバルブ243dをまとめて原料ガス供給制御部と呼ぶ。
【0031】
第一ガス供給管243aから、第一元素を含有するガス(以下、「第一元素含有ガス」)が、マスフローコントローラ243c、バルブ243d、共通ガス供給管242を介してシャワーヘッド230に供給される。
【0032】
第一元素含有ガスは、原料ガス、すなわち処理ガスの一つである。従って、第一ガス供給系を原料ガス供給系とも呼ぶ。以下、第一ガス供給源等、第一ガスが名称に含まれている構成については、第一ガスを原料ガスに置き換えて呼んでも良い。
【0033】
ここで、第一元素は、例えばチタン(Ti)である。すなわち、第一元素含有ガスは、例えばチタン含有ガスである。チタン含有ガスとしては、例えばTiClガスを用いることができる。なお、第一元素含有ガスは、常温常圧で固体、液体、及び気体のいずれであっても良い。第一元素含有ガスが常温常圧で液体の場合は、第一ガス供給源232bとマスフローコントローラ243cとの間に、図示しない気化器を設ければよい。ここでは気体として説明する。
【0034】
なお、シリコン含有ガスを用いても良い。シリコン含有ガスとしては、例えば有機シリコン材料であるヘキサメチルジシラザン(C19NSi、略称:HMDS)やトリシリルアミン((SiHN、略称:TSA)、BTBAS(SiH(NH(C))(ビス ターシャリー ブチル アミノ シラン)ガス等を用いることができる。これらのガスは、プリカーサーとして働く。
【0035】
第一ガス供給管243aのバルブ243dよりも下流側には、第一不活性ガス供給管246aの下流端が接続されている。第一不活性ガス供給管246aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源246b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)246c、及び開閉弁であるバルブ246dが設けられている。マスフローコントローラ246cとバルブ246dをまとめて第一不活性ガス供給制御部と呼ぶ。
【0036】
ここで、不活性ガスは、例えば窒素(N)ガスである。なお、不活性ガスとして、Nガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0037】
第一不活性ガス供給管246aからは、不活性ガスが、マスフローコントローラ246c、バルブ246d、第一ガス供給管243aを介して、シャワーヘッド230内に供給される。不活性ガスは、後述する薄膜形成工程(S104)ではキャリアガス或いは希釈ガスまたは逆流防止用のガスとして作用する。
【0038】
主に、第一ガス供給管243a、マスフローコントローラ243c、バルブ243dにより、第一元素含有ガス供給系243(チタン含有ガス供給系ともいう)が構成される。
【0039】
また、主に、第一不活性ガス供給管246a、マスフローコントローラ246c及びバルブ246dにより第一不活性ガス供給系が構成される。なお、不活性ガス供給源246b、第一ガス供給管243aを、第一不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0040】
更には、第一ガス供給源243b、第一不活性ガス供給系を、第一元素含有ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0041】
(第二ガス供給系)
第二ガス供給管244aには上流方向から順に、第二ガス供給源244b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)244c、及び開閉弁であるバルブ244d、リモートプラズマユニット244e、イオン捕獲部244fが設けられている。
【0042】
第二ガス供給管244aからは、第二元素を含有するガス(以下、「第二元素含有ガス」)が、マスフローコントローラ244c、バルブ244d、リモートプラズマユニット244e、イオン捕獲部244fを介して、シャワーヘッド230内に供給される。第二元素含有ガスは、リモートプラズマユニット244eによりプラズマ状態とされ、ウエハ200上に照射される。
【0043】
プラズマ生成部としてのリモートプラズマユニット244eは例えばICP(誘導結合プラズマ、Inductive Coupling Plasma)方式でプラズマを生成するものであり、コイルやマッチングボックス、電源等で構成される。後に詳述するように、第二元素含有ガスが通過する際、イオンが少なくラジカルが多いプラズマを生成するよう、ガス種や圧力範囲を考慮して電源やマッチングボックス等を事前に調整している。
【0044】
第二元素含有ガスは、処理ガスの一つである。なお、第二元素含有ガスは、反応ガスまたは改質ガスとして考えてもよい。したがって、第二ガス供給系を反応ガス供給系とも呼ぶ。以下、第二ガス供給源等、第二ガスが名称に含まれている構成については、第二ガスを原料ガスに置き換えて呼んでも良い。
【0045】
ここで、第二元素含有ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素としては、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つである。本実施形態では、第二元素含有ガスは、例えば窒素含有ガスとする。具体的には、窒素含有ガスとしてアンモニア(NH3)ガスが用いられる。
【0046】
主に、第二ガス供給管244a、マスフローコントローラ244c、バルブ244dにより、第二元素含有ガス供給系244(窒素含有ガス供給系ともいう)が構成される。マスフローコントローラ247cとバルブ247dをまとめて反応ガス供給制御部と呼ぶ。
【0047】
また、第二ガス供給管244aのバルブ244dよりも下流側には、第二不活性ガス供給管247aの下流端が合流されている。第二不活性ガス供給管247aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源247b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)247c、及び開閉弁であるバルブ247dが設けられている。マスフローコントローラ247cとバルブ247dをまとめて第二不活性ガス供給制御部と呼ぶ。
【0048】
第二不活性ガス供給管247aからは、不活性ガスが、マスフローコントローラ247c、バルブ247d、第二ガス供給管244a、リモートプラズマユニット244e、イオン捕獲部244fを介して、シャワーヘッド230内に供給される。不活性ガスは、後述する成膜工程(薄膜形成工程とも呼ぶ)(S104)ではキャリアガス或いは希釈ガスまたは逆流防止用のガスとして作用する。
【0049】
主に、第二不活性ガス供給管247a、マスフローコントローラ247c及びバルブ247dにより第二不活性ガス供給系が構成される。なお、不活性ガス供給源247b、第二ガス供給管243a、リモートプラズマユニット244e、イオン捕獲部244fを第二不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0050】
更には、第二ガス供給源244b、リモートプラズマユニット244e、イオン捕獲部244f、第二不活性ガス供給系を、第二元素含有ガス供給系244に含めて考えてもよい。
【0051】
(第三ガス供給系)
第三ガス供給管245aには、上流方向から順に、第三ガス供給源245b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)245c、及び開閉弁であるバルブ245dが設けられている。
【0052】
第三ガス供給管245aから、パージガスとしての不活性ガスが、マスフローコントローラ245c、バルブ245d、共通ガス供給管245を介してシャワーヘッド230に供給される。
【0053】
ここで、不活性ガスは、例えば窒素(N)ガスである。なお、不活性ガスとして、Nガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0054】
第三ガス供給管245aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源245b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)245c、及び開閉弁であるバルブ245dが設けられている。
【0055】
第三ガス供給管245aのバルブ245dよりも下流側には、クリーニングガス供給管248aの下流端が接続されている。クリーニングガス供給管248aには、上流方向から順に、クリーニングガス供給源248b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)246c、及び開閉弁であるバルブ246dが設けられている。
【0056】
主に、第三ガス供給管245a、マスフローコントローラ245c、バルブ245dにより、第三ガス供給系245が構成される。
【0057】
また、主に、クリーニングガス供給管248a、マスフローコントローラ248c及びバルブ248dによりクリーニングガス供給系が構成される。なお、クリーニングガス源248b、第三ガス供給管245aを、クリーニングガス供給系に含めて考えてもよい。
【0058】
更には、第三ガス供給源245b、クリーニングガス供給系を、第三ガス供給系245に含めて考えてもよい。
【0059】
第三ガス供給管245aからは、基板処理工程では不活性ガスが、マスフローコントローラ245c、バルブ245dを介して、シャワーヘッド230内に供給される。また、クリーニング工程では、クリーニングガスが、マスフローコントローラ248c、バルブ248dを介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0060】
不活性ガス供給源245bから供給される不活性ガスは、後述する薄膜形成工程(S104)では、処理室201やシャワーヘッド230内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。また、クリーニング工程では、クリーニングガスのキャリアガス或いは希釈ガスとして作用しても良い。
【0061】
クリーニングガス供給源248bから供給されるクリーニングガスは、クリーニング工程ではシャワーヘッド230や処理室201に付着した副生成物等を除去するクリーニングガスとして作用する。
【0062】
ここで、クリーニングガスは、例えば三フッ化窒素(NF)ガスである。なお、クリーニングガスとして、例えば、フッ化水素(HF)ガス、三フッ化塩素ガス(ClF)ガス、フッ素(F)ガス等を用いても良く、またこれらを組合せて用いても良い。
【0063】
(第二の排気系)
処理室201(上部容器202a)の内壁側面には、処理室201の雰囲気を排気する排気口221が設けられている。排気口221には排気管222が接続されており、排気管222には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器223、真空ポンプ224が順に直列に接続されている。主に、排気口221、排気管222、圧力調整器223、真空ポンプ224により第二の排気系(排気ライン)220が構成される。
【0064】
(プラズマ生成部)
シャワーヘッドの蓋231には、整合器251、高周波電源252が接続されている。高周波電源252、整合器251もしくは周波数可変でインピーダンスを調整することで、シャワーヘッド230、処理室201にプラズマが生成される。
【0065】
(コントローラ)
基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ260を有している。コントローラ260は、演算部261及び記憶部262を少なくとも有する。コントローラ260は、上位コントローラや使用者の指示に応じて記憶部から基板処理装置のプログラムや制御レシピを呼び出し、その内容に応じて各構成を制御する。各プログラムや制御レシピは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記録媒体に格納される。
【0066】
(2)基板処理工程
次に、基板処理装置100を使用して、ウエハ200上に薄膜を形成する工程について、図2図3図4図5を参照しながら説明する。図2図3図4は、本発明の実施形態にかかる成膜工程のフロー図である。図5は、リモートプラズマユニット244eにおけるガスの混合状態とプラズマ状態の関係を示す図である。なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ260により制御される。
【0067】
図2図3図4を用い、基板処理工程の概略について説明する。図2は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
【0068】
ここでは、第一元素含有ガスとしてTiClガスを用い、第二元素含有ガスとしてアンモニア(NH)ガスを用い、ウエハ200上に薄膜として窒化チタン膜を形成する例について説明する。また、例えば、ウエハ200上には、予め所定の膜が形成されていてもよい。また、ウエハ200または所定の膜には予め所定のパターンが形成されていてもよい。
【0069】
(基板搬入・載置工程S102)
基板処理装置100では基板載置台212をウエハ200の搬送位置まで下降させることにより、基板載置台212の貫通孔214にリフトピン207を貫通させる。その結果、リフトピン207が、基板載置台212表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。続いて、ゲートバルブ205を開き、図示しないウエハ移載機を用いて、処理室内にウエハ200(処理基板)を搬入し、リフトピン207上にウエハ200を移載する。これにより、ウエハ200は、基板載置台212の表面から突出したリフトピン207上に水平姿勢で支持される。
【0070】
処理容器202内にウエハ200を搬入したら、ウエハ移載機を処理容器202の外へ退避させ、ゲートバルブ205を閉じて処理容器202内を密閉する。その後、基板載置台212を上昇させることにより、基板載置台212に設けられた基板載置面211上にウエハ200を載置する。
【0071】
なお、ウエハ200を処理容器202内に搬入する際には、排気系により処理容器202内を排気しつつ、不活性ガス供給系から処理容器202内に不活性ガスとしてのNガスを供給することが好ましい。すなわち、真空ポンプ224を作動させAPCバルブ223を開けることにより処理容器202内を排気した状態で、少なくとも第三ガス供給系のバルブ245dを開けることにより、処理容器202内にNガスを供給することが好ましい。これにより、処理容器202内へのパーティクルの侵入や、ウエハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。また、真空ポンプ224は、少なくとも基板搬入・載置工程(S102)から後述する基板搬出工程(S106)が終了するまでの間は、常に作動させた状態とする。
【0072】
ウエハ200を基板載置台212の上に載置する際は、基板載置台212の内部に埋め込まれたヒータ213に電力を供給し、ウエハ200の表面が所定の温度となるよう制御する。ウエハ200の温度は、例えば室温以上500℃以下であり、好ましくは、室温以上であって400℃以下である。この際、ヒータ213の温度は、図示しない温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータ213への通電具合を制御することによって調整される。
【0073】
(成膜工程S104)
次に、薄膜形成工程S104を行う。薄膜形成工程S104の基本的な流れについて説明し、本実施形態の特徴部分については詳細を後述する。
【0074】
薄膜形成工程S104では、シャワーヘッド230のバッファ室232を介して、処理室201内にTiClガスを供給する。TiClガスの供給を開始してから所定の時間経過後、TiClガスの供給を停止し、パージガスにより、バッファ室232、処理室201からTiClガスを排出する。
【0075】
TiClガスを排出後、バッファ室232を介して、処理室201内にプラズマ状態のアンモニアガスを供給する。アンモニアガスは、ウエハ200上に形成されたチタン含有膜と反応し、薄膜としての窒化チタン膜を形成する。所定の時間経過後、アンモニアガスの供給を停止し、パージガスによりシャワーヘッド230、処理室201からアンモニアガスを排出する。
【0076】
成膜工程104では、以上の処理を繰り返すことで、所望の膜厚の窒化チタン膜を形成する。
【0077】
(基板搬出工程S106)
次に、基板載置台212を下降させ、基板載置台212の表面から突出させたリフトピン207上にウエハ200を支持させる。その後、ゲートバルブ205を開き、ウエハ移載機を用いてウエハ200を処理容器202の外へ搬出する。その後、基板処理工程を終了する場合は、第三ガス供給系から処理容器202内に不活性ガスを供給することを停止する。
【0078】
(処理回数判定工程S108)
基板を搬出後、薄膜形成工程が所定の回数に到達したか否かを判定する。所定の回数に到達したと判断されたら、クリーニング工程に移行する。所定の回数に到達していないと判断されたら、次に待機しているウエハ200の処理を開始するため、基板搬入・載置工程S102に移行する。
【0079】
(クリーニング工程110)
処理回数判定工程S108で薄膜形成工程が所定の回数に到達したと判断したら、クリーニング工程を行う。ここでは、クリーニングガス供給系のバルブ248dを開け、シャワーヘッド230を介して、クリーニングガスを処理室201へ供給する。
【0080】
クリーニングガスがシャワーヘッド230、処理室201を満たしたら、高周波電源252で電力を印加すると共に整合器251によりインピーダンスを整合させ、シャワーヘッド230、処理室201にクリーニングガスのプラズマを生成する。生成されたクリーニングガスプラズマは、シャワーヘッド230、処理室201内の壁に付着した副生成物を除去する。
【0081】
続いて、成膜工程S104の詳細について図3図4図5を用いて説明する。
【0082】
(第一の処理ガス供給工程S202)
本実施形態の加熱部である基板載置台加熱部213が既に稼動された状態で処理を開始する。基板が所望とする温度に達したら、バルブ243dを開け、ガス導入孔241、バッファ室232、複数の貫通孔234aを介して、処理室201内に第一の処理ガスとしてのTiClを供給開始する。
【0083】
第二ガス供給系では、リモートプラズマユニット244eを起動する。更に、バルブ244dを閉とした状態で、バルブ247dを開とする。このようにして、処理室201に反応ガスを供給せずに、不活性ガスであるキャリアガスをリモートプラズマユニット244e及びイオン捕獲部244fを介して供給する。第二ガス供給系から不活性ガスを供給し続けることで、シャワーヘッド232からの逆流を抑制する。
【0084】
第三ガス供給系では、バルブ245dを開け、ガス導入孔241、バッファ室232、複数の貫通孔234aを介して、処理室201内に第三の処理ガスとしての不活性ガスを供給開始する。
【0085】
バッファ室232内ではガスガイド235によってTiClガスが均一に分散される。均一に分散されたガスは複数の貫通孔234aを介して、処理室201内のウエハ200上に均一に供給される。
【0086】
このとき、第1の処理ガスであるTiClガスの流量が所定の流量となるように、マスフローコントローラ243cを調整する。更には、第三の処理ガスである不活性ガスの流量が所定の流量となるように、マスフローコントローラ245cを調整する。なお、TiClの供給流量は、例えば10sccm以上1000sccm以下である。なお、TiClガスとともに、第一不活性ガス供給系からキャリアガスとしてNガスを流してもよい。また、排気ポンプ224を作動させ、APCバルブ223の弁開度を適正に調整することにより、処理容器202内の圧力を、所定の圧力とする。
【0087】
供給されたTiClガスはウエハ200上に供給される。ウエハ200表面の上には、TiClガスがウエハ200の上に接触することによって「第一元素含有層」としてのチタン含有層が形成される。
【0088】
チタン含有層は、例えば、処理容器202内の圧力、TiClガスの流量、サセプタ217の温度、処理室201での処理時間等に応じて、所定の厚さ及び所定の分布で形成される。
【0089】
所定の時間経過後、第一ガス供給系では、バルブ243dを閉じTiClガスの供給を停止する。第二ガス供給系では、バルブ247dの開を維持し、不活性ガスの供給を継続する。第三ガス供給系では、バルブ245dの開を維持し、不活性ガスの供給を継続する。
【0090】
(第一のシャワーヘッド排気工程S204)
TiClガスの供給を停止した後、バルブ237を開とし、シャワーヘッド230内の雰囲気を排気する。具体的には、バッファ室232内の雰囲気を排気する。このとき、真空ポンプ239は事前に作動させておく。シャワーヘッド排気工程204については、後に詳述する。
【0091】
このとき、バッファ室232における第一の排気系からの排気コンダクタンスが、処理室を介した第二の排気系のコンダクタンスよりも高くなるよう、バルブ237の開閉弁及び真空ポンプ239を制御する。このように調整することで、バッファ室232の中央からシャワーヘッド排気孔231bに向けたガス流れが形成される。このようにして、バッファ室232の壁に付着したガスや、バッファ空間内に浮遊したガスが、処理室201に進入することなく第一の排気系から排気される。
【0092】
(第一の処理室排気工程S206)
所定の時間経過後、引き続き第二の排気系の排気ポンプ224を作動させつつ、処理空間において第二の排気系からの排気コンダクタンスが、シャワーヘッド230を介した第一の排気系からの排気コンダクタンスよりも高くなるようAPCバルブ223の弁開度及びバルブ237の弁開度を調整する。このように調整することで、処理室201を経由した第二の排気系に向けたガス流れが形成される。したがって、バッファ室232に供給された不活性ガスを確実に基板上に供給することが可能となり、基板上の残留ガスの除去効率が高くなる。
【0093】
処理室排気工程において供給された不活性ガスは、第一の処理ガス供給工程S202でウエハ200に結合できなかったチタン成分を、ウエハ200上から除去する。更には、バルブ237を開け、圧力調整器238、真空ポンプ239を制御して、シャワーヘッド230内に残留したTiCl4ガスを除去する。所定の時間経過後、バルブ243dを閉じて不活性ガスの供給を停止すると共に、バルブ237を閉じてシャワーヘッド230と真空ポンプ239の間を遮断する。
【0094】
より良くは、所定の時間経過後、第二の排気系の排気ポンプ224を引き続き作動させつつ、バルブ237を閉じることが望ましい。このようにすると、処理室201を経由した第二の排気系に向けた流れが第一の排気系の影響を受けないので、より確実に不活性ガスを基板上に供給することが可能となり、基板上の残留ガスの除去効率が更に高くなる。
【0095】
また、シャワーヘッド排気工程S204の後に引き続き処理室排気工程S206を行うことで、次の効果を見出すことができる。即ち、シャワーヘッド排気工程S204でバッファ室232内の残留物を除去しているので、処理室排気工程S206においてガス流れがウエハ200上を経由したとしても、残留ガスが基板上に付着することを防ぐことができる。
【0096】
(第二の処理ガス供給工程S206)
第一ガス供給系では、バルブ243dを閉とした状態で、バルブ247dの開を維持し、引き続き不活性ガスを供給する。不活性ガスを供給することで、シャワーヘッド232からの逆流を防止する。
【0097】
第二ガス供給系では、リモートプラズマユニット244eの稼動、バルブ247dの開を維持した状態で、バルブ244dを開としアンモニアガスの供給を開始する。供給されたアンモニアガスは第二不活性ガス供給系から供給される不活性ガスに徐々に合流する。不活性ガスとアンモニアガスの混合ガスにおいては、アンモニアガスの流量比が徐々に増加する。
【0098】
不活性ガスと交合されたアンモニアガスはリモートプラズマユニット244eを通過しプラズマ化される。プラズマ化されたアンモニアガスのうち、イオン成分はイオン捕獲部244fを通過する際に捕獲される。イオン捕獲部244fを通過したラジカルが主体のプラズマは、バッファ室232、貫通孔234aを介して基板上に均一に供給される。
【0099】
このとき、アンモニアガスの流量が所定の流量となるように、マスフローコントローラ244cを調整する。なお、アンモニアガスの供給流量は、例えば200sccm以上1500sccm以下である。
【0100】
ここで、アンモニアガスの所定の流量とは、不活性ガスと混合された混合ガスがリモートプラズマユニット244eでプラズマ化されやすい流量であり、且つイオン成分が少なくなるよう設定された流量を言う。これについては後述する。
【0101】
リモートプラズマユニット244eで生成されたラジカルが主体のアンモニアガスプラズマはウエハ200上に供給される。既に形成されているチタン含有層がアンモニアラジカルによって改質され、ウエハ200上に例えばチタン元素および窒素元素を含有する層が形成される。このとき、供給されたアンモニアプラズマのイオン量が少ないので、イオン衝撃による膜のダメージを低減することができる。したがって、例えばトランジスタ製造工程のような汚染やダメージに過敏な工程においても適応可能となる。
【0102】
改質層は、例えば、処理容器202内の圧力、アンモニアガスの流量、基板載置台212の温度、リモートプラズマユニット244eの電力供給具合等に応じて、所定の厚さ、所定の分布、チタン含有層に対する所定の窒素成分等の侵入深さで形成される。
【0103】
所定の時間経過後、バルブ244dを閉じ、アンモニアガスの供給を停止する。
【0104】
ここで、図5を用いてリモートプラズマユニット244eにおける不活性ガスとアンモニアガスの流量比と、そのプラズマ状態の関連について説明する。301は不活性ガスを示し、302はアンモニアガスを示す。縦軸は流量比であり、横軸は時間を示す。バルブ244dを開とする前は不活性ガスの流量比が高く、バルブ244dを開とすることで徐々にアンモニアガスの流量比が高くなる。
【0105】
前述のように、リモートプラズマユニット244eは、電源やマッチングボックスを事前調整することで所定の流量比においてイオンの発生を少なくするよう設定されている。例えば、不活性ガス:アンモニアガスが1500sccm:200sccm〜1500sccm:750sccmである。この流量は、図5におけるプラズマ安定領域の流量比である。一方、事前に設定された流量比から外れた場合、即ち異常放電領域のような流量比においてはイオンが多く発生してしまう。
【0106】
例えば第二の処理ガス供給工程S206においては、工程開始時のようにバルブ244dを開とした直後のようにアンモニアの流量比が所定の範囲よりも小さい場合、異常放電領域が存在する。ここではアンモニアが所定の流量比に届かないため、イオンが多く発生してしまう。
【0107】
尚、異常放電領域としては、アンモニアの流量比が所定の範囲を超えた場合も含む。例えば、バルブの上流でガスが溜まる場合である。本実施形態に照らすと、バルブ244を開とした直後、溜まったガスが一度に不活性ガスと混合する場合であり、このような場合はアンモニアの流量比が所定の範囲を超え異常放電を起こし、多くのイオンが発生する。
【0108】
以上の様に、以上放電領域では多くのイオンが発生してしまうため、基板上の膜のイオンダメージが大きいことが考えられる。特に、本実施形態に係る基板処理工程の場合、後述するように第一の処理ガス供給工程S202と第二の処理ガス供給工程S206で一層の膜を形成し、第一の処理ガス供給工程S202と第二の処理ガス供給工程S206を繰り返して薄膜を積層することで所望の膜厚の膜を形成するものである。従って、上述のようにアンモニアガスを供給する際にイオンが発生する場合、一層ごとにイオンダメージを受けるため、膜表面だけでなく、深さ方向においても特性の悪い膜が形成されてしまう。
【0109】
そこで、本実施形態においては、リモートプラズマユニットの下流にイオン捕獲部244fを設ける。このような構造とすることで、第二の処理ガス供給工程S206の開始時のようなアンモニアの流量比が少ないプラズマ点火領域においても基板上へのイオン供給を抑制できる。従って、第一の処理ガス供給工程S202と第二の処理ガス供給工程S206で一層の膜を形成し、第一の処理ガス供給工程S202と第二の処理ガス供給工程S206を繰り返して薄膜を積層することで所望の膜厚の膜を形成する方法においても、イオンによる帯電やダメージの少ない膜を形成することが可能となる。
【0110】
第三ガス供給系では、バルブ245dを開け、ガス導入孔241、バッファ室232、複数の貫通孔234aを介して、処理室201内に第三の処理ガスとしての不活性ガスを供給開始する。
【0111】
(第二のシャワーヘッド排気工程S210)
アンモニアガスの供給を停止した後、バルブ237を開とし、シャワーヘッド230内の雰囲気を排気する。具体的には、バッファ室232内の雰囲気を排気する。このとき、真空ポンプ239は事前に作動させておく。シャワーヘッド排気工程210については、後に詳述する。
【0112】
バッファ室232における第一の排気系からの排気コンダクタンスが、処理室を介した排気ポンプ224のコンダクタンスよりも高くなるよう、バルブ237の開閉弁及び真空ポンプ239を制御する。このように調整することで、バッファ室232の中央からシャワーヘッド排気孔231bに向けたガス流れが形成される。このようにして、バッファ室232の壁に付着したガスや、バッファ空間内に浮遊したガスが、処理室201に進入することなく第一の排気系から排気される。
【0113】
(第二の処理室排気工程S212)
所定の時間経過後、第二の排気系の排気ポンプ224を作動させつつ、処理空間において第二の排気系からの排気コンダクタンスが、シャワーヘッド230を介した第一の排気系からの排気コンダクタンスよりも高くなるようAPCバルブ223の弁開度及びバルブ237の弁開度を調整する。このように調整することで、処理室201を経由した第二の排気系に向けたガス流れが形成される。したがって、バッファ室232に供給された不活性ガスを確実に基板上に供給することが可能となり、基板上の残留ガスの除去効率が高くなる。
【0114】
処理室排気工程において供給された不活性ガスは、第一の処理ガス供給工程S202でウエハ200に結合できなかったアンモニア成分を、ウエハ200上から除去する。更には、バルブ237を開け、圧力調整器238、真空ポンプ239を制御して、シャワーヘッド230内に残留したアンモニアガスを除去する。所定の時間経過後、バルブ237を閉じてシャワーヘッド230と真空ポンプ239の間を遮断する。
【0115】
より良くは、所定の時間経過後、第二の排気系の排気ポンプ224を引き続き作動させつつ、バルブ237を閉じることが望ましい。このようにすると、バッファ室内232内の残留ガスや、供給された不活性ガスは、処理室201を経由した第二の排気系に向けた流れが第一の排気系の影響を受けないので、より確実に不活性ガスを基板上に供給することが可能となるため、基板上で、第一のガスと反応しきれなかった残留ガスの除去効率が更に高くなる。
【0116】
また、シャワーヘッド排気工程S210の後に引き続き処理室排気工程S212を行うことで、次の効果を見出すことができる。即ち、シャワーヘッド排気工程S210でバッファ室232内の残留物を除去しているので、処理室排気工程S212においてガス流れがウエハ200上を経由したとしても、残留ガスが基板上に付着することを防ぐことができる。
【0117】
(判定工程S214)
この間、コントローラ260は、上記1サイクルを所定回数実施したか否かを判定する。
【0118】
所定回数実施していないとき(S214でNoの場合)、リモートプラズマユニット244eを稼動した状態で、第一の処理ガス供給工程S202、第一シャワーヘッド排気工程S204、第一処理室排気工程S206、第二の処理ガス供給工程S208、第二のシャワーヘッド排気工程S210、第二処理室排気工程S212のサイクルを繰り返す。所定回数実施したとき(S214でYesの場合)、成膜工程S104を終了する。
【0119】
ここで、第一の処理ガス供給工程S202、第一シャワーヘッド排気工程S204、第一処理室排気工程S206、第二の処理ガス供給工程S208、第二のシャワーヘッド排気工程S210、第二処理室排気工程S212のサイクルを繰り返す間、リモートプラズマユニット244eの稼動を維持する理由を説明する。
【0120】
本実施形態のような交互供給法においては、第一の処理ガス供給工程S202、第二の処理ガス供給工程S208を行うことで一層の膜(例えば0.36Å程度)を形成しており、所望の膜厚(たとえば50Å)を形成するには第一の処理ガス供給工程S202、第二の処理ガス供給工程S208を幾度も繰り返す必要が有る。そのため、所望の膜を得るまでに非常に時間がかかってしまうという問題がある。従って、処理効率を向上させるために、可能な限り各処理ガス供給工程を短くすることが求められている。
【0121】
各処理ガス供給工程では、処理ガスの性質や加熱条件等から、例えば第一の処理ガス供給工程が0.05秒、第二の処理ガス供給工程が0.2秒、その間のパージ時間が0.3秒程度の処理時間が求められている。しかしながら、第二の処理ガス工程でプラズマを生成するリモートプラズマユニット244eは、起動した後、更に安定するまでに数秒(例えば2秒)を要してしまう。従って、第二処理ガス供給工程S206の後にリモートプラズマユニット244eを停止した場合、次の第二処理ガス供給工程S206におけるアンモニア供給開始までに、装置の安定が間に合わないことが考えられる。この場合、不安定なプラズマとなるため、基板上の曝露量が足りないなどの問題が起きてしまう。そこで、本実施形態においては、リモートプラズマユニット244eを停止せずに稼動し続ける。これにより、第二の処理ガス供給工程において常に安定したプラズマ生成が可能となる。
【0122】
続いて、本実施形態におけるイオン捕獲部を、図6を用いて説明する。配管401は第二ガス供給管244aと連続し、もしくは一部を成す配管である。配管401の内側には多孔板402が設けられる。多孔板の孔径、深さ等は孔を通過するプラズマのイオンが捕獲できる程度の構成に設定される。これらの構成は、供給されるガスに含まれるイオンの性質に依存する。
【0123】
<本発明に係る第二の実施形態>
続いて、本発明に係る第二の実施形態におけるイオン捕獲部を、図7を用いて説明する。他の構成については第一の実施形態と同様で有るので説明を省略する。
第三の実施形態におけるイオン捕獲部は、配管401の内側に棒状導電性部材403を設ける。棒状導電性部材403はアースに接続されており、配管401内を通過するプラズマ中のイオンを捕獲する。
【0124】
配管301の中央部分にイオンを捕獲する棒状導電性部材307が突き出されているので、配管301の中央部を流れるプラズマ中のイオンを捕獲することができる。更には、図6の実施形態に比べ、ガスが通過する領域の面積が大きいので、ガスの流速をより高めることができる。
【0125】
<本発明に係る第三の実施形態>
続いて、本発明に係る第三の実施形態におけるイオン捕獲部を、図8を用いて説明する。他の構成については第一の実施形態と同様で有るので説明を省略する。図8(a)は配管401の水平断面図であり、図8(b)は配管401の垂直断面図である。第三の実施形態におけるイオン捕獲部は、図7に記載のイオン捕獲部に対して、更に棒状導電性部材404を設けている。棒状導電性部材403は、水平方向において棒状導電性部材404と向かい合うように配置されており、垂直方向においては棒状導電性部材404と異なる位置に配置されている。
【0126】
棒状導電性部材403によって、配管401内を通過するプラズマ中のイオンを捕獲すると共に、導電性部材404によって、導電性部材403から遠い領域に流れるプラズマ中のイオンを捕獲する。
【0127】
上述の実施形態では、第一元素含有ガスとしてチタン含有ガスを用い、第二元素含有ガスとして窒素含有ガスを用い、ウエハ200上に窒化チタン膜を形成する場合について説明したが、それに限るものではない。第一元素含有ガスとして、例えばシリコン(Si)、ハフニウム(Hf)含有ガス、ジルコニウム(Zr)含有ガス、チタン(Ti)含有ガスを用い、酸化ハフニウム膜(HfO膜)、酸化ジルコニウム膜(ZrO膜)、酸化チタン膜(TiO膜)等のHigh−k膜等をウエハ200上に形成してもよい。
【0128】
また、上述の実施形態では、第一の排気系に接続されるシャワーヘッド排気孔231bをシャワーヘッドの蓋231に設けていたが、それに限るものではなく、例えばバッファ室の側面に設けても良い。
【0129】
以下に、付記として本発明の態様を記す。
(付記1)
原料ガス源に接続され、原料ガス供給制御部が設けられる原料ガス供給管を有する原料ガス供給系と、
反応ガス源に接続され、上流から順に反応ガス供給制御部、プラズマ生成部、イオン捕獲部が設けられる反応ガス供給管と、
前記反応ガス供給制御部と前記プラズマ生成部の間に下流端が接続されると共に、上流端が不活性ガス供給源に接続され、更に不活性ガス供給制御部が設けられる不活性ガス供給管と、
前記反応ガス供給管と前記不活性ガス供給管を有する反応ガス供給系と、
前記原料ガス供給系から原料ガスが供給され、前記反応ガス供給系から反応ガスが供給され、基板を処理する処理室と、
少なくとも前記原料ガス供給制御部と前記反応ガス供給制御部と前記不活性ガス供給制御部とを制御する制御部と
を有する基板処理装置。
【0130】
(付記2)
前記制御部は、前記原料ガス供給系から前記処理室に前記原料ガスを供給すると共に、前記反応ガス供給系から前記プラズマ生成部を稼動した状態で前記処理室に不活性ガスを供給する第一の処理ガス供給工程と、前記第一の処理ガス供給工程の後に前記プラズマ生成部の稼動及び前記不活性ガスの供給を維持した状態で前記反応ガスの供給を開始する第二の処理ガス供給工程を行なうよう制御する付記1記載の基板処理装置。
【0131】
(付記3)
前記制御部は、前記第一の処理ガス供給工程と前記第二の処理ガス供給工程を繰り返すよう制御する付記2記載の基板処理装置。
【0132】
(付記4)
更に、不活性ガスの供給を制御する不活性ガス供給制御部が設けられた不活性ガス供給管を有する不活性ガス供給系とを有し、前記制御部は前記第一の処理ガス供給工程と前記第二の処理ガス供給工程の間に前記不活性ガス供給系から前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程を行うよう制御し、更に前記第一の処理ガス供給工程と前記第二の処理ガス供給工程と前記不活性ガス供給工程を行う間、前記プラズマ生成部の稼動を維持し続けるよう制御する付記2または3記載の基板処理装置。
【0133】
(付記5)
前記制御部は、前記原料ガス供給系から前記処理室に前記原料ガスを供給すると共に、前記反応ガス供給系から前記プラズマ生成部を稼動した状態で前記処理室に不活性ガスを供給する第一の処理ガス供給工程と、前記第一の処理ガス供給工程の後に前記プラズマ生成部の稼動を維持した状態で、前記プラズマ生成部に不活性ガスを供給し、その後前記不活性ガスと反応ガスの混合ガスを供給する第二の処理ガス供給工程を行なうよう制御する付記1記載の基板処理装置。
【0134】
(付記6)
基板を処理室に搬入する工程と、原料ガスを、原料ガス供給系から処理室に供給する第一の処理ガス供給工程と、不活性ガスが供給されている状態で反応ガスの供給を開始し、前記不活性ガスと前記反応ガスの混合ガスを反応ガス供給系に設けられた稼動状態のプラズマ生成部及びイオン捕獲部を介して前記処理室に供給する第二の処理ガス供給工程と を有する半導体装置の製造方法。
【0135】
(付記7)
基板を処理室に搬入する工程と、
原料ガスを原料ガス供給系から処理室に供給すると共に、不活性ガスを稼動状態のプラズマ生成部及びイオン捕獲部を介して処理室に供給する第一の処理ガス供給工程と、
前記不活性ガスが供給継続された状態で、反応ガスの供給を開始し、前記不活性ガスと前記反応ガスの混合ガスを稼動状態の前記プラズマ生成部及び前記イオン捕獲部を介して前記処理室に供給する第二の処理ガス供給工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0136】
100…処理装置
200…ウエハ
210…基板載置部
220…第一の排気系
230…シャワーヘッド
243…第一ガス供給系
244…第二ガス供給系
245…第三ガス供給系
260…コントローラ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8