特許第5921605号(P5921605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5921605タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921605
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20160510BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20160510BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160510BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20160510BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160510BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   C08L7/00
   C08K5/17
   C08K3/36
   C08K5/09
   C08K3/22
   B60C1/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-115066(P2014-115066)
(22)【出願日】2014年6月3日
(62)【分割の表示】特願2007-182285(P2007-182285)の分割
【原出願日】2007年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-196504(P2014-196504A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年6月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 高幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 守
(72)【発明者】
【氏名】市川 直哉
(72)【発明者】
【氏名】井本 洋二
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0135006(US,A1)
【文献】 特許第5574562(JP,B2)
【文献】 特許第5507801(JP,B2)
【文献】 特開2001−106830(JP,A)
【文献】 特開2002−309002(JP,A)
【文献】 特開昭52−136244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L7/00−21/02
C08K3/00−13/08
B60C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム、アミノ酸、およびシリカを含有し、
前記ジエン系ゴムが、天然ゴムおよび/または改質天然ゴムを、全ジエン系ゴム成分中50重量%以上含有するタイヤ用ゴム組成物。
(但し、ジエン系ゴム、アミノ酸、およびシリカを含有し、
前記ジエン系ゴムが、天然ゴムおよび/または改質天然ゴムを、全ジエン系ゴム成分中50重量%以上含有し、
シランカップリング剤およびシリル化剤を含まないタイヤ用ゴム組成物を除く。)
【請求項2】
ジエン系ゴム、アミノ酸、およびシリカを含有し、
前記ジエン系ゴムが、天然ゴムおよび/または改質天然ゴムと、スチレン−ブタジエン共重合ゴムとを含有するタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
さらに、ステアリン酸および/または亜鉛華を含有する請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
シリカが、全充填剤中50重量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
アミノ酸が、メルカプト基、ジスルフィド基、モノスルフィド基、含チッ素複素環、ベンゼン環、フェノール性水酸基または3以上のアミノ基を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能で、環境に優しいタイヤを製造できるタイヤ用ゴム組成物、およびそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ用の補強フィラーとしては、黒色充填剤であるカーボンブラックの他にシリカが多く用いられており、シリカ以外にも、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウムが検討されている。
【0003】
これらの充填剤の中で、白色充填剤、とくにシリカを用いた場合には、シリカの分散性が低いために充分な性能が得られず、とくにトレッド用途で使用した場合、耐摩耗性能が低下するという問題があった。この問題を改良するために、種々のシランカップリング剤やシリル化剤が使用されているが、いずれも高価であり、これらを合成するためのエネルギーとして、または場合によっては原材料の一部として石油などの化石燃料を使用しており、将来の供給に不安がある。
【0004】
一方、アミノ酸を加硫促進剤として使用する技術が知られている(特許文献1および2)。しかしながら、これらの方法では充填剤としてカーボンブラックを使用しており、シリカなどの白色充填剤については記載されていないので、分散性の低い白色充填剤の課題を提示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−221241号公報
【特許文献2】特開昭61−221242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、環境に配慮しながら、白色充填剤の分散性の問題を解決し、より高性能のタイヤを製造することができるタイヤ用ゴム組成物、およびそれを用いたタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ジエン系ゴム、アミノ酸、および白色充填剤を含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0008】
ステアリン酸および/または亜鉛華を含有することが好ましい。
【0009】
シランカップリング剤およびシリル化剤を含まないことが好ましい。
【0010】
白色充填剤が、全充填剤中50重量%以上であることが好ましい。
【0011】
天然ゴムおよび/または改質天然ゴムを、全ジエン系ゴム成分中50重量%以上含有することが好ましい。
【0012】
アミノ酸が、メルカプト基、ジスルフィド基、モノスルフィド基、含チッ素複素環、ベンゼン環、フェノール性水酸基または3以上のアミノ基を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記タイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、アミノ酸と白色充填剤を含有するので、シランカップリング剤やシリル化剤を使用することなく、環境に配慮するとともに、将来の石油資源の減少にも備えることができ、該ゴム組成物によって高性能のタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム、アミノ酸、および白色充填剤を含有する。
【0017】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(1,2BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合ゴムなどがあげられる。これらの中でも、環境に配慮できる点、および耐摩耗性、低転がり抵抗性、操縦安定性、引張強度の点で、天然ゴムまたは改質天然ゴムが好ましい。改質ゴムとしては、比較的容易に合成でき、性能も良好な点で、エポキシ化天然ゴムが好ましい。
【0018】
エポキシ化天然ゴムとしては、市販のエポキシ化天然ゴムを用いてもよいし、天然ゴムをエポキシ化して用いてもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法としては特に限定されるものではなく、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などの方法を用いて行なうことができ、例えば、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。
【0019】
エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率は5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましい。エポキシ化率が5モル%未満では、ゴム組成物に対する改質効果が小さい傾向がある。また、エポキシ化率は80モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましい。エポキシ化率が80モル%をこえると、ポリマー成分がゲル化してしまうため好ましくない。
【0020】
改質天然ゴムおよび/または天然ゴムの含有量は、ジエン系ゴム成分中に、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、最も好ましくは100重量%である。これにより、より環境に配慮したタイヤ用ゴム組成物とすることができる。また、改質天然ゴムおよび/または天然ゴムに含まれるタンパク質やリン脂質とも相互作用するので、合成ゴムと比較して、白色充填剤をより高度に分散させ易くなる。合成ゴムでは、重合時に末端または主鎖中に白色充填剤と相互作用または化学反応しうる官能基を導入することができるのに対し、天然ゴムや改質天然ゴムは既にゴム分子が出来上がっているので、改質によって合成ゴムのような官能基を導入することが困難である。したがって、天然ゴムを改質する材料として、反応性に富んだ天然物であるアミノ酸を使用するメリットがある。また、アミノ酸に含まれるアミノ基は、エポキシ基と反応しやすいこと、および前述したように比較的容易に合成でき、性能も良好な点で、改質天然ゴムとしてはエポキシ化天然ゴムを使用することが好ましい。
【0021】
本願発明では、充填剤として、カーボンブラックの代わりに白色充填剤を用いる。白色充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、スターチなどがあげられる。中でも、補強性や転がり抵抗に優れている点で、シリカ、水酸化アルミニウム、スターチが好ましい。シリカとしては、湿式法または乾式法により製造されたシリカがあげられるが、特に限定はない。
【0022】
シリカのBET吸着比表面積は、好ましくは20m/g以上、より好ましくは40m/g以上、さらに好ましくは50m2/g以上である。シリカのBET吸着比表面積が20m/g未満では、補強効果が小さい。また、シリカのBET吸着比表面積は、好ましくは600m/g以下、より好ましくは500m/g以下、さらに好ましくは450m/g以下である。である。シリカのNSAが600m/gをこえると、未加硫ゴムの粘度が高くなり加工性が低下する傾向がある。
【0023】
シリカの含有量は、ジエン系ゴム100重量部に対して10重量部以上、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上である。シリカの含有量が10重量部未満ではゴムの強度が不充分となる。また、シリカの含有量は150重量部以下、好ましくは100重量部以下、より好ましくは80重量部以下である。シリカの含有量が150重量部をこえると、未加硫ゴムの粘度が高くなり加工性が低下する。
【0024】
本願発明では、アミノ酸を白色充填剤と併用するので、白色充填剤と併用されるシランカップリング剤やシリル化剤を使用する必要がないが、シランカップリング剤やシリル化剤を併用することもできる。
【0025】
アミノ酸とは、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、アミノ基またはカルボキシル基がシリカのシラノール基などと相互作用または反応する。また、アミノ基やカルボキシル基、その他の官能基がゴムと反応または相互作用する場合もある。これらの作用によって、白色充填剤の分散性を改善することができる。アミノ酸としては、たとえばL−メチオニン、L−シスチン、L−システイン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−チロシン、グリシン、L−アラニン、L−フェニルアラニン、L−リジン、L−ドーパ、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸などがあげられる。アミノ酸は、メルカプト基、ジスルフィド基、モノスルフィド基、含チッ素複素環、ベンゼン環、フェノール性水酸基または3以上のアミノ基を有することが、ゴム成分と相互作用または反応しやすく、分散性改善効果が高い点で、好ましい。中でも、耐摩耗性を大きく向上させる点で、モノスルフィド基または3以上のアミノ基を有するアミノ酸が好ましい。また、転がり抵抗を大きく低減できる点で、含チッ素複素環を有するアミノ酸が好ましい。さらに、前述するようなアミノ酸のL体は天然に存在し、生物の生体内で合成される。このため、かかるL体のアミノ酸は、天然タンパク質の加水分解からの抽出、または微生物を用いた発酵によって得ることができ、シランカップリング剤と比較して環境に優しく、一般に省エネルギーのプロセスによって得られる。とくに発酵によって得られたL−アミノ酸は、省エネルギーの点で好ましい。
【0026】
アミノ酸の含有量は、ジエン系ゴム100重量部に対して0.1重量部以上、好ましくは0.25重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上である。アミノ酸の含有量が0.1重量部未満では、白色充填剤の分散性改善効果、補強効果、転がり抵抗低減効果が得られない傾向にある。また、アミノ酸の含有量は20重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは6重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。アミノ酸の含有量が20重量部をこえると、ゴム中に均一に分散させることが困難となって析出したり、不必要にコストが増大する傾向にある。
【0027】
アミノ酸は予めゴム、または白色充填剤と反応させたのちに混合することができる。予め反応させておくことで、白色充填剤の分散性を改善する効果や、耐摩耗性の改善効果、転がり抵抗低減効果が高くなる傾向がある。
【0028】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム組成物の加工性を改善でき、加硫反応を良好に進行できる点で、ステアリン酸および/または亜鉛華を含有することが好ましい。ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100重量部に対して0.2〜5重量部が好ましい。一方、亜鉛華の含有量は、ゴム成分100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましい。
【0029】
硫黄の含有量はジエン系ゴム100重量部に対して0.2重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上である。硫黄の含有量が0.2重量部未満では、ゴムが柔らかくなりすぎタイヤ用ゴムとして適切でなくなる。また、硫黄の含有量は8重量部以下、好ましくは4重量部以下、さらに好ましくは2.5重量部以下である。アミノ酸の含有量が8重量部をこえると、硫黄のブルーミングによりタイヤ成形時にゴムの粘着が悪化する。
【0030】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、前記ジエン系ゴム、白色充填剤、アミノ酸など以外に、必要に応じてカーボンブラックなどの補強剤、老化防止剤、ワックス、加硫促進剤などの通常のゴム工業で使用される配合剤を適宜配合することができる。
【0031】
加硫促進剤としては、グアニジン系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤などがあげられる。加硫促進剤の配合量は、前記ゴム成分100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0032】
本発明のタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、必要に応じて前記配合剤を配合した本発明のタイヤ用ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状にあわせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0034】
実施例1〜30および比較例1〜5
(1)各種薬品の説明
SBR:日本ゼオン(株)製のニッポールNS116(溶液重合SBR、結合スチレン量21%、Tg−25℃)
天然ゴム:RSS♯3
エポキシ化天然ゴム:GUTHRIE POLYMER SDN.BHD社製のENR−25(エポキシ化率:25モル%、ガラス転移点:−41℃)
シリカ:デグッサ社製のUltrasil VN3
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックI(ISAFカーボン)
ワックス:日本精鑞製のオゾエース0355
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤BBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
アミノ酸1:味の素(株)製のL−メチオニン(モノスルフィド結合含有)
アミノ酸2:味の素(株)製のL−シスチン(ジスルフィド結合含有)
アミノ酸3:キシダ化学(株)製のL−システイン(メルカプト基含有)
アミノ酸4:味の素(株)製のL−アルギニン(3つ以上のアミノ基含有)
アミノ酸5:味の素(株)製のL−ヒスチジン(Nが2つ入った複素環含有)
アミノ酸6:味の素(株)製のL−チロシン(ヒドロキシフェニル基含有)
【0035】
(株)神戸製鋼所の1.7Lのバンバリーミキサーを用いて、表1および2の工程1に示す配合量の薬品を充填率が58%になるように添加して、回転数80rpmの条件下で、混練機の表示温度が140℃になるまで3〜8分間混練した。なお、実施例25〜30および比較例5では、シリカを工程1中で2回に分けて投入した。一旦、排出した後、工程1で得られた混練物に対して、工程2に示す配合量の硫黄および加硫促進剤を加え、オープンロールを用いて50℃で3分間混練して未加硫ゴム組成物を得た。工程2で得られた未加硫ゴム組成物を、それぞれの評価に必要なサイズに成形し、150℃で最適時間プレス加硫することにより、実施例および比較例のゴム組成物を作製した。最適加硫時間は、キュラストメーターなどの加硫試験機を用いて、t100を求め、それに従って決定した。
【0036】
なお、以下の各測定において、表1(実施例1〜6、比較例1)では比較例1を、表2(実施例7〜12、比較例2)では比較例2を、表3(実施例13〜18、比較例3)では比較例3を、表4(実施例19〜24、比較例4)では比較例4を、表5(実施例25〜30、比較例5)では比較例5を、それぞれ基準配合とした。
【0037】
(耐摩耗性試験)
ランボーン摩耗試験機にて、負荷荷重2.5kg、温度20℃、スリップ率40%、試験時間2分間の条件下で、各加硫ゴム組成物から得られたランボーン摩耗試験用加硫ゴム試験片を摩耗させて、ランボーン摩耗量を測定し、各配合の容量損失量をそれぞれ計算し、基準配合の耐摩耗性指数を100として、下記計算式により耐摩耗性をそれぞれ指数表示した。耐摩耗性指数が大きいほど、耐摩耗性が優れていることを示す。
【0038】
(耐摩耗性指数)=(基準配合の容量損失量)/(各配合の容量損失量)×100
【0039】
(転がり抵抗試験)
加硫ゴム組成物として、2mm×130mm×130mmのゴムスラブシートを作製し、そこから測定用試験片を切り出し、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、各試験用ゴム組成物のtanδを測定し、基準配合の転がり抵抗指数を100として、下記計算式により転がり抵抗特性をそれぞれ指数表示した。転がり抵抗指数が小さいほど、転がり抵抗が低く、転がり抵抗特性が優れていることを示す。
【0040】
(転がり抵抗指数)=(各配合のtanδ)/(基準配合のtanδ)×100
【0041】
(操縦安定性指数の評価)
上記と同様に、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、各試験用ゴム組成物の複素弾性率Eを測定し、基準配合の弾性率を100として、下記計算式により操縦安定性指数をそれぞれ指数表示した。操縦安定性指数が大きいほど、操縦安定性が高く、優れていることを示す。
【0042】
(操縦安定性指数)=(各配合のE)/(基準配合のE)×100
【0043】
(引張強さ試験)
JIS K 6251加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方に従って、引張強さを測定した。基準配合の引張強さを100として、下記計算式により引張強さ指数をそれぞれ計算し指数表示した。引張強さ指数が大きいほど、強度が高く、優れていることを示す。
【0044】
(引張強さ指数)=(各配合の引張強さ)/(基準配合の引張強さ)×100
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
表1〜4からわかるように、実施例では耐摩耗性は、基準配合と比較して同等か、または大きく向上した。転がり抵抗指数についても、基準配合比で小さく、低減することができた。Eについても向上しながら、操縦安定性指数も向上した。とくにモノスルフィド結合を有するアミノ酸、または3つ以上のアミノ基を有するアミノ酸で耐摩耗性と同時に操縦安定性を大きく向上させることができたうえに、転がり抵抗もより小さくすることができた。さらに引張強度も向上した。また、Nが2つ入った複素環を有するアミノ酸では、耐摩耗性や操縦安定性は基準配合とほぼ同等であったが、転がり抵抗を大きく低減させることができた。その他のアミノ酸でも、大小はあるものの、向上効果が確認できた。
【0050】
また、フィラーとしてはカーボンブラックと併用した系、シリカ単独の系のいずれでも効果が得られたが、とくにシリカ単独配合とした方がより優れていた。また、表の数値ではわからないが、基準配合の70℃におけるtanδ同士を比較すると、カーボンブラック併用配合よりも、シリカ単独配合の方が低いので、シリカ配合比率の高い配合において、効果が高い。
【0051】
さらに、ゴムとしては、合成ゴムと併用した配合よりは、天然ゴムおよび/または改質天然ゴムのみを用いた配合で、より効果が高くなった。